社 説

 

安保法施行1年「不安解消へ説明尽くせ」

2017/3/31 金曜日

 

 安全保障関連法施行から1年が過ぎた。ここにきて、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に参加する陸上自衛隊の日報をめぐる問題発覚で、治安が悪化する現地情勢が国民に伏せられたまま、同法に基づき駆け付け警護の新任務が部隊に付与されていたことが露呈。防衛省と安全保障政策への信頼を揺るがしかねない事態となっている。
 昨年6月からの日報には「戦闘」の表現が連日のように記載されており、一貫して「情勢は比較的落ち着いている」としてきた政府の説明との違いが際立つ。政府は日報の存在が明らかになった後も、「法的な意味での戦闘行為ではなく武力衝突」などと強弁しているが、銃弾が飛び交うような状況は、常識的にはどう見ても戦闘だ。
 日報では他にも、治安に関する項目のタイトルが「ジュバ市内の情勢」から「ジュバ市内の戦闘に関する状況」に変わったこともあった。8月3日付からは表紙に「閲覧は関係者限定」「用済み後廃棄」と記載されるようになった。治安悪化に伴い、外部への情報漏れに神経をとがらせていたことがうかがえる。
 武力衝突ではなく戦闘と認められれば、憲法9条が禁じる「海外での武力行使」に自衛隊が巻き込まれる恐れがあり、憲法との整合性が問われることになる。また、現地情勢が悪化すればPKO参加5原則から逸脱する恐れもあった。こうした不都合な事態を避けるために、隠蔽したのではないかとの疑惑を捨て切れない。文民の防衛官僚が、陸自内の電子データを消去するよう指示したとの疑いも出ている。
 PKO派遣の一方で、政府は昨年12月、平時から自衛隊が米軍の艦船などを守る「武器等防護」の運用を開始した。米、英、オーストラリア各軍との間では、物品役務相互提供協定(ACSA)の改定・新規締結で弾薬提供も可能となる運びだ。
 北朝鮮は弾道ミサイル発射を繰り返し、6度目となる核実験の兆候も見せるなど、挑発行為はとどまるところを知らない。中国軍機に対する航空自衛隊の緊急発進(スクランブル)回数は過去最多の水準だ。こうした実情を踏まえ、自衛隊は安保法が定める「武器等防護」や「重要影響事態」を想定した訓練を行っており、今後、同法の中核を成す集団的自衛権行使の訓練準備も進める。
 トランプ政権は北朝鮮対応で軍事行動を含む「あらゆる選択肢」を排除しておらず、自衛隊がさらなる役割拡大を求められる可能性も出てきた。安全保障環境が厳しさを増す中、米軍とより緊密な協力が可能になる一方、一体化も進み、自衛隊への要求が限度を超えかねないとの懸念も根強い。国民の不安を拭い去るためには、政府の積極的な情報公開と丁寧な説明が求められている。

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健康増進活動「“社会づくり”の基礎としたい」

2017/3/30 木曜日

 

 「健康づくりは社会づくり」。本県の「短命県返上」の旗振り役として、弘前大学大学院医学研究科教授を務めてきた中路重之氏が強調する言葉だ。社会を維持するには、それを構成する人たちが健康でなければならない。このことを念頭に、県内各分野でさまざまな動きが見られるようになっている。
 本県の基幹産業は1次産業だが、これらに従事する人たちが受ける国民健康保険の健康診断「特定健康診査(特定健診)」の受診率(14年度時点)は34・0%で、全国健康保険協会(協会けんぽ)の加入者の48・1%より低いのだという。
 春から秋にかけた特定健診の実施期間が農漁業の繁忙期と重なる状況が背景にあるといい、「多忙」を理由に受診せず、病気を早期に発見できずに重症化させてしまうこともあるようだ。
 このような状況を踏まえ、県は新年度、健康増進に熱心に取り組む農・漁業協同組合を経済的に支援する事業を始めるという。健康増進事業の経費を補助し、支援を受けて成功した農・漁協の取り組みをセミナーで周知していく。高齢化が著しい1次産業において、従事者の健康増進はまさに喫緊の課題。担い手確保のためにも必要不可欠となっている。
 こうして見ると、健康づくりはもはや、個人の問題にとどまらなくなっているのではないか。とりわけ、人口減少が急速に進み、将来に不安を抱える地方にとっては、まさにそうであり、われわれは強く意識すべき時に来ている。
 自身の健康に留意し、必要な知識を得て、必要なことを実践するのが「健康教養(ヘルスリテラシー)」であるならば、個人の健康増進が社会の将来と深く関わっていることを認識することもまた、「健康教養」であろう。
 よくよく考えると不思議なことなのだが、健康増進はこれまで社会や経済活動と直接関連付けて考えられてこなかったように思える。「健康志向の有無は、生活に対する価値観の違い」。ともすれば、このような見方で片付けられてきた面があるのではないか。
 健康志向が個人の価値観だけによるものだとすれば、いくら「健康増進」と訴えてもその声は広がらない。しかし、その状況を改善すべきといった考え方が徐々に浸透してきている。自治体が住民の健康増進リーダーを養成したり、金融機関が健康増進に取り組む企業の金利を優遇する融資制度を設けたりするのは、その表れだろう。
 考えようによっては、健康増進活動を促進する好機が到来しているのかもしれない。例えば、「自分の健康増進は、自らが住む地域社会の将来を明るいものにする」と考えれば、やりがいが生まれてくるのではないか。健康づくりは社会づくりの基礎であるとの認識を今こそ持ちたい。

