社 説

 

県高校野球閉幕「“特別な夏”を人生の糧に」

2020/7/29 水曜日

 

 全国高校野球選手権大会青森大会の代替大会として開かれた夏季県大会は28日、青森山田の3年ぶり12度目の優勝で幕を閉じた。新型コロナウイルスが高校球児最大の夢である“夏の甲子園”を奪い、優勝してもアルプススタンドの大歓声の中でプレーすることはない。しかし、君たちは間違いなく今夏の県王者である。8月には東北地区大会が開かれる。本県代表の名に恥じぬプレーで、代替大会開催に尽力した関係者や、敗れたチームの気持ちに応えてもらいたい。
 開かれるはずだった第102回全国選手権大会は新型コロナの感染リスクを回避するため、日本高校野球連盟が5月に中止を決め、併せて代表校を選出する地方大会も取りやめになった。世界的な感染拡大が続き、臨時休校や緊急事態宣言による外出自粛などで、対外試合はおろか、校内練習すらできない時期もあった。中止が苦渋の決断であったことは、高校球児ならずとも痛いほど分かる。
 とはいえ、3年生にとっては最後の夏。各都道府県高野連は何とか公式戦に出場できる機会を与えようと、それぞれ独自大会開催の道を探った。本県高野連も「子どもたちが最後の思い出を残せるよう、われわれも努める」(赤井茂樹会長)と、代替大会として今大会の開催を決定。原則、無観客試合とし、選手はもちろん大会役員や観戦を許された保護者らに開催2週間前からの検温と体調チェック、マスク着用を求めるなど、大会前からの感染対策徹底を絶対条件とした。
 さらに、青森銀行野球部有志と県高野連は「少しでも憧れの地を感じて、思い出に残る大会に」と、クラウドファンディングを活用してメイン会場のダイシンベースボールスタジアム(青森市営球場)を、“聖地”と同じ土で整備。大会には、コロナ禍で夢を断たれた高校球児に対する、たくさんの人々の温かい思いが詰め込まれた。
 開幕直後のプロ野球もそうだったように、全校応援もブラス演奏も保護者や高校野球ファンの歓声もない球場に、戸惑いもあっただろう。それでも選手たちは「完全燃焼できる場を設けてもらったことに感謝している」「夏(夏季県大会)が開催されて本当にうれしい。野球ができる感謝を込めて戦いたい」などと、喜びをかみしめて臨んだ。
 臨時休校による練習不足などで本来の力を発揮できなかった選手もいたかもしれない。しかし、感染防止を最優先するためにさまざまな条件や制限を設けながらも、最高の大会運営を追求した関係者の思いや、球場外の声なき声援に応えようと、必死に白球を追ったのであれば、悔いる必要はない。優勝した青森山田も初戦で涙をのんだチームも、等しく“普通の夏”では得られない貴重な宝物を見つけたはずだ。“特別な夏”を、この先の人生に生かしてくれると信じている。

∆ページの先頭へ

立憲・国民合流協議「政権交代目指す覚悟を示せ」

2020/7/28 火曜日

 

 立憲民主党と国民民主党による新党結成に向けた協議がヤマ場を迎えている。両党を解散した上で「新設合併」方式による新党結成では一致したものの、新党名で合意できるかが焦点となっている。ここ数年、何度も浮上しては立ち消えてきた合流を模索する動き。“多弱野党”が長期政権を許した反省の下、合流を実現させた上で政権交代を目指す覚悟を見せるべきだ。
 今回の協議で立憲の枝野幸男代表はこれまでにない「譲歩」の姿勢を示した。永田町で年内の衆院解散・総選挙の観測が広がっている上、立憲の支持率が大幅に落ち込んでいることなどが、方針転換につながったようだ。
 実際、昨年末に持ち上がった合流協議では、立憲を存続政党とし党名も譲らなかった。国民側からは「上から目線」と反発を招き、結局、立ち消えになった。
 枝野氏は今回の提案で(1)両党を解散し新党結成(2)結党大会で代表選実施(3)新党名は「立憲民主党」、略称は「民主党」―など、大きく方針を変えた。
 決断した背景には、前回衆院選の直後に15%前後あった支持率が、時事通信の直近の調査では3・3%にまで落ち込んでいることが挙げられる。内閣支持率が低下傾向の中、立憲を含む主要野党の支持率も伸びておらず、いずれも政権批判の受け皿となっていないことが分かる。
 統一地方選では本県など地方議会で議席を獲得するなど躍進したものの、新型コロナウイルス対応では見せ場に乏しく、東京都知事選では共闘に失敗し支援候補が大敗した。執行部の党運営に異を唱え離党する衆院議員も相次いでおり、求心力の低下は否めない。
 国民側には立憲の譲歩を評価する声もあるが、玉木雄一郎代表は新党結成方式は受け入れるものの、党名は投票など民主的な手続きで決めるべきだと提案した。
 ただ、国民の置かれた状況も厳しい。昨年の参院選では議席を減らし、時事の調査では支持率が1%に満たない。新党名を投票で決めるべきだと訴える玉木氏に対し、本気で合流を実現させる気があるのかといぶかる声も上がっている。
 焦点の新党名はどうなるのか。国民側がボールを投げた格好だが、立憲側はリベラル系で党内最大のグループを率いる赤松広隆衆院副議長が党名堅持を強く求めており、先が見通せない。
 国民内では「民主党」に回帰する案に支持が多く、立憲の若手も投票になれば同調するとの予想もある。枝野氏は投票で「立憲」が敗れる事態は避けたいだけに、どう収めるのか注目を集めている。
 野党が結束して自公政権と対峙(たいじ)し、国会に緊張感を取り戻す必要性は多くの国民も理解している。小異を乗り越えコロナ後の日本の姿を堂々と打ち出すべきである。

