社 説

 

コロナ影響推計「数字好転に向け、機運醸成を」

2020/5/30 土曜日

 

 新型コロナウイルス感染症の本県経済への影響について、弘前大学人文社会科学部の桑波田浩之講師が、今年度の県内生産額の損失が少なくとも1661億円に上り、県内総生産が約2・1%押し下げられるとの推計を発表した。新型コロナの感染拡大を受け、全国では今春以降のイベント・祭りを自粛、中止する動きが相次いでおり、本県でも弘前さくらまつりをはじめとする多くの祭りが同様に中止となった。夏もねぷたやねぶたといった主要な祭りが開催されない。こうした状況を踏まえて、4~9月の期間中、観光客が大幅に減少した、との想定で試算したものという。
 試算はダメージが大きいとされる観光関連産業などの業種に対象を絞って算出したため、地域経済全体にはより深刻な影響が及んでいると思われる。本県における緊急事態宣言(4月16日~5月14日)が過ぎ、通常の生活が徐々に戻っているとはいえ、現段階でこの損失額の数値を減少させる要素は少ない。飲食店を応援する「エール飯」、時間や場所にとらわれない働き方を指す「テレワーク」など、コロナ禍を契機に新たな生活様式が浸透しつつある中で、今後損失額の拡大を抑制させ、好転に持ち込む機運醸成と対策が急務となりそうだ。
 発表された推計は、本県の緊急事態宣言発令期間を、短期間で広範囲に深刻な影響が及んだ「フェーズ1」に、4~9月を本県主要産業の一つである観光業が長期的な影響を受ける「フェーズ2」と大別した上で分析。その結果、県内生産額の大幅な損失に加え、県内総生産に当たる粗付加価値が998億円減、雇用者所得は従業員2万2989人分の雇用に相当する607億円減とはじき出した。フェーズ1、2を合計した経済成長率は、リーマン・ショックの影響を受けた2008年度に次ぐ落ち込みとなった。問題が長期化することによるマイナス幅の増大も予想されるという。
 ただし、これらの推計値は「一切の対策を打たない場合のもの」(飯島裕胤学部長)といい、好転できる数字ともなる。桑波田講師は、対策として(1)飲食・宿泊需要の喚起(2)農林水産業の強みを生かした在宅需要の取り込み(3)テレワークやオンライン会議を生かした遠隔地への販路開拓―などを提案。飯島学部長も「未来を見据えた政策、有望産業への先行投資などが求められる」と訴える。
 これらの対策は現在、随所で行われているのだろうが、数字を大きく好転に持ち込むには行政の後押しはもちろん、民間事業者の積極的な取り組みや提案が求められよう。産業が衰退していく状態を「コロナだから、やむを得ない。仕方ない」と手を打たない選択肢はないからだ。「コロナを克服しよう。県内の産業をもり立てよう」という機運が醸成されることを願ってやまない。

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京アニ放火殺人事件「容疑者逮捕、事件全容解明を」

2020/5/29 金曜日

 

 昨年7月に発生し36人が犠牲となったアニメ制作会社「京都アニメーション」第1スタジオの放火殺人事件で、京都府警は27日、殺人や現住建造物等放火などの疑いで青葉真司容疑者(42)=さいたま市見沼区=を逮捕した。容疑を認め、「ガソリンを使えば多くの人を殺害できると思い実行した」「京アニに恨みがあった」などと供述しているという。
 事件発生から10カ月余。青葉容疑者は全身に大やけどを負い、京都市内の病院に入院中だったが、府警は勾留に耐えられる状態に回復したと判断した。今後、取り調べが本格化する。平成以降、最悪の犠牲者を出した放火殺人事件の背景には何があったのか、動機の解明に全力を挙げてほしい。
 逮捕容疑は2019年7月18日午前10時半ごろ、第1スタジオに侵入し、ガソリンをまいて放火。スタジオ内にいた36人を殺害、34人を殺害しようとするなどした疑い。
 青葉容疑者は事件後、大阪府内の病院で皮膚移植などの手術を繰り返し受け、重篤な状態が続く時期もあったが、昨年11月には京都市内の病院に転院し、リハビリを本格化させていた。全身やけどのため、自力歩行できず、食事などにも介助が必要な状態が続くが、府警は「逃亡や罪証隠滅の恐れがあると判断した。記憶の減退などを懸念した」と逮捕の理由を説明。逮捕に先立ち、勾留先に介助人を配置するなど異例の受け入れ準備を進めてきた。
 京都アニメーションは「京アニ」の愛称で知られ、有名アニメを多数制作してきた。国内外にファンは多く、今では珍しくないアニメの聖地巡礼も、ブーム拡大のきっかけの一つが京アニの代表作だったとされる。事件では36人もの命が奪われ、33人が重軽傷を負った。犠牲者の多くは、将来のアニメ界を背負うべく励んでいた20代から30代の若者だった。その夢と日常を奪った罪は重い。
 突然の惨事で肉親を失った遺族も、いまだ心の整理がつかないことだろう。理不尽に命を奪われた娘に思いをはせる遺族は「極刑しかない」と怒りをぶつけ、別の遺族は「自分がどういう罪を犯したのか、100%知る必要がある」とし「本人が罪の意識を持たない限り、何の意味もない」と静かに語った。
 今後の捜査で最大の焦点となる動機について、青葉容疑者は事件直後、駆け付けた警察官に「小説を盗まれたから火を付けた」と話したという。しかし、捜査関係者は「大量殺人はよほどの理由がないと実行に移さない」といぶかる。
 多くの犠牲者を出した放火殺人事件はなぜ起きたのか。犠牲者や遺族の無念を少しでも晴らすことができるよう、また同じような惨事を二度と起こさないために、社会的背景も含め、事件の全容解明に努めてほしい。

