社 説

 

アンテナショップ「柔軟な発想で地元に還元を」

2018/2/28 水曜日

 

 つがる市が2019年度、特産品販売のアンテナショップと一体となった東京事務所を開設する。県内の市としては青森、八戸、弘前に続き4例目。市単独のアンテナショップとしては県内初となる挑戦的な試みだ。自治体アンテナショップの競争は激化しているが、開設を契機にメロンなど「つがるブランド」が首都圏などに浸透することを期待したい。
 同市は合併で発足した05年、コメ、メロン、スイカなどに独自の基準を設けて「つがるブランド」に認定する制度を開始。毎年、都内で地元農産物の試食販売会を開催するなどして販路拡大に努めてきた。東京事務所・アンテナショップの開設は、そこからさらに一歩踏み込み、恒常的に情報を発信できる。
 地方を取り巻く環境が厳しい中、自治体には地元振興に向けた主体的な取り組みが求められており、同市の方針には強い意欲が見て取れる。しかし、アンテナショップをめぐる現実は甘くない。
 地域活性化の諸活動を支援する「地域活性化センター」(東京都)の調査によると、県の「あおもり北彩館東京店」、東青地域5市町村による「あおもり地域ビジネス交流センター」を含め、都内の自治体アンテナショップは独立店舗、集合店舗合わせて72店舗(17年4月1日現在)ある。
 しかし、年間の入館者が100万人を超えたのは「北海道どさんこプラザ有楽町店」など4店舗だけ。10万人未満が22店舗と全体の約4割を占める。地域のブランド力の差、立地場所などさまざまな要因が考えられるのだろうが、人気の偏りには驚かされる。
 各店舗とも集客に躍起だ。入館者が唯一200万人を超えた「北海道―」でさえ、年間売り上げは前年を下回り、10億円を超えられなかった。いずれも商品の種類を増やし、客を飽きさせないようイベントを開催するといった努力を続けているが、これらだけでは限界もあろう。
 店舗によっては、知名度の低い商品をテスト販売し、客の反応を企業にフィードバックして改良を続けるといった取り組みもしている。「あおもり―」も同様な考え方で地元企業の商品開発を支援し、それらの企業と首都圏バイヤーが商談する場も設けている。
 ただ、商品の売り上げ向上だけが目標ではない。アンテナショップの業績向上が、地元の産業振興などにうまくつながらなければ、開設の目的を本当の意味で達したことにはならない。
 地方自治体の財政が厳しい中、テナント料などを含め都内へのアンテナショップ開設に伴う負担は小さなものではなかろう。開設の目的をより明確にし、店舗の運営形態もそれに合致させる。先例から学びつつも、とらわれ過ぎず、柔軟な発想で臨み、できるだけ多くのものを地元に還元していきたい。

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平昌冬季五輪閉幕「今後につながる日本勢の活躍」

2018/2/27 火曜日

 

 冬季五輪平昌大会が閉幕した。日本勢は1998年長野五輪を超えるメダル13個(金4、銀5、銅4)を獲得。フィギュアスケート男子シングルの羽生結弦選手、スピードスケート女子500メートルの小平奈緒選手、同マススタートの高木菜那選手、同団体追い抜きで金メダルを手に入れ、五輪の頂点を極めた。日本のメダル総数は、冬季五輪史上最多を記録した。
 さまざまなドラマが生まれた大会だった。66年ぶりの2大会連続金メダルに輝いた羽生選手は、昨年11月に右足首を負傷して試合から遠ざかっていた。復帰の舞台が五輪という、プレッシャーで押しつぶされそうな局面だったが、その演技は高い技術と表現力に加え、見る者を圧倒する気迫に満ちあふれていた。
 メダルを量産した女子スピードスケートの選手たちの活躍も素晴らしかった。同競技日本勢としては長野五輪男子以来の金メダルを獲得した小平選手は、本人が理想と話す「究極の滑り」を体現しての圧巻の金メダル。小平選手は2位となった李相花選手(韓国)との友情も話題になり、激しい競争が繰り広げられる冬季五輪の舞台で一服の清涼剤となった。同競技の女子団体追い抜きは、張り詰めた雰囲気の中、一糸乱れぬ滑りを見せた日本が、決勝を逆転で制するなど劇的な展開で金メダルを獲得。メンバーの高木美帆選手は、1500メートル銀、1000メートル銅に続く金メダルで、五輪の1大会で日本の女子選手が3種類のメダルを取ったのは、夏季大会を含めて初の快挙となった。今大会初種目の女子マススタートでは高木菜選手の勝負強さが光り、初代女王の座を見事に射止めた。
 次々と大技を決めたスノーボード男子ハーフパイプの平野歩夢選手と、優勢な欧州勢の中で孤軍奮闘したノルディックスキー複合個人ノーマルヒルの渡部暁斗選手は、ともに2大会連続の銀メダル。その強靭(きょうじん)な精神力にただただ脱帽だフィギュアスケート男子シングルで羽生選手とともに表彰台に上った宇野昌磨選手の銀メダル、ソチの雪辱を果たしたスキー・ジャンプ女子ノーマルヒル個人の高梨沙羅選手、カーリング女子のLS北見、フリースタイルスキー男子モーグルの原大智選手の銅メダルも記憶に残る。もちろんメダルに届かなかった選手たちにもそれぞれのドラマ、それぞれの感動があった。
 次の冬季五輪は、中国・北京で開かれる。冬季スポーツは、競技人口の伸び悩みで厳しい環境にある種目もあるが、平昌五輪での日本勢の活躍に触発されて、五輪を目指す子どもたちが数多く現れてくれればと思う。その前、2020年は夏季五輪東京大会が開かれる。国民に大きな力を与える世界最大のスポーツの祭典、五輪。選手強化や万全の受け入れ態勢を敷いて自国開催を成功させたい。