∆ページの先頭へ

浸水への備え「避難行動の再確認を」

2020/7/25 土曜日

 

 梅雨前線と低気圧の影響で、本県は10日夜から12日にかけ、県南地方を中心に大雨に見舞われた。馬淵川では水位が大幅に上昇し、相当の浸水被害が生じる恐れがある「氾濫危険水位」を超過、八戸市や三戸町など6市町で一時、避難指示や避難勧告が出される事態となった。
 降り始めの10日午後9時から12日午後4時までの総雨量は三戸町で159ミリ、三沢市147・5ミリ、新郷村戸来144・5ミリなど。県内20市町村に大雨警報、5市町村に洪水警報、10市町村に土砂災害警戒情報が出ている。住民に対する避難の呼び掛けは県南地方だけでなく、津軽地方でも五所川原市が避難準備・高齢者等避難開始情報を出しており、県のまとめでは最大82人が避難したという。
 7月は九州地方を中心に甚大な被害をもたらした豪雨災害も発生しており、県民の不安もさぞ大きかったことだろう。本県では農地や道路の冠水はあったが、幸いにも人や家屋への大きな被害は確認されていない。とはいえ、ここ数年は毎年のように大規模な自然災害が発生している。この機会に備えを強化したい。
 県は6月、青森市や鯵ケ沢町など県管理の11河川で氾濫した際の「洪水浸水想定区域」を指定、公表した。2015年の水防法の一部改正を受け、降雨量などを想定される最大レベルに見直したもので、今回の公表で対象となっている県管理の37河川すべてで指定、公表が完了した。現在、各市町村で想定区域に基づき、洪水ハザードマップの作成が進められているが、県が公表した区域図でも浸水する区域や深さ、浸水が続く時間や氾濫した場合に家屋の倒壊の危険がある区域などが図面で確認できる。自治体のハザードマップとともに活用し、緊急時の避難行動に役立てたい。
 自治体の側にもやるべきことは多い。過去の災害事例を見ると、住民の避難の遅れが常に課題に挙がっている。手遅れになる前に避難してもらうため、必要な情報をどうすれば分かりやすく、しかも緊迫感を持って伝えられるのか、情報を出すタイミングも含めて検討が必要だ。
 国土交通省は災害時の浸水リスクを地図上に3次元で表示する事業を始めるという。今年度中に30~40都市で先行的に作製、全国に広げるとしている。完成すれば水が迫る高さや、浸水しない建物の場所などが一目で分かるという。また馬淵川では13年の台風で浸水被害があった地区を対象に河川改修事業が進められており、堤防が完成していた地区では今回の大雨でも浸水被害が発生しなかったという。長期的な取り組みにはなるが、必要な河川改修は着実に進めるべきだ。
 西日本では今週末も猛烈な雨となり、気象台が土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水などに警戒するよう呼び掛けている。被害が最小限になることを祈りつつ、避難について考える機会としたい。

∆ページの先頭へ

新型コロナ感染症「感染をおびえず言える社会に」

2020/7/24 金曜日

 

