社 説

 

青森機動監視隊派遣「漂着船の住民不安払拭を」

2019/11/13 水曜日

 

 北朝鮮のものと思われる漂流・漂着船が近年、本県日本海側でも急増していることを受け、第2管区海上保安部と青森海上保安部は今月4日から、鯵ケ沢町を拠点に沿岸部の監視活動などを行う青森機動監視隊(MMP=ダブルエムピー)を現地に派遣、活動を開始した。漂着船に特化したMMPは国内初。これにより陸のMMP、海の巡視船、空の航空機が連携し、一層の監視強化が図られることになる。9日には早速、中泊町の折腰内海水浴場付近海岸に漂着した木造船に対応した。木造船が漂着する日本海側自治体の要望が実った結果でもあり、今後も地域住民の不安を払拭(ふっしょく)するための活躍を期待したい。
 船が漂着しただけでも処分方法や費用などが問題となる。まして、北朝鮮籍の船となれば、拉致など過去の経緯から、乗り捨てられた工作船であるとか、その船に乗っていた何者かが既に上陸し、わが国にとって不利益な行為をしているのではないか―といった不安が付きまとう。実際、昭和40~50年代には多数の工作船の目撃や工作員が上陸する事案があった。それだけに、一定期間とはいえ、地元に常駐し監視活動と漂着後の対応を行ってくれるMMPの存在は自治体や地域住民にとって心強い。
 漂着船事案は海岸線が長い深浦町、つがる市の方が多いわけだが、鯵ケ沢町をMMPの拠点とする意味は、日本海側中心部に位置し、南北に移動しやすい地勢もある。仮に深浦町で事案が発生した場合、青森海保がある青森市から陸路で移動した場合、3時間前後を要していたが鯵ケ沢町を拠点に移動すれば、これが1時間前後と大幅に短縮され、まさに迅速対応となる。
 青森海保などはMMP派遣と併せて、地元自治体との情報共有や連携を強化するため、鯵ケ沢町役場に海上保安官連絡所を設置した。非常駐ではあるが、定期的に保安官が訪れる。海難救助を目的とした連絡所は県内漁協にも数カ所設けられているが、役場や役所への設置は県内初となる。海保と自治体との連携が密になれば、今後の漂着船対応などにも良い意味で変化が出ることも期待されよう。
 こうした海保側の対応を歓迎する声が多数ある一方で、ある自治体の首長からは「もう少し大きな仕組みとして、絶えず巡視船が動ける態勢づくりにも期待したい」との意見があった。巡視船は日常的に日本海沖の監視活動を続けているとはいえ、その発着拠点が日本海側にはない。例えば、絶えず巡視船が活動できる仕組みとして、日本海側に海保の出先機関を置くといったことも検討してほしい。陸奥湾に面する青森市、太平洋に面する八戸市には拠点がある。海を隔てて海外と接する日本海側にも拠点があっておかしくはない。地域の一層の安全安心確保のため一考願いたい。

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米軍機模擬弾落下「抗議にも改めぬ姿勢に不信感」

2019/11/9 土曜日

 

 米軍三沢基地所属のF16戦闘機が6日、六ケ所村の私有地に模擬弾を落下させた。しかも、米軍が防衛省に報告したのは翌7日という。基地と地元自治体は信頼関係の上で共存しているはずだが、人的被害がなかったとはいえ、米軍のこうした対応は、信頼を著しく損なうものであり、憤りを禁じ得ない。
 防衛省によると、6日午後6時35分ごろ、訓練中のF16が三沢市と六ケ所村にまたがる「三沢対地射爆撃場」の西約5キロの牧草地に模擬弾1発を落とした。模擬弾にはコンクリートが詰められ重さは約230キロ。深さ約3メートルの地中に埋まっていたという。火薬が入っていなくても、これだけの威力があるのだ。現場の5キロ圏内には学校などもある。もし当たっていたらどうなっていただろうか。
 落下が明らかになった7日、三村申吾知事が「一歩間違えれば大変な惨事」、菅義偉官房長官は「あってはならないもの」と述べ、地元六ケ所村と三沢市の首長も一斉に非難した。民有地に落下させただけでも周辺住民に大きな不安を抱かせるが、米軍が防衛省に報告したのが翌日朝になってからだったため、防衛省から関係自治体への情報提供も当然、それ以降になった。こうした米軍の姿勢が、疑問と不信感を増幅させた。
 三村氏は8日午前、防衛省に河野太郎防衛相を訪ね、再発防止策が講じられるまでF16の模擬弾訓練を中止させるよう要請するとともに、事故の連絡が発生翌日だったことを批判した。これに対し河野氏は「(米軍に)原因究明、再発防止策をしっかり講じるよう申し入れる」とし、報告が遅くなったことについては「申し訳ない」と謝罪した。米軍は防衛省に当面の訓練中止を伝えてきたというが、抗議をどれだけ深刻に受け止めているのか疑念が残る。
 三沢基地の米軍機は今年1月、部品の一部を八甲田の山中に落下させたほか、エンジントラブルで青森空港に緊急着陸。翌2月は三沢飛行場でオーバーランし、民間機の運航に影響を及ぼした。6月には北海道で低空飛行(米側は最低安全高度に注意して飛行と回答)し、校庭の児童が待避した。実害があったものでは、昨年2月に小川原湖へ燃料タンクを投棄し、漁業に大打撃を与えた問題が記憶に新しい。
 防衛省や県などはその都度、抗議し再発防止を求めてきたが、こうした問題は後を絶たない。報告遅れは他基地でもある。昨年は嘉手納基地(沖縄県)に所属するF15戦闘機の部品がなくなったが、日本側に報告があったのは6日も後で、防衛省は「迅速な情報提供を要請している」としていた。それなのに、また「迅速な情報提供」はなかったのだから、不信感を抱いて当然だ。米軍は姿勢を改めない限り、地元の理解が得られないことを肝に銘じなければならない。

