社 説

 

アフリカ市場開拓「存在感高め信頼関係構築を」

2019/8/30 金曜日

 

 横浜市で開催中の第7回アフリカ開発会議(TICAD7)の官民ビジネス対話会合が29日に開かれ、安倍晋三首相は延べ30カ国で公的債務やリスク管理に関する研修を行うと表明した。途上国を借金漬けにして支配を狙う中国との違いを鮮明にした支援策となっており、これをきっかけに巨大市場・アフリカにおける日本の存在感を強めたい考えだ。
 アフリカには55カ国・地域によるアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)構想があり、計画通り来年7月に運用が始まれば、12億人以上を抱える巨大貿易圏が誕生する。当然、日本の産業界も注目するが、関税撤廃品目や原産地規則といった重要ルールの詳細は固まっておらず、構想が円滑に進むにはさらに時間が必要との指摘もある。
 日本の支援策は、名指しこそ避けたが中国による「債務のわな」への対抗策だ。公的債務やリスク管理に関する研修は今後3年間、重点国を毎年10カ国選出して行う。既にガーナやザンビアと調整がついており、債務管理に加え、マクロ経済運営のアドバイザーを送る。農業の競争力強化に向けては、日本の地方自治体で経験を積んだ専門家を派遣する方針。さらに人材育成や「質の高いインフラ」整備など日本の得意分野を生かした支援も進めるという。
 これらはアフリカを支配下に収めたい狙いが見える中国の手法と一線を画す。安倍首相は「相手国が借金漬けになっては(企業の)進出を妨げる」と批判した上で支援策を示し、首脳級らとの「マラソン会談」では、それぞれの実情に合わせて支援する意向を伝えた。各国・地域の目に“頼れる日本”と映ったなら、ひとまず成功と言えるだろう。
 日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、2018年の日本のアフリカ向け輸出額は08年比27・3%減で、輸出品目は自動車に依存している。5割近く伸ばしている中国や、26・2%増のドイツに大きく引き離されているのが現状だ。
 そうした中、少子高齢化や人口減少などで国内市場が縮小の一途にある日本を飛び出し、新たな市場をアフリカに求める新興企業も増え始めている。しかし、銀行口座開設などに半年を要したり、現状では利益が薄く長期的視点での事業展開を求められたりといった課題に直面する例が報告されている。アフリカ発展と日本経済への効果波及を実現するには、これら障壁の解決が不可欠となる。
 50年までに人口が倍増すると見込まれるアフリカは、日本以外の国も狙う魅力的市場。日本は今回の支援策を第1弾に、アフリカ全体が効果を実感できるような独自の支援を続ける必要があるだろう。支援を生かしてAfCFTAが機能する頃には、互いに信頼し合えるビジネスパートナーになっていると期待したい。

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立憲・国民会派「野党結集の足掛かりとなるか」

2019/8/29 木曜日

 

 立憲民主党と国民民主党が衆参両院での統一会派結成に向け、速やかに党内の了解を得ることで合意した。旧民進党分裂以後の遺恨や政策の違いなど“小異”を乗り越え、野党結集の足掛かりとなるのか、今後の政局を占う意味でも目が離せない。
 「独自路線」を貫いてきた立憲の枝野幸男代表が、国民との共闘にかじを切った理由の第一は、今夏の参院選で結党以来の勢いに陰りが見えたためだ。
 今夏の参院選で立憲は単独で政権批判票の受け皿になろうとした。しかし、れいわ新選組に支持層を奪われたこともあって伸びを欠き、比例の得票数は衆院選から300万票以上減らした。
 さらに憲法改正をめぐって自民党が国民の取り込みを画策していることへの懸念、傘下労組の「股裂き」に苦しむ連合の意向なども背景にあるとみられる。
 一方の国民は、遺恨をぐっとのみ込み手を握った格好だ。当初、参院で野党第2党だった立憲は、国民からの引き抜きによって野党第1党の足場を固めた。
 露骨な対応に国民の参院幹部は「あの人には来てもらいたくないと平気で話している」と嫌悪感を示した。参院選で立憲は、国民幹部が立った静岡選挙区に「刺客」候補を送り込み、強い反発を買った。
 さらに枝野氏が当初、立憲が重視するエネルギー政策や選択的夫婦別姓制度などに協力することを条件に同党衆院会派への加入を提案したことも、「上から目線」と不興を買った。
 それでも統一会派を目指す意義について、枝野氏は「数の力を背景にした自民党の姿勢に対し、より強力な構えで秋からの国会論戦に挑んでいける」と強調。玉木氏も「政権交代につなげていく第一歩だ」と同調した。
 参院選の1人区では一定の成果を挙げた野党共闘。与野党による事実上の一騎打ちとなった先日の埼玉県知事選でも勝利し、「野党が協力した成果」(福山哲郎立憲幹事長)と意気は上がる。
 埼玉県知事選は当初、与党候補が優勢とみられていたが、告示直前に野党候補が一本化されたことや、投票率が前回より上昇したことが勝因とみられる。
 統一会派について自民党の二階俊博幹事長は「関心を持っているわけでもないが、どういう結果が出るか見守りたい」と冷ややかだが、政権内には「次期衆院選で『与党対野党統一候補』の構図になった場合の先例にならなければいいが」と懸念の声も漏れる。
 統一会派には、野田佳彦前首相が代表を務める衆院会派「社会保障を立て直す国民会議」も加わる見通しだ。
 果たして野党勢力結集の第一歩となるのか、路線対立の末に分裂した旧民進党と同じ轍(てつ)を踏むことになるのか、今後の国会論戦で試されることになる。

