社 説

 

働き方改革関連法案「正確なデータの提示が先」

2018/2/24 土曜日

 

 裁量労働制の対象業務拡大を盛り込んだ「働き方改革」関連法案をめぐり、政府・与党の混乱が広がっている。裁量制に関する厚生労働省の調査データに、不備が次々と発覚したためだ。政府は法案を3月上旬に提出する方針だが、与党内には提出先送り案も浮上。野党に要求された労働時間の実態調査やり直しも含め、週明けにも判断を示す見通しだ。
 結論から言えば、法案提出は先送りされるべきだ。誤ったデータを基にして、議論などできようはずもない。安倍晋三首相は「データを基礎として法案づくりをしたわけではない」とするが、法案を審議する上でデータは不可欠。国民にとっても、法案の是非を判断するにはデータが必要となるはずだ。
 法案には裁量制の対象業務拡大のほか、高収入の専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の創設も含まれており、賃金が変わらないまま実際の労働時間が伸びるのではないかとの懸念が当初から指摘されていた。
 導入されれば長時間労働につながりかねないとして、野党は「残業ゼロ制度」「定額働かせ放題」などと厳しく批判。連合も反対姿勢を示し、過労死で家族を亡くした遺族の団体も撤回を要望した。
 首相は「裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者よりも短いというデータもある」などと、厚労省の調査を基に説明し、裁量制が長時間労働とイコールではないと強調してきた。しかし、この答弁が撤回された。もはや前提が崩れたとしか言いようがない。
 厚労省の調査データをめぐっては、少なくとも117件の異常値が新たに見つかった。調査対象は1万1575事業所にわたり、同省は全データを再確認する方針だが、精査が完了する見通しは示されていない。正確なデータが出るまで、または実態調査をやり直した後で審議を再開するのが本筋だろう。
 そもそも、こうしたずさんなデータがなぜ出てきたのかという疑問も残る。政権側の意向を厚労省が忖(そん)度(たく)したのではないかという、疑念すら覚える。同省には、今回の事態に至った経緯を調べて再発防止策を講じるとともに、調査結果を公表することを求めたい。
 データの不備発覚後、首相は予算委員会で「自分の才能や能力を生かし、健康管理もしながら、働く時間を自ら計画、設定しながら成果を上げていく」と裁量制の意義を強調。法案の今国会提出方針も崩さず、再調査も否定している。
 ただ、このまま法案の提出、可決に突き進んだとして、国民や労働者の理解は到底得られまい。裁量制拡大や高プロ導入のメリットと、それを裏付けるデータを提示した上で丁寧に説明することが求められている。

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版画まつり「生き続ける志功の思い」

2018/2/23 金曜日

 

 今年が生誕115年に当たる巨匠の名を冠した第33回棟方志功大賞県下小・中学生あおもり版画まつりの入賞作品が決まった。志功の業績をたたえるとともに、版画制作を通じて子どもたちの芸術的関心を高めようと陸奥新報社と日本板画院青森支部が、県民共済生活協同組合の特別協賛などを得て開いたもので、上位作品は、23日に始まる弘前展(さくら野弘前店)を皮切りに、県内3地区で展示される。
 志功は1903年9月5日に青森市で、鍛冶職人の三男として誕生。ゴッホの「ひまわり」に感銘を受けて創作活動を本格化させ、28年の第9回帝展で油彩画「雑園」が入賞。56年のベネチア・ビエンナーレで日本人初の国際版画大賞に輝くなど、数々の国際展で高く評価され、誰もが認める「世界のムナカタ」になった。70年には本県出身者で最初の文化勲章を受けた。
 75年9月13日に72年の生涯を閉じるまで、古里津軽を愛し続けた。71年には陸奥新報創刊25周年を記念したねぷたの絵を制作。運行の際、自身が描いたねぷたの前で、手を広げて踊ったエピソードからは、短い夏にエネルギーを爆発させる津軽人の血を感じる。版画まつりも、志功が「青森県の風土は版画の世界に適しているんだ。小・中学生たちとともに版画王国をつくろう」と、最晩年まで審査長を務めた県下小・中学生版画コンクールが前身だ。
 今回は県内全域の小学校231校から1万8980点、中学校5校から173点の計236校、1万9153点が寄せられた。応募点数は前回より800点ほど多い。日本板画院委員・青森支部長の藤谷芳雄審査員長らは「上位作品はどれも素晴らしく、ほとんど紙一重の差」と講評し「版画を通じて豊かな情操を育てることも目的。受賞したことが刺激となり、大人になっても版画を続けるという子が育ってくれるとうれしい」と期待した。版画まつりの中に志功の思いが生き続けている。
 入賞者はもちろん、入賞を逃した子どもたちも、一つのものに打ち込む姿勢や、表現力を身に付けることになったのではないだろうか。志功がゴッホの作品に刺激されたように、展示された同世代の作品から何かを感じ取ったり、芸術に目を向けるきっかけになったりするとともに、ひたむきに取り組めば志功と同様、世界に羽ばたけることを学んでくれたなら幸いである。
 弘前展は25日まで、八戸展(さくら野八戸店)は3月3、4日、青森展(同青森本店)は10、11日。銅賞以上を集めた特別展も4月10~27日に青森市の同組合で開かれる。ぜひ各会場で豊かな感性と可能性を堪能してほしい。きっと、子どもたちの夢、志功が描いた版画王国の夢実現へ向けた大きな後押しになる。

