社 説

 

出来島海岸で清掃活動「活動の輪広げ海洋ごみ一掃を」

2021/6/10 木曜日

 

 四方を海洋に囲まれた、わが国の海岸には膨大な量の海洋ごみが流れ着く。国内だけではなく、周辺諸国のものも含まれ、プラスチックごみを中心に海洋生態系への影響が懸念されている。根本的な対策がない中で、つがる市に住む「さやか」さん(37)=本名非公表=の取り組みが注目を集めている。同市木造地区の出来島海岸に散らばる膨大なごみを、この1カ月以上にわたって拾い続け、その様子を写した写真や動画を自らのインスタグラムに投稿しているのだ。さやかさんの思いに共鳴した人たちが仲間に加わるなど、活動の輪が徐々に広がっているという。ごみの発生源や国・個人のモラルを正すことは困難さもあるが、思いが県内や全国に伝わり、ごみが一掃されることを願ってやまない。
 報道によると、さやかさんは「家族らとの思いが詰まった海岸が、ごみで汚れていてつらい」と4月末に1人で活動を開始した。海岸の砂浜には、ハングルなど海外の文字が書かれたプラスチックの籠などが転がり、砂の中にはプラスチック片やガラスが層を成していたという。こうした状況を多くの人に知ってもらおうと始めたインスタを通じ、活動に賛同する個人や事業所が増え、その輪が広がっていった。熱意は行政にも伝わり、市内の最終処分場にごみが捨てられることになった。
 たった1人で始めた活動が多くの人の気持ちを動かし、行動に至らせたという意味では、さやかさんの取り組みは高く評価されるべきだろう。しかし、清掃活動の一方で依然としてごみを海岸に捨てていく人がいるといい、「いたちごっこ」のような状況が続けば徒労感が増すばかりだ。行政がプラスチックごみを処分、埋め立てるのはいいが、再生されることもなく埋設するしかない現状だけに、可能な限り早期に打開策を見つけねばなるまい。
 まず自分たちが、海洋ごみを出さない、という意識付けが不可欠だ。こうした意味では、青森海上保安部が鯵ケ沢町の海岸で、毎年地元児童を対象に行っている海洋環境保全学習が好例だろう。今年は5月末、町内2校から児童60人が参加し、海岸の漂着ごみを拾い集めた。児童たちはあまりに多くのごみ、しかも国内だけではない、海外のごみが流れ着く現状に驚きの表情を見せた。おそらく、自らはごみを出さない、海岸をもっときれいにしたい-という意識付けが図られたことだろう。これをきっかけに自分の家族や周囲にも、そうした意識付けを呼び掛けることを期待したい。
 海洋ごみの発生量は世界中で年間約800万トンというデータもあり、魚が生息しにくい環境となっているのは由々しき事態だ。一個人の努力と取り組みは、ささやかな改善にしかならないが、清掃活動の輪が広がり続けることによって、大きな成果が表れることが望まれる。

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「生理の貧困」問題「問題と向き合える社会に」

2021/6/9 水曜日

 

 近年、社会問題として「生理の貧困」がクローズアップされている。生理用品は一般的に、女性が更年期に入るまで定期的に購入しなければならないものだ。「たかが生理用品」とされがちだが、生活必需品だからこそ、切り詰めざるを得ない状況に陥る女性がいることを認識しなければならない。
 英スコットランド議会は昨年、生理用品の無料提供を義務付ける世界初の法案を可決した。ニュージーランドも今年に入り、生理用品を購入できず授業を休む生徒がいるとし、貧困対策の一環として学校での無料配布を決定した。フランスでもコロナ禍による収入減に苦しむ学生がいるとして、学生への無料配布を決めた。
 女性は男性より非正規雇用率が高く、貧困などの経済的苦境に陥る可能性が高いとされる。国内では新型コロナウイルスによる経済的打撃が懸念される中、女性の自殺率増加も報じられた。経済的に苦しむ女性の増加と無縁ではないはずだ。
 「貧困ならばスマートフォンを解約して生理用品を購入すればいい」といった意見もあるだろうが、スマートフォンの利用をなんとか維持するため生理用品の購入を我慢する層もいるはずだ。「生理の貧困」については、生理用品を確保できず布などの代替品を着けるケースがあるほか、生理用品を頻繁に取り換えることを我慢した結果、健康上のリスクを生じさせる場合もあると指摘されている。
 一方で、「生理の問題について話し合おう」と真正面から声を上げにくいという課題がある。「生理の貧困」は、この「問題として表に出すことの恥ずかしさ」と無縁ではない。「購入したい」と誰かに助けを求めること自体にハードルがあるからこそ、積極的な支援が求められているのではないだろうか。
 例えば家庭内で父親や祖父母世代と暮らしている少女の場合、初潮がきても「生理用品を買ってほしい」と言い出せないケースがある。小遣いで毎月買うのは負担であり、一人で買うのはためらう場合もあるだろう。家庭内でネグレクト的な対応を受けている少女がいた場合、同様に生理用品の購入までたどり着けないいことも想定される。
 生理は恥ずかしいものでも、女性たちの「秘密」でもない。成長とともに人の体に起きる出来事であり、さらに男性であれば無関心であっていいものでない。自身やパートナーの体を大切にするために学んでおくべきことは多い。生理に関する「理解の貧困」もまた問題なのだ。
 五所川原市では生理用品を小・中学校に配備し、支援が必要な児童生徒に無償提供する方針を示した。見えにくいからこそ真正面から向き合うべきで問題であり、同様の取り組みが今後県内で広がることを期待したい。