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今年産リンゴ「適期収穫で信頼に応えたい」

2019/8/28 水曜日

 

 県産リンゴの本格的な収穫期が近づいてきた。関係団体によると、今年は春先からの高温で黒星病が少ない上、干ばつの影響で果実の糖度が高くなっているとみられる。9月以降、「つがる」などの早生(わせ)種をはじめ、中生種、晩生種が順番に収穫される。今後も栽培管理を徹底し、良品生産に努めたい。
 市場では今年産の取引が既に始まっており、今月3日には弘前市、板柳町、五所川原市の市場で極早生種の「夏緑」「祝」「花祝」などが上場された。前年産の上場数が黒星病の影響などで落ち込み、在庫数も少なかったことなどから、一部市場で花祝に高値が付くなど、活気あふれる取引が行われた。
 県が8日に発表した今年産県産リンゴの予想収穫量(1日現在)は、平年並みの43万5500トンで、前年産の収穫量実績44万5500トンを下回った。前年夏の高温や日照不足で花芽が少なく、開花量も平年より少なかったことが要因。ただ、今年は好天が続き、日照時間が長かったため、果実肥大は前年を上回って推移しているという。
 品種別の予想収穫量をみると、「ふじ」が21万4700トンで前年産実績比4%減、「つがる」は4万400トンで同3%減、早生ふじやトキなど「その他」が9万6500トンで同2%減。一方、「王林」は4万3600トンで同5%増、「ジョナゴールド」は4万300トンで同3%増となった。
 予想収穫量などを踏まえ、県りんご対策協議会は26日、今年産の販売目標を公表。輸出を含む県外出荷の目標数量を前年産実績とほぼ同じ水準の28万3000トンと設定した。県内での販売はもちろん重要だが、圧倒的に大きな割合を占めるのは県外だ。東京、大阪など大消費地でどれだけ販売できるかが、目標達成のカギを握っている。
 同日はつがる弘前農協、県りんご協会、弘前市がそれぞれ全国から青果会社の関係者らを招き、今年産リンゴの品質などをアピールした。県産リンゴが全国各地で取引されるのは、市場や青果会社との信頼関係があるからこそ。長年かけて築いた絆を確認し合い、情報を交換する場は大切にしたい。
 昨年産の県産リンゴをめぐっては、未熟な「トキ」が台湾で流通し、現地で販売不振を招く事態となった。県産リンゴにとって輸出は販売促進策の大きな柱となっており、国内の需給を調整する役割も担っている。海外市場も国内と同様、信頼関係が第一だ。同じ間違いはあってはならない。
 県産リンゴを毎年楽しみに待ってくれる流通関係者や消費者は国内外に大勢いる。彼らの信頼に応えるため、これからの栽培管理が重要だ。必要な作業を徹底して適期収穫に努め、日本一と言われる産地の実力を改めて示したい。

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昭和天皇拝謁記「戦後日本史の解明に期待」

2019/8/27 火曜日

 

