社 説

 

新型肺炎緊急対策「大規模経済対策の早期実施を」

2020/3/12 木曜日

 

 政府が新型コロナウイルスに関する緊急対応策の第2弾を取りまとめた。中小・零細企業向け特別貸付制度と、学校の臨時休校に伴う新たな助成金の創設などが柱となる。
 政府が2月26日に要請した、大規模イベントの「今後2週間」の自粛は10日から「今後おおむね10日間程度」(安倍晋三首相)継続されることになった。首相が全国の学校を対象に要請した今月2日から春休みまでの臨時休校は多くの学校で実施され、教育現場や共働き家庭、学童保育などの混乱も招いた。
 第2弾は、これらで不利益を被った人々への補償、換言すれば不満解消策としての性格を帯びているように映る。
 首相による急きょ・大胆な要請に起因する事態であり、補償は当然という意見もあろうが、国民の生活不安の解消を図る姿勢は一定の評価があって良い。
 もっとも、今回は総額1兆6000億円規模の金融措置と、4300億円超の財政措置。金額の多寡は別としても、少なくとも内容的にはマイナス要素の一部を補う緊急対応策の域を超えていないだろう。
 折しも9日に内閣府が発表した2019年10~12月期の国内総生産の改定値は、年率換算で前期比7・1%減。20年1~3月期は新型コロナウイルスの感染拡大の影響も避けられず、景気後退への懸念がさらに強まっている。世界的にも株価が急落し、不安定な値動きが続いている。
 感染拡大がもたらす経済面への打撃はリーマン・ショック(08年)かそれ以上ともされる。与野党からは20年度補正予算案の編成など大規模な追加経済対策を求める声が相次いでいる。自民党幹部は「4、5月に10兆~20兆円規模を編成しないといけない」と述べる。国内外の状況を見極めながら、適時的確に対策を打ち出さなければならない。
 政府と地方自治体の代表による臨時会合では、地方側が地域経済対策の強化を求めている。雇用を守る観点からも、地方への目配りを求めたい。
 忘れてはならないのは、感染拡大による経済的損失を最小限に抑える最良の策が、感染の拡大防止であることだ。最新の知見に基づく専門家の意見を踏まえた遅滞なき実施が欠かせない。
 第2弾対策の特別貸付制度では、フリーランスや個人事業主に実質無利子で融資し、売上高が急減した中小企業も同じ扱いとなる。本県も「経営安定化サポート資金」制度の災害枠に新型コロナウイルスを指定し、低利融資を可能とした。
 ただ、リーマン・ショック当時に同様の国の支援を受けたものの、その後の返済で苦しんだ経験から借り入れに慎重な中小・零細企業もあると聞く。経営と環境の改善に向けた包括的な支援を検討すべきかもしれない。

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東日本大震災9年「災害はいまだ終わらず」

2020/3/11 水曜日

 

 1万8000人を超える死者、行方不明者を出した東日本大震災から、きょう11日で9年。いまだ多くの人が避難を続け、被災地の復興も道半ばである。しかし、政府主催の追悼式は新型コロナウイルスの影響で中止され、震災を知らない世代も増えてきた。被災地では震災の記憶を薄れさせまいと取り組みを続けているが、全国的に見るとどうだろうか。
 「まるで湖 消えた町」。一夜明けた被災地の様子を伝える本紙の見出しである。大津波にのみ込まれた東北の太平洋沿岸部で目にしたのは、家屋やがれきが水に浮かび海岸線が分からない町、陸地“だった”場所にひっくり返る多くの船―。あちこちで煙が上る風景については「爆撃を受けた後のよう」と報じた。
 これだけでも未曾有の災害だが、事態をさらに深刻化させたのが福島第1原発事故。避難した付近住民は「これから何日、何カ月避難生活が続くか不安だ」と口にした。この時点では、放射能の恐怖におびえる日々や、9年も古里に戻れないことなど、想像もしなかっただろう。
 震災で被災3県とは岩手、宮城、福島を指す。確かに被害の大きさで判断すると、仕方ないかもしれないが、本県でも3人の貴い命が失われ、1人の行方が依然不明となっており、間違いなく被災県である。大津波に襲われた太平洋側と比べて被害が軽微だった津軽地方にも、停電など市民生活に大きな影響が及んだ。停電時にも使用できる石油ストーブやろうそく、食料品、ガソリンなどを求める市民らが、早朝から店の前に長い列をつくり、入店人数を制限せざるを得ないスーパーもあった。
 当時を思い出していただけただろうか。ただ、震災は発生した2011年だけで終わったわけではない。福島第1原発では放射性物質トリチウムを含む処理水の処分方法が決まらず、保管用タンクの置き場所は限界が近い。避難指示の解除が広がっているとはいえ、いまだ4万7737人(2月10日現在)が避難を強いられている。昨年12月に階上町で震度5弱を観測するなど、余震とみられる地震も各地で続発している。
 国は復興庁の設置期限を10年間延長する一方、政府主催の追悼式は10年を「区切り」として、来年を最後に打ち切るとし、風化を懸念する被災地から疑問の声が上がっている。「復興五輪」を掲げて日本の力強さ、食品などの安全を世界にアピールするはずの東京五輪は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、予定通り開催できるかは不透明になっている。
 近い将来、南海トラフ地震や首都直下型地震などの大災害が発生する可能性があるとされる。震災を語り継ぎ、多くの人々の犠牲によって得られた教訓を生かさなければ、国民が安心して暮らせる国にはならない。

