社 説

 

芸術で地域活性化「NCL弘前の取り組みに期待」

2020/2/26 水曜日

 都市部からの移住や起業を通じて地域活性化などを目指す弘前市のひろさきローカルベンチャー育成事業「ネクストコモンズラボ(NCL)弘前」。その事業の一環として、第一線で活躍する美術家を弘前に招き、滞在して作品制作に取り組んでもらう「アーティスト・イン・レジデンス(AIR)」の取り組みが進んでいる。
 NCLは地域課題の解決や地域資源の有効活用につながるプロジェクトを提示し、全国から募った起業家と事業を展開するもので、弘前市の中心市街地には昨年、拠点施設「弘前オランド」が開所。本格的に活動を始めている。NCLはこうした取り組みを全国各地で進めているそうで、メンバーは自身の知識や経験を生かし、それぞれの地域で起業や活性化策に挑戦している。弘前市でも地域おこし協力隊の制度などを活用したメンバーが精力的に活動している。
 AIRは芸術分野の視点から弘前の新たな魅力を掘り起こそうという企画で、NCL弘前の起業家候補者として地域おこし協力隊となった学芸員の樽澤武秀さんと、アーティストの優香さん夫妻が手掛けている。現在、弘前オランド内に滞在型の展示・制作スタジオの開設に向けた企画が進行中で、優香さんの芸術家仲間で東京を中心に活動する酒井一樹さんが弘前に滞在し、4月の施設オープンに合わせた成果発表展に向け、弘前をテーマにした作品を構想しているという。
 弘前市といえば、弘前藩の城下町として藩政時代にさまざまな文化の華が咲き、その伝統が今も強く息づいている。また弘前大学をはじめとする高等教育機関も数多く集積していることから、文化・芸術に対する環境的な厚みは大きなものがあるだろう。
 芸術面から地域おこしを図るというアイデアは、こうした都市的な特徴のある弘前にふさわしいものと言えるだろう。弘前市内に一定期間、滞在するというのも面白いアイデアだ。その間にアーティストは弘前や津軽について、さまざまなものを吸収することができるだろうし、作品の深みも増すのではないか。私たち地元に住む者にとっても“弘前の外”の視点を持つアーティストが、どのような目で弘前を、津軽を見るのか、興味深いものがある。
 弘前市内には今春、「弘前れんが倉庫美術館」がオープンする運びとなっている。建物自体が希少価値を持つ美術館の開館に、市内外から多くの人が心待ちにしていることだろう。弘前オランドも同じ中心市街地にあるので、相乗効果を生むことも可能なはずだ。
 数多くの文化財や素晴らしい芸術の数々に触れる機会と場所がある弘前市。今後もさまざまな芸術活動の芽を吹かせ、育てていくことで、弘前らしい街おこしの未来図を描いていきたい。

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県予算案「人口減少対策、事業効果に注目」

2020/2/25 火曜日

 県が2020年度の当初予算案を発表した。一般会計総額は6816億円。これまで同様、人口減少対策を最重要課題とし、対策に441事業合計293億円を計上。特に若者や女性の県内定着・還流、結婚・出産・子育て支援などを重視し、予算を重点的に配分したという。
 人口減少克服に向けた戦略プロジェクトは、若者と女性対策のほか、多様なしごと創出、選ばれる青森に向けた食と観光の成長、地域づくり、健康の五つ。中でも重視するという若者と女性に対しては小・中学生から社会人まで各ライフステージに応じて、県内企業や仕事の情報発信、結婚や子育て支援、移住・Uターンの促進など、本県の魅力に気付き、定着してもらおうという取り組みが並ぶ。
 ただ人口減少はここ数年の課題で、以前から大きな要因の一つとして進学や就職を契機とした若者の県外流出が挙げられてきた。これまでも県はこのことを重く受け止め、さまざまな対策を講じてきたが、歯止めが掛かっていない状況だ。
 15年8月に策定した「県長期人口ビジョン」では2080年以降の県人口見通しを約80万人で安定すると展望したが、最新の改訂版では約72万人に下方修正したという。人口減少対策は短期で劇的に効果が上がるというものではないが、これまでの事業効果の検証、さらには従来とは異なる、課題への思い切ったアプローチが求められているのではないか。
 そのほかの戦略プロジェクトに含まれる各事業―本県の強みである食と観光の強化をはじめ、担い手不足が顕在化する中での多様な労働力の確保、高齢化社会に向けた交通ネットワークの形成や買い物支援など―は、いずれも重要かつ県民の関心が高いと言えるが、目新しさはない。やはり改善につながっているのか、視点を変える必要はないのか、事業を進めながら問い直す姿勢が必要だろう。
 当初予算案は財源不足を補う財政調整用基金の取り崩しをゼロとし、4年連続の収支均衡予算を実現。県債発行額は減少傾向にあるが、一方で20年度末の残高はまだ1兆258億円と見込まれる。限られた貴重な財源だけに、いかに有効活用していくのか、県民は注視している。
 予算では縄文遺跡群の世界文化遺産登録を見据えた取り組み、東京五輪・パラリンピックの大会効果獲得に向けた取り組みなどにも力を入れた。どちらも世界に向け、本県の魅力を発信していくことにつながり、期待が大きい。チャンスを逃さず、最大の効果を狙ってほしい。
 三村申吾知事は本予算案を県民の経済基盤を支える「県民の暮らし安心予算」だと述べ、「一人でも多くの若者や女性から、学ぶ場所、働く場所、生きる場所として選ばれる青森県を目指す」と決意を示した。青森らしい豊かな暮らし、持続可能な地域の姿をどのように描き、どう提示してくれるのか。注視したい。

