社 説

 

黄美香への期待「ブランド化有望のメロン品種」

2020/9/24 木曜日

 

 出来秋を迎え、さまざまな作物が収穫の時期を迎えている。津軽を代表する農作物といえば「コメ」「リンゴ」が真っ先に思い浮かぶ。従事する生産者の数、栽培面積、生産額と、どれを取っても突出しており、この二大作物を抜きに津軽の農業は語ることができないだろう。
 だが、生産者のさらなる所得向上を目指すためには、「コメとリンゴ」にばかり頼ってはいられない。多様な農作物を求める消費者心理を背景にした近年の市場の変化に対応し、これまで以上に収益性の高い農作物にも注目していくような柔軟性が本県の1次産業に求められている。
 中南地域を見ても、さまざまな農作物が導入され、生産者をはじめ、関係者の努力で、ブランド化が図られている。「津軽の桃」などは、その代表格で近年、高い人気を得ているが、こうした注目を集めるブランド候補の果実の一つにメロンの有望品種「黄美香(きみか)」がある。黒石市が県内生産量の9割以上を占めており、名前の通り黄色い果皮が特徴。「黄金のメロン」「お月見メロン」などと呼ばれ、糖度が高く日持ちも良いと、消費者の反応も上々の人気銘柄だ。市場の引き合いが強く、毎年市内で行われる即売会でも人気を得ている。キロ単価も他のメロンに比べて高く、生産者も高収入が期待できるという話だ。
 特徴的な外観に糖度抜群の良食味。「黄金のメロン」というキャッチコピーも消費者の関心を引き付けるものがあるだろう。ブランド化への期待が高い有望品種と言えるのではないか。
 課題を言えば、栽培の難しさだろうか。ひび割れが起きやすいなど栽培管理が難しいとされる。出荷量が、昨年産で13トンにとどまっているのも、こうした栽培面がネックになっていることが一因なのだろう。
 だが、市場からの評価が高いのは、間違いのない話だ。栽培技術をさらに高め、管理方法を確立することと並行して生産量の増大を図り、規模の拡大に努めたい。生食でない加工品の開発にも力を入れて販路を広げていくことも重要だ。既に大学生が起業した黒石市の企業が、黄美香を使ったスイーツを開発するなど、付加価値づくりの動きが広まっている。
 リンゴにせよ、コメにせよ、津軽産の農作物は消費地、消費者から高い支持を受けている。二大作物に続くブランド農作物のバリエーションを増やし、消費者へのアピールを強めていけば、津軽産の農作物全体の付加価値が高まっていくことにつながる。
 生産者の高齢化や後継者不足、農作物全般における価格の低迷基調など、本県を取り巻く農業環境は、厳しいものがあるが、時代の流れに対応した産地づくりを進め、さらなる津軽産農作物のブランド化、付加価値づくりを進めていきたい。

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パートナーシップ制度/地方から国を動かすうねりに

2020/9/23 水曜日

 

 弘前市は性的マイノリティーのカップルを婚姻に相当する関係と公的に認定し、証明となる書類を発行する「弘前市パートナーシップ宣誓制度」を12月に導入する方針を表明した。現在は導入に向け、10月14日まで同制度案に関するパブリックコメントを募集している。
 同制度案は市民あるいは市内転入を予定している成人で、双方または一方が性的マイノリティーであるカップルが対象。互いがパートナーであると宣誓したことを受け、市が証明書である「弘前市パートナーシップ宣誓書受領証」を発行する。
 宣誓する日時は事前に市と調整してプライバシーに配慮するものとし、場所は市役所本庁舎内やヒロロスクエア内などを想定。双方が市外へ転出した場合や、双方の意志でパートナーシップが解消されたときなどは受領証を市に返還する。
 日本の婚姻制度は異性愛カップルを想定したものとなっており、性的マイノリティーのカップルは法律的に「存在しないもの」として扱われている状況にある。結婚や恋愛に対する価値観は多様化しつつあり、「事実婚」の異性愛カップルも昔より増えてはいるが、選択肢を持った上での「婚姻しない」と、選択肢を持てない状態の「婚姻できない」は、全くの別物だ。
 2015年に東京都の渋谷区と世田谷区は「同性パートナーシップ制度」とし、人生を共にしたいと考える同性カップルの権利を保障する仕組みを初めて導入。そこから5年経過したものの、保守的とされる東北において弘前市が初めて導入を表明した意義は大きい。
 法律的に「存在しないもの」とされる性的マイノリティーカップルを行政が公的に認定することで弘前市は、一部行政手続きにおいて異性カップルと同等の権利を得られるよう取り組むほか、同性カップルと同様なサービスが性的マイノリティー向けに拡大することを目指す。
 これは人として当たり前の権利を、当たり前に受けられる社会とするための歩みだ。かつて住む場所や職業は自由に選べるものではなかった。かつて教育は誰でも受けられるものではなかった。かつて女性に参政権はなかった。
 誰かを大切に思い、共に生きようとする権利は、誰もが認められる社会であるべきだ。東北初となった弘前市の取り組みが県内他自治体、さらには東北全域に拡大する動きにつながってほしい。さらには戸籍上の性別にとらわれず、婚姻を望むすべてのカップルが法的に認められる社会に向け、地方から国を動かすうねりとなることを期待したい。
 「かつて日本では、共に生きようとするカップルのうち異性愛者しか法律で認められなかった」。現在日本における婚姻の在り方が過去として語られる日が、一日でも早く訪れることを願う。

