社 説

 

東北・新潟宣言「自他の命を守る意識付けに」

2020/4/25 土曜日

 

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府が16日に緊急事態宣言の対象地域を全国に広げてからきょうで10日目。全国では連日数百人の感染者が確認され、クラスター(感染者集団)も発生、医療崩壊が近づいているともされる。こうした危機的状況を踏まえ、東北6県と新潟県の7知事、仙台、新潟両政令市長は24日、一丸となって終息を目指す「東北・新潟緊急共同宣言」を出した。ゴールデンウイーク(GW)を控えることから、旅行や帰省といった県境を越える移動の自粛などを求めている。
 感染拡大を抑えるには、いわゆる「3密」回避が重要で、行政機関だけでなく、幅広い業界も「ステイホーム」を呼び掛けている。しかし、連日報じられる全国の感染者数を見ると、全国民に届いているとは言い難い。
 結果論であり、責めることはできないが、中国・武漢市で多発した時点では、複数の専門家が「感染力は限定的」「国内で感染が広がるリスクはほぼない」と分析し、加藤勝信厚生労働相も「過剰に心配することなく、インフルエンザと同様の感染対策を」と述べたことで、楽観的見方を国民に持たせた可能性は否定できないだろう。
 間もなくGW。例年なら旅行・帰省したり、春祭りに出掛けたりと、全国各地に笑顔がはじける。しかし今年は違う。症状のない感染者の存在に加え、感染経路が特定できないケースが増加。すでに誰がいつ、どこで感染しても不思議はない。しかも症状が急激に悪化する例や、回復した感染者が再度、陽性になる例も報告されている。有効なワクチンや治療法がない以上、一人ひとりの自衛がとりでとなる。
 共同宣言はこうした状況を踏まえたもので、前日には全国知事会が国管理道路の通行規制や駐車場の利用禁止などの特例措置を講じるよう、政府に提言している。もちろん、生活に不可欠な物流などに加え、さまざまな事情で移動せざるを得ない人たちもおり、県境に関所を設けて都市封鎖を求めるものではない。共同宣言も提言も、最大の狙いは国民意識の引き締めだ。
 東日本大震災の巨大津波は「自分の身は自分で守る」意識を幅広い国民に定着させた。地球規模で広がる新型ウイルスでは、全国民が最悪の事態に陥る危機感を共有し、自分だけでなく、多くの人命を守る意識を根付かせたい。
 女優の岡江久美子さんが23日、新型ウイルスでこの世を去った。夫で俳優の大和田獏さん、長女で女優の大和田美帆さんが所属事務所を通じて出した連名コメントにこうある。「コロナウイルスは大変恐ろしいです。どうかくれぐれもお気を付けください」。GWで浮かれそうになった時には、この言葉の意味と重さを考えてほしい。

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芸術を街なかへ「コロナ禍の社会を癒やす力に」

2020/4/24 金曜日

 

 終息の道筋が見えない新型コロナウイルス感染症。地方に住む私たちの生活も一変してしまった。観光、宿泊、飲食業を中心にあらゆる産業に影を落とし、市民は言い表しようのない不安の中、“窮屈な”生活を強いられている。「コロナが終息するまで」と誰もが耐え忍んでいるが、その生活が長期になるにつれて、ストレスも強さを増していく。何か心を和ませるような「もう少し頑張ろう」と思わせるものが、この社会には必要だ。
 「街なかが展示会場に―」。本紙に掲載された「アーティスト・イン・レジデンス(AIR)」の成果展示の話は、こうした閉塞感が漂う中、ほっとする話題だった。AIRは美術家を招き、滞在しながら作品制作に取り組んでもらうもの。展示は弘前市でAIRなどに取り組む「HIROSAKI_AIR(ヒロサキエア)」が企画した。市のひろさきローカルベンチャー育成事業「ネクストコモンズラボ(NCL)弘前」のプロジェクトの一つだ。当初は同市百石町にあるNCLの拠点施設「弘前オランド」の改装に伴い、新設されるギャラリーで展示を行う予定だったが、新型ウイルスの感染拡大に伴い、「展示会を街なかで開催する」と発想を転換。今年2月から滞在し、制作活動に取り組んできた芸術家の酒井一樹さん(東京都)の作品を中心商店街の店舗や施設の外壁、ショーウインドーなどに掲示している。
 不要不急の外出は自粛の世の中ではあるが、中心商店街は食料品をはじめとする日用品を購入する場であり、おのずと市民の出入りは多い。市内の目抜き通りで車の交通量もあるので、多くの市民の目に触れる機会があるだろう。こうした場所に芸術作品が展示されることは、言いようのない不安感の中に生きる私たちにとって精神的な豊かさに触れる貴重な機会の提供と言えるだろう。「災い転じて―」ではないが、展示場所を屋内から屋外の中心市街地に変えたことで、この世相に合った芸術作品の展示に一つの形を示したように思う。
 作品が展示されている中土手町商店街では、ヒロサキエアが企画した新型ウイルス予防を啓発するプロジェクト「津軽ガーディアンズ」の取り組みも始めた。ねぷた絵師らが描いた「鍾馗(しょうき)」や「不動明王」、コロナ禍の中、話題となった妖怪「アマビエ」など、疫病を払うとされる神仏や妖怪ののぼり旗を制作。商店街の電柱に掲げている。これらは企画に賛同した絵師たちが無償で提供した原画が使われているという。
 コロナの終息には時間がかかるだろう。長期にわたる“戦い”の中、芸術は人々の不安定な心を癒やし、前に進む力を生み出すことができるものの一つと言える。さまざまな芸術を現在の“縮こまった”社会に取り入れ、未曾有のコロナ禍を乗り切るために生かしていきたい。

