社 説

 

コロナ感染力士死去「角界挙げた取り組み強化を」

2020/5/16 土曜日

 

 新型コロナウイルスの感染拡大が、わが国の経済や市民生活に深刻な影響を及ぼしている。それはプロスポーツの世界においても同様だ。さまざまな人気スポーツで日程などに支障を来しており、選手たちも不安な日々を送りながら自主的なトレーニングなどに励んでいる。
 日本の国技・大相撲も例に漏れない。日本相撲協会は、24日に東京・両国国技館で開催予定だった夏場所の中止を発表した。本場所の開催中止は、今回で3度目となる。
 数々の名横綱、大関を輩出し、相撲大国を自負する本県は、大相撲ファンが多い。今回の中止を残念に思う県民も多いことだろう。だが力士をはじめ、観客、関係者の安全を第一に考えれば、いわゆる「3密」を引き起こす可能性のある本場所開催は難しいものがある。力士が土俵に専念でき、観客も安心して取組を見ることができる状況が整うまで、今が辛抱の時だと思う。
 こうした中、角界は非常に残念な訃報に接することになってしまった。西三段目82枚目の勝武士さん(本名末武清孝=高田川部屋)が、コロナウイルス性肺炎による多臓器不全のため、死去した。まだ28歳という若さだった。持病があったようだが、体力がある20代の力士が、亡くなったことは驚きであり、とにかく残念でならない。新型ウイルスの恐ろしさを改めて思い知らされる。
 大相撲は、伝統に根差す独自の「相撲文化」と呼ぶべきものが多く、それが時には感染防止対策を取りにくくさせる。幕下以下の力士は大部屋での集団生活が基本となるため、クラスター(感染者集団)発生の危険性が他のプロスポーツに比べ、高いと言える。格闘技ゆえ、ぶつかり稽古などの激しい稽古も今回の事態で思うに任せないだろう。基礎疾患を持つ力士の割合が多いとの指摘も気になるところだ。
 部屋の中には力士を2班に分けて、稽古の時間帯をずらすなどの対策を取っている所もある。日本相撲協会も力士や親方ら協会員の希望者全員に新型ウイルスの抗体検査を行うと発表した。協会員のおおよその感染状況を把握し、専門家の助言を受けながら、検査結果を踏まえた対策を立てることで、本場所開催へ向けた今後の取り組みに生かしていくという。
 部屋という集団の中で、厳しい稽古に励み、互いに切磋琢磨(せっさたくま)し合う。このような環境、風土の中で力士を育てるという仕組みは、大相撲の伝統であり、力士養成の根幹だろう。ただ、角界には伝統を尊びながらも、時代に即した対応も求められる。どのような方法が大相撲の未来にとってベストなのか。難しい局面が続くが、関係者には最善の道を探り続けてもらいたい。相撲ファンの一人としても角界の取り組みを応援していきたい。

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緊急事態宣言解除「終息ではない 気を緩めるな」

2020/5/15 金曜日

 

 政府は14日の新型コロナウイルス感染症対策本部で、全国に発令していた緊急事態宣言について、本県など39県で解除した。感染状況などを総合的に検証し、行動制限緩和が可能と判断したもので、「特別警戒都道府県」のうち5県も解除した。経済活動が次第に動き始めるとみられるが、「解除」の2文字は「終息」を意味するものではない。解除前と同様、感染拡大防止を第一とした行動が全国民に求められている。
 宣言は3月に成立した改正インフルエンザ対策特別措置法に基づき、4月7日に東京都など7都府県に発令。人の移動による全国的な感染拡大を防ぐ観点などから、16日に対象を全国へ拡大し、当初の7都府県に北海道などを加えた13都道府県を特定警戒都道府県に指定した。今月4日にゴールデンウイークが終わる6日までとしていた期限を、31日までに延長した。
 この際、安倍晋三首相は「可能と判断すれば期間満了を待つことなく解除したい」考えも示しており、14日に感染症専門家らによる専門家会議で意見聴取、経済学者らを加えた基本的対処方針等諮問委員会の了承を得た上で対策本部を開き、39県の解除を決定した。
 規制を緩和するなどした海外の状況を見てみよう。イランではショッピングモールなどに人が集まり、マスクを着用しない人も目立つようになった結果、新規感染者数が増加に転じた。4月下旬以降、新規感染者が無い日もあった韓国ではクラブで集団感染が発生。いずれも、国民の気の緩みが招いた事態のようだ。一方、外出制限を緩和したパリでは、家電量販店に列ができたが、カフェなどは休業を続行。市民らも「外に出るのを怖がる友達も少なくない」「生活はあまり変わらないだろう」など、警戒感を解いておらず、経済的影響も続いている。
 宣言解除は経済活動の回復に不可欠である半面、以前の水準に戻すことが難しく、新規感染者の再増加リスクがあることは、海外の例から分かる。安倍首相も会見で「コロナ時代の新たな日常を取り戻すスタートだ」とした一方で「次なる流行の恐れは常にある」と“第2波”を警戒。状況次第で再度、宣言を出す可能性も示し、県境をまたぐ移動を控え、時差出勤するなど、宣言時と同様の取り組みに努めるよう協力を求めた。
 宣言の解除は確かに新たな一歩である。しかし、14日も愛媛県の病院で集団感染が確認されるなど、解除された県から新規感染者の報告があった。残念ながら、国内の終息が近いとは言えないのが現実だ。厚生労働省が公表している「新しい生活様式」が、当たり前と思えるようになって初めて、終息の兆しが見えてくるだろう。日常生活を一変させるほど大きな問題であることを再認識し、気を引き締めなければならない。

