社 説

 

首相辞任「“密室”の後継選びは許されない」

2020/8/29 土曜日

 

 安倍晋三首相が28日、辞任の意向を表明した。自民党は政治空白を避けるため速やかに総裁選を実施し、来月中に新政権を発足させる方針だ。新たな国のかじ取り役へ期待感はあるが、影響力を維持したい一部派閥による“密室”の後継選びは許されない。
 首相は辞任の理由として持病の潰瘍性大腸炎再発により、職務継続が困難と判断したと説明した。ただ、持病の再発は多くの党関係者が聞き及んでいた。その上で週1、2回の通院・治療を続け、職務にとどまるとの見方が大勢だった。
 突然の辞意に本県関係の議員は一様に驚きの声を上げ、「体調の悪化で気力が持たなくなったのでは」「それだけ首相の仕事は激務だということ」と同情の声を寄せた。
 また経済政策や安保法制など政権の実績を挙げつつ、憲法改正や日ロ平和条約交渉など志半ばに終わった重要課題について「さぞ無念だろう」と胸中を推し量った。
 同党は来年9月までの残任期間を務める新総裁選びに着手した。その行方を左右するのが約100万人の党員が参加する本格的な総裁選とするかどうかだ。
 ただ、党則は「特に緊急を要する」場合は党員投票を行わない簡易型の総裁選も認めている。党大会に代わる両院議員総会を開き、国会議員に1票、都道府県連に3票を付与して投票を行い、後任を選出する方法だ。
 一方、本県関係議員からは透明性と地方の声を聞く方法を望む声が相次ぐ。総裁選を通じて経済政策や新型コロナウイルス対策など重要課題について活発に議論を重ね、後継が決まったら党一丸となって取り組む姿勢を見せるべきとの考えがある。
 総裁選への出馬が見込まれているのは石破茂元幹事長と岸田文雄政調会長。一部で二階俊博幹事長との関係を強める菅義偉官房長官も取り沙汰されている。
 石破氏は地方で人気が高く、2012年の総裁選では地方票が首相を上回った。それだけに今回も本格的な党員投票の採用を訴えている。
 これに対し、影響力を残したい首相出身派閥の細田派と麻生太郎副総理率いる麻生派は、石破氏以外を前提に、簡易型で足並みをそろえるとみられる。
 当初は岸田氏への禅定が既定路線だったが、菅氏を推す二階派と手を結ぶ可能性もある。菅氏が総裁となった場合、新政権は選挙管理内閣の色合いが強く、来年9月の任期満了まで―との説もある。
 指摘したいのは、派閥の都合と力学による後継選びは、国民の目には“密室”にしか映らないということだ。新たなリーダーへの期待感を損なうことは、その後の政権の選挙戦略にも影響を及ぼす。最大限、地方の声に耳を傾ける姿勢が新たな船出に欠かせない。

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戦後75年「語り継ごう平和への思い」

2020/8/28 金曜日

 

 記憶の風化、語り部の喪失。「終戦の日」に合わせ、特集記事を書く。新聞社の人間にとって欠かしてはならないものと思う。だが取材環境は年々厳しさを増している。戦争体験者の高齢化は進み、話を伺う機会そのものが減った。それでも二度とこのような悲惨で愚かな戦争行為をしないよう、体験者らの記憶を、しっかりと伝え残すことがマスコミの使命との思いは、変わることがない。
 75年の節目の年、本紙は連載企画「終戦75年」を掲載した。登場する人々、モノ、そのすべてに伝えたい確かなメッセージを感じた。
 平川市の男性の話が心に残る。太平洋戦争末期に生まれたわが子の顔を、おそらく見ることもできずに召集された男性の父親は、遠いフィリピンの地で戦死した。慰霊の旅で初めて現地を訪れた男性夫婦。男性は読み上げた手紙で思いが募り、奥さんは故人を「お義父さん」と初めて呼んだと本紙に語ってくれた。
 この話は決して特別なものではない。75年前、わが国では平川市の男性のような悲劇が無数に起きたに違いない。平穏な家族の暮らしが「お国のため」の名の下、引き裂かれたことを私たちは決して忘れてはならない。
 戦争を体験した世代から話を聞く機会は、さらに減るだろう。だが直接的であれ、間接的であれ、あの時代を語ることのできる人は、探せばいくらでもいるはずだ。それは人の記憶にとどまらない。本紙でも、集団疎開した都内の学校から感謝の印として贈られた船沢小学校の柱時計の話など、戦争の記憶を今に伝える貴重な品々が紹介された。
 人から人へ、モノから人へ。記憶は連鎖する。記憶の風化や体験者の減少を嘆く前に、どうしたら後世に伝えるべきことを伝えられるか。知恵を絞りたい。
 現実世界、とりわけ東アジアを取り巻く国際情勢は混沌(こんとん)としている。「戦争反対」「世界平和」だけでは現実問題に対処できないと主張する向きもあるかもしれない。だが、75年前の戦争により、多くの国民が亡くなり、国土が荒廃した事実は消し去りようがない。二度と日本をあのような状況におとしめないためにも過去に向き合い、学び、「不戦の誓い」を日本人一人ひとりの土台として持ち、その土台の上にどうすれば戦争を回避できるかを考えることが、真に求められる「現実的な対応」だ。
 意味合いは理解できるが「戦後は終わった」「戦後レジームからの脱却」などという言葉を聞くと、どうにも違和感を覚える。「戦後」が続いて何が悪いのか―と。今の時代を、起こるかもしれない「将来の戦争」の「戦前」にしてはならないし、まして「戦中」なぞ、もっての外だ。日本人にとって最後の戦争は太平洋戦争でなければならない。だから思う。戦後よ続け、どこまでも!

