社 説

 

KYB改ざん問題「揺らぐ『メードインジャパン』」

2018/10/20 土曜日

 

 東証1部上場の油圧機器メーカーKYBの免震・制振装置の検査データ改ざん問題で、同社は19日に記者会見し、改ざんの有無を確認中のものを含む987件のうち、所有者などの了解が得られた70件を公表した。公表されたのは農林水産省が入る合同庁舎や自治体庁舎など公的施設で、本県の消防本部・八戸消防署八戸消防防災拠点施設新築本棟工事(八戸市)も含まれている。
 不正があったのは地震の際に建物の揺れを抑える「オイルダンパー」と呼ばれる装置。同社と子会社のカヤバシステムマシナリーが性能検査で国の基準や顧客が求めた基準を外れた装置のデータを書き換え、適合品として出荷していた。
 公表された70件は、18日時点で所有者の了解を得たもの。国の基準を満たさない「不適合」は八戸市の消防本部や愛知県本庁舎など11件。「お客様基準外」は17件で、残る42件は「不明」。
 免震用オイルダンパーは国基準値の15%以内と定められるが、改ざんされた中には最大42・3%もかけ離れたものがあった。第三者機関による構造計算では、こうした装置を使用しても震度7程度では倒壊などの危険はなく、過度な不安は不用という。ただ、だからといって問題がないというものではない。
 公表分には東日本大震災被災地の防災施設もあった。震災後も熊本県や北海道などで大地震を経験しているにもかかわらず、安全確保に関わる装置のデータを改ざんするとは許されない。同社によると、15年間に及ぶ不正が確認された。震災後も熊本や北海道などで大地震が発生しているのを知りながら不正を続けた同社に、怒りが向けられるのは当然。
 会見で同社は陳謝した。しかし、同社製ダンパーが使われた施設を有する自治体が同社に問い合わせた際「折り返し連絡します」と言われたきりで、何の情報も得られなかったようだ。住民の安全のために耐震対策した自治体への対応としては実に不誠実である。
 2015年に東洋ゴム工業、約1年前には神戸製鋼所でデータ改ざん、その後も日産自動車などで検査不正が発覚。そして、追い打ちを掛けるKYBのデータ改ざん。資源に乏しいわが国を経済大国にしたのは、高い技術力などで築いた「メードインジャパン」の信頼感。それが一連の不正で危機的状況に陥った。
 幸い東京スカイツリーのダンパーについては設計・施工会社が「異常なし」と結論付けたが、公表されたのは全体のわずか7%にとどまる。東京五輪を控えており、訪日客らが競技場をはじめ、宿泊施設や商業施設などに不信感を抱かないとは言い切れない。KYBの責任の所在を明らかにし、企業体質を改善するのはもちろん、国も災害時の都市機能や日本製品に対する信頼の維持などで懸念される風評被害の回避策を急ぐ必要がある。

∆ページの先頭へ

ムツニシキの復活「デビュー初年が勝負の年」

2018/10/19 金曜日

 

 全国的に米の消費が伸び悩む中、各地でブランド米を開発する動きが加速している。本県でも初めての特A米「青天の霹靂(へきれき)」が売り出されるなど、全国の米どころが消費者を取り込もうと、しのぎを削っている。
 そうした中、他のブランド米とは異なったアプローチで消費拡大を狙っている米がある。すしに適した米「寿司(すし)専米」として、11月にデビューする「ムツニシキ」がそれだ。
 ムツニシキは旧県農業試験場藤坂支場(十和田市)が良食味品種として開発。1971~98年の県の奨励品種だったが、多収が求められた当時の生産者ニーズなどと合わなかったことから普及には至らなかった。その一方で、北海道などではすし米として人気を博した。
 それから時が流れたが、黒石市が、農家の所得アップ策の一つとして、すし米として評価を得ていたムツニシキに着目。2015年度から試験栽培を進めた。地域の若手農家グループ「南黒おこめクラブ」が栽培に協力し、県すし業生活衛生同業組合が取り扱いに名乗りを上げるなど取り組みが進み、復活の運びとなった。
 デビューは11月1日の全国寿司の日に合わせて行われ、ムツニシキは県内の25店舗で味わうことができる。本格デビューに合わせ、14日には黒石市内で復活お披露目会が開かれ、同組合のすし職人たちが握ったすしを来場者が堪能した。
 試食した人からは「甘くて優しい味がする」「全国に通用する味」など高評価の声が聞かれ、デビューに向け上々のスタートを切った。すしのプロから見て「冷めても食感が硬くならず、甘みがある」という特性を持つムツニシキは、さまざまなネタを生かす、まさにすしに適した「寿司専米」と言えるだろう。
 米そのものの魅力に加え、ムツニシキが持つ「物語性」「話題性」もブランド化へ向け、大きな武器となるだろう。流通ルートから一度は外れた「幻の米」が地域の熱意によって復活を遂げる―というムツニシキ復活の軌跡は、話題性が十分にある。最近のブランド食材の多くが味などの品質に加え、こうした物語性を有しており、それが消費者から評判を呼んでいることを考えれば、ムツニシキの成功も大いに期待できるのではないか。
 県産米という点もムツニシキの価値を高めてくれる。地元産品やその土地の珍しい物を食べたいという観光客の嗜好(しこう)にもマッチするし、例えば、県産魚介類のネタと合わせた「オール県産食材」のすしという売り出し方も可能だろう。
 「寿司専米」と間口を絞ることで、ムツニシキは、その特徴やアピールポイントが明確になり、販売戦略が立てやすくなった感がある。ブランド化の成否はデビュー初年に懸かっている。普及に向けた取り組みが加速することを期待する。

