社 説

 

新陸上競技場「多彩な利活用策の検討を」

2019/9/6 金曜日

 

 青森市宮田に整備が進められていた新県総合運動公園陸上競技場が完成した。供用開始日の9月1日には早速、県民駅伝が同競技場をゴール地点とするようコースを変更して行われ、開会式や表彰式の会場としても活用されるなど、華々しく県民にお披露目された。
 補助競技場や投てき・アーチェリー場も備え、県内では唯一の日本陸上競技連盟第1種公認の陸上競技場。大規模大会を開催することができ、今秋の県高校新人陸上選手権大会などで使われるほか、2025年に本県で開催が予定されている国民スポーツ大会の開会式・閉会式会場としても活用される予定だという。
 事業費は約200億円超。2度の入札不調を乗り越え、事業着手から完成まで約7年という一大プロジェクトだ。大規模なスポーツ大会以外にも、各種イベントや健康づくりなど、より多くの県民が利用できるように工夫してもらいたい。
 主競技場は地下1階、地上4階建て。本県らしさが感じられるのは、冬や降雨の日もトレーニングが可能な室内練習場や周回走路が設けられたことだろう。ジョギングはもちろん、室内練習場には100メートルのレーン、走り幅跳びができる砂場なども備えており、健康づくりのほか、陸上選手の冬季のトレーニング、アスリート育成にも大いに役立つはずだ。
 連続する山々をイメージしたという大屋根を、28本の柱が支える特徴的な構造も目を引く。著名な建築家伊東豊雄建築設計事務所の設計で、大屋根は長さ約230メートル、フィールド側に約26メートル跳ね出しており、国民スポーツ大会で来青する全国の選手や関係者をさぞ驚かせることだろう。屋根に積もる雪や雨水をフィールドの散水、トイレの洗浄水など雑用水として再利用したり、地中熱のエネルギーを空調に活用したりする仕組みは、子どもらの環境学習にも活用できそうだ。
 気になるのは青森市中心部からやや距離があること。せっかく大人数が収容できる施設だが、2万人近くが集まるとなれば渋滞や駐車場不足などの諸課題が出てくるだろう。競技場までのアクセスについては今後、知恵を絞る必要がある。
 同市安田の旧陸上競技場は一部の競技で使用されるのを除き、今年度限りで閉鎖となるが、県は今後の取り扱いを検討する方針だ。市中心部からより距離が近く、数多くの大会が開催されるなど長年親しまれてきた同競技場。竣工(しゅんこう)から50年以上という老朽化著しい施設であり、安全性の確保や財源など課題が多いが、より気軽なスポーツイベントやトレーニングに活用できないか、検討を求めたい。
 新競技場が会場となる国民スポーツ大会は開催準備が徐々に進んでいる。大会イメージソングの歌詞募集は今月19日まで。スポーツは不得意という人も、自分のできる範囲、得意な分野で大会の盛り上げに一役買ってみてはどうだろう。

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弘南鉄道減便「公共交通の将来、議論深化を」

2019/9/5 木曜日

 

 弘南鉄道が10月1日から、弘南線で上下線合わせて12本、大鰐線で同6本を減便するダイヤ改正を行うと発表した。減便は弘南線で2007年以来12年ぶり、大鰐線では06年以来13年ぶりとなる。
 弘南線ではこれまで30分から1時間間隔での運行だった午前9時~午後5時の便をすべて1時間間隔に変更。最終便については上下とも10分遅くなる。大鰐線も現行の始発の減便や午前9時~同10時と午後6時~同7時も各1便を減らし、そのほか、通勤・通学で込み合う時間帯も一部発着時間が変わるという。今回のダイヤ改正について、同社は利用者の減少に伴う経営面での負担を軽減するための措置としている。
 車社会の中での公共交通の在り方が問われ続けている。自動車の普及で車での通勤や移動が中心となる中、こうした移動手段を持たない高齢者や学生ら、いわゆる交通弱者の利便性をどのように確保するかは、悩ましい問題である。
 公共交通の担い手が民間企業である場合は、会社の収益性の確保などとの兼ね合いも考えねばならないだけに、より問題が複雑となる。
 同社の担当者によると、大鰐線の日中利用客が特に少なく、弘南線でも減少傾向にあるという。大鰐線は、沿線自治体や商工団体などとも連携し、活性化策を探っているが、一朝一夕の解決とはいかない。自動車の必要性が大都市圏より高い地方において、本格的な人口減少時代に入る中、公共交通機関の利用者を増やすためには、知恵と工夫が必要だ。
 大鰐線に関しては、同線の中央弘前駅(弘前市)近くに来春、弘前れんが倉庫美術館が開館する。集客力が見込める施設であり、敷地内に来館者用の駐車場を設けず、公共交通機関を使っての来館を促すことから、同線の利用者増加に期待が掛かる。こうした好材料に加え、中央弘前駅は、その立地条件も良い。弘前市の中心商店街・土手町に至近の距離にあり、前述の美術館や弘前公園といった中心市街地の観光施設へのアクセスが容易だ。例年、会場周辺で大渋滞が生じる弘前さくらまつりなどで、同駅をパークアンドライドの拠点として活用できれば、弘前市の観光、経済の活性化という観点でも大きな意味を持つのではないか。
 大鰐線の収益性が改善すれば、それは弘南鉄道の経営環境に好影響を及ぼすことにつながるだろう。今回のダイヤ改正では、弘南線も大幅な減便となる。大鰐線と比べても通勤、通学利用の多い同線の減便は、利用者の利便性に少なからぬ影響を与えることになるだろう。事業者には改正後の利用状況を分析し、利用者の声を丁寧に聞き取るなどして、今後もより良い公共交通の在り方を模索してもらいたい。それには行政などの支援や公共交通に対する地域住民の理解が必要不可欠なのは言うまでもない。

