社 説

 

クマ出没注意報「安全確保と食害防止の徹底を」

2019/9/21 土曜日

 

 9月に入り、県内でクマの出没件数が増えている。事態を重大視した県は20日、県内全域を対象に「ツキノワグマ出没注意報」を出した。注意報の発令は3年連続。これからは山菜採りなどで入山者が増える時期。被害に遭わないよう各自で防止策を心掛けたい。
 出没件数増加の背景はさまざまあるのだろうが、関係者によると、今年はクマの餌となるブナの実が不作といい、一因になっている可能性がある。餌を求めて人里まで下りてきているクマも相当数あると考えるべきだろう。
 出没件数増加の影響は既に出始めている。鯵ケ沢町と町観光協会は町内の「白神の森 遊山道」の今期営業を19日で終えた。当初は10月末までの予定だったが、今後もクマの出没が相次げば、入山者に危険が及ぶ可能性があるとみたためだ。秋の行楽シーズンが本格化しようとしているこの時期、関係者にとっては苦渋の判断だったに違いない。
 同町を含む鯵ケ沢警察署管内のクマ目撃情報は今月18日現在、59件で前年同期より7件多い。このうち、同町は12件となっている。クマが目撃される頻度が高いという情報は広く伝わっているのか、遊山道への入山者数は4~8月でみても、4646人と前年同期より約1200人も減っていた。
 入山者数の減少は当然、地域経済に少なからず影響を及ぼす。同町内では観光で生計を立てている人も少なくないだろう。ただ、観光地は訪れる人たちが安全に楽しむことができてこそ観光地と言える。そう考えれば、平田衛町長の「人命が最優先」という言葉はもっともである。今期は諦めざるを得ず、来期に期待したい。
 人的被害とともに懸念されるのが、農作物などの食害だ。
 県内の2018年度の野生鳥獣による農作物被害額は5649万円で、前年度と比べて28%も減った。例年は被害額が大きい中南地域で大幅に減ったことが主な要因だった。ブナの実の凶作が3年ほど続き、クマが餌を求めて他地域に移動した可能性も指摘された。
 ただ、今年9月の出没件数をみれば、昨年度の傾向が続くとは限らないのではないか。丹精を込めて育てた農作物を収穫できる時期を迎えたにもかかわらず、その農作物が奪われたり、傷つけられたりしたのではやりきれない。農地への侵入を防ぐための電気柵の設置、追い払いの対策などを徹底したい。
 山中に入る際はもちろんだが、農地で作業する際も、身の安全確保を忘れてはならない。県のホームページに掲載されている最新のクマ出没状況などを確認するとともに、鈴やラジオなど音の出るものを携帯して自らの存在をクマに知らせるといった基本的な被害防止策をきちんと行いたい。

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ラグビーW杯「日本の活躍と人気向上に期待」

2019/9/20 金曜日

 

 アジア初開催となるラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会が、いよいよ今夜開幕する。世界ランキング10位の開催国日本は、東京スタジアムで20位のロシアと開幕戦を戦う。20チームが参加する今大会。1次リーグA組の日本は初戦の後、28日にアイルランド、10月5日にサモア、13日にスコットランドと対戦する。自国で躍動する桜のジャージーを、大きな声援で後押ししたい。
 日本は2007年大会でカナダと1分け3敗で並んだが、勝ち点で上回り、4大会ぶりに1次リーグ最下位を免れた。世界的名将エディー・ジョーンズ氏が率いた前回15年大会では、24年ぶりとなるW杯勝利を南アフリカからの大金星で飾るなど、過去最高の3勝を挙げた。しかし、1次リーグ1~3位が同勝敗で並び、勝ち点差で8強入りを逃した。20チームが4組に分かれて1次リーグを戦う現行方式になった03年大会以降で、3勝して準々決勝に進めなかった初めてのチームとなった。
 8強まであと一歩に迫りながら、勝ち点差で涙をのんだ選手たち。その悔しさをぶつけてくれるはずだ。A組には日本が一度も勝ったことがないアイルランドも入り、厳しい戦いを強いられるだろう。しかし、過去の成績にとらわれる必要はない。今大会は自国開催であり、日程も前回大会より恵まれている。地の利を生かし、前回果たせなかった準々決勝進出を実現してほしい。
 日本におけるラグビーは、プロ野球などと比較するとテレビ中継が少なく、決して人気が高いとは言えないのが現実。高校野球の聖地が「甲子園」、高校サッカーは「国立」、そして高校ラグビーが「花園」だと知っている人は少なくないとは思うが、競技人口は野球、サッカーに及ばない。今年の全国大会本県予選会参加チームはわずか12で、うち3チームは複数校の合同チームだ。少子化が背景にあるのは疑いないが、競技になじみが薄いことも影響しているのではないか。
 W杯の代表チームには外国出身選手も一定の条件を満たせば代表資格が得られるため、国籍を持つ選手だけで組織する他競技の代表チームと異なることに違和感を抱いたり、ルールが複雑なことで敬遠したりするかもしれない。そういう人のために、本紙は運動面に「ワンポイント解説」を掲載してきた。ぜひ活用して大会を楽しんでほしい。
 ラグビーW杯は、サッカーW杯、夏季五輪に次ぐ巨大イベント。大会組織委員会によると、大会認知度は開幕が近づくにつれ上昇し、15日発表分(7~11日に第三者機関が調査)で、過去最高の83・9%に達した。大会の盛り上がりを期待させる数字だ。日本ラグビー協会が今大会を底辺拡大につなげようと意気込むように、多くの国民にラグビーの魅力を伝えることも、日本開催の意義である。

