社 説

 

除排雪の在り方「公助、自助、共助の均衡を」

2021/1/12 火曜日

 

 今冬の県内は低温と降雪が続いている。弘前市内も暖冬少雪傾向だった昨冬と比較し、どうしても大雪だという印象を抱いてしまうのは否めないが、さらに例年と異なるのは年末以降、真冬日が連続している部分だろう。
 例年であれば氷点下を上回る日が挟まれて積雪量が減るものだが、氷点下が続く今冬は、路面の雪が固く凍結し、除雪車すら削りにくい状態だ。除雪車通過後の圧雪も寒さのため砂のように足を取られる雪質に変化し、除雪が行われていないように見える箇所も多く見られる。
 年末から市に対しては、除雪車通過後の雪や氷の塊といった寄せ雪に関する苦情のほか、「早く除雪してほしい」といった要望などが相次ぎ、8日までに約1000件に達した。降雪が少ない日も苦情が多く寄せられる傾向にあったのは近年暖冬が続いた影響かもしれない。
 雪国において冬の除雪は大きな課題であり、日々の負担が減る工夫や在り方を望む気持ちは誰しも同じ。しかし降雪後の道路にまったく雪がなく、寄せ雪はかけらも見られず、道路脇に雪が積み上げられることもない、という事態が望めないのは致し方ないことだろう。
 除排雪の在り方は模索し続けなければならないが、行政が大型除雪車を繰り返し投入するのみで、すべての解決を図ろうとするのであれば、税金が幾らあっても足りないのが実情と言わざるを得ない。
 市は今冬の除雪費について、今年度当初予算の段階から例年通りの8億円に2億円増額した10億円を計上。費用が不足するたび実施する専決処分に要する手間を省き、除排雪作業をより迅速に対応できるようにしたもので、降雪が増えた今冬はその準備が生かされたと言える。
 市の実施する除排雪が「公助」だが、「自助」「共助」のバランスはどうあるべきか。公助のみで除排雪問題は解決しない。自助に比重が偏り過ぎると、地方で増えつつある一人暮らしの高齢者など、弱い立場の住民に負担が大きくのしかかる。期待される「共助」も、無償で動くボランティアらの善意頼みとなった場合、担い手不足に陥って長続きしなくなる可能性が高い。
 市は2019年度に除雪困難者を対象とした一般除雪後の寄せ雪対策に、事業者を活用する試験的取り組みを開始。今冬は市内事業者が保有する余剰の小型除雪機を近隣町会に貸し出す仕組みも立ち上げた。住民、業者、行政のどこか一つに負担が集中するのではなく、負担を分散させて長続きさせる新たな「共助」の在り方を模索している。
 雪国に住む者にとって、除排雪は頭を悩ませる課題だ。しかし共助の工夫次第で、希薄化が懸念される地域コミュニティーの再生につながる可能性もある。雪国における共助の今後を注視したい。

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米国大統領選の後遺症「対立と分断の克服を」

2021/1/9 土曜日

 

 目を疑う光景だった。米大統領選のバイデン次期大統領の勝利を確定する手続きを行っていた連邦議会に多数のトランプ大統領支持者が侵入した前代未聞の騒乱。バイデン氏の大統領選勝利を正式に確定する上下両院合同会議の審議が一時中断した今回の騒乱は、先に行われた大統領選の後遺症の大きさを改めて浮き彫りにし、米国社会の分断の深さを再認識させられた。
 民主主義社会のリーダーを自任する米国を象徴する建物が、一時的とはいえ、暴力で占拠させる異常事態は世界を震撼させた。実行したトランプ氏の支持者らが厳しく罰せられることは当然だろうが、今回の騒乱を招いた責任をトランプ氏は、強く受け止めねばならないだろう。
 トランプ氏は占拠当日、バイデン氏の勝利確定への抗議集会をホワイトハウス近くで開催していた。この集会でトランプ氏が議会へ行くよう呼び掛けており、呼応した少なくとも数千人のトランプ氏支持者が議会へと行進。一部が建物内部になだれ込んでいる。
 感情的になっている多数の参加者に対し、無秩序、無計画に議会への行進を呼び掛ければ、どのような事態が起こり得るか。不測の事態を招きかねないことは、十分に予測ができたはずだ。騒乱の拡大を受けてトランプ氏はツイッターに投稿した動画で「平和でなければならない。家に帰ろう。愛している」と支持者に訴え、沈静化を図ったが、後の祭りというものだろう。一方で「盗まれた選挙だった。私たちの地滑り的勝利だった」とも投稿するなど、選挙戦への疑義を改めて主張したが、このような暴力的な手段での大統領選への抗議活動を誘発したトランプ氏に対し、「身内」の共和党内からも反発の声が出ており、求心力は大いに低下した。
 騒動鎮圧後に再開された合同会議で、民主党のバイデン次期大統領の勝利が最終確定。バイデン氏は20日、大統領に就任する。トランプ氏は、選挙結果は受け入れられないとしたものの、秩序立った政権移行が行われるとの見通しを示し、同時に自身の返り咲きにも言及した。
 そのキャラクターと相まってトランプ氏は「型破り」「異色」のイメージが付きまとった。大統領としての評価は、功罪両面があるだろうが、今回の議会不法占拠という米国民主主義に対する歴史的汚点を残した大統領として長く記憶に残ることは避けられないだろう。
 バイデン氏は、対立と分断を残した米国社会、国民の融和を図るという難しい課題をまずは克服しなければならない。世界で拡大するコロナ禍に立ち向かうには、これまで以上の国際協調が必要だが、カギを握るのはやはり米国だろう。日本にとって、さまざまな面で最も重要なパートナーである米国の動向をこれからも注意深く見守っていきたい。

