社 説

 

犯罪情勢統計「犯罪抑止に向け不断の努力を」

2020/2/7 金曜日

 警察庁が6日に公表した、昨年1年間の犯罪情勢統計(暫定値)によると、全国の警察が把握(認知)した刑法犯は前年比8・4%減の74万8623件となり、5年連続で戦後最少を更新したことが分かった。一方、虐待の疑いで児童相談所(児相)に通告した子どもの数や、コンピューターネットワーク上で行われる、いわゆる「サイバー犯罪」の摘発件数は過去最高となった。
 同庁のまとめによると、刑法犯全体の件数は、自治体やボランティアによる防犯活動や防犯カメラの普及などを背景に窃盗事件が減ったことなどから、17年連続で減少している。特殊詐欺の被害件数は前年比5・6%減の1万6836件だったが、電話で資産状況を調べた上で家に押し入る「アポ電強盗」の発生など深刻な状況が見られた。
 一方、児相に通告した18歳未満の子どもは前年比21・9%増の9万7842人となった。このうち、言葉による脅しや無視、目の前で家族に暴力を振るうといった「心理的虐待」が7万441人で約7割を占めた。このほか「身体的虐待」が1万8219人、「育児放棄」が8920人という。前年からの増加分21・9%は実数にして1万7500件余の増であり、2009年以降年々増加傾向にある。サイバー犯罪の摘発件数は前年比5・6%増の9542件。インターネット交流サイト(SNS)を通じて犯罪の被害に遭った子どもは2095人にも及んでいる。
 刑法犯認知件数の減少は歓迎すべきこととはいえ、70万件以上という数字を考えれば、今後も抑止に向けた不断の努力がまだまだ必要だ。暴力や窃盗、強盗といった他人の身体・生命を脅かしたり、財産を奪ったりする行為は1件であっても、被害者当人としてみれば心身に相当なダメージを受ける大きな問題であり、前述のような防犯活動や防犯カメラ普及など犯罪が起きにくい環境づくりを官民一体となって、さらに進める必要があると考える。
 さらに、閉鎖的な空間で行われることが多い子どもへの虐待とサイバー犯罪は認知、摘発するまでに時間を要するケースも多く、その増加は懸念すべきことと考えるべきだろう。警察庁が「予断を許さない状況」と分析するのもうなずける。こうした犯罪の増加には、現在の社会情勢や家庭環境の在り方、情報伝達手段の高度化などさまざまな背景が考えられる。
 報道を見る限り、わが子や交際相手の子どもへの暴力、食事を与えずに餓死させる、アポ電強盗の末に相手を死亡させるといった悲惨なニュースも散見される。刑法犯全体の認知件数が減少する中で、過去にはほぼあり得なかったこうした犯罪に対しても、効果的な抑止策を望みたい。

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やさしい日本語「幅広い分野で有効活用を」

2020/2/6 木曜日

 「余震」は「後から来る地震」、「津波」は「とても高い波」―。これらは災害時の多言語対応として大きな役割が期待される「やさしい日本語」の一例だ。
 訪日外国人客が増加傾向にある中で、最近では全国的に活用の場が広がっているが、全国に先駆けて研究に着手したのは弘前大学社会言語学研究室(佐藤和之教授)だ。
 きっかけは1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災。被災地では当時、日本人以外に外国人も多く、被災者が日本語や英語を十分に理解できずに避難や救援の情報を得られないというケースが目立った。突然の災害時には、瞬時の判断が生死を分ける。その鍵を握るのは、災害や避難の情報を正しく的確に理解できるかどうかである。震災の経験に基づき、外国人を支援するための語彙(ごい)や表現方法を研究し、その後発生した東日本大震災などの経験も踏まえながら「やさしい日本語」の充実を図ってきた。
 当初は認知度が低かったものの、最近では全国の自治体で活用が進んでいる。東京五輪開幕に向け消防庁が策定した「外国人来訪者や障害者等が利用する施設における災害情報の伝達及び避難誘導に関するガイドライン」にも、避難誘導などの表現として「やさしい日本語」の活用が盛り込まれるまでに至った成果は大きい。
 阪神・淡路大震災から25年を迎えた今年、研究の第一人者である佐藤教授が3月末で退官となることから、「やさしい日本語」の活用事例を発信してきた研究室のホームページが1月17日で閉鎖された。弘前大から全国に発信し続けてきただけに、閉鎖は非常に残念なことだが、佐藤教授は「今後は地域に委ねたい」と話している。
 相次ぐ災害の教訓を生かし、長い時間をかけて蓄積してきた研究成果を社会の中でどう有効に活用していくかは、われわれに託された課題だ。
 研究室のホームページは各地で災害が発生するたびにアクセスが殺到していたという。それは需要が増していることの裏付けでもあろう。外国人のみならず、子どもや高齢者ら災害弱者にとっても有効な手段であるだけに、活用は「言葉を通じたノーマライゼーション」(佐藤教授)を実現するものだ。
 本県を含め全国的に外国人労働者数も増加傾向にある中で、災害時のみならず、さまざまな緊急事態発生時にその役割は一層増すことだろう。まずは弘前大を抱える弘前市や本県において、日常的に活用されるよう、より積極的に導入していきたいものだ。
 度重なる災害を教訓に進化し続けてきた弘前発の「やさしい日本語」が今後、幅広い分野で有効活用され、地域の防災・減災と安心安全なまちづくりに役立つことを期待したい。

