社 説

 

年縄奉納「長期的な視点で担い手育成を」

2020/1/4 土曜日

 

 毎年恒例の年縄(としな)(しめ縄)奉納行事が昨年末から今年初めにかけて各地で行われた。その中で残念なニュースがあった。元日に藤崎町常盤地区で行われてきた裸参りが中止となった。年縄の作り手の高齢化などが理由という。各地域の少子高齢化がますます深刻化する今、長期的な視点で担い手を育成しなければならない時期に入っている。
 常盤地区の裸参りは1664(寛文4)年から伝わる伝統行事だ。常盤コミュニティ協議会が行っているもので、締め込み姿の男衆が巨大な年縄、餅などの供物を担ぎ、登山囃子(ばやし)に合わせて地元の商店街などを練り歩く。地区周辺では新年の訪れを告げる風物詩となっている。
 その裸参りが今回、突然中止された。理由は年縄が本来の形に仕上げられなかったこと。通常、年縄の本体は3本の太い縄を寄り合わせて作られる。これまでは、縄を包む特別な編みわら「菰(こも)」を複数の担当者が作ってきたが、高齢化などにより今回は一人しかおらず、1本しか作ることができなかった。このため、協議会側は「本来の形ではない年縄を男衆に担がせるわけにはいかない」として、裸参りの中止を決めた。
 関係者によると、菰は編み方が特殊なため、習得にかなりの時間が必要という。350年以上の歴史を持つ裸参りの中止は地元住民にとって非常に残念なことだっただろう。しかし、年縄の形もまた長く受け継がれてきたものであり、本来のものが出来上がってこそ、裸参りも成り立つと考えれば、協議会側の決断も理解できる。
 中止は確かに残念なことだ。しかし、今後はその復活に向けて知恵を絞るべきではなかろうか。協議会側は、年縄の奉納自体は来年も続ける方針だ。今年のような形でしばらく続けながら、その間に菰を編む担い手らをぜひとも育てていきたい。
 協議会は毎年、年縄制作の基本である縄をなう作業を地元中学生に体験してもらっている。例えば、この取り組みを発展させ、年縄制作に関心を寄せる学生や若者に菰の編み方などを少しずつ伝授する場を設けるのはどうか。年縄制作の本番は年末に行われるとすれば、春から秋にかけて定期的に制作技術を伝える場を設けてもよいのではないか。
 もちろん、このような場を設けるには、行政をはじめ地域住民の理解と協力が不可欠だ。経費も一定程度かかるだろう。それでも、長い歴史を持つ伝統行事を絶やすべきではない。伝統行事はコミュニティーがアイデンティティーを保つ上で大きな意味を持っている。少子高齢化が進む今、そのアイデンティティーが一層求められているはずだ。われわれは「コミュニティーにとって大切なことは何か」と改めて問われているのではないだろうか。

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ゴーン被告出国「司法の正当性示し保釈検証を」

2020/1/3 金曜日

 

 会社法違反(特別背任)罪に問われている日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告が、保釈中の海外渡航禁止を破り国籍のあるレバノンに入った。東京地検は出入国管理法違反などの容疑で身柄確保を目指すようだが、レバノンは身柄引き渡しに否定的で、公判への影響は避けられない情勢だ。
 出国が確認されたのは昨年の大みそか。弁護団の弘中惇一郎弁護士は「報道以上は知らない。当惑している」と語った。保釈中のゴーン被告は、1週間前の24日に事務所での会議で今後の公判について打ち合わせし、翌25日は東京地裁であった公判前整理手続きに出席。今月7日の次回会議にも出席予定だったという。つまり、弁護団に悟られることなく、裏で出国準備を進めていたことになる。弁護団が当惑するのもうなずける。
 弁護団は仏、レバノン、ブラジルのパスポートを預かり保管。国内滞在にパスポートを携帯する必要が生じたため、地裁に条件変更を請求し、1冊を鍵付きケースに入れ、弁護団が鍵を保管する条件で許可された。しかし出国記録に被告名は確認されておらず、仏パスポートを使わずに出国した可能性もある。
 出国方法について関係者は関西空港(大阪)からプライベートジェットがトルコ・イスタンブールに向け離陸したことは把握しているようだが、ゴーン被告が搭乗していたかは不明。楽器箱の中に隠れて乗り込み、トルコ経由でレバノン入りしたとの報道もある。仮に楽器箱に隠れて出国できるなら、同様の手口で密輸出も可能ということにはならないか。一般的には考えにくい。
 専門家によると、プライベートジェットは基本的に自分の旅客機に自分の荷物を持ち込むため、保安検査が緩くなるケースがあると指摘しつつ、人が入るほど大きな箱は必ず開けて調べるはずだとする。東京五輪に向けてテロ対策が強化されているが、プライベートジェットに対する甘さがあるとすれば問題だ。
 地検は出入国管理法違反容疑も視野に調べを進めているが、一方のレバノン治安当局は「合法的に入国した」との認識で、ゴーン被告に対する法的措置は取らない方針。日本とレバノンは犯罪人引き渡し条約を結んでおらず、日本政府が要請しても応じる可能性が小さいとの見方もあり、身柄確保が困難な中では、公判の先行きは見通せない。
 出国で“自由”を得たゴーン被告は「不当な処置や政治的迫害から逃れた」との声明を発表。現地報道によると、8日に記者会見を予定している。かねて不信感を抱く日本の司法制度について発言するとみられ、日本は司法の正当性を国際社会に示す必要を迫られることになるだろう。“海外逃亡”を許した保釈の在り方や出入国管理などに問題はなかったかなどについて徹底検証を求める。