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カラス対策「市町村間の広域連携検討を」

2020/2/22 土曜日

 各地で住民を悩ませているカラス。弘前市でも個体数などの調査を続けながら、さまざまな対策を講じているが、ふん害などは相変わらず見られ、それらをいかに減らすかが課題となっている。
 先日、同市内で開かれた「弘前市カラス対策連絡協議会」で市が報告したところによると、個体数は緩やかながら減少傾向にはあるという。2018年10月には弘前公園周辺で3831羽が確認されたが、19年11月には3595羽に減少、今年2月8日に弘前大学周辺で確認すると3359羽だった。
 関係者は、箱わなを用いた捕獲など各種対策の成果が次第に表れているとする。しかし、どの対策も万能とは言えないようで、箱わなを使った捕獲数の推移を見ると、昨年度は337羽だったが今年度は165羽(2月13日現在)にとどまっている。
 今冬は少雪のため餌場が雪に覆われず、箱わなの餌を求めるカラスが少ないことが原因とみられている。関係者は、餌の確保が難しい冬季の自然死を促すことを「対策の根本」に据えるべきとしているが、昨今の気象状況を見れば、冬がカラスにとって必ずしも厳しい時期とは言い切れない面があり、対策の難しさが浮き彫りになっている。
 とはいえ、諦めるわけにはいかない。弘前市が公表した19年度の市民意識アンケート集計結果報告書によると、カラス対策への市民の不満が依然として解消されていない状況が示されている。関係者たちにはより効果的な対策を考案し、実施することが求められている。
 弘前市はこれまで、鷹匠(たかじょう)によるカラスの追い払いなどを行ってきた。実証実験では、鷹匠が日没前に鷹とともにカラスのねぐらとなっている市街地を巡回すると、カラスがそこから移動するといった状況が見られた。ただ、この対策も日常的に行うのは難しいはずで、大きな効果を得るまでには至っていない。
 さらに今年に入って興味深い調査結果が示された。ハシボソガラス、ハシブトガラスの2種類にタグと全地球測位システム(GPS)を付けて追跡し、行動範囲や移動距離を探ったもので、中には本県から秋田との県境を越えて大館市まで移動した個体も見られた。
 この調査結果を踏まえれば、各自治体がばらばらに対策を講じていても効果が限定的であることは明らか。調査に携わった関係者も市町村間の広域連携の必要性を強調した。他の鳥獣被害についても同様な見解が示されている。中南津軽の各自治体も隣県の自治体との協力を検討するべきではなかろうか。
 鳥獣別に本県全体の農作物被害額を見てもカラスが最多で、ニホンザルなどを上回っている。われわれの生活に大きな影響を及ぼしているカラス被害を何とかして減らしていきたい。

