社 説

 

岩木川改修100年「流域の一層の発展を期したい」

2018/1/4 木曜日

 

 「母なる川」と称される、津軽地域を流れる岩木川。その流域で行われてきた岩木川改修事業が今年、国直轄治水事業の工事着手から100周年の節目を迎える。
 岩木川の逆流防止と食糧増産を掲げる国策として始まった事業は、戦禍での停滞や洪水による工事の難航など、数々の困難を乗り越えながら進められてきた。
 改修によって水難を防ぐと同時に河川を水源資源として活用する役割を担うようになり、今では津軽平野に大いなる恵みをもたらしている。先人たちの知恵や努力によって豊かな大地に生まれ変わった岩木川流域の変遷を振り返りながら、100周年の節目を地域のさらなる活性化に結び付けていきたい。
 岩木川は世界自然遺産の白神山地を源流とする一級河川で、他の河川と合流しながら北上し、終点の十三湖から日本海に注ぐ。流域面積は約2540平方キロ、流路延長は約102キロに及び、流域内には13市町村が栄える。
 今でこそ津軽平野は多様な農水産物を生み出す肥沃(ひよく)な大地だが、かつては水害や塩害に悩まされた低湿地帯だった。十三湖の閉塞(へいそく)による岩木川の氾濫にたびたび見舞われ、排水不良から開発が難しく、旧中里町や旧車力村などの水田は、ぬかるみが腰や胸に届くほどだったという。藩政時代から試みてきた開削工事も失敗続きで、荒れた田畑が放置されることも少なくはなく、改修は地域住民の悲願だった。
 こうした環境を変えたのが岩木川改修事業だったが、工事は決して順調に推移したわけではない。第2次世界大戦の勃発で、国家財政の緊縮化による工事費減額や工期延長、資材不足などに悩まされたほか、完成目前の堤防が洪水で決壊する不運にも見舞われた。完成までの道のりは、度重なる逆境や苦難に粘り強く立ち向かってきた関係者の努力のたまものといえるだろう。
 整備着手から約20年の歳月を経て十三湖水戸口の閉塞を解消する突堤が完成し、干拓につながる右岸・左岸囲繞(いにょう)堤も建設された。これによって津軽平野の排水不良などは解消され、日本有数の穀倉地帯へと生まれ変わった。淡水と海水が入り混じる十三湖はヤマトシジミの産地となるなど流域に恵みをもたらしている。
 洪水対策も進み、宅地化などの土地利用も進んでいる。2016年には貯水容量が大幅に増した津軽ダムも完成し、治水・利水効果が高まった。
 津軽平野ならではの資源を掘り起こし、流域住民に多くの恵みと繁栄をもたらしている岩木川。100周年の節目に当たり、さまざまな記念事業も検討されている。改修事業の意義と効果を改めて振り返り、地域のさらなる発展を期す機会としたい。

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加藤謙一の事績・通底する「教育者」の視点

2018/1/3 水曜日

 

 手塚治虫、藤子不二雄、長谷川町子、石ノ森章太郎…、昭和を代表する漫画家たちが人気を博したり、デビューしたりするきっかけに携わり、「名編集長」と称された加藤謙一(1896~1975年)は弘前市の出身だ。漫画家ばかりではない。佐藤紅緑(同市出身)や吉川英治といった当時の一流作家たちの助力も得て、戦前は「少年倶楽部」、戦後は「漫画少年」を人気雑誌に育て上げた。馬場のぼる(三戸町出身)、はがまさお(弘前市出身)といった本県ゆかりの漫画家も「漫画少年」に連載している。
 現代の雑誌、漫画文化の礎を築いたとされながら今では知る人が多いとは言えない加藤の事績は、郷里にある弘前市立郷土文学館で12日から開かれる企画展で再び脚光を浴びることになる。前述の漫画家たちの作品を読んで育った世代はもちろん、現代の子どもたちにも親しみやすい内容となるだろう。開催を機に事績の背景、すなわち加藤を突き動かしたものにも目を向けたい。
 子どもたちにとって「面白くてためになる」雑誌作りを目指す加藤の姿勢は、戦前・戦後を問わず一貫していた。ギャグ漫画や劇画が流行し時代の動向に合わなくなっても、子どもたちへ「良質な作品を届ける」ことにこだわり続けたという。加藤の四男で国立公文書館館長の丈夫さんは、「謙一の頑(かたく)なともいえる信念の原点は、津軽人らしい芯の強さ(じょっぱり)」と評する。
 同文学館企画研究専門官の櫛引洋一さんは、加藤の姿勢に「教育者の視点」を指摘する。加藤は上京して雑誌編集の職に就くまでは、弘前の富田尋常小学校(現在の大成小学校)で教壇に立ち、学級雑誌作りに情熱を注いでいた。
 加藤の視線は読者ばかりでなく、投稿される漫画作品とその作者にも注がれていた。力作には丁寧な感想を送り、漫画家を目指す若者たちにとって「漫画少年」はプロになるための登竜門と位置付けられていたという。ここにも人と作品を育てる姿勢が見て取れる。
 こうした姿勢は、立場は違えど、同様の教員生活を経て、「人間が存在する教材」としての膨大な著作を通じて子どもたちにメッセージを送り続けた田舎館村出身の児童文学作家鈴木喜代春(1925~2016年)にも通じる。
 藤子、石ノ森ら「漫画少年」投稿組を含む若手漫画家らが入居し、切磋琢磨(せっさたくま)しながら日本を代表する存在に育っていった舞台として有名なアパート「トキワ荘」(東京都豊島区)。その「伝説」の始まりとなる手塚の入居には、加藤の次男で「手塚番」だった宏泰さんが関わっていたとされる。トキワ荘の建物は、豊島区でマンガ・アニメミュージアムとして復元が計画されている。加藤ともゆかりのあるトキワ荘。オープンを契機に、弘前との連携・交流があってもいい。

