社 説

 

敵基地攻撃能力「安易な答え求めず議論尽くせ」

2020/7/4 土曜日

 

 陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」配備計画撤回をきっかけに敵基地攻撃能力の保有論が再燃している。前向きな自民党は、検討チームを設置。先月末には初会合が開かれ、7月中にも政府への提言をまとめる構えを見せている。一方で連立政権を組む公明党は慎重姿勢を崩していない。連立政権内部でも温度差があり、この問題がどのような方向に進むか、先行きは見通せない。イージス・アショアの計画撤回によって、わが国の防衛構想に変更が生じたことは間違いなく、あらゆる可能性を論議することは必要だろう。だが、まるで計画撤回をてこにするかのように突如、敵基地攻撃能力の保有論が浮上してきたことに違和感を抱かずにいられない。敵基地攻撃能力は、日本の防衛戦略の基本姿勢である専守防衛との整合性をどのように図るかという大きな問題がある。初会合では、歴代の防衛相経験者からも拙速な議論を懸念する声が相次いだ。議論の進展によっては、日本の防衛戦略の根幹を変え得る要素をはらんでおり、その結果によっては、東アジア地域の安全保障問題にも影響を及ぼしかねない。慎重かつ透明性のある議論が担保されなければならない。
 敵基地攻撃能力の保有について、政府は専守防衛の原則に基づき慎重姿勢を堅持するが、憲法上は認められるとの立場を示している。他に手段がない場合に「自衛権の範囲」で許容されるという解釈であり、行使については、相手が武力攻撃に着手した時点で可能との立場だ。
 ただ、何を持って武力攻撃に着手したと見なすかは、判断の難しい問題だ。大規模な攻撃ならばともかく、弾道ミサイルやテロ攻撃などは発射、攻撃地点や兆候を把握しにくい性質のものであり、タイミングによっては、国際法違反の「先制攻撃」となる恐れがある。
 技術面のハードルも高い。その性格上、存在がおおっぴらにならない敵基地の正確な場所を特定するには、偵察衛星や通信傍受などによる情報収集が不可欠となる。装備面も見直しが必要となるだろう。すべてをあつらえるとなれば、膨大な予算が必要となる。
 そもそも今回の事態は、イージス・アショア計画の撤廃が発端のはずだ。同計画で賄うはずだった日本の防空態勢をどのように構築するか、まずはそれを議論の主体に置くべきだ。
 イージスシステムに限って言えば、陸上固定式のイージス・アショアよりも海上を自由に移動できるイージス艦の方が防衛能力として上と言える存在だ。
 敵基地攻撃能力を保有した場合に掛かる経費と、イージス艦の装備拡充を比較した場合にどちらが日本の求める国防に適した答えになるのかなど、コスト面だけでも検討すべきものは多い。安易な答えを求めず、徹底した議論が必要だ。

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東京100人超感染「迫る第2波前提に対応を」

2020/7/3 金曜日

 

 東京都は2日、新型コロナウイルスの新規感染者が107人確認されたと発表した。1日当たりで100人以上となったのは、5月2日(160人)以来、2カ月ぶり。会見で小池百合子知事は20~30代と「夜の街」関係者が多いことを踏まえ「要警戒の段階」とし、夜間の繁華街への外出自粛などを呼び掛けた。
 東京都の新規感染者は6月26日が54人、27日57人、28日60人、29日58人、30日54人、7月1日67人と50人以上で推移し、2日には3桁に達した。6月まで行ってきた都独自の「東京アラート」発動条件を満たす。しかし都は感染状況と医療提供体制についての新モニタリング指標をまとめ、7月1日以降は「東京アラート」を発動しないことにした。このため1週間連続で50人以上を確認しながらも、都庁とレインボーブリッジの赤色ライトアップや、休業要請はなかった。
 緊急事態宣言に続き、都道府県境をまたぐ移動自粛も解除され、1日は東京ディズニーランド・東京ディズニーシー、本県でも五所川原市にある文豪太宰治の生家・斜陽館などが営業を再開、弘前れんが倉庫美術館は11日に県外客も迎えてグランドオープンする。感染の第2波、第3波の不安を抱きながら経済活動が動き始めた中での感染急増に、他自治体からは危機感を示す声が相次いだ。
 オンラインの時事トップセミナー(時事通信社ロンドン支局主催)が1日に開かれた。講演した北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターの喜田宏・特別招聘(しょうへい)教授は第2波、第3波で病原性が高くなる可能性を指摘するとともに「感染症に国境はない。他の国で発生がある間はずっと警戒をしなければならない」と強調した。海外の動向を警戒しなければならないのだから、国内ならなおさらのこと。しかも病原性が高くなれば、影響はこれまでの比ではなくなる。
 菅義偉官房長官は2日、再度の緊急事態宣言発令を否定した。宣言に伴う営業自粛は、体力のない個人経営店舗や中小企業などの倒産・廃業を加速させる可能性がある。1日に来春卒業予定の高校生を対象にした求人が解禁されたが、県内の求人数は大きく減少しており、次代を担う若者の進路を阻んでいる。宣言の再発令に消極的になるのは理解できる。
 一方で政府は新型コロナ対策として関連法の一括改正を検討しているという。強制力がなく実効性が疑われる休業要請・指示について、従わない場合の罰則を設ける方針のようだ。改正案の行方は不透明だが、そこまでしなければ新型コロナの抑え込みが難しいということか。
 現時点で宣言再発令の動きがないとはいえ、「107人」は見過ごせる数字ではない。全ての国民は、より厳しい状況が差し迫っているとの認識を持ってほしい。その上で、感染しない、感染させないための慎重な行動を求める。

