社 説

 

景観重要建造物「経済振興のためにも必要だ」

2019/6/5 水曜日

 

 街歩きは今や観光振興に欠かせない要素となっている。弘前市内を見ても近年は県外客はもちろん、外国人観光客も街並みを眺めながら散策を楽しんでいるようだ。
 最近の観光客は国内外を問わず、あらかじめ現地の情報をよく調べているとみられ、地元の住民でも詳しくは知らないような建造物を興味深そうに眺め、写真に収めている。
 このような様子を目にすると、地元に価値ある建造物が残されていることを外部からやって来た人たちから逆に教えられ、将来にわたって保存に努め、次世代に引き継いでいかなければならないという思いを抱く。
 弘前市は景観法に基づき、外観の優れた建造物を「景観重要建造物」に指定しており、5月にも土手町の老舗和菓子店「開雲堂」を15件目として指定した。店舗は火災の際に延焼を防ぐため外壁に銅板を張った看板建築だ。
 関東大震災後の東京を中心に普及した建築様式が地方に伝わった事例としても価値が高いという。土手町を通ればいつでも目にする店舗だけに、建築様式まで気にすることはなかったが、説明を聞けばその価値が理解できる。
 市は2012年10月に6件、14年2月に8件を指定。これらには日本近代建築の礎を築いた前川國男(1905~86年)の実作第1号で、国の登録有形文化財に指定されている「木村産業研究所」、弘前市庁舎、市民会館、旧第八師団長官舎(弘前市長公舎)などが含まれる。
 指定された建造物は外観がもちろん魅力なのだが、その機能を十分に発揮して観光客の受け入れに大きな役割を果たしているものもある。
 指定されている建造物の一つで、140年の歴史を持つ老舗旅館「石場旅館」では2004年ごろから外国人宿泊客が増え続け、今では一年を通じて世界各地から訪れているという。
 この人気はどこからくるのか。純和風の旅館外観や内装、昔から変わらない「日本式」のもてなしが好評を得ているらしく、外国人だからといって特別なサービスはしていないという。旅館関係者は「外国人は日本らしい文化の中での滞在を求めている。古い街並みや景観を残す工夫が必要」と指摘する。
 こうした事例を見れば、趣のある建造物の保存に努め、後世に伝えていくことは地元の経済振興にとっても必要な取り組みであることは間違いない。われわれはこの点を強く認識すべきであろう。
 これまでに指定された建造物以外にも価値あるものはあるはずだ。それらの価値を再確認し、保存に向けた機運を高めていくのは、地元に住むわれわれの務めであろう。まずは歩いて街を知らなければならない。自分たちが住む街について謙虚に勉強していきたい。

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知事選「5選の重み認識し、まい進を」

2019/6/4 火曜日

 

 任期満了に伴う知事選は2日、投開票が行われ、現職三村申吾氏が県政史上初の5選を果たした。新人の佐原若子氏に20万票以上の大差をつけて当選。4期16年の実績をどう評価するのかが今回の知事選の主な争点だったが、結果を見れば有権者は現在の各種政策に一定の評価を下し、県政の継続を選択したと言える。
 三村氏には県民のこうした思いを受け止め、人口減少抑制や担い手不足対策、平均寿命の延伸など、積み残されている県政の課題に引き続き取り組み、何らかの道筋を示してもらいたい。一朝一夕には解決が難しい分野があることは確かだが、5期20年ともなれば成果が求められる。県民から5期目の県政を託された責任は極めて重い。政治家としての知名度がなく、まったくの新人だった佐原氏が約10万票を獲得したことも、有権者の思いとして真摯(しんし)に受け止めるべきだろう。
 選挙戦で繰り返してきた、暮らして良かったという青森県を県民が実感できるよう、これまで以上に尽力してほしい。
 気になるのは投票率の低さだ。辛うじて過去最低は免れたものの40・08%と低迷。過去2番目の低投票率となり、約6割の有権者が棄権した。両陣営が懸念していたように、5割を切る投票率では十分に信任されたと言えないのでは、という声が上がるのも当然だろう。
 ただ今回の選挙戦は自民党県連と公明党が推薦し、知名度で勝る三村氏と、選挙初挑戦で、野党系の市民団体が擁立した佐原氏の一騎打ち。佐原氏は告示まで1カ月を切ってからの出馬表明で、知名度不足に加え、野党各党の対応も一枚岩ではなく、三村氏の5選は想定できる状況にあった。現県政の刷新か継続かという点を除けば、争点も見えづらく、選挙戦は盛り上がりを欠いたと言える。
 そんな中での低投票率は積極的に支持しようという層も、三村氏にあえてノーを突き付けなければという層も、どちらも少なかったのでは、という推測が成り立つ。県政に対する関心が薄いとも言えよう。いずれにしろ今後4年間の県政を託す知事を選ぶ選挙で、投票率4割はやはり低すぎる。県政にもっと関心を持ってもらうよう知恵を絞る必要がある。
 低投票率の傾向は今後も続くことだろう。候補者や政党が努力すべきことは言うまでもないが、選挙の仕組みそのものを検討することも必要だ。若年層や高齢者が、それぞれ投票しやすく、投票する候補者を選ぶための情報を入手できるような仕組みづくりについて、真剣に考える時期に来ているのではないか。
 統一地方選、知事選と選挙が続く本県だが、夏には参院選が控え、衆参ダブル選もささやかれる。現在のところ、参院選は与野党一騎打ちの構図が濃厚だ。日々の暮らしを少しでもより良いものにするために、政策を比較し、選択して投票するという権利をぜひ行使したい。

