社 説

 

聖火リレー「五輪へ、熱い気持ちをつなごう」

2020/2/15 土曜日

 

 2020年最大の催しは何といっても東京五輪・パラリンピックだろう。夏の五輪の国内開催は1964年以来56年ぶり。2月までに各都道府県で行われる聖火リレーの詳細が発表になり、春からの本番に向けた期待が高まってきている。
 聖火リレーとその関連行事は市町村で行われることもあり、五輪を身近に感じられるイベントの一つ。本県での聖火リレーは6月11、12の2日間。14市町村を通過するが、県内のスタート地点になるのが弘前市の弘前城本丸だ。聖火ランナーを務める同市出身で、北京五輪では女子ソフトボール日本代表監督を務めた齋藤春香さんも市民にはおなじみ。本県でのスタートを、市民総出で大いに盛り上げたい。
 ほかにも平川市や黒石市、つがる市、五所川原市など津軽地方では8市町村で聖火リレーが行われ、西目屋村では五輪に3度出場した矢澤一輝さんがカヌーを使って岩木川で聖火を運ぶなど、見どころ満載。各市町村では聖火リレーの開始や到着時に式典を開催、リレーが行われる2日間の最終到着地となる青森市と八戸市では大会組織委による2000~3000人規模の大規模な式典が行われる予定で、こうした関連行事に参加するだけでも、五輪に向けて盛り上がっていく高揚感を感じることができるだろう。
 2月に詳細が発表されたパラリンピックの聖火リレーも興味深い。こちらは各地で火をおこす採火式から始まり、その炎がパラリンピックを応援しようという熱意とともに47都道府県で一つに集められる。最終的に全国から送り出された火が聖火となり、東京都でリレーされるという。採火した炎が各地の学校や障害者福祉施設などを訪れる「聖火ビジット」という催しも各地で行われる予定だ。
 本県でのパラリンピック聖火関連行事は8月16、17の2日間。県内で採火式が行われるのは弘前市など7市町村で、大森勝山遺跡や八戸市の是川石器時代遺跡など世界遺産登録を目指す縄文遺跡も選ばれ、縄文時代の火おこしで採火する場所も。県内で採火された火が集められるのも青森市の三内丸山遺跡で、六本柱付近で行われる集火は、縄文文化を県内外に広く発信できる機会になりそうだ。
 東北地方に視野を広げれば、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の3県では「復興の火」の催しがある。ギリシャで採火した聖火を聖火リレーに先立って展示し、復興に尽力する人々に見てもらおうという企画。展示場所はいずれも震災で甚大な被害を受けており、追悼と復興への思いを胸に刻む機会となるだろう。
 聖火リレーのグランドスタートは3月26日で、あと1カ月と少し。関連行事の内容に工夫を凝らし、国内各地の魅力とともに五輪を盛り上げようという熱意を広く世界に向けて発信したい。

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暖冬の雪「事故防止に細心の注意を」

2020/2/14 金曜日

 

 あまりにも極端である。北国・津軽の雪のことだ。本来なら寒さのピークとなるはずが、今月2日には弘前市で積雪ゼロを観測。暖冬少雪の長期予報通りと思っていたら1週間後は72時間降雪量が全国一となる80センチを記録。そして12、13日の日中は春の陽気―。これも地球温暖化がもたらす異常気象なのだろうか。
 今冬の少雪は、本来豪雪地帯である日本海側の各地で見られる。他県では1月に入っても営業できずに事業継続を断念したスキー場がある。先日、長野県野沢温泉村の野沢温泉スキー場で開かれた全国中学校スキー大会も、雪不足で距離リレーが中止された。
 弘前市では2日午後1時に積雪ゼロを観測。2月としては2007年2月28日以来、13年ぶりという。このまま春へと向かうかとも思えたが、8日から冬型の気圧配置が強まり、9日には大雪警報発令。積雪は80センチとなり、JR奥羽線、五能線、弘南鉄道弘南線、大鰐線で上下計36本が運休・区間運休となった。
 ようやく訪れた雪景色。弘前城雪燈籠まつり(8~11日)は、ちょうどこの降雪期間と重なり、訪れた25万人(まつり本部発表)の市民や観光客は、津軽の冬を満喫できたことだろう。雪の有無は市民生活に影響するが、祭りにとっては恵みとなったようだ。
 しかし、祭り閉幕を待ったかのように12日の県内は、最高気温が外ケ浜町蟹田の9・5度を最高に、鯵ケ沢町9・1度、弘前市8・9度―と3月中旬から4月上旬並みまで上昇。13日も弘前市で6・5度まで上がり、空から降ったのは雪ではなく雨。当然、雪解けも進んだ。
 気象庁の天気予報を見ると、津軽では16日から再び降雪がありそうだ。春の近づきを感じるものに「三寒四温」があるが、2月に入ってからの“厳冬”と“初春”の繰り返しは、この言葉の域を超えている。13日発表の東北地方週間予報(14~20日)によると、期間の初めの気温は平年よりかなり高く、以降は平年並みか高めとされている。直前にならないと精度は上がらないため、どの程度の雪になるかは分からないが、備えはしておきたい。
 大雪だと公共交通機関の乱れを考えた行動、気温が高まれば雪解けによる被害に気を付ける必要がある。特に雪崩や屋根雪の落下などは、命に関わる深刻な事態を招く。弘前市などは市内5消防署で貸し出している命綱などの利用や、2人以上での作業に加え、融雪による中小河川や用水路の氾濫にも注意するよう呼び掛けている。
 豪雪地帯の人ほど、少しでも春らしさを感じると気が緩みがちになる。しかし、まだ2月なのだ。本来なら厳冬期であることを忘れず、気を引き締めて例年とは違う、暖冬だからこその留意点を確認した上で慎重に対応したい。