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地域医療「経営維持へ支援策が急務」

2020/7/2 木曜日

 

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い医療機関の経営が悪化している。感染患者の受け入れ病院はもとより、地域の小児科や産婦人科といった“大切な資源”をいかに支えるか。政府や自治体は地域医療を崩壊させないための支援策を早急に講じるべきだ。
 新型コロナの影響について県保険医協会が行ったアンケートによると、今年4月時点と昨年4月を比べ外来患者数が「減った」と回答したのは医科で86・9%、歯科で65・8%。保険診療収入が「減った」と回答したのは医科で83・6%、歯科で63・2%に上った。
 病院側からは収入減に対する行政の支援に加え、感染症患者が出た場合の休業支援を求める声もあった。同協会は「今後、第2波、第3波が到来すればさらなる受診抑制につながり、地域医療の根幹を崩壊させかねない」と訴える。
 日本医師会が都道府県医師会を通じて行った全国調査でも、外来患者数が減ったとの回答が全体の約8割を占めた。同会は「病院経営は非常に厳しい状況にある」との認識を示した。
 調査で明らかになったのは感染を恐れて受診を控える患者が増えているほか、病院側が感染症対策などに労力を割いて入院や手術を延期している実態だ。つまり患者減や手術減が「医療機関の収益減」に直結し、病院経営を逼迫(ひっぱく)させてるのだ。
 病院側も来院者の検温を行ったり、発熱者と一般患者の動線を完全に分けたりするなど対策を講じている。一般診療スペースとは別に発熱者専用の診察室を設ける病院もある。マスクや防護衣といった資材や医療資源には限りがあり、個人病院には重い負担である。
 政府は4月、初診からのオンライン診療を解禁し、各地で取り組みの動きが広がっている。また、第2次補正予算には医師や看護師らへの最大20万円の支給、都道府県の取り組み支援など医療提供体制の強化として約3兆円を盛り込んだものの、十分とはいえない。
 受診控えなどによって民間病院が“倒産”した場合、そのしわ寄せは地域の中核病院に来る。人手不足に陥った中核病院が救急や外来をストップすれば、地域医療の枠組みは崩壊する。
 あくまで可能性だが、何としても枠組みを維持し、住民や自治体に影響が及ぶことは避けるべきだ。地域医療に特化した支援の枠組みが必要ではないか。
 県保険医協会は県民に向けて「各種感染対策を講じており、必要な医療を安全に提供するよう努めている」とし、これまで通りの受診を呼び掛けている。
 受診する必要があるのに不安感から避けている県民がいるならば、各病院の取り組みを自ら確認し、受診してほしい。自身の健康だけでなく、身近な病院で受診できる安心感にもつながるはずだ。

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工芸品の販売促進「専門の人材育成が必要だ」

2020/7/1 水曜日

 

