社 説

 

水災害対策「危険な大雨に備えを」

2019/6/28 金曜日

 

 今年も台風などによる豪雨災害を警戒すべき季節になった。昨年6月下旬から7月上旬にかけて発生した西日本豪雨で、土砂災害や水害による死者・行方不明者200人超、家屋被害3万棟近くという甚大な被害が生じたことは記憶に新しい。2018年に国内で発生した土砂災害は約3400件で、集計を始めた1982年以降で最多、17年までの年平均件数の約3倍というデータもある。もはやいつ身近で水害・土砂災害が発生してもおかしくない。十分な警戒が必要だ。
 幸いなことに本県では過去に記録された雨量はそれほど多くないようだ。県民からすれば、東日本大震災で地震や津波の怖さは経験しているが、大雨で自宅から避難する事態になることはほとんどない、という思いがあるのではないか。
 だが、近年は前例のない豪雨といった報道に触れる機会が増えている。過去に豪雨の経験が少ないということは、想定を超える大雨に対する備えは設備面でも意識の面でも十分ではないと言える。いざ緊急事態になった時、適切な行動ができるのか、振り返る必要があるだろう。
 昨年の西日本豪雨の際に浮上した課題の一つが、住民避難の遅れだ。避難情報が遅かった自治体もあったが、実際の浸水状況が事前に提供されていた浸水想定区域図やハザードマップとほぼ一致し、避難情報を出していた自治体でも避難を決断できず、逃げ遅れた住民がいた。
 ハザードマップなど事前に提供される土地のリスク情報の重要性、意味をどう理解してもらうか、緊急時に必要な情報をどう切迫感を持って伝えるかという検討は、人的被害を防ぐためには必要不可欠だろう。中央では既に行政や情報を伝えるメディアが参加したプロジェクト会議が発足し、住民への水害・土砂災害情報の伝達に関する対応策などについてリポートを取りまとめている。本県でも今月、国土交通省青森河川国道事務所を中心に青森地域メディア連携協議会が設立され、今後協議が本格化する見通しだ。
 プロジェクトリポートでは、住民に自ら行動してもらうため、災害情報を単純化して分かりやすくすることや、切迫感を持って伝えること、災害情報を容易に入手できるようにすることなどの必要性を指摘。高齢者ら情報弱者が漏れないようにするため、地域コミュニティーの防災力強化についても言及されている。
 平時からの情報発信ももちろん重要だが、住民の関心が高まるのはやはり台風の接近時など気象状況の悪化が想定される時ではないか。事前に十分に検討し、必要な情報を分かりやすく、円滑に提供する方法について模索していきたい。
 情報を受ける側の心構えも必要だ。想定外の災害が発生する時代だと心得て、「わが家だけは大丈夫」という甘い考えは捨て、最悪の事態を想定した家族の行動を、一度は真剣に考えてみてほしい。

∆ページの先頭へ

陸上型イージス「信頼回復の道は遠い」

2019/6/27 木曜日

 

 陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備をめぐり、秋田県への説明資料に誤りがあった問題が尾を引いている。岩屋毅防衛相が秋田市を訪れ、佐竹敬久知事、穂積志市長に直接謝罪したものの、両首長は態度を硬化させており、調整は難航必至となっている。説明資料の誤りは、あまりにも初歩的なミスであり、さらには、地元説明会で防衛省職員が居眠りをしていたことも発覚した。レーダー施設と言えば、万が一有事となれば、優先度の高い攻撃目標になる可能性がある施設だ。配備に向け、地元では慎重な意見が出ることも十分予測できるのに、あまりにも緊張感を欠く行為と言える。地元の反発も当然のものだろう。
 イージス・アショアは、イージス艦に搭載されているレーダーや迎撃ミサイル発射機などで構成されるミサイル防衛システムを、陸上に配備するもので、米国が開発した。日本では、弾道ミサイルの発射実験などを繰り返す北朝鮮への抑止効果などを念頭に、日本海側の2カ所に配備することを決め、防衛省が秋田県の陸自新屋演習場と、山口県の陸自むつみ演習場を選定した。
 今回の誤りは本当に初歩的なものだ。日本列島北部をカバーするイージス・アショアの候補地選定に当たり、防衛省は日本海に面する本県と、秋田、山形3県の国有地を比較。レーダー波を遮る可能性がある山との位置関係などを考慮し、新屋演習場を選定した。
 その説明資料を作成する際に、衛星地図ソフト「グーグル・アース」を使用したが、標高と水平距離の縮尺が異なることに気付かず、候補地から付近の山頂を見上げる角度を実際よりも大きく表記したまま、秋田県側に提示したという。その後も新たな誤りが見つかるなど、同省の対応はお粗末極まりないものがある。防衛省職員の居眠りも含め、緊張感が欠如していると言わざるを得ない。
 岩屋防衛相は、新屋演習場以外の東北地方19カ所で行った調査に関し、現地で新たに測量を行う考えなどを示し、理解を求めた。
 だが、当然の反応だろうが、両首長は厳しい姿勢を崩さなかった。防衛省は、相次ぐ不手際を受け、イージス・アショアの整備推進本部を立ち上げ、秋田、山口両県との調整や地元説明資料の作成などを進める方針だが、配備までの道のりは厳しいものがあるだろう。政府が目指す2023年度の運用開始は既に困難とみられているが、さらにずれ込む可能性もある。
 地元の不信は、容易には解消されまい。だが、施設の性格上、地元の理解なしに計画を進めていいというものではない。十分な再調査と再発防止策を講じ、丁寧な説明を図る。まずはここから始めるしかない。

