社 説

 

人口減と高齢化「一極集中是正こそ最重要課題」

2019/7/12 金曜日

 

 日本の人口が10年連続で減少する中、本県の減少率は全国ワースト2位、高齢化率は過去最高を更新した。ここ数日の間に発表された各種統計で明らかになった、本県の実態である。いかに地域を持続させるのか、政治や行政はもちろん、県民も真剣に考える必要がある。
 県国民健康保険団体連合会が公表した今年2月1日現在の住民基本台帳をベースとした本県の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)。県平均は32・07%で、最高は今別町の53・45%だった。海岸地域の町村で高い傾向が見られ、10町村で40%を超えた。弘前市は31・38%だった。
 また、今年2月1日現在の本県総人口は129万1271人(前年同期比1万5409人減)で、65歳以上は41万4065人(同4803人増)だった。
 高齢化率が上昇し続けることについて県の担当者は「町村部で若者が流出している。対策には市町村だけではなく、国と県が一体となった対応が必要」と指摘する。
 それを裏付けるのが、総務省が10日公表した住民基本台帳に基づく今年1月1日現在の人口統計だ。
 それによると、日本の人口は前年同期比43万3239人(0・35%)減の1億2477万6364人で、10年連続の減少となった。減少数、率ともに過去最大を更新。都道府県別で人口が増えたのは東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)の4都県と沖縄県のみで、東京一極集中が依然進んでいることが分かる。
 各種統計が物語るのは、本県を含む地方は若者の流出によって人口が減少し、それに伴い高齢化が進む構図だ。地方が衰退すれば、ますます若者が流出する。この“負の連鎖”を断ち切ることは、本県だけでなく、国全体で早急に取り組むべき課題だ。
 先日、県総合計画審議会(会長・佐藤敬弘前大学学長)が2020年度に県が取り組むべき施策をまとめ、三村申吾知事に提言した。提言書では人口減少対策として若者の県内定着を促進するため、生徒・学生への働き掛けだけではなく、教員や保護者にも県内の魅力的な就職先を周知することも求めた。
 県は提言も踏まえ、大胆な手だてを講じてほしい。例えば他県に進学する若者に対し、卒業後は本県で働き一定期間納税することを条件に、奨学金を支給してはどうか。移住者用に自治体が空き家をリフォームするなど、他県の若者を迎え入れる方策も検討してほしい。
 折り返しを迎えた参院選では、社会保障が大きな争点となっている。確かに重要な政治課題ではあるが、もっと語られるべきは、若者や子育て世代に光を当てた政策だ。地方が衰退しては、国は成り立たない。いかに一極集中を是正するかが、最重要課題である。

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アートで街活性化「美術館が新設される今が好機」

2019/7/11 木曜日

 

 アートで街を活性化しようとする、草の根的な活動が弘前市内で見られている。同市内では来年春に「弘前れんが倉庫美術館」の開館が予定され、市民のアートに対する関心が高まっているだけに、同じような活動が今後増えていくことを期待したい。
 活性化といっても手法はさまざまだ。デザインユニットをつくり、同市内を拠点に活動する夫婦は、空き店舗を活用したアートイベントを開催している。
 営業をやめた、いわば不要になった店舗を活用すること自体、面白い取り組みなのだが、活用の仕方もまた独特だ。世界大戦が勃発した近未来をテーマとし、「時間が止まった空間」に地元のアーティストが作品を並べた。
 この夫婦は、今回の展示がモデルケースとなり、アート分野における空き店舗・空き家の活用が広がる足掛かりになればと展望している。確かにアートに空き店舗を活用する例はそれほど多くない。
 さらに興味深いのは、空き店舗を単に展示会場として活用することにとどまらず、「住む人が離れてもそのまま存在している、会場の不思議な空気感も作品の一つ」と話している点だ。空き店舗そのものまで作品と捉える、ポジティブな姿勢に共感できる。
 津軽地方に住むアーティストの一人は、街なかのあちこちにアート作品を仕掛ける取り組みを展開している。商店の壁、シャッターをキャンバスに見立て、取り組みに参加するアーティストたちが無償で作品を制作するという。
 構想では、取り組みに賛同する店舗や施設の内外に作品をこしらえ、地図上で数珠つなぎにし、将来的には観光客らに回遊してもらうことを目指しているという。国内外で評価を得ている気鋭のアーティスト数人が無償での協力を表明しており、取り組みの成果が注目される。
 弘前市は、さくらまつり、ねぷたまつりなど四季の祭りがあり、観光都市としては国内外に知られる。しかし、アートに関しては、県立美術館がある青森市、現代美術館がある十和田市が先行している。弘前市は今のところ「アートの街」への仲間入りを果たせていない。
 ただ、弘前市が今後、アートに関して他都市と肩を並べられる可能性は十分にあろう。実際、街なかにアート作品を仕掛ける取り組みを展開する関係者は、地元におけるアーティストの認知度向上などを目指している。それだけ、同市にはアートに関わる人がいるということなのではないか。
  美術館が新設される今が弘前市にアートを根付かせる好機。ただ、アートによる地域振興例は全国に多数あり、後発組が成功するのは容易ではない。新たな美術館が独自色を持つことはもちろん必要だが、それに伴い地元の活動が盛んになれば最も大きな特徴となるはずだ。

