社 説

 

世界文化遺産「縄文遺跡群登録へ万策を」

2018/7/21 土曜日

 

 文化審議会が2020年の世界文化遺産登録を目指す候補に、本県の国特別史跡・三内丸山遺跡などで構成する「北海道・北東北の縄文遺跡群」の推薦を決めた。09年の国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産暫定一覧表掲載から、6度目の挑戦で実を結んだ。ただ、あくまで「候補」になっただけである。登録というゴールまで、越えなければならないハードルが続く。
 これまでの歩みも平たんな道ではなかった。本県と北海道、秋田、岩手両県にある17の資産で構成されるが、文化庁からは4道県に地域を限定する理由を求められた。また、一部資産は保全面での問題が指摘された。
 これら課題に対し、1万年ほど続いた縄文時代を集落の変遷などで切れ目なく説明できるのは、国内では4道県のエリアだけと強調。保全面の問題が指摘された資産は除外し、関連資産に位置付けた。並行して地元の機運を高める取り組みも展開。昨年は三内丸山遺跡の大型竪穴住居で「考古学の授業を聴講する人数」のギネス世界記録を樹立した。
 文化審は今回、「金を中心とする佐渡鉱山の遺跡群」(新潟県)とともに審査。縄文遺跡群を選定した理由を「関係自治体が推薦書案の磨き上げに努めた結果、課題はあるがゴールに一番近い」「ユネスコの評価基準を説明するに当たり、物証や真実性、緩衝地帯が保証されている」と説明した。これまでの関係機関などの努力が評価されたと言える。
 ただ、北東アジアの他文化と比較した場合の優位性、構成遺跡の普遍的価値については抜本的見直しにも言及。ユネスコの諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)から厳しい判断が示されるケースがあり、推薦書の精査を重ね、ユネスコ、イコモスの指摘を反映させる必要があるとした。
 しかも、ユネスコは20年から、各国の推薦枠を一つに制限したため、世界自然遺産への推薦をいったん取り下げた「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島、沖縄両県)と、今年度の1枠を争うことになる。今後、政府内での調整、閣議了解を経て、来年2月1日までに推薦書をユネスコに提出するという。ただ「いつ、どう決めるかは未定」(文化庁)といい、いつまでも推薦候補選定を喜んでいるわけにはいかない。次のハードルは短期決戦の一騎打ちである。推薦を勝ち取るためには、「奄美―」はもちろん、誰もが納得できるよう“完全武装”する必要がある。
 推薦候補選定を発表した文化庁の会見は、「奄美―」が選ばれた場合に来年度の推薦になるのかなどの質問に「まったく決まっていない」を繰り返すなど、不透明感が際立つ内容だった。今年度を逃せば後がないとの危機感を持って臨まねばならぬ関係機関の覚悟が試される。

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リンゴ黒星病「産地一丸で適切な対策を」

2018/7/20 金曜日

 

 津軽地方でリンゴの黒星病が多発している。生産者団体の県りんご協会は、菌密度を低下させるために「産地を挙げた取り組みが必要」とし、生産者に被害果・被害葉の摘み取りと適切な処理、薬剤予防の徹底を呼び掛けている。19日には弘前市内で「県りんご黒星病危機突破大会」を開いて、生産者や関係機関・団体が防除に対する意識統一を図り、それぞれが連携して対策を講じることを決めた。良品生産でブランドイメージを確立している本県産リンゴ。そのブランド力を守るため、産地一丸となった取り組みが求められている。
 黒星病は2年前の2016年産でも津軽地域で多発した。これまで黒星病には薬剤の「EBI剤」が治療や予防に効果があったが、同年の発生は、これらの薬剤が効かない耐性菌によるものとされ、EBI剤は17年産の防除暦から削除されている。
 現段階ではEBI剤に代わる“特効薬”がなく、菌密度をいかに抑えるかが被害拡大防止の鍵となる。予防効果のある薬剤の散布を徹底することや、できる限り被害果や被害葉を摘み取って適切に処理する「耕種的防除」での対処が主となるが、それだけに黒星病防除に対する適切な知識の普及が必要不可欠だ。
 同協会は今月2~4日の3日間、津軽地域20カ所で「りんご黒星病危機突破特別夜間講座」を開いた。黒星病に特化した講座を開くのは初めてという。時宜を得た対応と言えるだろう。
 黒星病は、一般的に気温が高くなると菌の活動が低下するとされており、夏場の果実感染はしないと認識されている。だが、菌密度が高い現状にあっては油断ができない。同協会は「秋までに菌密度を抑えることが重要」としている。生産者にとっては、今しばらく気の抜けない作業が続くが、夏場の園地管理の重要性がさらに増している状況を理解し、今後の作業を進めてもらえればと思う。
 ただ、耕種的防除での対応は、高齢化や慢性的な人手不足が指摘されるようになってきている本県のリンゴ生産現場にとって、大きな負担であることは想像に難くない。やはり効果のある新薬の開発が望まれる。17日には櫻田宏弘前市長ら同地方のリンゴ産地の市町村長が農林水産省を訪れ、防除効果が高く安価な農薬の早期実用化や、人手不足に苦しむ生産現場への支援などを求めた。対応した上月良祐大臣政務官は「農薬についてはメーカーの事情もあるが最大限、急ぎたい。それまでは耕種的防除を地道にやるしかない。ただ、日本のリンゴにとって青森は大産地であり何とかしなければ」と理解を示したという。
 新薬開発や広域・広範な生産者支援は、産地の努力だけでは十分な対応が難しい。日本一のリンゴ産地を守るために国へは積極的な支援を望みたい。