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2018年に思う「戌にふさわしい実りの年に」

2018/1/1 月曜日

 

 2018年の年が明けた。今冬は雪の訪れが早かった。北国津軽の住人にとっては、日々の暮らしの一部として心に、体に根付く雪との共存の日々が続く。この冬があるからこそ、春の訪れを存分におう歌することができる。今年一年が温かくも平和な年になるよう、祈りながら日々を過ごしていきたい。
 昨年は、激動の年だった。緊迫する東アジアの国際情勢を背景に、北朝鮮が弾道ミサイルを相次いで発射。核実験も強行した。本県にとっても無縁なものではなく弾道ミサイルは2度、本県上空を通過、3度目は西海岸沖に落下した。天から降るものは、雪や雨などで十分だ。国際社会の毅然(きぜん)とした対応で、この一年こそは平和で安全な年を取り戻したい。
 国内に目を転じると、新たな選挙区割り制度の導入後、初となる衆議院選挙が行われた。選挙は自民党が圧勝したが、政権側には首相周辺に生じたさまざまな疑惑が火種として残り、野党は場当たり的な離合集散を繰り返した結果、政権選択の受け皿たるを得ていない。国民の政治不信を払拭(ふっしょく)させるに、政治に携わる者に覚悟が求められる。
 津軽地方においても今年は、弘前市や黒石市、五所川原市、平川市などで首長選挙が予定される。地域のリーダーを決める重要な選挙だ。有権者も自身と地域の未来を託す一票となる。候補者の政策・主張をよく吟味し、最良の選択をしたい。
 地方には、ようやく景気回復の波が到達したのだろうか。有効求人倍率など各種経済指標には好反応を示すものがあるが、県民一人ひとりが実感するまでには至っていない。16年産の県産リンゴ販売額が3年連続で1000億円の大台を超え、輸出も好調なリンゴ産業をはじめとする1次産業と、国際空路や大型クルーズ船の充実などを背景に、好調に推移する訪日外国人客(インバウンド)観光を中心とした観光産業が青森県を引っ張っていくことになるだろう。
 本格的な人口減少社会が到来する中、昨年末に発表された本県の平均寿命は、男性が1975年から9回連続、女性は00年から4回連続で全国最下位という不本意な結果となった。ただ、大幅な改善が見られた項目もある。県民にはこれまで以上に長生きするための施策を積極的に進め、併せて交流人口の増加や移住対策を効果的に行い、住みよく活力ある青森づくりにさらにまい進したい。
 今年の干支(えと)・戌(いぬ)という漢字には「戈(ほこ)」という字が入っている。作物を刈り取りひとまとめに締めくくることを表しているという。さまざまな課題が山積する中で地方の自立をどのように果たしていくのか。これまで種をまき、芽を吹かせ、育ててきたものが私たちの未来にどのように役立っていくのか、良き物なりとなるよう、今年一年を励みの年としたい。

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人口減少対策「多様な暮らしができる青森へ」

2017/12/31 日曜日

 