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弘前産シードル「深まるリンゴ産地の魅力」

2019/9/4 水曜日

 

 シードルの国際品評会「ジャパン・シードル・アワード2019」で、弘前産リンゴの摘果(未熟果)を使ったもりやま園(弘前市)の「テキカカシードル」が、日本部門で最高賞の大賞を初受賞した。
 市内で醸造される他の4銘柄も入賞を果たしており、日本一のリンゴの産地弘前が、国内外に「シードルの街・弘前」をPRする結果となったのは喜ばしいことだ。
 品評会は日本シードルマスター協会が主催して2018年に始まり、第1回では弘前産リンゴを使った6銘柄が入賞。いずれも大賞獲得には至らなかったものの、「テキカカシードル」はテイスト審査部門のドライで、最高評価の三つ星に次ぐ二つ星の評価を得た。
 その後、もりやま園は、よりクリアな味わいを求めて発酵時間の調整や温度管理に取り組み、シードルの濁りを抑えて今年7月の品評会に臨んだ。その結果、テイストおよびデザインの両審査部門で三つ星を獲得し、日本部門の頂点に立った。
 味、デザインの評価はもちろんだが、従来は実すぐりで捨ててきた摘果を主原料に醸造するという斬新な発想から生まれた商品であることも大きな特徴だ。もりやま園では年間約30トンの摘果が生じるが、そのほとんどを搾汁してジュースやシードルに生かしているという。今後の需要拡大によって、これまでほとんどのリンゴ農家で未利用だった摘果の活用が一層進むことが期待される。
 今回の品評会では国内外の118銘柄が入賞した。このうち、「テキカカシードル」も含めた5銘柄が市内で醸造されており、テイスト審査部門のフレーバーでGARUTSU「MIXシードル8」、ドライでファットリア・ダ・サスィーノ「弘前アポーワイン!ライト」、スイートで弘前銘醸「弘前城しいどる無ろ過スイート」、ミディアムで同社の「弘前城しいどるクリア」がそれぞれ二つ星。「弘前城しいどるクリア」はデザイン審査部門でもラベルで一つ星を獲得した。
 弘前ではシードル醸造の機運が高まっており、各製造者が飲む側のニーズに応えようと、より良い味や品質を求めて切磋琢磨(せっさたくま)している。その成果として種類も豊富なシードルが次々と誕生している。従来のイメージを覆すように、アルコール度数が高いものや、これまでのシードルにはなかった辛口のものが出始め、楽しみ方の幅も広がっている。
 出来秋を迎えた津軽地方ではリンゴの収穫が今後本格化する。新鮮な生果を味わいつつ、産地ならではの“地シードル”を多くの人に楽しんでもらいたい。今や観光の目玉の一つとして定着しつつある「シードルの街・弘前」を国内外に広くアピールし、産地活性化に結び付けたい。

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車両一時停止促進策「歩行者に優しい県へ取り組みを」

2019/9/3 火曜日

 