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海自中東派遣「あいまいな派遣目的に懸念」

2020/2/13 木曜日

 中東海域での日本関係船舶の安全確保を目的とした海上自衛隊の護衛艦が、同海域に向け出港した。新規任務での護衛艦の海外派遣は2009年以来、11年ぶりとなる。
 今回の派遣は、イランの核開発計画をめぐって米国、イランの間に緊張、対立関係が生じる中、米国の強い求めに応じて政府が派遣を決めたものだ。ただ、日本と友好関係にあるイランを刺激しないよう、米国主導の有志連合への参加は見送る形で、日本独自の活動として派遣を決めている。
 そのため、防衛省設置法の「調査・研究」規定に基づくものであり、内容はあくまでも「情報収集」という、ある種の“あいまいさ”を内包したものだ。米国とイランの双方に配慮した結果で、新法制定を伴わないという点でも異例の海外派遣となる。
 今回は有志連合への参加を見送ったものの、バーレーンの米中央海軍司令部には連絡要員を派遣し、活動海域の治安情報を共有するなど、米軍と緊密に連携するとしている。もともと米国の求めに応じた派遣であり、もう一方の当事国であるイランが今回の日本の行動に対し、表面的には理解を示したものの、本心は穏やかならざるものが、あるであろうことは想像に難くない。
 活動期間は1年間で、延長には改めて閣議決定が必要となるが、日本も広い意味で、“イラン包囲網”の中にいる―とアピールしたい米国などは長期の活動を望むだろう。活動終了の時期について、河野太郎防衛相は「日本関係船舶の航行の安全に特段の懸念を抱く必要がない状況」と述べるのみで、具体的な見通しを示していない。活動の長期化を懸念する声も相当数ある。
 そもそも日本関係船舶の安全確保のための情報収集という任務の内容自体、不明確な点が多々ある。例えば、海自が得た不審船や海賊などの情報が連絡要員を通じて米軍に伝わり、それを元に米軍が攻撃した場合、海自も報復の対象となる危険性が包含されているのではないか。また、日本関係船舶が攻撃を受けるなど不測の事態が発生した場合は、護衛艦が自衛隊法の「海上警備行動」で保護する方針だが、武器使用などの強制力を伴う措置を判断するに際し、現場の混乱を招く懸念もあるだろう。
 中東情勢は米国によるイラン側要人の暗殺と、同国の報復攻撃で緊張が高まったが、現在は幾分、落ち着きを取り戻した感がある。今回の派遣は国会での議論も不十分との批判もある。十分な議論を経ない今回の派遣の判断は拙速ではなかったか。自衛隊の海外派遣という、慎重に慎重を重ねて判断すべきものが、既成事実の積み重ねにより、なし崩しになる恐れがある。海外派遣の在り方について、国民的な議論が必要だ。

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津軽のわらべ歌「記録を残す活動の継続を」

2020/2/12 水曜日

 

