社 説

 

陸上イージス「コスト増大に理解得られるか」

2018/8/3 金曜日

 

 秋田、山口両県に配備が計画される陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」に搭載するレーダーについて防衛省は、米国製「LMSSR」を選定した。「弾道ミサイル防衛能力は飛躍的に向上する」(小野寺五典防衛相)高性能レーダーだが、当初説明していた価格を大きく上回っており、選定の妥当性などについて波紋を呼びそうだ。
 レーダーの選定に当たり防衛省は、米政府を通じて米ロッキード・マーチン社など2社から提案を受け、基本性能や経費といった面で比較し、評価が高かった同社製を選んだ。小野寺防衛相は、海上自衛隊のイージス艦に搭載するレーダーと比べて探知性能が大きく優れていることを挙げ、ロフテッド軌道への対応能力や飽和攻撃に対する同時対処能力などの向上につながると強調している。
 ここで問題になるのは、レーダーを含めたコスト。LMSSRを含む本体は1基当たり約1340億円で、当初見積もりより500億円以上高い。両県に配備するには2基が必要であるため、単純計算で当初より1000億円も上回ることになる。
 しかも本体だけの話である。実際に配備するには垂直発射装置(VLS)の調達や迎撃ミサイルの配備費も要する。さらに飽和攻撃に対処する迎撃ミサイル24発で、護衛艦1隻の建造費(700億円前後)に相当するという。
 わが国が最も危機感を抱いていたのはミサイル発射実験を繰り返してきた北朝鮮の存在。6月の米朝首脳会談で金正恩朝鮮労働党委員長が非核化に向けた取り組みを約束したことで、危機感は幾分和らいだ感があった。
 ところが、7月30日の米紙ワシントン・ポスト(電子版)は米情報機関の分析として、北朝鮮が平壌近郊の研究施設で、北朝鮮が「米本土全域を攻撃できる」と主張する大陸間弾道ミサイル(ICBM)1~2発の製造を続けている兆候があると報道。首脳会談で金委員長は、弾道ミサイルの開発中止に言及しておらず、非核化と弾道ミサイルは切り離して考えなければならない。つまり、わが国が抱える危機は排除されてはいないということになる。
 防衛省、米軍によると、国民の安全を確保するための防衛力強化だけでなく、陸上イージス配置で負担が減る米艦を南シナ海などに展開できれば、海洋進出を強行する中国を念頭に置いた海洋秩序の維持・強化に充てられるという。
 この点を理解したとしても、西日本豪雨など大規模災害の復旧、復興を急がなければならない中で、全体コストがどの程度まで膨らむか不透明なのに加え、配置時期も数年ずれ込むとみられるイージス・アショアに対し、簡単に国民の理解が得られるだろうか。まずは防衛省の丁寧な説明が聞きたい。

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県産メロン「ブランドPRに一層の工夫を」

2018/8/2 木曜日

 

 全国的に暑い日が続く。8月、津軽地方ではリンゴやコメなど主要な農産物の生育が進む中、メロンが一足早く旬を迎える。近年はブランド化された品種が県外の大消費地に出荷されている。認知度が高まってきている今、PRに一層の努力と工夫が欲しい。
 県産メロンの主産地はつがる、黒石、弘前、青森の各市、鯵ケ沢町などで、6月から9月にかけて市場に出回り、8月がピークに当たる。昨今は生産者、市場関係者がブランド化に尽力し、消費地から高い評価を受けている。
 青森オリジナルメロン生産連絡協議会は「アムさん」や「スウィートルビー」などを「つがりあんメロン」として出荷。糖度が15度以上と高く、評判は上々だ。つがるブランド推進会議は、糖度17度以上の地元産を「プレミアム」として売り込んでいる。
 農林水産省所管の独立行政法人「農畜産業振興機構」(東京)などによると、メロンの作付面積、出荷量とも茨城県がトップ、北海道、熊本県、山形県が続き、本県も上位に含まれる。
 東京と大阪の中央卸売市場の月別県別入荷実績を見ると、入荷が集中する5、6月は東京、大阪市場とも茨城が大きなシェアを占め、7月以降は北海道、山形、本県に移行。8月は本県がトップの北海道に次ぐシェアを占め、大消費地で一定の評価を得ていることが分かる。
 ただ、本県産は出荷時期が重なる産地が多く、油断できない。今後も国内シェアを維持、拡大する努力は欠かせない。
 当然、県内の関係者もその点は十分理解しており、消費者の関心を引こうと躍起だ。例えば、つがるブランド推進会議は7月下旬、東京・町田市で恒例の試食即売会を開催。福島弘芳つがる市長らが今年産の出来の良さをアピールした。
 大消費地ではよく見られるケースだが、地方自治体の関係者が毎年決まった時期に特定の街、特定の商業施設を訪れ、地元の産物をPR・販売している。このことにより交流が生まれ、消費者が〝お得意さん〟になっていくのである。
 販路を開拓する上で求められるのは果実の品質だけではない。消費者に親しまれ、信頼を獲得することも重要であり、〝お得意さん〟の地域を2カ所、3カ所と増やすことを目指すべきではないか。
 もちろん、PRの方法はさまざまある。東京・神楽坂の「北のプレミアムフード館『kita―pre(キタプレ)』」のカフェでは、「つがりあんメロン」を使ったデザートを提供中だ。見た目が斬新で「インスタ映え」し、観光客の関心を引いているようだ。
 果実を丸ごと販売するだけでなく、他の食材と組み合わせてアピールするといった視点もあっていい。料理の一食材として脚光を浴びる場合は多々ある。メロンの可能性はまだまだ広がるはずだ。

