社 説

 

パリ協定採択「実効なければ意味を持たない」

2018/12/18 火曜日

 

 ポーランドで開かれていた国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)が閉幕した。採択された地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の運用ルールで、先進国発展途上国に関係なく原則全ての国が共通ルールの下で温室効果ガス削減に取り組むことになった。
 運用ルールをめぐっては当初、先進国と途上国の間に大きな隔たりがあった。先進国が全ての国を対象とする方針である一方、近年温室効果ガスが急増しているとされる途上国は、削減目標の達成状況を検証する資金や能力がないとして先進国と異なるルールの適用を主張。議論が紛糾する可能性が指摘されていた。
 結果的に途上国については、柔軟性のある内容として歩み寄りを図り、先進国と途上国で二つのルールを設ける「二分論」は回避。発展途上国を含む全ての国に対し、温室効果ガスの削減目標に基準年などの詳細な情報や情報源を盛り込み、締約国に報告することを義務付けるに至った。海面上昇で国土が水没する危機が差し迫っている島しょ国の、やむを得ない移住についての対策も、目標の中間報告などに盛り込めるようにした。
 一方、排出削減目標は各国が設定することとし、それぞれの自主性に委ねた。先進国から途上国への資金支援については、2020年までに官民合わせて年間1000億ドルを拠出、25年以降の上積み目標は20年から検討する。これらについて、ルールを破った際の罰則は設けていない。排出削減効果を国際的にやりとりする仕組みは、協議がまとまらずに来年11月にチリで開かれるCOP25に先送りした。
 運用ルールの共通化は、すべての国が同じ認識で対策に臨むきっかけにはなるだろう。しかし、トランプ米大統領は温暖化を否定して協定離脱を表明しており、COP24では国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書を「歓迎する」ことに、米国と産油国のサウジアラビア、クウェート、ロシアが反対した。このような状態で確実な温暖化対策が実現するかは疑問だ。各国共通ルール化という成果づくりを優先しただけのように映る。
 報告書によると、仮に削減目標を達成しても、平均気温は約3度上昇するという。報告書を基礎に対策を考えるなら、温室効果ガスの削減目標を各国に委ねるのではなく、目標の引き上げと対応の義務化を明文化すべきでないのか。大規模自然災害をもたらす温暖化に歯止めをかけるため、踏み込んだ取り決めがなかったのは残念だ。
 抗議デモの激化で環境税導入を延期したフランスなど、それぞれ自国の問題を抱えているのは理解できる。しかしCOPは地球全体を考える場である。運用ルール採択は一歩である。しかし、実効ない限り、何の意味も持たない。

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「あおり運転」世論を踏まえ法改正論議を

2018/12/15 土曜日

 

 「あおり運転」による東名高速夫婦死亡事故で、危険運転致死傷罪などに問われた被告に対し、横浜地裁が14日、懲役18年の判決を言い渡した。あおり運転が同罪の処罰対象になっていないこと、最大20年の有期懲役が妥当なのかなど多くの課題が明らかになった今回の公判。世論を踏まえ、政治は法改正を真剣に議論すべきだ。
 公判では被告が高速上に自分の車を止めた行為が、同罪の「重大な交通の危険を生じさせる速度での運転」に当たるか否かが争点となった。そもそも同罪が、あおり運転で停車した車に第三者の車が追突する事態を想定しておらず、弁護側は「走行中が前提」と同罪が適用されないと主張した。
 判決では4回にわたり進路を妨害したあおり運転と、停車や追突事故は「密接に関連している」として因果関係を認め、同罪は成立すると判断した。
 この判決に対しては、専門家でも肯定的な意見がある一方で、解釈の拡大だと警鐘を鳴らす声もある。
 ただ、同罪は悪質運転による交通事故への罰則強化を求める世論を背景に2001年に創設されたばかりの、まだ若い制度だ。実際、最高刑の引き上げ(05年)、刑法から自動車運転処罰法への移行と適用対象拡大(14年)と、社会情勢を踏まえて改正されてきた。
 現在の社会情勢はどうか。東名事故であおり運転への関心が高まったことで、ドライブレコーダーを装着する人が増え、これが摘発につながったり、事件の概要も詳しく報道されたりするようになり、さらに注目を集めている。
 ところが警察庁が全国の警察に取り締まりを強化するよう指示した結果、今年10月までの摘発件数は1万件を超え、昨年よりも倍増した。摘発強化に伴うものであっても、あおり運転が全国で日常的に起きていることの証左である。
 ただ、あおり運転を取り締まる法律がないため、摘発の大半は車間距離不保持など道路交通法違反の行政処分だ。警察庁が悪質な場合は暴行罪を適用するよう求めたところ、今月11日までに暴行容疑で17件、傷害容疑で1件摘発されたが、これらは特殊なケースだ。
 また危険運転致死傷罪は立証のハードルが高いとされ、飲酒死亡事故の裁判で適用が見送られたケースもある。今回は裁判員裁判でもあり、市民感情に沿った判決になったと指摘する専門家もいる。
 菅義偉官房長官は14日、あおり運転に厳正に対処する考えを強調したものの、現行法令による取り締まりや迅速な行政処分の実施に取り組んでいることを説明するにとどめた。
 悲しい事故ではあるが、二度と起きることがないよう、私たちが政治に対して声を上げ、あおり運転の厳罰化に向けた法改正論議を促すべきだ。

