社 説

 

諫早湾干拓訴訟「本当の“解決”考える契機に」

2019/9/14 土曜日

 

 長崎県の国営諫早湾干拓事業に関し、福岡高裁が潮受け堤防排水門の開門を命じ2010年に確定した判決の「無力化」を国が求めた訴訟の上告審判決で、最高裁は無力化を認めた二審の同高裁判決(18年)を破棄し、審理を同高裁に差し戻した。
 無力化の内容は、漁業者側に開門を強制しないよう求めるもの。国には開門するまで1日90万円の制裁金支払い義務が課されていた。佐賀地裁の一審判決は国の請求を退けたが、二審は制裁金の支払い義務を免除していた。
 最高裁の判決では、漁業者側が開門請求の根拠としていた漁業権が消滅していたとする二審の判断について「是認できない」などと否定し、同高裁にはさらに審理を尽くすよう求めた。判決要旨では確定判決の特殊性などにも言及されているが、差し戻し審では当初の判断が覆される可能性が生じたことになる。
 同事業をめぐっては、閉門により漁業環境が悪化したとして、漁業者側が開門を求める訴訟を、営農者側も塩害を被る恐れがあるとして開門差し止めを求める訴訟をそれぞれ起こしていた。佐賀と長崎の2地裁に提訴された開門請求のうち、佐賀は開門の確定判決につながった。一方で長崎は認められず、今年6月に非開門の判決確定が決定された。営農者による開門差し止め訴訟も6月に非開門の判決確定が決定している。
 最高裁判決では、これまで示された司法判断の「ねじれ」の解消が焦点となった。破棄差し戻しにより訴訟は長期化することになったが、ここで一度冷静に本当の「解決」の在り方を考えてみる必要はないか。
 同事業をめぐる一連の訴訟がたどっている複雑な経過は、その時々の政権の方針の変遷を映し出しているように思えてならない。同時に、その紆余(うよ)曲折には同事業に翻弄(ほんろう)され続けている漁業者や営農者たちの姿も重なる。
 最高裁入りする漁業関係者らの横断幕に記された「沿岸漁業・地元農業、どちらも大事」は、偽らざる本心であろう。続く「排水門の開放を!!」が直ちにそれに結び付くかは立場によって異なる見解であり、この場で軽々に断じることは避けたい。
 ただ、これまでの経過を概観すると、差し戻し審判決が開門・非開門のどちらを向いたとしても、より広範な立場の人々が首肯する「解決」につながる結果をもたらすのかは疑問だ。和解協議の検討、あるいは別の形での政治的解決を図るのが現実的ではないか。取り掛かるなら早い方が良い。
 同時に、約2530億円もの巨費を投じながら長期間にわたる混乱を招いた原因として、同事業の推進に人心をおざなりにした部分がなかったか、そのプロセスを検証する必要があろう。

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医師確保問題「医療格差がない環境づくりを」

2019/9/13 金曜日

 

 深浦町中心部にある深浦診療所の医師が今年3月に退職し、現在常勤医2人体制が続いている。学会などで、どうしても診療所を離れざるを得ない場合、代診医が対応する時もあるが、常勤医3人と2人とでは、やはり負担の違いが大きいだろう。隣の鯵ケ沢町は多数の医師を抱える町立病院があり、複数の民間医療機関が存在するなど状況が異なる。深浦町の場合は南北に長い地勢にある中、歯科を除く民間医療機関はなく、対応できるのは深浦診療所だけだ。言うまでもなく、早期の医師確保が求められよう。
 深浦診療所は昨年6月、町中心部の広戸地区に開設された。この時は今と同じ常勤医2人からスタート。数カ月後に現在診療所長を務める医師が着任し、常勤医3人体制となった経緯がある。深浦町は同診療所開設まで、高額の報酬など好待遇を掲げて医師を公募してきたが、採用に結び付かなかっただけに、診療所開設時の町関係者の期待と喜びは大きかった。
 同町の吉田満町長は9日の町議会一般質問で、医師確保問題に絡み、町内で必要とされる医師数を最低4人、さらに医師が不在となる場合の代診医を確保することが必要との認識を示した。このほか、全国的な医師不足や町の将来的な財政状況を勘案し、深浦診療所のほか町北部にある関診療所と合わせて、町が2診療所を運営していくことが困難と言及。この状態を克服するため、常勤医3人体制を早期に確立した上で、深浦診療所への医療資源集約を図り、関診療所は公設民営化の方針の下、民間事業者の誘致を図る考えも明らかにした。
 常勤医3人体制の確立と民間事業者の誘致は、いずれも同町にとって難題であることには違いない。しかし、やり遂げなければならない課題でもある。医師確保に関しては、過去の反省から現段階では公募を見送り、総合診療医の確保を目指している。今春、深浦診療所に医師確保専門員を配置したことも、その取り組みの一つだ。
 医師不足は近年、全国的に深刻さを増しており、とりわけ人口の減少が著しい自治体にとっては医師確保が厳しい状況にある。へき地の医療機関への赴任となる場合、医師自身の家族や子どもの教育や進学の関係から、二の足を踏んでしまうケースは少なくない。
 こうした中、へき地医療に理解を示す一部の医師によって地域医療が支えられており、地域間で医師獲得競争のような状況となってしまうことは、将来的に特定地域の医師の先細りを生じさせかねない。都市、地方といった居住地を問わず、どこにでも医師の診療が必要な人がいる。そういった視点で、医療格差がない、同じ医療資源の下で誰もが診療を受けることが可能な安心して暮らせる環境づくりを望みたい。