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雪崩で8人死亡「冬山利用は常に注意心掛けを」

2017/3/29 水曜日

 

 栃木県那須町の那須温泉ファミリースキー場で27日朝に雪崩が発生し、同県内の男子高校生7人と男性教員1人が死亡するという大惨事が発生した。このほか、けが人は40人に上るという。生徒たちは当時、同県高校体育連盟による春山登山講習を受けていた。報道によると、雪崩は生徒たち55人が雪上を踏んで進むラッセルの訓練中、第2ゲレンデ付近で発生。100~200メートルにわたって斜面が崩れ、生徒たちはゲレンデコース外の林の中を登っている最中に巻き込まれたという。
 今回の事態は同連盟による安全管理の在り方が問われてくることになりそうだ。宇都宮地方気象台が26日に、同県北部で雪崩が発生する恐れがあるとして雪崩注意報を出していたほか、同スキー場は20日時点で既に今シーズンの営業を終了していたという。安全な春山登山を目的とした講習でありながら、実施の判断に問題はなかったのか、注意報をどう見ていたのか。講習の実施を判断した関係者はこうした点を明らかにしなければなるまい。自然災害とはいえ、8人もの命が失われた責任はいったい誰が取るのか、今後追及されることは明白だ。実際、栃木県警は業務上過失致死傷容疑を視野に、引率者らの捜査を進める方針としている。
 「春スキー」という言葉があるように、スキーヤーにとっては3月はまだまだ楽しみたい季節だ。しかし、同月下旬に入ると気温の上昇や雨に伴って、積もった雪が地面を滑り落ちる全層雪崩が起きることが多いという。しかし、今回の件に関しては、以前から残っていた雪の上に新たに降り積もった雪が滑り落ちた表層雪崩の可能性があることを防災科学技術研究所雪氷防災研究センター(新潟県長岡市)や気象庁が指摘している。
 本県でも、もちろん冬山レジャーに当たっては注意が必要だ。全域が豪雪地帯であり、さらに旧相馬村など15地域が積雪の度合いが特に高く、住民生活に著しい支障を生じる「特別豪雪地帯」に指定されている。このほか、雪崩危険箇所は1800カ所以上に及んでおり、実際に雪崩によって、命が失われたケースが複数ある。
 一方で、魅力的なコースを抱えるスキー場が複数存在し、国内スキーヤーはもちろん、訪日外国人客の人気を集めている。実際、スキーを目的とした初めての台湾便(スキーチャーター便)が1月中旬から約1カ月間運航されたことは記憶に新しい。
 自然災害の発生は確かに予測不能ではあっても、気象状況などからある程度、危険性を察知することは可能であろう。行政や関係機関による注意呼び掛けは行われているが、冬山を楽しむ、利用する側も今の時期に限った話ではないが、常に注意を心掛けたい。

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北海道新幹線1年「効果波及へ2年目が正念場」

2017/3/28 火曜日

 

