社 説

 

台風19号「課題を検証し次への備えを」

2019/10/16 水曜日

 

 列島各地に深い爪痕を残した台風19号。県内は交通機関に影響が残るものの、懸念されていた農業被害は軽微とみられる。ただ、全国では犠牲者が70人を超え、行方不明者も数多い。改めて自然の脅威を認識するとともに、浮き彫りとなった課題について、早急に対策を講じなければなるまい。
 今回の19号は“記録的な雨台風”だった。国土交通省によると、15日までに、52河川で堤防73カ所の決壊が確認された。
 特に宮城県や福島県は犠牲者も多く、多くは家屋の浸水や土砂崩れなどによるものだ。各地で「これほどの規模とは予想できなかった」との声が聞かれるが、自治体の避難勧告や避難指示情報が確実に伝わっていたのか、地域ごとに検証が必要だ。
 堤防が決壊し、泥水が住宅や農地を次々とのみ込む光景に思わず身震いした。被災住民が「何でも流してしまう」と驚いていたが、車や家屋を押し流す“黒い濁流”は、東日本大震災の津波を思い起こさせるものだった。
 国は昨年度から河川・砂防といった防災インフラ機能の強化に取り組んでいるが、決壊箇所はどうだったのか。計画はあっても未着工だったのか、整備済みでも水量が上回ったのか、点検が必要だ。
 地域によっては洪水の経験がある住民や、その経験を聞いた人が、家を建てる際に土台を高くしたと話していた。他にも民間の知恵や備えが被害を防いだケースもあるだろう。これらを取りまとめ、発信する取り組みも求められる。
 さらに一夜明け、雨が上がってから水があふれた支流も。水位の上がった本流に押し戻される現象だが、一息ついた住民にしてみれば二次災害のようなもの。台風や大雨の後、どんな現象が起きるのかは災害教育の分野であり、こちらの対策も急ぐべきだ。
 東京都台東区では、自主避難所を訪れたホームレスが受け入れを断られる事態も起きた。安倍晋三首相は15日の国会で「全ての被災者を受け入れることが望ましい」との考えを明かしたが、人道的にも断ること自体がおかしい。
 避難所の運営マニュアルを持たなかったり、避難所そのものの設置・運営経験のない自治体は少なくない。国や都道府県がリードし、先進例を学べる仕組みづくりを検討すべきだ。
 都内は11日夜、多くのスーパーやコンビニの店頭から食料品が消えた。買いだめに走る光景は、災害に対する日頃の備えができていないことの表れでもある。
 列挙した課題は早急に対応できるものもあれば、長期的な取り組みが必要なものもある。対策は十分だったのか。生かすべき反省点は何か。行政機関はもとより、地域で、家庭で検証し、次の災害へ備える必要がある。

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新年度予算編成方針「櫻田市長の手腕問われる年」

2019/10/12 土曜日

 

 弘前市が2020年度の予算編成方針を発表した。18年4月に櫻田宏市長が就任し、その公約を反映させた市の新たな総合計画が策定されてから初の予算編成となる。櫻田市長の任期折り返しに当たる節目でもあり、「櫻田カラー」がどのように盛り込まれるのかが注目される。
 市の18年度一般会計決算で、翌年度に繰り越す財源を差し引いた実質収支額は約5億8000万円の黒字となった。同年度末市債現在高は大型建設事業の終了に伴い、前年度比で約16億円の減。また実質公債費比率は7・7%、将来負担比率は52・2%と、財政の健全性を示す指標はいずれも前年度より改善している状況にある。
 バランスの取れた財政に見える一方、市の経常収支比率は96・5%で、前年度比0・7ポイント上昇。16年度からの3カ年平均は95・0%を超えた。経常収支比率は人件費や扶助費、公債費など固定的に支出されている経費に対し、地方税などの経常的な収入がどの程度充当されているかを表す。比率が高くなるほど、独自施策などで自由に使える財源が少ない状況を示すもので、市の財政が硬直化していることが分かる。
 市が要因として挙げているのは、普通交付税の減などに加え、近年整備した市庁舎、はるか夢球場といった施設の維持管理費の増だ。老朽化した施設の改修はいずれかの段階で必要であり、市は負担軽減を図るため有利な財源を活用して取り組んできた。それでも現状は、どのように歳出を削減し、限られた財源の中で政策的経費を効果的に用いるかという課題が重くのしかかっている。
 新たな総合計画の推進に向け、重点的に検討される事項としては、(1)人口減少が進む中での地域課題(2)次の時代を託す人材の育成(3)AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット=センサーや通信機能が組み込まれたモノがインターネットを通じてつながり、補完し合う状態)、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション=ロボットによる業務自動化)といった先進技術の活用―が掲げられた。
 人口減少・少子高齢化が進む結果、地方はあらゆる産業で担い手が不足することが懸念されている。9日の定例会見で櫻田市長は「作業の高効率化や行政サービスの効率化を図り、人がやるべきこと、人にしかできないことに力を集中する仕組みをつくるため、先進技術の活用を進める」と意欲を語った。
 この方向性に沿った中で、どのような施策を展開すべきか。これについて櫻田市長は、市職員の発想と挑戦する意欲にも期待を寄せる―とした。現場で市の課題と向き合っている職員の課題解決能力をどのように引き出し、来年度予算案を具体的にまとめ上げるのか。櫻田市長の手腕が問われている。