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マラソン会場変更「安全確保へ不断の努力を」

2019/11/8 金曜日

 

 東京五輪のマラソン会場が札幌市に変更されることが決まった。五輪期間中は酷暑が予想され、選手や観客、運営ボランティアの暑さ対策が十分か不安は尽きない―と、この欄で指摘し3カ月。賛否はあるようだが、関係者全員の安全が最優先であることは論をまたない。他競技についても引き続き安全確保を第一に対策を講じてもらいたい。
 東京五輪のマラソンは女子が8月2日、男子が同9日、競歩は7月31日と8月7、8日。ちなみに今年8月2日の東京都の最高気温は35・1度、昨年は37・3度だった。天候にも左右されるが、むしろ雨の日は湿度が上がり70%を超す。熱中症の危険度が最高レベルとなる温度であり、湿度だ。
 組織委員会は暑さを考慮して当初の計画からマラソンが午前6時、男子50キロ競歩が午前5時半のスタートに早められるなどの対策を取った。東京都も暑さを軽減する路面の塗装など工夫したが、根本的な解決にならないことは関係者誰しもが分かっていた。
 国際オリンピック委員会(IOC)が急きょ会場変更を決めた背景には、9月から10月にかけてドーハで開催された世界選手権のマラソンで、気温30度超、湿度70%超の環境下で棄権者が続出したことがある。
 実際、組織委の森喜朗会長は「IOCのバッハ会長は(ドーハと)同じことが東京で起きたらIOCと東京大会が批判の渦に巻き込まれると考え、会場変更を決意した」と明かす。
 つまりIOCは五輪の商業価値を守るため、「アスリートファースト」を楯に強引に変更を決めたということになる。IOCの意向に沿って準備を進めてきた組織委や都、関係者の努力を無視した、あまりにも場当たり的な判断だ。
 会場変更の意思決定に不透明さは残るが、選手、観客、ボランティアの安全を考えれば、札幌開催に向け全力で準備するしかない。ただ、残り10カ月という短期間での準備に課題は山積している。
 コースは毎夏行われている北海道マラソンが参考となるようだが、コース決定までにはさまざまな段階を踏む必要があり、沿道の警備や輸送の計画も白紙から検討することになる。
 もちろん東京を想定して準備を進めてきた選手や各国チーム関係者も、新たなコースに関する情報をゼロから収集することになる。
 さらにはマラソンの発着点だった新国立競技場のチケットを購入した人たちはどうなるのか。女子マラソンは陸上競技の決勝種目とセット販売されており、単に払い戻すだけでは済まない。
 繰り返し指摘するが、選手や観客、ボランティア全員が安全に大会を終えてこそ、評価に値するはずだ。さらなる安全確保への努力が求められている。

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英語民間試験「受験機会の公平性保つ制度を」

2019/11/7 木曜日

 

