社 説

 

菅内閣発足 「“継承”を取捨選択せよ」

2020/9/17 木曜日

 

 自民党の菅義偉総裁が、16日に召集された臨時国会の衆参両院本会議で第99代首相に指名され、同夜、菅内閣が発足した。
 健康問題を理由とした安倍晋三前首相の辞意表明に伴い、自民総裁選の短期決戦を経て7年9カ月ぶりに首相が交代した。菅氏は自身が官房長官を務めた安倍政権の継承を掲げ、新内閣20人中8人を再任、加藤勝信厚生労働相ら3人を横滑りさせるなど、新型コロナウイルスと経済をはじめとした現下の危機への対処を最優先させた。
 もちろんコロナ収束に道筋をつけること、疲弊した経済と暮らしを立て直すことは喫緊の課題だ。これらをおろそかにして、東京五輪・パラリンピック開催を含め、人・カネ・物が安定して動くことは期待できない。
 一方で、安倍政権では長期政権ゆえのゆがみか、数々の「負の遺産」を生んだ。例えば森友学園の国有地売却をめぐる疑惑や財務省による公文書の改ざん、加計学園の獣医学部新設をめぐる便宜など。それらに関する説明責任も果たされたとは言い難い。
 安倍政権の7年9カ月を総括し、何を受け継ぎ、何を変えるかを明確に示し実行に移す必要がある。この作業を経なければ「やっぱり何も変わらない」と国民の失望を買うのは目に見えている。
 コロナ・経済対策で支出が続く財政も、中長期的な観点から健全化を図らなければならない。強い責任感とリーダーシップ、不退転の覚悟が求められる。
 菅氏は秋田県の農家の生まれで、自民党政権では事実上初めてという無派閥、非世襲で「たたき上げ」議員の宰相となった。かつて総務相を務めた経験もあってか「地方の現場をよく知っている」と自認する。意欲を見せている携帯電話料金の引き下げも、こうした経歴が背景にあるかもしれない。
 菅氏の「地方重視」の姿勢に、地方の首長はおおむね期待を寄せているようだ。地方出身の企業経営者らからは「庶民の暮らしが分かっている」といった声も上がる。地方は少子高齢化の急激な進展、若年層の流出、経済基盤の縮小などにさらされ続けている。安倍政権下での施策で何が足りなかったかを検証し、地方の持続的な活性化実現に向けて采配を振るってほしい。
 菅氏本人は焦点となっている衆院解散について「コロナ問題が下火になってきたということでなければ、なかなか難しいのではないか」と慎重だが、政界関係者や識者の間には解散総選挙が近いのでは―との見方が根強い。選挙の勝利による政権基盤の強化などが理由だが、政治的思惑でコロナ対策や国民生活に空白を生んではならない。むしろ施策を通じて国民の支持を得る姿勢が必要ではないか。

∆ページの先頭へ

がん征圧月間「必要な取り組みを前に」

2020/9/16 水曜日

 

 新型コロナウイルスの影響で、がん検診の受診件数が落ち込んでいるという。県総合健診センターによると、市町村が行うがん検診は胃がんや大腸がんなど5種類のがんすべてで前年同時期より4~5割の減。同センターはがんの早期発見と早期治療につながる検診の受診件数が減った現状に、警鐘を鳴らしている。
 減少の理由は、コロナの感染拡大で、実施主体の市町村が検診の延期や中止を決めるなど、検診機会が減ったことが主だが、コロナの感染を懸念して受診を見送った人も2割程度いるという。4~7月末の検診の実施状況は、大腸がんが前年同時期の63・6%、肺がんは同63・2%、胃がんは同63・1%といずれも4割減。子宮がんは同57・3%、乳がんは同55・1%とさらに低い。センターは来年3月までの1年間で、前年度比2割減を見込んでいる。
 センターは「検診を1年見送ると、早期発見ができなくなる」として注意喚起。喫煙など自分のがんリスクを見極め、リスクを自覚している場合は受診を見送らず、適切に検診を受けるよう助言している。
 本県は男女ともに平均寿命が全国最下位。理由はさまざま考えられるが、がんの死亡率が高いことが平均寿命に大きく影響している。1982年から毎年死因のトップはがん。死亡数の割合は死因2位の心疾患の2倍ということからも、いかにがんで亡くなる人が多いか分かるだろう。最新の2019年の人口動態統計の概況では、本県のがんの死亡率(人口10万人当たり)は413・2で、過去最悪を更新。全国順位は秋田県に次ぐワースト2位で、7年連続の不名誉な記録となっている。
 本県はがんの死亡率は高いが、り患率は全国並みのため、がんが進行してから発見される割合が高いとされている。早期発見、早期治療にはやはりがん検診の受診率向上が重要。実施主体にはコロナ対策に気を配りつつ、受診者が安心できる情報発信にも努めてほしいし、受診するわれわれもマスク着用、手洗いなどできる範囲で協力すべきだろう。
 県保険医協会が行ったアンケート調査では、病院の受診が減ったという声も寄せられている。4~6月の3カ月間の影響を聞いたところ、5月には回答した医科、歯科の医療機関の7割以上が外来患者数、保険診療収入ともに前年同月に比べて減ったと回答。6月はやや回復したが、5割はやはり前年同月比で患者数などが減ったと答えており、「恐怖心をあおる報道で必要必至の治療のキャンセルや措置の拒否が相次いだ」などの声も上がったようだ。
 コロナは社会的な影響が大きく、できる限りのリスクを避けたいという気持ちは理解できるが、健康長寿県を目指す本県の歩みは止めたくない。9月はがん征圧月間。コロナ禍でも必要な取り組みが前に進むよう、それぞれの立場で尽力したい。