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遺跡ボランティア「縄文の価値伝える重要な存在」

2020/2/5 水曜日

 

 世界文化遺産登録を目指す「北海道・北東北の縄文遺跡群」について、政府がパリの国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦書を提出した。ユネスコの諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)が今年秋に現地を調査し、登録の可否を勧告する。登録実現に向けて今年はまさに正念場だ。
 登録の可否を判断する上で遺構の保存状態などはもちろん重要な要素となるが、同時に重視されるのが「地域社会との関わり」。この点については、登録を目指した取り組みで中心的役割を果たしている岡田康博・県世界文化遺産登録推進室長も強調する。
 岡田氏によると、縄文遺跡群と地域社会との関わりは密接な状態にあるといっていいようだ。遺跡群を構成する本県など4道県の全17遺跡で、遺跡の保存・活用を支援する民間団体が発足しているほか、各遺跡で清掃活動といったボランティアが遺産登録を目指す前から行われている。
 地域社会との関わりがなぜ審査で重視されるのだろうか。例えば、今を生きる人たちが遺跡を大切にしているということが、遺跡が時を経ても価値や魅力を持ち続けていることを示しているから―と考えてみるのはどうか。価値や魅力があるから、地域の人は遺跡を誇らしく思い、その存在を地域振興などに生かそうとも思うのではないか。
 幸い、縄文遺跡群の保存・活用を支援する人たちは数多くいる。各遺跡を広く知ってもらおうと活動する遺跡ボランティアはその代表だ。彼らのこれまでの活動をしっかりイコモスに説明することが、登録の可否を判断してもらう上で一つのカギになるはずだ。
 縄文遺跡群の中心的な遺跡である三内丸山遺跡(青森市)でボランティアガイドなどを行う三内丸山応援隊は今年、発足から25年を迎える。これまでに組織は一般社団法人化され、100人弱がボランティアとして活動している。
 ガイドとして活動する女性の言葉が印象深い。女性いわく「(三内丸山遺跡は)自分の体の一部というくらい身近な存在」。遺跡への理解が深くなければ、こう言い切ることはできないはずだ。縄文遺跡群は採集、漁労、狩猟による定住を成し遂げたことが特色で、農耕以前における生活の在り方や精神文化を顕著に示す物証とされる。応援隊のメンバーはこれらの価値をよく理解し、広く伝えようと日々活動しているのだろう。
 他遺跡の保存・活用を支援する団体も地元住民に遺跡の価値を理解してもらう活動の充実を推し進める。遺跡自体はもちろん大切だが、遺跡を介して伝えられた文化の価値を地域社会がさらに後世に伝えることも大切だ。その意味で遺跡ボランティアは極めて重要な存在となっている。さらなる活躍を期待したい。