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衆院解散・総選挙「いらぬ政治空白は避けるべき」

2020/9/22 火曜日

 

 菅義偉新首相が就任したことを受け、永田町は衆院解散・総選挙の時期をめぐる憶測が飛び交い、かまびすしい日が続いている。来月の投開票は遠のいた感があるが、11月から来年1月に実施されるとの見方が有力だ。新型コロナウイルスの感染状況によっては来年10月の任期満了近くとなる可能性もあるが、あくまで永田町の都合だ。国民は万全なコロナ対策と早期の経済再生を望んでおり、「新政権の信を問う」必要性を多くは感じていない。いらぬ政治空白は避けるべきである。
 まず今秋解散説が取り沙汰されるのは、来年までの政治日程を考慮した場合、今年10~11月が比較的余裕があるためだ。
 12月に入ると2021年度予算編成が本格化する上、冬場は新型コロナとインフルエンザが同時流行する恐れもある。来夏は公明党が国政選挙並みに力を注ぐ東京都議選、東京五輪・パラリンピックと続き、9月末には菅氏の総裁任期が切れる。
 衆院任期満了に近づく「追い込まれ解散」を回避するには、1月の通常国会冒頭、遅くとも3月末に見込まれる21年度予算成立直後しかない。
 早期解散説には党内事情も絡む。新内閣発足直後の高支持率が続き、合流新党を含む野党勢力の準備が整わない状況を有利と踏んで、特に若手議員や“選挙に弱い”議員らを中心に待望論が根強い。
 自民党関係者は、12年の総選挙で大量当選した“魔の3回生”を中心に、本来は次期総選挙で15議席程度減らすはずと指摘。「逆に早期解散なら15議席増やすこともあり得る」と予想する。
 一方の菅首相は「1年以内に解散・総選挙がある。時間の制約も視野に入れながら考えていきたい」としており、慎重に判断する考え。
 ただ、首相は16日に広報ポスター用の写真を撮影し、17日には選挙プランナーと意見交換した。これらを踏まえ、党内からは「年内解散もあり得るのでは」と勘ぐる声も聞かれる。
 新内閣の顔触れについての評価も分かれる。「骨格は維持しつつスライドや再登板など実務型。しっかり仕事をするという意思表示」と解散が遠のいたとの指摘がある一方、「実務型だからこそ、選挙となっても支障はない」との見方もある。
 時事通信が行った9月の世論調査では、衆院解散・総選挙の望ましい時期について「来年の任期満了かそれに近い時期」が最多の40%だった。他の調査報道では6割近いものもある。
 政権が代わり、野党に新党が生まれ、来月にも選挙だと、浮ついた空気の漂う永田町。問われているのはかい離した国民生活と向き合い、現場を訪れ、声なき声にまで耳を傾けることだ。無用な政治空白をつくることではない。

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Go To東京追加「感染リスク理解し楽しい旅を」

2020/9/19 土曜日

 

