社 説

 

エネルギー計画「冷静に議論できる環境整備を」

2021/5/27 木曜日

 

 中長期のエネルギー政策の指針となる次期基本計画は来月中にも決定する。作業が大詰めを迎えるのに合わせ、自民党内では原子力発電所の建て替え(リプレース)や新増設を求める動きが相次ぎ、党内外から批判を集めている。温室ガスゼロを目指す道のりにあって適切な電源構成はどうあるべきか、冷静な議論が必要だ。
 菅義偉首相が昨年10月、「2050年までに温室ガスの排出を全体としてゼロにする」と宣言してから半年余り。温室ガスゼロ社会を実現するため再生可能エネルギー(再エネ)の導入拡大は急務だ。
 大企業にも温室ガスの排出削減を経営目標に掲げる動きが広がっており、環境分野への積極的な投資が技術革新を促すことを期待する声は高まっている。官民一体でこの土壌を構築しようとする政府のグリーン成長戦略は“コロナ後”の経済対策の柱になるだろう。
 18年に策定された現行のエネルギー計画は、30年度の電源構成目標を火力56%、再エネ22~24%、原発20~22%としている。経産省は新たな計画で再エネを3割台後半に引き上げる一方、火力は4割程度に縮小し、原発は引き続き2割程度とすることを検討している。
 再エネの割合が飛躍的に伸びない要因として、太陽光や風力は季節や自然条件に左右されやすく、安定供給の面で不安を残すからだ。太陽光は設置場所が限られるため国は洋上風力に力を入れ始めたが、実用化には時間がかかる。
 火力は事業環境の悪化で休廃止が相次ぎ、再エネの拡大には時間を要する状況を踏まえ、自民党では“原発復権”とも受け取れる動きが相次いでいる。
 自民党の総合エネルギー戦略調査会は25日、経済産業部会との合同会議でエネルギー基本計画に向けた提言案を決めた。提言案では「原子力は重要な技術的に確立した脱炭素電源として最大限活用」としたほか、「建て替え(リプレース)・新増設を可能とするために必要な対策を講じる」と踏み込んだ。
 同党では24日にも「2050年カーボンニュートラル実現推進本部」(本部長・二階俊博幹事長)が原発の早期再稼働、新増設やリプレースを求める緊急決議をまとめたばかりだ。
 一方、経産省は今夏の電力需給について安定供給に必要な供給力は辛うじて確保できるものの、今冬は東京電力管内で確保できない見通しだと発表した。一番の要因は火力の休廃止だという。
 再エネの拡大には新たな送電設備の整備や各家庭の負担増といったリスクも伴う。国民が安心して日常生活を送るため、政府・自民党はそれぞれの電源が抱える課題を分かりやすく説明し、冷静に議論できるよう環境整備に努めるべきだ。

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弘前市の接種通知遅れ「“市民目線”を忘れたのか」

2021/5/26 水曜日

 

 弘前市が、新型コロナウイルスワクチンを接種できる医療機関一覧などを掲載した通知を、80歳以上の市民にスケジュール通りに発送していなかったことが明らかになった。感染拡大が深刻化する中、「命を守る切り札」とされるワクチンに関する業務の不手際は許しがたい。市には猛省を求めたい。
 市は、高齢者のワクチン接種の開始時期や対応する医療機関一覧などを掲載した通知を、年齢の高い順に段階的に発送する方針を示し、80歳以上には今月19日からの予定だった。しかし、掲載する医療機関数が変更され、一覧を刷り直すことになり、委託業者から17日に納入日に間に合わないとの連絡が市側にあったという。
 業務のスケジュールが変更されることは市役所に限らず、しばしばある。問題は、納入日に間に合わないとの連絡が入った後、速やかに市民に対して説明しなかった点だ。しかも、業者からの連絡については、市担当部署の職員ら数人でしか情報を共有せず、市長や担当部長にもすぐに報告していなかったという。もはや、組織の体を成していないと言わざるを得ない。
 市には通知が届かない市民から問い合わせが寄せられていたが、市側は順次発送する旨を伝えるだけだったという。これは「説明不足」という域を超え、「欺いた」と言われても仕方がないのではなかろうか。
 弘前市では、今年3月の市議会定例会予算決算常任委員会で弘南鉄道大鰐線中央弘前駅前広場整備をめぐり、市側が不正確な答弁をしていたほか、同月には2020年度介護保険特別会計関連での積算ミスが判明するなど、市職員による事務処理ミスが相次いで発覚している。
 相次ぐ不祥事について、鎌田雅人副市長は今月12日の市長定例会見で「チェック体制が形骸化している。職員間の連携が希薄になっていることが原因ではないか」との見解を示していた。ワクチン接種の通知発送の遅れは、皮肉にも副市長の見解を裏付けた格好だ。
 いずれの業務も不手際はあってはならず、発生を防ぐためのチェックは常時行われなければならない。新型コロナ禍の収束が見えない中、市民の最大の関心事の一つであるワクチンに関する業務であれば、なおさらだろう。担当職員らは、自らの責務についてどう認識していたのだろうか。
 桜田宏市長は就任当初から「市民目線の市政」を掲げ、機会あるごとにその方針を強調してきた。しかし、今回の通知発送の遅れなどを見ると、「市民目線」は忘れられてしまったのではないか、と疑わざるを得ない。市長は発送の遅れを公表した会見で「市役所という組織全体で反省すべきこと」と語った。言葉通りに今回の不祥事を検証し、市民の信頼回復に努めてほしい。