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日欧EPA「ブランド力強化し輸出促進を」

2018/7/19 木曜日

 

 安倍晋三首相と欧州連合(EU)のトゥスク大統領、ユンケル欧州委員長が日EUの経済連携協定(EPA)に署名した。「反保護主義」を訴え、2019年の発効を目指すとしている。制裁合戦が続く米国と中国の「貿易戦争」などを踏まえれば、世界経済にとって署名の意義は非常に大きい。
 協定が発効すれば、人口約6億人、世界の国内総生産(GDP)の3割を占める広域経済圏が実現する。日欧は双方の貿易品目の9割超で関税を撤廃するほか、特許など知的財産の保護をはじめとするルールも整備。ワインやチーズなど欧州産食品は値下がりする見込みで、競合する国産品にも価格低下圧力がかかり、消費者は恩恵を得ることになる。
 ただ、喜んでばかりもいられない。協定発効に伴い農林水産業の生産者らが厳しい競争にさらされることになる。
 政府が昨年末に公表した試算によると、協定発効後の年間の生産減少額は約600億~約1100億円に上る。米国を除いた11カ国による環太平洋連携協定(TPP)の影響を含めると、最大2600億円も減少するといい、生産者にとっては死活問題だ。貿易促進の陰で自国の産業が衰退するのであれば、元も子もない。効果的な国内対策が求められる。
 幸い、EUは日本食への関心が高い地域。国産食品の販路を開拓し、輸出を促すことは十分可能であろう。そのためには現地消費者の信頼獲得が何よりも重要だ。昨今は、欧州で発祥した農産物の国際認証規格「グローバルGAP」を取得する動きが日本国内でも数多く見られる。食品衛生管理の国際標準「HACCP(ハサップ)」なども含め、導入への動きを加速させたい。
 協定発効に伴う負の影響は、とりわけ牛・豚肉や乳製品で大きいとされるが、長期的に見れば、その範囲は広がらないとも限らない。リンゴや米、野菜などを主とする本県でも対策を着実に講じるべきだろう。
 県内では一般生産者だけではなく、貿易自由化がさらに進むであろう将来を見据え、五所川原農林高校のように生徒たちがグローバルGAPについて学び、取得している例もある。卒業後に就農した彼らが県産農産物を積極的に欧州に輸出し、高い評価を得る日が来ることを期待したい。
 協定には、地理的表示(GI)保護制度に基づき双方のブランドを保護する措置が盛り込まれ、日本の対象48産品には、「あおもりカシス」「十三湖産大和しじみ」「小川原湖産大和しじみ」が含まれている。
 これは、本県産品の中にEU市場で高い評価を受けているものがあることを示す何よりの証拠だ。本県農林水産業は臆することなく、「攻め」の姿勢でブランド力を一層磨き、輸出を促進したい。

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介護離職「目標に程遠い実態」

2018/7/18 水曜日

 

