社 説

 

カラス対策「市町村間の広域連携検討を」

2020/2/22 土曜日

 各地で住民を悩ませているカラス。弘前市でも個体数などの調査を続けながら、さまざまな対策を講じているが、ふん害などは相変わらず見られ、それらをいかに減らすかが課題となっている。
 先日、同市内で開かれた「弘前市カラス対策連絡協議会」で市が報告したところによると、個体数は緩やかながら減少傾向にはあるという。2018年10月には弘前公園周辺で3831羽が確認されたが、19年11月には3595羽に減少、今年2月8日に弘前大学周辺で確認すると3359羽だった。
 関係者は、箱わなを用いた捕獲など各種対策の成果が次第に表れているとする。しかし、どの対策も万能とは言えないようで、箱わなを使った捕獲数の推移を見ると、昨年度は337羽だったが今年度は165羽(2月13日現在)にとどまっている。
 今冬は少雪のため餌場が雪に覆われず、箱わなの餌を求めるカラスが少ないことが原因とみられている。関係者は、餌の確保が難しい冬季の自然死を促すことを「対策の根本」に据えるべきとしているが、昨今の気象状況を見れば、冬がカラスにとって必ずしも厳しい時期とは言い切れない面があり、対策の難しさが浮き彫りになっている。
 とはいえ、諦めるわけにはいかない。弘前市が公表した19年度の市民意識アンケート集計結果報告書によると、カラス対策への市民の不満が依然として解消されていない状況が示されている。関係者たちにはより効果的な対策を考案し、実施することが求められている。
 弘前市はこれまで、鷹匠(たかじょう)によるカラスの追い払いなどを行ってきた。実証実験では、鷹匠が日没前に鷹とともにカラスのねぐらとなっている市街地を巡回すると、カラスがそこから移動するといった状況が見られた。ただ、この対策も日常的に行うのは難しいはずで、大きな効果を得るまでには至っていない。
 さらに今年に入って興味深い調査結果が示された。ハシボソガラス、ハシブトガラスの2種類にタグと全地球測位システム(GPS)を付けて追跡し、行動範囲や移動距離を探ったもので、中には本県から秋田との県境を越えて大館市まで移動した個体も見られた。
 この調査結果を踏まえれば、各自治体がばらばらに対策を講じていても効果が限定的であることは明らか。調査に携わった関係者も市町村間の広域連携の必要性を強調した。他の鳥獣被害についても同様な見解が示されている。中南津軽の各自治体も隣県の自治体との協力を検討するべきではなかろうか。
 鳥獣別に本県全体の農作物被害額を見てもカラスが最多で、ニホンザルなどを上回っている。われわれの生活に大きな影響を及ぼしているカラス被害を何とかして減らしていきたい。

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1月訪日客減少「今後の減少に備え取り組みを」

2020/2/21 金曜日

 1月の訪日外国人数(推計値)が、前年同月比1・1%減、実数にして約3万人減の266万1000人となったことが日本政府観光局(JNTO)のまとめで分かった。4カ月連続で前年同月を下回る結果で、日韓関係の悪化を背景とした韓国人客の落ち込みが響いているほか、新型肺炎の拡大が今後、世界各地からの訪日客減少を加速させるとの懸念もあるという。JNTOは今後、市場動向を綿密に分析しつつ、訪日旅行の推進に取り組んでいくといい、今後どのような対策を打ち出していくのか注視する必要があろう。
 主な内訳は、韓国が前年1月の77万9383人から今年1月は31万6800人と、率にして59・4%もの落ち込みとなった。ただ、このほかにマイナスとなったのはドイツの前年同月比1・4%減のみ。中国は同22・6%増の92万4800人、台湾は同19・0%増の46万1200人、香港が同42・2%増の21万9400人と中華圏を中心に高い伸びを示しているほか、東南アジア圏も伸び率が同10~40%台と大幅な増加を見せている。この結果、韓国とドイツを除く17市場では1月として過去最高値を記録した。
 中国の場合、大型連休に当たる春節(旧正月)の時期が前年より早くなったことから、1月に訪日が集中した影響という。台湾も同様に春節時期の前倒しや地方への新規就航と増便、チャーター機運航が訪日客増加を後押しし、東南アジア圏の伸びも新規就航や訪日プロモーション活動の成果によるものとみられる。
 しかし、懸念されるのは2月以降の動向であろう。中国政府は新型肺炎の流行を受けて、1月27日から海外への団体旅行を禁止しており、今月以降影響が大きくなる見通しだ。このほか、日本国内での新型肺炎拡大により訪日需要も落ちているといい、訪日客数全体の落ち込みは避けられず、地域の観光業に与える影響も大きいと予測される。
 政府は2020年の訪日客数の目標を4000万人と掲げているが、こうした情勢を鑑みた場合、困難と言わざるを得ないだろう。新型肺炎の流行は想定外としても、韓国のように外交問題のこじれから来る訪日客数の減少は、過去の経緯からみても想定内として考えていく必要があったはずだ。九州・対馬のように韓国からの観光客にほぼ依存しているような地域は、悲鳴を上げている状態という。「訪日客数は韓国からは減っても、他の地域からは増えている」というような楽観視は避けるべきだろう。
 今後の見通しに不安要素が多数ある中で、綿密な分析と訪日観光の積極的な呼び掛けはもちろん必要だが、同時に外交問題や感染症の流行といった現状に関しては、観光に関する危機管理能力を高める機会と受け止め、官民共に訪日客増に向けた取り組みを進めてほしい。

