今冬の県内は低温と降雪が続いている。弘前市内も暖冬少雪傾向だった昨冬と比較し、どうしても大雪だという印象を抱いてしまうのは否めないが、さらに例年と異なるのは年末以降、真冬日が連続している部分だろう。
例年であれば氷点下を上回る日が挟まれて積雪量が減るものだが、氷点下が続く今冬は、路面の雪が固く凍結し、除雪車すら削りにくい状態だ。除雪車通過後の圧雪も寒さのため砂のように足を取られる雪質に変化し、除雪が行われていないように見える箇所も多く見られる。
年末から市に対しては、除雪車通過後の雪や氷の塊といった寄せ雪に関する苦情のほか、「早く除雪してほしい」といった要望などが相次ぎ、8日までに約1000件に達した。降雪が少ない日も苦情が多く寄せられる傾向にあったのは近年暖冬が続いた影響かもしれない。
雪国において冬の除雪は大きな課題であり、日々の負担が減る工夫や在り方を望む気持ちは誰しも同じ。しかし降雪後の道路にまったく雪がなく、寄せ雪はかけらも見られず、道路脇に雪が積み上げられることもない、という事態が望めないのは致し方ないことだろう。
除排雪の在り方は模索し続けなければならないが、行政が大型除雪車を繰り返し投入するのみで、すべての解決を図ろうとするのであれば、税金が幾らあっても足りないのが実情と言わざるを得ない。
市は今冬の除雪費について、今年度当初予算の段階から例年通りの8億円に2億円増額した10億円を計上。費用が不足するたび実施する専決処分に要する手間を省き、除排雪作業をより迅速に対応できるようにしたもので、降雪が増えた今冬はその準備が生かされたと言える。
市の実施する除排雪が「公助」だが、「自助」「共助」のバランスはどうあるべきか。公助のみで除排雪問題は解決しない。自助に比重が偏り過ぎると、地方で増えつつある一人暮らしの高齢者など、弱い立場の住民に負担が大きくのしかかる。期待される「共助」も、無償で動くボランティアらの善意頼みとなった場合、担い手不足に陥って長続きしなくなる可能性が高い。
市は2019年度に除雪困難者を対象とした一般除雪後の寄せ雪対策に、事業者を活用する試験的取り組みを開始。今冬は市内事業者が保有する余剰の小型除雪機を近隣町会に貸し出す仕組みも立ち上げた。住民、業者、行政のどこか一つに負担が集中するのではなく、負担を分散させて長続きさせる新たな「共助」の在り方を模索している。
雪国に住む者にとって、除排雪は頭を悩ませる課題だ。しかし共助の工夫次第で、希薄化が懸念される地域コミュニティーの再生につながる可能性もある。雪国における共助の今後を注視したい。