社 説

 

高校の存廃「地域の実情に配慮した議論を」

2019/12/5 木曜日

 

 県教委がまとめた、今年度卒業を予定している中学生の進路志望状況に関する第1次調査(11月12日現在)によると、深浦町にある木造高校深浦校舎の入学希望者数は募集人員40人に対し、わずか12人だった。深浦校舎は県立高校再編に関する第1期実施計画(2018~22年度)で、通学困難地域に配慮し条件付き存続としていた「地域校」の一つ。19年度の入学者数が募集定員の2分の1(20人)に達しておらず、これが2年連続となった時は21年度からの募集停止に向けて協議を進めることになる。
 第2次調査は今月11日に実施、来年1月9日に結果が明らかになる。仮に募集停止となれば、深浦校舎の場合「町から高校が消える」と言うよりは、その地勢的状況から見て「地域から高校がなくなる」に等しい。協議となった時は同町で学ぶ意欲がある生徒のことをどう考えていくのか、十分に話し合ってほしい。
 第1次調査の結果によると、高校への進学志望者は1万667人。全生徒に対する進学志望者の割合は99・2%と、1975年度の調査開始以来、過去最高値に並んだ。県立高校全日制課程の志望倍率は1・05倍(前年同期比0・02ポイント減)で過去最低となったが、私立は0・41倍(同0・02ポイント増)で過去最高だった。その中にあって、主に郡部にある普通高校の倍率は依然厳しいものがある。五所川原工業高校との統合のため、21年に募集停止する金木、板柳、鶴田の3校は募集人員の半数にも至らず、鯵ケ沢、浪岡各校も同様の状況だ。
 深浦校舎は、前身の深浦高校から生徒数減を背景に07年度に校舎化。弘前大学が地元住民らと共に取り組んだ円覚寺の古典籍保存調査プロジェクトに参加するなど、地域に根差した活動に力を注いできたが、志望者数の減少に歯止めがかからない状態が続いていた。
 深浦校舎がある深浦町にとって、高校通学をめぐる環境は厳しい。海岸線が南北約80キロに及ぶ地勢であり、南部にある岩崎地区の生徒の中には、県境を越えて秋田県北部の高校に進学するケースが少なくない。残る選択肢は地元の深浦校舎か、津軽地方の他の高校に遠距離通学するか、下宿先から通学するかだ。深浦校舎を選択肢としない場合、生徒はもとより保護者にとっても負担は大きいが、そうせざるを得ない環境にある。
 高校の統廃合が始まった十数年前から言われていることだが、生徒数が少ない現状では、多くの同級生との切磋琢磨(せっさたくま)、活発な部活動といった環境が望めないだけに、募集停止や高校統廃合にはやむを得ない側面もある。
 ただ市部から遠い地域で統廃合について協議する場合、生徒の通学環境整備や保護者の負担を考慮する必要がある。地域の実情に配慮し、当事者の理解を得られるよう議論を進めてほしい。

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ながら運転罰則強化「ドライバーは重責の自覚を」

2019/12/4 水曜日

 

 スマートフォン(スマホ)や携帯電話を使いながら自動車を運転する、いわゆる「ながら運転」に関する道交法などの罰則が大幅に強化された。
 運転中にこれら(カーナビ、タブレット端末を含む)の画面に見入ったり、手に持ったまま通話したりする行為の反則金は、普通車の場合1万8000円で、改正前の3倍に。違反点数は車種を問わず1点から3点に引き上げられた。
 事故を起こしたり事故を起こしかねない危険を生じさせたりした場合は、これまで反則金で済んでいたケースも刑事罰の対象に加えられた。この場合の罰則も「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」と重くなっている。違反点数は6点で、「一発免停」となる。
 ながら運転に起因する交通事故は増加傾向にあり、死亡事故や負傷者多数の事故もたびたび起きている。愛知県一宮市で2016年、下校途中だった男子児童が、スマホでゲームをしていた運転手のトラックにはねられ死亡した事故は記憶に新しい。
 警察庁の資料によると、スマホなどの使用に起因する交通事故は18年に2790件あり、5年前(13年)の1・4倍に上る。2790件のうち、死亡事故は42件。死亡事故の割合1・51%は、使用していなかった場合の約2・1倍と高い。厳罰化は安全な交通環境を確保する観点から当然と言える。
 運転中にかかってきた急ぎの電話につい出てしまったり、地図検索サービスで目的地までの経路を確認しながら運転した経験のあるドライバーは少なからずいるだろう。
 時速60キロで走行中の自動車は、2秒間で約33メートルも進んでいる。スマホの操作に気を取られたり、画像に見入ったりして前方の確認がおろそかになったわずかな時間に、先行車両や歩行者に近づいている可能性がある。
 「ちょっと見るぐらいなら大丈夫」「自分は事故を起こさない」といった過信が事故を引き起こしかねないことを、ドライバーはいま一度胸に刻んだ上でハンドルを握るべきだろう。初めは少々面倒かもしれないが、安全な場所に停車してから使用することを習慣付けたい。
 今回の罰則強化の対象は大型車から原動機付き自転車までだが、自転車に乗っている時の使用も危険である。
 イヤホンを着け、スマホの画面を見ながら自転車を運転する学生や若者はしばしば目にするところだ。自動車だけでなく、自転車のながら運転でも衝突した歩行者が死亡する事案があったことを忘れてはいけない。道交法では既に、自転車を運転しながらスマホを使用する行為自体が禁止され罰則も設けられている。
 歩きながらのスマホ使用も含め、こうしたながら行為が、加害者にも被害者にもなり得ることを自覚したい。