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働き方改革関連法案「正確なデータの提示が先」

2018/2/24 土曜日

 

 裁量労働制の対象業務拡大を盛り込んだ「働き方改革」関連法案をめぐり、政府・与党の混乱が広がっている。裁量制に関する厚生労働省の調査データに、不備が次々と発覚したためだ。政府は法案を3月上旬に提出する方針だが、与党内には提出先送り案も浮上。野党に要求された労働時間の実態調査やり直しも含め、週明けにも判断を示す見通しだ。
 結論から言えば、法案提出は先送りされるべきだ。誤ったデータを基にして、議論などできようはずもない。安倍晋三首相は「データを基礎として法案づくりをしたわけではない」とするが、法案を審議する上でデータは不可欠。国民にとっても、法案の是非を判断するにはデータが必要となるはずだ。
 法案には裁量制の対象業務拡大のほか、高収入の専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の創設も含まれており、賃金が変わらないまま実際の労働時間が伸びるのではないかとの懸念が当初から指摘されていた。
 導入されれば長時間労働につながりかねないとして、野党は「残業ゼロ制度」「定額働かせ放題」などと厳しく批判。連合も反対姿勢を示し、過労死で家族を亡くした遺族の団体も撤回を要望した。
 首相は「裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者よりも短いというデータもある」などと、厚労省の調査を基に説明し、裁量制が長時間労働とイコールではないと強調してきた。しかし、この答弁が撤回された。もはや前提が崩れたとしか言いようがない。
 厚労省の調査データをめぐっては、少なくとも117件の異常値が新たに見つかった。調査対象は1万1575事業所にわたり、同省は全データを再確認する方針だが、精査が完了する見通しは示されていない。正確なデータが出るまで、または実態調査をやり直した後で審議を再開するのが本筋だろう。
 そもそも、こうしたずさんなデータがなぜ出てきたのかという疑問も残る。政権側の意向を厚労省が忖(そん)度(たく)したのではないかという、疑念すら覚える。同省には、今回の事態に至った経緯を調べて再発防止策を講じるとともに、調査結果を公表することを求めたい。
 データの不備発覚後、首相は予算委員会で「自分の才能や能力を生かし、健康管理もしながら、働く時間を自ら計画、設定しながら成果を上げていく」と裁量制の意義を強調。法案の今国会提出方針も崩さず、再調査も否定している。
 ただ、このまま法案の提出、可決に突き進んだとして、国民や労働者の理解は到底得られまい。裁量制拡大や高プロ導入のメリットと、それを裏付けるデータを提示した上で丁寧に説明することが求められている。

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版画まつり「生き続ける志功の思い」

2018/2/23 金曜日

 