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あおもり移住倶楽部「官民一体で移住促進図れ」

2018/8/1 水曜日

 

 県が本県への移住を検討している人を対象に、割引などさまざまなサービスが受けられる「あおもり移住倶楽部」を創設、1日に会員の募集を始めた。準備段階からある程度長期にわたってサポートし、本県への移住を促す構えだ。
 会員は登録申請時に県外居住で、本県への移住を希望する人はもちろんだが、県外と県内にそれぞれ就労や生活の拠点を持つ二地域居住の人も対象とする。
 会員特典の有効期間は3年間と設定。県のこれまでの調査では、移住を希望する時期を「3年以内」と回答した人が約7割と多数を占めたことから、準備に2年、移住後の生活基盤を整えるのに1年を要すると想定して算定した。仮に想定より早く県内への移住が実現しても、3年の有効期間内は特典を受けられる。
 同様の制度は徐々に広がっており、全国19県が導入済み。東北では本県が福島県に続く2県目だという。移住者を獲得し、人口減少に歯止めをかけようという取り組みは競争が激しくなっており、窓口での円滑な情報提供や移住相談会などはもはやあって当たり前。それだけでは差別化が図れないということだろう。
 ただせっかくの制度も、特典やサービスの中身が充実していなければ魅力が半減する。県は特典を提供する施設を「あおもり移住応援隊」として認定するが、これまで49事業所が手を挙げたという。
 特典内容はレンタカーや引っ越しの料金、県内で暮らすには必須の自動車教習料金、宿泊料金などの割り引き、新居関係の仲介手数料や工事代金の割り引きなど、移住の準備の際にあればうれしいサービスばかり。中には飲食店でのワンドリンクサービスなど移住とは直結しない特典もあるが、生活する上でうれしいサービスを増やすことが、会員増加につながるはず。県は引き続き移住応援隊の事業者を募るとしており、民間の積極的な参画と民間ならではのアイデアによる魅力的な特典、本県ならではのサービスが多数出てくることを期待したい。
 首都圏での移住相談窓口「青森暮らしサポートセンター」が2017年度に受け付けた相談件数は879件で、16年度を198件上回り、移住への関心は高まってきていると言える。相談者は20~30代の若い層が半数を占め、こうした層に訴えるという点では、会員証に青森市出身のイラストレーター柿崎こうこさんによるキュートなイラストを採用したことや、情報を県の移住・交流ポータルサイトで検索できる仕組みとしたことは効果的だろう。今後は特典やサービスもより若手世代に響くよう、工夫してほしい。
 「あおもり移住倶楽部」の取り組みは行政だけでなく、民間も一体となって移住希望者をサポートする仕組みづくりだと言える。本県で広く移住者を受け入れる機運が高まるよう、官民連携で進める今後の取り組みに注目していきたい。

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弘前ねぷた展「絵師の美意識と情熱伝わる」

2018/7/31 火曜日

 

