社 説

 

憲法改正論議「有権者に分かりやすい議論を」

2019/7/13 土曜日

 

 21日投開票の参院選で、争点の一つとなっているのが憲法改正だ。自民党は参院選の公約に改憲を掲げており、参院選での結果が改憲論議を推し進めるかどうかの判断基準につながることだろう。
 県内有権者を対象に行った参院選についての本紙世論調査(4、5日)では、安倍政権の掲げる憲法改正に「賛成」と回答した人の割合は18・3%にとどまり、「反対」は賛成のおよそ2倍となる36・7%、最も割合が高かったのは「分からない」の44・2%だった。有権者の間で改憲を求める声が高まっているとは言えない状況にある。
 自民党が公約に掲げている改憲の方向性は大きくは7項目。「国旗は日章旗、国歌は君が代とする」「憲法改正の発議要件を衆参それぞれの過半数に緩和」などとするほか、特に注目されるのが「平和主義は継承しつつ、自衛権の発動を妨げないこと、国防軍を保持することを明記」「武力攻撃や大規模自然災害に対応した緊急事態条項を新設」の部分だ。
 改憲賛成派の意見を聞くと、現憲法に明記されていない自衛隊に関し「国民のために頑張っている自衛隊をきちんと明記してほしい」との声が上がる。また現憲法を「敗戦後にGHQ(連合国軍総司令部)から押し付けられた憲法」「日本人が作り上げた憲法にすべき」との声も。一方で反対派からは「9条改正が戦争につながる」との声があるが、国際法で戦争は違法とされており、両者の議論はなかなかかみ合わない。
 ただ、改憲が「立憲主義の破壊につながるのでは」と不安視する声があることも確かだ。国家権力を制約する憲法に仮に自衛隊が規定される場合は、自衛隊の権限の範囲をも規定することが当然と考えられるが、自民党の改正草案を見ると法律で後から決められる形になっているのではないか―といった懸念がある。
 また武力攻撃や大規模自然災害に対応する緊急事態条項新設についても、緊急事態により迅速に対応できるというメリットがあるが、権力の歯止めを一時的であれ停止・制限することを憲法レベルで規定した場合、緊急事態が終了した段階で速やかに元の状態に戻れることが担保されているのかどうかは不明だ。
 「政府が権力を乱用することがあるはずもない」。そのような絶対的な信頼感を持って改憲論議を見守るよりは、乱用される危険性もあると想定した上で注視すべきではないだろうか。10年後、20年後にどのような事態が起き、あるいはどのような政治家が出てくるかは予測できないからだ。
 参院選で本県選挙区の候補者の街頭演説を聞いていても、改憲が大きな争点とされている印象は少ない。有権者の多くが「分からない」と感じていることがうやむやに進んでいくことがないように、今後の議論を注視したい。

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人口減と高齢化「一極集中是正こそ最重要課題」

2019/7/12 金曜日

 

 日本の人口が10年連続で減少する中、本県の減少率は全国ワースト2位、高齢化率は過去最高を更新した。ここ数日の間に発表された各種統計で明らかになった、本県の実態である。いかに地域を持続させるのか、政治や行政はもちろん、県民も真剣に考える必要がある。
 県国民健康保険団体連合会が公表した今年2月1日現在の住民基本台帳をベースとした本県の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)。県平均は32・07%で、最高は今別町の53・45%だった。海岸地域の町村で高い傾向が見られ、10町村で40%を超えた。弘前市は31・38%だった。
 また、今年2月1日現在の本県総人口は129万1271人(前年同期比1万5409人減)で、65歳以上は41万4065人(同4803人増)だった。
 高齢化率が上昇し続けることについて県の担当者は「町村部で若者が流出している。対策には市町村だけではなく、国と県が一体となった対応が必要」と指摘する。
 それを裏付けるのが、総務省が10日公表した住民基本台帳に基づく今年1月1日現在の人口統計だ。
 それによると、日本の人口は前年同期比43万3239人(0・35%)減の1億2477万6364人で、10年連続の減少となった。減少数、率ともに過去最大を更新。都道府県別で人口が増えたのは東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)の4都県と沖縄県のみで、東京一極集中が依然進んでいることが分かる。
 各種統計が物語るのは、本県を含む地方は若者の流出によって人口が減少し、それに伴い高齢化が進む構図だ。地方が衰退すれば、ますます若者が流出する。この“負の連鎖”を断ち切ることは、本県だけでなく、国全体で早急に取り組むべき課題だ。
 先日、県総合計画審議会(会長・佐藤敬弘前大学学長)が2020年度に県が取り組むべき施策をまとめ、三村申吾知事に提言した。提言書では人口減少対策として若者の県内定着を促進するため、生徒・学生への働き掛けだけではなく、教員や保護者にも県内の魅力的な就職先を周知することも求めた。
 県は提言も踏まえ、大胆な手だてを講じてほしい。例えば他県に進学する若者に対し、卒業後は本県で働き一定期間納税することを条件に、奨学金を支給してはどうか。移住者用に自治体が空き家をリフォームするなど、他県の若者を迎え入れる方策も検討してほしい。
 折り返しを迎えた参院選では、社会保障が大きな争点となっている。確かに重要な政治課題ではあるが、もっと語られるべきは、若者や子育て世代に光を当てた政策だ。地方が衰退しては、国は成り立たない。いかに一極集中を是正するかが、最重要課題である。

