社 説

 

PCR検査「流行期に備え、体制強化を」

2020/9/26 土曜日

 

 県は新型コロナウイルス感染症の検査体制について、インフルエンザの流行期と重なることを懸念して、これまでピーク時で1日375検体と見込んでいた検査需要を同4000検体に拡大、検査体制を強化して対応していく方針を明らかにした。
 冬のインフル流行期に発熱した場合、新型コロナなのか、インフルなのか、それとも両方に感染しているのか、症状だけで判断するのは難しい。現在、イベントや会議、一部店舗など多数の人が集まる場所では手指の消毒とともに検温を求められる機会が増えており、たとえ微熱でも生活に支障が出ることが想定される。発熱した場合には速やかに検査し、他人への感染の拡大を防いで治療へつなげることが重要になる。検査体制の拡充は喫緊の課題だろう。
 県はインフル流行期には原則、発熱した患者に対し、新型コロナとインフル両方の検査を行うとしている。過去のインフル患者数から、インフル流行期の新型コロナの検査需要は1日3571検体と試算。新型コロナのみの検査需要の推計1日375検体を加え、目標を1日4000検体と設定した。目標の確保は、身近なかかりつけ医などで新型コロナ疑いの患者の相談から診察、検査までを行う態勢ができないと難しいとみており、広く医療機関へ協力を呼び掛けている。
 これまでも3市にドライブスルー方式で検体を採取できるPCR検査センターができたり、多数の関係機関で抗原定性検査(迅速キット)を導入したりして、検体採取や検査能力は少しずつ上がってきた。だが、現状の検査体制は9月4日現在、検体採取対応力が1日241件(ピーク時同533件)、検査能力は同562件(同759件)というから、相当数増やさなければならない。医療現場での混雑も想定される。検査や診察がスムーズに行えるよう準備し、インフル流行期に備えたい。
 国はビジネス目的の海外渡航者向けに、新型コロナのPCR検査を受けられる医療機関を検索・予約できるウェブサイトを10月に開設すると発表した。外国との往来が再開される中、出張者らが安心して検査を受けられる態勢を整え、経済活動を下支えする狙いがある。これまでは国によって渡航に必要な条件が異なるため、出張者の準備する際の煩雑さが懸念されていたという。
 新型コロナの終息は見通せず、長期化の様相を呈している。当面は必要に応じて検査や診察が受けられる態勢を整え、新型コロナとの共存を模索する暮らしが続くのだろう。
 それだけに何よりも重要なのは、手洗いの徹底やマスク着用、3密を避ける行動など感染防止対策だ。新型コロナの感染防止策はインフルの予防にも有効。各自が流行期に備え、対策を徹底することで自分の身を守り、医療関係者の負担を減らすようにしたい。

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弘前城秋の大祭典「検証重ね今後につなげたい」

2020/9/25 金曜日

 

 弘前公園で久しぶりとなる大型イベント「弘前城秋の大祭典」がシルバーウイークの4連休を中心に開催された。新型コロナウイルス感染拡大防止対策を講じた「新たなスタイル」で開かれ、好天にも恵まれて県内外からの大勢の観光客らでにぎわった。コロナ禍で打撃を受けた地域経済の回復と観光マインドの喚起に一定の効果があったと言える。
 新型コロナがさまざまな催しに影響を及ぼす中、大型イベントの開催は県内初となった。会期中は感染拡大防止のため、県の助言も得ながら各種対策を実施。園内に入る8カ所で検温を実施したほか、万一の事態に備え入園者に居住市町村や氏名、連絡先を記入してもらい、これら対策に応じた人にはリストバンドを配布、手首に着けてもらうことで入園者の状況を把握する仕組みとした。
 また「3密」を避けるため、園内をテーマパークに見立てて四つのエリアに分け、入場を制限。最大となったのがイベントステージ・出店エリアとなる四の丸で上限5000人。出店は間隔を空け、飲食も店内ではなく四の丸に設置したテント内でするよう誘導。園内は順路に沿って進むと初秋から晩秋へと紅葉の変化が楽しめるライトアップやプロジェクションマッピングを展開。シャボン玉の演出や、金魚ねぷたのちょうちんを持ち歩くと光でソーシャルディスタンスが分かる仕掛けなども好評だったようだ。
 経済効果もしっかり表れた。大型イベントへの出店が今年初となった弘前露店商業組合は「天候に恵まれ、想像以上の客足だった」と手応えを語ったほか、弘前市内のホテルでは18~21日の客室稼働率が約90%にまで回復したという。弘前公園近くの観光施設もイベント効果が波及したようだ。参加者からは「久々に祭り気分を味わえた」「人は多いが新型コロナ対策が取られていたので、あまり心配を感じない」といった声が聞かれた。
 今回のイベントについて、市は「目標は来年の弘前さくらまつりをコロナ禍の中でもしっかりと開催すること。それに向けた第一歩」と強調する。弘前さくらまつりはイベントの規模が大きく、来園者数もかなり多い。新型コロナ終息が見通せない中、来年春の感染状況も予断を許さないのは明らかで、開催へのハードルは決して低くはないが、感染拡大防止対策を講じた「新たな日常」と地域経済活性化との両立を図ることは重要だ。
 大祭典をコロナ禍における大型イベントのモデルと位置付ける市など関係者は、今回の対策と効果などをしっかり検証し、次へとつなげてもらいたい。また主催者側の工夫はもちろんだが、イベントに参加する側も各種対策に協力し、感染防止のマナーを守ってこそ皆が安心して楽しめる祭りになるのだということを今後も心掛けていきたい。