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前川建築初の重文「木村産業研究所の価値再認識」

2021/5/25 火曜日

 

 建築家・前川國男が手掛けた木村産業研究所建物(弘前市在府町)が、国重要文化財に指定される。前川が師事したモダニズム建築の巨匠ル・コルビュジエが示した「モダニズム建築の概念」を体現する日本最初期の建物として、その歴史的な価値の高さが評価された。
 研究所は前川の第1作で、前川が設計した建物では初めての重文指定という。2004年には「モダニズム建築の特徴がよく現れている」として国登録有形文化財に指定されており、地元に残る財産が改めて評価されたことを喜びたい。研究所をはじめ同市内の他の前川建築も脚光を浴びる機会になればいい。
 同研究所は地場産業の振興を目指して設立され、建物は財団設立翌年の1932年に竣工(しゅんこう)した。現在は研究所の事業から生まれた弘前こぎん研究所が入居し、数々の優れたこぎん刺し作品を生み出し、刺し手を多数輩出している。
 研究所は決して威容を誇る性格の外観ではなく、洗練された存在感を示しながらも周辺に溶け込んでいる。建物のみならず、研究所を拠点とした活動と精神が脈々と受け継がれてきた歴史も再認識したい。
 前川自身は新潟県の出身。後に研究所を創設する木村隆三に請われて建物の設計を引き受け、その後も弘前の公共建築を多く手掛けたが、その背景として前川の母や伯父も弘前にゆかりがあったことはよく知られている。
 研究所建物の洗練された魅力は今も色あせないが、大学卒業後に渡仏しコルビュジエに学んだ若き日の前川が、帰国後に研究所の設計を通じてその成果を世に問うた過程も、一つのドラマとして魅力的だ。研究所設立を構想した実業家で木村の祖父静幽の存在も重要で、弘前の近代産業史の一断面はドラマのもう一つの重要な軸となりそうだ。技術的理由で前川が工夫を強いられた部分も、日本ならではの近代建築を模索する過程の貴重な痕跡となろう。
 研究所に限らないが、重文に指定されただけでは真の意味での保存・活用にはならない。財産としていかに守り、価値を伝えていくかは所有者・管理者だけにとどまらず、地元の住民もその責を負う。
 研究所建物では、凍害で損傷し長らく撤去されていた正面バルコニーが、市民団体「前川國男の建物を大切にする会」の募金活動と市の補助により2013年に復元された。「近代建築ツーリズムネットワーク」では前川建築を文化交流拠点として利活用している国内9自治体が近代建築の観光資源化促進に取り組んでいる。
 建物に寄せる発注者と設計者、それを守り活用してきた人々それぞれの思い入れが物語に紡ぎ出されれば、財産への新たな関心と大切にする心を呼び起こすきっかけになるかもしれない。

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県内コロナ拡大「危機的状況脱却へ事前の策を」

2021/5/22 土曜日

 

