社 説

 

中国の新型肺炎「春節控え感染拡大抑止対策を」

2020/1/23 木曜日

 

 中国で新型のコロナウイルスによる肺炎が多発し、感染者は中国以外にも広がっている。「ヒトからヒトへの感染」が確認されたほか、中国国家衛生健康委員会は「ウイルスが変異する可能性があり、さらに拡散するリスクがある」との見解を示しており、人の移動に伴う感染拡大が懸念される。
 日本国内でも、中国湖北省武漢市から帰国した神奈川県の30代男性の感染が初めて確認された。訪日外国人客が増加傾向にある中で今後、感染者が増える可能性は十分にある。水際対策の強化はもちろん、マスクの着用や外出後の手洗いなど基本的な感染症対策を徹底し、国内における感染拡大抑止に努めたい。
 武漢市では先月12~29日に原因不明の肺炎にかかる患者が相次いで発生。その後も患者数が増え、死者も出る中で、今月9日、中国の専門家チームが複数の患者から新型のコロナウイルスを検出したことが明らかになった。重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)もコロナウイルスを原因とするが、この二つとは違う種類のウイルスだという。
 武漢市内で感染者が集中している二つの区には共に大きな海鮮市場があるが、海鮮物だけでなく多くの野生動物が販売されており、感染源については「野生動物を通じてヒトに感染した可能性が高い」とみられている。
 症状を引き起こす「病原性」は、2002~03年に中国から広がったSARSに比べて低いとみられており、過度に心配する必要はないとされるが、ウイルスが変異して感染力や病原性を強める可能性も指摘されており、警戒が必要だ。
 SARS流行時と比べ、中国人の入国者は10倍以上に増加しており、今後も中国で感染した人が日本に入国・帰国する可能性がある。さらに、中国では25日の春節(旧正月)を控え、帰省などで40日間で延べ30億人が大移動すると予想されている。ネット旅行代理店中国最大手・携程(シートリップ)がまとめた春節の海外旅行先ランキングでは日本が第1位だった。
 「武漢と周辺に、報告よりずっと多くの感染者がいる恐れもある」との指摘もある中で、日本国内における感染拡大の抑止が重要な課題となる。水際対策を徹底すると同時に、マスクの着用や「せきエチケット」、外出後の手洗い、うがいなど通常の感染症対策に留意したい。また、厚生労働省は、武漢市への渡航歴がある人でせきや発熱などの症状があった場合は速やかに医療機関を受診し渡航歴を申告するように求めている。
 02年11月に中国で発生したSARSは、情報が隠されたまま03年2月の春節を迎え、大流行につながった経緯があるだけに、関係機関には今後、速やかな情報公開も求めたい。

∆ページの先頭へ

アートと本県「青森ならではの魅力発信を」

2020/1/22 水曜日

 

 県立美術館には現在、マルク・シャガールによるバレエ「アレコ」の舞台背景画全4作が完全展示されている。縦、横が21メートル、高さ19メートルというアレコホールの四方4面を巨大な4幕の背景画が彩る空間は圧巻の光景だ。所蔵していない第3幕は米フィラデルフィア美術館から長期借用しており、借用期間は2021年3月までの4年間で、あと1年2カ月余り。期間限定のこの貴重な機会を見逃さないようにしたい。
 同館ではアレコについてより深く知ってもらうため「アレコ」特別鑑賞プログラムを制作し、毎日4回、日本語版と英語版を上映している。開館前の01年に作られたプログラムだが、18年の「シャガール 三次元の世界」展を機に全4幕版を制作。今年1月14日からはバレエダンサーのCGアニメーションを加えてさらにバージョンアップした。
 特別鑑賞プログラムは各背景画に舞台用の照明を当て、バレエの原曲に使われたクラシックとともに、ナレーションで作品制作の背景やバレエのストーリーなどを紹介する内容。アレコのバレエは実際に1940~60年代までメキシコや米国欧州などで上演され各地で好評を博した。背景画は上演のたびに用いられたということで、ストーリーを理解するとより興味深く鑑賞することができる。
 シャガールは舞台背景画を描いただけでなく、ダンサーらの衣装もデザインするなど舞台全体を統括していたという。CGは実際の上演風景の資料や現存する衣装などを参考に制作しており、踊るダンサーを舞台背景画に重ねて投影することで、シャガールが思い描いた舞台全体がイメージできるようになっている。
 何よりも、広大なアレコホールという空間で、実際の舞台芸術をほうふつとさせる手法でのアレコ全4作の展示は、県立美術館ならではの企画と言える。今後も収蔵品や本県の歴史、風土など、県立美術館ならではの魅力を大いに生かし、独自の企画で来館者を魅了してほしい。
 アートは今や本県に観光客を呼び込む強力なツールの一つになっている。外国人観光客も含め、最近は県立美術館に初めて足を運んだという来館者も増えているという。
 文化やアートを好む人にとって、本県は魅力が多いと言えるだろう。今春には弘前市吉野町に待望の「弘前れんが倉庫美術館」がオープン。築100年を超えるれんが倉庫という建物で、過去には多くの人の記憶に刻まれる弘前市出身の奈良美智さんの展覧会が開かれた歴史を持つなど、多くの人々の心を引きつける力がある。既に県内外のアートが好きな層からは熱い注目を浴びているようだ。
 弘前れんが倉庫美術館オープンが注目される今は一つの好機だ。効果的な情報発信で交流人口を呼び込み、県内を周遊してもらうような取り組みを求めたい。