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新型肺炎の影響「感染抑止と同時に経済対策を」

2020/2/20 木曜日

 政府が開いた新型コロナウイルス感染症対策本部で本部長の安倍晋三首相は、国民に向けて発熱など風邪の症状がみられる際に学校や仕事を休み、外出を避けるよう呼び掛けた。感染拡大を防ぐにはできる限り、人との接触を避けるのが得策なのは分かるが、年度末に向けて多忙になる中、特に小・零細企業では簡単に「そうですか」とはならないだろう。
 企業に関しては、ほかの社員の負担が増えると考え「風邪の症状」だけで休むことに罪悪感を抱く社員も少なくないのではないだろうか。複数の人材で負担を分散できる大手企業ならいいが、小・零細企業の場合は一人でも休むと痛手となる。さらに、戦後の荒廃を乗り越えて経済大国を築いた高度成長の経験から、多少無理しても仕事をこなすことを「美徳」とする風潮は、現代においても少なからず残っているのはないだろうか。
 「美徳」に社内集団感染を招く危険性があり、政府が「休みやすい環境」を求めるのは十分に理解できる。しかし、地方経済はいまだ低迷を抜け出せずにおり、業績に直結する営業活動や生産活動ができなくなれば、景気低迷、消費税増税、人材難などにあえぎ、ぎりぎりの事業継続を強いられてきた企業に、「新型肺炎倒産」が生まれる可能性も否定できない。
 外部との接触を可能な限り減らすテレワークも、できる職種は限られる。これまで個人情報などの社外持ち出しを禁じてきた企業が、社内よりセキュリティーが甘くなる可能性もある社外勤務に踏み切れるか。テレワーク実施に向けて準備を進めてきた企業ならいいが、そうでない企業は、急に「テレワークを」と言われても困惑するだろう。経営者は個人情報や社内文書の外部流出、実施しないことによる社内感染など、複数のリスクを抱えての難しい決断を強いられる。
 また、対策本部は大規模イベントの開催時期見直しを検討するよう求めている。大規模イベントが地域経済を支えているのは間違いない。例えば昨年、会期中の人出が史上2番目に多い289万人を記録した弘前さくらまつりは、飲食や宿泊、交通など多方面に経済効果をもたらす日本有数の春祭りである。桜の開花時期をずらすことができないため、開催時期の変更は不可能だ。会期変更以外の対策を考えても、入場制限は難しく、マスクの着用を呼び掛けたとしても、基本は来場者の自己防衛に委ねるしかないだろう。祭り開幕までの2カ月ほどで、新型肺炎が収束するかは分からない。
 政府にとって感染拡大の抑制が第一であるのは当然だが、仮に国内の新型肺炎が早期に収束したとしても、経済活動が即好転するとは考えにくい。中小零細企業や個人消費への影響を長引かせないためにも、感染拡大抑制と並行して、効果的な経済対策を急ぐ必要がある。

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地下神殿「公共投資に“効果”の裏付けを」

2020/2/19 水曜日

 