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内閣改造「内外の難題に対処できるのか」

2019/9/12 木曜日

 

 第4次安倍再改造内閣が11日発足した。小泉進次郎衆院議員の初入閣というサプライズはあったものの、自民党役員人事と併せ、安倍晋三首相の信が厚い、側近を重用した格好だ。果たして国内外に山積する難題に対処できるのか疑問であり、解散・総選挙を意識した人選と指摘する声もある。
 今回の内閣改造の目玉は小泉氏の環境相起用だった。安倍首相は政権浮揚を図るとともに「将来の総裁候補」を自らの手で育て、囲い込む狙いもあるとみられる。
 改造にあたって「安定と挑戦」を掲げた首相は政権中枢を維持しつつ、閣僚を大幅に入れ替え、初入閣は安倍内閣で最多の13人となった。
 ただ、麻生太郎副総理兼財務相と菅義偉官房長官、二階俊博党幹事長の“三本柱”が続投。重要閣僚は横滑りや再入閣組が占める上、初入閣組には首相の側近が数多く、新鮮みには欠ける。
 指摘したように、改造内閣は山積する課題への対応が急務だ。内政では目前に迫った消費増税、年金を含む社会保障制度改革、外交では日米貿易交渉や悪化する日韓関係などがある。
 社会保障改革に対しては、西村康稔官房副長官が経済再生担当相と首相肝煎りの社会保障改革担当相を兼務する。また加藤勝信総務会長を厚生労働相で再び起用。ともに首相の側近であり、今後の議論は“官邸の仕切り”で進む可能性が高い。
 複雑化する外交課題への対応は、河野太郎外相が防衛相に転じ、後任に茂木敏充経済再生担当相が就く。どちらも日米関係は重視しつつ、韓国に対しては“強硬派”とされ、安易な妥協はしないという、官邸サイドの意向がはっきり表れている。
 一方、今回の改造・人事について、ある党幹部は二階幹事長や菅官房長官を留任させたことを挙げて「安定を重視しつつ、いつ解散・総選挙になってもいい人選」と、首相の腹の内を推測する。
 別の同党議員は「任期満了と総裁任期満了となる2年後を見据えた人事。総裁4選も視野に入っているのでは」と、さらなる長期政権の可能性にも言及する。
 時事通信の8月の世論調査で、安倍内閣の支持率は47・0%、不支持率は30・8%。小泉氏の起用を含め、世論が改造内閣に好感を抱けば、さらに支持率の上昇も見込める。
 来月は消費増税や天皇の即位祝賀行事が予定され、来年夏には東京五輪を控える。重要日程が続く中、支持率の上昇を背景に首相が解散に打って出る可能性はあるのか。
 永田町では依然として「年内解散」「来春、予算成立後解散」といった見方もある。まずは来月上旬にも召集される臨時国会での議論が注目される。

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弘前市のごみ減量化「事業、家庭系の両方で促進を」

2019/9/11 水曜日

 