∆ページの先頭へ

聖マリ医大入試問題「日本の現状を変える気概を」

2020/1/21 火曜日

 

 大学医学部の不正入試問題をめぐり聖マリアンナ医科大(神奈川県)は、2015~18年度の一般入試で、女子や浪人生を不利に扱っていたとする第三者委員会の調査報告書を公表した。18年には東京医科大(東京都)に関しても、女子受験生の点数を一律に減点した問題が報じられている。
 聖マリアンナ医科大の入試に対する第三者委の分析によると、2次試験での調査書などの評価で、現役生や浪人回数が少ない大半の男性が高得点を得ていた。第三者委は「一律的な点数調整の結果と強く推認させる」と指摘。「性別・現浪区分で差別的な取り扱いが行われたと認めざるを得ない」と結論付けた。大学側は差別を否定している。
 できるだけ優秀な男性医師を増やしたいという希望が現在の医療現場にあり、その要求に応えたとしても、働き方が過酷なままであることに変わりはない。医師が私的な時間をほぼ捨て、当直勤務から通常勤務に入ることも珍しくないという、体力的に厳しい状況を強いられている状況から、男性医師ばかりを増やすというのは、果たして改善なのか。
 そして男性医師が子どもを持った場合、育休を取得して子どもと向き合う時間すら十分持てないのは幸福なのか。医師の家庭を専業主婦の妻が支えて回す男性目線の仕組みでは、子どもを持った女性医師のサポート手段が限られる。結果的に育休、産休を取る女性医師が増えると仕事を回しにくいことになるが、その状況自体が時代錯誤ではないか。
 これは医療現場に限らず日本のほかの職種でも起きている問題であり、単なる不正入試問題で終わらせるわけにはいかない。職場で滅私奉公を強いられる男性と、キャリアと家庭の選択の在り方に迷う女性の両方を視野に現場を変えなければ、「働き方改革」は題目でしかない。
 ぎりぎりのマンパワーで業務を回すのではなく、余裕を持たせること。育休を男性も取得することで、「結婚すると女性が職場に穴を開ける」という感覚をなくし、社会全体で子育てを支援する感覚を共有することが必要ではないか。
 一方でこの問題は、体制を変えることに弱腰な日本人の気質にも関わっているようにも感じられる。日本人には中長期を見据えて一定のリスクも踏まえながら改革に着手することを避け、現状維持に努めがちな部分が少なからずあるのではないか。環境問題然(しか)り、絶滅危惧種に指定されたウナギへの扱い然りである。
 聖マリアンナ医科大を含めた医学部の不正入試問題は、特殊な大学における特殊な問題として終わらせるより、現在の日本の在り方を象徴する出来事の一つとして捉え、二度と起きないように働き掛けていくべきではないか。日本の現状を変えようとする気概を、社会全体で共有したい。

∆ページの先頭へ

阪神大震災から25年「被害最小限へ、先手の対応を」

2020/1/18 土曜日

 