 北海道新幹線が昨年3月26日の開業から1年を迎えた。新青森―新函館北斗間約149キロが最速1時間1分で結ばれ、開業から今年2月末までの乗客数は約220万人に上っている。
 同区間の1日当たり利用者数は開業前(在来線)に比べて約1・7倍に増加しており、開業によって青函圏域内の交流人口が着実に増えてきたと言っていいだろう。観光、経済の各分野で効果が見られている。
 ただ、本県内も北海道側も効果の波及は限定的という課題もある。開業1年目はもの珍しさもあって訪れる観光客らが多かったとみられるが、開業効果を引き続き継続させ、より広く波及させることが必要であり、関係者にとっては2年目以降がまさに正念場となろう。
 JR北海道によると、2016年3月26日~17年2月28日の同区間の利用者数は1日当たり約6500人で、前年同期実績比168%。乗車率は33%で、開業前の予想を上回った。月別では8月が約9600人(前年同月比160%)で最も多く、次いで9月の約8000人(同166%)、6月の約7900人(同185%)と、夏季の乗車率は40%台で推移した。
 北海道新幹線と同時に開業した奥津軽いまべつ駅の乗車人数は1日当たり平均約60人で、新たに駅ができたことにより今別町周辺のにぎわい創出に一定の効果があったとみられる。ただ、同駅の利用者は決して多いとは言えない。
 町関係者が言うように、宿泊施設が少なく観光客が町に滞在しないという課題の解決に取り組む必要がある他、同駅を拠点にした周遊観光促進へ奥津軽地域が連携して観光コースづくりに力を入れる必要がある。
 北海道側は玄関口の函館市を中心に観光客が増えるなど効果が見られ、有名な観光地の一つである「五稜郭タワー」は今年度の入場者数が10年ぶりに年間100万人に達する見込みだ。関東、東北地方からの旅行者が半数を占めるという。
 他方、本県が通過駅になった側面も否定できない。利便性が高まったことで、本来なら本県を訪れているであろう観光客が新幹線で北海道あるいは本県以南に少なからず流れており、魅力発信の努力を怠れば、こうした傾向が今後も続くことが懸念される。
 両地域とも、場所によって入込客数が増えたところもあれば、さほど影響を受けないところもあり波及は限定的でもある。観光客をいかに地域内で周遊させるかは今後も課題で、2次交通の整備や観光資源の魅力向上に努める必要がある。
 夏場の乗車率が好調に推移したのに対し、低迷する冬場の誘客対策も欠かせない。開業1年目で見えてきた課題の解決に取り組みながら、さらなる交流人口の拡大に結び付けたい。

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雨雀の功績に光「名誉市民通じ古里の誇り醸成」

2017/3/25 土曜日

 

 黒石市の名誉市民第1号である秋田雨雀。1962年の死去から55年の節目に、詩人や劇作家などとして活躍した雨雀の功績に再度光を当てたいと市民有志が動き始めた。市は財政難で萎縮した市民の意識改革に向け、県内で4番目に市制施行された誇りを取り戻そうと働き掛けており、市民レベルで、こうした活動が生まれたのは喜ばしい。
 市の資料によると、雨雀は1883年に現在の黒石市前町で誕生。黒石高等小学校、県第一尋常中学校を卒業後、早稲田大学の前身である東京専門学校に進み、在学中に詩集を出版。以降は次々と小説を執筆する一方で演劇活動などに力を入れ、舞台芸術学院長や日本児童文学協会長も務めた。さらには社会運動、エスペラント(国際共通語)普及運動も展開。一部を列挙しただけでも、多彩な才能と行動力がうかがえる。
 「こみせ通り」の津軽こみせ駅2階に、ゆかりの品を展示する「秋田雨雀記念館」がある。しかし看板がなく、訪れる人は数えるほど。全国的な知名度は決して低くはない雨雀なのに、肝心の地元がこうなのは残念だが、そのことが「このままでは忘れ去られてしまう」(伊藤英俊館長)という危機感を生み、管理する市民有志を動かした。
 まず今月11日に看板を掲示するとともに、運営規定を定めて事業計画などを審議する運営委員を設置。しっかりした管理態勢づくりの一歩を踏み出した。今後は収蔵している数々の資料を再点検して目録を作成するほか、企画展なども開くことにしている。さらに、将来的には芸術文化向上に貢献した市民、団体をたたえる秋田雨雀賞(仮称)の創設も検討する方針だ。
 ただ、企画展を開いたからといって、多くの市民が観覧するとは考えにくい。いかに関心を集めるPRをするかの議論が必要になるだろう。また、運営委員は団体役職員、学識経験者で組織することになっているが、原則無報酬であり、将来にわたって管理・運営態勢を維持していくため、熱意を持って活動する人材を育てなければならない。
 記念館は雨雀の功績を後世に伝えるため、各学校に記念館の見学を働き掛ける計画だが、雨雀という偉大な先人を通じて、古里を見直すきっかけになるよう分かりやすい展示方法にしなければならない。将来的な運営委員確保はもちろん、雨雀に続く文学者の輩出など、将来を見越した事業展開を期待する。
 名誉市民は他に大審院(現最高裁判所)刑事部長や全日本弓道連盟会長を務めた宇野要三郎、リンゴ栽培の神様と称された渋川傳次郎がいる。市民の地元愛醸成を進めるため宇野、渋川に対しても広く市民に認識させる取り組みが欲しい。記念館の試みを刺激に新たな動きが生まれることを望む。

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