 今年が生誕115年に当たる巨匠の名を冠した第33回棟方志功大賞県下小・中学生あおもり版画まつりの入賞作品が決まった。志功の業績をたたえるとともに、版画制作を通じて子どもたちの芸術的関心を高めようと陸奥新報社と日本板画院青森支部が、県民共済生活協同組合の特別協賛などを得て開いたもので、上位作品は、23日に始まる弘前展(さくら野弘前店)を皮切りに、県内3地区で展示される。
 志功は1903年9月5日に青森市で、鍛冶職人の三男として誕生。ゴッホの「ひまわり」に感銘を受けて創作活動を本格化させ、28年の第9回帝展で油彩画「雑園」が入賞。56年のベネチア・ビエンナーレで日本人初の国際版画大賞に輝くなど、数々の国際展で高く評価され、誰もが認める「世界のムナカタ」になった。70年には本県出身者で最初の文化勲章を受けた。
 75年9月13日に72年の生涯を閉じるまで、古里津軽を愛し続けた。71年には陸奥新報創刊25周年を記念したねぷたの絵を制作。運行の際、自身が描いたねぷたの前で、手を広げて踊ったエピソードからは、短い夏にエネルギーを爆発させる津軽人の血を感じる。版画まつりも、志功が「青森県の風土は版画の世界に適しているんだ。小・中学生たちとともに版画王国をつくろう」と、最晩年まで審査長を務めた県下小・中学生版画コンクールが前身だ。
 今回は県内全域の小学校231校から1万8980点、中学校5校から173点の計236校、1万9153点が寄せられた。応募点数は前回より800点ほど多い。日本板画院委員・青森支部長の藤谷芳雄審査員長らは「上位作品はどれも素晴らしく、ほとんど紙一重の差」と講評し「版画を通じて豊かな情操を育てることも目的。受賞したことが刺激となり、大人になっても版画を続けるという子が育ってくれるとうれしい」と期待した。版画まつりの中に志功の思いが生き続けている。
 入賞者はもちろん、入賞を逃した子どもたちも、一つのものに打ち込む姿勢や、表現力を身に付けることになったのではないだろうか。志功がゴッホの作品に刺激されたように、展示された同世代の作品から何かを感じ取ったり、芸術に目を向けるきっかけになったりするとともに、ひたむきに取り組めば志功と同様、世界に羽ばたけることを学んでくれたなら幸いである。
 弘前展は25日まで、八戸展(さくら野八戸店)は3月3、4日、青森展(同青森本店)は10、11日。銅賞以上を集めた特別展も4月10~27日に青森市の同組合で開かれる。ぜひ各会場で豊かな感性と可能性を堪能してほしい。きっと、子どもたちの夢、志功が描いた版画王国の夢実現へ向けた大きな後押しになる。

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AIで津軽弁文字化「実用化へ今後の研究に期待」

2018/2/22 木曜日

 

 弘前大学と東北電力は共同研究で、AI(人工知能)を活用して津軽弁の音声データを文字化することに成功した。
 東北電力のコールセンターが保有する通話音声データを、AIを介して理解可能なテキストに再構築できるかを検証してきた結果、繰り返し学習させることで精度が向上し、文字化が可能になった。
 自動要約はいまだに困難で、現時点ではハードルが高いようだが、今後はさらに一歩踏み込み、津軽弁の音声データを標準語のテキストに変換することを目指している。
 津軽地域においては、さまざな場面において、津軽弁が理解されにくくコミュニケーションに難しさを感じたという話をよく耳にする。今回の研究成果が実用化につながれば、こうした悩みを解消する一助となることだろう。今後の行方に期待したい。
 共同研究は昨年8月から始まった。背景として、弘大は附属病院などで医療・看護分野の県外出身者が言葉の面で地元患者とのコミュニケーションや対話記録を取る際に苦労するという現状がある。東北電力は、日々膨大な問い合わせが寄せられ、繁忙期にはつながりにくくもなるコールセンターで、オペレーターが方言による問い合わせの内容を理解するのに時間を要することがあり、通話時間の短縮が課題となっている。
 一般的な音声認識は標準語を基準としているため、方言で読み込ませようとすると誤変換が多く発生するが、これを改善して読み込ませるのが一つの狙いだ。
 今回は、弘大が、東北電力のコールセンターで受け付けた860時間分の通話データの提供を受けてテキスト化し、変換率、自動要約、重要キーワードの抽出などについて検証。東京都のIT企業に業務委託してAIを活用した音声認識のデータ算出などを行ってきた。研究においては、鯵ケ沢町民の協力を得て津軽弁のサンプルを録音した。
 音声データを文字化する中で、やはり当初は誤変換が多かったが、間違った部分を修正し、津軽弁特有の表現をAIに繰り返し学習させていくうちに津軽弁認識率が約94%までに精度が向上したという。まずは文字化実現にこぎ着けたことは大きな成果といえる。
 津軽弁といっても、地域によって特徴があり、ひとくくりにできないところが方言の難しさでもあるだろう。それだけに根気強くさらに研究を前進させ、精度を高めてもらいたい。
 現時点で津軽弁の自動要約はハードルが高いことが分かっており、当面は津軽弁を標準語にテキスト変換することを大きな目標に据えている。実用化にこぎ着けられれば、さまざまな分野において貢献できるのは間違いない。大学と民間企業の共同研究としても注目が集まるだけに、今後の進展に期待したい。

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