∆ページの先頭へ

文献調査へ新たな動き「賛否の主張議論し方向性を」

2020/9/12 土曜日

 

 原発から出る使用済み核燃料を再処理する過程で発生する高レベル放射性廃棄物(核のごみ)について、北海道西部の神恵内村で新たに最終処分地選定の第1段階に当たる「文献調査」の応募検討に向けた動きが浮上していることが分かった。国が2017年に全国の処分適地を示した「科学的特性マップ」を公表後、2例目となる。
 道内では今夏、同じく道西部の寿都町が応募検討に向けて動き出しているが、これまでの経緯を見る限り、調査はおろか応募に至る道のりすら決して楽ではない。もし、同村で動きが本格化した場合、周辺自治体や「北海道における特定放射性廃棄物に関する条例」で核のごみは受け入れ難いとしている道などは、自らの主張を伝えることはもちろん大事だが、頭ごなしになることなく、村の主張にも耳を傾け、どのような方向性が最適なのかを打ち出してほしい。
 同村は道西部の日本海側に面し、南側に隣接する泊村には稼働を停止している北海道電力泊原発がある。同町とも距離的には近い。科学マップ上では、南部の一部を除き、ほぼ全域が非適正地に分類されている。村議会によると、地元商工会が8日、村議会に文献調査受け入れに向けた取り組みの促進を求める請願を提出。これを受けて村議会は、15~17日の9月定例会で審議する見通しという。村役場で記者会見した高橋昌幸村長は「議会の審議に影響があるようなことは現時点では言えない」と話している。
 しかし、考えなければならないのは、なぜ同じ道内から2自治体が立て続けに最終処分地選定調査の応募に前向きな姿勢になったのか、だろう。全部で3段階ある調査のうち第1段階となる文献調査を受けるだけで、国から最大20億円の交付金を得ることができる。同町は厳しい財政状況の中で、この交付金を活用する考えを明確にしている。神恵内村の場合は、理由は明らかになっていないが、主産業は漁業で、人口はすでに1000人を割り込み、823人(8月末現在)。今年度一般会計当初予算は35億円余といい、その半分以上となる交付金は大きな魅力と映ることは想像に難くない。今後、理由を述べる場において、村関係者はなぜ、今、自らの住む場所での調査に名乗りを挙げたのかを明確に説明してもらいたい。
 多くの原発が停止している現状とはいえ、大多数の国民が核エネルギーを享受してきた事実がある。「それでも核のごみは嫌だ」という心理が働くのはやむを得ないだろうが、処分地選定に向けた動きを、これまでのように総力を挙げて封じ込めてしまうのでは、物事が進まない。最終的に処分場を建設するかどうかの判断はまだ先となる。一度、調査の先例を作った後で賛否について議論する場面があってもよい。

∆ページの先頭へ

ドコモ口座被害「社内体質がもたらした問題」

2020/9/11 金曜日

 