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国会審議「安倍政権の暴挙は許されない」

2020/4/23 木曜日

 

 新型コロナウイルスの感染拡大が関心を集める中、国会ではパートなど短時間労働者への厚生年金適用拡大を柱とした年金制度改革関連法案、検察官の定年延長規定を盛り込んだ検察庁法改正案が相次いで審議入りした。前者は今後、景気低迷が予想される中での年金行政の在り方が、後者は司法権の独立という国の仕組みそのものが問われる重要法案だ。コロナ問題に全力を傾注すべき時期に、これら重要法案の成立を目指す安倍政権の暴挙を許してはならない。
 年金制度改革関連法案は年金の受給年齢を75歳まで繰り下げ可能とするほか、厚生年金の加入義務がある企業の規模を「従業員数501人以上」から段階的に引き下げ、2024年10月に「同51人以上」まで拡大することが柱だ。
 まず指摘したいのは、コロナ問題は世界経済に影響を及ぼしており、主要国の株式市場は続落傾向にある。わが国の公的年金は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)によって国内外の市場で運用されており、1~3月期は大幅な赤字が予想される。
 政府は運用は長期的な視点で行われ、一時的な損失は問題視しない考えを示しているが、経済の回復が遅れれば年金財源への影響は避けられない。法案の前提条件が崩れかねない状況にある中で、審議を急ぐ必要性は全くない。
 さらに厚生年金の適用拡大で負担が生じる中小企業の経営状態は、コロナ問題で悪化の一途をたどっている。安倍晋三首相は国会審議で「中小企業が難局を越えた先の道筋を付け、適用拡大にも対応してもらえるよう総力を挙げて取り組む」との考えを示した。
 しかし中小企業は必死にきょう、あすを乗り越えようとしており、その先を見通せるわけもない。
 次に検察官の定年延長問題だが、そもそも安倍政権が国家公務員法の解釈を変更して、黒川弘務東京高検検事長の定年を延長しようとしたことに端を発する。
 黒川検事長をめぐっては森友問題絡みの公文書改ざん、IR汚職事件などの対応が「政権寄りの判断を主導した」などと野党の強い批判にさらされている。その黒川氏の定年延長は「官邸の露骨な司法介入」とも指摘され、自民党内からも「三権分立を脅かす」と異論が出て一度は了承が先送りされた。
 戦争を許したのは司法権の独立がなかったからだとする深い反省の下、戦後、長い間守られてきたルール。それを時の政権の解釈変更で一線を越えようとしているのだ。
 コロナの収束まで政府、国会は全力を尽くすべきだ。緊急対策も第2弾、3弾が必要になるだろう。これほどの国家的危機にあって、誰も望まない重要法案を“火事場泥棒”のように審議することは絶対に許されない。

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ごみ排出量「市民の力合わせ一層の減量を」

2020/4/22 水曜日

 