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青森―ソウル線「交流の歴史を大切に」

2019/9/19 木曜日

 

 本県と韓国を結ぶ大韓航空の青森―ソウル線の冬季スケジュールが公表され、夏季と同じ週3便で運航し、観光需要が高まる12月下旬から3月下旬にかけての一部期間は前年と同様、週5便に増便することが決まった。日韓関係の急激な悪化に伴い、日本の各地と韓国をつなぐ韓国線は運休や減便の動きが相次いで表面化しているが、本県に関しては当面、現状の体制が維持されることになった。
 だが、影響がないわけではない。県によると、8月の青森―ソウル線の実績は前年同月に比べて1500人近く減り、利用率では23・9ポイント落ち込んだという。マイナス幅は今年最大。日本が韓国向け輸出手続きを厳格化したことを受け、韓国では日本旅行を控える動きが広がっており、今後はますます韓国国内で広がっていくだろう。9月の連休も一定程度の影響はあるはず。本県でも修学旅行や韓国の児童生徒との交流事業が取りやめになるなどの動きが出ており、三村申吾知事は同月の定例記者会見で「路線の維持にとって、大変厳しい状況」との認識を示し、さらなる深刻化を懸念している。
 2018年の観光庁の統計では、本県の宿泊施設に泊まった外国人客は前年比19・2%増の約29万人で過去最高を更新しており、国別では台湾、中国に次いで韓国が3番目の多さ。19年上期(1~6月)も高水準を維持しているものの、韓国は前年同期比で15・9%減となっており、インバウンド需要が高まる秋から冬にかけての動きが注視される状況だ。
 1995年に就航した大韓航空の青森―ソウル線はダリアビア航空(ロシア)のハバロフスク線とともに青森空港初の国際定期便。ハバロフスク線が撤退し、2017年に青森―天津線が就航して国際線が2路線体制となるまで、ソウル線は青森空港唯一の国際定期便だった。
 これまで、東日本大震災の影響による運休や日本人利用客の低迷を受けた運休の危機など、厳しい時代もあったが、外国人客の受け入れ環境の整備や情報発信だけでなく、本県からのミッション団の派遣やツアー企画、韓国旅行への助成など、日韓双方の努力と工夫で乗り越えてきたと言えるだろう。17年に温泉やスキーなどの人気が高い冬季スケジュールで就航以来初の週5便(5往復)が実現したのも関係者の地道な努力の成果だし、ソウル線があったからこそ、17年の青森―天津線、今夏に実現した青森―台北線と国際定期便の就航が続き、観光が本県の主要産業として育ってきたと言える。
 日本人なら、テレビを通じて見る韓国・文在寅大統領の発言や韓国政府の対応には異を唱えたいと思うことも多いだろう。だが、国家間の政治的な諸問題と民間交流は別の話だ。これまで培ってきた本県と韓国の自治体レベル、民間レベルでの交流を今後も継続していけるよう、それぞれの立場で知恵を絞りたい。

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歴史ある建物「保存・利活用へ活発な議論を」

2019/9/18 水曜日

 