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AIで津軽弁文字化「実用化へ今後の研究に期待」

2018/2/22 木曜日

 

 弘前大学と東北電力は共同研究で、AI(人工知能)を活用して津軽弁の音声データを文字化することに成功した。
 東北電力のコールセンターが保有する通話音声データを、AIを介して理解可能なテキストに再構築できるかを検証してきた結果、繰り返し学習させることで精度が向上し、文字化が可能になった。
 自動要約はいまだに困難で、現時点ではハードルが高いようだが、今後はさらに一歩踏み込み、津軽弁の音声データを標準語のテキストに変換することを目指している。
 津軽地域においては、さまざな場面において、津軽弁が理解されにくくコミュニケーションに難しさを感じたという話をよく耳にする。今回の研究成果が実用化につながれば、こうした悩みを解消する一助となることだろう。今後の行方に期待したい。
 共同研究は昨年8月から始まった。背景として、弘大は附属病院などで医療・看護分野の県外出身者が言葉の面で地元患者とのコミュニケーションや対話記録を取る際に苦労するという現状がある。東北電力は、日々膨大な問い合わせが寄せられ、繁忙期にはつながりにくくもなるコールセンターで、オペレーターが方言による問い合わせの内容を理解するのに時間を要することがあり、通話時間の短縮が課題となっている。
 一般的な音声認識は標準語を基準としているため、方言で読み込ませようとすると誤変換が多く発生するが、これを改善して読み込ませるのが一つの狙いだ。
 今回は、弘大が、東北電力のコールセンターで受け付けた860時間分の通話データの提供を受けてテキスト化し、変換率、自動要約、重要キーワードの抽出などについて検証。東京都のIT企業に業務委託してAIを活用した音声認識のデータ算出などを行ってきた。研究においては、鯵ケ沢町民の協力を得て津軽弁のサンプルを録音した。
 音声データを文字化する中で、やはり当初は誤変換が多かったが、間違った部分を修正し、津軽弁特有の表現をAIに繰り返し学習させていくうちに津軽弁認識率が約94%までに精度が向上したという。まずは文字化実現にこぎ着けたことは大きな成果といえる。
 津軽弁といっても、地域によって特徴があり、ひとくくりにできないところが方言の難しさでもあるだろう。それだけに根気強くさらに研究を前進させ、精度を高めてもらいたい。
 現時点で津軽弁の自動要約はハードルが高いことが分かっており、当面は津軽弁を標準語にテキスト変換することを大きな目標に据えている。実用化にこぎ着けられれば、さまざまな分野において貢献できるのは間違いない。大学と民間企業の共同研究としても注目が集まるだけに、今後の進展に期待したい。

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1票の格差「与野党超え真摯な議論を」

2018/2/21 水曜日

 