 若年層や子育て世代の地方移住が増えているようだ。首都圏における本県の移住相談窓口「青森暮らしサポートセンター」が今年度上半期(4~9月末)に窓口で受け付けた新規の相談者は49組で、前年度同時期の25組に比べて倍増した。相談者の約7割が20~40代だという。
 退職後の第二の人生というイメージもある地方移住だが、最近は地方創生の流れもあり、現役世代の動きが目立つ。弘前市が昨年、東京都内に開設した「ひろさき移住サポートセンター東京事務所」でも相談者の半数以上が20~30代で、結婚や子育て、転職などを契機に移住を検討する人が多いとしており、この傾向を裏付ける。他県でも状況は同じだとか。
 人口減少が加速する中、担い手不足に悩む地方の自治体にとっては歓迎すべき流れだが、その分競争は激化している。相談窓口の設置はもちろん、現役世代なら当然気になる就労支援の仕組み、住まいのサポートや子育て支援策などはむしろあって当たり前で、差別化にはならないだろう。移住希望者を引き付けるには他にはない取り組みが必要だ。移住対策に限らず、全国的な課題である人口減少の抑制にどう取り組むのか、2018年も各自治体の知恵と工夫が問われる。
 18年は県基本計画の最終年度。県は引き続き地域で魅力ある仕事と多様な雇用を生み出して、「経済を回す」仕組みづくりや各産業分野で顕在化する労働力不足への対応、2025年の超高齢化時代を見据えた県民の生活機能の確保・提供体制の構築に力を入れるとしている。
 特に、多様な仕事や雇用を生み出し、いろんな生き方にチャレンジできる土台づくりに力を入れる構え。県民の生き方の選択肢を増やすことはもちろんだが、就職や進学を契機に県外に出ていった若者が地元に戻って活躍できる環境づくりにもつながる。「攻めの農林水産業」の推進は農業で暮らしていけるようにし、新規就農を促す側面もあり、今年110人の創業をサポートした起業・創業支援拠点の強化も狙いは同じだ。こうした取り組みを通じて本県で暮らしてみたい、暮らしていけると思える人が増え、多様な人が暮らす青森県につながればいい。
 本県の推計人口は直近の11月1日現在で合計127万7949人(男60万252人、女67万7697人)。今年1月1日の129万1206人と比べると、11カ月間で約1万3000人余減った。
 急激な減少を少しでも抑制する取り組みは重要だが、避けられない流れであることも確か。人口減少下の社会の在り方についても考える時期なのだと思う。
 中でも農林漁業を中心に建設、製造、医療・福祉など各産業の将来像をどう描くのかは重要な課題だ。労働力人口の確保や省力化・効率化による生産性向上に向けた取り組みは既に始まっているが、18年もこうした動きを注視したい。

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新幹線台車亀裂「早期の原因究明と対策を」

2017/12/30 土曜日

 

 東海道・山陽新幹線を走るN700系車両の台車に亀裂が入っていたことが判明し、運輸安全委員会は事故につながる恐れがあったとして、新幹線では初の重大インシデントに認定した。世界に誇る新幹線技術が揺らぎかねず、安全性への信頼も失墜しかねない問題であり、原因の究明と対策が急務である。
 JR西日本によると、問題の台車は今月11日午後5時3分ごろ、名古屋駅で運転を中止した博多発東京行き「のぞみ34号」の13号車で使用されていた。異音や焦げたような臭いが発生していたため、名古屋駅で床下を点検したところ、鉄製台車枠の車軸を固定する部分1カ所に亀裂が見つかったほか、モーターと車軸をつなぐ歯車箱で油が漏れていた。
 始発前の点検では異常はなく、亀裂などはその後に発生したとみられる。JR西が同じ車両メーカーで同時期に製造された台車の緊急点検もしたところ、異常はなかったとしている。
 ところが1週間後の19日、JR西は亀裂の長さが台車の枠の底部から両側面にわたる計44センチに達していたと発表した。全周の3分の2にわたり、ほぼ破断寸前の状態だった上、車軸が台車枠を支える部分の近くで発生しており、破断していれば脱線に至った可能性があった。
 年末年始のこの時期、多くの国民が新幹線を利用し故郷へ、またはレジャーへと向かう。問題の台車を製造したメーカーはJR各社の新幹線車両も手掛けており、早期の安全確認が求められる。保守点検に問題があったのか、それとも設計や製造過程に問題があるのか、メーカーを含めて原因を究明する必要がある。
 さらに今回の問題では、乗務員や乗客が異臭や異音に気づき、途中で乗り込んだ保守担当者が指令所に点検を提案したが、通信が重なり指令員が十分聞き取れず停止しなかったことも判明した。
 複数の要因が重なったものの、一歩間違えば脱線事故につながりかねなかっただけに、JR西の来島達夫社長は20日の記者会見で「少なくとも異音や異臭がした段階では止めてもらえればよかった」と話した。
 その会見では、2005年に乗客106人と運転士が死亡した福知山線脱線事故で誓った「安全最優先」の教訓が生かされなかったのでは、との指摘も相次いだ。来島社長は「12年前の誓いが社員で実践実行できるように、組織を挙げて努力する」と厳しい表情を見せた。
 最近、首都圏の鉄道ではトラブルが頻発し、運休する事態が相次いでいる。原因は施設の老朽化、保守点検の際の作業ミスなどさまざまだが、安全に対する意識が低下していないか不安である。
 改めて交通事業者には全社挙げての安全意識の徹底を求めたい。また、再発防止に向けた点検や保守計画の見直しも検討すべきである。

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