 本県のごみ排出量がなかなか減らない。県が先日発表した2018年度の一般廃棄物処理事業実態調査によると、県民1人1日当たりの一般廃棄物(ごみ)排出量は1002グラムで前年度と同じ数量。都道府県順位も前年度と同じ43位だったが、リサイクル率は前年度から0・5ポイント低下した14・5%で、順位は42位と前年度より一つ下がった。
 生活の利便性向上に伴い、環境問題はますます深刻化している。国レベルの対策は各国で進められ、国内では各自治体が独自にごみの量を減らす取り組みを進めている。ごみ問題は、生活者一人ひとりの問題だ―と叫ばれて久しいが、もはや人ごととは捉えられない状況にある。われわれも強い危機感を持って各対策に参画しなければならない。
 県内でも、ごみの排出量が多い弘前市も減量に向けた取り組みを続けている。県の18年度の調査によると、弘前市の1人1日当たりのごみ排出量は1142グラム。排出量が少ない順で見ると38位と最下位グループに属する。このような状況を踏まえ、市はごみ減量化を重要な課題の一つと位置付け、さまざまな施策を展開。効果が表れ始めている。
 例えば、特に課題となっていた事業系ごみの分別適正化を強化した。事業者向けの説明会を重ね、処理施設に搬入されるごみの内容を確認し、分別が不適正な場合は受け入れを拒否する搬入規制も導入した。この結果、事業系ごみの不燃ごみは昨年12月で前年同月比85・0%の大幅減。不燃ごみに混入していた缶やペットボトルなどの分別が適正化され、資源化量は同比34・5%増となった。
 県の18年度調査で、1人1日当たりの排出量の内訳を見ると生活系が680グラム、事業系が322グラム。生活系は県循環型社会形成推進計画で定めた20年度までの目標値680グラムを3年連続で達成しており、事業系の削減が大きな課題となっていることが分かる。この状況を踏まえれば、弘前市の取り組みの成果は注目に値する。今後さらに効果が出ることを期待したい。
 同市の櫻田宏市長は2年前の就任以降、施策を推進するため「市民の力を生かす」と一貫して主張してきた。事業系ごみの減量についても、市内事業者らの理解と協力がなければ、成果は出なかったはずだ。この例を見ても、ごみ問題の解決がわれわれ一人ひとりの意識に懸かっていることが分かる。
 事業系ごみだけでなく、生活系ごみについても一層の減量が求められている。一見地味な取り組みではあるが、生ごみを減らす「3キリ(使いキリ、食べキリ、水キリ)運動」などは極めて重要だろう。このような運動を一人ひとりが続けることが大きな成果につながっていくのではないか。引き続き、みんなの力を合わせて取り組んでいきたい。

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津島園子さん死去「太宰人気を支えた姿に感謝」

2020/4/21 火曜日

 

 死後70年以上を経過しても新たなファンを獲得し続けている五所川原市金木町出身の作家・太宰治(本名・津島修治)の長女としても知られる津島園子さんが20日、東京都内の病院で死去した。78歳だった。
 太宰は1909年6月19日に誕生。48年同月同日、東京都の玉川上水で遺体が見つかった。太宰が死の直前に書いていた短編小説「桜桃(おうとう)」にちなみ、6月19日は「桜桃忌」と名付けられた。同市金木町も当初、この日を「桜桃忌」として太宰の功績をたたえる取り組みをしていたが、遺族の意向で名称は「生誕祭」に変更された。亡くなったことより、生と向き合い、格闘し続けた太宰の方を思い出してほしい―。そのような願いが園子さんにあったのかもしれない。
 同市金木町の県立芦野公園太宰治銅像・文学碑前で開かれる「生誕祭」には毎年、東京から足を運ぶ園子さんの姿があった。享年39歳の若さでこの世を去った太宰に対し、「娘の自分の方が年上になったと思うと、不思議な感じがする」と語った場面もあった。
 「太宰は暗い作品ばかり書くと言われているが、戦争のただ中で、ユーモラスな作品を書き続けたことを知ってほしい」とも語っていた。太宰作品といえば「人間失格」が取り上げられがちだが、園子さんは太宰のユーモアが詰まった「御伽草子」など、多様な側面を知ってほしい気持ちがあったようだ。
 生誕祭には全国から太宰のファンが訪れるが、ファンからも園子さんは人気を集めていた。どこか太宰の面差しを彷彿(ほうふつ)とさせる穏やかな笑みで、握手を求めるファンたちに気さくに応対していた。
 昨年6月の生誕祭は、太宰が生まれてから110年という節目の年だった。生誕祭で園子さんは、「桜桃忌から生誕祭へ形態を変え、学校の子どもたちも参加できるようになり、感謝している。若い人たちが太宰の本を読むことで、太宰が苦しみ、悩んだ一生を皆さんも共有していただけると思っている」と語り、「110年の節目までと思っていたが、来年以降も体調さえ良ければここに来たい」と述べていた。
 入水という道を選んだ父・太宰に対し、娘として複雑な感情を抱いたこともあったとは思われるが、人間を愛し、小説を書き続けた太宰のことを偉大な作家として尊敬し、若い人たちに知ってもらう取り組みに長年貢献していた。衰えぬ太宰人気には、太宰の作品の魅力はもちろんのこと、園子さんの活動もあったのではないだろうか。
 太宰の生誕111年となる今年6月19日、太宰の銅像の前に園子さんの姿がないことを想像すると、非常に寂しく思う。あの世で太宰に再会することができたら、何と語り掛けるのだろうか。ご冥福をお祈りしたい。

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