社 説

 

コロナとうがい薬「推奨にはまだ課題も多い」

2020/8/7 金曜日

 

 吉村洋文大阪府知事と松井一郎大阪市長は4日の記者会見で、新型コロナウイルスの患者が殺菌消毒効果を持つ成分「ポビドンヨード」を含むうがい薬でうがいをしたところ、唾液からウイルス陽性反応の出る頻度が低下したとする研究結果を発表。特に▽発熱など風邪に似た症状のある人とその同居家族▽接待を伴う飲食店の従業員▽医療従事者や介護従事者―に向けて、うがいの励行を呼び掛けた。
 ポビドンヨードは、ムンディファーマが販売するうがい薬「イソジン」などに含まれている成分で、大阪はびきの医療センターが軽症者41人を対象に調査。記者会見の内容が報じられると、弘前市を含む全国のドラッグストアなどで、軒並み品切れとなった。同成分入りのうがい薬は医薬品に当たり無許可販売は法律で禁じられているが、インターネット上では転売も相次ぎ、オークションサイトやフリーマーケットアプリの運営元が対応に乗り出した。
 吉村氏の「ポビドンヨードによるうがい薬でコロナに打ち勝てるのではないか」といった発言の力強さも、感染に恐々としている人々に響いただろう。吉村氏はこうした事態を受け、5日の記者会見で「予防効果があるということは一切ないし、そういうことも言っていない」と釈明した。
 うがい薬自体、新型コロナのあおりで品薄傾向だったと聞く。再び店頭に並ぶまでは時間がかかりそうだ。
 同センターの研究結果は「ポビドンヨードを使うとコロナウイルスの舌の上での増殖が抑制されることが分かった」(厚生労働省)段階。厚労省は「現時点で効果があるというには時期尚早ではないか」、日本医師会は「現時点ではエビデンス(証拠)が不足している」などと冷静な対応を求めた。調査患者の少なさも指摘されている。
 現時点では、新型コロナ感染拡大の抑制に一定の効果が期待できると言えるかもしれないが、専門家は「新型コロナに効果があるかどうかは、今後の臨床研究を経て初めて認められる」として、自分の判断で使うのは慎むよう求めている。感染者が自身の陽性状態を隠す道具として悪用しないかといった懸念もある。
 医学的には「時期尚早」「証拠不足」が妥当な見解なのだろう。確かに吉村氏の姿勢は勇み足かもしれない。ただ、厚労省などの対応には、どこか当事者意識が希薄に感じられる。こうした研究は同省主導で行われても良さそうなものだ。それともこの研究自体、価値が低いと見なされているのだろうか。
 いずれにしても、この種のうがい薬を使用していることを理由に、手洗いやせきエチケット、「3密」を避けるといった通常の感染予防対策をおろそかにしてはいけないことは言うまでもない。

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75回目の原爆忌「被爆者、被爆地の声を世界に」

2020/8/6 木曜日

 

 米軍による世界初の原爆投下から6日で75年。被爆地・広島市の平和記念公園では市主催の「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」(平和記念式典)が開かれ、犠牲者に祈りをささげ、平和を誓う。新型コロナウイルス対策のため参列者を減らし、合唱などを取りやめる。高校生4人の「被爆ピアノ」演奏と歌唱にとどめ、出席を予定していた国連のグテレス事務総長もビデオ映像によるあいさつに変更した。節目の式典ではあるが、大幅な規模縮小を強いられた。
 わが国は広島と長崎で掛け替えのない多くの命を失い、原爆がいかに悲惨な状況しかもたらさないものかを知る、世界で唯一の国である。あの悲劇から75年となる節目は「ヒロシマ」「ナガサキ」から平和の大切さを世界へ発信する絶好の機会である。
 国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会の専門家パネルがまとめた中間報告書は、北朝鮮が自国の弾道ミサイルに搭載できる核兵器の小型化を「恐らく」実現したと指摘、「高濃縮ウランの生産や実験用軽水炉建設の継続を含め、核計画を続けている」と分析した。日本の防衛白書も「核兵器の小型化・弾頭化の実現に至っているとみられる」と同様の見方をしている。非核化への第一歩と期待を抱かせた2018年の米朝首脳会談は、北朝鮮にとっては、もはや“なかったこと”になっているのかもしれない。
 日本は「非核三原則」により核兵器は保有していない一方で、核兵器禁止条約には賛同していない。すぐ近くにある核の脅威に対する自衛手段が同盟国・米国の「核の傘」であるためだ。ただ、自衛のための必要最小限度の防衛力しか保持せず、攻撃的兵器を保有しない「平和国家」だと教育を受ける子どもたちは、条約反対や検討中の他国領域内への打撃力保持に疑問を抱くのではないだろうか。
 75年というと30年ほど前の日本人男性の平均寿命に相当する長い年月である。しかし、被爆者は今も苦しみの中にいる。先月、健康被害を受けたのに被爆者健康手帳などの交付申請が却下された広島県内の84人が、却下は違法として県と市に取り消しを求めた「黒い雨」訴訟の判決があり、広島地裁は原告全員の黒い雨による被爆を認めた。ただ、これで終結ではない。原告団・弁護団は控訴見送りを求めて今も闘っている。
 原爆忌に当たり、松井一実広島市長は平和宣言で、各国為政者に国家間の連帯と、核廃絶への取り組み継続を呼び掛ける予定。日本政府に対しては、被爆者の思いを誠実に受け止め、条約締結国になるよう求める。核兵器のない世界を創造できるのは、被爆者の苦しみを知るわが国以外にない。新型コロナで縮小とはなるが、被爆者の声や被爆地のメッセージを、特に核兵器を保有する国々にしっかり届けたい。