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中韓両国の入国制限「根拠と効果に疑問残る」

2020/3/10 火曜日

 

 政府は新型コロナウイルスの流入阻止を目的とした中国と韓国からの入国を制限する一連の措置を発動した。両国発の航空機などで到着した旅客に対し、2週間の待機と、公共交通機関の利用を避けることを求める。日本国内で感染者の増加が続く現状を受け、新型ウイルスの流入に歯止めを掛けるため、水際対策の抜本的強化を図るのが、その主眼とされる。これ以上の感染拡大を防ぐため、可能な限りの対策を取るべきではあるが、今回の措置は、その根拠と効果に首をかしげざるを得ない点が多い。
 一連の措置は両国以外、香港とマカオも対象となる。入国した場合は、その翌日から14日間は自宅か予約したホテルで待機してもらい、移動には自家用車やレンタカーを使うよう要請する。政府はこれにより両国からの入国者総数の抑制を目指すとしている。また検疫態勢を強化するため、両国からの旅客機の到着地を成田空港と関西空港に限定し、船舶による旅客運送は停止となる。
 確かにこれらの措置が実施されることで、両国からの入国者はさらに抑制されるだろう。だが、既に両国からの入国者はかなり減少している現状を考えれば、今回の措置により、どの程度の効果が期待できるのか、疑問を感じる。また欧州や米国など世界中に感染が広がる中、ほぼ両国のみを対象に厳しい入国制限を課すというのも水際対策の徹底という観点で見れば、整合性が取れない。こうした強い制限を課す場合は、もっと国民や対象国を納得させられるだけの科学的な根拠が必要となるのではないか。
 今回の入国制限を受けて、中国は目立った反応を示していないが、韓国は猛反発し、日本人の入国制限に踏み切った。新型ウイルス対策の一環としているが、日本の方針に対する事実上の対抗措置と言えるだろう。
 元徴用工問題などで冷え込んだままの日韓関係は、新型ウイルス対策をめぐり、また一つ対立要因を増やした格好だが、世界各国に求められるのは、感染拡大防止のための国際的な協調関係の構築であり、日本、韓国ともその責務から逃れられない。今回の入国制限措置を新たな政治的対立の場としてはならない。双方の政府は互いに律し、冷静な対応を心掛けなければならない。
 安倍晋三首相は全国の小中高校の休校要請に続き、今回の中韓両国などからの入国規制強化と矢継ぎ早に対策を発している。「対応が後手に回った」との批判をかわし、自身の指導力をアピールする狙いがあるのだろうが、いずれも根拠と効果があいまいで、説明不足との指摘も多い。前例のない事態で、いずれも難しい判断を迫られるものではあるだろうが、それゆえに国民には丁寧な説明と、きちんとした裏付けのある効果の予測を示さなければならない。

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公選法違反容疑「実態に即した法改正が急務」

2020/3/7 土曜日

 