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1月訪日客減少「今後の減少に備え取り組みを」

2020/2/21 金曜日

 1月の訪日外国人数(推計値)が、前年同月比1・1%減、実数にして約3万人減の266万1000人となったことが日本政府観光局(JNTO)のまとめで分かった。4カ月連続で前年同月を下回る結果で、日韓関係の悪化を背景とした韓国人客の落ち込みが響いているほか、新型肺炎の拡大が今後、世界各地からの訪日客減少を加速させるとの懸念もあるという。JNTOは今後、市場動向を綿密に分析しつつ、訪日旅行の推進に取り組んでいくといい、今後どのような対策を打ち出していくのか注視する必要があろう。
 主な内訳は、韓国が前年1月の77万9383人から今年1月は31万6800人と、率にして59・4%もの落ち込みとなった。ただ、このほかにマイナスとなったのはドイツの前年同月比1・4%減のみ。中国は同22・6%増の92万4800人、台湾は同19・0%増の46万1200人、香港が同42・2%増の21万9400人と中華圏を中心に高い伸びを示しているほか、東南アジア圏も伸び率が同10~40%台と大幅な増加を見せている。この結果、韓国とドイツを除く17市場では1月として過去最高値を記録した。
 中国の場合、大型連休に当たる春節(旧正月)の時期が前年より早くなったことから、1月に訪日が集中した影響という。台湾も同様に春節時期の前倒しや地方への新規就航と増便、チャーター機運航が訪日客増加を後押しし、東南アジア圏の伸びも新規就航や訪日プロモーション活動の成果によるものとみられる。
 しかし、懸念されるのは2月以降の動向であろう。中国政府は新型肺炎の流行を受けて、1月27日から海外への団体旅行を禁止しており、今月以降影響が大きくなる見通しだ。このほか、日本国内での新型肺炎拡大により訪日需要も落ちているといい、訪日客数全体の落ち込みは避けられず、地域の観光業に与える影響も大きいと予測される。
 政府は2020年の訪日客数の目標を4000万人と掲げているが、こうした情勢を鑑みた場合、困難と言わざるを得ないだろう。新型肺炎の流行は想定外としても、韓国のように外交問題のこじれから来る訪日客数の減少は、過去の経緯からみても想定内として考えていく必要があったはずだ。九州・対馬のように韓国からの観光客にほぼ依存しているような地域は、悲鳴を上げている状態という。「訪日客数は韓国からは減っても、他の地域からは増えている」というような楽観視は避けるべきだろう。
 今後の見通しに不安要素が多数ある中で、綿密な分析と訪日観光の積極的な呼び掛けはもちろん必要だが、同時に外交問題や感染症の流行といった現状に関しては、観光に関する危機管理能力を高める機会と受け止め、官民共に訪日客増に向けた取り組みを進めてほしい。

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新型肺炎の影響「感染抑止と同時に経済対策を」

2020/2/20 木曜日

 政府が開いた新型コロナウイルス感染症対策本部で本部長の安倍晋三首相は、国民に向けて発熱など風邪の症状がみられる際に学校や仕事を休み、外出を避けるよう呼び掛けた。感染拡大を防ぐにはできる限り、人との接触を避けるのが得策なのは分かるが、年度末に向けて多忙になる中、特に小・零細企業では簡単に「そうですか」とはならないだろう。
 企業に関しては、ほかの社員の負担が増えると考え「風邪の症状」だけで休むことに罪悪感を抱く社員も少なくないのではないだろうか。複数の人材で負担を分散できる大手企業ならいいが、小・零細企業の場合は一人でも休むと痛手となる。さらに、戦後の荒廃を乗り越えて経済大国を築いた高度成長の経験から、多少無理しても仕事をこなすことを「美徳」とする風潮は、現代においても少なからず残っているのはないだろうか。
 「美徳」に社内集団感染を招く危険性があり、政府が「休みやすい環境」を求めるのは十分に理解できる。しかし、地方経済はいまだ低迷を抜け出せずにおり、業績に直結する営業活動や生産活動ができなくなれば、景気低迷、消費税増税、人材難などにあえぎ、ぎりぎりの事業継続を強いられてきた企業に、「新型肺炎倒産」が生まれる可能性も否定できない。
 外部との接触を可能な限り減らすテレワークも、できる職種は限られる。これまで個人情報などの社外持ち出しを禁じてきた企業が、社内よりセキュリティーが甘くなる可能性もある社外勤務に踏み切れるか。テレワーク実施に向けて準備を進めてきた企業ならいいが、そうでない企業は、急に「テレワークを」と言われても困惑するだろう。経営者は個人情報や社内文書の外部流出、実施しないことによる社内感染など、複数のリスクを抱えての難しい決断を強いられる。
 また、対策本部は大規模イベントの開催時期見直しを検討するよう求めている。大規模イベントが地域経済を支えているのは間違いない。例えば昨年、会期中の人出が史上2番目に多い289万人を記録した弘前さくらまつりは、飲食や宿泊、交通など多方面に経済効果をもたらす日本有数の春祭りである。桜の開花時期をずらすことができないため、開催時期の変更は不可能だ。会期変更以外の対策を考えても、入場制限は難しく、マスクの着用を呼び掛けたとしても、基本は来場者の自己防衛に委ねるしかないだろう。祭り開幕までの2カ月ほどで、新型肺炎が収束するかは分からない。
 政府にとって感染拡大の抑制が第一であるのは当然だが、仮に国内の新型肺炎が早期に収束したとしても、経済活動が即好転するとは考えにくい。中小零細企業や個人消費への影響を長引かせないためにも、感染拡大抑制と並行して、効果的な経済対策を急ぐ必要がある。

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