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黄美香への期待「ブランド化有望のメロン品種」

2020/9/24 木曜日

 

 出来秋を迎え、さまざまな作物が収穫の時期を迎えている。津軽を代表する農作物といえば「コメ」「リンゴ」が真っ先に思い浮かぶ。従事する生産者の数、栽培面積、生産額と、どれを取っても突出しており、この二大作物を抜きに津軽の農業は語ることができないだろう。
 だが、生産者のさらなる所得向上を目指すためには、「コメとリンゴ」にばかり頼ってはいられない。多様な農作物を求める消費者心理を背景にした近年の市場の変化に対応し、これまで以上に収益性の高い農作物にも注目していくような柔軟性が本県の1次産業に求められている。
 中南地域を見ても、さまざまな農作物が導入され、生産者をはじめ、関係者の努力で、ブランド化が図られている。「津軽の桃」などは、その代表格で近年、高い人気を得ているが、こうした注目を集めるブランド候補の果実の一つにメロンの有望品種「黄美香(きみか)」がある。黒石市が県内生産量の9割以上を占めており、名前の通り黄色い果皮が特徴。「黄金のメロン」「お月見メロン」などと呼ばれ、糖度が高く日持ちも良いと、消費者の反応も上々の人気銘柄だ。市場の引き合いが強く、毎年市内で行われる即売会でも人気を得ている。キロ単価も他のメロンに比べて高く、生産者も高収入が期待できるという話だ。
 特徴的な外観に糖度抜群の良食味。「黄金のメロン」というキャッチコピーも消費者の関心を引き付けるものがあるだろう。ブランド化への期待が高い有望品種と言えるのではないか。
 課題を言えば、栽培の難しさだろうか。ひび割れが起きやすいなど栽培管理が難しいとされる。出荷量が、昨年産で13トンにとどまっているのも、こうした栽培面がネックになっていることが一因なのだろう。
 だが、市場からの評価が高いのは、間違いのない話だ。栽培技術をさらに高め、管理方法を確立することと並行して生産量の増大を図り、規模の拡大に努めたい。生食でない加工品の開発にも力を入れて販路を広げていくことも重要だ。既に大学生が起業した黒石市の企業が、黄美香を使ったスイーツを開発するなど、付加価値づくりの動きが広まっている。
 リンゴにせよ、コメにせよ、津軽産の農作物は消費地、消費者から高い支持を受けている。二大作物に続くブランド農作物のバリエーションを増やし、消費者へのアピールを強めていけば、津軽産の農作物全体の付加価値が高まっていくことにつながる。
 生産者の高齢化や後継者不足、農作物全般における価格の低迷基調など、本県を取り巻く農業環境は、厳しいものがあるが、時代の流れに対応した産地づくりを進め、さらなる津軽産農作物のブランド化、付加価値づくりを進めていきたい。

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パートナーシップ制度/地方から国を動かすうねりに

2020/9/23 水曜日

 