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総務省接待問題「ルールの軽視なかったか」

2021/6/8 火曜日

 

 総務省幹部らへの接待問題で、行政に与えた影響の有無を調査していた第三者による検証委員会が報告書を公表。放送関連会社「東北新社」の外国資本の議決権比率が放送法で定められた「20%未満」に違反していたことを当時の担当課長らが認識しながら事業者認定を取り消さなかった可能性が高く、「行政がゆがめられたとの指摘は免れない」などと同省の対応を厳しく批判した。
 検証委は、2017年8月に総務省側に違反の事実を報告したとする東北新社側の主張を裏付ける証拠は確認できなかったとしながらも、同社から違反に関する相談があった可能性が高いと認定。同社が衛星放送事業を子会社に承継させ違反を解消することを追認したとみている。
 利害関係者が費用を負担する接待を禁じるなどした国家公務員倫理規程に抵触する会食で、外資規制違反に関する報告や対応の相談が行われた証拠も確認されなかったとされるが、検証委は調査に限界があったことを認めた。ただ、吉野弦太座長は会食が「なれ合い意識の醸成につながった可能性」に言及。検証委はNTTによる接待の行政への影響などを含め調査を続けるといい、問題の広がりと根深さがうかがわれる。
 総務省が職員約170人を対象に実施した調査では、同規程に違反する東北新社やNTTなどからの接待が2015年以降で延べ78件確認され、4日に32人が処分された。東北新社に勤める菅義偉首相の長男らによる接待に関連した2月の処分(11人)、NTTからの接待に関連した3月の処分(2人)を受け対象を広げ調査した結果で、行政がこうした会食・接待の上に成り立っているのかと驚く。3回を通じて処分を受けた職員は計37人に上った。
 報告書では、外資規制違反見逃しの原因について、申請者の不備と総務省の審査の在り方を挙げ、担当課のチェック体制や分担も不明確-と指摘した。違反はフジ・メディア・ホールディングスでもあったことが既に明らかになっている。総務省は近く、審査体制の強化に向けた有識者検討会を開くという。
 問われるべきは、審査の在り方にとどまらない。いかに職員の意識を変え、官民のなれ合いを断ち切るかである。検証委のヒアリングでは対象者の多くが「覚えていない」と繰り返したという。守るべきは何かを履き違えてはいないか。
 倫理規程では割り勘の場合でも飲食費が1人1万円を超える場合は事前の届け出が必要としている。同省は再発防止策として、1万円以下でも事前の届け出を原則義務化するなどの独自ルールを設けた。しかし、いくらルールを整えても職員が守らなければ意味がない。
 ルール軽視の風潮は、組織として続いてきたとの指摘もある。職員、組織におごりはなかったか改めて顧みる必要があろう。

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移住者の就職相談「具体的かつ細かな情報提供を」

2021/6/5 土曜日

 