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インバウンド対策「黒石市の新規取り組みに期待」

2019/6/1 土曜日

 

 黒石市は八甲田エリアのスキー客をはじめとした外国人観光客(インバウンド)の受け入れ体制強化を図ろうと、今年度、新たな事業に取り組んでいく。「インバウンド観光推進」と「黒石温泉郷誘客促進」の二つの事業がその柱で、インバウンド―では、英語圏の国際交流員を8月をめどに任用。観光課内に開設予定のインバウンド受け入れ相談窓口で対応に当たってもらうほか、外国人目線でのインターネット交流サイト(SNS)による情報発信、市内の受け入れ体制と国外へのPRを強化する。黒石温泉郷―は、同温泉郷が資金不足などにより施設改修が困難で、後継者不足にも陥っていることから、民間事業者が自立して持続可能な運営ができるような地域商社設立の可能性調査を実施。ブランド構築や長期滞在プログラムの造成などにも着手する。
 黒石市は、よく「青森県のへそ」に例えられる。津軽と南部の結節点と言える場所にあり、弘前市や八甲田連峰、十和田湖など、本県を代表する観光地へのアクセスも比較的、容易だ。市内に目を向けても実に観光資源は多い。藩政時代から続く、情緒豊かな街並み「こみせ通り」をはじめとした歴史ある市街地は、人を引きつける。郊外に目を向けても中野もみじ山の紅葉は、県内外から多くの観光客が訪れる。
 そして、何と言っても魅力的なのが、昔ながらの湯治場の雰囲気を今に残す温泉郷の存在だろう。食の分野でも、もはや全国区と言っていい知名度を得たB級グルメ「黒石つゆ焼きそば」や老舗蔵元の手による地酒、レタス、トマトなどの高冷地野菜の数々は人気があり、リピーターも多い。
 名物、名産、景勝地が多く、観光資源に恵まれた黒石市だが、そのポテンシャルを生かし切れているかと言えば、課題もあるだろう。今回の新規事業は、その課題の一つである情報発信力を強化し、温泉郷のブランディングを進めて、インバウンドの誘客を目指すというものだ。インバウンドは、そのリピーター層が東京や京都といった大都市圏の観光から、地方都市へと目線を変えてきていると言われる。
 黒石市によると、年間の市内インバウンド宿泊者数は、2016年(2~12月)の1530人に対し、18年(1~12月)は2253人。黒石観光案内所へのインバウンド立ち寄り人数は、16年度(7月~翌3月)153人に対し、18年度(4月~翌3月)504人と、いずれも増加傾向にある。「インバウンドの流れが地方都市に」という傾向が数字の上からも裏付けられているのではないか。
 本県にとって好ましい状況であり、この好機を逃さず、情報発信力を強化して代表的な観光資源のブランド化を図ろうという黒石市の取り組みを今後も注視していきたい。

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あじバス運賃無料化「運転免許証自主返納促進に期待」

2019/5/31 金曜日

 

