社 説

 

新型コロナ感染症「感染をおびえず言える社会に」

2020/7/24 金曜日

 

 新型コロナウイルスの感染者が国内で唯一確認されていない岩手県では、達増拓也知事が「(陽性)第1号になっても県はその人を責めない」と記者会見で述べた。誰もが感染する可能性がある中、岩手県民の多くが「第1号」になることを恐れているのが推察される。
 仮に新型コロナ感染が疑われる体調不良を感じても、「第1号」にはなりたくない―との思いで相談や検査が遅れてしまうのでは逆に感染拡大につながりかねず、本末転倒となる。それを避けるためにも岩手県は、新型コロナ感染者が確認されても「全力でケアする」とのメッセージを発信している。
 一方、本県でこれまで確認された新型コロナ感染者数は31人(22日現在)。報道する立場としても懸念するのは、感染者が周囲から「冷ややかな目線」を向けられるのではないかという点だ。青森市で10日に新型コロナ感染が判明した20代派遣型風俗業女性との濃厚接触者のうち本人確認が取れていない利用客12人も、発症の不安を抱えながら言い出しにくい状況にあるのではと推察される。
 新型コロナの感染経路は他人との接触が一つのキーワードになる。他人に知られたくないプライベートな部分が含まれることがあり、報告に勇気がいる場合もあるだろう。報じる側としてもプライバシーに配慮し、慎重に記事化する姿勢が求められている。
 一方でニュースを受け取る側に対し、感染者を冷ややかに見ることがないよう呼び掛ける必要性もあるだろう。「こんな時期に会食するなんて」「こんな時期に海外に行くなんて」「こんな時期に首都圏に行くなんて」―。新型コロナ報道がなされるたび、感染者を責める言葉がインターネット交流サイト(SNS)を飛び交う。新型コロナ感染が報じられ、療養する有名人に対してもバッシングする声が見受けられる。
 国内の現状は既に、新型コロナで打撃を受けた観光産業を盛り上げるため国が旅行を推奨する「Go To トラベル」キャンペーン中である。地方からは、このキャンペーンに対する疑問の声も少なからず上がっているが、国は「経済を盛り上げるため旅行してほしい」とのスタンスであり、県境をまたぐ人の往来は今後さらに活発化するだろう。
 新型コロナは誰でも感染する可能性がある。そして無自覚のまま、誰かに感染させる可能性もまた持っている。感染を不用意にとがめる気持ちを持つ人ほど、自分が感染した場合に言い出せなくなるかもしれない。それは本人も周囲にとっても不幸な状況だ。
 新型コロナ感染は人ごとではなく、「あすはわが身」と自覚したい。感染した人を責めるのではなく、感染者が社会におびえず相談・検査を受けられる体制を構築する必要がある。

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特殊詐欺の頻発「卑劣な犯行根絶へ意識共有を」

2020/7/23 木曜日

 

 特殊詐欺の被害が後を絶たない。弘前警察署管内では今年に入って深刻化しており、上半期の認知件数、被害額が過去5年で最も多い。しかも、ともに県内全体の約半分を占める。まさに非常事態というべき状況にあり、啓発活動のさらなる強化などが求められている。
 同署によると、今年上半期に県内で認知された被害件数は12件、被害金額は約1690万円に上る。このうち、同署管内の件数は6件、金額は約850万円。とりわけ、金額は前年同期と比べて730万円余りも増加。被害の内訳を見ると、最も多いのが架空請求詐欺で3件。次いで預貯金詐欺が2件、ギャンブル詐欺が1件となった。
 最近目立つのは電子マネーで支払いを求める手口で、同署管内以外でも見られる。コンビニエンスストアなどで販売しているプリペイドカードを購入させ、番号を聞き出して利用権をだまし取るもので、極めて悪質だ。
 特殊詐欺の手口といえば、ひところは「オレオレ詐欺」が代表的だったが、その後に新たな手口が次々と現れ、巧妙化・多様化している。警察など関係機関が手口を分析し、対策を周知すれば、さらに新たな手口が現れるといったいたちごっこが続いている。
 同署管内では6月、警察官をかたってキャッシュカードを預かるように見せ掛け、だまし取る事件が発生した。その手口は、窃盗犯を捕まえたら被害者のキャッシュカードが出てきたので暗証番号を変えるべき―と電話で促し、番号を聞き出した上、被害者のところに赴いてカードの端をはさみで切って廃棄するように見せ掛けて預かる―といったもの。カードは機能に支障がないように切られていた。
 被害を未然に防ぐには、さまざまな手口を知っておくことが必要で、関係機関もその重要性を訴えている。同署も「暗証番号を教えて」「キャッシュカードを預かる」といった電話はすべて詐欺であり、警察官が暗証番号を聞くことはない―と注意を呼び掛けている。
 大半の人は「特殊詐欺」という言葉を知っているはずだが、被害はなかなかなくならない。被害が頻発する状況は同署管内に限らず、他署管内でも発生する恐れはあろう。「自分は大丈夫だ」といった意識を持たず、被害を防止するためには何が必要か、いま一度各人が考え直し、気を引き締めたい。
 警察など関係機関のさらなる連携強化も求められている。金融機関の窓口担当者が、顧客の言動から詐欺被害の危険性を察知するケースも多数見られる。やはり、それぞれの立場で役割を分担して日ごろから警戒することが重要なのではないか。他人の大切な財産を奪う卑劣な犯行を根絶するといった意識を社会全体で共有したい。

