社 説

 

建設業の働き方改革「時代に合った仕組みを模索して」

2018/6/16 土曜日

 

 建設業の働き方改革を推進しようと、国や県、建設業界団体などは今年度初めて「週休2日制普及促進デイ」として、公共工事の一斉休業日を設けることを決めた。実施日は6月23日と7月28日。東北6県では初めての試みだという。
 建設業は「4週6休」や「4週4休」が主流。週1日しか休みがない事業所もまだまだ多い。ただ建設業界も人手不足や高齢化が進んでいる。今後の担い手確保のためには、週休2日など働きやすい職場環境づくりに努め、若者や女性らを呼び込むことが必要だということは関係者共通の認識で、国土交通省を中心に、公共工事で週休2日制の導入を促すような取り組みが徐々に広がりつつある。
 ただ休日を増やすと、日当分をまとめて受け取る技能労働者にとっては収入減につながりかねないほか、工期の長期化で機械賃料などの経費がかさむという課題がある。本県では農業や漁業など1次産業と同様、建設業も天候のいいうちに作業を進めたいという思惑があり、週休2日の導入はなかなか進まないという。
 こうした現状を受け、県は昨年度、国の取り組みを参考にし、県発注の公共工事で「週休2日確保モデル工事」を試行した。受注者が希望する場合に適用し、4週8休を実施した場合に経費を補正。ただ昨年度公告・契約したモデル工事466件のうち、週休2日を実施したのは28件だけとまだ少なく、県は今年10月以降に公告する工事から、経費補正を人件費、機械賃料に拡充するなどし、建設業の週休2日制導入を促していく構えだ。
 県内一斉に取り組む「週休2日制普及促進デイ」では対象となる工事が約2100件、県建設業協会加盟の182社と県建設産業団体連絡協議会加盟の20団体が参加予定。青森河川国道事務所では、参加事業所を対象にアンケートを行い、現状や課題を把握して今後の週休2日の普及促進に向けた参考にするという。
 行政側には現状の仕組みで無理なく週休2日が実現できるのか、ぜひ厳しい目線でチェックしてほしいし、事業者の側もどのような工期設定であれば適切か、生産性の向上をどう図るべきかなど、自ら知恵を絞るべきだろう。仕事が天候に左右される側面もあり、そう簡単にはいかないだろうが、時代に合った業界の在り方を模索し、発注者も受注者も納得できる着地点を見いだしてもらいたい。働き方改革が注目される今が好機だろう。
 こうした取り組みが重要なのは建設業だけに限らない。働き方改革は大手企業が取り組むというイメージがあるかもしれないが、中小企業であっても改革を進め、労働者の働きやすい職場環境づくりに努めて魅力ある事業所になれなければ、この先の人口減少社会で生き残っていくことは難しい。建設業の取り組みを参考に、あらゆる業種で今、できることは何かを考えるべき時期に来ている。

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18歳成人「きめ細かな対応を急げ」

2018/6/15 金曜日

 

 成人年齢を20歳から18歳に引き下げる改正民法が成立した。法務省によると、データがある世界187の国・地域のうち、成人年齢が18歳以下なのは141カ国。世界的な潮流と言えるが、日本にとっては明治時代以来の大改革であり、国民生活に大きな影響を与えることは避けられないだろう。
 「少子高齢化が急速に進む中で若者の社会参加を促し、自覚を高める」と、政府は成人年齢引き下げの意義を説明する。しかし、ただ引き下げただけで若者の社会参画が進み、意識改革が進むのだろうかという疑問が残る。
 成人年齢の前に選挙権年齢が引き下げられたが、国政選挙での18、19歳の投票率は、本県を含め全国的に総じて低い傾向となった。原因はさまざま指摘されているが、引き下げただけでは意味がないということが如実に表れていることは確かだろう。選挙権年齢の改正時もそうだったが、国民的な理解や合意が進まないまま、引き下げだけが決まってしまった印象を受ける。
 一方で、少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満に改めるかどうかについては、引き続き検討課題となった。「大人としての自覚を促すべきだ」との推進論と、「更生に必要な処遇を受けられなくなる」との慎重論があり、関係者の賛否が割れているためだ。丁寧な検討を積み重ね、国民的合意を得ながら進めてもらいたい。
 2022年4月に施行されることとなった成人年齢引き下げだが、積み残された課題は多い。例えば、22年度には18~20歳が一気に成人式を迎えることになるため、自治体からは会場確保などの対応に苦慮する声が聞かれる。さらに、成人式は大学入試シーズンとも重なるため、開催時期の変更なども検討しなければならないだろう。
 中でも懸念されるのは、悪徳商法の被害。18、19歳は親の同意がなくてもローン契約などを結ぶことが可能となり、同意がなければ契約を取り消せる「未成年者取り消し権」による保護対象から外れることになる。社会経験の少ない若者が標的となる可能性は高いだろう。
 被害防止のため、政府は契約の仕組みなどを説明した教材を高校に配布するなど、消費者教育の強化を進めている。今国会では消費者契約法を改正し、不当な契約を取り消せる規定を追加した。こうした措置は今後もあっていい。
 他にも、さまざまな問題がこれからも指摘、抽出されていくだろう。それだけ社会への影響が多岐にわたる改革だからだ。政府は今後、関係省庁連絡会議で成人年齢引き下げに向けた準備を進める方針を示している。一刻も早く着手して、一つずつ問題を解消していってもらいたい。施行までの約4年という時間は、決して長くはない。