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続く一極集中「政権の本気度が問われている」

2020/2/4 火曜日

 総務省が発表した住民基本台帳に基づく2019年の人口移動報告(外国人を含む)によると、東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)は転入者が転出者を上回る「転入超過」が3年連続で拡大した。地方創生は安倍晋三首相が掲げる看板政策の一つ。政権は改めて地方の衰退が国の成り立ちに関わる問題と捉え、一極集中是正に真剣に取り組んでもらいたい。
 移動報告を都道府県別に見ると、転入超過は8都府県で、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、福岡、滋賀、沖縄の順で多かった。転出超過は39道府県で、広島が最も多く8018人。本県は6044人で、9番目に多かった。
 政府は地方創生の基本的方向をまとめた第1期総合戦略(15~19年度)で「20年に東京圏から地方への転出・転入を均衡する」との目標を掲げた。各自治体も戦略を策定し、移住・定住や雇用の創出といった取り組みを本格化させてきたが、歯止めすらかけられなかった。
 最大の要因は進学・就職だろう。地方の大学に進学しても、就職口が多く好条件の首都圏に流出する構図は変わっていない。
 政府は昨年末決定した20年度から5年間の新たな総合戦略で、東京圏への転入超過を24年度に解消する目標を掲げた。
 方策として、移動の困難さや人手不足といった地域の課題に対して先端技術を活用して解決し、地域の魅力を向上することを盛り込んだ。
 具体的には人工知能(AI)などを使って課題を解決・改善した自治体数を600団体に増加させる目標を提示。次世代通信規格「5G」基地局をはじめとしたインフラ整備を地方でも促進するほか、自治体が農業や自動運転へのAI活用を進められるよう、政府が専門人材を派遣する。
 また、東京圏外の地方などへ移住・就業した人に最大100万円を支給する「移住支援金」について、対象者の要件を緩和する。現在は、直近の連続5年以上にわたり東京23区に在住か通勤している人に限っているが、この要件を「直近10年間で通算5年以上」に改める。
 このほか特定の地域と継続的につながりを持つ「関係人口」の拡大を図り、地域活性化につなげる考えだ。
 副業や兼業、イベント参加といった多様な形で出身地や過去の勤務地などと継続的に関わることを想定。都市部で暮らしながら地域課題の解決を手助けしたり、地方の魅力を体感したりし、将来的な移住や定住につなげる狙いがある。
 首都機能移転といった抜本策を講じないなら、関係人口を増やすような、息の長い取り組みしかあるまい。
 政府には新たな総合戦略が掛け声倒れにならないよう、進捗(しんちょく)度合いを点検し、効果の薄い政策は見直すといった「本気度」を見せてもらいたい。

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住環境の改善「暖かい部屋で健康に」

2020/2/1 土曜日

 

 老朽化した住まいであれば地震への不安、冬期間の寒さは当たり前、我慢するしかないと思っていないだろうか。住宅を新築しようというタイミングなら別だが、現状の住宅の耐震補強や大規模な断熱改修はそれほど話題に上らない。建物全体の耐震ともなれば数百万円に上るという費用の問題が大きいのではないか。
 県が進める「いのち守るリフォーム普及推進事業」は、費用を抑えた簡易的なリフォームや部分的な耐震補強を普及させることで、少なくとも県民の命だけは守ろうという取り組みだ。地震による家屋の倒壊を防止するためには、耐震化100%、全体の建て替えが最良の方法だが、まずは簡易的な対応で命を守り、災害時の救助活動の迅速化に寄与する。住宅の断熱リフォームを推進することでヒートショックによる脳卒中を予防し、健康寿命の延伸につなげる狙いもある。人口減少社会では空き家問題が課題となっているため、既存住宅の有効活用や、新たなリフォーム市場の創出による地域経済の活性化という期待もあるだろう。
 県が主催し、1月に青森市で開いた同事業の業界向け講習会では、慶應義塾大学の伊香賀俊治教授が室温と健康の関係について詳しく解説し、興味深かった。
 国の調査事業などでは、室温が18度以上の暖かな住まいでは寒冷な住まいに比べて高血圧や循環器疾患の死亡確率が低いという結果が出ているという。高齢者や女性は特に室温の低下で血圧が上昇しやすいというから注意が必要だ。またリビングを暖めるだけでは不十分で、部屋間の温度差が大きくないことや床付近の足元まで暖かいことが、血圧の安定に良いという所見も得られているようだ。
 暖かい住まいでは身体活動が活発になるというデータもあり、こうした面からも健康寿命の延伸に効果的とされる。
 世界保健機関(WHO)は冬季室温18度以上を強く勧告し、さらなる研究の必要性にも言及しているという。今後、研究が進み、より分かりやすく詳細な情報が普及することを期待している。
 県内で耐震性のない木造住宅は約13万戸、住宅の耐震化率は全国平均の82%を下回る73%にとどまっている。急激な温度差によるヒートショックや段差のつまずきなど家庭内事故死は全国で交通事故死の約3倍に上るという統計もあり、住環境に着目した取り組みは意義がある。
 消費者への積極的な情報発信でリフォームの効果をアピールしつつ、賃貸物件や幼児、高齢者が集う福祉施設などにもこうした取り組みを広げて、県民の安心安全や健康増進を後押ししてほしい。
 県は今年度、事業の普及促進に向け、業界団体との意見交換などを行ったが、来年度も事業を継続し、事業者向けだけでなく、消費者向けのセミナー開催やリーフレットの作成なども予定しているようだ。今後の取り組みに注目したい。

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