 6434人が犠牲となった阪神大震災の発生から、17日で25年となった。地震が起きた時刻には、被災地となった神戸市など各地で犠牲者に対する祈りがささげられた。大切な家族や友人らを失いながらも今を生きる被災者にとっては、長く短い四半世紀であったと思われる。改めて犠牲者の冥福を祈ると共に、震災で得られた教訓が次の世代に引き継がれることを願ってやまない。
 直下型地震である阪神大震災は正式名称を「阪神・淡路大震災」といい、1995年1月17日午前5時46分に発生した。震源地は兵庫県の淡路島北部で、マグニチュード7・3、観測史上初となる震度7を記録した。多数の死者のほか行方不明者3人、負傷者は4万3792人に及んだ。住宅被害は約64万棟に上り、犠牲者の多くが倒壊した建物や家具の下敷きになったとされたことから、国や自治体が建物の耐震化を進めるきっかけともなった。
 阪神大震災後も、国内では2011年3月の東日本大震災や16年4月の熊本地震など、大規模な地震が発生し、数多くの犠牲者や行方不明者、負傷者を伴う事態が相次いできた。これらの地震は予測できない上、想定外の規模ということもあるが、発生要因の違いから阪神大震災で得た知見や教訓だけでは対応しきれなかった側面もある。
 阪神大震災は前述のように、犠牲者の死因の多くが家具などの下敷きになったとされるのに対し、三陸沖の太平洋を震源とする地震に伴う東日本大震災は、津波によるでき死が9割に及んだ上、いまだ地域住民の生活に影響を及ぼしている東京電力福島第1原発事故も加わった。
 初めて直面するケースであるからといって、対応が後手に回ってしまうようなことは避けるべきだろう。阪神大震災の教訓を伝える「人と防災未来センター」(神戸市)の河田恵昭センター長は現状、後手となってしまっている日本の災害対応を憂慮した上で、被害発生後に原型復旧する考え方に警鐘を鳴らしている。地球温暖化で風水害の威力が大きくなっている現状で、原型復旧の対応では再び同様の被害を受ける可能性があるためだ。このため、再度の災害防止を図る「改良復旧」の考え方を提唱する。
 これこそまさに、阪神大震災の教訓と言えるだろう。確かに何かが起きてから、同じ物を作る対応では、再び多くの犠牲者や行方不明者を出すことは明白だ。実際には東日本大震災後、各地に巨大な防潮堤が築造された。しかし、他にも将来的な被害を予測した対応が必要だ。例えば、原発の「安全神話」は福島原発事故で崩壊したが、安全性を過信せず、震災前からリスク予測をする考えがあれば被害を小規模に抑えることもできたはず。現状に妥協せず、被害を最小限に食い止めるため一考を願いたい。

∆ページの先頭へ

大学入試改革再検討「本気度問われる文科省の姿勢」

2020/1/17 金曜日

 

 2020年度に始まる大学入学共通テストに関し、英語民間試験と国語・数学の記述式問題の導入見送りを受けて、大学入試改革の在り方を改めて議論する文部科学省の検討会議の初会合が開かれた。委員には共通テストと各大学の個別試験の役割を整理し、受験生が安心して受けられる公平な制度の実現に向けて知恵を絞ってほしい。国がこれ以上、受験生を振り回す事態は避けなければならない。
 検討会議では、見送りとなった経緯も検証する。委員の意見にもあった通り当然、徹底した検証が必要だ。
 文科省が昨年末に公開した、入試改革に関する二つの有識者会議(非公開)の議事録では、昨年9月段階でなお、英語民間試験導入について委員から受験機会の格差などを理由に延期を含めた制度の見直しを求める意見や、「見切り発車」を懸念する意見が上がっていたことが明らかになっている。民間試験の実施団体からは、「全ての不安要素を100%排除するのはかなり難しい」との見解も示されていた。
 問題点を把握しながら、実施ありきで準備を進めてきた同省の、前のめりとも言える姿勢が、混乱の根本になかっただろうか。
 混乱を生じさせた当事者が設けた検討会議で、どこまで自らの問題と責任の所在を冷静に追及できるか、疑問は残る。萩生田光一文科相は昨年12月に記述式問題見送りを正式に発表した際、検討会議について「まっさらな状態から対応したい」と発言していた。言葉通り貫徹されることを望む。
 大学入試改革は、高校教育で育成が求められる思考力、判断力、表現力の評価を狙いの一つとしていた。英語の4技能「読む・聞く・話す・書く」の評価もその一つ。それらを重視する姿勢自体が間違っているとは言えないだろう。
 しかし、英語民間試験に関しては経済状況や居住地域といった格差、記述式問題については採点ミス、実際の採点と受験生による自己採点との食い違いといった問題を解消しないまま進めようとしたことが今回の事態を招いた。入試のどの部分をどの機関がどのような形で担うのが現実的かつ最善か、公開の場での真剣な議論が必要だ。機能する仕組みなくして、目標は実現できない。
 検討会議は今年末までで、必要に応じて延長するとしている。記述式問題の充実策は期限を区切らず話し合う一方、英語については今年末までに結論を出し、24年度からの実施を目指す。24年度は、新学習指導要領の導入に合わせた設定という。経過の検証も含め、1年弱の検討期間は「まっさらな状態から」多様な意見を吸い上げながら作業を進めるのに十分だろうか。結論ありきで進めると、同じ轍(てつ)を踏むことになりかねない。

∆ページの先頭へ

Page: 1 2 3 4 5 ... 155

当サイトでは一部、Adobe Flash・PDFファイルを使用しております。閲覧にはAdobe Flash Player・Adobe Acrobat Readerが必要です。最新のプラグインはアドビ社のサイトより無料でダウンロード可能です。

  • Adobe Flash Player ダウンロードセンター
  • Adobe - Adobe Reader ダウンロード