 政府の観光需要喚起策「Go To トラベル」の対象から除外されていた東京都発着の旅行が、10月1日に追加されることになり、今月18日正午に適用旅行商品の販売が始まった。新型コロナウイルスの影響で冷え込んだ経済を動かすと期待される半面、東京都の新規感染者は増加傾向にあり、全国的な感染拡大を招く可能性が指摘されている。旅行者には十分な対策を求める。
 コロナ禍により旅行会社や交通機関、宿泊業者などの観光関係業種を中心に厳しい経営を強いられ、全国でコロナ倒産が相次いでいる。弘前市では17日、「奥膳懐石 翠明荘」などの閉店を経営会社が発表。新型コロナによる売り上げ減が理由という。国登録有形文化財「翠明荘」は文化都市弘前の象徴的建物の一つ。新型コロナの影響の大きさを身近に感じ、ショックを受けた市民も少なくないだろう。経営会社は建物の維持管理を続けるとしており、将来的な再起を願いながら見守りたい。
 旅行を促すキャンペーンに大都市東京が加わり、地方との往来が活発化すれば、観光関連業はもちろん、食材を提供する農水畜産業など幅広い分野を潤す可能性がある。倒産目前まで追い込まれている企業には救世主に映るだろう。
 ただ、喜んでばかりはいられない。東京都では18日、220人の新規感染者が確認された。前日の171人を大きく上回り、4日連続の100人超。都が17日に開いた専門家らによるモニタリング(監視)会議は「さらに増加傾向が続くと、急速に感染拡大することが強く危惧される」と分析。小池百合子知事も19日からの4連休を控え「少しでも体調が優れない人は外出を控えていただきたい」と呼び掛けた。
 専門家が急速な感染拡大を懸念する中での東京追加。仮に増加傾向が続くにもかかわらず、キャンペーンを強行し、感染が全国に広がるならば逆効果になりかねない。政府も今後の感染状況を見極めるとし、追加見送りに含みを残している。
 「ウィズコロナ」「新しい生活様式」という言葉が生まれ、街ではマスクをしていない人を見つけるのが難しいほど。1年前には想像もしていなかった「異常」な状況である。しかし、この状況が続くにつれ、次第に「異常」が「普通」になれば、気の緩みにつながる恐れもあるのではないか。非日常を楽しむ旅行なら、なおさらのことである。
 東京追加を否定はしないし、地方経済再興に寄与するのならば、むしろ歓迎する。ただし、キャンペーンと感染拡大リスクが隣り合わせであることは忘れてはならない。東京から地方へ行く人も、地方から東京へ行く人も十分な対策を講じ、思い出に残る旅にしてほしい。みちのくは間もなく錦秋を迎える。これまでキャンペーンから除外され、旅行を控えていた都民を温かく迎えたい。

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廃校活用「前例にとらわれず取り組もう」

2020/9/18 金曜日

 

 弘前市の旧修斉小学校がスポーツ交流施設として生まれ変わった。グラウンドは市内初のソフトボール専用練習場として既に供用されており、今月12日には県内の小学生ソフトボールチーム4チームによる交歓会が開かれ、敷地内に久しぶりに元気な子どもたちの声が響いた。
 同小は2016年3月に閉校。その後、弘果・弘前中央青果が市から取得し、リンゴの集荷場として使用。使っていないグラウンドや体育館も有効に活用できないかと思案し、NPO法人スポネット弘前に打診し、「弘果修斉スポーツパーク」として供用されている。
 体育館も今後、一般に開放される計画で、ミニバスケットボール大会が予定されているほか、冬季には野球やサッカーなど屋外競技の練習場所としても貸し出されることになっている。さらに、校舎についても、障害者や高齢者のトレーニング施設として活用できないか模索しているという。
 少子化に伴って全国的に学校の統廃合が進んでおり、使われなくなった学校施設の活用は共通する課題だ。国もこのような状況を重大視し、文部科学省は「~未来につなごう~『みんなの廃校』プロジェクト」を展開、全国の廃校情報を集約し、活用ニーズとのマッチングに努めている。
 県内でも廃校を活用している例は既に見られるが、全国を見渡すと面白いケースがある。熊本県では酒造会社が小学校跡で酒を造っているという。もともと教育施設だった校舎がまったく異なる分野の施設として生まれ変われるということは非常に興味深い。施設が再活用されるだけにとどまらず、地元の雇用にもつながっている例も見られる。
 廃校となった校舎の立地条件、周辺の環境を見詰め直し、関連付けると、校舎の活用法はさまざまに広がりを見せるのではないか。放置されたままでは、単に老朽化し、いずれは解体されなければならない校舎にどうやって新たな息を吹き込むか。柔軟かつ大胆な発想が求められているのである。
 改めて考え直してみると、学校、とりわけ小中学校は地域コミュニティーの中心を担う施設と言えよう。地域の将来を担う子どもたちが毎日通い、保護者をはじめ大人たちが学校運営を支援している。みんなが学校に関わることで絆を保っている。その学校がなくなるということは、地域コミュニティーが衰退していることを意味している。
 少子化は今後ますます進展すると思われる。それに伴って学校の統廃合はさらに進むはずだ。同時に廃校活用の取り組みも一層求めれれるだろう。前述のように廃校活用は発想次第で、さまざまなバリエーションを持たせることができる。前例にとらわれることなく、柔軟かつ大胆な発想で取り組みたい。

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