 参院選挙区の「1票の格差」是正で導入された合区を解消するため、自民党憲法改正推進本部が各都道府県から最低1人を選出できるようにする憲法改正条文案を了承した。他の政党や識者の一部は「法の下の平等」を定めた憲法14条に相反すると批判するが、最も大切なことは国会での真摯(しんし)な議論であり、議論を通じた国民の関心の高まりだろう。
 そもそも「1票の格差」は首都圏への人口集中と地方の人口減少によって生じており、時代の変遷とともに社会構造が変化することは当然だろう。
 ただ、人口比率で議席を配分する制度を改革しない限り、人口減少に歯止めがかからない地方の多くは議席ゼロとなりかねない。これを解消するためには、現行の都道府県や市区町村といった行政区分を見直し、道州制を導入するといった大きな変更が必要になる。
 さらに国会議員の数が適正なのか、衆院と参院の役割がこのままでいいのか、国会改革の議論も欠かせない。
 つまり「1票の格差」をめぐる議論はこの国のありようも問う、私たち国民に密接な問題であり、早急に議論を始めなければならない課題なのだ。
 だからこそ、国会は自民党の憲法改正条文案を議論のきっかけとすべきではないか。
 自民案は、衆院も含め選挙区を画定する際は「人口を基本とし、行政区画、地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案」するとの文言も盛り込んだ。
 これは格差是正措置を講じても、県や市町村単位の選挙区を維持しやすくする狙いがある。同党の県選出衆院議員は「地方の民意が確保されることを意図しており、選挙区は県や市町村の枠組みが基本であることを明確にしたもの」と解説する。
 これに対し、野党や識者は、地方に強い地盤を持つ自民党が選挙を有利に戦うための方策と批判、安倍晋三首相が憲法9条改正に進むための口実の一つだと指摘する声もある。
 批判はしても議論はしない、これでは何の解決にもならない。国会の場で各党が識者も交えて議論を重ね、憲法を変えるのか、または道州制なり行政の仕組みを変えるのかを示した上で憲法を変えないのか、国民に判断を委ねるべきだ。
 昨年の衆院の区割り変更をめぐっては、本県でも新たな選挙区に編入された地域住民から、候補者になじみがない、これまで支持してきた候補がおらず、投票には行かないといった不満と不信の声が少なくなかった。
 以前にも指摘したが、度重なる選挙区の変更や、地域のつながりを分断されるといった影響を受けるのは国民である。メディアにも国民の関心を高める役割がある。しかし国会が国民不在の党利党略で、議論すら避けることは許されない。

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高齢者の死亡事故「努力を積み重ね、減少目指せ」

2018/2/20 火曜日

 

 警察庁は2017年中、国内で発生した交通死亡事故などの特徴をまとめた。それによると、死者数は前年比210人減の3694人で、同庁が保有する1948年以降の統計では最少となった。しかし、事故死者に占める65歳以上の高齢者の割合は54・7%(2020人)となっており、前年に次ぎ依然高い水準にある。全体に犠牲者が少なくなったとはいえ、まだまだ対策が必要な状況だ。関係機関一丸となった取り組みやドライバー、歩行者とも安全を意識した運転、運転免許証の自主返納促進といった対策を心掛けてほしい。
 犠牲となった高齢者の中でも、75歳以上のドライバーによる事故は前年比41件減の418件、死亡事故全体に占める割合は12・9%で0・6ポイント減少した。しかし、運転免許保有者10万人当たりの件数で見ると、75歳未満の2倍以上の7・7件となり、やはり高水準。昨年3月、75歳以上の認知症対策を強化した改正道路交通法が施行されたものの、増加傾向を打ち消すに至っていないのが現状だ。
 何が状況の好転を阻害しているのか。418件を類型別に見た場合、人的要因としてハンドルなどの「操作不能」が最多の130件(31・1%)を占める。このうち、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故は26件(6・2%)を占め、0・8%だった75歳未満の8倍近かった。さらには、75歳以上を対象とする運転免許更新時などの検査で「認知症の恐れ」と判定された人は5万4072人(2・8%)、「認知機能が低下の恐れ」が52万5990人(26・8%)であり、死亡事故を起こした75歳以上の中で49%を占める結果となった。警察庁はこうした結果を受けて「認知機能の低下が死亡事故の発生に影響を及ぼしている」と推察している。
 高齢者の方々が「自分はまだまだ大丈夫」「認知症にはなっていない」と言っていても、周囲の家族らが普段の行動などを見て、危ないと感じた時点で運転の自制や免許証返納を促し、自覚してもらえるような環境づくりが必要だ。
 本県ではどうだろうか。昨年1年間の事故発生件数は3258件(前年比482件減)で死者数42人(同11人減)、負傷者数4022人(同517人減)。発生件数と負傷者数は前年比で各約1割、死者数は約2割の減少となった。昨年1月の死者数が前年比4人増の8人でスタートしたことを考えれば評価すべき数字だ。死者のうち65歳以上は前年より4人減ったが、23人と半数強を占めた。
 県警本部は昨年9月から3カ月間、「交通死亡事故抑止対策『秋の陣』3カ月作戦」を県下一斉に展開、関係者の地道な努力もあり、昨秋以降12月まで事故死者はあったが前年比では減少のまま推移した。高齢者の死亡事故も努力の積み重ねでさらに減少させたい。

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