社 説

 

工芸品の販売促進「専門の人材育成が必要だ」

2020/7/1 水曜日

 

 伝統工芸品をいかに守っていくか―。全国的な課題であり、関係者たちが知恵を絞っている。本県でも、県内で初めて国重要無形文化財に指定された「津軽塗」などを後世に引き継ぐため、さまざまな取り組みが続けられている。
 その中で注目したい取り組みの一つが、県による「工芸品を売る人材」の育成だ。製造から販売までの全てを製造者が担うといったこれまでの産業構造を変え、製造と販売を分業化することを目指しているという。
 品質の高い工芸品を作っても売れなければ、産業として生き残るのは難しい。当たり前のことだが、各産地は今、このことを痛感している。職人をはじめ関係者も自らが置かれている厳しい状況を十分理解しているが、効果的な販売方法を見いだせずにいる。
 これまた当然のことだが、販路開拓と消費者ニーズの把握は一体で考えなければならない。県が目指す「工芸品を売る人材」の育成はこの点に着目したもので、取り組みの意義は誰もが理解できるはずだ。ただ、これまで本腰を入れて取り組んできたかと問われれば、そうとは言い切れないのではないか。
 しかし、落胆するべきではない。これから取り組めば、道は開けるはず。業界を挙げて具体策を打ち出したい。
 確かに、本県を含めて工芸品の産地は厳しい状況に置かれている。ただ、大都市圏の販売業者によると、「市場は確かにある」という。自分たちが作る工芸品の良さをきちんと発信し、消費者のニーズを詳細に把握すれば、販路の開拓は十分可能なようだ。
 実際、販路開拓のエリアを首都圏に絞り、10年近く取り組んだ結果、大きな成果を挙げている産地もあるという。やはり、戦略が要るということだろう。その戦略を練って実行に移す体制を構築する上で、製造と販売の分業は非常に有効なのではないか。
 県内の工芸品の販売促進に向け、県はこれまでも首都圏の販売業者らを招き、意見を交わしてきた。中には「販売する層や売り場によって商品をアレンジしてはどうか」「全てのアイテムを“編集”し直すべき」といった声もあった。
 自分たちが作る工芸品の良さを生かしつつ、消費者のニーズに応えていく。そのためには、製造者と「売る人材」の両方が必要なのである。
 工芸品の産地にとって後継者不足は大きな課題だが、少ないながらも伝統を引き継ぐため努力する若者たちはいる。彼らの思いに応えるためにも、「売る人材」の育成に早急に取り組まなければならない。作るノウハウを習得するには一定の時間がかかるが、売るノウハウも同様ではないだろうか。県内の工芸品の魅力をしっかり理解した、販売のエキスパートをぜひ育てたい。

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レジ袋有料化「着実なプラごみ排出抑制を」

2020/6/30 火曜日

 

 プラスチック製レジ袋の有料化が7月1日から義務付けられる。買い物客が持参したマイバッグを用いるなど必要以上にレジ袋を受け取らない機運を高めることでプラスチックごみの排出を減らし、生態系や環境への悪影響を抑えたり、地球温暖化の改善につなげたりすることが狙いだ。
 有料化自体は、2007年度の改正容器包装リサイクル法施行などを機に一部で既に導入済み。マイバッグを持参してスーパーへ向かうのが習慣化している人は多いだろう。ただ今回は物を売る全ての店が対象。買い物に煩わしさを感じることがあるかもしれないが、環境保護の一翼を担う気概を持ちながら買い物に臨みたい。
 有料化に関する環境省のキャンペーン「レジ袋チャレンジ」では、店頭でレジ袋をもらわない人の割合を、今年12月で3月時点(31%)の約2倍に当たる6割へ引き上げることを目標に掲げている。
 日本の1人当たりプラスチック容器包装廃棄量はアメリカに次いで多く、海洋に流出するプラごみが世界的に問題視される中で対応を迫られていた。
 国内で生じるプラごみ全体に占めるレジ袋の割合は2~3%程度。とはいえ、国民が身近なレジ袋の受け取りを1日1枚減らすだけでも、それなりの量の削減が期待できる。主要なプラごみである包装・容器類の削減に向けた第一歩ではあるが、レジ袋削減が単なる象徴行為にとどまらず、一定の意義があることは心に留めたい。
 一方で、プラごみ削減の動きに水を差しているのが、新型コロナウイルスの感染拡大だ。
 例えば、マイバッグを不衛生な状態で使っていると、新型コロナの感染リスクが高まるのではないかという懸念が指摘されている。確かにマイバッグは使用頻度が高く汚れやすい割には洗濯・洗浄する回数が少ないことに気付かされる。使用に当たっては、小まめに洗濯したりアルコールで清拭(せいしき)するといった衛生管理が必要だ。
 買い物時は、籠を持ったり紙幣・貨幣を受け渡したりといった行為も感染リスクをはらんでいる。エコバッグという特定の事物だけでなく、買い物に伴う行為全体を見詰め、感染リスクを減らしていく努力が求められよう。店員にはマイバッグに触れさせず、購入品は自らマイバッグに詰めるといった配慮も、新しい生活様式に求められる一つとは言えまいか。
 プラごみ削減で付言するならば、プラ製の使い捨て食器は新型コロナ流行下で、衛生管理の観点やテークアウト需要の伸びから排出量が増えていくと推察される。今後の動向と生活様式の変化を踏まえつつ、プラごみの発生抑制の在り方をいずれ考えなければならないだろう。