∆ページの先頭へ

太宰生誕110年「作家と古里の魅力知る機会に」

2019/6/26 水曜日

 

 今年は五所川原市(旧金木町)出身の作家太宰治の生誕110年の節目。誕生日に当たる19日には同市金木町の県立芦野公園太宰治銅像・文学碑前で記念祭が行われ、参加者が太宰をしのんだほか、22、23日には太宰文学映画祭などが開かれた。
 県内外はもちろん、海外からもファンが駆け付け、年齢層も幅広い。太宰文学は作家の人間性も相まって今なお多くの人々を魅了してやまない。節目に当たって、そのことを改めて認識させられる。
 太宰(津島修治)は1909年、旧金木町の大地主津島源右衛門とタ子(たね)の六男として生まれた。旧制青森中学校、旧制弘前高校に進みながら創作活動を続け、東京帝国大学に入学。次々と発表した作品は独特の世界観で作家としての地位を確立した。芥川賞の夢はかなわなかったが、昭和の日本を代表する作家の一人と言える。太宰が残した「斜陽」「津軽」「人間失格」など数々の名作は、今なお多くのファンの心をつかんで離さない。また「走れメロス」は教科書でも紹介され、多くの人が一度は目にしたことがあるはずだ。
 私生活は薬物依存、自殺・心中未遂を繰り返す波乱の一生だった。最後は東京・玉川上水で入水(じゅすい)心中し、誕生日と同じ6月19日に遺体が発見された。このため弱さや暗さといったイメージがつきまとうのも確かだが、さまざまな重圧や心の傷を原稿用紙にぶつけながら、創作に生涯をささげた姿勢は「弱いのではなく、自分の弱さをさらけ出した強さ」(木下巽・金木太宰会会長)とも評される。
 木下会長は生誕110年の節目に当たり本紙1月1日付の紙面で、太宰の魅力を「人間愛、人類愛という普遍的なものが作品の根底にあり、そこに多くの人が共感するのではないか」と指摘。「さまざまな作品で、底辺をはい回るような主人公が最後には救われる。そこに太宰の再生と祈りへの思い、優しさが込められており、私たちに“精いっぱい生きなさい”と呼び掛けている」と語っている。作品のみならず太宰の生き方そのものに憧れる人が多いのも、そのためだろう。
 県内には、生家がある五所川原市をはじめ、旧制弘高時代を過ごした弘前市など各地に太宰ゆかりの場所が多数ある。一部は整備・保存され、喫茶室などとして活用されている場所もあり、ファンらに親しまれている。県外にもゆかりの地は多く、連携しながら誘客を図るのも地域活性化の一つの手段だろう。また、本県を太宰文学の研究拠点の一つとして位置付けを強化してはどうか。
 節目の今年を関係者は「太宰イヤー」と位置付け、一年を通じて各種イベントを予定している。さまざまな角度から作家太宰の魅力に触れ、同時にその原点である古里を改めて見詰め直し、郷土愛を深める機会にもしたい。

∆ページの先頭へ

西海岸観光「新イベントの取り組み成果に期待」

2019/6/25 火曜日

 