 戦後約5年半にわたり初代宮内庁長官を務めた田島道治氏が、昭和天皇とのやりとりを記録した手記が見つかった。「拝謁記」と記された手記は、遺族から提供を受けたNHKが公表。大日本帝国憲法(明治憲法)における主権者、国家元首としての天皇から、現在の日本国憲法の下での象徴としての天皇へと、その立場、役割が大きく変わった昭和天皇が、新たな憲法下での天皇制の在り方について、試行錯誤を繰り返しながら模索する様子が克明に記されている。
 東京裁判の判決から1年余りが経過した1949年12月には、昭和天皇が「講和が締結された時にまた退位等の論が出ていろいろの情勢が許せば、退位とか譲位とかいうことも考へらるる」と語ったと記されている。世論の一部に天皇退位論がくすぶり続ける中、昭和天皇が平和条約締結を一つの区切りとして退位の可能性を考えていたことが分かる。退位についての理由や時代背景がまったく異なるものの、昭和天皇の時代にも、天皇自らが退位を具体的に考え、その可能性があったことが分かる貴重な記録だ。
 サンフランシスコ平和条約発効後の日本の独立回復を祝う式典での「お言葉」では、昭和天皇が戦争への深い悔恨と反省の気持ちを表明したいと田島氏に伝えたものの、当時の吉田茂首相の反対で削除されたとのやりとりが記されているのが、興味深い。昭和天皇は「私はどうしても反省という字を入れねばと思う」と、強く希望したとされており、太平洋戦争に対する「責任」について昭和天皇が明確に、その意思を示そうとしていたことが分かる。
 52年2月11日には、日本の再軍備について、その部分だけは、憲法改正した上で行うことがいいという主旨の発言が行われたこと、同年5月8日の拝謁でも、旧軍の軍閥体質に強い嫌悪感を示しながらも、防衛的な軍備については必要との認識を示し、こうした考えを当時の吉田茂首相に伝えようとしたが、田島氏からいさめられたとしている。いずれも象徴天皇としては、はばかれる政治的発言であり、主権者から象徴としての存在へと変容する天皇制にあって、どこまでが職権であるのか、そのボーダーラインがどこにあるのか、試行錯誤を行っている様子が、ありのままに記されており、興味深い。
 このように拝謁記には、これまで公にされなかった昭和天皇の内なる心情と、象徴天皇制黎明期の葛藤が生々しくつづられている。戦後史を解き明かす中で、第1級の資料と呼べるものだろう。
 昭和から平成、そして令和へと、戦後の日本は国の在り方を大きく変えた。日本の現代史をより深く知る上で、今回の新資料が、大きな役割を果たすであろうことは想像に難くない。さらなる研究の成果に期待したい。

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道路インフラ「着実な修繕で安全確保を」

2019/8/24 土曜日

 

 2014年度に始まった橋梁(きょうりょう)やトンネルなどの点検結果が23日公表された点検は5年で一巡するよう義務付けられており、本県では18年度までに対象となった7000カ所以上の点検を完了。橋梁では12%(836カ所)、トンネルでは39%(21カ所)、横断歩道橋や門型標識などの道路付属物では80カ所(24%)が早期の対応が必要だと診断された。
 緊急に措置を講じるべきと診断された橋は県内に4カ所あるが、いずれも架け替えを終了したり、最終的な対応は検討中だが、通行止めの措置を取ったりと、通行する住民の安全は確保されている。
 緊急性の高い危険な箇所はないようで安心だが、気になるのは早期に措置を講ずべきと診断された施設数の多さだ。14年から4年間で対応が必要と診断され、昨年度までに設計を含めて修繕に着手した割合はトンネルや道路付属物は7割前後だが、最も数が多い橋梁は52%と低い。特に市町村が管理する橋梁は早期に修繕が必要とされた418カ所に対して、着手済みは161カ所、修繕着手率は39%と思うように進んでいない。
 一斉点検の開始時には5年で点検を一巡、早期に措置が必要とされた施設は次回の点検時までに対応することとされているが、全国で修繕が完了した割合は国土交通省管理で18%、地方公共団体管理で12%。未着手の施設が国土交通省管理で47%(1616橋)、地方公共団体では80%(5万277橋)に上り、想定していたペースよりも遅れている。
 国の点検結果からは、「健全で機能に支障がない」と診断された橋のうち約2割がその後の約5年間で「機能に支障は生じていないが、予防保全の観点から措置を講ずることが望ましい」の区分となり、約1割は「機能に支障が生じる可能性があり、早期に措置すべき」の区分と判定されるなど、全体の3割の損傷が進むという傾向が明らかになっている。
 財源や職員数の問題などもあるだろうが、交通量や地域事情などを考慮し、必要性の高い場所から着実に対応を講じてもらいたい。全国では、定期点検で早期に措置すべきと判定された橋が、約7カ月後に破断が見つかり通行止めとなった事例もあり、日々の点検も欠かせない。
 全国の一斉点検は2012年、山梨県の笹子トンネルで天井板などが崩落、車が下敷きとなって9人が死亡するという重大事故が発生、道路施設の維持管理に関心が高まったことを背景に始まった。
 トンネルや橋梁などの損傷は、重大事故につながる可能性が大きい。道路管理者で構成する県道路メンテナンス会議は毎年、道路メンテナンスに関する情報を共有するほか、研修の実施やアドバイザーチームの設置などの技術支援を行っているが、今後も各道路管理者の経験や知見を結集し、安全確保のための効率的な取り組みを模索し続けてもらいたい。

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