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プロ野球6月開幕「ストレス社会の緩和に期待」

2020/5/28 木曜日

 

 日本野球機構(NPB)は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期されていた今季公式戦開幕日を、6月19日に設定することを決めた。開幕が遅れるのは、東日本大震災が発生した2011年以来だが、11年でも4月12日には開幕している。2リーグ制後で最も遅いシーズン開幕は1973年の4月14日だそうで、今回の6月開幕が、いかに異例のものであるかが分かろうというものだ。
 当面の試合はプロ野球の公式戦では初めてとなる無観客で行われることになる。まさに今年は異例ずくめのシーズンとなるが、選手、関係者は、ようやく開幕日が決定したことで、ほっと胸をなで下ろしていることだろう。
 プロスポーツはさまざまあるが、ファン層の厚さ、収益規模、そして経済波及効果の大きさなどから言っても、野球は日本のプロスポーツの王様とも呼べる存在だ。くしくも開幕日が発表となった25日は、東京などで新型コロナに関する緊急事態宣言が解除され、日本全国で宣言が全面解除になった。
 息の詰まる生活を強いられてきた、国民、ファンにとってプロ野球の開幕は待ちに待った朗報となっただろう。球場に行っての観戦はもう少し先のことになるが、さまざまな娯楽が制限されてきたストレスを和らげる楽しみの一つとなるに違いない。
 もっとも前例のないシーズンだけに課題は多い。先の見えなかったこの数カ月間、選手はさまざまな工夫をして自主トレーニングに励んできただろうが、開幕までの短期間で実戦的な練習をどの程度行うことができるか。野球はチームプレーが重要なだけに、長く試合から離れた選手たちが試合の感覚を取り戻すのに苦労するだろう。
 リーグ戦に付き物の遠征は移動リスクを伴うものであり、選手の新型コロナ感染を防ぐために、どのような方法が望ましいか、悩ましいところだ。近日中に公表されるガイドラインが注目される。
 当面は無観客試合となるが、各球団の経営面やファンの希望を考えれば、球場での一般観戦もいずれ解禁となる日が来るだろう。多くの観客が集まるプロ野球観戦は、大規模イベントにおいて新型コロナ対策をどのように行うべきかを考える良き事例となる。関係者間の協議で最善の方法が模索されることを望みたい。
 緊急事態宣言解除を受け、プロ野球以外のスポーツ界でも始動の動きが強まっている。プロ野球と連携して新型コロナ対策を進めてきたサッカーのJリーグは29日に中断分の公式戦の日程を決める予定で、プロゴルフでも6月中の開催を模索する動きが出ている。新型コロナに対する警戒感と予防意識を常に持ちつつ、日常生活を取り戻していく。プロアスリートが魅せる熱戦がその後押しになってくれればと心から願う。

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きょう2次補正「企業存続は経済回復の一歩」

2020/5/27 水曜日

 