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米朝首脳会談「“第一歩”を意義あるものに」

2018/6/14 木曜日

 

 トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による初のトップ会談。具体的な成果がないとの批判もあるが、今回の歴史的会談を“第一歩”として意義あるものとするためにも、日本はじめ関係国には今後の努力が求められる。
 結果的に今回の首脳会談は、両首脳が初めて顔を合わせ、非核化への道を歩き始めることで合意したことに尽きる。困難であっても具体策の協議を始めるとしており、現段階では過度な期待も、失望も必要あるまい。
 ただ、日本が最も注視していた拉致問題について、米大統領は会談で提起したと言及したものの、合意文書には盛り込まれなかった。日本政府内からは「拉致の難しさは変わっていない」との指摘も出ている。
 会談結果をどう受け止めるか、拉致被害者家族の心情は複雑だ。長く苦しい時間に終止符を打ちたいと望むのは当然であり、今回の会談に少なからず期待していただろう。
 横田めぐみさんの母早紀江さんは、記者会見で「奇跡的なことが起きた」と評価し、「チャンスを上手につかんで、話し合いの中で決めていただくのが望み」と期待をにじませた。
 ただ、他の家族からは「文書(共同声明)に盛り込まれずショック」との声が上がったほか、拉致の可能性が指摘されている今井裕さん(弘前市出身)の兄・英輝さん(同市在住)も「具体的な回答がなく期待外れ」と落胆した。
 これに対し、安倍晋三首相は大統領が拉致問題を提起したことを評価し、「日本が直接しっかり北朝鮮と向き合い、2国間で解決していく」と日朝首脳会談を通じた解決に改めて意欲を示した。
 首脳会談に際して“蚊帳の外”ともやゆされただけに、直接協議で結果を出したいのだろう。しかし日程など具体的な見通しは立っておらず、成果が得られるかは不透明だ。今後始まるであろう事務レベルでの交渉では、慎重かつ粘り強さが求められるだろう。
 このほか大統領は会談後の会見で、米韓合同軍事演習について、対話中は実施しない意向を示した。実施しない理由には経費節減を挙げ、在韓米軍撤収にも言及した。
 これらに対しては、防衛省幹部らから「北朝鮮が何ら行動していない段階で、合同演習を当面中止して大丈夫なのか」との懸念や、「在韓米軍の動向や体制は北東アジアの安全保障や日本の防衛力整備に大きな影響がある。大統領の発言を精査する必要がある」との声も漏れる。
 半島情勢の安定化はわが国にとっても重要な問題だ。拉致問題も含めて今回の会談結果をあらゆる側面から検証し、今後、米国や北朝鮮とどのように向き合うべきか、首相は国民の前で説明する必要がある。

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民泊新法施行「民泊普及で地域活性化へ」

2018/6/13 水曜日

 