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京アニ放火事件1年「いまだ全容解明には程遠く」

2020/7/22 水曜日

 

 平成以降で最悪となる36人の犠牲者を出した京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)の放火殺人事件発生から1年がたった。
 殺人容疑などで5月に京都府警に逮捕された青葉真司容疑者(42)=鑑定留置中=は、事件当時の記憶が薄れつつあるといい、「京アニに恨みがあった」とする動機には不可解さも残る。いまだ真相究明には程遠い状況の中、遺族らの心の傷は癒えないままだ。多くの犠牲者を出した放火殺人事件はなぜ起きたのか。関係者らが抱えるその疑問に少しでも応えられるよう、事件の全容解明が進むことを願いたい。
 事件は昨年7月18日午前10時半ごろ発生。アニメーターら36人が死亡したほか、33人が重軽傷を負った。ガソリンをまいて放火したとされる青葉容疑者も全身にやけどを負い、約10カ月間入院した後、今年5月に逮捕された。
 捜査関係者によると、青葉容疑者は逮捕時、捜査員から犠牲者全員の名前や死因などを読み上げられても取り乱した様子を見せなかった。「ガソリンを使えば多くの人を殺害できると思い実行した」などと計画的な大量殺人だったことをうかがわせる供述をし、犠牲者らへの謝罪は口にしなかったという。捜査員とのやりとりで思い出す場面もあるなど、事件の記憶が薄れている傾向があるという。
 最大の焦点となる動機については「小説を盗まれたから火を付けた」との趣旨の供述を繰り返しており、同社のテレビアニメ「ツルネ―風舞高校弓道部―」の一部の場面について「自分の小説を盗用された」としているという。過去に京アニの小説コンテストに複数の作品を応募したが、いずれも形式的な不備などを理由に落選していたという青葉容疑者。京アニ側は「盗作」を全面否定しており、京都府警は一方的な言い掛かりとみているが、これが動機につながったのだろうか。
 青葉容疑者は9月10日まで刑事責任能力を調べるための鑑定留置が続く。弁護側は寝たきり状態にある容疑者の供述の任意性などについて捜査当局と対決姿勢を強めており、今後起訴されても、初公判までには時間がかかりそうな状況だ。
 突然の惨事で肉親を失った遺族の心の傷は今も癒えることはない。当時41歳の娘を失った父親は「思い浮かぶのはまだつらいことばかり」と吐露し「『どんな刑罰を』という気持ちはありません。自分が悪いことをしたと認識してもらわないと意味がない」と語っている。
 犠牲者はなぜ理不尽に命を奪われなければならなかったのか。また、将来のアニメ界を背負うべく励んでいた若者らの夢と日常を奪った罪の重さに容疑者はどう向き合うのか。多くの人の無念さを少しでもはらせるよう、事件の全容解明に努めてもらいたい。

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コロナ特措法改正「実効性高める意識と工夫を」

2020/7/21 火曜日

 