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七里長浜港「津軽の発展に資する活用を」

2019/7/10 水曜日

 

 津軽地域の14市町村が、鯵ケ沢町にある七里長浜港の名称を「津軽港」に変更し、さらなる港湾整備と利活用の促進を求める要望書を、港湾設置者の県に対して提出した。七里長浜港を歴史のある素晴らしい名称としつつも、全国的に知名度が高い「津軽」の名前を前面に押し出し、地域振興につなげたいという。要望書を受け取った三村申吾知事は即答は避けたものの、14市町村長の強い思いを受け止め、前向きに検討すると回答した。
 七里長浜港は本県日本海側唯一の物流港湾。県が1983年に工事に着手し、97年に供用を開始。当初の取り扱い貨物は建設資材などを中心に約6万トンだったが、2008年ごろから増加し、11年の東日本大震災に伴う建設需要の高まりなどを受けてさらに増えた。石灰石、砂などを主力貨物としながら、近年は風力発電の部品搬入も増え、18年の取扱貨物数量は過去最高の約25万トンとなっている。
 ただ八戸港、青森港などと比べると、七里長浜港の取扱貨物量はまだまだ少なく、知名度も今ひとつ。また同港はポートセールスに行っても「どこの港か」と聞かれることが多いという。実際、県民の中にも、なじみが薄いという人がいるはず。その点「津軽港」は本県津軽地域にある港ということが分かりやすい。
 市町村側には、同港を「津軽の海の玄関口」として認知してもらい、従来の建設資材だけでなく、農林水産物の搬入・搬出やクルーズ船の寄港などにもつなげていきたいという思いがある。16年には津軽地域の生産者から集荷した飼料用米を同港から八戸港へ輸送する試験的な取り組みが行われたが、今後は取り扱い貨物を建設資材以外にも広げていく取り組みが、一層重要になってくるだろう。
 また近年は実績がないが、1998年ごろから豪華客船「ふじ丸」「にっぽん丸」などが相次いで入港した例もある。津軽地域は世界自然遺産白神山地をはじめ、人気の高い観光資源が多い。津軽自動車道などアクセス道路の整備も着々と進んでおり、観光客誘致や国際交流の拠点としての活用も検討する価値はある。
 名称変更には港湾設置者である県の条例改正が必要。最終的には県の判断を待つことになるが、仮に変更の方針が決まれば、担当課では必要な手続きを精査し、早ければ年内、遅くとも年度内の条例改正を目指して作業を進める構えだ。
 関係者は「津軽は全国ブランド。青森県津軽の港だとすぐに分かる」として、津軽の名を冠した港の活用促進に大きな期待を寄せている。三方を海に囲まれているのが本県の特徴。北東北でも有数の国際物流拠点港となっている八戸港と、物流だけでなく近年は国内外のクルーズ船の寄港地としても知名度を上げている青森港に加え、津軽地域にも地域振興につながる港を育てていってほしい。今後の推移を、期待をもって見守りたい。

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黒石で映画館復活「中心市街地活性化に光」

2019/7/9 火曜日

 

