社 説

 

ふるさと納税「応援・支援のための活用を」

2021/7/31 土曜日

 

 総務省のまとめによると、ふるさと納税の2020年度寄付総額が6724億9000万円で前年度比37・9%増、寄付件数も3488万8000件で同49・5%増と、ともに過去最高になった。新型コロナウイルスの感染拡大で返礼品を自宅で楽しむ「巣ごもり需要」などが伸びにつながったとみられる。
 ふるさと納税は寄付額から2000円を引いた額が、現在住んでいる自治体の住民税などから控除される仕組み。さらに寄付先の自治体から農畜水産品や加工品など、その土地自慢の返礼品があるのも利用者にとって魅力。人口減少などを背景に自治体の体力は落ちており、返礼品目当ての利用者を獲得しようと返礼品競争が過熱。当初の趣旨にそぐわないケースが出てきたことから、19年6月、「寄付額の3割以下の地場産品」などの基準を守る自治体のみ参加できる制度に移行した。
 制度変更により19年度の寄付総額は18年度を4・9%下回った。同年度のトップはネット通販のギフト券を返礼品に加えて物議を醸した大阪府泉佐野市。新制度移行を控え、返礼品にギフト券を上乗せする駆け込みキャンペーンが影響した。以下、宮崎県都城市、北海道紋別市、同白糠町、同根室市と続いた。新制度後の20年度は都城市が135億2500万円でトップ。2位は紋別市、3位根室市などとなっており、トップ3を見ると、利用者が純粋にその地の産品に魅力を感じて寄付したことがうかがえる。
 本県でも弘前市が前年度の約2倍となる6億5000万円超、19年度に県内トップだった五所川原市も5億8000万円超と前年度より1億円以上伸ばした。弘前市はリンゴ生果やリンゴジュース、五所川原市はリンゴやコメ、メロンなどの人気が高いという。各自治体は地元企業が地場産品で開発した商品を返礼品に加えるなどしており、新型コロナで旅行が“制限”される中でも魅力を発信できる場になっている。五所川原市は今年度、財政部企画課をふるさと未来戦略課に変更し、ふるさと納税を含む施策に力を入れている。
 一方、大規模土石流で甚大な被害を受けた静岡県熱海市には、返礼品がないにもかかわらず2億円を超える寄付が集まっている。「一日も早い復興を願っております」など、心温まるメッセージも寄せられている。返礼品に目が向きがちだが「生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域に、これから応援したい地域へも力になれる制度」(総務省)とする意義の一つが形になった例だ。
 緊急事態宣言に伴い飲食店が休業などに追い込まれているが、同時に飲食店に納入する食材の生産者も厳しい状況に置かれている。コロナ禍でわが国の産業を衰退させないためには地産地消とともに、ふるさと納税も有効。制度本来の姿である応援・支援のために活用したい。

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コロナ感染拡大「五輪下の人流止められるか」

2021/7/30 金曜日

 

 全国の新型コロナウイルスの1日当たりの感染者が29日、初めて1万人を超え、2日連続で過去最多を更新した。感染拡大状況を踏まえ、政府は埼玉、千葉、神奈川の3県と大阪府に緊急事態宣言を発令する方針を固めた。
 現在、緊急事態宣言が発令中にある東京は既に4度目だ。緊急事態宣言が与えるインパクトが既に薄れていてもおかしくない。人々の自粛疲れが限界に近付いている一方、テレビでは人々の気分を高揚させる五輪のニュースが流れ続けている。
 29日は緊急事態宣言拡大の速報が
流れた直後、東京五輪での金メダル獲得の速報が流れた。コロナ禍の苦難を乗り越え、自身の限界に挑む選手たちの雄姿が映し出された。
 専門家は「危機感が社会全体で共有されていない」と指摘するが、五輪が開催されている日本国民の間に祭りムードが漂っていることは否めない。政府がどれほど危機感の共有を呼び掛けても、五輪関係者の新型コロナ感染が報じられても、五輪は開催されている。五輪が開催できるならば、と思う国民の気の緩みをどうして止められるだろう。
 感染者数の増加には、感染力が従来株の2倍程度とされるインド由来の変異株「デルタ株」の影響があると指摘されている。このデルタ株感染者は県内でも初確認された。首都圏との往来を控える傾向が続き、さまざまな感染対策がなされているとはいえ、首都圏で増え続けるウイルスが地方に波及するのは時間の問題だったと言える。
 五輪が開催されている期間、活発となった人流を止めるのは困難だろう。これまでにない危機感を共有させる強いメッセージを政府が打ち出すとするならば、五輪中止が最も強いインパクトを持つだろうが、今のところ政府にそのつもりはないように見える。
 海外の新聞では、新型コロナを模した日の丸の旗の下から各国選手が逃げ出す東京五輪の風刺画が掲載された。また新型コロナ感染で複数の選手が棄権を余儀なくされている状況から、選手全員が参加できない東京五輪を「アンフェア」と批判する選手も出ている。
 8月8日に五輪の閉会式を迎えるころ、日本には何が残っているのだろうか。輝かしい「レガシー(遺産)」や、コロナ禍でも開催できたことに対する満足感があればいい。過去にないレベルの感染拡大に伴う医療崩壊現場だけが残される事態は回避したいが、その可能性は決してゼロではない。
 五輪が終わった後は人の動きが大きくなる帰省や旅行のシーズンが到来する。どれほど移動を自粛するよう呼び掛けたとしても、何らかの形で本県を含む地方に感染拡大の波は及ぶだろう。緊急事態宣言拡大による感染抑止効果がどの程度功を奏するのか、今は注視するほかない。