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アートで街活性化「美術館が新設される今が好機」

2019/7/11 木曜日

 

 アートで街を活性化しようとする、草の根的な活動が弘前市内で見られている。同市内では来年春に「弘前れんが倉庫美術館」の開館が予定され、市民のアートに対する関心が高まっているだけに、同じような活動が今後増えていくことを期待したい。
 活性化といっても手法はさまざまだ。デザインユニットをつくり、同市内を拠点に活動する夫婦は、空き店舗を活用したアートイベントを開催している。
 営業をやめた、いわば不要になった店舗を活用すること自体、面白い取り組みなのだが、活用の仕方もまた独特だ。世界大戦が勃発した近未来をテーマとし、「時間が止まった空間」に地元のアーティストが作品を並べた。
 この夫婦は、今回の展示がモデルケースとなり、アート分野における空き店舗・空き家の活用が広がる足掛かりになればと展望している。確かにアートに空き店舗を活用する例はそれほど多くない。
 さらに興味深いのは、空き店舗を単に展示会場として活用することにとどまらず、「住む人が離れてもそのまま存在している、会場の不思議な空気感も作品の一つ」と話している点だ。空き店舗そのものまで作品と捉える、ポジティブな姿勢に共感できる。
 津軽地方に住むアーティストの一人は、街なかのあちこちにアート作品を仕掛ける取り組みを展開している。商店の壁、シャッターをキャンバスに見立て、取り組みに参加するアーティストたちが無償で作品を制作するという。
 構想では、取り組みに賛同する店舗や施設の内外に作品をこしらえ、地図上で数珠つなぎにし、将来的には観光客らに回遊してもらうことを目指しているという。国内外で評価を得ている気鋭のアーティスト数人が無償での協力を表明しており、取り組みの成果が注目される。
 弘前市は、さくらまつり、ねぷたまつりなど四季の祭りがあり、観光都市としては国内外に知られる。しかし、アートに関しては、県立美術館がある青森市、現代美術館がある十和田市が先行している。弘前市は今のところ「アートの街」への仲間入りを果たせていない。
 ただ、弘前市が今後、アートに関して他都市と肩を並べられる可能性は十分にあろう。実際、街なかにアート作品を仕掛ける取り組みを展開する関係者は、地元におけるアーティストの認知度向上などを目指している。それだけ、同市にはアートに関わる人がいるということなのではないか。
  美術館が新設される今が弘前市にアートを根付かせる好機。ただ、アートによる地域振興例は全国に多数あり、後発組が成功するのは容易ではない。新たな美術館が独自色を持つことはもちろん必要だが、それに伴い地元の活動が盛んになれば最も大きな特徴となるはずだ。

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七里長浜港「津軽の発展に資する活用を」

2019/7/10 水曜日

 