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新年に思う「世界の中の日本考える一年に」

2020/1/1 水曜日

 

 元号が令和に変わって初めての新年を迎えた。全ての国民にとって、穏やかで幸多き年となることを切に願う。
 今年最大の話題は東京五輪・パラリンピック。いきなりのマラソン、競歩の会場変更など想定外の事態もあったが、大会準備は着々と進んでおり、各競技では代表選考が本格化。本県関係選手も出場を目指して日々努力を重ねており、一人でも多くの本県関係選手が大舞台に立てるよう、県民挙げて声援を送りたい。
 昨年のラグビーワールドカップ(W杯)は、日本の快進撃に沸いたほか、各国代表に対するもてなしなど、礼節を重んじる日本の対応が、世界の称賛を浴びた。五輪は世界最大規模のイベントである。多くの人々が世界各地からわが国に訪れる見込みだ。日本の文化、高い技術力、治安の良さなどをアピールする絶好の機会であり、五輪・パラリンピック後のインバウンド振興につなげたい。
 ただ、誰でもリアルタイムで情報発信できる時代である。大会運営はもちろん、観客対応などで生じた小さな問題も瞬時に世界中を駆け巡る恐れがある。観戦が主目的であっても、日本を楽しもうと地方に足を延ばす人も多いだろう。東京から新幹線で3時間ほどの本県も、城下町・弘前をはじめ、世界遺産登録を目指す三内丸山遺跡、自然豊かな十和田湖など魅力的な観光資源を有する。全ての県民が、訪れる人々を温かく迎える意識を持たなければならない。
 近年は大規模自然災害が相次いでいる。温暖化が要因との指摘もある豪雨や大型台風に加え、いつ起きるか分からない首都直下地震にも細心の注意が必要だ。昨年は河川の氾濫や大規模停電など犠牲者を伴う災害が発生。ラグビーW杯も台風で一部試合が中止された。国が昨年行った、五輪中の首都直下地震を想定した初めての図上訓練では、外国人を含む観客への情報提供などが課題に挙げられ、詳しく検討することになった。仮に首都直下地震が発生した場合、地方にも影響が及ぶはずだ。訪日客がいるのは会場だけではない。検討結果は全国で共有する必要がある。
 五輪・パラリンピック以外に目を向けてみよう。国政はカジノを含む統合型リゾート(IR)事業に絡む汚職事件や、「桜を見る会」問題などで大きく揺れている。東日本大震災をはじめとする災害復興も道半ばだ。米朝首脳会談で明るさが見えたかのように思えた北朝鮮問題は再び緊迫。過去最悪と言われる日韓関係も、改善が近いとは言い難い。
 五輪イヤーに浮かれるのは、大会の盛り上げという点で大いに結構だが、同時に国内外に山積する多くの問題に対しても関心を持たなければならない。56年ぶりに日本で開かれる平和の祭典を契機に、世界の一員としての日本の在り方を国民一人ひとりが考える一年にしたい。

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19年を振り返る「今年の良き流れ持続、向上を」

2019/12/31 火曜日

 