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福島第1廃炉「政府と東電は不断の努力を」

2019/12/3 火曜日

 

 政府は2日、東京電力福島第1原発の廃炉作業の工程表の改定案を示した。事故で溶け落ちた原子炉建屋内の核燃料(デブリ)取り出しを2号機から着手すると明記し、廃炉完了まで「30~40年」とする工程の大枠は変えない。一方、廃炉までにはデブリ取り出し技術の確立、処理水の処分、跡地の管理、地域の復興など課題は山積する。国や東京電力には不断の努力が求められるが、国民も関心を持ち続けたい。
 工程表の改定は5回目。1~6号機の使用済み燃料プールにある核燃料の搬出は、2031年までの完了を目標とした。
 2号機からのデブリ取り出しは、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)が今年9月、作業現場の線量や原子炉内部の調査が最も進んでいることを踏まえて提言していた。
 工程表によると、格納容器に通じる開口部からアーム型の装置を投入。吸引などの方法でデブリを取り出して容器に移し、構内の設備で保管する。サンプルの採取を21年に実施する。
 しかし東電の調査で確認されたデブリは1~3号機で形状が異なるほか、格納容器底部の水中にあったり、上部にとどまったりと状況も違う。それぞれの状況に即した技術の確立が必要となる。
 2号機はもちろん1、3号機のデブリ取り出しを工程通り進めるため、国は研究支援事業の継続と、支援対象を増やすべく予算拡充を図るべきだ。
 増え続ける処理水の処分も難題だ。東電は放射性物質トリチウムを含む処理水のタンクが22年夏ごろに限界を迎えるとの見通しを示している。処理水の処分方法を検討する政府の小委員会は「海洋放出」への反対意見を踏まえ、保管を継続する検討を始めたが、東電は否定的な考えを示している。
 政府は取り出したデブリを専用容器に入れ、敷地内で保管する計画を検討している。東電も1~3号機に残された使用済み核燃料を取り出し、敷地内で保管する予定だ。
 東電は、処理水のタンク保管を続ければ、これら保管施設の建設に遅れなどの悪影響が出ると主張している。
 原発跡地を更地にするのかどうかも未定だ。東電の責任者は地元住民も交えて合意形成に努める考えを示すが、跡地の問題は地域の復興計画と密接に絡む。
 復興庁の有識者会議は、福島県浜通り地方に廃炉や第1次産業を研究テーマとした国立の研究所新設を検討している。ただ、どのような計画であれ地元理解は欠かせない。
 今後30年超続くプロジェクトだけに、政府と東電は山積する課題の解決に向けた不断の努力と、地元理解を得るべく情報発信を心掛けるべきだ。国民はそれらが守られているか、注視してほしい。

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冬季大会受け入れ「語り継がれる“完全大会”に」

2019/11/30 土曜日

 