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大阪ねぷた祭り「新たな可能性見いだす場に」

2019/10/11 金曜日

 

 弘前市の扇ねぷたと組ねぷたが9月下旬、大阪市の大阪城公園でお披露目された。毎年夏に地元で行われる運行には大勢の観衆が訪れるが、関西圏で「ねぷた」はまだまだなじみが薄い。今回のイベントを契機に、ねぷたがさらに広く知られることを期待したい。
 今回のイベントはNPO法人「関西シティプロモーション」が主催したもので、「大阪ねぷた祭り2019」と題して9月27、28日に催された。会場には、今年8月の弘前ねぷたまつりで実際に運行された扇ねぷた2台、組ねぷた1台が展示された。中には大阪の人たちにとってなじみ深いであろう豊臣秀吉を題材にしたものも含まれていたが、どう受け止められたのだろうか。
 イベントの美術監督を務めた奈良県の芸術家横居克則さんは、ねぷたを高く評価。弘前市のねぷた団体「Hissatsuねぷた人」の活動に参加し、「紙で極彩色の武者絵巻を生み出す造形は世界に通用する」とまで語る。実際、展示された大型組ねぷたの前には、国際色豊かな人だかりが幾度もできていたという。ねぷたの魅力は多くの国の人たちに理解されるものなのかもしれない。
 津軽地方に住むわれわれにとって、地元の代表的な夏祭りの主役「ねぷた」が受け入れられたのであれば、うれしい限りだ。ただ、Hissatsuねぷた人の棟梁(とうりょう)で、展示された大型組ねぷたを手掛けた中川俊一さんは「その土地に合ったねぷたの表現方法を模索し、実施していくことが大切だ」と強調する。
 ねぷたといえば、伝統をかたくなに守っている―という印象を持つ人も少なくないと思われるが、中川さんによると、新しいねぷたの表現方法を探ることができるのが“遠征先”での利点という。今回のイベントでは、ねぷたを会場に据え置き、9月29日に大阪市内で行われた共催イベントでは前代未聞の水上運行も試みられた。
 よくよく考えてみれば、伝統的なねぷたも長い歴史の中では少しずつ変化してきた点もあるはずで、そういった変化が祭りの活性化につながってきた面もあるのではないか。
 地元では多くの人たちに引かれて練り歩くねぷたを展示したり、水上で運行したりした。これらの試みを成功させるには、さまざまな工夫が求められ、関係者たちも頭を悩ませた。しかしその分、ねぷたの新たな表現方法も生まれた。
 関係者たちはイベントを恒例行事化しようと意気込んでおり、2025年に大阪府で開かれる国際博覧会(万博)までに定着させたいとの声も上がる。
 今回のイベントの大きな目的は弘前、大阪両市の交流促進だが、弘前ねぷたの新たな可能性を見いだせる場にもなるのであれば、取り組みの意義はさらに大きなものとなるのではないか。

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北朝鮮漁船衝突「毅然とした違法操業対応とは」

2019/10/10 木曜日

 