 「地下神殿」と呼ばれる巨大な調圧水槽がある首都圏外郭放水路(埼玉県春日部市)を訪れる機会があった。総工費2300億円を投じた世界最大級の地下水路だが、部分運用期間を含む実動18年での治水効果が1484億円と試算されている。多額の事業費を伴う公共投資は、とかく必要性が疑問視される。放水路を先例とし、今後は具体的なデータに基づいて効果を試算し、それを裏付けに整備を進めるべきではないだろうか。
 放水路は埼玉県西部の中川、綾瀬川など中小河川の氾濫防止を目的に、河川ごとに整備された五つの立て坑と、それぞれを地下50メートルでつなぐ総延長6・3キロのトンネル、江戸川へ水を排出するための排水機場などで構成される。1993年に着工し2006年に完成した。
 各立て坑は深さ70メートル、内径30メートルで、自由の女神がすっぽり入る大きさ。一定水位を超えて川から流れ込んだ水は、各立て坑をつなぐトンネルを通って排水機場の調圧水槽にたどりつく。
 この水槽が「地下神殿」と呼ばれ、メディアにも数多く登場する人気スポットになっている。
 地下22メートルに位置し、長さ177メートル、幅78メートル、高さ18メートルという巨大空間にはトンネルを通って流れ込む水の勢いを弱め、排水をスムーズに行う役目がある。空気を満たした調圧水槽が地下水の影響で浮き上がらないよう、59本の巨大な柱と天井が重しとなって抑え込んでいる。
 調圧水槽で滞留した水は4機のスクリューで江戸川へ排水される。湾曲し川幅の広い江戸川の水位の上昇と各中小河川の増水には時間差が生じるため、江戸川の水位が上がる前に排水を終える仕組みだ。
 15年の関東・東北豪雨では、流れ込んだ東京ドーム15杯分の水が放水路を通じて江戸川に排出された。昨年9月の台風19号でもドーム9杯分の水を排出、埼玉県内で水害が相次いだのに対し、流域の被害を軽減した。
 放水路を管理する国土交通省関東整備局では、未整備時の被害戸数との比較などから15年の水害防止効果を373億円、台風19号で264億円と試算。実動18年では1484億円に達する。
 また、今回参加した見学ツアーは、国交省などが民間の旅行会社と連携し、既存のインフラなどを地域の観光資源として活用する「インフラツーリズム」のモデルケースになっている。
 週末だったこともあり、ツアーには親子連れなど多くの人が参加した。所要時間に応じてトンネルを歩いたり、100段以上の階段を下りて地下神殿を見学したりするコースなどが選べ、どのコースも人気を集めているという。
 副産物とも言える効果だが、放水路を先進例として、効果に裏付けられた防災インフラを計画的に整備したい。

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であい授業「共生社会に向けたアプローチ」

2020/2/18 火曜日

 障害のあるアーティストを講師に迎え、表現することの楽しさと障害者の生き方を共有・理解するワークショップ(WS)「であい授業プロジェクト」を県内中学校などで実施できないか、県内の教員有志らで構成するアウトプット展実行委員会が可能性を探っている。
 実行委は2015年と18年、県内障害者の造形作品を美術展形式で一般市民に紹介し、想像力や表現力の豊かさに障害の有無は関係がないことを示してきた。であい授業は障害者自身が生活圏の外の世界に踏み出す試みでもあり、実現すれば実行委の活動が新たな段階を迎えることになる。
 県内では、障害の有無を問わず子どもが同じ環境で教育を受けるインクルーシブ教育のシステム構築に関する研修会などが開かれ、一部分野では国の委託事業も進められている。障害者を理解するところから始まるであい授業は、インクルーシブ教育が目指す共生社会の実現につながる取り組みとも言えよう。
 15日には青森市の青森公立大学国際芸術センター青森で、市内3中学校の生徒16人を含む教育・福祉関係者ら約40人が参加したWSが行われた。実行委は学校現場での本格実施に向けた第一歩と位置付けている。
 WSは作品制作に先立ち、講師を務めた平野友愛さん(弘前市)の制作や日常に関する映像紹介で始まった。最初に平野さん自身のことを知ってもらう趣旨だろう。続いて、平野さんが描いた下絵の各小片を参加者が思い思いに彩色し、最後に平野さんが小片を張り合わせて一つの平面作品に仕上げた。平野さんが自席で色付けする様子は、モニター画像を通じて参加者が共有。参加者それぞれの個性が平野さんによっていかに一つの作品にまとめられるか、そのわくわく感も平野さんと共有された。
 であい授業は、るんびにい美術館(岩手県花巻市)が16年から取り組んでいて、これまで同県内の中学校などで計40回実施されている。今回のプログラムは、同美術館の手法を参考に構成された。秋田県からも参加があり、注目度の高さがうかがわれる。
 同美術館は、障害者の美術作品を展示するだけでなく、障害者らが制作するアトリエ、カフェなども備える。運営方針に掲げるキーワードは「ボーダーレス」(境界がないこと)。障害者による美術を「アール・ブリュット」「アウトサイダー・アート」といった言葉で区別していたこれまでとは異なる。
 であい授業は、障害の有無による境界を取り除き、新たな気付きを与えてくれるきっかけとなりそうだ。同時に、出会い自体が持つ力の大きさにも気付かされる。こうした取り組みが長く続けられれば、児童・生徒と社会の意識は少しずつでも変わるかもしれない。

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