 弘前市は性的マイノリティーのカップルを婚姻に相当する関係と公的に認定し、証明となる書類を発行する「弘前市パートナーシップ宣誓制度」を12月に導入する方針を表明した。現在は導入に向け、10月14日まで同制度案に関するパブリックコメントを募集している。
 同制度案は市民あるいは市内転入を予定している成人で、双方または一方が性的マイノリティーであるカップルが対象。互いがパートナーであると宣誓したことを受け、市が証明書である「弘前市パートナーシップ宣誓書受領証」を発行する。
 宣誓する日時は事前に市と調整してプライバシーに配慮するものとし、場所は市役所本庁舎内やヒロロスクエア内などを想定。双方が市外へ転出した場合や、双方の意志でパートナーシップが解消されたときなどは受領証を市に返還する。
 日本の婚姻制度は異性愛カップルを想定したものとなっており、性的マイノリティーのカップルは法律的に「存在しないもの」として扱われている状況にある。結婚や恋愛に対する価値観は多様化しつつあり、「事実婚」の異性愛カップルも昔より増えてはいるが、選択肢を持った上での「婚姻しない」と、選択肢を持てない状態の「婚姻できない」は、全くの別物だ。
 2015年に東京都の渋谷区と世田谷区は「同性パートナーシップ制度」とし、人生を共にしたいと考える同性カップルの権利を保障する仕組みを初めて導入。そこから5年経過したものの、保守的とされる東北において弘前市が初めて導入を表明した意義は大きい。
 法律的に「存在しないもの」とされる性的マイノリティーカップルを行政が公的に認定することで弘前市は、一部行政手続きにおいて異性カップルと同等の権利を得られるよう取り組むほか、同性カップルと同様なサービスが性的マイノリティー向けに拡大することを目指す。
 これは人として当たり前の権利を、当たり前に受けられる社会とするための歩みだ。かつて住む場所や職業は自由に選べるものではなかった。かつて教育は誰でも受けられるものではなかった。かつて女性に参政権はなかった。
 誰かを大切に思い、共に生きようとする権利は、誰もが認められる社会であるべきだ。東北初となった弘前市の取り組みが県内他自治体、さらには東北全域に拡大する動きにつながってほしい。さらには戸籍上の性別にとらわれず、婚姻を望むすべてのカップルが法的に認められる社会に向け、地方から国を動かすうねりとなることを期待したい。
 「かつて日本では、共に生きようとするカップルのうち異性愛者しか法律で認められなかった」。現在日本における婚姻の在り方が過去として語られる日が、一日でも早く訪れることを願う。

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衆院解散・総選挙「いらぬ政治空白は避けるべき」

2020/9/22 火曜日

 

 菅義偉新首相が就任したことを受け、永田町は衆院解散・総選挙の時期をめぐる憶測が飛び交い、かまびすしい日が続いている。来月の投開票は遠のいた感があるが、11月から来年1月に実施されるとの見方が有力だ。新型コロナウイルスの感染状況によっては来年10月の任期満了近くとなる可能性もあるが、あくまで永田町の都合だ。国民は万全なコロナ対策と早期の経済再生を望んでおり、「新政権の信を問う」必要性を多くは感じていない。いらぬ政治空白は避けるべきである。
 まず今秋解散説が取り沙汰されるのは、来年までの政治日程を考慮した場合、今年10~11月が比較的余裕があるためだ。
 12月に入ると2021年度予算編成が本格化する上、冬場は新型コロナとインフルエンザが同時流行する恐れもある。来夏は公明党が国政選挙並みに力を注ぐ東京都議選、東京五輪・パラリンピックと続き、9月末には菅氏の総裁任期が切れる。
 衆院任期満了に近づく「追い込まれ解散」を回避するには、1月の通常国会冒頭、遅くとも3月末に見込まれる21年度予算成立直後しかない。
 早期解散説には党内事情も絡む。新内閣発足直後の高支持率が続き、合流新党を含む野党勢力の準備が整わない状況を有利と踏んで、特に若手議員や“選挙に弱い”議員らを中心に待望論が根強い。
 自民党関係者は、12年の総選挙で大量当選した“魔の3回生”を中心に、本来は次期総選挙で15議席程度減らすはずと指摘。「逆に早期解散なら15議席増やすこともあり得る」と予想する。
 一方の菅首相は「1年以内に解散・総選挙がある。時間の制約も視野に入れながら考えていきたい」としており、慎重に判断する考え。
 ただ、首相は16日に広報ポスター用の写真を撮影し、17日には選挙プランナーと意見交換した。これらを踏まえ、党内からは「年内解散もあり得るのでは」と勘ぐる声も聞かれる。
 新内閣の顔触れについての評価も分かれる。「骨格は維持しつつスライドや再登板など実務型。しっかり仕事をするという意思表示」と解散が遠のいたとの指摘がある一方、「実務型だからこそ、選挙となっても支障はない」との見方もある。
 時事通信が行った9月の世論調査では、衆院解散・総選挙の望ましい時期について「来年の任期満了かそれに近い時期」が最多の40%だった。他の調査報道では6割近いものもある。
 政権が代わり、野党に新党が生まれ、来月にも選挙だと、浮ついた空気の漂う永田町。問われているのはかい離した国民生活と向き合い、現場を訪れ、声なき声にまで耳を傾けることだ。無用な政治空白をつくることではない。

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