社 説

 

エコファーマー制度「農業の将来のため積極活用を」

2018/8/25 土曜日

 

 環境に配慮した方法で生産する農業者「エコファーマー」の認定者が減り続けている。ほぼ全国的な傾向で、直近の統計(2016年度末)によると、本県は2711人でピーク時の半数以下。しかし、農業と環境保全の両立は時代の趨勢(すうせい)だ。課題を詳細に分析して早急に対策を講じたい。
 農薬や化学肥料を抑えた生産方法を実践するエコファーマー制度は、1999年に施行された持続農業法に基づくもので、本県では2001年度に認定制度が導入された。
 農林水産省によると、エコファーマーの全国の認定者は99年度から増え続け、2011年度末には21万6341人に上った。しかし、翌12年度からは一転して減少。16年度末には12万9389人にまで落ち込んだ。わずか5年で4割も減少した背景に何があるのか。
 県によると、新規に認定を受ける人はいるのだが、更新手続きをしない人がはるかに上回っている。更新手続きは、県の指針に沿って新たな生産方法を導入することが必須条件となっており、高齢の農業者らには負担になっている。
 多くの農業者が厳しい経営を強いられ、通常作業に用いる機器や資材の購入にも慎重になる中、環境保全のための投資に二の足を踏むのも理解できる。新たな生産方法を導入するには多くの作業も求められ、高齢者にはつらいだろう。
 個々の農業者の経営状況や労働環境を踏まえれば、エコファーマーの認定者が減少しても仕方ない面はあろう。ただ、農業の将来を考えた場合に懸念されるのは、環境への対応が浸透しなかったり、後れを取ったりすることで農産物の販路の維持・開拓に悪影響が出ることだ。
 環境に配慮した農業を営んでいる点において、欧州などはまさに先進地。農産物の国際認証規格「グローバルGAP」が欧州で発祥したことなどを考えれば、農業と環境保全の両立は既に文化として根付いているのであろう。
 農産物の輸出入はこの先、ますます活発化し、欧州などとの取引量も増えるはずである。とすれば、本県においても、農業と環境保全の両立を従事者の間にできるだけ根付かせるべきだろう。
 県の担当者が言うように、エコファーマーの認定を受けるには、有機栽培や特別栽培ほどの厳しい基準があるわけではなく、環境に配慮した農業を営むための〝入り口〟として、これからも積極的に活用してよいのではないか。
 農業従事者の全体数が従来に比べて少なくなることは明らかであり、エコファーマーの認定者数が再び大きく増加することは考えにくい。それでも、エコファーマー制度などを通じ、次世代の農業者に環境保全の重要さを伝えていくことは、本県農業の将来のためになることは間違いないと思う。

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リンゴとの複合作物「柔軟な組み合わせで収入増を」

2018/8/24 金曜日

 

 日本一の生産量を誇る本県のリンゴ。津軽地方において、この作物が持つ重要性は今後も変わらないだろう。これからも青森リンゴのブランド力強化に努め、日本一の産地を維持して本県1次産業を引っ張る存在であり続けるよう、磨き上げを図らなければならない。
 だが日本一の産地を維持するには、さまざまな壁が立ちはだかる。販売面では他産地、他果物、輸入果実との価格競争があり、消費者の果物離れなど嗜好(しこう)の変化も看過できない。生産環境で言えば、生産者の高齢化による労働力不足が近年顕在化している。ざっと挙げただけでも対処すべき課題が多いのが現状だ。厳しい環境に打ち勝つには足腰の強い生産環境が必要であり、そのためには生産者の安定した収益確保が大前提となる。
 つがる弘前農協は、リンゴの作業と両立しやすいとして、ピーマンの作付け推進活動を展開している。今年度から、農協が選果や袋詰めなどを担う「共同選果」を本格的に始めたこともあり、出荷者は100人の大台に乗り、3年前と比べて40人の増加をみたという。産地化に向けて関係者も手応えを感じていることだろう。
 リンゴとピーマン。この二つの作物の相性がなぜ良いのか、すぐには思いつかないが、聞けば、なるほどと合点がいく。一般的に津軽地方で、ピーマンは5月下旬に定植され、その後30~40日ほどで収穫が始まる。つまりリンゴの「仕上げ摘果」が一段落する7月下旬からピーマンの収穫がピークを迎えるため、効率よく二つの農作物を育てることが可能だという。
 ピーマンそのものも、露地栽培のため初期投資が比較的少額で済み、栽培もしやすく重量が軽い「軽量作物」なので肉体的負担が少ない―などの利点がある。
 同農協もこうした特性に着目し、2017年度には袋詰めをするための包装機を購入。希望者を募って作業を受託した。今年度から共同選果と個人選果の選択制とし、弘前市内の千年第一りんご施設でリンゴ選果機を活用したピーマンの共同選果を行っている。
 リンゴ生産者はピーマンという別の収入源を持つことで農業経営を安定的に行うことができる。さらに作業員の継続雇用にもつながることにもなるため、その効果は大きいものがあるだろう。
 リンゴとの複合的な栽培で生産者の収入拡大を図る方法としては、ブランド化が期待されるモモの栽培が好調で、県中南地域県民局管内3農協を合計した販売額は昨年産まで3年連続の1億円台を達成している。リンゴ栽培をメインとしながらも、作業効率や価格動向を見極めて“第二の”収入になる農作物の生産を行う柔軟な農業経営が生産者に求められる。関係団体の支援もこうした視点で積極的に行われるよう期待したい。