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冠婚事業者の苦境「業界の団結力で乗り切りたい」

2020/8/27 木曜日

 

 新型コロナウイルスの収束が見通せない中、弘前市の冠婚事業者が式場の利用を喚起するため、9月にも同業組合「弘前ウェディングバンケット協会」を立ち上げる。地域経済の回復に向けて冠婚事業者が果たす役割は大きく、今回の取り組みに期待したい。
 新型コロナの影響は飲食や観光業界で大きいとされてきたが、冠婚葬祭業界も甚大な打撃を受けている。その中でもとりわけ、結婚式などの冠婚業界は苦しい立場にあるという。同市内では今年3月以降、婚礼が1件も行われておらず、12月までには約300件の損失が見込まれるという。この点を知っただけでも事態の深刻さが理解できる。
 婚礼については、新型コロナの感染が拡大する以前から厳しい状況が見られていた。実施組数は年々減少し、現在は結婚組数のうち6割のカップルが挙式しない「ナシ婚層」と言われている。そこに新型コロナの影響が加わり、業界は抜本的な対策を迫られている。
 新型コロナの不安がなかったこれまでであれば、各冠婚事業者は競合する立場。それぞれに消費者を引き付けられるプランを立案し、売り込む努力をしてきた。しかし、コロナ禍が地域経済を苦しめる中、業界全体で立ち向かわなければならない状況となり、対策として考案されたのが今回の同業組合だ。
 フォルトーナ、ラグリーの2式場を運営する角長、ホテルニューキャッスル、弘前パークホテル・弘前プラザホテル、アートホテル弘前シティの4社が発起人となり、協会員を集めた後、正式に設立総会を開催する方向という。設立後は弘前独自の婚礼方式の確立、会合再開に向けた市民の機運醸成などに取り組んでいくことになる。
 会合の方式をめぐっては、「弘前エール飯」を仕掛けた弘前エールプロジェクト実行委員会が「弘前エールサミット」と題して新たな宴席の在り方を提案した。会場入り口での検温や開催時間の短縮をはじめ、円卓を利用する際の人数制限、お酌の禁止、飛沫(ひまつ)防止のため口元に専用の棒を当てるといった対策を取るなど、細かい点に気を配った。
 式場の利用を喚起するには、感染防止策の徹底が不可欠。同実行委の提案を一つのモデルとして、新たに立ち上げられる冠婚事業者の同業組合にも「ウィズコロナ」時代の会合の形式を提示することを期待したい。
 コロナ禍によって、コミュニケーションが大幅に制限されるようになった。しかし、われわれが社会で生活する上で、コミュニケーションは非常に大切なものだ。さらに言えば、婚礼など大勢の人が集まる場は、互いの絆を確認し合える場でもある。その意味でも冠婚事業者の努力に期待したい。強い団結力でこの苦境を乗り切ってほしい。

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首相が連続在職最長「見合う実績残せるか」

2020/8/26 水曜日

 