 新型コロナウイルスの感染者が国内で唯一確認されていない岩手県では、達増拓也知事が「(陽性)第1号になっても県はその人を責めない」と記者会見で述べた。誰もが感染する可能性がある中、岩手県民の多くが「第1号」になることを恐れているのが推察される。
 仮に新型コロナ感染が疑われる体調不良を感じても、「第1号」にはなりたくない―との思いで相談や検査が遅れてしまうのでは逆に感染拡大につながりかねず、本末転倒となる。それを避けるためにも岩手県は、新型コロナ感染者が確認されても「全力でケアする」とのメッセージを発信している。
 一方、本県でこれまで確認された新型コロナ感染者数は31人(22日現在)。報道する立場としても懸念するのは、感染者が周囲から「冷ややかな目線」を向けられるのではないかという点だ。青森市で10日に新型コロナ感染が判明した20代派遣型風俗業女性との濃厚接触者のうち本人確認が取れていない利用客12人も、発症の不安を抱えながら言い出しにくい状況にあるのではと推察される。
 新型コロナの感染経路は他人との接触が一つのキーワードになる。他人に知られたくないプライベートな部分が含まれることがあり、報告に勇気がいる場合もあるだろう。報じる側としてもプライバシーに配慮し、慎重に記事化する姿勢が求められている。
 一方でニュースを受け取る側に対し、感染者を冷ややかに見ることがないよう呼び掛ける必要性もあるだろう。「こんな時期に会食するなんて」「こんな時期に海外に行くなんて」「こんな時期に首都圏に行くなんて」―。新型コロナ報道がなされるたび、感染者を責める言葉がインターネット交流サイト(SNS)を飛び交う。新型コロナ感染が報じられ、療養する有名人に対してもバッシングする声が見受けられる。
 国内の現状は既に、新型コロナで打撃を受けた観光産業を盛り上げるため国が旅行を推奨する「Go To トラベル」キャンペーン中である。地方からは、このキャンペーンに対する疑問の声も少なからず上がっているが、国は「経済を盛り上げるため旅行してほしい」とのスタンスであり、県境をまたぐ人の往来は今後さらに活発化するだろう。
 新型コロナは誰でも感染する可能性がある。そして無自覚のまま、誰かに感染させる可能性もまた持っている。感染を不用意にとがめる気持ちを持つ人ほど、自分が感染した場合に言い出せなくなるかもしれない。それは本人も周囲にとっても不幸な状況だ。
 新型コロナ感染は人ごとではなく、「あすはわが身」と自覚したい。感染した人を責めるのではなく、感染者が社会におびえず相談・検査を受けられる体制を構築する必要がある。

∆ページの先頭へ

特殊詐欺の頻発「卑劣な犯行根絶へ意識共有を」

2020/7/23 木曜日

 

 特殊詐欺の被害が後を絶たない。弘前警察署管内では今年に入って深刻化しており、上半期の認知件数、被害額が過去5年で最も多い。しかも、ともに県内全体の約半分を占める。まさに非常事態というべき状況にあり、啓発活動のさらなる強化などが求められている。
 同署によると、今年上半期に県内で認知された被害件数は12件、被害金額は約1690万円に上る。このうち、同署管内の件数は6件、金額は約850万円。とりわけ、金額は前年同期と比べて730万円余りも増加。被害の内訳を見ると、最も多いのが架空請求詐欺で3件。次いで預貯金詐欺が2件、ギャンブル詐欺が1件となった。
 最近目立つのは電子マネーで支払いを求める手口で、同署管内以外でも見られる。コンビニエンスストアなどで販売しているプリペイドカードを購入させ、番号を聞き出して利用権をだまし取るもので、極めて悪質だ。
 特殊詐欺の手口といえば、ひところは「オレオレ詐欺」が代表的だったが、その後に新たな手口が次々と現れ、巧妙化・多様化している。警察など関係機関が手口を分析し、対策を周知すれば、さらに新たな手口が現れるといったいたちごっこが続いている。
 同署管内では6月、警察官をかたってキャッシュカードを預かるように見せ掛け、だまし取る事件が発生した。その手口は、窃盗犯を捕まえたら被害者のキャッシュカードが出てきたので暗証番号を変えるべき―と電話で促し、番号を聞き出した上、被害者のところに赴いてカードの端をはさみで切って廃棄するように見せ掛けて預かる―といったもの。カードは機能に支障がないように切られていた。
 被害を未然に防ぐには、さまざまな手口を知っておくことが必要で、関係機関もその重要性を訴えている。同署も「暗証番号を教えて」「キャッシュカードを預かる」といった電話はすべて詐欺であり、警察官が暗証番号を聞くことはない―と注意を呼び掛けている。
 大半の人は「特殊詐欺」という言葉を知っているはずだが、被害はなかなかなくならない。被害が頻発する状況は同署管内に限らず、他署管内でも発生する恐れはあろう。「自分は大丈夫だ」といった意識を持たず、被害を防止するためには何が必要か、いま一度各人が考え直し、気を引き締めたい。
 警察など関係機関のさらなる連携強化も求められている。金融機関の窓口担当者が、顧客の言動から詐欺被害の危険性を察知するケースも多数見られる。やはり、それぞれの立場で役割を分担して日ごろから警戒することが重要なのではないか。他人の大切な財産を奪う卑劣な犯行を根絶するといった意識を社会全体で共有したい。

∆ページの先頭へ

Page: 1 ... 9 10 11 12 13 14 15 16 17 ... 193