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金足農準優勝「高校野球の魅力を体現」

2018/8/23 木曜日

 

 「東北の悲願」は、またも持ち越しとなった。第100回全国高校野球選手権大会の決勝が21日行われ、甲子園で春夏通じて東北勢初優勝を目指した金足農(秋田)は、大阪桐蔭(北大阪)に2―13で敗れた。
 地方大会から一人で投げ抜いたエースが、決勝の舞台でついに崩れるという悲劇的な敗戦だった。しかし、金足農ナインの全力プレーと粘り強さ、そしてすがすがしい姿は、高校野球の魅力そのものだった。夢はかなわなかったが、最後まで節目の大会の主役だった。
 金足農の前評判は高くなかった。しかし吉田投手の快投が徐々に注目を集めた。準決勝までの5試合に完投し、うち4試合が2桁奪三振。決勝こそ疲労で打ち込まれたが、1、2回戦で大阪桐蔭と対戦していたら、結果は違ったものになっただろう。
 今の時代、甲子園常連校には遠方からも優秀な選手が集まる。これに対し金足農メンバーは全員が地元秋田出身で、野球のエリート校と比較し“雑草軍団”と表現した報道もあった。
 その雑草軍団は地方大会を通じてレギュラーを固定する「9人野球」で一体感を増し、強豪校を次々と撃破した。横浜戦の逆転3ラン、近江戦での2ランスクイズなど、驚異的な粘りと勝利への執念に、高校野球ファンならずとも多くの人が引き付けられた。
 勝者の大阪桐蔭も史上初となる2度目の春夏連覇という偉業を成し遂げた。特にチーム打率3割2分8厘、計8本塁打と打撃力が突出していた。主軸はもとより下位打線の技術も高く、どこからでも得点できる強みがあった。
 さらに投手層の厚さもエリート校ならではだった。決勝で完投したエースの柿木に加え、右の根尾、左の横川と3人が交互に登板し、酷暑の長丁場に耐えた。
 振り返れば本県代表として今大会も出場した光星は、2011年夏から3季連続で決勝に駒を進めたものの、頂点はかなわなかった。特に12年は、春の決勝で敗れた大阪桐蔭と夏の決勝で再び対戦することになり、「今回こそリベンジを」と期待したが、またも大阪桐蔭に阻まれたことを鮮明に覚えている。
 東北勢の決勝進出はもはや珍しいことではない。本県の場合は私立3強がしのぎを削り、全国の強豪校と練習試合を重ねているからこそ、甲子園の舞台でも臆することなく実力が発揮できる。
 長く初戦敗退が続いた秋田県勢も、県を挙げて取り組んだ強化策が功を奏し、今回の金足農の躍進につながった。
 雑草軍団の快進撃は、地元秋田県はもちろん、全国の公立校の野球部員、全国の農業高校の生徒、そして被災地に勇気を与えた。なぜ高校野球が人を引き付けるのか、100回を迎えた大会は、その魅力が凝縮された記念大会だった。

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日本代表不祥事「日の丸と期待の重み理解せよ」

2018/8/22 水曜日

 