 昨年7月の参院選でウグイス嬢と呼ばれる車上運動員に法定上限を超える報酬を支払ったとして、広島地検が自民党の河井克行前法相の政策秘書と、河井氏の妻、案里参院議員(広島選挙区)の公設秘書を逮捕した。河井夫妻は疑惑が浮上して以降、事実関係の説明を避け、国会も欠席している。国会議員としての責務を果たさないのなら、直ちに議員辞職すべきだ。
 公職選挙法では選挙運動員への報酬は無償が原則だ。ただ、事前に届け出があったウグイス嬢や手話通訳者らに対しては、弁当や宿泊の実費以外に、法定上限の日当1万5000円の支給を認めている。報酬を支出した場合、選挙管理委員会に提出する報告書への記載義務もある。
 しかしウグイス嬢への日当をめぐる公選法違反事件は後を絶たない。労働条件が厳しく、経験者も数少ないだけに、いざ選挙となれば各陣営はウグイス嬢の確保が重要な問題となる。今回を含め立件されたのは氷山の一角で、法定上限を超える報酬の支払いは常態化していると多くの政界関係者が指摘する。
 もう一つ、実態と法が乖離(かいり)しているケース。菅原一秀経済前産業相(衆院東京9区)は、公設秘書が地元選挙区の通夜で香典を渡したとの公職選挙法違反疑惑が週刊誌で報じられたことなどを受け辞任した。
 公選法は政治家が選挙区内で寄付することを禁止している。香典を含む金銭・物品の供与が対象で、政治家本人が葬儀に出席し、香典を出した場合は適用されないが、菅原氏のケースでは秘書が香典を手渡しており、公選法違反に当たる可能性がある。
 つまり地元有権者が死去した場合、政治家本人でなければ香典は渡せない。出張していた、要職で戻れなかった、政治家が地元に戻れない理由はいくらでも考えられるが、それでも代理の秘書が香典を渡してはいけないのだ。
 「町会単位の小さな集会であれば、参加者が酒やつまみを持ち寄ることは多々ある。そこに政治家が顔を出し、会費を払うから領収書を書いてとお願いしても、迷惑そうに『酒の1本でも持ってきて』と言われる。できないと断っても、そもそもが会費制度でないだけに、双方とも困り果てた」
 これは本県の現役議員の経験談だ。その議員は続けて「実態に合ってないなら法律を変えればいい。国会は疑惑を追及しても、その先の、制度見直しの機運が高まらない」と苦言を呈する。
 似顔絵入りのうちわを配って辞任した閣僚がいれば、線香を配ったのは政党支部の活動だと言い張った現閣僚もいる。
 政治は禁止行為や金額の上限などを含め早急に見直すべきだ。もちろん、グレーゾーンを残さないよう明確な線引きも必要だ。

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修学旅行延期「安全第一に新たな日程調整を」

2020/3/6 金曜日

 

 国内で新型コロナウイルスの感染が拡大し、多方面に影響が及ぶ中、修学旅行を延期する学校が相次いでいる。修学旅行は貴重な体験をしたり、友人らとの思い出をつくったりする場であり、楽しみにしている児童・生徒も数多くいるはずだ。学校関係者にとっても苦渋の決断であろう。
 津軽地方を見ると、4月に関東方面を訪れる中学校が多く、交通機関や宿泊施設などの予約キャンセルの手続きなどを考えると、遅くても3月中に延期するか否かの判断をしなければならず、各校が保護者らと協議を重ねるなど対応を急いでいる。
 学校関係者たちからは対応に苦慮する声が聞こえる。国内の感染状況を踏まえ、生徒の安全を考えると延期せざるを得ないと考える学校が大半だ。ただ、宿泊料金が同じ施設であっても季節によって異なるといった事情があり、延期した場合は必ずしも当初見込んだ予算で賄えるとは限らないという。このため、日程の短縮を想定している学校もあった。
 既に延期を決定した学校もある。例えば、弘前市の東目屋中学校は、4月8日から3泊4日の日程で行う予定だった修学旅行を9月に延期する方針を固め、4日に保護者に通知した。
 同校は毎年、修学旅行の日程に東京・浅草でのリンゴ配布を組み込んでいる。配布するリンゴは生徒が学校農園で栽培し、雪室で保存していたもので、受け取る観光客たちから好評を得ているという。大都市圏で見聞を広めるとともに、古里の良さをPRできる絶好の機会となっており、落胆している生徒も少なくないだろう。
 各校とも生徒にさまざまな体験をしてもらおうと、旅行の日程を工夫しているはずだ。しかし、前述の事情などから、延期に伴って日程を短縮すると、こうした体験の場が省かれる場合も考えられる。ただ、生徒によっては、修学旅行での体験が将来の進路を決めるきっかけになる場合もあるだろう。日程を短縮する場合は、その中身をよくよく考えた上で決めてほしい。
 新型コロナウイルスの影響を受けている状況は海外も同様で、日本への修学旅行を延期する学校も出てきた。海外から来た生徒が日本の生徒と共にさまざまな体験を楽しむケースも少なくない。こうして見ると、国際交流の観点からも修学旅行は重要であり、延期や中止は残念と言わざるを得ない。
 学校の関係者たちは、今後のウイルスの感染状況を踏まえながら修学旅行の可否や実施の時期を見極めなければならない。今のところ、事態が収束する時期はまったく見通せず、難しい判断を迫られることになるだろう。いずれにしても、生徒の安全を第一に考えながら、新たな日程を調整してもらいたい。

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