 「平成」から「令和」へと元号が変わった2019年も、間もなく終わろうとしている。振り返れば本県においてもさまざまな出来事があり、激動の一年であったことは間違いない。「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界遺産推薦決定、県産米「青天の霹靂(へきれき)」が食味ランキング5年連続特A取得といった明るいニュースが多数見られた。新たに迎える年はこれらの明るい、良い流れを持続、向上させる一年であってほしい。
 国連教育科学文化機関(ユネスコ)への推薦が決まった縄文遺跡群は、本県など4道県の全17遺跡で構成し、日本最大級の縄文集落跡・三内丸山遺跡(青森市)や大森勝山遺跡(弘前市)、亀ケ岡石器時代遺跡(つがる市)などが含まれる。正式な世界遺産への決定は2021年夏の世界遺産委員会で審議される見込みという。各遺跡は、歴史的価値のある貴重な資産ばかりだ。来年8、9月ごろには、ユネスコの諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)による現地調査も控える。高評価となることを期待したい。
 統一地方選と参院選が同じ年に行われる12年に1度の「亥年(いどし)選挙」の年でもあった。7月の参院選で本県選挙区(改選数1)は自民党現職と立憲民主党新人の一騎打ちとなり、現職が接戦を制した。4月の県議選(定数48)では自民党が過半数の議席を維持する一方で立憲民主党が初議席を獲得した。6月には任期満了に伴う知事選もあり、現職が県政史上初となる5選を果たした。さまざまな課題が山積する中にあって、当選者には国民、県民の生活向上に資するよう取り組んでもらいたい。
 7月には、台湾のエバー航空による青森―台北(桃園)間の国際定期便が就航した。青森空港の国際定期便はソウル線(韓国)、天津線(中国)に並び3路線目。夏季スケジュールは週2便、冬季スケジュールは週5便で運行しており、高い利用率となっている。来年の夏季スケジュール(3月29日~10月24日)は週4便化が決定しており、本県インバウンドの加速が期待される。
 前代未聞の出来事もあった。今月13日、弘前市の全職員2747人分の個人情報が外部に流出した可能性があることが明らかになった。市に匿名でマスコミへの情報提供も考える、といった脅迫めいたメールが5件届いていたことも判明。相手が正体不明で大量の個人情報を抱えているというだけに、底知れぬ不快感や不安感がある。一日も早い解決を望みたい。
 今月末には元自民党県連幹事長の冨田重次郎氏、元五所川原市長の佐々木榮造氏の訃報が相次いだ。長く県政界を率い、市政でかじ取りを担ってきた二人の重鎮の逝去を多くの人が惜しんだ。これまでの功績をたたえ、冥福を祈りたい。

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IR汚職事件「元副大臣1人の問題でない」

2019/12/28 土曜日

 カジノを含む統合型リゾート(IR)事業に絡む汚職事件で、秋元司衆院議員が収賄容疑で東京地検特捜部に逮捕された。特捜部による現職国会議員の逮捕は2010年1月以来という。
 逮捕容疑は、秋元容疑者がIR担当の国土交通兼内閣府副大臣だった17年9月下旬、IR事業参入を目指していた中国企業「500ドットコム」に便宜を図った見返りとして、現金など370万円相当の賄賂を受け取った疑い。秋元容疑者は接見した弁護士に「一切身に覚えがない」と話しているという。自民党に離党届を提出し、受理された。
 利権が絡むところに事件が絶えない現実に「またか」との思いが募る。疑惑の徹底解明を求めたい。
 白須賀貴樹衆院議員と勝沼栄明前衆院議員の地元事務所も、特捜部の家宅捜索を受けた。贈賄容疑で逮捕された3人のうち、中国企業「顧問」の紺野昌彦容疑者は、多くの自民党若手議員と交流があったとされる。ともに事件の関係先とみられていて、政界での捜査対象拡大も想定される。
 容疑を否認しているとはいえ、秋元容疑者の中国企業との関わりは、蜜月と言っても過言ではなかろう。癒着を疑われても仕方あるまい。事業を所管する副大臣が、事業に関連する特定企業とつながりを持つことに違和感を覚える。
 秋元容疑者は副大臣就任前から、IRを推進する超党派の国際観光産業振興議員連盟に所属。16年12月に成立したIR推進法の国会審議では衆院内閣委員会の委員長を務めていた。中国企業は主催したIR関連シンポジウムで講演した副大臣就任直前の秋元容疑者に、講演料として200万円を支払っていた。容疑者は就任後に中国企業本社を訪問。IR事業構想が持ち上がっていた北海道留寿都村へ招待され家族と旅行した際の旅費や宿泊費などを中国企業側が負担した疑いも逮捕容疑に含まれている。
 IR事業は、安倍政権が20年東京五輪後の日本経済の起爆剤として成長戦略の一つに位置付けていた。政権は元担当副大臣の不正に至った経緯を検証する必要があろう。首相肝煎りの事業であるだけに、政権内には秋元容疑者のこうした動きを黙認する空気はなかったか。
 今回の逮捕は、IR事業自体の評価に関するものではない。しかし、カジノについてはギャンブル依存症患者の増加やマネーロンダリング(資金洗浄)といった面から反対論や慎重論が根強くある。だからこそ、整備計画は専門家や国民の意見を踏まえながら慎重に進める姿勢が不可欠だった。秋元容疑者が立場をわきまえていたかは疑わしい。
 「政権そのものが関与したわけではない」という見解もあるが、国政の信頼に関わる問題である。一度立ち止まってみる選択肢があっていい。

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