 7日に発生した北朝鮮の漁船と水産庁の漁業取締船「おおくに」の衝突。野党は救助した乗組員の身柄を確保せず、聴取しないまま引き渡したことを失態と批判し、自民党内からは衝突時の映像公開を求める声が上がっている。これに対し、官房副長官は北朝鮮側に抗議したと説明しながら、日時や内容など詳細を伏せ、9日には映像を公表しない考えを示した。北朝鮮を過度に刺激しないよう配慮したとみられている。
 衝突したのは石川県・能登半島の北西約350キロ沖合にある日本の排他的経済水域(EEZ)内にある「大和堆(やまとたい)」と呼ばれる海域付近。大和堆は国内有数の好漁場として知られる。これまでも北朝鮮の漁船が違法操業を繰り返しており、本県西海岸など日本海沿岸に漂流・漂着する北朝鮮籍とみられる木造船などは昨年、過去最多の225件に上った。海域に侵入を試みる北朝鮮の船は増加傾向にあり、水産庁と海上保安庁が連携して警戒・監視活動を展開している。
 乗組員を救助した人命最優先の行動は当然だが、そのまま退去させたのは正しい対応だったのだろうか。安倍晋三首相は違法操業が確認できなかったことを理由に挙げたが、水産庁は放水などにより退去警告した取締船に対し、漁船が従わずに急旋回して接触したもので、取締船の活動は正当だったと説明している。EEZ内で他国は許可なく漁業などはできないが、航行するだけなら自由にできる。なのに漁船に対し退去警告した。取締船によるこの活動の正当性の根拠になるのが「違法操業」ではないのか。
 北朝鮮とは国交がなく、乗組員を退去させてしまった今となっては、大和堆にいた意図などを直接確認することはできない。拉致問題などを抱え、北朝鮮との対話の可能性をつぶしたくない思惑が背景にあったとみるのが素直だろう。この漁船について専門家は、約60人が活動できる大型船とみられることから、朝鮮労働党や軍の傘下の船と推測する。であれば、なおさらである。
 ロシアはEEZ内で操業する北朝鮮漁船に対し、身柄拘束など厳しく取り締まっている。しかし日本は救助した上で別の漁船に引き渡した。この措置が、追い返される以上のことがない“安全な漁場”との印象を持たせてしまった可能性は否定できず「『拉致問題を抱える日本は強い対応に出ない』と足元を見られている」と分析する専門家もいる。
 被害者家族の高齢化が進む拉致問題は一日も早い解決が求められ、ミサイル開発の進展による脅威も大きくなっており、首相は前提条件なしに日朝首脳会談を模索している。その首相が述べた「引き続き外国漁船による違法操業防止のため毅然(きぜん)として対応していく」は、今回のような対応を「引き続き」行うということなのかと疑いたくなる。

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病院再編「地域の実情踏まえ議論を」

2019/10/9 水曜日

 

 厚生労働省が再編統合の議論が必要と判断した全国の公立・公的病院名を公表し、本県では板柳中央病院、大鰐病院、浪岡病院、つがる西北五広域連合かなぎ病院、黒石病院など10病院が対象となった。国は強制力はないとしながらも、対象の病院の取り扱いを来年9月までに取りまとめるよう都道府県に求めており、地方から不満や反発が相次いでいる。
 医療機能の見直しは、地方自治体が頭を悩ませている難しい問題だ。個々の事情を考慮せず、全国一律の基準に当てはめて公表する国のやり方に、反発の声が上がるのは当然だろう。4日に開かれた地域医療に関する国と地方の協議の場で、厚労省は公表の仕方に関し「反省している」と話し、今月から各地を回って説明する方針を示したというが、協議は今後も難航することが予想される。
 病院名を公表するに当たって、厚労省が判断の基準としたのは「がんや救急医療などの診療実績が特に少ない」「がんや脳卒中など類似する治療を受けられ、近接している医療機関がある」という2項目。だが診療実績だけで、当該の病院が地域で果たしている役割を測ることはできないし、“近接”といってもアクセス手段の多寡、降雪など気象条件によって距離感はかなり違ってくる。国は病院名の公表は議論の活性化につなげる狙いがあり、機械的に統廃合を決めるものではないと釈明しているが、そうであればなおのこと、公表の仕方を考慮すべきだった。今回のようなやり方では実名の上がった病院がなくなるのでは、と住民に不安が広がるのは予想できたことだ。
 公表の背景には、75歳以上の高齢者が急増する2025年度を見据えた医療提供体制の見直しを急ぎ、医療費の膨張を抑えたいという国の思いがある。少子高齢化で今後、集中的な医療が必要な急性期病床は過剰になり、リハビリなどにつなげる回復期病床は不足するとして、機能転換が必要というのが国の考えだ。
 実際、人口減少や高齢化、医師不足などの課題に対応するためには、病院の再編統合も含め、地域医療をどう確保していくかという検討は必要だ。本県でも県や医療機関の関係者がより効率的な医療提供体制の構築、医療の質の向上を目指し、既に取り組みを進めている。弘前市で進む、国立病院機構弘前病院と市立病院を統合し、病院機能を集約する新中核病院の動きもこの一環だ。地域の実情をよく知る関係者間で、本県に合った医療提供体制を模索し続けてもらいたい。
 ただこうした検討は、単に効率を優先したと受け取られないように留意することが何よりも重要だろう。検討の結果、不便になっただけ、ということでは住民の側も受け入れ難い。医療機能の見直しは今ある資源でより良い医療を提供するため、結局は地域住民のためだ。住民目線で考え、理解を得る努力が必要だ。

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