 住宅を宿泊施設として提供する「民泊」のルールを定めた住宅宿泊事業法(民泊新法)が、15日に施行される。2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、政府は訪日外国人旅行者を4000万人に増やす目標を掲げており、宿泊の受け皿づくりとして期待されている。
 首都圏などでは、正式な許可を申請してしない「ヤミ民泊」が横行していたほか、民泊の利用客による騒音やごみ出しなどの近隣トラブルの増加、宿泊ニーズの多様化を踏まえ、一定のルールを定めることで健全な民泊サービスの普及を図ることを目的としている。
 住宅宿泊事業を行う場合は都道府県知事などに届け出を実施。要件は「既存の住宅を1日単位で利用者に貸し出すもので、1年間で180日を超えない範囲内で、有償かつ反復継続するもの」としており、ホテルや旅館は除外される。
 「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」「入居者の募集が行われている家屋」「随時その所有者、賃借人または転借人の居住の用に供されている家屋」が対象で、住宅の空き室や空き家が主な対象。増加する空き家は県内でも問題となっており、民泊を通して有効活用につながることも想定される。
 本県では、国際定期便就航や大型クルーズ船寄港の影響もあり、外国人観光客は増加傾向にある。弘前市は17年、外国人宿泊者数が過去最高の3万8132人を記録するなど、インバウンド対応は重要な課題だ。東京五輪・パラリンピック効果が本県のインバウンドにどの程度波及するかは分からないが、外国人客も視野に入れた民泊の在り方は、将来的に重要性を増すのではないか。
 そもそも本県は、宿泊施設が十分といえない状況にある。特に津軽地域は桜のシーズンのほか、ねぷた・ねぶたなどの夏祭り、紅葉シーズンに観光客が集中。特定の時期は宿泊先が不足するものの、それ以外の時期を考慮すると、単純にホテルや旅館を増やすのが正解とは言い難い環境だ。
 このため県内では観光客が集中する時期の「イベント民泊」をはじめ、通年観光にもつながる農家民泊「グリーン・ツーリズム」の普及に取り組んできた。観光客のニーズは多様化し、地元住民との交流や地域文化の体験を希望する層も少なくない点も見逃せない。
 三村申吾知事は5月31日の定例記者会見で、県内における民泊の事業実施について、事前届け出(同30日現在)は弘前、八戸、五戸の3市町の事業者から3件あったことを明かした。
 首都圏で目指す民泊の在り方と、県内で展開すべき民泊の方向性が必ずしも一致する必要性はないが、県内で民泊普及が一つのチャンスとなり、交流人口拡大や地域活性化へとつながっていくことを期待したい。

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秋葉原殺傷10年 振り返り再発防止に生かせ

2018/6/9 土曜日

 

 多くの人でにぎわう東京・秋葉原の歩行者天国を、パニックに陥れた無差別殺傷事件から8日で10年となった。街は平穏を取り戻し、事件の風化は確実に進んでいる。同様の事件が繰り返されないことを祈る被害者らからは、事件が忘れ去られることに懸念の声が聞かれる。
 2008年6月8日午後0時33分ごろ、歩行者天国が行われていたJR秋葉原駅近くの交差点に突っ込んだトラックが、通行人を次々とはねた。さらにトラックから降りた加藤智大死刑囚(35)=青森市出身=が、ダガーナイフで無差別に刺すなどし、19~74歳の男女7人の命を奪い、10人に重軽傷を負わせた。加藤死刑囚は1、2審で、精神障害は認められないとして死刑判決を受けたが、これを不服として上告。最高裁は15年2月、上告を棄却し死刑が確定した。
 事件から10年。事件後に一時中止されていた歩行者天国は11年に再開され、現在は何もなかったように買い物客や海外からの観光客らでにぎわう。この日、現場付近に献花台が設けられたが、普段の風景からは17人が無差別に襲われた事件が起きたことを想像できない。
 タクシー運転手として現場に居合わせ、右脇腹を刺された男性は、いまだに後遺症に苦しみながら、事件のことを少しでも考えてもらおうと、各地の学校で講演するなどの活動を続けている。このような事件を二度と繰り返してはならない、という強い思いが男性を突き動かしているようだ。
 ただ、残念ながら人の記憶は時とともに薄れていく。さらに10年後、20年後にはどうなっているだろうか。現場を行き交う人たちは、事件を知らない世代が中心になる。街が平穏を取り戻すのも当然であるし、決して悪いことではない。しかし、今後も絶対に同様の事件が起きないとは言い切れない。加害者も被害者もつくらないためには、男性のような被害者らの言葉を、後世に語り継ぐ仕組みづくりが急務だ。
 日本アニメは海外でも評価が高く、秋葉原は京都などとは違う〝日本らしさ〟を楽しめる人気観光地になった。政府は訪日観光客を増やそうと、各種施策を展開しており、売りの一つが治安の良さだ。20年の東京五輪・パラリンピックを控えて東京、日本に対する注目が一層高まる中、関係機関は鉄柵による「見せる警備」と、景観を損なわない安全対策との両立を探っている。物々しい雰囲気を避けつつ安全を確保することは、訪れる人たちに安心感を与える。
 このように秋葉原の事件で学んだことを生かすのも、風化させない取り組みと言える。五輪に向けて強化が必要なテロ対策、当事者にならない人づくりなど、事件を振り返ることで、安全確保のために何をすべきかが、見えてくるのではないか。

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