 弘前観光コンベンション協会が新年度用に「津軽のわらべうたカレンダー」を制作した。津軽の人々の記憶から薄れつつあるわらべ歌の歌詞を、改めて文字で記すと同時に、掲載したQRコードを読み取ることで実際の歌の一部を広く試聴できる仕組みとし、音声でも残したのは意義深いのではないだろうか。
 識字率が低かった時代、これらの歌は文字ではなく人から人へ、語りによって伝えられた。このため明確には意味の分からない単語が存在したり、地域によって歌詞が変容していったりしたことがあった。時代とともに存在があやふやになるわらべ歌は、途絶えてしまうとそれきりになってしまう可能性が高い。
 わらべ歌は単なる言葉遊びのようでありながら、昔の風習や生活の知恵が織り込まれていることがある。カレンダーの掲載歌「正月正月てえーもんだ/月より丸い餅食って/雪より白い飯食って/木のコッパ(皮)だけんだ魚食って/正月正月てえーもんだ」は、庶民が正月以外に白米を食べられなかった時代があったことを伝えている。
 また別の掲載歌「つぶやつぶや豆つぶや/しょうゆで煮付けてあがりゃんせ」は、田を起こす時期、田の周辺で見られるタニシを子どもたちが集め、食していることを面白おかしく歌っている。
 昔の女性たちの様子を歌ったものも興味深い。「(中略)よめごのはらさ/えぼどこでだきゃ/かいともいわず/いでともいわず/ただなくばかり」は、腹部に腫れ物ができても嫁ぎ先に遠慮して何も言えない「嫁」を歌っており、子どもたちは薬売りがくれる紙風船を飛ばしながら、この歌を歌って遊んだという。
 わらべ歌は忙しい父母に代わって家の留守を守る祖母が、孫に教えることが多かったとされる。それゆえ、わらべ歌は子どもたちの遊び歌であると同時に、津軽の女性たちの心情を伝える生活の歌でもあったかもしれない。わらべ歌を生活史の一部と捉えると、記録を残す重要性が浮かび上がってくる。
 カレンダー完成後、掲載歌を懐かしんで手に取る年配層がいた一方、ほとんどの掲載歌を知らない世代も少なくない。実際の歌を誰でも気軽に聴くことを可能とした今回の仕組みは、インターネット交流サイト(SNS)が一般的になった今だからこそできた、ユニークな記録の残し方ではないだろうか。試聴用のわらべ歌を歌ったのは、津軽地域の50~80代の会員による「津軽かたりべの会」だが、歌える世代の減少も懸念される。
 津軽のわらべ歌の一部は文字記録で残されて、音階も採譜されているが、すべては網羅されていない。わらべ歌を音で残し、気軽に聴けるものにした今回の取り組みを、さらに拡大することはできないだろうか。関係者の今後の取り組みに期待したい。

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トランプ氏無罪評決「疑惑解明に程遠い幕引き」

2020/2/8 土曜日

 トランプ米大統領のウクライナ疑惑をめぐる弾劾裁判は、「権力乱用」「議会妨害」の2件とも、与党の共和党が多数を占める上院で無罪評決が下され、トランプ氏は罷免を免れた。
 「権力乱用」は、トランプ氏が政敵であるバイデン前副大統領に打撃を与える個人的な政治的利益のため、大統領の地位を利用してウクライナ政府に圧力をかけたとする疑惑。「議会妨害」は、疑惑に関する下院の調査に協力しないよう、トランプ氏が当局者や元当局者に指示した疑いだ。
 弾劾の訴追手続きは、下院が可否を決し、訴追された場合は上院が弾劾裁判を開く。政党や政治家が関わる裁判である以上、ある程度、政治的思惑が絡みながら推移するのは仕方ない。とりわけ今回は今年11月の大統領選を控え、共和・民主両党が互いに非難を繰り広げた。
 しかし、疑惑は解明されることなく幕引きが図られた感は否めない。ボルトン前大統領補佐官が出版予定の著書で、ウクライナ政府に政治目的で圧力をかけたことを暴露すると報じられたが、同氏の招致と証人尋問は共和党の反対で認められなかった。
 トランプ氏側や共和党は疑惑と弾劾について「でっち上げ」「魔女狩り」と繰り返し、裁判では「大統領は何も間違ったことをしていない」と無罪を主張した。適切なプロセスと審議を経なければ、でっち上げかどうかを判断できるだろうか。議会の在り方として、こうした姿勢でいいのか、はなはだ疑問だ。
 ホワイトハウスは、評決を受けて「大統領の嫌疑は晴れ、潔白が証明された」と声明を出したが、無理がある。トランプ政権の疑惑に関する主張「選挙で国民に審判を委ねるべき」は無罪評決後のプロセスの話であって、自らの職責を放棄したに等しい。それは上院も同じそしりを免れまい。
 民主党も、トランプ氏弾劾に向けた支持を期待ほど広げられなかったようだ。無罪評決が確実視されていたため、当初から盛り上がりに欠けていたのかもしれない。上院共和党で造反したのは、トランプ氏と対立関係にある1人だけで、罷免に必要な票数には達しなかった。一般市民は政争臭が強過ぎて鼻白んでしまったのだろうか。
 今回の評決が、米政界の分断の深刻さを改めて象徴したとの指摘は多い。意に沿わなければ盛んに攻撃し、対立と差別をあおるトランプ氏の政治手法をも反映しているように感じられる。この手法が、弾劾裁判での共和党議員の造反阻止につながったのだろうが。
 無罪評決は、数の力と強権で得たようなものだ。トランプ氏がこの姿勢を今後も押し通すならば、国内外で新たな分断と対立を招くことにつながるのではないかと心配だ。

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