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コロナ苦境「文化芸術に息の長い支援を」

2020/6/27 土曜日

 

 青森市が新型コロナウイルスの影響を受けている文化芸術活動を支援する事業を立ち上げ、申請を受け付けている。対象はスタジオ、ライブハウスやギャラリーなどの民間文化施設や青森市内を拠点に文化芸術活動を行っている文化芸術団体と個人。オンラインで創造・発信する事業に最大30万円を助成するという。
 ライブなどの大規模イベントはコロナ対策としては最も早い2月に自粛要請を受けた。その後、ライブハウスでのクラスター(感染者集団)の発生などもあって厳しい視線が向けられ、営業自粛が長期化。休業要請に応じた店舗や観光などの事業者、家庭へと支援策が広がる中、文化芸術関係への支援も急務だと思う。
 相次ぐ夏祭りの中止を受け、ねぶた師らを支援しようという動きも広がっている。青森観光コンベンション協会はねぶた師14人が合作する特別ねぶたを制作、来夏の運行を目指すという。参加するねぶた師は薬師如来、玄奘三蔵、十二神将のうち指定された1体を制作し、それを組み合わせて1台の特別ねぶたにする。青森銀行などがプロジェクトの組成を支援し、クラウドファンディングサイト「キャンプファイヤー」で24日から募集をスタート。1000万円でねぶた制作と展示、2500万円で来夏の運行を目指すという。県民に夢を与える企画だ。
 青森市はねぶた師に新たなアート作品を披露する場を設け、冬の青森の魅力創出につなげようというプロジェクトも検討。こちらはねぶたとはひと味違う、冬ならではの新しい作品が仕上がりそう。弘前市は今夏、伝統的な手持ちねぷたで市内を飾り付ける取り組みを検討しており、ねぷた絵師に制作を依頼して支援するとともに、祭りが中止になってもねぷた文化の継承や来年の活気につなげることを目指すという。こちらはいかにも城下町弘前らしい取り組みだ。
 合作ねぶたを筆頭に、いずれも前例のない、コロナ禍の今年だからこそ実現した企画だと言えるだろう。これまでにない新たな魅力が生み出され、われわれを元気づけてくれることを期待したい。
 県内の感染者は27人で、確認は5月7日が最後だ。その後、県境を越える移動制限が全面的に解除され、本県では飲食店にも人が戻りつつある。ただ全国的には東京都内で感染者が連日確認されており、第2波、第3波も警戒されている。県内の集計には含まれないが、6月に入って米軍三沢基地で複数の感染も確認されており、油断はできない。
 ライブや祭りは観客が密になっての一体感を楽しむ側面もあり、当面の活動は手探りの状態が続きそうだ。ただ文化芸術はなくてはならないもの。国も第2次補正予算案に約560億円の支援策を盛り込んだと発表されているが、時代に合った新しい形で活動が続けられるよう、引き続き支援策の検討が必要だろう。

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避難所のコロナ対策「災害に備え感染対策の構築を」

2020/6/26 金曜日

 