 ジャカルタ・アジア大会に出場していたバスケットボール男子日本代表の4選手が、公式ウエアを着たまま深夜の歓楽街を訪れた上、日本代表としてふさわしくない行為があったことが分かった。日本オリンピック委員会(JOC)は行動規範に違反したとして、4選手の代表認定を取り消し、帰国させた。国民の期待と日の丸を背負った選手たちによる、軽率な行動は、許されるものではない。
 JOCの聞き取り調査などによると、4選手はカタール戦があった16日夜から17日未明にかけて女性が接客する店を訪れた後、ホテルで不適切な行為をしたという。女性とは120万ルピア(約9000円)の金銭のやりとりがあった。20日に帰国した4選手は東京都内で会見し謝罪。「認識の甘さが出てしまった」「国旗の重さを分かっていなかった」と語ったが、覆水盆に返らず。猛省を促した上で再チャレンジの機会を与えられるのか、選手生命を絶たれるのかは現時点では定かではない。日本バスケットボール協会は第三者による裁定委員会の答申を理事会に諮り、処分を決めるというが、いずれにせよ「日の丸の重み」を十分理解させる措置を望みたい。国民の期待を裏切った責任は大きい。
 常に注目され、勝ち負けや記録で評価される厳しい世界に身を置き、プレッシャーから逃れたいと思うこともあるかもしれない。しかし、それに打ち勝つ心の強さがなければ一流選手とは言えない。つまり4選手は一流ではなかったのだ。「日の丸」剥奪は当然である。これまでの競技生活を通じて、彼らは何を学んできたのか。
 心技体を育むのがスポーツ。スポーツ選手の中でも、特に顕著な成績を上げた“レジェンド”たちは現役時代も、引退後も尊敬と敬愛の対象であり、子どもたちの目標でもある。トップアスリートが子どもたちを指導する「スポーツ教室」も多い。直接指導を受けた子どもたちの記憶に深く刻まれているはずだ。今回の軽率な行為は日本代表選手に憧れる子どもたちの目にどう映ったのか考えてほしい。軽率な行動がどれだけ大きな影響を及ぼすのか容易に理解できるはずだ。
 日本のスポーツ界ではカヌーやレスリング、アメリカンフットボールなどで、あってはならないようなことが次々明るみに出ている。こうした中で起きた今回の事態に、日本選手団の山下泰裕団長は「あらゆる機会を用いて行動規範の徹底を呼び掛けてきたのに」と嘆いた。他の模範だった日本スポーツ界の“劣化”に危機感を抱くJOCは、選手教育に心血を注いできた。それなのに、である。
 なぜ、4選手がJOCの思いを受け止められなかったのか、その背景には何があるのか。早急に対策を打たなければならない。東京五輪・パラリンピックまで2年を切った。猶予はない。

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本県の観光力「ソフト面を強みに魅力向上を」

2018/8/21 火曜日

 

 リクルート(本社東京都)が実施した2017年度「じゃらん宿泊旅行調査」で、都道府県別魅力度ランキングのうち「地元の人のホスピタリティ(もてなしの心)を感じた」という項目で、本県が全国3位となった。
 前年度は21位だったというから、まさに大躍進と言えよう。もてなしの心を感じた要因として、四季を彩る祭りや方言、地元民による三味線演奏など、ご当地感のある体験に関する評価が高かったようだ。「宿泊施設や駅以外の場所でも親切な人が多かった」というコメントも目立ったという。
 「もてなしの心」を重視して観光振興を図ってきた本県としては、各地域の地道な取り組みが功を奏した喜ばしい結果と言える。調査結果を励みに、引き続き観光地としての一層の魅力向上に取り組まねばならない。
 調査は17年度に国内宿泊旅行を行った全国1万5627人(20~79歳)の男女を対象にインターネットで実施したものだ。本県は「もてなしの心」以外でも、「地元ならではのおいしい食べ物が多かった」が6位(前年度15位)、「魅力のある特産品や土産物が多かった」も6位(同11位)にランクイン。「魅力のある特産品や土産物」に関しては、リンゴやその加工品の人気が高かったようだ。
 土産物といえば、弘前市が以前行った観光客動向調査で、土産代を含む現地での総消費額の低さが課題として浮かび上がった。これを受け市は、観光客向けの魅力ある土産物の開発に取り組んできた経緯がある。
 弘前市は、リンゴ生産量全国1位を誇る。その弘前らしさを発揮した特産品、土産物として真っ先に思い浮かぶのはリンゴやその加工品だろう。市内で気軽にリンゴスイーツを楽しむためのツールとして、弘前観光コンベンション協会は「アップルパイガイドマップ」「タルトタタンガイドマップ」を作成するなど積極的なPRを進めている。
 最近はリンゴ果実を原料とする酒・シードルの醸造も盛んだ。製造者も増えたことで、さまざまなタイプのシードルを味わうことができ、〝リンゴの街〟の魅力の一つとなっている。こうした取り組みが効果として表れたなら幸いである。
 調査によると、17年度の延べ宿泊旅行者数が前年度に比べて増え、旅行費用も増加に転じた。旅行の形態として最も多かったのが「夫婦二人での旅行」で、増加傾向にある。次いで多い「一人旅」も近年増加傾向にあり、17年度は特に35~49歳男性の一人旅が目立った。
 一人旅や少人数の旅行においては特に「おもてなし」の良しあしが観光地や旅の印象を左右する。娯楽施設などのハード面では他県に劣る本県だが、ソフト面では他に負けない魅力をまだまだ発揮できそうだ。

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