 いよいよ夏祭りシーズンが到来、西海岸地域でも新企画の祭りが続々予定されている。鯵ケ沢町では、季節の食イベント第2弾「あじがさわ肉フェス」が7月13、14日に行われる。8月には既に恒例となった、海辺を花火で彩る「LIGHT UP NIPPON」を国内他都市とともに実施する。深浦町は、南側に隣接する秋田県八峰町と合同で「秋田へ行こう!×津軽へ行こう!『八峰・深浦国境400年まつり』」を7月13、14日に八峰町で開く。両町とも従前からの取り組みに加えて新機軸を前面に押し出しており、今後の西海岸観光の発展にどのように結び付くのか注目したい。
 鯵ケ沢町の季節の食イベントは6月の「ヒラメ」、7月の「肉」、11月に「スイーツ」と続くものであり、同町の食を広くPRするとともに、今後の町観光の在り方を探ろうとする狙いだ。単なる一過性のイベントに終わらせまいという主催者の意気込みがうかがえる。第1弾「ヒラメフェス」は「ヒラメのヅケ丼」で知られる町産ヒラメ尽くしのイベントであり、町内外から5000人(主催者発表)を集めた。続く「肉フェス」は同町の2大牧場を主に牛肉、豚肉、鳥肉が味わえるとあって再び期待が高まる。
 深浦町の国境400年まつりは、弘前、秋田両藩の間で現在の深浦、八峰両町の県境部分が画定したとされる1619(元和5)年から400年の節目に開くものであり、両町を代表するグルメが登場する。深浦町では、これまで町内外の人を楽しませてきた「お魚大漁祭り」「深浦ヤットセ」の開催が今年見送られたが、秋田県での祭りが今後どのような展開をもたらすのか興味深い。
 西海岸2町は観光資源という面では、他地域に負けず劣らず恵まれている。その主なものには、世界自然遺産白神山地に代表される広大な自然、日本海を染める色鮮やかな夕日、豊かな漁業資源が挙げられる。鯵ケ沢町で水揚げされたヒラメを使った「ヒラメのヅケ丼」、本県水揚げ量トップの深浦町産マグロによる「深浦マグロステーキ丼」もあり、いずれもデビューから今年までに提供食数20万食を突破、各町の代表的なグルメとして認知されている。
 一方で、西海岸観光に関し「せっかくの資源を生かし切れていない」「PR不足」といった声も聞く。都市部から遠く、交通手段の多様化や交通アクセスの整備も課題だ。関係者はもちろん自覚しており、改善に向けた取り組みを地道に進めている。一例を挙げれば、鯵ケ沢町では観光客が何を求めているか知るためアンケートを実施したほか、漁船を使った「日本海クルーズ」を開始した。深浦町では新商品「深浦マグロソフト」の提供を開始し、好評を博している。これらの取り組みを呼び水とし、今夏の祭りが成果の表れとなってほしい。

∆ページの先頭へ

地震対応「過去の例からの学びを実践に」

2019/6/22 土曜日

 

 新潟県村上市で震度6強を観測した地震による新潟、山形両県の停電が復旧し、多くの小中学校の授業や、一部区間で運休していたJR羽越線、陸羽西線の運転も再開。市民生活は平常化へ動き始めた。ただ、引き続き余震に警戒が必要なことに加え、日本海沿岸の海底にはいくつもの断層があるといい、今回被害が確認されなかった本県も、備えを再点検する必要がある。
 今回の地震では21日、新たに重傷3人を含む5人の負傷が分かり、負傷者は33人となった。家屋の損壊は秋田県内で2棟が確認され、計145棟に上った。ただ、津波が微弱だったことや、火災源となり得るストーブを使う季節でなかったことなどから、震度6強という強い揺れに見舞われながらも、死者や大規模火災がなかったのは不幸中の幸いと言えるのではないだろうか。
 東日本大震災の教訓が生かされたのも特記すべきことだろう。深夜の発生であったが、津波注意報を受けて住民は避難所に向かい、海沿いに緊急停止したJR羽越線の列車では、津波を警戒した乗務員が50人以上の乗客を近くの高台まで誘導した。JR東日本は東日本大震災以降、津波に対する訓練を徹底しており、緊急時は社の判断を仰がずに対応するよう乗務員に指示していたという。
 東日本大震災以降も熊本地震、北海道胆振東部地震など、大きな被害をもたらす地震が頻発している。いつ、どこで地震に遭遇するか分からないのが日本という国だと改めて認識させられた。地震予知に関する研究が続けられているが、現時点では難しいのが現実。では、どうするか。過去の地震から学んだ「自分の命を守ることを最優先する行動」を実践する。これに尽きる。
 政府の地震調査委員会は今年2月、日本海溝沿い地震の長期評価を更新。東日本大震災と同程度の巨大地震が30年以内に起きる確率は、前回評価同様ほぼ0%だが、マグニチュード(M)7~8弱については本県沖から茨城県沖の大半の区域が最も高い3(26%以上)に分類された。東北地方日本海側などの日本海東縁は26%未満の2以下だが、今回の地震で分かるように、東北地方日本海側も安心は禁物である。
 今回の地震は「日本海東縁ひずみ集中帯」と呼ばれる日本海沿岸部で発生した。この領域は1964年の新潟地震や83年の日本海中部地震といった大地震を引き起こしている。専門家は今まで注視していなかった断層が動いた可能性を指摘するとともに、震源が近ければ津波に警報が間に合わないケースも考えられると注意を促す。つまり、警報が出てから避難しても手遅れになるということだ。
 強い揺れを感じたら、津波警報・注意報を待たずにすぐ高台へ。今回の地震からの学びとしたい。

∆ページの先頭へ

Page: 1 2 3 4 5 6 7 8 ... 130

当サイトでは一部、Adobe Flash・PDFファイルを使用しております。閲覧にはAdobe Flash Player・Adobe Acrobat Readerが必要です。最新のプラグインはアドビ社のサイトより無料でダウンロード可能です。

  • Adobe Flash Player ダウンロードセンター
  • Adobe - Adobe Reader ダウンロード