 板柳町の交通安全団体である板柳地区交通安全協会、同安全運転管理事業主会、同安全運転管理者協会が行っている取り組みに注目したい。他の自治体に先駆け、信号機のない横断歩道などで、ドライバーに一時停止を促す取り組みだ。具体的には「横断歩行者に優しい板柳町」と表記したステッカー、プレートを作成し、町内事業所の建物や業務車両に張ってもらう試み。開始から約1カ月が経過する中、取り組みの賛同事業所からは「気が引き締まる」「(他の車への)相乗効果が期待できる」といった声が聞かれている。関係機関が共同で行う、こうした取り組みが他自治体にも広まり、やがて「歩行者に優しい青森県」となることを願ってやまない。
 3団体の取り組みは、町中心部で下を向いて歩く人も散見されることから「一層の配慮が必要」と、車両後部に張り付けるステッカー約120枚、建物に掲示するプレート約400枚を作成。8月下旬までに町内約50事業所に配布し、ドライバーに対する意識啓発を図っているほか、歩行者にもアピールしている。
 確かにこうした文言が入った事業用車両は多くの人の目に触れ、ドライバーは周囲の誰が見ているかを気にしながら運転することになり、目立つようなスピード超過や横断歩道前を一時停止しない、といったような行為はやりにくい。逆にステッカーを張った車がそうした運転をすれば、目立ってしまい事業所自体の信用も失ってしまう。実際、ドライバーからも「(プレートを)見られていると思うと、一層気が引き締まる。自家用車の運転でも、より注意するようになった」と効果を実感する声が聞かれている。
 日本自動車連盟(JAF)が2018年に行った「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査」によると、本県の一時停止率は全国ワースト5位の2・1%であり、全国平均8・6%にはるか及ばない。逆にトップは長野県の58・6%だった。ドライバーの意識にどのように働き掛け、こうした高い数字を出しているのか、先進事例として学ぶことも必要であろう。
 県警のまとめによると、今年に入り8月末までに発生した交通事故件数は1756件で、前年より122件少なく、減少幅が大きい。しかし、事故による死者は26人で前年よりわずか2人減ったにすぎない。一層の交通事故抑止に向けた取り組みが求められよう。そうした中で、板柳町3団体の取り組みは、一歩踏み出した意識啓発策と言える。ほかにも弘前市では、津軽弁を使った交通安全標識が注目を浴びている。むろん、平素から各地の交通安全団体も積極的に取り組みを進めていることを忘れてはなるまい。その中で何がより効果的にドライバーに安全運転を訴える策なのかを考え、活動を続けてほしい。

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年金の財政検証「安心できる内容か」

2019/8/31 土曜日

 

 厚生労働省が、公的年金の給付水準見通しに関する5年に1度の財政検証結果を公表した。
 財政検証は、年金財政の健全性をチェックする作業。実質経済成長率が高め(0・4~0・9%)で推移し、女性や高齢者の労働参加が続いた場合は、少子高齢化の進展に応じて給付水準の伸びを抑制する「マクロ経済スライド」を実施しても、所得代替率(現役世代の手取り収入と比べた年金額の割合)は約30年後の2047年度まで法定の50%以上を維持できる―と結論付けた。
 所得代替率が次期検証の5年後までに50%を下回る場合は、保険料や給付の在り方を見直すことになっている。その意味で、同省は「公的年金制度は大丈夫」と示したかったのだろう。
 今回の財政検証ではオプション試算も実施。パート労働者の厚生年金適用拡大や、年金の繰り下げ受給などが、年金の給付水準を確保する上でプラスと確認された―と強調した。老若問わず可能な限り健康を維持しながら働き続けて保険料を納め、お年寄りは受給開始をなるべく待って―と言っているように聞こえる。「老後の生活を支える主柱」を掲げながら、実際には老後の暮らしよりも公的年金制度の維持にばかり目が向いてはいないか。
 検証では、実質経済成長率別に六つのケースで試算したが、実質経済成長率が微増か横ばい(0・0~0・2%)の場合ですら、所得代替率は44・5~46・5%と法定の50%を割ってしまう結果に。年金水準がいかに経済動向に左右されやすいかを示している。制度を楽観的に考えるのは危険そうだ。
 六つのケースのうち最も標準的な設定(実質経済成長率0・4%)では、47年度の年金の受給月額(基礎年金と厚生年金の合計)が24万円で、所得代替率は50・8%。今年度の22万円、61・7%と比べて額は2万円増えても実質は2割近く目減りする格好だ。
 金融庁報告書で議論を呼んだ、いわゆる「老後資金2000万円問題」の不安は、結果的に払拭(ふっしょく)されないまま経過しそうだ。
 当時、麻生太郎金融相は「著しい不安と誤解を与えた。政府のスタンスとも合わない」と報告書を受け取らなかったが、所得代替率の目減りを含む年金の不足分は、自ら補うしかない。補い切れない分は、家計をダウンサイズすることになる。
 さらに指摘されているのは、40代半ばに差し掛かった「就職氷河期世代」の存在だ。長期にわたり非正規雇用や無職にある人は、国民年金の満額支給を受けられず低年金に陥る可能性がある。今後、年金水準の低下というダブルパンチを軽減する観点から対策を講じる必要があるだろう。

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