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最低賃金「本県の議論に注目」

2021/7/29 木曜日

 

 中央最低賃金審議会の小委員会が2021年度の最低賃金の目安を前年度比28円(3・1%)引き上げ、全国平均で時給930円とすることを決めた。上げ幅は、02年に時給で示す現在の方式になってから過去最大。現在、各都道府県での審議が進められているが、仮に目安通りに引き上げられるとすれば最も低い県でも820円となり、初めて全都道府県で800円を超えることになる。
 労働者側からすれば歓迎だが、使用者側は不満だろう。小委員会での決定後すぐに日本商工会議所など中小企業3団体が連名でコメントを発表し、反対を表明している。昨年度は新型コロナウイルス禍であることを考慮して現状維持にとどまっており、今年度はワクチン接種こそ進んでいるものの、状況が劇的に改善しているとは言い難い。地域経済を活性化させる祭りやイベントはいまだに中止が多く、観光や外食もコロナ前の水準に戻れていないことを考えると、賃金の引き上げが相当な負担になる業種も多いことだろう。
 ただ厳しいのは労働者も同じだ。働く側に目を転じると、時短営業や休業要請の影響を受け、生活が厳しいという声をよく耳にする。そもそも最低賃金というからには、最低限の生活を営める金額であるべきだが、現状の額でそれが可能だろうか。長く担い手不足が叫ばれる中、優秀な人材を確保するという意味でも一定の賃金は重要だと思う。
 もちろん、コロナ禍での大幅な賃上げは、負担に耐え切れない事業者による廃業や人員整理につながらないかという懸念も残る。雇用の場が縮小したり、失われたりするのは働く側にとっても不利益。少なくともコロナ禍の苦境については事業継続を支援する取り組みが求められる。
 小委員会は労使の主張が対立して激論となり、中立の立場の公益委員が「28円の引き上げ」を提案したものの、慣例となっている全会一致ではなく、異例の採決となったようだ。労使の考えの隔たりが大きいのは過去の事例からも分かるが、今回気になるのは、大幅引き上げが菅義偉首相の意向に配慮したとされていること。政府の方針ありきと思われては不信感を持たれてしまう。決定までのプロセスは現状のままで適切なのか、再考の余地があるはずだ。
 中央審議会の目安を踏まえ各地方審議会が協議を進めるが、本県では既に審議会への諮問が行われ、議論が始まっている。答申は8月26日の予定で、例年通りなら10月ごろ新しい最低賃金が適用になる見通しだ。
 全国一律とはいうが、もともとの最低賃金が低い地域ほど、28円引き上げの影響は大きい。本県では目安がそのまま適用されれば、全国最低よりも1円高い821円となるが、厳しい議論が想定される。労使の議論の行方を注視しつつ、国には地域経済を元気づけ、企業の事業継続を支援する取り組みを強く求めたい。

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“縄文”世界遺産決定「価値を知り、人類共通の宝に」

2021/7/28 水曜日

 