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緊急事態宣言「どこを目指し、何をするのか」

2021/1/8 金曜日

 

 政府は7日、新型コロナウイルス感染症対策本部(本部長・菅義偉首相)を開き、東京都と埼玉、千葉、神奈川3県を対象にした緊急事態宣言を決定した。一方、都内の新規感染者は同日2447人に達し、感染爆発が起きている状況を裏付けた。今回の宣言は飲食店への時短営業要請に絞っているが、短期間であってもより強力な対応が必要ではないのか。政府には経済への悪影響を避けるといった抽象的な理由ではなく、なぜ制限を強めなくていいのか、目指す感染者数や病床使用率はいくらなのか分かりやすく示し、国民に協力を求めるべきだ。
 今回の宣言の発令期間は8日から2月7日まで。飲食店などに対し営業時間を午後8時まで、酒類の提供を午前11時から午後7時までとすることを要請。宅配やテークアウトは対象外とする。大規模イベントの開催は「収容人数の50%」を上限に「最大5000人」とする。対象地域では午後8時以降の不要不急の外出自粛も要請する。
 宣言に基づく措置を絞ることについて菅義偉首相は「限定的、集中的に行うことが効果的」と説明。小中学校の一斉休校はせず、16日からの大学入学共通テストは予定通り実施することも説明した。
 ただ、都内の新規感染者は急増しており、6日に1591人で過去最多を更新したばかりなのに、7日には一気に2500人近くまで急増。これでは“ロックダウン”が必要との声が上がるのもうなずける。
 昨年春の宣言時に人との接触8割削減を提唱した専門家は、昨年に近い厳しい対策を講じても、都内の感染者が十分に減るまでに約2カ月を要するとの試算をまとめた。より緩やかな対策では、今年度内に感染が十分減ることはないとした。
 さらに都内の感染状況が続くと仮定した場合、2月末の感染者は1日約3500人、3月末には約7000人に達するとも試算した。
 一方、飲食店への対策を中心に外出自粛や在宅勤務の徹底といった対策を取り、新規感染を3~4割削減すると、2月下旬には1日100人を下回るという。
 対象地域についても1都3県でいいのか疑問は残る。昨年春も結果的に全国へと拡大したこと、本県はじめ地方でも集団感染が発生していることを踏まえれば、まずは全国を対象とし、状況に応じて緩和した方が分かりやすいのではないか。
 政府は宣言解除について、感染状況が4段階中2番目に深刻な「ステージ3」相当に下がったかを踏まえ、「総合的に判断する」と説明している。
 多くの国民は、目先の経済よりも安全な日常生活を望んでいる。経済にとっても、制限を強めても短期間の方が好ましいのではないか。国会にも政府が“目指す姿”と、何が必要かを明らかにする責務がある。

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コロナとスポーツ「大会中止招かぬ効果的対策を」

2021/1/7 木曜日

 