 本県開催を要請されている2025年の第80回国民スポーツ大会(現国民体育大会)について、県は夏季大会(本大会)に加え、冬季大会も受け入れる方針を示した。夏(秋)冬季大会を同県開催する完全国体は、1977年に本県で開かれた「あすなろ国体」が初めて。国内最大の総合スポーツ大会が再度、本県で完全大会として開かれるのは喜ばしい。
 10月31日に日本スポーツ協会から要請を受けた県が、冬季大会の会場候補地である県内外5市町や競技団体などの意向を確認した上で、内諾を受けたという。県国民スポーツ大会準備室によると、候補5市町はスケート、アイスホッケーが八戸、三沢、南部の各市町、スキーはアルペンと距離が大鰐町、純飛躍と複合が秋田県鹿角市となっている。
 スケートに関しては屋内スケート場「YSアリーナ八戸」が9月にオープン。10月には五輪メダリストも出場した全日本距離別選手権を開催するなど、日本を代表するリンクに数えられる。一方、スキーのアルペン、距離は国体や全国高校大会(インターハイ)などの全国大会に加え、2003年に第5回青森アジア冬季競技大会を開催した大鰐温泉スキー場がある。それぞれ大規模大会を経験しており、競技環境は問題ないだろう。
 気になったのは完全大会としながら、純飛躍と複合が鹿角市となる点。大鰐温泉スキー場の滝ノ沢シャンツェはアジア大会のためにリフトを新設し、07年には全日本学生選手権大会も開かれた。10年の国際競技規則改正により、16年のインターハイ開催時にも改修している。歴史と実績を有す会場であり、完全大会とするなら全競技の県内実施としたいが、かなわないようだ。
 かつての国体は開催地に「国体道路」が整備されるほどの一大イベントだった。時は流れ、近年は自治体が財政的理由などから開催地受け入れを拒否するケースもあり、第59回大会で開催地・埼玉県は、ボランティアを活用した開会式としたり、次回開催県とボートなどを共同購入したりと経費圧縮を徹底した。
 純飛躍、複合を大鰐開催できないのは、付帯設備の老朽化などが理由。開催地が国体簡素化などに取り組む近年の流れを見ると、本当の意味での完全大会とは言えないかもしれない一部競技の県外開催も理解できる。
 28日の県議会一般質問で三村申吾知事は「健康づくり、地域活性化、子どもたちに夢や希望を与える」と冬季大会の受け入れ理由を説明し「関係市町や競技団体などと連携して準備を進める」と述べた。本県開催は県民がさまざまな競技と身近に接することができる絶好の機会。大会成功はもちろん、鹿角市と一体となって新たな開催地モデルとして後世に語り継がれるような、創意工夫の詰まった“完全大会”としたい。

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食品の輸出「地方から積極的な売り込みを」

2019/11/29 金曜日

 

 これまで輸出の実績がない中小の食品メーカーに海外から熱い視線が送られている。昨今は中小の食品メーカーの販路拡大を後押ししようと大規模な商談会も開催されている。本県の企業にも積極的に輸出に取り組むことを期待したい。
 海外での日本食ブームは衰えるどころか、勢いを増すばかり。日本の食料品の輸出額は、2013年から4年連続で過去最高を更新し続け、16年は7502億円に達した。農水省は19年に1兆円にする目標を掲げている。
 日本は海外の農業大国に比べて土地が狭いため、農業のコスト削減が容易ではない。その結果、生産物も割高となる。それでも、高い品質は各国の富裕層を中心に人気を集めており、日本食レストランも増加し続けている。
 このような好機を生かさない手はないと、国内の関係機関や国も支援に乗り出している。17年から首都圏で開かれている「“日本の食品”輸出EXPO」はその一つ。今年も今月27日に開幕し、29日まで開かれている。会場には80カ国から1万8000人のバイヤーらが訪れる規模だ。
 国内食品メーカーの支援策といえば、これまでは海外の商談会に連れていくといったケースが目立っていた。しかし、資金力などに乏しい中小メーカーにとってはハードルが高く、十分な成果を得られているとは言い難かった。そこで、海外のバイヤーらを逆に招くEXPOが開催されるようになった。
 さらに、開幕前日の26日にはEXPOに参加する海外のバイヤーを全国19都市に招いて小規模の商談会を開催。弘前市の会場にもポーランド、ベトナム、中国、米国のバイヤー計5人が訪れ、県内の21社と商談を重ねた。
 会場に設けられたブースでは活発な商談が行われ、地方の商品に対するバイヤーの関心の高さをうかがわせた。関係者によると、ポーランドなどEU(欧州連合)圏の国が地方の商談会に参加することは今のところ珍しいといい、参加した地元企業にとって貴重な機会だったのではないか。
 ポーランドは本県と同様、リンゴ生産で知られており、国民もリンゴを好んで食べるという。来場し、津軽地方の工場で製造されたリンゴのワインを試飲した同国のバイヤーは、共通した食文化を持っていることは販路を開拓する上で有効との認識を示していた。
 地方にある中小食品メーカーの商品へのニーズは確実にあるようだ。企業の規模にかかわりなく、優れた商品を生み出せば、まっとうな評価を受けることができるのだ。経済のグローバル化がますます進む今、自社の製品に自信を持ち、より積極的に売り込むべきだろう。「良いものは良い」。理解してくれる人たちは世界にたくさんいる。

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