 総務省が5年ごとに実施している就業構造基本調査(2017年分)の結果が公表され、同年9月までの過去1年間に介護や看護を理由に離職した人(介護離職者)が全国で9万9100人、本県でも700人いたことが分かった。
 全国の介護離職者数は前回(12年)比2000人減でほぼ横ばい。1年間の離職者全体に占める割合は1・8%で、逆に前回から0・1ポイント増加した。本県も前回から100人減ったが、離職者全体に占める割合は1・6%で前回を0・1ポイント上回った。都道府県別で見ると、割合が高かったのは和歌山(3・3%)、長野(3・2%)、福島と山梨(共に3・0%)など。本県を含む31道府県で前回を上回った。
 調査時点で再び職に就けた介護離職者の割合は24・8%(2万4600人)。前回の17・6%より改善されたが、政府が掲げた「介護離職ゼロ」との乖離(かいり)はいまだに大きい。介護離職者のうち、女性は7万5100人で前回から6100人減ったにせよ、全体の75・8%を占めている実態は、女性の活躍を推進する政府方針に沿った内容とは言えまい。目標実現はまだまだ道半ばと言えそうだ。男性は2万4000人で、前回より4100人増えた。
 仕事に就きながら介護をしている人は、介護をしている人全体の55・2%に当たる346万3200人。男性の65・3%、女性の49・3%がこの状態にある。年齢階級別で見ると、男性は「55~59歳」(87・8%)、女性は「40~49歳」(68・2%)が最も高い。女性は「70歳以上」を除く全階級で前回を上回ったが、男性は「40歳未満」「60~64歳」を除き前回並みか前回を下回った。
 女性を中心に、以前に比べて多少は仕事と介護を並行させやすい環境になったと読めなくもない。しかし、再び職に就けた人の多くが前職並みの収入を得られているだろうか。
 女性は「正規の職員・従業員」の30・7%、「非正規の職員・従業員」(パート、アルバイト、派遣社員など)の32・9%が「週に6日以上」介護に当たっている。男性も正規の20・3%、非正規の29・8%が週6日以上だ。勤務と介護の並行自体、大きな負担を背負うことになるが、特に非正規の場合は介護のスケジュールに勤務形態を合わせているケースが少なからずあるのではなかろうか。
 家族の介護施設入所が待機状態のままとなっている家庭の話をしばしば耳にする。受け入れる施設側も軒並み人手が不足しているという。政府が打ち出している施設整備や介護人材の処遇改善といった対応策が急がれる。一方で、介護は受け入れ側を拡充すれば万事が解決する問題ではない。多様な「家族のかたち」に配慮した、より暮らしやすい仕組みづくりにも配慮してほしい。

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熱中症「対策怠らず夏を乗り切ろう」

2018/7/17 火曜日

 

 県内ではここ数日、厳しい暑さが続いており、弘前市では14日から3日連続で真夏日を記録した。18日までは天気がぐずつき暑さも一服しそうだが、19日以降は高気圧に覆われて晴れる日が多くなる予報。最低、最高気温ともに平年より高くなることが見込まれ、気象台などが熱中症への注意を呼び掛けている。
 急に暑くなった日や、久しぶりに暑い環境で活動したとき、体温調節がうまくいかず熱中症になる人が多くなる。気温がそれほど高くない日でも、湿度が高い日や風の弱い日などは注意が必要だ。予防法としては小まめな水分補給や、屋外では帽子をかぶったり日陰や涼しいところで休憩を取ったりすることなどが挙げられる。汗をかいたときの塩分補給も欠かせない。
 県内では熱中症による救急搬送者が、7月に多くなる傾向が見られる。消防庁によると、県内で昨年6~9月に救急搬送されたのは341人。月別では6月が25人、7月が277人、8月が30人、9月が9人だった。今年は7月2~8日の1週間で、既に22人(速報値)が救急搬送されている。
 昨年は重症者8人で死者はいなかったが、死亡者が出た年もある。決して無理はせず、必要に応じて救急車を呼んだり、医療機関を受診したりするようにしてもらいたい。
 搬送者数を年齢別に見ると、65歳以上の高齢者が最も多い傾向にある。県内では昨年、高齢者が181人と全体の半数以上に達した。高齢者は体温の調節機能が衰え、温度や湿度に対する感覚が弱まっている場合があり、熱中症になりやすいため特に注意が必要だ。室内に温湿度計を置いたり、小まめに水分を補給したりすることを心掛けたい。家族ら周囲の目配りも求められる。
 ただ、水分を多く取り過ぎると体の中の血液量が多くなり、心臓のポンプ機能に負担を掛けやすくなって急性心不全を引き起こす恐れもある。息切れや動悸(どうき)、むくみなど心不全の初期症状が見られた場合は、医師と相談して水分の摂取量を調整するようにしてもらいたい。
 暑い日が続くと、熱中症だけでなく、肺炎にも注意が必要となる。高温多湿でカビが増殖すると、特に免疫力の低下した高齢者が「夏型過敏性肺炎」を発症しやすくなる。高齢者には、夏に発生するさまざまなリスクに備えてほしい。
 熱中症については、乳幼児にもとりわけ注意が必要だ。晴れた日は地面に近いほど気温が高くなるため、ベビーカーや車いすは危険にさらされているといえる。乳幼児は体温調節機能が十分に発達していないため、大人よりもリスクが高まることに留意しなければならない。
 夏と暑さはこれからが本番。体力を過信せず、予防を怠らず、体調管理に留意して乗り切りたい。

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