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再処理に合格書案「安全を追求する姿勢を示せ」

2020/5/14 木曜日

 

 日本原燃の再処理工場(六ケ所村)について、原子力規制委員会が13日、新規制基準の合格書案を了承した。再処理工場は使用済み燃料からウランとプルトニウムを取り出し、混合酸化物(MOX)燃料にして再び原発で使う核燃料サイクル政策の中核施設。ただ、原発の再稼働が進まず、MOX燃料を原発で使うプルサーマル計画も先行き不透明だ。再処理後に出る高レベル放射性廃棄物の処分場も議論は止まったままで、総事業費が約14兆円に達する一大プロジェクトは、存在そのものが問われる厳しい状況に置かれている。
 2014年1月に始まった規制委員会における審査は、審査実績がある通常の原発と違い、海外でもあまり例がないため規制委、原燃が互いに手探り状態から始まった。規制委の担当者は「審査のやり方としてどういうアプローチが良いか、お互いに試行錯誤があったと思う」と振り返る。
 原発であれば最も危険性が高いのが炉心の核燃料とプール内の使用済み核燃料。冷却が止まると、炉心損傷などの重大局面に至る時間的余裕は少ないが、事故対策の対象は限られ、先例があれば、それを参考に規制委、事業者とも“相場観”を持てる。
 しかし再処理工場は使用済み核燃料、処理後のガラス固化体、高レベル放射性廃液などさまざまな放射性物質が存在する。引火性の高い溶媒や臨界の危険性を持つ化学薬品もあり、「守るべきものが面的に広がっている」(規制委の更田豊志委員長)という難しさがあった。
 このため、航空機が墜落した場合の影響をどう見積もるかや、冷却が止まった放射性廃液が沸騰した際の対処など再処理工場に特有の論点が続出。審査書案のたたき台が議論された規制委の定例会で十分な議論がなされていないとして、追加の審査会合が開かれるなどした。
 地震対策では、申請時に600ガル(加速度の単位)だった想定(基準地震動)を700ガルへ引き上げ、規制委も16年2月に妥当と認めたが、敷地直近の出戸西方断層の評価をめぐる議論が再燃。原燃は60カ所に及ぶボーリング調査などを追加実施し、了承を得た。
 審査の難しさはあったが、審査長期化の最大の要因は原燃の体質にある。度重なるトラブルはもちろん、審査会合では規制委側が「一つ指摘しても、それに対するレスポンス(応答)がない」「縦で理解されていても横に広がっていない」などと嘆く場面は何度も見られた。
 一方で、審査が長期にわたったことで「ある意味、時間がかかったことで、特に若手にとって勉強になったかもしれない」と話す規制委の担当者もいる。この経験を生かし、安全・安心を追求する事業者としての姿勢を見せることが、原燃に求められている。

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弘前ナンバー交付「“走る広告塔”の効果に期待」

2020/5/13 水曜日

 