 政府は27日、新型コロナウイルス感染拡大による経済活動停滞を受け、中小事業者に対する家賃支援などを盛り込んだ2020年度第2次補正予算案を閣議決定する。1次補正と合わせた事業規模について安倍晋三首相は「200兆円を超える」と明言しており、財政支出に民間融資などを加えた総合的な事業規模は100兆円程度になるという。
 緊急事態宣言の解除を受け、6月から営業休止店舗を再開したり、在宅勤務から時差出勤にしたりする方針を示す企業もあるなど、経済活動に平常化の兆しが見えてきた。ただ、新型コロナが終息したわけではなく、感染の第2波、第3波を危惧する声は多く、早期に感染拡大以前の経済水準を取り戻せるとは思えない。休業要請や外出自粛の影響は大きく、これまで持ちこたえてきた企業の中には“倒産予備軍”もある。2次補正の重点を企業存続や雇用維持などに置いたのは、こうした状況を踏まえたものだ。
 2次補正では、収入減で家賃の支払いが困難になった事業者に対し、3分の2を半年間助成する。300万円の上限を設けているが、複数店舗を有する事業者には特例として600万円とする。中小企業の資金繰り支援として日本政策金融公庫や民間銀行などが行っている無利子・無担保融資は、規模を大幅拡充。休業手当を支払った企業向けの雇用調整助成金は日額上限を引き上げ、休業手当がない従業員に対する給付制度も創設する。
 報道各社の世論調査によると安倍内閣の支持率は「危険水域」とされる20%台に下落した。布マスク配布は市場にマスクが出回るようになった現時点でも全世帯には届いておらず、特別定額給付金も同様の状態。支持率低下には複数の要因があるが、こうしたスピード感が欠如した政府の対応はその一つ。2次補正で掲げた事業は大丈夫なのかと疑いの目を向けたくなる。
 感染症終息という直接的な対策とともに、生活困窮者を生み出しかねない経済も早期の立て直しが求められる。家賃助成や資金繰り支援などを盛り込んだ2次補正は、当面の倒産や従業員の解雇をある程度防ぐことはできるだろう。言い方を変えると、企業に対する延命措置であり、回復、成長につなげる施策がなければ、経営は再び悪化に転じかねない。
 各企業は苦境を乗り越えようと努力している。しかし、「3密」回避が当然となった消費者の反応や第2波の震源地となり得るリスクを考えると、販促イベントなど即効性のある取り組みには踏み切りにくい。25日の会見で安倍首相は「100年に一度の危機から日本経済を守り抜く」との決意表明は、支持率回復が念頭にあるようだ。企業存続は経済回復の第一歩であるのは分かるが、危うい状況は変わらない。行く先にある霧をどう晴らすのか。次の一手を注視したい。

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緊急事態宣言解除「〝特効薬〟の開発支援に全力を」

2020/5/26 火曜日

 

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が25日、約1カ月半ぶりに全国で解除された。安倍晋三首相は記者会見で今回の流行を収束させることができたと説明したが、多くの国民は解除によって再び増加傾向に転じると考えているだろう。社会経済活動を回復させるため、政府は治療薬やワクチンなど“特効薬”の開発支援に全力を注ぐべきだ。
 宣言の全面解除を受けて安倍首相は感染拡大防止策を取りつつ、経済活動を再開する「新たな日常」の確立を呼び掛けるとともに、感染リスクをコントロールする発想の転換も求めた。
 ただ、先立って宣言が解除された大阪府では週末こそ人出が戻ったが、それでも4割増にとどまった。解除されても外出には慎重な府民の姿勢が際立つとともに、事態が収束したと思っていないことも見て取れる。
 政府は事業モデル別に再開方針を示す考えだが、国民が外出に慎重なままでは事業を再開しても売り上げは回復しないだろう。営業を自粛し必死に耐えてきた中小事業者が、事業の継続を諦めることが危惧される。
 首相は持続化給付金、臨時交付金などの拡充を盛り込んだ新たな補正予算案の編成も表明した。しかし日々の暮らしに困窮している人々の声が聞こえているのか、はなはだ疑問だ。
 持続化給付金は申請手続きが煩雑で、1人10万円の特別給付金も申請書類すら届かず、いまだ1円も受け取っていない事業者や世帯が圧倒的に多い。
 首相は着実に給付実績を積み上げていると主張する傍ら、対応の遅れについても認めた。ならば新たな風呂敷を広げる前に課題を検証し、対策を講じるべきだ。さらなる拡充によって給付に遅れが出ては本末転倒だ。
 給付の遅れについて根本的な問題があるのか、記者会見で問われた首相はIT化の遅れ、普及しないマイナンバーカード、現場の作業量の多さ、従来の審査方法を改善できていないことを挙げたが、明確に理由は説明できなかった。
 一方、新薬の開発支援はどうなっているのか。厚生労働省は治療薬について、国立研究開発法人日本医療研究開発機構の研究費や厚生労働科学研究費等の各種研究費制度を活用し、治療薬等の研究を順次拡大している。
 ただ、これらは公募・審査の上で1件につき数千万円から数億円程度を補助するにすぎない。米国ではトランプ政権が治療薬開発に向け数百億円規模を投資する方針だと報じられており、本気度の違いは明確だ。
 いつまで「新たな日常」を続けるのか。感染の第2波、第3波で再び社会経済活動を停止させるのか。不安を根本から払拭(ふっしょく)するためにも、特効薬の一日も早い開発が待たれる。

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