社 説

 

旅行需要喚起策「移動制限しない根拠を示せ」

2020/7/15 水曜日

 

 政府が22日に始める国内旅行の需要喚起策「Go To トラベル」キャンペーンについて、新型コロナウイルス感染者が拡大傾向にある東京都などから各地に感染が広がることに、本県はじめ地方から懸念が出ている。政府はどういう感染状況になれば県をまたいでの移動を制限するのか、具体的な根拠を早急に示すべきだ。
 キャンペーンは新型コロナで打撃を受けた観光協業界を支援するため、当初8月上旬だった開始時期を前倒しし、夏休み時期に間に合わせる。
 旅行代金の半額分を1人1泊当たり2万円を上限に補助する。補助のうち7割が代金の割引、3割分は旅行先での買い物などに使えるクーポン。1泊2万円の旅行の場合、7000円の割り引きと3000円のクーポン発行が受けられる。利用回数に制限はない。
 ただ、東京都内では今月9日から4日連続で200人を超える感染者が確認され、その後も100人を超え続けており再び感染拡大傾向にある。小池百合子都知事は、感染者の増加傾向の背景に検査数が何倍にも増えているとする一方、都民には「他県への不要不急の外出遠慮」を求めた。
 これは段階的な社会・経済活動の再開を進める政府方針とは異なる。西村康稔経済再生担当相は小池氏に対し「市中感染が広がっているわけではない」として移動自粛の方針転換を促したが、都民の一部には「他県へ行っていいのか」との混乱が広がっている。
 問題は都と国のずれでは済まない。本県など地方では東京由来の感染者が目立っており、報道によれば、むつ市の宮下宗一郎市長は13日の会見で「キャンペーンで感染が拡大した場合は人災」などと強い懸念を示した。宮城県知事、福島県知事も14日、相次いでキャンペーンについて慎重な対応を求めた。
 理解してほしいのは、都民はいつ感染するか分からない恐怖と隣り合わせの生活を強いられており、大半は感染予防策を徹底していることだ。蒸し暑い梅雨の時期でもマスクをし、手洗いや消毒は習慣化している。公共交通機関では窓を開け、会食の機会も減らしている。
 大切な人を守るため、離れた家族や友人に会えない日々も続いている。先日、首都圏在住の本県出身者から、感染を拡大するわけにいかないから帰郷を我慢していると聞かされた。親族の納骨を延期してもらっているとの話もある。
 都民に広がる困惑も地方の懸念も、政府が県をまたいでの移動制限について方針を示さないことが背景にある。無症状や軽症を含む感染者の増加が注目を集めるが、新型コロナと付き合って経済活動を進める以上、病床の占有率が逼迫(ひっぱく)した地域は人の出入りを制限するといった、明確な指標を早急に示すべきだ。

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ねぷたへの思い「知恵と工夫で来夏につなごう」

2020/7/11 土曜日

 

 新型コロナウイルスの影響で弘前ねぷたまつり(8月1~7日)が中止となったことを受け、地元の有志が「新たな運行方法」を考え出したという。仮想上の弘前市内を練り歩くねぷたを動画投稿サイト「ユーチューブ」などで配信するという試み。コロナ禍の中、「密」を避けるためにオンラインを活用してさまざまな取り組みが行われているが、今回の企画もまた画期的なものだ。
 端末があれば、国内外を問わずどこでもねぷたの運行を見ることができる。視聴者が色を塗ったねぷたをリアルタイムで運行できるといった「双方向性」も注目される点だ。実際の祭りは開催されないが、例年とは異なる運行を楽しむことができる―と考えれば、気持ちも前向きになるのではないか。「ピンチをチャンスにしたい」と関係者は強調しており、その考えに賛同したい。
 津軽地方の各地で毎年夏に運行される「ねぷた・ねぶた」だが、それぞれに特徴がある。弘前市の場合、扇ねぷたが中心だが、他にも大きな特徴が挙げられる。市民が町内会単位でねぷたを制作し、運行を楽しむ点だ。もちろん、祭りとしても有名だが、市民たちにとっては自らが楽しむ「身近なねぷた」といったイメージがより強いのではないか。
 老若男女問わず運行に参加し、短い津軽の夏にあふれるエネルギーを爆発させている。祭り会期の1週間はもちろん、ねぷたの制作やその他の準備作業に共に汗を流すことで、町内会の絆を深めている。さらに言えば、幅広い年齢層が参加していることで、コミュニティーで暮らすために必要なことは何か―といったことまで年配者から若物へ伝えられているように思われる。
 多くの市民にとって、ねぷたは単なる風物詩にとどまるものではなく、文化であり生活の一部にもなっている。そのねぷたが今夏は運行されないとなれば、落胆するのも無理はない。だからこそ、町内の運行だけでも行うことはできないものか―といった声も上がっている。
 国内外を見渡せば、コロナ禍が収束の方向に向かっているとは言い難い。東京都では1日当たりの感染者数が増加しており、9、10日には青森市で感染者が新たに確認された。まだまだ感染防止策は徹底しなければならず、予断を許す状況ではない。
 例年の7月であれば、各町内会の小屋でねぷたが急ピッチで制作され、囃子(はやし)を練習する音も聞こえている。気持ちが「じゃわめぐ」時期だ。今年は「じゃわめぐ」思いを向ける先を見つけることがなかなか難しいが、知恵を絞って市民の思いに応えようとしている人たちがいる。長年受け継がれてきたねぷたの文化はコロナに負けることはないはずだ。知恵と工夫でねぷたへの熱い思いを来夏につなげたい。