 津軽地域の14市町村が、鯵ケ沢町にある七里長浜港の名称を「津軽港」に変更し、さらなる港湾整備と利活用の促進を求める要望書を、港湾設置者の県に対して提出した。七里長浜港を歴史のある素晴らしい名称としつつも、全国的に知名度が高い「津軽」の名前を前面に押し出し、地域振興につなげたいという。要望書を受け取った三村申吾知事は即答は避けたものの、14市町村長の強い思いを受け止め、前向きに検討すると回答した。
 七里長浜港は本県日本海側唯一の物流港湾。県が1983年に工事に着手し、97年に供用を開始。当初の取り扱い貨物は建設資材などを中心に約6万トンだったが、2008年ごろから増加し、11年の東日本大震災に伴う建設需要の高まりなどを受けてさらに増えた。石灰石、砂などを主力貨物としながら、近年は風力発電の部品搬入も増え、18年の取扱貨物数量は過去最高の約25万トンとなっている。
 ただ八戸港、青森港などと比べると、七里長浜港の取扱貨物量はまだまだ少なく、知名度も今ひとつ。また同港はポートセールスに行っても「どこの港か」と聞かれることが多いという。実際、県民の中にも、なじみが薄いという人がいるはず。その点「津軽港」は本県津軽地域にある港ということが分かりやすい。
 市町村側には、同港を「津軽の海の玄関口」として認知してもらい、従来の建設資材だけでなく、農林水産物の搬入・搬出やクルーズ船の寄港などにもつなげていきたいという思いがある。16年には津軽地域の生産者から集荷した飼料用米を同港から八戸港へ輸送する試験的な取り組みが行われたが、今後は取り扱い貨物を建設資材以外にも広げていく取り組みが、一層重要になってくるだろう。
 また近年は実績がないが、1998年ごろから豪華客船「ふじ丸」「にっぽん丸」などが相次いで入港した例もある。津軽地域は世界自然遺産白神山地をはじめ、人気の高い観光資源が多い。津軽自動車道などアクセス道路の整備も着々と進んでおり、観光客誘致や国際交流の拠点としての活用も検討する価値はある。
 名称変更には港湾設置者である県の条例改正が必要。最終的には県の判断を待つことになるが、仮に変更の方針が決まれば、担当課では必要な手続きを精査し、早ければ年内、遅くとも年度内の条例改正を目指して作業を進める構えだ。
 関係者は「津軽は全国ブランド。青森県津軽の港だとすぐに分かる」として、津軽の名を冠した港の活用促進に大きな期待を寄せている。三方を海に囲まれているのが本県の特徴。北東北でも有数の国際物流拠点港となっている八戸港と、物流だけでなく近年は国内外のクルーズ船の寄港地としても知名度を上げている青森港に加え、津軽地域にも地域振興につながる港を育てていってほしい。今後の推移を、期待をもって見守りたい。

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黒石で映画館復活「中心市街地活性化に光」

2019/7/9 火曜日

 

 かつて六つもの映画館があったといわれる黒石市。現在、市内に残る映画館はないが、有志の手で今夏、2日間限定の映画館が復活した。歴史と風情ある街並みが残る同市の中心市街地「こみせ通り」の空きビルを活用した映画館は「黒石キネマ」と名付けられ、往年の名作から近年の話題作まで、3本が上演された。車社会にあって、郊外の大型商業施設に流れがちな消費者をどのように“街中”に回帰させるかは、全国の中心市街地にある商店街の共通の悩みの種と言えるだけに、今回の有志の取り組みは、中心市街地活性化の方策の一つとして注目される。
 この取り組みは、黒石市在住の相澤さとみさんが思い描いた「いつか映画館を運営したい」との夢に、同市のNPO法人横町十文字まちそだて会リノベーション部会が呼応して実現した。
 黒石市生まれの相澤さんは、20歳の頃に映画関係の学校に進み、卒業後フリーランスでミュージックビデオやCMの制作、ドラマのアシスタントプロデューサー、舞台脚本などを経験し、2017年に帰郷した。一方で、同市の須藤善石油店からこみせ通りにある空きビル(旧ストゼンビル)の利活用について相談を受けていたリノベーション部会が、相澤さんの映画館運営の夢を知り、須藤善石油店と相澤さんを結び付け、今回の企画が実を結んだ。
 Uターンで故郷に戻った人が、自身の知識や経験を生かしながら、映画館づくりという夢を実現させた今回の企画。相澤さんの熱意と努力はもちろん、個人の夢を中心市街地の活性化という社会的な意義に結び付けた同部会の発想力、ビルのオーナーである須藤善石油店のさまざまな協力が一体となって、形となった取り組みであり、中心市街地の活性化策に一つのヒントを与えたように思う。
 現在は市内にない映画館を復活させるというコンセプトも、市民を引きつけるものだろう。市内には昭和の時代、市街地と温湯地区に、合わせて六つの映画館が存在していたが、現在は全て閉館している。
 映画館があった時代に足を運んだ人たちは、懐かしさを感じ、逆に映画館がない光景が日常という若い世代には、今回の取り組みが新鮮に映っただろう。こみせ通りの持つ雰囲気に映画館という業態もマッチしている。
 中心市街地の空き店舗、空きビルの活用という問題は、全国的にもさまざまな知恵が絞られているが「黒石キネマ」の取り組みも注目に値するものだ。アイデアはあるが実現の場がない市民と、場所の有効活用を願うオーナー側を、うまくマッチングさせ街の活性化を図る。市民、民間団体、行政などが、さまざまに知恵を出し合い、こうした取り組みがさらに輪を広げることを願っている。

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