∆ページの先頭へ

男女参画プラン「多様性のある社会の実現へ」

2018/10/18 木曜日

 

 弘前市男女共同参画プラン懇話会が、市から諮問を受けていた次期市男女共同参画プランの策定について答申した。次期プランは2018~22年度を計画期間としており、答申を踏まえて市が今年度内に策定する予定となっている。
 17年度に市が実施した地域経営アンケートによると、「男は仕事、女は家庭」とする固定的性別役割分担意識について「同感する」と回答したのは全体の5・4%にとどまり、「同感しない」は半数以上の54・5%。「どちらともいえない」は37・0%となった。
 全体的には固定的性別役割分担意識に同感しない回答となったが、年齢別で見ると、この問いに若者世代ほど「同感しない」と答える割合が高かった。70歳以上で39・3%、40~49歳で57・8%、16~19歳で70・2%と、年代別による意識の変化が見られた。
 次期プラン案の基本理念は「一人ひとりが互いを尊重し合い心豊かに暮らせるまち弘前」。基本目標として(1)すべての人が活躍できる社会の実現に向けて(2)すべての人が安心して暮らせる社会の実現に向けて(3)男女共同参画社会の実現に向けて―を掲げた。
 すべてとは、女性の活躍推進に限定せず、従来の「男性的」役割を強いられている男性、高齢者、障害者、子ども、単身世代、貧困家庭、外国人などあらゆる立場の人々を対象にするという意味だ。
 今回はLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クエスチョニング)と呼ばれる性的マイノリティーについても新たに記述。首都圏に比べると保守的傾向にある地方都市で、行政が性的マイノリティーの存在を可視化し、権利擁護の必要性を明記したことは意義深いと言えよう。
 男女共同参画とは、女性の権利を拡大して男性の権利を縮小することではなく、あらゆる生きにくさを抱える人々に光を当て、社会の固定観念、慣習、抑圧を和らげることにより、人々が生きやすくなる社会を目指す取り組みだ。社会の枠組みを変えるには、人々の意識そのものを変える必要があるだけに、前進させるには時間を要することになる。
 市の地域経営アンケートで、固定的性別役割分担意識に関して高齢世代と若者世代に変化が見られたように、人々を生きづらくする「こうあらねばならない」とする固定観念は、着実に変化しつつある。ただ欧米諸国に比べると、変化の速度はより緩やかと言わざるを得ないだろう。
 「こうあらねばならない」という固定観念は他者のみならず、自分自身の可能性を縛ってしまいかねず、互いを尊重し合い、助け合おうとする多様な共生社会の推進をも阻害しかねない。次期プラン策定を機に、より多様性を尊重する社会へと発展することを期待したい。

∆ページの先頭へ

大山古墳調査「世界遺産登録、機運醸成へ」

2018/10/17 水曜日

 