 弘前保健所管内を中心に新型コロナウイルス新規感染者が高水準で推移している。弘前管内では20日に過去最多となる42人の新規感染を確認、21日は11人だが約半数の感染経路が分かっていない。県全体で見ても急拡大の様相を呈しており、三村申吾知事は同日、今後の状況次第で、まん延防止等重点措置の適用要請に向けて検討する可能性があるとの見方を示した。
 弘前管内の直近1週間の新規感染者数は、15日2人、16日1人、17日17人、18日10人、19日3人、20日42人、21日11人。増減はあるが、平均すると1日当たり12人ほどの感染が確認されたことになる。県全体では20日に過去2番目に多い66人、21日は29人だった。
 緊急事態宣言が発令されている都内では、窓に「医療は限界」「オリンピックむり」などと掲示し、窮状を訴える病院があるなど医療体制が逼迫(ひっぱく)しており、感染しても入院できずに自宅などで亡くなるケースもある。1年前に航空自衛隊の「ブルーインパルス」が都心上空から医療従事者に敬意と謝意を示すなど、各地でエールを送る活動が展開されてきたが、国民の思いに応えようと奮闘する現場の“声”は切実だ。
 医療崩壊にひんしているのは宣言、重点措置の対象地域だけではない。本県では健生病院(弘前市)は11あるコロナ病床すべてで入院患者を受け入れている。昨年は軽症・無症状患者も入院できたが、現在はすべて中等症で、ほとんどが人工呼吸器を使用しているという。担当医は管内の現状を「感染経路不明があちこちで見つかり、市中感染の様相が強まっている」「(コロナ患者が)これ以上増えると、地域の医療機関で受け入れられなくなる」とみる。西北五地域でも、つがる総合病院(五所川原市)が満床に近づき、急を要さない治療を制限する可能性に理解を求めた。
 最近の感染状況や医療提供体制に影響が出始めていることから、三村知事は「新たな段階に突入し始めている」とした。重点措置の適用については「直ちに実施すべき状況ではない」としながらも、ぎりぎりの段階との認識で、感染拡大が続く場合の重点措置適用要請を示唆した。
 ただ、病気は新型コロナだけではなく、症状の重さを基準に治療や手術を受けられないというのは本来あってはならない。現場の状況を見ると、医師が急を要さないと判断した患者の手術などを控えざるを得ないことに理解はできる。ただ、急を要さないとされた患者のつらさや不安が和らぐことはない。こうした患者のことを考えると、本県でも医療崩壊が始まっていると受け止めていいのではないだろうか。県も国も、悪化を待って対応するのではなく、そうならないように事前の策を講じなければ、この危機的状況から脱することはない。

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災害への備え「各種手段生かし万全に」

2021/5/21 金曜日

 

 災害が起きた時の避難を促すため、弘前市は防災行政無線アプリの運用を開始した。専用のアプリをダウンロードすることで自身のスマートフォンからリアルタイムに防災行政無線の避難情報などの音声が自動的に流れる仕組みだ。サービスの運用は東北初となる。
 市によると、防災行政無線は2013~15年度の3カ年で市内に131基が整備された。さらに防災無線の確認用電話を開設し、無線で流れた内容を再度聞くことができるサービスを展開しているが、住宅の気密性が高まっているほか、大雨などの際は聞こえにくいなど、無線の聞こえ方は地域や気象条件などによって差があるのが実情だ。実際、試験放送などの際には「内容が聞き取れない」「屋内では聞こえなかった」といった問い合わせが市に寄せられるケースが多いという。
 今回のアプリはそうした課題を解決してくれるものとなる。市が防災行政無線で放送する避難情報のほか、緊急地震速報、特別警報、噴火警報といった気象情報、全国瞬時警報システム(Jアラート)による緊急情報が自動的に最大音量で流れるため、自身のスマホが行政防災無線のスピーカーの役割を果たす。受信した音声放送は履歴として保存されるため、何度でも聞き直すことが可能で、より迅速な避難行動につながりそうだ。市民はもちろん、例えば、市内に住む高齢の両親のために市外の家族が活用することも可能だ。
 近年は地球温暖化の影響で異常気象が目立ち、昨年も梅雨前線が長期間滞在したことなどによる記録的な豪雨による被害が全国的にみられた。逃げ遅れで被災する人も多数いる状況から、住民への避難情報を分かりやすくするため、20日施行された改正災害対策基本法により災害時に市町村が発令する「避難勧告」が廃止され、「避難指示」に一本化された。
 今年の梅雨入りは、九州から東海にかけては気象庁の統計開始以来1、2位の早さとなっており、平年より3週間ほど早い。梅雨前線の影響で、西・東日本では20日、地域によって激しい雨となり、同庁は土砂災害や河川の増水、低地の浸水に警戒するよう呼び掛けた。今年は例年に比べて早い梅雨入りとなっているため、まだ5月だからと油断することなく早めの防災への備えを促している。
 本県も間もなく梅雨の時期を迎えるため大雨への備えは欠かせない。また、地震や秋にかけての台風シーズンなど、さまざまな災害への備えが重要だ。その一つとして、弘前市が運用を開始したアプリは有効な手段となるだろう。また、市内のコミュニティーラジオ放送局でも避難情報や災害情報を緊急告知するラジオの運用を開始している。自分に合った手段を活用しながら、災害への備えを万全にしたい。

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