 菅義偉官房長官は19日のテレビ番組で、新型コロナウイルスの感染拡大抑止策として、ホストクラブやキャバクラといった店舗へ警察が風営法に基づき立ち入り検査を行い、その機会を捉えて感染防止ガイドラインの順守などを促していく方針を明らかにした。
 接待を伴う飲食店では、感染者が多発している。感染防止対策が適切に講じられているか、こうした業界ににらみが利く警察が介入し実態を把握することで感染を封じ込めにつなげたい考えだ。一定の効果は期待できる。
 現行の新型インフルエンザ対策特別措置法は、都道府県知事が休業を要請できても強制力や罰則はない。事実、緊急事態宣言期間中も休業の足並みがそろわない事例が問題視され、要請に従った場合の補償規定もなかったことでその実効性の低さが指摘された。
 宣言解除後も東京都を中心に新規感染者が再び増加する中、全国知事会が同日、罰則規定など都道府県知事の権限強化を求める提言をまとめたのは、「喫緊の課題」と強調する通り当然と言える。政府も既に、休業や検疫の要請拒否に対する罰則の強化などを内容とする特措法などの改正を検討していると聞く。
 警察の立ち入り検査は、特措法改正より迅速に実施できる点も現実的な対応と言える。劇場など集団感染が発生したり発生が想定されたりする業種・店舗についても、所管官庁が関連法令に基づき同様の手法で対応を促すことができればいい。
 感染多発地はいわゆる「夜の街」に限らない。対応が後手に回らないよう機敏な対応が求められる。対策の実効性を高める意識と工夫も必要だ。
 菅長官は、特措法の改正では将来的に、休業要請に伴う補償制度を導入する必要性にも言及した。同制度は要請の強制力や罰則の有効性を担保する存在とも言える。菅長官は同制度について「要請で休業したら当然そうだ」と明言したが、当初補償に慎重だった政府が、どこで姿勢を変えたのだろう。終わりが見えない感染拡大への焦りだろうか。休業補償を中長期的課題と捉えているようだが、創設するならば早い方がいい。
 休業補償の制度化自体は全国知事会も歓迎だが、財源の問題が不可避だ。財政力の大小で、要請の可否や補償額をはじめ自治体の対応に違いや格差を生じさせるべきではない。国主導による統一的な対応が必要ではないか。
 全国知事会は政府への提言に、国の旅行需要喚起策「Go To トラベル」キャンペーンの対象範囲を感染状況に応じて柔軟に見直すこと、在日米軍基地での感染拡大防止なども盛り込んでいる。日々変化する感染状況にスピードと実効性を持って対応しなければ、後手のスパイラルから脱却するのは難しい。

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警察官コロナ感染「対岸の火事と思わず行動を」

2020/7/18 土曜日

 

 青森市が16日に発表した新型コロナウイルス感染症の新たな感染者は、県警本部に勤務する20代男性警察官だったことが明らかになった。10日に感染が判明した20代の派遣型風俗業女性の利用客であり、市保健所が14日に連絡を取った際には「該当者(利用客)ではない」と虚偽の返答までしていた。その場逃れのうその結果、濃厚接触者が26人にまで達し、職場と訪問先に多大な負担を強いたことに猛省を促したい。
 報道によると、男性は災害時の救助活動や要人警護などに当たる警備部に所属。8日に女性と接触した後の9、10日は県警本部で勤務。休暇を経て14、15日には十和田警察署に泊まりがけで出張し、初日には十和田市の居酒屋とスナックで飲食していた。しかし、出張前の12日から症状が出始め、帰宅した15日夜には37度台の発熱、全身倦怠(けんたい)感などを訴え、医療機関での抗原検査の結果、陽性と判明した。現在、市内の感染症指定医療機関に入院している。濃厚接触者に対しては、今後行政側がPCR検査などを進めていく方針だ。
 新型コロナ感染拡大防止のためマスク着用、「3密回避」が推奨されながらも全国的に感染者が増え続け、第2波の懸念もある状況だ。そうした中で違法ではないとはいえ、濃厚接触が不可避となる風俗を利用することは慎重を期すべきだったと思われる。しかも女性の利用客であったことを申し出ず、うそまでついていたことは非難を免れないだろう。申し出なかった理由も「(女性との)接触の経緯から、都合が悪くて言い出せなかった」というものだ。
 警察官であるという立場上、ばつが悪かった、というのは心情として理解できても理由にはならない。どのような身分や職業であれ、周囲への影響を考慮すれば、きちんと申告しなければならない。
 ただ、男性はまだ20代と若く、将来もある身。感染が疑われる状態であったにもかかわらず出張先に出向き、飲食店に出入りした自らの行動や、問い合わせに対して虚偽の回答をするという軽率な判断がどのような結果をもたらしたかを考え、猛省した上で、今後の一社会人としての生活を送ってほしい。
 女性と接触した利用客25人中、いまだ多くと連絡が取れていない状況にある。経緯上、「都合が悪い」という思いもあるのだろうが、新型コロナが広がるのではないかと県民が大きな不安を抱えている状況にある。小野寺晃彦青森市長は「自らの体、そして家族を守るために連絡してほしい」と呼び掛けている。まだ連絡を取っていない利用客はこの声に応じてもらいたい。県民も「対岸の火事」「自分だけは大丈夫」とは思わず、日常生活においていつ、どこに感染リスクがあるのかを常に考え、感染拡大防止に努めてもらいたい。

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