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再処理合格「サイクルの是非 議論を」

2020/8/5 水曜日

 

 日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)が原子力規制委員会の安全審査に正式合格した。核燃料サイクル政策の主要施設だが、政策そのものが行き詰まっているとの指摘もある。サイクルを維持するのか、改めて議論が必要だ。
 原発で使い終わった核燃料からウランとプルトニウムを取り出し、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料などの形で核燃料に再生し、繰り返し発電に使うのがサイクル計画だ。
 当初は取り出したプルトニウムを高速増殖炉で使う計画だったが、原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)が事故を起こして廃炉となり、現在は既存の原発でMOX燃料を使うプルサーマル発電に軸足を移している。
 プルサーマルはいわば“1周目”だ。しかし使い終わったMOX燃料を再処理する“2周目”は研究段階で、具体的な「第2再処理工場」の計画もない。当初のサイクル構想は崩れ去っている。
 政府は使用済み燃料の体積が再処理によって4分の1に減り、半減期も8000年まで短縮できると説明するが、使用済みMOXは再処理しなければごみであり、その有害度は再処理前の3~5倍とされる。結果的に有害度の高いごみを作るだけだとの指摘もある。
 また、海外に再処理を委託し発生したプルトニウム45・7トンも問題だ。核兵器の原料となるだけに国際監視の目は厳しい。電気事業連合会は現在4基にとどまっているプルサーマルを16~18基で行えば、保有分に加え再処理で発生する分も消費できるとしている。
 しかし原発の再稼働は進んでおらず、現在の保有分も消費できるか不透明だ。つまり再処理してプルトニウムを取り出すことは、余剰プルトニウムの保有につながる可能性が高い。
 一方、再処理工場の総工費は約14兆円。原子力発電のコストは1キロワットアワー当たり10・1円以上で、うち再処理費用は1・5円。これらは電気料金に上乗せされ国民の負担となる。
 核のごみの最終処分場も議論が進んでいない。最終処分法に基づき設立された原子力発電環境整備機構は各地での対話集会などを通じて候補地を募っているが、入り口の文献調査に名乗り出る自治体は皆無だ。安全協定では六ケ所村の高レベル放射性廃棄物の一時貯蔵施設は受け入れから30~50年で搬出することを定めており、残る時間は少ない。
 再処理工場を動かすリスクも当然ある。事業者の日本原燃はトラブルを繰り返し、原子力規制委員会からその技術的能力について厳しい指摘を受けている。一方で国内の再処理技術を維持するため稼働の必要性を訴える意見もある。
 いずれにしても今回の合格で社会の関心は高まっている。サイクル政策を維持するのか否か、議論する機会である。

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渋滞解消「着実な対策の推進を」

2020/8/4 火曜日

 