 安倍晋三首相の連続在職日数が2012年の政権復帰から24日で2799日となり、歴代最長を更新した。国政選挙を連勝に導く強さを背景に「安倍1強」体制を築き、政治の安定を図る一方、長期政権ゆえのおごりも指摘される。自らの自民党総裁任期満了まで残り1年余り。健康不安説も取り沙汰される中で、政権の総仕上げへ今後正念場となる。
 首相は12年12月の衆院選で旧民主党に勝利し、5年ぶりに政権に返り咲いた。約1年と短命に終わった1次政権の反省から、理念先行の政治スタイルを封印。金融緩和と財政出動、成長戦略の「3本の矢」による看板政策「アベノミクス」を掲げ、経済再生に最優先で取り組んできた。しかし、公約に掲げたデフレ脱却はいまだ実現できていない。
 アベノミクスの始動により、円高是正で輸出企業の業績は好転し、株価は15年に2万円台を回復した。しかしながら企業は賃上げに慎重な姿勢を崩さず、物価変動の影響を除く実質賃金は17年に前年比0・2%減、18年に0・2%増と伸び悩み、19年は0・9%減に沈んだ。家庭に景気回復の実感は乏しく、個人消費も盛り上がっていない。地方においては特にその傾向が顕著だ。日銀は2%のインフレ目標を掲げているが、消費税増税の影響を除くと、物価は一度も届いていない。首相は「デフレではない状況をつくり出せた」と述べたが、逆戻りの懸念は消えず、脱却宣言は出ていない。
 既に失速していたアベノミクスに追い打ちを掛けたのが、新型コロナウイルスだ。20年4~6月期の実質GDP(国内総生産)は年率換算で485兆円と前期比41兆円も目減りし、政権発足時(12年10~12月期)の498兆円を下回った。生活実感に近い名目GDPは506兆円で、600兆円の政権目標は遠のいた。
 消費税を5%から2段階で10%に引き上げたものの、主要国中最悪の状況となっていた財政はコロナ対策の巨額支出で一段と悪化しており、看板政策の果実が水泡に帰しつつある中で経済再生には構造改革が急務となっている。
 一方、政権の長期化とともに緩みが目立つようになってきた。森友・加計学園や「桜を見る会」をめぐる首相関係者の優遇が問題視され、野党などから「権力の私物化」をたびたび追及されてきた。新型コロナへの対応をめぐっても、「後手」に回っている感は否めず、政府の混乱も露呈。今月17日には長時間の検査を受け、24日も追加検査を行い、政界には健康不安説も広がっている。
 憲法改正、ロシアとの北方領土交渉、北朝鮮による日本人拉致問題解決など、首相が自らの任期中の実現を目指す内政・外交の課題はなお積み残されている。直面する新型コロナへの対応も含め、「歴代最長」に見合う実績を残せるかが今後問われることになりそうだ。

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移住相談「オンラインでも積極的に」

2020/8/25 火曜日

 

 新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、人口が密集しない地方移住への関心が高まってきているという。コロナ対策でテレワークや在宅勤務が広がりを見せ、働き方は多様化している。この機会に生活の拠点を、感染リスクの比較的低い地方へ移したいと考える人が出てくるのは理解できる。人口減少に悩む地方の側も、PRする好機だろう。
 ただ新型コロナの終息が見通せない中、多数の人を集めるイベント形式での情報発信や、本県での移住体験は以前と同じように開催するのは難しい側面があり関係者は新たな対応を迫られている
 県は6、7月にオンラインの移住イベント「あおもり暮らしまるごとオンライン」を開催した。オンラインでの移住イベントは初の試み。県庁内に発信拠点を置き、ビデオ会議システム「Zoom」を使ったイベントにしたところ、移住相談窓口がある東京都など首都圏近郊以外の、北海道や兵庫県、宮城県からも参加者があり、一定の成果があった。
 確かに、都内の窓口への相談やイベント参加は首都圏近辺以外の人にはハードルが高い。その点、オンラインでの相談はより手軽だ。県や市町村で構成するあおもり移住・交流促進協議会は今後もオンラインの活用を手法の一つとして取り入れ、対応していく考えで、8月には3回目の開催を予定している。ただ手軽な分、真剣に移住を考え、決断してもらうための工夫は必要になるだろう。
 弘前市も8月、オンラインでの移住セミナーを市内で初開催し、弘前の魅力をPRした。農業の後継者の確保も狙いの一つで、当日は就農希望者への支援策の説明や同市で就農した先輩の体験談も。参加者からも就農に関する質問などがあり、有意義なイベントだったようだ。
 地域おこし協力隊員による移住体験の情報発信も始まっている。各地の移住体験施設を活用し、県外者が多い協力隊員の目線で、地方の暮らしを発信しようという企画。6月に田子町で初開催され、8月には青森市浅虫地区で第2弾を実施、参加した隊員が移住体験施設に泊まり、農業や温泉、海など地域の特徴を捉えてSNSで発信した。移住者の視線での地域情報の発信は、これから移住を検討する人の参考になるはずだ。
 都内に設置されている移住相談窓口「青森暮らしサポートセンター」を通じて2019年度に本県に移住した人は68組131人で、14年度のセンター開設以来最多。移住への関心は年々高まってきているが、新型コロナがさらにその動きを加速させる可能性もある。
 8月には本県の移住情報をまとめたガイドブックも完成。市町村情報や先輩移住者のインタビューなど充実した内容になっている。さらにオンラインをうまく活用し、さまざまな県民の協力を得ながら移住希望者の背中を押してほしい。

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