 伝統工芸品をいかに守っていくか―。全国的な課題であり、関係者たちが知恵を絞っている。本県でも、県内で初めて国重要無形文化財に指定された「津軽塗」などを後世に引き継ぐため、さまざまな取り組みが続けられている。
 その中で注目したい取り組みの一つが、県による「工芸品を売る人材」の育成だ。製造から販売までの全てを製造者が担うといったこれまでの産業構造を変え、製造と販売を分業化することを目指しているという。
 品質の高い工芸品を作っても売れなければ、産業として生き残るのは難しい。当たり前のことだが、各産地は今、このことを痛感している。職人をはじめ関係者も自らが置かれている厳しい状況を十分理解しているが、効果的な販売方法を見いだせずにいる。
 これまた当然のことだが、販路開拓と消費者ニーズの把握は一体で考えなければならない。県が目指す「工芸品を売る人材」の育成はこの点に着目したもので、取り組みの意義は誰もが理解できるはずだ。ただ、これまで本腰を入れて取り組んできたかと問われれば、そうとは言い切れないのではないか。
 しかし、落胆するべきではない。これから取り組めば、道は開けるはず。業界を挙げて具体策を打ち出したい。
 確かに、本県を含めて工芸品の産地は厳しい状況に置かれている。ただ、大都市圏の販売業者によると、「市場は確かにある」という。自分たちが作る工芸品の良さをきちんと発信し、消費者のニーズを詳細に把握すれば、販路の開拓は十分可能なようだ。
 実際、販路開拓のエリアを首都圏に絞り、10年近く取り組んだ結果、大きな成果を挙げている産地もあるという。やはり、戦略が要るということだろう。その戦略を練って実行に移す体制を構築する上で、製造と販売の分業は非常に有効なのではないか。
 県内の工芸品の販売促進に向け、県はこれまでも首都圏の販売業者らを招き、意見を交わしてきた。中には「販売する層や売り場によって商品をアレンジしてはどうか」「全てのアイテムを“編集”し直すべき」といった声もあった。
 自分たちが作る工芸品の良さを生かしつつ、消費者のニーズに応えていく。そのためには、製造者と「売る人材」の両方が必要なのである。
 工芸品の産地にとって後継者不足は大きな課題だが、少ないながらも伝統を引き継ぐため努力する若者たちはいる。彼らの思いに応えるためにも、「売る人材」の育成に早急に取り組まなければならない。作るノウハウを習得するには一定の時間がかかるが、売るノウハウも同様ではないだろうか。県内の工芸品の魅力をしっかり理解した、販売のエキスパートをぜひ育てたい。

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レジ袋有料化「着実なプラごみ排出抑制を」

2020/6/30 火曜日

 

 プラスチック製レジ袋の有料化が7月1日から義務付けられる。買い物客が持参したマイバッグを用いるなど必要以上にレジ袋を受け取らない機運を高めることでプラスチックごみの排出を減らし、生態系や環境への悪影響を抑えたり、地球温暖化の改善につなげたりすることが狙いだ。
 有料化自体は、2007年度の改正容器包装リサイクル法施行などを機に一部で既に導入済み。マイバッグを持参してスーパーへ向かうのが習慣化している人は多いだろう。ただ今回は物を売る全ての店が対象。買い物に煩わしさを感じることがあるかもしれないが、環境保護の一翼を担う気概を持ちながら買い物に臨みたい。
 有料化に関する環境省のキャンペーン「レジ袋チャレンジ」では、店頭でレジ袋をもらわない人の割合を、今年12月で3月時点(31%)の約2倍に当たる6割へ引き上げることを目標に掲げている。
 日本の1人当たりプラスチック容器包装廃棄量はアメリカに次いで多く、海洋に流出するプラごみが世界的に問題視される中で対応を迫られていた。
 国内で生じるプラごみ全体に占めるレジ袋の割合は2~3%程度。とはいえ、国民が身近なレジ袋の受け取りを1日1枚減らすだけでも、それなりの量の削減が期待できる。主要なプラごみである包装・容器類の削減に向けた第一歩ではあるが、レジ袋削減が単なる象徴行為にとどまらず、一定の意義があることは心に留めたい。
 一方で、プラごみ削減の動きに水を差しているのが、新型コロナウイルスの感染拡大だ。
 例えば、マイバッグを不衛生な状態で使っていると、新型コロナの感染リスクが高まるのではないかという懸念が指摘されている。確かにマイバッグは使用頻度が高く汚れやすい割には洗濯・洗浄する回数が少ないことに気付かされる。使用に当たっては、小まめに洗濯したりアルコールで清拭(せいしき)するといった衛生管理が必要だ。
 買い物時は、籠を持ったり紙幣・貨幣を受け渡したりといった行為も感染リスクをはらんでいる。エコバッグという特定の事物だけでなく、買い物に伴う行為全体を見詰め、感染リスクを減らしていく努力が求められよう。店員にはマイバッグに触れさせず、購入品は自らマイバッグに詰めるといった配慮も、新しい生活様式に求められる一つとは言えまいか。
 プラごみ削減で付言するならば、プラ製の使い捨て食器は新型コロナ流行下で、衛生管理の観点やテークアウト需要の伸びから排出量が増えていくと推察される。今後の動向と生活様式の変化を踏まえつつ、プラごみの発生抑制の在り方をいずれ考えなければならないだろう。

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