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県内美術館の連携「“ここしかない”の強力発信を」

2020/7/10 金曜日

 

 県内五つの公立美術館で構成する「青森アートミュージアム5館連携協議会」が発足した。2021年度までの2カ年を対象とした5館連携に関する県事業の一環で、今後、5館共通のホームページ作成やアート関連イベント開催などを通じて、県内の文化・教育振興、県民や観光客の周遊促進につなげたいという。
 5館はいずれも地元ゆかりの美術作家の作品や現代アートを扱う施設。八戸市新美術館(仮称)は来夏に開館予定だが、伝統的な手法から現代的なアプローチまで、多彩な美術表現に触れられる場が県内で増えていることを喜びたい。
 現代の美術館は、学びの場としての機能や、地域振興につながる機能など、求められる役割の多さが指摘されている。こうしたニーズに対応するには、その前提として、情報発信の強化が欠かせない。複数館が共通の目的で参加することで、それぞれの魅力の「点」が広がりを持った「面」を構成し、アピール度を高めるだろう。5館連携は、それぞれの個性を打ち消すものではなく、個性を土台に全体としての新たな魅力を構築し意義付けする試みと理解したい。
 県内美術館の連携事業は、今に始まったことではない。県立美術館(青森市)と十和田市現代美術館が09年12月から10年2月にかけて、アートを通じた県内活性化の一つの試みとして開催した企画展「ラブラブショー」はその先例と言えよう。2館の間には1日1往復バスを運行している。冬場の交通利便性向上も、客足が少なくなるこの時期には検討すべき対策だろう。
 美術ファンや観光客をいかに美術館に引き付けるかは、「ここでしか見られない」「この場ならでは」の魅力ある作品をいかに展示し、アピールできるかがカギを握ると思われる。
 例えば11日にグランドオープンする弘前れんが倉庫美術館の開館記念展は、建物がたどった経緯や弘前の歴史を踏まえたコミッション・ワーク(依頼制作)による作品が中心で、十和田現美の常設展示作品もコミッション・ワークで構成。青森公立大学国際芸術センター青森(ACAC)の中心事業であるアーティスト・イン・レジデンス(滞在制作)も「ここでしか見られない」の好例だ。
 建物も一つの作品として鑑賞したい。県美は青木淳氏、ACACは安藤忠雄氏、十和田現美は西沢立衛氏といった建築家たちの設計だ。それぞれのコンセプトを踏まえながら建物と周辺を散策するのも楽しい。ミュージアムショップは館それぞれの特色が顕著に表れる。
 折あしく、新型コロナウイルスの影響で5館連携が所期の目的へ順調に結び付くかは見通せない。しかしポストコロナを見据え、各館の魅力を改めて見詰めるところから始めたい。順調に進めば、効果は他の美術館にも波及するだろう。

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九州豪雨「“想定外”への備え強化を」

2020/7/9 木曜日

 