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知事選出馬表明「県民の関心高める努力を」

2018/12/14 金曜日

 

 来年6月の任期満了に伴う県知事選に、三村申吾知事が5選を目指して出馬する意向を表明した。次期知事選への出馬表明は三村氏が初めて。今後、選挙戦に向けた動きが本格化するとみられる。
 知事は県議会11月定例会の一般質問冒頭で、自民党議員の質問に答え「初心に立ち返り、選ばれる青森県、県民が生きる喜びを感じながら暮らしていける青森県を目指し、愚直に挑戦を続けることが私に課せられた責務」と決意を語った。答弁では、これまで進めてきた財政健全化や攻めの農林水産業、医師の定着など各方面での実績を強調。その上で今後について「本県を取り巻く環境が急激に変化し、時代の転換点を迎える」とし、これまでの成果を足掛かりにさらに飛躍する必要がある―と引き続き、県政のかじ取りを担うことに強い意欲を示した。
 既に来年度からの県政運営の指針となる、次期県基本計画「『選ばれる青森』への挑戦」が提示されており、人口減少や労働力の確保、地域社会の生活機能維持など今後の課題への対応策が盛り込まれている。これまでの実績と合わせ、県民の評価を受けることになるだろう。
 ただ当選すれば本県では初の5選となり、20年にわたって三村県政が続くことになる。全国的にみても5期は長い。一貫した方針の下、地道に継続してきた政策が成果につながってきたという一面も確かにあるが、多選への批判がある程度生じることは避けられないだろう。支援を決めた自民党県連内からも、この点については懸念の声が上がっている。
 三村知事は報道陣に多選について問われ「自分としては常に新たなる思いで、しっかりと仕事をしていく。それに対して県民から判断をいただければ」と答えているが、県民が判断し、選択するためには選択肢が幾つかあり、さらに県政について関心を呼び起こすような中身の濃い政策論争があることが望ましい。
 知事は人の財(たから)という意図で「人財」という字を使い、優れた人材の活用や農業など各分野のリーダー育成に積極的に取り組んできた。それにもかかわらず、4期16年を経ても、県政のリーダーシップを取ろうという意欲的な人材が出てきていないことを残念に思う。
 選択肢がない選挙は、盛り上がりに欠ける。選挙に向けては、既に自民党県連が党県連推薦を決めており、過去4回の選挙で三村氏を支援してきた公明党県本部も支援する構えだ。対する野党は「無競争はあり得ない」としてそれぞれ候補者の擁立を模索するなど、対決姿勢を打ち出している。知事選をいかに戦うのか、各党の今後の対応を注視したい。
 4年に1度の知事選は県政への理解を深めてもらう好機だ。次の知事選では、活発な政策論争が行われ、県民が本県の将来像や必要な政策についてじっくり考える機会となることを期待している。

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岩崎中統廃合「学び、地域共生へ話し合いを」

2018/12/13 木曜日

 