 2020年度に始まる大学入学共通テストでの実施が予定されていた英語の民間資格・検定試験の導入見送りが決まった。文部科学省は、24年度をめどに、新たな制度構築に向け、抜本的な見直しを行う考えだ。
 英語民間試験の導入に当たっては、さまざまな問題が指摘されてきた。当初予定された開始時期の来年4月を目前に控えながらも、問題に対する抜本策が示されないまま導入へと突き進んできた。今回の突然の方針変更は、教育現場などに大きな混乱を招く結果となったが、予定通り実施していれば、さらなる混乱は避けられなかっただろう。いったん立ち止まって、公平な試験の在り方をしっかりと検討し直してもらいたい。
 当初予定された民間試験は、英語の「読む・聞く・話す・書く」の4技能を測る目的で、文科相の諮問機関「中央教育審議会」の答申を受け、文科省が17年7月に民間試験の活用を盛り込んだ共通テストの実施方針を策定、大学入試センターが実施団体を認定するなど準備を進めてきた。
 ただ、民間試験ごとに試験会場や難易度などが違うほか、1回2万5000円程度かかる受験料や、離島やへき地に住む受験生は交通費や宿泊費など経済的負担が大きい点などが問題とされ、住む地域や親の収入によって格差が生じかねないといった問題が指摘されてきた。
 地方の実情を無視し、受験生をないがしろにした制度と言わざるを得ず、客観的な試験結果の評価の在り方が不透明なほか、受験機会の公平性が保たれないような仕組みは、当然ながらあってはならない。
 それでも文科省は、対策を打ち出せないまま断行しようとしてきたが、萩生田光一文科相が「身の丈に合わせて頑張って」と、経済状況による教育の格差を助長するかのような発言をしたことで制度の不備が露呈し、批判が噴出。現行制度での実施による混乱は不可避との判断から、導入見送りが決まったとみられる。
 当初から多くの問題が指摘されていたにもかかわらず、それらを放置したまま突き進み、導入開始が迫ったこの時期になって突然見送りを決め、教育現場に大きな混乱を招いた責任は大きい。高校生の進路を左右する受験制度決定の在り方に対して不信感が高まったのも事実だ。
 そもそも、「なぜ民間試験の導入が必要なのか、政府のビジョンや目的が全く伝わっていない」との指摘もある。現場からは「一番困るのは今後どうなるか決まらないこと」との声も上がり、今後の動向に注目が集まる。
 導入を見送ったからには、問題をきちんと検証し、大学入試英語の新たな制度がどうあるべきなのかを真摯(しんし)に議論して、不公平感や格差を招かないような仕組みを構築してもらいたい。

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日韓首脳対話「事態打開に有効な次の一手を」

2019/11/6 水曜日

 

 安倍晋三首相が韓国の文在寅大統領と対話した。両首脳の対話は約1年ぶりとなる。安倍首相は元徴用工問題に関し、日韓請求権協定に基づき解決済みとの立場を伝え、両国間の懸案について、従来通り外交当局間の協議によって解決を図る考えを示したとされる。同行した政府高官によると、今後の日韓首脳会談などに関しても具体的なやりとりはなかったとした。一方、韓国側の発表では、文大統領が首脳会談も念頭に高位レベルの協議の検討を提案し、安倍首相は「全ての可能な方法を通じて解決法を模索するよう努力しよう」と答えたとしている。
 報じられた内容を見る限りでは、両首脳とも両国の関係が重要であるという点では一致したものの、互いの立場や原則を述べるにとどまったようで、冷え込んだ日韓両国の関係改善が進む兆候は、いまだ見えないように受け止められる。
 だが、今回の対話を報じる日本、韓国双方のスタンスに、温度差を感じたのも事実だ。韓国側は今回の対話について、文大統領が、両国首脳による会談も視野に入れた高位レベルでの協議を提案したとしており、これまでに比べ、関係改善に積極的な姿勢がうかがえる。
 文政権は、大統領側近で法相への起用を強行した曹国氏の辞任などを背景に支持率が低下。両国の関係が冷え込む中で行われた軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄決定では、米国が懸念を表明するなど、内政、外交ともに厳しい状況にある。今回の対話で具体的な進展は見られなかったが、文政権が苦境を打開するために、外交的な成果を挙げようと、日本との関係改善を模索している。そのような韓国の思惑が透けて見える。
 有効な手だてが見えない日韓関係の動きの中で、首脳会談は状況を劇的に変化させる可能性を持つ重要なカードだ。首脳会談の動きそのものは最近、関係者間でささやかれ続けているが、それだけに仮に実施となれば、協議するべき内容が伴うか、見極めが重要だ。概して日本政府の対応が慎重に映るのは「会うだけ」の会談では成果が乏しいと判断しているからに他ならないだろう。
 輸出管理厳格化の応酬やGSOMIAの破棄決定などにより、両国間の関係悪化の影響は貿易、安全保障分野にまで拡大している。GSOMIAの破棄後は、北朝鮮が間隙(かんげき)を突くかのように弾道ミサイルの発射を繰り返すなど、東アジア情勢は不安定さを増している。関係悪化は両国の国民感情にまで影響し、韓国からの訪日観光客は大幅に減少している。
 関係悪化が長期に及ぶ場合、東アジアの不安定化が加速し、両国経済への影響が深刻の度を増すことは容易に想像できる。首脳会談に拘泥するつもりはないが、問題のさらなる長期化を避けるためにも両国政府には事態を打開するための次の一手が必要だ。

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