 弘前市の歴史や文化が育んできた城下町らしさがまた一つ、失われる危機にある。
 弘前藩に仕えた忍者集団「早道之者」の活動拠点だったとされる、弘前市森町にある古民家「旧相馬家住宅」が取り壊しの危機にある。現所有者が高齢であり、維持管理が困難になってきたことから土地の売却を決めたという。買い手がつき次第、譲渡される見通しだが、建物の保護や利活用を前提とした購入でない限り、この「忍者屋敷」は取り壊される可能性が極めて高い。
 早道之者を研究している青森大学忍者部顧問の清川繁人薬学部教授によると、現存する忍者屋敷は国内でもほとんど例がなく、旧相馬家住宅は弘前市にとってのみならず、全国的に見ても貴重な建物であるようだ。当然、観光資源としての価値も高く、保存・利活用が図られることが望ましい。
 旧相馬家住宅は、江戸時代末期に建てられたとみられる。早道之者を統括していた棟方家が所有したとされ、床の間の裏側に人が隠れられる空間や、歩くと木がきしんで音を立てる鶯(うぐいす)張り、薬草を加工していた痕跡など、往時を思わせる意匠が残る。古文書など記録物に古民家の記述はないものの、清川教授は状況証拠から早道之者の詰め所だったと結論付けている。
 売却に踏み切ったのは、現所有者が高齢となり、税金や冬場の除雪費などの維持管理費が重くのしかかってきたことなどが背景にある。城下町として栄えた弘前市にはこうした、希少だが文化財としては保護されない建物が少なくない。そのほとんどは、古民家であるだけに改修箇所が多く、個人での維持管理が難しくなって空き家になり、その後取り壊されている。
 保存・利活用には多額の経費がかかり、行政のみに頼るのも限界があるということは理解できるが、こうした貴重な建物が姿を消していくのは残念でならない。まずは、建物の有する価値をしっかりと認識し、保存に向けた方策を議論する必要がある。
 今回の旧相馬家住宅は、現存する忍者屋敷としては国内でも珍しいことを考えれば、弘前の歴史や日本の文化を伝える上で非常に貴重だ。さらなる増加に期待が掛かる外国人旅行客ら観光客向けの観光資源としても価値が高いのは言うまでもない。
 今後のまちづくりにおいては、「あるもの生かし」の視点をより重視し、古くからの価値ある建物を残していくことが、まちの歴史と文化を一層深め、魅力を高めることにつながるはずだ。課題となる経費については、基金創設など官民協働で支え合う仕組みづくりができないものか。ぜひ議論が活発化することを期待したい。

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弘前で条例改正「性的少数者への配慮推進を」

2019/9/17 火曜日

 

 弘前市で、性的マイノリティーの在り方に対応しようとする動きが本格化している。市は印鑑登録証明書の性別欄を削除するほか、希望すれば旧姓を並記する条例改正案を開会中の市議会定例会に提出しており、市議会厚生常任委員会では原案通り可決された。本会議で可決されれば、同証明書の性別欄削除は県内初事例となる。
 市は2018年11月に「弘前市男女共同参画プラン2018~2022」を策定。その中で高齢者、障害者、性的マイノリティー、外国人らが安心して暮らせる環境整備に努める方針を示しており、今回はその一環としての取り組みだ。
 市は条例改正を機に、性的マイノリティーに配慮した取り組みをさらに進める考えだ。性別記載のある各種証明書やアンケートなど207件のうち、性別記載が必要ないと判断した75件は性別記載の廃止を決定。業務上、性別を把握する必要のある25件については、自認する性別を記載するよう配慮するという。
 性的マイノリティーには、出生時に割り振られた性別と別の性別を自認するトランスジェンダー、性別を決められたくない、または性別を決められないクエスチョニング、男女どちらかの身体的性別か判別が難しいインターセックスなど、多様な性の在り方が含まれている。
 見た目上の性別と戸籍上の性別に違和感を抱いていないマジョリティー(多数派)は、特に意識していないかもしれないが、社会生活をする上で、性別を確認される場面は多い。マジョリティーの目線からのみの対応は、性的マイノリティーに精神的負荷を与えており、生きづらさを感じさせる一つとなっている。
 例えば女性を自認するトランスジェンダーの市民が、印鑑登録証明書の性別欄に戸籍上の「男性」を記入して提出した際、窓口で男性か女性かを再確認されたケースもあっただろう。女性と自認する一方で「男性」として本人証明する作業、さらには周囲からいぶしかげに見られる時間が生じるなど、ささいな手続きにもストレスが付随してきたはずだ。
 このようなストレスは行政手続きに限ったことではない。学校の制服は男女でデザインが明確に分かれていることが多いが、性的マイノリティーの生徒にとって着用にストレスを伴う場合がある。県外では生徒の気持ちに配慮し、男女共通のブレザーを採用するとともに、スカートかパンツスタイルにするかを性別にかかわらず自由に決められるようにした学校も登場している。
 あらゆるマイノリティーへの配慮は、生きづらさを感じる人々に対し、社会が「あなたの生き方を尊重し、肯定する」とメッセージを発信する行為でもある。市の今回の取り組みは行政として大きな前進であると評価し、取り組みのさらなる加速化を期待したい。

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