 豪雨により甚大な被害に見舞われている九州地方。日に日に明らかになる被害の実態に、災害の恐ろしさを改めて実感している。梅雨前線の影響で大雨の範囲も拡大し、岐阜県でも飛騨川が氾濫するなど各地に被害が広がっている。
 熊本、鹿児島両県には4日未明から朝にかけて梅雨前線が停滞。熊本県では1時間雨量が110~120ミリ以上との記録的短時間大雨情報が相次いで発表され、球磨川が氾濫。支流に近い特別養護老人ホーム「千寿園」は浸水によって入所者14人が亡くなった。
 高齢者施設の浸水被害といえば、真っ先に思い浮かぶのは2016年8月の台風10号による大雨被害に遭った岩手県岩泉町の高齢者グループホームだ。近くを流れる川が氾濫した影響で施設が浸水し、入所者9人全員が遺体が見つかった。70~90代でいずれも介護を必要とし、女性2人は車いす。それまで水害を想定した訓練はしていなかったという。被害を教訓にその後、洪水や土砂災害のリスクが高い区域に立地する要配慮者利用施設における対策の強化が叫ばれてきたが、再び今回のような被害が発生したのは残念でならない。
 球磨川は今回の豪雨で10カ所以上で氾濫し、民家の浸水などを招いた。専門家は「流域の広範囲で同時に豪雨となり、一気に流量が増え、支流が集中する盆地や川幅が狭くなる地点で被害が拡大した」と分析している。大雨をもたらす線状降水帯が流域全域を覆うように発生したことが原因と指摘されている。
 千寿園がある熊本県球磨村渡地区の水位観測所で球磨川を観測していた人は「見たことのない増え方だった」と、異常な増水と流れの速さに感じた恐怖を振り返っている。なぜもっと早く避難できなかったのかと思ってしまう。
 台風とはまた異なる梅雨前線の影響による雨だったためか、今回は多くの人の想定を超える豪雨だったのだろうが、ここ最近は「想定外」の自然災害が非常に増えている。高齢者施設も含め、実際に避難するタイミングの判断は難しいだろうが、想定外が当たり前となってきた今、防災への備えも従来の常識にとらわれずに考える必要がある。
 特に高齢者施設は要介護者ら災害弱者が多い。避難する際はスタッフらの負担も非常に大きいだろうが、災害に見舞われた場合に真っ先に被害に遭う可能性が大きいのも高齢者である。日ごろから災害時の対応をしっかり定め、定期的に訓練する必要がある。施設が立地する地域の状況の把握も欠かせない。
 今年は新型コロナウイルス感染防止対策も求められ、避難の在り方に課題も多いが、大雨や台風のシーズンはこれからしばらく続く。本県にとっても決してひとごとではない。「想定外」を意識した防災対策の強化を急ぎたい。

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ジュノハート「新たな本県ブランドに期待」

2020/7/8 水曜日

 

 県産サクランボの新品種「ジュノハート」が1日に待望の全国デビューを果たした。色や形が特に優れた上位品の「青森ハートビート」も県内外で限定発売され、県内3市の百貨店では初日に用意された「青森ハートビート」が即完売となるなど、好調なスタートを切った。
 甘みが強く、大玉でハート形に見えるというジュノハートは1998年に甘みの強い「紅秀峰」と果実の大きい「サミット」を交配して育成した。2015年から苗木の販売が始まり、今年の本格デビューを前に、昨年はプレデビューとして県内販売され、徐々に県民の間での知名度も高まってきていた。
 満を持しての本格デビューとなった今年は、新宿のフルーツ専門店「タカノフルーツパーラー本店」に期間限定でジュノハートのパフェとケーキが登場したり、ジュノハートをモチーフとしたブライダルジュエリーが発表されたりとコラボ企画も次々登場、話題となっている。
 県民にとって楽しみなのは、県内6事業者によるスイーツの競作ではないか。ジュノハートは生果での販売期間が約2週間と短いため、通年販売が可能な加工品の可能性を探ろうと、県が今春、県内6事業者に商品開発を依頼。8日から26日までの間、各店が設定した3~4日の日程で、試作したスイーツをテスト販売するという。試作品はアイスシャーベットあり、タルトあり、ゼリー仕立てありとバラエティー豊か。数量限定の上に先着順のため、入手難度はかなり高そうだが、見た目も華やかなスイーツは甘いもの好きの人らの人気を集めそうだ。
 公式ホームページを見ると、カタログギフトやオンラインストアでの販売は予定数量に達したとして既に終了しており、滑り出しは上々のようだ。三村申吾知事は6日の記者会見でジュノハートの手応えについて「ものすごい期待感。手応えは非常にあった。これだけの評価をいただき、驚いた」と力説し、今後も生産体制をしっかり整え、魅力が伝わるような販売手法を工夫したいとしている。
 ジュノハートの生産地といえば、南部町など県南地方が思い浮かぶが、津軽地方にもブランド化推進協議会に登録している生産者がおり、評価が高まって、加工品での商品開発が広がっていけば、生産の拡大にも弾みがつくのではないか。
 食べ物がおいしい、というのは本県の大きな魅力の一つ。また丁寧に、丹精込めて農産物を栽培する生産者がいることも本県が誇れる魅力だろう。リンゴはもちろん、県産米「青天の霹靂(へきれき)」など、売り出し中のブランドに加え、ジュノハートにも新たなブランドとして今後大きく羽ばたいていってもらいたい。
 話題になっている時を逃さず、効果的な営業を展開することで、ジュノハートの高評価を本県の農産物や加工品全体に広げていく取り組みにも期待したい。

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