 巨大な前方後円墳として知られ、宮内庁が「仁徳天皇陵」として管理する大山古墳(堺市、面積約46万4000平方メートル)について、同庁は15日、保全を目的に墳丘を取り囲む二つの堤のうち、内側の第1堤の掘削調査を、堺市と共同で今月下旬から行うと発表した。陸墓への立ち入りや調査はこれまで制限されてきた経緯があるだけに、どのような成果が出てくるのか結果が待たれる。また同古墳は、政府が世界文化遺産に推薦することを決定した「百舌鳥・古市古墳群」を構成する一つ。三内丸山遺跡(青森市)など本県を含む4道県の縄文遺跡で構成する「北海道・北東北の縄文遺跡群」も7月、6度にわたる挑戦が結実し、同遺産推薦候補に決まったばかり。年代こそ異なっていても、歴史ある遺跡を持つという共通点を持つ立場の本県としても、今回の発表は興味深いところだろう。
 大山古墳はクフ王のピラミッド(エジプト)、秦の始皇帝陵(中国)と並ぶ世界三大墳墓の一つとされる。地元堺市の観光コンベンション協会ホームページによると、5世紀ごろに約20年かけて築造されたとみられ、全長約486メートルに及ぶ巨大な構造だ。上空から見ると、円と四角を組み合わせた前方後円墳という日本独自の形となっている。立ち入りと調査が制限されてきたとはいえ、過去には調査が行われた実績もあり、明治期以降は竪穴式石室に収めた石棺や刀剣、甲冑(かっちゅう)、須恵器の甕(かめ)などが見つかっている。
 実施する調査は、堤内の遺構や遺物の残存状況を確認し、今後予定される墳丘の保全工事に向けた基礎資料を収集する目的。遺物確認のために、第1堤を調査するのは初といい、宮内庁担当者も他の陸墓の例から、堤に円筒埴輪(はにわ)列がある可能性が高いとみる。
 調査は今回、選定した3カ所を12月上旬までかけて行うが、その他の区画も合わせると、第1堤全体で数年はかかる見通しという。調査を通じて全体像が明らかになるわけではないが、大山古墳は日本史の教科書にも登場し、国民になじみが深い遺跡だ。調査をきっかけに、古墳時代の歴史ロマンに注目が集まることだろう。
 本県などの縄文遺跡群は世界遺産候補として見れば、百舌鳥・古市古墳群に先を越された形となったが、ようやく後を追う形で世界遺産への道筋が見えてきた。古代の天皇制の在り方と直結する同古墳群とは、成り立ちや性質は異なり、地域的にもかなり距離はあるが、弥生時代を挟んで、縄文時代からどのように文化や暮らし、政治が変遷していったのか―と思いをめぐらすなど、好奇心が刺激されよう。
 共に世界遺産登録という目標に向かう本県側としても、古墳の調査結果に注目しながら縄文遺跡群にも関心を高め、登録に向けた機運醸成につなげたい。

∆ページの先頭へ

消費増税表明「影響過小評価せず対策着実に」

2018/10/16 火曜日

 

 安倍晋三首相は、消費税率を予定通り2019年10月に10%へ引き上げると表明した。増税で得た財源を幼児教育・保育の無償化などに充てることから、政府は家計の支援につながるとし、影響は限定されると期待している。しかし、激化する米中の貿易摩擦などによって国内外の経済は見通しづらい状況にある。影響を過小評価することなく、景気対策を着実に進めてもらいたい。
 税率10%への引き上げをめぐっては、15年10月の予定を先送りし、17年4月の予定についても再び先送りしてきた経緯があり、再々延期を疑う声が根強かった。表明の狙いの一つはこうした疑念を払拭(ふっしょく)し、景気腰折れを防ぐための準備などを急ぐことにあった。
 首相は税率引き上げを表明した15日の臨時閣議で、自身の経済政策「アベノミクス」による経済成長、雇用改善といった成果を強調。税率引き上げが政策を推進する上で障害とならないよう準備に万全を期したいとの思いがにじんだ。
 14年4月に税率を8%に引き上げた際、増税前の駆け込み需要の反動減が長引き、政府が目指すデフレ脱却の遅れにつながった。今回はこの経験を教訓に、引き上げ前後の消費を平準化するための施策を十分講じる方針を示した。自動車、住宅への補助や減税を行うほか、中小規模店舗で買い物をキャッシュレス決済した顧客を対象に、増税2%分を公費でポイント還元することを検討し、商店街の活性化策を講じるという。
 ただ、ポイント還元は期間を限ったもので、十分なものと言えるだろうか。税率引き上げに伴って導入される「軽減税率」への対応も大半の中小企業が取り掛かっていない状況だ。これは、複数税率に対応するレジ改修などが大きな負担となっているためで、彼らの経営状況の厳しさがうかがえる。
 アベノミクスの柱である金融緩和を進める日本銀行の黒田東彦総裁は軽減税率の導入などに触れながら、税率引き上げによる負担増は「前回の約3分の1から4分の1」とする試算を紹介し、景気への影響は「極めて小さい」とした一方、米中の貿易摩擦などを念頭に、金融市場の動きを含めたリスクへの警戒を呼び掛けた。
 菅義偉官房長官も臨時閣議後の記者会見で「リーマン・ショックのようなものがない限りは引き上げるということだ」とし、再々延期の余地も残している。
 首相は予定通りの税率引き上げを表明したものの、引き上げられる1年後の経済環境が大きく変化しないという保障はどこにもない。政府には経済環境を見極めつつ、税率引き上げの影響が限定されるのを期待するのではなく、限定的なものとする責任がある。もちろん、引き上げの是非を最後まで見極める冷静な目も持ち続けてもらわなければ困る。

∆ページの先頭へ

Page: 1 2 3 4 5 ... 92

当サイトでは一部、Adobe Flash・PDFファイルを使用しております。閲覧にはAdobe Flash Player・Adobe Acrobat Readerが必要です。最新のプラグインはアドビ社のサイトより無料でダウンロード可能です。

  • Adobe Flash Player ダウンロードセンター
  • Adobe - Adobe Reader ダウンロード