 新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急事態宣言発令を翌日に控えた6日、東京都の新規感染者数が初めて1500人を超えた。感染拡大に歯止めがかからない東京都は、今年に延期された五輪・パラリンピックの主会場。宣言は感染リスクの高い飲食店などを対象にした「限定的、集中的」(菅義偉首相)な内容になるようで、どの程度の効果をもたらすのかは不透明。五輪・パラの行方に再び暗雲が漂い始めた。
 宣言発令の五輪・パラへの影響について加藤勝信官房長官は6日の会見で、開催判断に影響しないとの認識を示して、東京大会を開く方針に変わりはないことを強調しつつも、在り方については「国内外の感染状況の影響も受ける」と述べた。感染力が強いとの指摘もある変異種が広がりつつあり、現時点で明確な見通しを持てない。
 東京五輪・パラリンピック組織委員会は昨年12月23日、開閉会式の準備を進めてきた狂言師野村萬斎さんを総合統括とする制作チームの解散を発表した。趣向を凝らした開閉会式は見どころの一つだが、式典を簡素化させるため、五輪開幕まで7カ月という時期で白紙に戻した。開催を最優先した苦渋の決断だった。日本オリンピック委員会の山下泰裕会長も「開催するという揺るぎない決意を持っている」と強調した。
 しかし、組織委内では6日までに職員計16人が感染。さらにバドミントン男子単で金メダルが有力視されている桃田賢斗選手(NTT東日本)の陽性が発表されるなど、細心の注意を払っているはずのアスリートにも感染が広がってきた。
 影響は高校生の晴れ舞台にも及ぶ。首都圏で開催中の全国サッカー選手権は準決勝以降を無観客とすることを決めた。バレーボールの全日本選手権は開幕から観客を入れていない。本県でも高校のクラスター(感染者集団)発生を受け、全国大会などの予選を兼ねる県高校スキー大会が中止に追い込まれた。
 政府の対応の遅さがこうした状況を招いたと批判されても仕方ない。日本医師会の中川俊男会長は現状を「既に医療崩壊」と表現し、今後の動向次第で「全国的な発令も考えなければならない」と述べた。宣言の対象が全国に広がれば、冬季のインターハイや国体などの全国大会について、開催の可否が検討されることになるだろう。仮に高いレベルでの実戦機会を失うことになれば、競技力低下を招きかねない。特にスキーは開催可能な期間が短いため、屋内競技や夏季競技のように代替大会を組むのは容易ではない。
 プロ、アマチュアを問わず、それぞれの大舞台を目指して、血のにじむような厳しい練習を重ねてきたはずだ。宣言を含む各種対策を講じる際には、スポーツに懸ける彼らの思いも考え、実効性あるものにしなければならない。

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グリーン成長戦略「参入しやすい環境整備が必要」

2021/1/6 水曜日

 

 政府は2050年に温室効果ガス排出を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」の実現に向けた実行計画「グリーン成長戦略」を発表した。「エネルギー」「輸送・製造」「家庭・オフィス」の各関連産業別に成長が期待される計14分野の実施年限や技術的課題を列記。政府は同戦略を通じて、民間企業の投資や取引拡大などを合算した経済効果を、30年に年間90兆円、50年で同190兆円と試算している。
 同戦略は、菅義偉首相が昨年10月下旬に表明した「50年実質ゼロ」実現に向けてまとめられた。急速に強まった地球温暖化対策を求める国際世論を踏まえた対応だ。ただ、戦略発表はその表明から2カ月後。内容は新技術の開発が必要なものが多く、急ごしらえの印象は拭えない。政府が思い描く通り経済と環境の好循環を生み出せるだろうか。
 電力部門の脱炭素化は不可避だ。日本国内で化石燃料(石油、石炭など)に由来する二酸化炭素(CO2)排出量の約4割を占めているためだ。同戦略では乗用車の国内新車販売は30年代半ばで電気自動車(EV)をはじめとした「電動車」に限るとしたことなどで、電力需要はさらに増えることが想定される。
 同戦略では、50年の電源構成に占める再生エネルギーの比率を5~6割に高める「参考値」を示した。19年の3倍程度に当たる。その柱に位置付けられたのが洋上風力発電で、発電能力を30年までに10ギガワット(原子力発電所10基分相当)、40年までに最大で45ギガワットに引き上げる目標だ。
 ただ、国内実績が乏しい洋上風力は課題が多い。本格的な洋上風力は、大型風車の整備や専用船、蓄電池の調達などで数千億円の建設コストが掛かるとされる。同戦略では大型風車などに数万点が必要な部品の国産化と関連産業の育成を進め、国内調達率6割を掲げたが、風車のメーカーは現在欧米が主力。国内調達目標にこだわると、発電コストが増大するとの指摘もある。送電線の整備、深い海でも設置できる「浮体式」施設の開発も求められる。
 そもそも、特定分野だけ脱炭素化が進んでも、全体の脱炭素化にはつながるまい。電力需要が高まっても、電力部門が火力発電主体のままではCO2排出量は増大する。
 原子力発電については「可能な限り依存度は低減しつつも、引き続き最大限活用」として安全性に優れた次世代炉の開発などを掲げたが、明確な将来像は示されていない。使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地も未定だ。
 戦略では「(温暖化対応を)成長の機会と捉える時代」として産業界に「発想の転換」「変革」を求めている。ただ、現在は不確定要素が多い。実現に向けて企業が挑戦、参入しやすい環境整備がまだまだ必要ではないか。

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