 深浦町の吉田満町長が同町岩崎地区にある岩崎中学校の統廃合について、来年3月末までに基本方針を決定することを明らかにした。同町には、町南部の同校のほか、中心部の深浦中、北部の大戸瀬中があり、いずれも将来的な生徒数減が見込まれる。このため、選択肢は岩崎中を軸とし(1)深浦中と統合(2)深浦、大戸瀬両中と統合(3)統合しない―の3パターンとなる。
 町教育課によると、今年度の3中学校生徒数は深浦79人、大戸瀬55人、岩崎35人。しかし、10年後は深浦50人以下、大戸瀬27人、岩崎13人という見込みとなっている。2011年度にも一度、統合に関する議論が行われたが、住民の反対を受け、結論を先送りしていた。しかし、今年9月、町長と町教委でつくる町総合教育会議が保護者に対し、統廃合に関するアンケートを実施することを決定。町は既に今月4日に岩崎地区で開いた「まちづくり懇談会」で方針を説明しており、来年1月末には深浦、大戸瀬両地区でも説明した後、アンケートを行い、結果などを踏まえ判断する。
 減少し続ける生徒数、教育や部活動のことなどを考えれば、多くの生徒が学ぶ環境を新たに創設するため、統合に関する議論がなされることはやむを得ないことだろう。ただ、深浦町の地理的な環境を踏まえれば、統合だけですべて解決される問題かどうかも考える必要がある。
 既に人口が1万人を割り、8288人(9月末現在)。南北に長い海岸線を持ち、最北部から秋田県境までの車の移動は、国道を通って1時間半程度を要する。現在の3地区3中学校は、合併前の旧深浦町、旧大戸瀬村、旧岩崎村がある地区に1校ずつ残っている形だ。地理的に見ても、生徒の通学圏内として見ても、もう減らすことができない数と言えよう。自治体の境を越えた通学が当然の高校とは意味合いが異なる。しかし人口減に伴う生徒数の減少は、そうした状況すら度外視し、統合を検討せざるを得ない状況に追い込まれていることになる。
 つまり、統合する場合に考える必要があることの一つには、スクールバスを運行するにしても今まで以上の遠距離通学を求められる生徒が出てくることになり、負担にならないか―が挙げられよう。「おらほの学校」がなくなる地域の住民感情も考慮しなければならない。「やむを得ない」と思う住民がいる一方で「学校がなくなった地域は活気も失う」と考える人は少なからずいると思われる。
 同町では今後、こうした課題が議論されるだろう。ただ、地域から学校がなくなる事態は今に始まったことではない。先例を踏まえ、基本方針の結論が統合となった時には、生徒が十分に学校生活を楽しめる、地域と共生できる環境に向け、話し合いを深めてほしい。

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白神遺産登録25周年「環境保全と地域振興の連動を」

2018/12/12 水曜日

 

 本県南西部から秋田県北西部にまたがる「白神山地」が世界自然遺産に登録されて25周年を迎えた。地元に暮らすわれわれとしては、8000年前から続く原生的なブナの森、多種多様な動植物の生態系を守る意識を新たにしたい。
 25年を振り返ると、白神山地の知名度が向上し、多くの観光客が訪れた。「白神」は観光施設の名称に使われ、その名を冠した料理なども登場。白神山地は全国に通用するブランドになった。ただ、昨今は遺産地域の入山者数が年によって増減し、かつてほどの水準ではない。
 環境保全の面も必ずしも喜べる状況にはない。森林生態系に悪影響を及ぼすとされるニホンジカがしばしば確認され、関係機関は食害などの防止に向けた捕獲などに頭を悩ませる。昨年夏には遺産の本県側核心地域で初めて確認されるなど、状況は深刻さを増している。
 節目を迎えたところで、改めて考えてみたい点がある。取り組みの成否は別として、遺産登録以降、関係者は地域振興に、環境保全にそれぞれ懸命に向き合ってきたはずだ。ただ、地域振興と環境保全の間のつながりは必ずしも密接だったとは思えない。
 そこで、2年余り前に白神山地など国内四つの世界自然遺産を抱える8町村で発足した「世界自然遺産地域連携ネットワーク協議会」での議論に注目したい。参加町村は観光振興や環境保全で似たような悩みを抱えていたが、もう一つの共通点が「過疎化」だった。
 遺産登録に伴う観光振興、環境保全とも対策を充実させるには相応の経費が必要なのだが、関係町村は小規模なため財政基盤が弱く、取り組みに限界があるのだという。もちろん、国や県なども活動しているが、遺産の価値や保存の必要性を訴えるには地元自治体の存在が不可欠。しかし、その過疎化が進めば、発信力の低下は避けられず、各対策にも影響する可能性がある。
 地元自治体の状況を見れば、従来の取り組みだけではいずれ立ち行かなくなる恐れもあろう。これまでの地域振興策といえば、遺産のネームバリューを誘客や物販につなげるケースが大半だったのではないか。しかし、これからは環境保全と地域振興を連動させる発想、環境保全と地域振興をダイレクトに結び付ける発想が求められるように思われる。
 そういった意味では、西目屋村とアウトドア総合ブランドとの連携などは興味深い取り組みだ。環境保全への関心が高いと思われるアウトドア愛好家らを白神山地に数多く招くことができれば、地域振興に加えて環境保全の意識醸成、新たな活動にもつながる可能性があろう。白神山地を守る次世代の人材育成が必要―と関係者は訴えるが、これから求められるのは、環境保全と地域振興をトータルで考えられる人材なのではないか。

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