 鯵ケ沢町が路線バスとスクールバスを一本化し2017年春から運行開始した「あじバス」について、同町地域公共交通会議が、運転免許証を自主返納した上で運転経歴証明書を取得した高齢者の町民を対象に運賃を無料化することを承認した。東北運輸局への届け出を経て、7月16日から開始する予定だ。近年、高齢ドライバーが絡んだ交通事故が全国的に多発しているだけに、高齢者の免許証自主返納を促す取り組みとして注目していきたい。
 担当の町政策推進課によると、今年2月下旬に町交通安全母の会と町議から、前述の条件に該当する高齢者を対象にあじバスを無料としてほしい―との要望があったほか、今年の町議会3月定例会でも無料化実施について質問があり、理事者側は「関係各位と協議し前向きに検討したい」と回答していた。
 県警がまとめた運転免許自主返納者支援事業の協賛店一覧表(2018年11月作成)のうち、「自治体・バス」の項目を見る限り、免許証自主返納者を対象としたバス関連の支援事業には、金額の上限を定めたバス切符やバスカード、回数券の交付、購入費助成といった事業はあるものの、路線バス乗車を無料とする内容は見られず、鯵ケ沢町の取り組みは県内初となる可能性がある。
 あじバスはもともと、町営スクールバスと民間の路線バスのルートや時間帯が重複していた状態を改め、一本化することで財政負担を軽減しようと協議を重ね実現にこぎ着けた経緯がある。財政負担の軽減化を図りつつも、民間路線バス運行時よりも路線数、停留所数を増やし、町民の要望に添う形で運行してきた。その結果、路線バスとしての利用者数は17年度が2万2339人、18年度は2万7092人と利用者数を伸ばしてきた。
 今回の免許証自主返納者に対する運賃無料化もまさに利用者の声に応えたものであり、同じくコミュニティバスや路線バスを運行する自治体や民間事業者から、モデルケースとして関心を集めそうだ。一方で対象は町民に限られるため、町民以外にも観光客らが乗車するバスでは、運転手が円滑に運転経歴証明書を確認するための対応など課題は残る。こうした点も含め、無料化スタート後は何が課題なのかを確認し、さらにサービス向上を図ってもらいたい。
 公共交通会議では、無料化と併せてJR鯵ケ沢駅を発着地点とする「市街地巡回線」の実証運行を7月16日から11月15日までの83日間にわたり実施することも承認した。鯵ケ沢病院や海の駅わんどなど公共・商業施設へのアクセス向上はもちろん、21年度竣工(しゅんこう)予定の町役場新庁舎へのアクセス便という意味合いもある。需要が高ければ将来的に本格運行に入る考えといい、住民の利便性をより高めていくものとしてほしい。

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強制不妊“違憲”「それでも国は“免責”の疑問」

2019/5/30 木曜日

 

 障害者らに対して本人の同意なしに不妊手術を行えることなどを定めた旧優生保護法の規定を憲法違反とする初めての司法判断が示された。
 不妊手術を強制された女性2人が、国を相手取り損害賠償を求めた訴訟の判決で、仙台地裁(中島基至裁判長)は「(子を産み育てる)幸福の可能性を一方的に奪い去り、個人の尊厳を踏みにじるもの」「何人にとっても、性と生殖に関する権利を奪うことが許されない」などとし、旧法の規定が憲法13条(個人の尊重と幸福追求権の保障)に違反し、無効―とした。全国7地裁で係争中の同様の訴訟で、今回が最初の判決に当たる。
 確かに賠償請求自体は退けられた。請求権が20年で消滅すると定めた民法の「除斥期間」を経過したこと、国会が救済に向けた立法措置を講じなかった「立法不作為」も「必要不可欠であることが明白だったとは言えない」などが理由だ。だが、違憲判断は重く、判決で除斥期間の在り方に注文を付けた点自体には注目したい。国は名目上勝訴したが、実質は直ちに講じるべき課題を突き付けられたと受け止めるべきだろう。
 判決では「憲法13条に照らし、(性と生殖に関する権利の)侵害に基づく賠償請求権を行使する機会を確保する必要性が極めて高い」と提言した。特別の規定を設ければ、除斥期間の適用を除外できることを踏まえたものだ。
 旧法は1948年に議員立法で制定されてから、差別的な規定を撤廃した「母体保護法」に改正される96年まで存続し、障害者への差別と偏見は根強く残った。加えて、手術を受けたことを立証するための証拠収集が困難だったことを踏まえれば、被害者が声を上げ、損害賠償を求めることが困難だったことは想像に難くない。その点を考慮した上での提言であろう。
 判決でそこまで触れていながら、除斥期間の適用を「憲法違反とは言えない」と結論付けたのは、首尾一貫していないように映る。被害者は最後の最後で、はしごを外されたようなものだ。
 加えて残念なのは、国会の立法不作為も「違法の評価を受けるものではない」としたことだ。性と生殖に関する権利の「法的議論の蓄積」が少なく、司法判断が今まで示されてこなかった経緯を理由に挙げたが、旧法の問題は70年代から議論され、国は少なくとも80年代には改正の必要性を認識していた―との指摘もある。そもそも、差別と偏見が根強く残ったことも、議論の蓄積が少なかったのも、国や国会の不作為が一因ではないか。
 強制不妊救済法は4月に施行されたが、支給される一時金の額や、おわびの主体が明記されていない点など疑問や批判は多い。今後の司法判断も踏まえ、一体的に議論する必要がありそうだ。

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