 国や県、市町村の道路管理者らが集まり、交通渋滞を緩和・解消しようという取り組みが本県でも進められている。2012年度に関係者で県渋滞対策推進協議会が組織され、158カ所が主要渋滞箇所として公表された。毎年、公表箇所の状況確認や対応の検討を行っているが、公表から7年が経過し、対策によって渋滞が解消した箇所も出てきている。
 津軽地方では弘前市高崎2丁目の交差点が幅員を2車線から4車線に増やし、右折レーンを設けるなどの対策を行った結果、渋滞が解消したとして昨年度、渋滞箇所から解除された。五所川原市の広田団地前交差点も五所川原西バイパスの整備により交通量が分散し、渋滞が見られないとして、今年度解除が決まった。
 同事業では対策を講じただけでなく、その後のモニタリングで渋滞解消が確認されて初めて、主要渋滞箇所からの解除が決まる。現在、主要渋滞箇所として残っているのは147カ所。このうち23カ所は対策が完了し、解除を検討する段階に入っており、64カ所でハード・ソフト対策を実施中、7カ所で対策を検討中となっている。対策未実施は53カ所だ。
 今年度、検討に着手した箇所として、弘前市の津賀野交差点が挙がっている。同市の北の入り口に位置しており、市内への通勤や物流、観光ルートとしても交通量の多い場所。特に平日朝のピーク時やさくらまつり期間中の休日などは右折車両が直進車両まで滞留し、直進車両がスムーズに進まないことで渋滞が発生している。渋滞に起因する追突事故や無理に進行する右折車の事故も少なくない。
 現在、右折レーンを延伸するか、増設するかの2案が浮上している。ただ実態調査では右折渋滞の長さは最大で約160メートルに及び、既設の75メートルの右折レーンを延伸する場合は桜の木の伐採が伴う。右折レーンを現在の1車線から2車線に増やす場合は右折した先の県道も2車線にする必要があり、今後、関係者で検討するという。津賀野の桜並木は地域活性化に活用したいという住民の意向もあって「つかの桜街道」と名付けられて親しまれてきた。事業の際には地元の意向確認と、丁寧な説明が欠かせないだろう。
 新型コロナウイルスで県内でも在宅勤務や時差出勤が行われたことを受け、渋滞緩和策としてテレワークなどが有効かどうかの検証もスタートするという。コロナの流行前は一般企業での時差出勤やテレワークの導入はあまり現実的ではなかったが、コロナが沈静化しない現状では対応可能な企業も増えているだろう。ハード事業だけでなく、ソフト対策も含め、多彩な選択肢を検討してほしい。
 これまで対策が未実施だった53カ所についても、今年度は各自治体に優先度や対策案を照会し、積極的に対策を講じていくという。国、県、市町村でしっかりと連携し、着実に対策を進めてほしい。

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学生ボランティア「コロナ禍の今こそ促進したい」

2020/8/1 土曜日

 

 弘前大学地域創生本部ボランティアセンターが、学生ボランティアの状況を可視化できるようポイント制度を導入するという。学生のボランティアへの参加を促すことなどが狙いという。ボランティアに対するニーズがさまざまな分野で高まっている中、参加者の増加につながることを期待したい。
 李永俊センター長によると、ボランティアに関心を持つ学生は一定数いるが、実際の活動には必ずしも結び付いていないのが現状という。今回導入したポイント制度は、このような状況を打開することを狙ったもの。学生は1時間活動するごとに1ポイントを付与され、在学中に100ポイント以上を獲得すると表彰される仕組みだ。
 ポイントによって学生がどのくらいボランティアに携わっているか一目で分かるため、本人のモチベーション向上につながることを期待しているほか、就職活動でのアピール効果にもつなげたい考えという。ボランティアは無償で行うからこそボランティアであるのだが、あえてそこにポイントを付与するという発想が面白い。
 そこまでして、弘大が学生のボランティアを促進したい理由があるはずだ。同センターはポイント制度を導入した狙いの一つとして、学生がボランティアを通じて地域の課題を解決する能力を高めることを挙げていた。この点がまさに真の狙いなのではないだろうか。
 大学の最大の存在意義は多様な人材を育成できることだ。もちろん、大学は学内のカリキュラムに沿って学生を育てることを基本としている。しかし、ボランティアを通じてしか学べないこともたくさんあるだろう。だからこそ、弘大には地域創生本部ボランティアセンターがあるのではないか。
 ただ、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、ボランティアもさまざま制限を受けるようになっている。しかし、同時に新たな形も生み出されている。同センターは東日本大震災以降、岩手県の野田村を支援し続けており、先日はビデオ会議システム「Zoom」を使って同村と弘前市をつなぎ、交流会を開いた。これも新たな形のボランティアだ。
 同センターに登録する学生たちはこれまでもさまざまなボランティアに取り組み、地域社会に貢献してきた。若者たちの発想は柔軟で斬新だ。その柔軟さと斬新さは社会がコロナ禍に苦しむ今こそ、多くの人たちに求められていることなのではないだろうか。
 同センターが導入したポイント制度が契機となり、学生たちがこれまで以上にボランティアに熱心に取り組むようになることを期待したい。学生にボランティアを促進する狙いが課題解決能力の向上にあるとすれば、社会がコロナ禍に苦しむ今こそ大いに促進すべきではないか。

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