 NTTドコモの電子決済サービス「ドコモ口座」を使って、預金が不正に引き出される被害が全国で相次いでいる。ドコモによると10日正午現在の被害は66件、総額約1800万円に上る。1年以上前にも同様の被害があったが、ドコモは問題を把握していたにもかかわらず、適切な再発防止策を講じなかった。根底にあるのは極めて希薄なセキュリティー意識。国が進めるキャッシュレス化に対する国民の不信感、不安感を招いた責任は重い。
 ドコモ口座は、登録した銀行の預金口座からチャージ(入金)し、スマートフォンなどを使って代金決済や送金できるサービス。しかし、大きな落とし穴があった。口座開設時の本人確認はメールアドレスのみで、携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)などによる認証はないため、架空名義のメールアドレスで開設した第三者が、不正に入手した銀行口座番号と暗証番号を使えば、預金者になりすまして引き出すことが可能だった。
 昨年5月にりそな銀行と埼玉りそな銀行で被害が発生。両行は新規登録を停止したが、ドコモが行ったのは1カ月に入金できる金額の上限を100万円から30万円に引き下げた程度。つまり1回の被害額が約3分の1になっただけで、なりすましを防ぐなどの策は講じなかった。
 10日正午までに被害が確認されたのは、ドコモが提携する35行のうち11行で、みちのく銀行も30万円が引き出される被害1件を確認した。第三者が口座番号などを不正に入手したとみられ、同行からの顧客情報漏えいはないという。35行は同日、口座の新規登録を停止した。ただ、すべての確認には至っておらず、今後さらに被害が拡大する可能性がある。
 ドコモは同日になって丸山誠治副社長が問題発覚後初めて記者会見し「不正を排除する仕組みがなかったのが最大の問題」と陳謝。被害者に全額補償するとともに、今月末までにSMSなどを使った認証を導入する意向を示した。
 新しいサービスを導入する際には、システムに欠陥があるとの前提で、事前に想定される問題の芽を摘み、導入後にも想定外の事態に即応できるよう、常に備える。業種に関係なく一般的なことである。
 格安スマホの参入による事業者間の競争激化に加え、キャッシュレス化対応、同業他社との差別化を急ぐ必要が生じた。メールアドレスだけの容易な本人確認は「多くの人に使ってもらう戦略」(丸山氏)というが、競争の中で自社の優位性を確保するために提供し続けたのが犯行に利用可能なサービスであり、その結果が1800万円の被害である。これが日本電信電話公社を前身とする業界大手がすることか。丸山氏は謝罪と反省を口にしたが、急ぐべきは“常識外れ”の社内体質改善だ。

∆ページの先頭へ

自民総裁選「一極集中是正で積極議論を」

2020/9/10 木曜日

 

 自民党総裁選が告示され、石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長の3氏による論戦が始まった。新型コロナウイルス対策が最重要課題ではあるが、深く関係する一極集中の是正について問題提起し、積極的に議論してほしい。
 3氏の政権構想や記者会見などを見ると、地方創生・地方活性化について、論点の一つとして取り上げられてはいる。
 中でも一極集中是正を大きく掲げたのは石破氏だ。「東京一極集中を是正するための税制の在り方を今考えないでどうするか」と問題を提起し、「国策として地方に分散しないと国家が持たない」とも訴える。
 菅氏は基本政策で「最低賃金の全国的な引き上げを行い、農業改革や観光をはじめ頑張る地方を政治主導でサポートする」としている。
 岸田氏は「最新の技術、イノベーションを活用する形で東京の過度の密集(解消)、地方活性化を果たしていく。こういった政治の取り組みは大事ではないか」とする。
 石破氏は別として、菅、岸田両氏の主張は従来の取り組みの継続だったり、新たな要素を加えたりするものだ。そもそも地方創生は安倍政権の看板政策の一つだった。
 2020年に東京圏の転入超過を解消して地方との転出入を均衡させる目標を掲げ、自治体への財政支援などを通じての移住促進や、地方での雇用創出に取り組んできたが、東京一極集中は加速するばかり。ついには目標達成の時期を24年度に先送りした。
 日本の人口の3割が集中する首都圏は、ひとたび感染症や自然災害に見舞われればぜい弱なことが、今回の新型コロナではっきりした。
 東京圏における経済・社会活動の停滞は地方へも悪影響を及ぼす。この構造を変えない限り、新たなウイルスの感染拡大や首都直下型地震が発生すれば、また同じことが起きる。いずれも専門家は近い将来、高い確率で起きると予想する。
 かつてない危機に直面している今だからこそ、“国のリーダー”を選ぶ選挙において、危機リスクの分散を積極的に論じるべきではないか。
 もちろん地方活性化も重要課題であり、本県などが求める新たな過疎対策法の制定や、地方創生の取り組み継続は不可欠だ。
 ただ、耳障りの良い活性化策が聞きたいわけではない。なぜ一極集中が問題なのか、どう解消するのかが聞きたいのだ。
 例えばリモートワークの拡大が、地方移住を後押しするとの見方がある。ならば政府は本社を首都圏から地方に移転する事業所に対し、税制で優遇する制度を作ってはどうか。
 一極集中の是正について政治が真剣に考え、議論を重ね、政府や社会を動かすべきだ。新たな危機が訪れる前に。

∆ページの先頭へ

Page: 1 ... 3 4 5 6 7 8 9 10 11 ... 194