 かつて六つもの映画館があったといわれる黒石市。現在、市内に残る映画館はないが、有志の手で今夏、2日間限定の映画館が復活した。歴史と風情ある街並みが残る同市の中心市街地「こみせ通り」の空きビルを活用した映画館は「黒石キネマ」と名付けられ、往年の名作から近年の話題作まで、3本が上演された。車社会にあって、郊外の大型商業施設に流れがちな消費者をどのように“街中”に回帰させるかは、全国の中心市街地にある商店街の共通の悩みの種と言えるだけに、今回の有志の取り組みは、中心市街地活性化の方策の一つとして注目される。
 この取り組みは、黒石市在住の相澤さとみさんが思い描いた「いつか映画館を運営したい」との夢に、同市のNPO法人横町十文字まちそだて会リノベーション部会が呼応して実現した。
 黒石市生まれの相澤さんは、20歳の頃に映画関係の学校に進み、卒業後フリーランスでミュージックビデオやCMの制作、ドラマのアシスタントプロデューサー、舞台脚本などを経験し、2017年に帰郷した。一方で、同市の須藤善石油店からこみせ通りにある空きビル(旧ストゼンビル)の利活用について相談を受けていたリノベーション部会が、相澤さんの映画館運営の夢を知り、須藤善石油店と相澤さんを結び付け、今回の企画が実を結んだ。
 Uターンで故郷に戻った人が、自身の知識や経験を生かしながら、映画館づくりという夢を実現させた今回の企画。相澤さんの熱意と努力はもちろん、個人の夢を中心市街地の活性化という社会的な意義に結び付けた同部会の発想力、ビルのオーナーである須藤善石油店のさまざまな協力が一体となって、形となった取り組みであり、中心市街地の活性化策に一つのヒントを与えたように思う。
 現在は市内にない映画館を復活させるというコンセプトも、市民を引きつけるものだろう。市内には昭和の時代、市街地と温湯地区に、合わせて六つの映画館が存在していたが、現在は全て閉館している。
 映画館があった時代に足を運んだ人たちは、懐かしさを感じ、逆に映画館がない光景が日常という若い世代には、今回の取り組みが新鮮に映っただろう。こみせ通りの持つ雰囲気に映画館という業態もマッチしている。
 中心市街地の空き店舗、空きビルの活用という問題は、全国的にもさまざまな知恵が絞られているが「黒石キネマ」の取り組みも注目に値するものだ。アイデアはあるが実現の場がない市民と、場所の有効活用を願うオーナー側を、うまくマッチングさせ街の活性化を図る。市民、民間団体、行政などが、さまざまに知恵を出し合い、こうした取り組みがさらに輪を広げることを願っている。

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老後の暮らし「安心できる仕組みづくりを」

2019/7/6 土曜日

 

 厚生労働省がまとめた2018年の国民生活基礎調査結果によると、年金や恩給をもらっている高齢者世帯のうち、これらの収入が総所得の100%を占めると答えた割合は51・1%と約半数を占めた。恩給の受給者はごく限られるため、収入源が年金のみの高齢者世帯が相当数に上るとみられる。
 17年の割合は52・2%だった。過去増減はあるが、13年の57・8%から微減傾向が続いており、働く高齢者が増えたことが影響しているとみられる。それでも、高齢者世帯の多くが年金を支えに生活費を確保している実態が改めて浮き彫りとなった。
 老後資金をめぐっては、公的年金以外に2000万円の蓄えが必要と指摘した金融庁報告書が注目を集めている。定年退職後に無職で年金収入に頼る高齢夫婦の場合、月平均約5万円の赤字が生じ、夫が95歳になるまでの30年間で約2000万円の資産取り崩しが必要―。報告書で示された試算はこういった内容だ。
 報告書が波紋を広げるのも当然であろう。試算とはいえ、老後の生活資金として2000万円を貯蓄できる世帯はどれくらいあるだろう。何よりも疑問に思うのは、現在の公的年金制度は、それほどまでに頼りにならないものなのかということだ。
 報告書によって国民の関心が一気に高まった公的年金の在り方は、4日公示された参院選でも争点の一つとなっている。各党は公約で、ともに給付に力点を置き、自民党は「人生100年時代に対応した年金制度の構築に向け、厚生年金の適用拡大を進めるとともに、年金受給開始時期の選択肢の拡大を進める」と強調。公明党は一定の収入がある高齢者の年金を減額する在職老齢年金制度の見直しを挙げた。
 立憲民主党は「大きな蓄えがなくても安心できる社会を目指す」と力説し、年金の最低保障機能強化などを唱える。国民民主党は、低所得の年金生活者に最低でも月5000円加算すると宣言。共産党は、物価や賃金の上昇に応じて年金支給額を抑制する「マクロ経済スライド」廃止を要求した。
 厚労省の18年国民生活基礎調査では、生活に対する意識調査で「苦しい」と答えた割合が4年ぶりに増加に転じ、57・7%(17年55・8%)を占めた。年齢構成別に見ると、高齢者世帯が55・1%、児童のいる世帯では62・1%が「苦しい」と回答した。
 消費税率10%への引き上げも10月に予定される。現状の生活ですら「苦しい」と感じている世帯の将来への不安を少しでも払拭(ふっしょく)することができるのか。持続可能で安心できる公的年金の在り方を含む社会保障制度改革は待ったなしだ。参院選における各党・候補者の訴えにしっかりと耳を傾けたい。

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