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)は、青森市の三内丸山遺跡や弘前市の大森勝山遺跡など17遺跡で構成する「北海道・北東北の縄文遺跡群」について、世界文化遺産への登録を決めた。世界の宝として認められた「縄文」の価値をどう発信していくか。地元に暮らすわれわれは大きな使命が課せられたことになる。
 県が縄文遺跡で世界文化遺産を目指す方針を示したのは2005年。07年に4道県共同で取り組むことで合意し、09年には世界遺産暫定リスト入りした。そこから6度の推薦見送りもあったが、18年に国の文化審議会がユネスコへの推薦候補に選定。足かけ16年の長い道のりを経て登録を勝ち取った。
 1万年以上続いた縄文時代は「草創期」「早期」「前期」「中期」「後期」「晩期」の6期に分けられる。北海道南部から東北地方北部にまたがる17遺跡は、竪穴住居跡などの集落跡や環状列石(ストーンサークル)などで構成され、すべての時期を網羅。縄文人の生活、複雑な精神文化を知ることができる。
 世界に認められた「縄文」の価値とは何なのか。それを考える上で、縄文時代の祖先がどのように暮らしていたのかを知らなければならない。日本独自の生活様式や考え方の根底には縄文文化があると言われる。1万年もの長きにわたって平和な時代を築いた祖先に思いを巡らせることは、自身のルーツを探ることにもなる。そこに現代社会が抱える課題を解決するヒントもあるはずだ。
 移動を繰り返して狩猟採集する生活を送っていたわれわれの祖先は暮らしの場を定めて「ムラ」をつくった。竪穴式住居で家族が炉を囲み、狩猟採集や住居造りでは「ムラ」の構成員が協力。死者は共同墓に埋葬して弔う。現在につながる日本人の生活様式、精神性のルーツだろう。
 しかし、それが今は失われつつある。東京一極集中で地方の人口減少に歯止めがかからず、家族や地域のつながりも希薄化。今後もコミュニティーを維持できる地域づくり、まちづくりを考えていく上で、縄文時代の精神文化を知ることは大きな意味がある。
 縄文人が狩猟採集を基盤にしながら定住を発展、成熟させることができたのは自然との共生によるものだろう。食料は必要な分だけ採り、住居造りに欠かせない木を大切に守る。こうした「取るに足る」精神こそが、行き詰まりが見えつつある現代社会に必要なのではないか。
 地球温暖化による異常気象で、世界中で大規模災害が頻発。各国が気候変動対策に本腰を入れ始め、SDGs(持続可能な開発目標)の推進も叫ばれる。自然環境を生かして平和で豊かな暮らし、高度な文化を築いた縄文人から学ぶべきことは多い。その歴史と文化、精神性を人類共通の財産として世界に発信し、後世に伝えていかなければならない。

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エネルギー計画案「実現性への道筋を示せ」

2021/7/27 火曜日

 

 経済産業省が国のエネルギー政策の方向性を定める「エネルギー基本計画」の改定案を公表した。2030年における再生可能エネルギー(再エネ)の電源構成比率を19年度実績(約18%)の2倍程度(36~38%)に引き上げたのが特徴。原発については現行計画の比率(20~22%)を維持する一方、焦点となっていた新増設や建て替え方針の明記は見送った。ただ、再エネ、原発とも目標は実現性に乏しいと指摘されている。各電源の抱える課題は何か。目標に向かって道筋をどう描くのか。改めて説明が必要だ。
 原発の発電量は震災前、国内全体の約3割を占めていた。それが福島の事故を経て一時ゼロまで低下。再稼働の進展に伴い18年度には6%まで戻ったものの、再稼働が進まず現行計画(20~22%)すら見通せないのが実情だ。
 改定案では原発を現行計画通りに「重要なベースロード電源」とし、「必要な規模を持続的に活用する」とした。プルサーマルを含む核燃料サイクルも推進するが、再稼働が進んでいない現状では、プルサーマル計画の「30年度までに少なくとも12基での実施」との目標も厳しさを増している。
 それでも改定案では新増設や建て替え方針の明記を見送った。自民党内からは「そのまま了承できない。党内で議論する」との声も上がる。原子力関連施設を受け入れてきた自治体からも「新増設、建て替えは明確にすべきだと申し上げたが、書かれてない」(杉本達治福井県知事)と不満も漏れる。
 目標値や政策の裏付けに欠く改定案。背景には次期衆院選を控え、原発への不信が根強い世論を意識した結果とみる向きもある。
 現行計画の2倍に急拡大することになった再エネも課題は多い。政府が再エネ導入拡大の切り札と期待する洋上風力発電は本格導入が30年度以降と見込まれるため、改定案は即効性の高い太陽光発電を軸に普及を進めるとした。
 これについては、国土の7割を山地が占める日本では「大規模太陽光の適地は少なくなりつつある」(経産省幹部)。荒廃農地への太陽光パネル設置や水力発電設備の改修といった方策も検討されているが、専門家は「『積み上げ』ではなく削減目標から逆算して作った計画案なので実現はかなり難しい」と分析する。
 ほかにもバックアップ電源の整備や送電網の整備、環境への配慮といった課題がある。急速に普及した太陽光パネルが一斉に寿命を迎え、放置や不法投棄といった問題を招きかねない、との懸念もある。
 政策の指針となる次期基本計画は有識者や国民からの意見を踏まえ、9月中にも閣議決定する。再エネ拡大の具体策はもちろん、震災後あいまいにされてきた原発政策の方向性が改めて問われている。

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