 各自治体にとって、ごみの減量は大きな課題だ。県内40市町村の中でもごみの排出量が多い弘前市も減量に注力し、「3キリ(使いキリ、食べキリ、水キリ)運動」を呼び掛けているほか、地元の各分野の団体と協定を結ぶなど幅広い取り組みを展開している。
 同市を含む中南地区では、ごみ処理処理の広域化を目指す動きが進む。弘前、黒石、平川、大鰐、板柳、藤崎、田舎館、西目屋の8市町村による枠組みが決定。現在の弘前地区環境整備事務組合、黒石地区清掃施設組合が2026年度をめどに統合され、2施設でごみを処理する計画だ。
 コストを考えれば、処理の広域化は当然の選択だろう。ただ、施設の処理能力には限界があり、排出量を減らす住民側の努力もますます求められることになる。各家庭、各事業所の意識改革は急務であり、それぞれ当事者意識を持って取り組むことを願いたい。
 ごみは事業系と家庭系に大別され、事業系は家庭系より分別が徹底されていないとされる。このような状況を踏まえ、弘前市は分別が不徹底な事業系ごみについて、10月ごろから焼却施設で搬入を規制する方針を示している。事業所の自発的な取り組みで、分別が改善されていくことが望ましいのであろうが、機運を醸成させて確実に成果を上げるには、規制も場合によっては必要であろう。
 家庭系についても、まだまだ減量を促さなければならず、市民の啓発活動は今後も充実させなければならない。弘前市が公表した、ごみ減量・リサイクルに関する市民アンケートの結果によると、ごみ収集日の通知や分別情報を検索できるスマートフォン用アプリ「弘前市ごみ収集アプリ」を「知らなかった」との回答が84・5%にも上った。
 確かに、年配者を中心にスマホを所持せず、アプリを活用できない人たちもいるはずだが、アプリの認知度の低さは重く受け止めるべきなのではなかろうか。市にも周知に努めてもらいたい。
 家庭系ごみをめぐっては、減量するとともに国際的に貢献できる方法もある。例えば、衣類回収ボックスだ。回収された衣類は、東南アジアなどに届けられる仕組みになっている。市は15年4月から、市内数カ所に設置し、不要な衣類の提供を呼び掛けている。設置箇所、回収量は次第に増え、18年度は10カ所で計10万キロ弱に上った。
 このような状況を踏まえ、市は9月初め、ボックスを弘前大学と弘前学院大学にも設置する方針を示した。設置期間は10月中の1~2週間と限定されたものだが、若年層にも回収ボックスの存在を周知する意義は小さくない。
 ごみの減量は事業系、家庭系の両方で進められてこそ、成果が出るはず。各方面に理解と協力を改めて求めたい。

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日ロ平和条約「首脳会談成果なく依然霧中」

2019/9/7 土曜日

 

 5日にロシア極東ウラジオストクで行われた日ロ首脳会談。北方領土問題を含む平和条約締結交渉の停滞打開が注目されたが、両首脳が確認したのは「未来志向で作業する」。具体的な成果はなく、北方領土返還の先行きは、依然不透明なままだ。
 平和条約の締結は安倍晋三首相が目指す「戦後日本外交の総決算」の一つ。何とか動きだしたい安倍氏は、会談冒頭で「未来志向の取り組みや交流が今後の日ロ関係の礎を形作ると確信している」と述べ、プーチン大統領に軟化を促したのに加え、同日開かれた東方経済フォーラム合同会合での演説でも「平和条約を結び両国国民が持つ無限の可能性を一気に解き放とう、歴史を一緒につくろう」と呼び掛けた。しかしプーチン氏は、会談冒頭の呼び掛けに対し平和条約に一切触れず、合同会議では司会者の質問に「平和条約の締結に向かっていこうとしている」などと答えた程度だった。
 1956年の日ソ共同宣言には平和条約締結後に歯舞群島と色丹島を引き渡すと明記されている。両首脳は昨年11月、共同宣言を締結交渉の基礎とすることで合意した。つまり「未来志向」を改めて確認した今回の首脳会談は、進展とは言えない。野党は「何の成果もない」(玉木雄一郎国民民主党代表)、「安倍さんは随分軽く見られている」(立憲民主党会派の岡田克也元外相)と批判した。
 プーチン氏は会談直前の5日未明、色丹島に開設した水産加工場の従業員とビデオ中継で対話し、稼働を祝福した。さらに今年3月にロシア軍が国後、択捉両島で軍事演習、8月にはメドベージェフ首相が択捉島を訪問している。返還を求める日本に対し、北方領土の実効支配を誇示するとともに、統一地方選を控えるロシア国内で政権与党の支持率回復を狙ったものとの見方もある。ならば、日本政府が5日に行った抗議も、弱腰外交と見られることを避けなければならないプーチン氏にとって、強気で臨んだことの証明になったかもしれない。
 日本政府や関係団体などが2月に開いた北方領土返還要求全国大会では、大会アピールに、例年使用している「北方四島が不法に占拠され」という、ロシアを刺激する表現は盛り込まなかった。また、安倍氏は「2島プラスアルファ」での決着を視野に入れている。早期解決を目指すためだが、「2島プラスアルファ」は4島返還からの後退、ロシアによる一連の行動も「2島返還すらしない意思表示」と受け止めることもできる。
 今年度の北方四島ビザなし交流で色丹島を訪れた元島民(75)は「(島に行けるのは)あと3~5年かもしれないが、その分だけ(墓参りで)孝行したい」と語った。自由に古里に眠る祖先を供養できないまま、高齢化する元島民の目に、今回の首脳会談はどう映ったのだろう。

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