 県内初となる図柄入りの自動車用ナンバープレート「弘前ナンバー」の交付が始まった。地域名の表示は県内では「青森」「八戸」に続くもので、弘前市周辺では待ち望んでいた人たちも少なくないのではないか。残念なことに新型コロナウイルスが流行する中での交付開始となったが、収束後にはナンバーを付けた車が「走る広告塔」となり、「弘前」を大いにPRすることを期待したい。
 弘前市では2004年度にも「弘前ナンバー」の実現を目指す機運が盛り上がったが、市内の登録自動車数が基準に達していなかったため断念した経緯がある。しかしその後、国土交通省の規制緩和により、一定の知名度を持つ地域名で、複数の自治体が連携して登録自動車数の条件をクリアすれば実現可能となった。この緩和を受け、弘前市と西目屋村は導入の意向を表明。両市村と地元の商工団体などで18年に実行委員会を立ち上げ、公募を経て弘前城と桜、岩木山をデザインした図柄を採用した。
 このデザインは県外の女性によるものだ。地元をアピールするためのものであれば、デザインも地元で―という考え方もあるかもしれないが、「弘前城」「桜」「岩木山」は遠く離れた人でもイメージできるほど有名なのだと捉えることもできるのではないか。それだけ、地域の資源として価値が高いと考えることもできよう。
 もちろん、弘前ナンバーには図柄入りのほか、図柄のない通常版もある。ただ、地域名を表示する「ご当地ナンバー」交付の目的が地域振興であることを考えれば、図柄入りのナンバーを付けた車が一台でも多く道路を走ってくれることを期待したい。交付開始に当たり、弘前市の櫻田宏市長は「ウイルスの感染拡大が一日も早く収束し、桜色の弘前ナンバーを付けた車が、弘前の魅力を広めていくことを願う」とコメントを出した。
 同市では今年、新型ウイルスの感染拡大防止のため、弘前さくらまつり(4月23日~5月6日)が中止となり、市民や観光客は弘前城の天守、桜を見て楽しむことができなかった。さらに全国同様、市民らは今も新型ウイルスの感染防止に努め、さまざまなことを自粛する生活に耐え続けている。
 新型ウイルス感染拡大の影響で暗い話題が目立つ中、弘前ナンバーの交付開始は数少ない明るい話題だったのではないか。交付手続きの受け付けを始めた今年4月13日から5月8日までの申請件数は675件に上るという。弘前市、西目屋村に住民票を持つ人が新たに車を購入する際は弘前ナンバーとなる。申請件数は今後も増えていくことだろう。
 来年の春には桜が咲き誇る弘前公園の周囲で、図柄入りの弘前ナンバーを付けた車が行き交う様子を見ることができると願い、もうしばらく辛抱したい。

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コロナと自殺「負の相関断ち切る取り組みを」

2020/5/12 火曜日

 

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で自殺者の急増が懸念されている。健康不安や経済的困窮、外出自粛生活で鬱積(うっせき)したストレスにより、心の健康もむしばまれるリスクにさらされているからだ。
 豪州では今後、新型ウイルス関連で自殺者が最大50%増える恐れがあると同国の医療協会などが警告している。感染による直接的な死者を大幅に上回る公算が大きいこと、経済の悪化が1年以上続けばこの高い水準が最大5年間続くとみられること、増加する自殺者の約3割は学生を含む若者が占める可能性が高いことも指摘されている。
 この警告は、他国のことだからと無関心でいられる内容だろうか。一般的に失業率が高くなると自殺者数も増える傾向にあるという。こうした負の相関は断ち切らなければならない。
 雇用と生活を守ることは、命を守ることにつながる。だが、特別定額給付金や持続化給付金だけでは命を守るという観点からは十分でない。感染拡大の抑止と医療体制の充実が大前提であるが、悩みを抱える人を対象とした、相談窓口を開いておく必要がある。
 ところが窓口を開設している団体も、新型ウイルスの感染防止対策で活動の休止・縮小を余儀なくされているケースが多い。早期の通常業務再開に向けて団体への支援も求められる。命を救う可能性がある機会を減らしてはならない。
 いのち支える自殺対策推進センターが4月下旬、自殺対策などに取り組む全国の民間団体を対象に実施した緊急調査では、回答した55団体の8割余りが活動を休止したり、活動内容・時間を制限したりしていた。
 また、日本いのちの電話連盟に加盟する全国52団体のうち、12団体が緊急事態宣言発令に伴い、相談受け付けを休止している。
 相談は、プライバシー保護のため個室で対応することが多い。対面形式は相談員らの感染リスクが高まることが休止の理由に挙げられるが、電話やSNSによる相談も複数の相談員が連携して対応する場合が多く、個室で「三つの密」状態になりやすいという。SNS相談のリモートワーク化も、プライバシーを確保できる通信環境の整備が難しいようだ。
 日々切実な声に接している相談員や運営団体にとって、休止・制限は苦渋の決断だったはずだ。しかし、相談員たちの安全確保のためにはやむを得ない。
 同センターの調査では回答団体から、転送電話や通信機器の導入に関する資金援助などを求める意見が寄せられたという。検討すべき事項だ。
 一般市民も、具体的な相談には応じられなくても傾聴などを通じて不安解消に役立つことは期待できる。立場を問わず支え合う心を大切にし、できる部分から始めてみたい。

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