 弘前ねぷたまつり開幕を控え、弘前市立博物館で「弘前ねぷた展」が始まった。弘前ねぷたの歴史を彩ってきた代表的な絵師たちの作品と関連資料を中心に展示し、まつり運行時より間近に接することで、ねぷた絵の美術品としての魅力に迫る企画だ。多くの場合、わずか7日間で使命を終えるねぷた絵に精魂を込める絵師たちの情熱も伝わる。
 同展は、1868年に弘前藩士が描いた現存最古のねぷた絵がある共用展示室から始まる。同室の阿部義夫によるねぷた絵に導かれるように美術工芸展示室へ進むと、石澤龍峡、竹森節堂、棟方志功の鏡絵に三方から囲まれ、それらの強烈な個性のぶつかり合いに飲み込まれそうになる。龍峡の「趙雲幼主を救う図」は自由闊達(かったつ)な筆遣いが目を引く。特に龍峡の鏡絵は現存数が少ないといい貴重。節堂の「黒旋風李逵奮戦之図」は、1966年に本県で開催された全国高校総合体育大会の歓迎ねぷたで、揺るぎない画面構成が印象的。志功の「天の岩戸」は志功唯一のねぷた絵で、目尻の描き方が青森ねぶたに通じるという。
 同室では節堂が残したねぷた絵の草稿も目玉の一つ。墨の濃淡や描線の美しさは、それ自体が一つの美術作品と言っても過言ではなかろう。草稿と見送り絵を見比べるのも楽しい。同館編集の冊子「竹森節堂ねぷた絵草稿」には、展示されていない草稿も多数収録されている。
 白描を主体とした節堂のびょうぶ絵「小町」は、日本画家としての技量がねぷた絵にも色濃く反映されていたことを物語る。草稿一つにも美意識をにじませたのは、画家としての矜持(きょうじ)だろうか。節堂と作風が異なる龍峡も、日本画家として高名だった。びょうぶ絵の隣にある同じ題材「小町」の見送り絵は、びょうぶ絵に比べて運行時の視覚効果を考慮して上半身をやや大きめに描いていたことが分かる。
 ただ、節堂も画面構成には腐心したようだ。「三国志」を題材にした「虎牢関ノ三戦」は、下絵では4人描かれていたが、51年に運行されたねぷた絵では関羽がいなくなっていたという。現在の弘前ねぷたの様式を確立した一人である節堂の、パイオニアならではの苦労がしのばれる。
 県知事賞受賞作品が展示されている聖龍院龍仙さんと三浦呑龍さんは、ともに龍峡に学んだ。若手絵師の川村麗巴さんが復元制作した、節堂の見送り絵も見どころだ。
 昔のねぷた関連写真は現代の目には新鮮だ。中でも「本町のねぷた」は48年の撮影。戦後、運行が再開されて間もない時期で、集まった人々には緊張感とともに高揚感がみなぎる。これらからは、ねぷたが地域コミュニティーの中で親しまれ、守られ続けてきたことが強く感じられる。

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貿易摩擦「FFRで不利益被らぬ準備を」

2018/7/28 土曜日

 

 トランプ米大統領と欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長が貿易障壁と補助金の撤廃に向けた対話を始めることで合意した。対話の間は互いに追加関税を保留するとしており、貿易摩擦の過熱は当面、回避される見通しとなった。ただ、トランプ米政権が自動車の輸入制限を発動する可能性がなくなったわけではないとみられており、対米輸出の3割を自動車が占める日本も、米国との新貿易協議(FFR)を控え、警戒感を緩められずにいる。
 トランプ、ユンケル両氏は25日にホワイトハウスで会談。貿易摩擦の緩和に向け、自動車を除く工業製品について関税や、貿易・投資規制などの非関税障壁、産業補助金の扱いで、緊密に対話することにした。ユンケル氏は対話が続く間、双方が追加関税を控えるとしたことを最大の成果と強調し、トランプ氏は「互いの貿易はより公正で互恵的なものになる」とした。菅義偉官房長官も米EUが貿易摩擦緩和に動き始めたことを「前向きに評価したい」と歓迎した。
 ただ、トランプ氏が合意に踏み切った背景には、11月の中間選挙を控え、米国内の産業界などでくすぶる不満への配慮があるとみられる。トランプ氏が主張してきた、EUが米国車に課す10%の関税撤廃についての結論を先送りしたとされるが、米国内の反発回避を優先しただけで、従来の保護主義政策は変わっていないということだろう。
 米EU間で、どの程度の具体的合意が得られるのかが注目される。EU側も個別分野で各国のスタンスが異なり、域内の利害調整という難問を抱える。米中の貿易協議で米側は、いったん棚上げした制裁関税を、最終的に強行している。仮に米EUの貿易対話が不調で終わった場合、米中協議のように、合意を白紙に戻す可能性も否定できない。
 米国は8月以降に日本とのFFR初会合を開く方針。世耕弘成経済産業相はFFRについて「内容は決まっていない」とするが、米EUの対話と同様、自動車・同部品の不均衡是正が焦点となる見通し。米側は鉄鋼・アルミニウムに続き、自動車に「安全保障上の脅威」を理由にした追加関税を検討している。既に日本は米国車に対する関税を撤廃しており、政府関係者は「EUとは状況が異なる」とするが、日本の自動車産業は「(米国の強硬措置の)リスクがなくなったとは考えていない。引き続き注視しないといけない」などと懸念する。
 FFRでは自動車に加え、農業分野でも厳しい要求を突き付けてくる可能性が高いとみられている。日本政府は警戒感を抱きつつ、米EU首脳会談の経緯などを詳細に分析しながら、FFRに向けた準備を急ぐ構えだ。日本の立場をしっかり主張し、国内経済を揺るがすような事態を避けなければならない。

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