 首都圏から本県への移住を検討する人が、就職について行政の窓口に相談するケースが増えている。もともと、仕事探しは移住を実現する上で最も重要な課題の一つ。人口減少に悩み、移住促進を施策に掲げる本県は丁寧に対応すべきだ。
 首都圏における本県の移住相談窓口「青森暮らしサポートセンター」(東京都)が2020年度に受け付けた就職相談(イベントでの相談対応を含む)は、延べ1865件で、設置された14年以降で最多だった。
 本県への移住を検討する人が増えることは歓迎すべきことだ。しかし、その背景には新型コロナウイルスの感染拡大があるらしく、深刻な面もうかがえる。
 県や市町村などで構成され、同センターを開設する「あおもり移住・交流推進協議会」の担当者は、就職相談の増加について「新型コロナで仕事に深刻な影響が出て移住を検討する人や、帰省が難しい中で移住への思いを強くした人が増えた」と分析した。
 首都圏、とりわけ東京都は全国で最も感染者が多く、状況改善の兆しは見えない。経済への影響は甚大で、窮地に追い込まれる事業所は多数ある。その中で、勤め続けることが難しくなり、古里や地方への移住を考える人もいるはずだ。
 移住といえば、リタイアした人が第二の人生を送る場所を求めて行うこと-という印象が強い時期もあったが、現在はまったく異なる。その変化は新型コロナの感染拡大によって顕著になっているように思える。
 勤め先が感染拡大の影響を受けて移住を検討する人にとっては、移住できるか否かは「死活問題」である。本県としても、このような人たちを受け入れたいところだが、県内もまた新型コロナの影響で経済は厳しく、移住検討者の希望に合った職場があるかどうか分からない。
 ただ、本県の魅力を発信して呼び込む-といった取り組みだけでは足りないことは明らかだ。これからは、移住先での就職を支援する施策がますます求められるのではないか。自治体によってはホームページに地元企業の詳細な情報を掲載しているところもあり、同様な取り組みは必要だろう。
 移住促進をめぐっては移住者への支援とともに、移住者を受け入れる企業への支援の必要性を指摘する声が上がっていた。新型コロナにより企業が疲弊する中で移住を考え、移住先での就職を相談する人が増える現状を踏まえれば、移住者を受け入れる企業の支援は一層重要になる。
 コロナ下では「移住者が集まる場所」は「安心して働き、生活できる場所」と言うことができるかもしれない。中長期的には移住促進と産業振興・育成をより密接に関連させて施策を展開すべきと考えるが、まずは就職に関する具体的かつ細かな情報の提供に努めたい。

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菅原前経産相議員辞職「国民の不信強まる愚行」

2021/6/4 金曜日

 

 選挙区内の有権者に現金を渡した公職選挙法違反の疑いで東京地検特捜部の捜査を受けている菅原一秀前経済産業相の議員辞職が、3日の衆院本会議で許可された。どれだけ多くの国民が「またか」とため息をついたことだろう。またしても「政治とカネ」の問題で国会議員が醜態をさらした。国民の政治に対する不信は強まるばかりだ。
 菅原氏が有権者に現金を提供した疑いはずいぶん前から浮上していた。特捜部が捜査を行い、昨年6月には菅原氏が秘書を通じて選挙区内の延べ27人に「枕花」や「香典」の名目で計約30万円相当を寄付したと認定している。だが、本人の謝罪などが考慮され、この時は起訴猶予処分にとどまった。この処分を「甘い」と感じた国民が相当数あったことは想像に難くない。その後、国民の中からくじで選ばれた検察審査員による検察審査会が今年2月、この件を起訴相当と議決。特捜部による再捜査が行われ、公選法違反の罪で略式起訴する方針が固まる中、菅原氏は1日、政治活動の一部の公選法抵触を認め、辞職願を提出した。
 菅原氏はこれまで、疑惑に関する十分な説明を行ってきたとは到底言えない。「議員を辞めるから」で済む問題ではなく、有権者、国民に対し、説明責任を果たす義務がある。これは国会においてもしかりだ。辞職をただ単に認めただけで問題を終わらせるべきではない。政治倫理審査会などの場でこの問題をしっかりと論じ、追及しなければならない。
 菅原氏は辞職願とともに所属する自民党に離党届を提出、すでに受理されているが、その自民党では最近、「政治とカネ」をめぐり離党者が相次いでいる。吉川貴盛元農林水産相が収賄罪で在宅起訴され、2019年の参院選広島選挙区の買収事件でも河井案里元参院議員の有罪が確定、当選が無効になり、いずれも離党に追い込まれている。
 同党の二階俊博幹事長は、1日の会見で「政治とカネ」の問題について「ずいぶんきれいになってきている。このことは評価していただいてしかるべきだ」「カネを使って選挙をしたい人は誰もいない。少なくとも自民党の中にはいない」と発言した。
 吉川、河井両氏の件があり、すでに菅原氏も議員辞職する方向の中でのこの発言には、あぜんとするほかない。河井氏の買収事件では、自民党本部からの支出1億5000万円について、どのような経緯をたどって、これだけ巨額の費用が河井氏らの手に渡ったのか、いまだ不透明な部分が数多くある。
 菅原氏や河井氏の件を見るかぎり、自民党のどこがどう「ずいぶんきれいになってきている」のかは、少なくとも国民には全くと言っていいほど見えてこない。政治家個人だけでなく自民党も、これらの問題について国民に説明する責任がある。

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