 大雨や地震など大規模災害が発生した際の避難所での新型コロナウイルス感染防止対策が課題となっている。
 もともと密閉、密集、密接の「3密」の回避が難しい避難所でどう感染を防ぐのか。発熱者や濃厚接触者が避難してきた場合、どのように対応すべきなのか。いつ起きるか分からない災害時に備え、対策を急ぐ必要がある。
 新型コロナの感染が広がる中での今年3月10日、北海道地震で大規模な土砂崩れが起きた厚真町は大雨と融雪で土砂災害の危険性があるとして、2カ所の避難所を開設した。受付でマスクを配り、保健師が検温と問診を実施し、異常のある人に移ってもらう別室も用意したという。当日の避難者は11人にとどまり混乱はなかったが、町の担当者は「人数が多ければ別室での対応も難しく、配れるほどのマスクもない」と話した。
 3月13日には石川県輪島市で震度5強の地震が起きた。同市の担当者は「能登半島地震のような規模であれば、密集は避けられない。できるだけ分散させられるよう、避難所の数を増やすことも考えなければならない」と課題を挙げた。
 避難所を訪れる人の多くは高齢者ら災害弱者だ。新型コロナに感染した場合、重症化リスクが高い。高齢化率が比較的高い本県などは特にその傾向にあり、今後の第2波、第3波も想定すれば、感染防止対策は急務だ。
 政府の中央防災会議(会長・安倍晋三首相)は、新型コロナの感染拡大を踏まえ防災基本計画を修正。避難所における「3密」を避けるため、避難先としてホテルや旅館の活用を検討するなど、感染症対策を推進することを新たに明記。避難所の過密抑制など感染症対策の観点を取り入れた防災対策を推進する必要があると強調し、平常時から防災担当部局と保健福祉担当部局が連携し、避難所で感染症患者が発生した場合の対応の検討に努めることなども求めた。
 計画は災害対策基本法に基づき作成され、都道府県や市町村が作る「地域防災計画」の基礎となるため、今回の修正を受け、各自治体も現行計画やマニュアルの見直しなどを進めている。
 新型コロナを踏まえた避難所の開設、運営訓練も全国各地で行われている。本県では、政府への提言活動などを行う一般社団法人「レジリエンスジャパン推進協議会」(東京都)が、7月28日に今別町で避難所の運営訓練を行うことを明らかにした。最新技術を活用したシステムなどの導入で感染リスク低減を図り、災害関連死ゼロを目指す考えだ。訓練を通じて避難所における効果的な感染症対策などを検証するという。
 災害はいつ起こるか分からない。避難所運営の在り方は地域によっても異なってくる。それだけに大雨や台風シーズンなどにしっかりと備える必要がある。

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“危険運転”判決確定「飲酒運転根絶へ自覚を」

2020/6/25 木曜日

 

 2018年9月、つがる市の国道101号で車4台が多重衝突し4人が死亡した事故で、飲酒の上で車を運転し危険運転致死傷罪に問われた同市の30代無職の被告を懲役20年とした、青森地裁の裁判員裁判の判決が23日までに確定した。被告側は判決前、弁護士との接見で「どんな判決でも受け入れる。控訴したくない」と話していたという。結果、被告と検察側、どちらも控訴しなかった。大切な家族や友人を亡くした関係者の心情を鑑みれば、良識的な判断と言えよう。ただ、亡くなった人たちは二度と、この世に戻ってくることはない。被告は自らが行った過ちを胸に刻んで生きていくとともに、今後の賠償においても誠実な対応に努めてほしい。
 事故は同年9月22日未明に発生。当時の警察の調べによると、被告は同乗していた友人の男性2人と飲酒し、アルコールの影響により正常な運転ができない状態で車を動かしていた。その結果として、制限速度50キロを大幅に上回る速度で運転した上、前方や対向車線の車両3台を巻き込み、男女8人が死傷する大惨事となった。
 事故発生から1年半以上を経て、ようやく開かれた一審では、争点が(1)アルコールの影響で正常な運転が困難であったか(2)被告本人が、その状態を認識していたか―の2点で、危険運転致死傷罪の成立が争われた。判決では、法定速度を大幅に超える時速163キロまで加速するなど、事故当時の道路状況に明らかにそぐわない運転であったこと、その運転状況や事故前後に眠気を訴える言動がアルコールによる酩酊(めいてい)の症状と整合していたことから「アルコールの影響で正常な運転が困難だった」と認定した。量刑も「運転の様態は極めて危険性の高い悪質なもの」などとした上で、求刑通り法定刑の上限である懲役20年の判決を言い渡した。
 逮捕から裁判までの司法における流れは今回で決着を見たわけだが、残された遺族や友人たちの悲しみは当然消えるわけではない。実際、判決当日の今月9日に事故現場を訪れた遺族や友人からは、判決に感謝の気持ちを示す一方で「殺人事件として裁いてほしかった」「(被告には)死ぬまで十字架を背負ってほしい」「4人が亡くなった事故で、たった懲役20年なんて」といった悲痛な声が聞かれた。こうした声を被告は、どう受け止めるのだろうか。今後金銭的な賠償の話し合いも進むだろうが、言えるのは一生事故のことを背負って生きなければいけないということだ。
 気になるのはこの事故の後も飲酒運転による事故が後を絶たないことだ。先日も県内で5人が死傷する交通事故があり、飲酒運転の疑いもあるという。全てのドライバーが自覚を持ち、飲酒運転が根絶される日を待ちたい。

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