社 説

 

GoTo「不安な政府の前のめり」

2020/7/31 金曜日

 

 新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた布マスク配布事業で、政府が9月までに、介護施設や障害者施設などへ約8000万枚を追加で配布する予定だったことが報じられた。
 配布事業は、介護施設や全世帯などが対象で4月に始まり、全世帯向けを含めこれまで6000万枚が配布された。当時からウイルスの侵入と感染を防ぐ効果が不織布マスクより低いことが指摘されていた上、費用が合計約507億円と高額。全世帯向けでは一部に汚れが見つかったり行き渡るまで時間がかかったりしたことも問題視され、「アベノマスク」とやゆされることが多かった。
 今や、不織布マスクの品薄は大幅に改善されている。それでも配布を続けようとした意図は何か。当初発注した布マスクがすべて届いたからという程度かもしれないが、いかにも時宜を逸している。医療関連の支援に充てるべきとの野党側の主張はもっともだ。厚生労働省は指摘を受け、配布の延期を検討し始めた。
 政府は配布事業について、急激に拡大するマスク需要に対応する上で極めて有効だと説明していたが、現在はニーズが全く異なる。そもそも当初の配布時、安倍晋三首相を除き何人の閣僚があのマスクを着用しただろう。
 政府の新型コロナ対応が何かにつけ混乱を招いたり、時宜を逸したりするのはなぜか。スタートから1週間が過ぎた観光需要喚起策「Go To トラベル」にも同じことが言えないか。
 同事業は、東京都発着旅行を適用除外にしたものの、地方への感染拡大の懸念を抱えたまま22日にスタートした。東京除外とそれに伴うキャンセル料の負担の在り方、政府として自粛を求める「若者の団体旅行」「高齢者の団体旅行」の定義など、経済立て直しに焦る政府の前のめりな姿勢が招いた混乱は多い。
 菅義偉官房長官は東京以外の適用除外の拡大に慎重だ。しかし1日当たり新規感染者は29日に初めて1000人を超え、大阪府、愛知県、福岡県などでは過去最多を更新。感染者が唯一なかった岩手県でも2人の陽性が判明している。同事業による人の移動で、地方での感染拡大は加速しないか。「感染対策をしっかり講じているホテル・旅館を対象に実施している」(菅氏)ならば、地方での感染拡大抑制が担保されると考えているのか。地方の医療体制は、大都市に比べて手薄で弱い。
 政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は東京除外が決定される前、政府に対し、感染拡大の状況を分析した上で事業の開始判断を先延ばしするよう提案したが、その判断時期が開始の直前(20日)であることを理由に断られたという。専門家の意見を聞きながら事業を継続していくという菅氏の姿勢の本気度も疑わしい。

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あじバス巡回線「定着に向け実証運行の成果を」

2020/7/30 木曜日

 

 鯵ケ沢町が路線バスとスクールバスを一本化して運行している町コミュニティバス「あじバス」は今年で4年目となるが、さらに利用者の利便性向上を図り可能性を探ろうと、昨年度実施した市街地巡回線の実証運行(試験的な運行)を今年度も8月1日から行う。JR鯵ケ沢駅を軸に市街地を周回し、買い物や通院といった住民の外出を支える役割を担う。10月中旬までの2カ月半という短期間だが、将来的に新たな生活路線として定着させることができるか見極めるための運行でもある。住民はもし必要と考えるなら、数多く活用し町に意見を寄せることで、将来的に本格運行に結び付けるようにしてほしい。
 2回目となる実証運行は初回運行の利用実績と利用者アンケートを踏まえ、時刻と運行経路を大幅に変更し、より利便性を高めた。具体的には、前回の運行経路が同駅を発着点とし、一方向に一巡する形だったのに対し、今回は同駅を軸に「8」の字形に双方向で運行する形を採用した。時間帯は前回が午前9時始発だったのに対し、今回は同8時始発。最終便は前回が夕刻まで設定していたが、遅い時間帯は利用者が少なかったことから、今回は午後2時台までとする。土日祝日を含めて期間中は毎日、1日4往復8便を運行する。
 町内中心部に居住する町民は、手近な停留所から利用できるし、町内遠隔地の住民も居住地区の停留所から「あじバス」の一般路線を利用し、中心部で巡回線に乗り換えることで同様の高い利便性を享受できることになる。
 「あじバス」の2019年度運行実績によると、高校生以上の路線バス利用者は、前年度を5309人上回る3万2401人だった。このうち19年7月に始めた運転免許返納者に対する運賃無料化を利用したのは、延べ1577人となった。自治体が主導するコミュニティーバス運行としては、順調に推移している方であろう。実際、住民の需要に応じた細やかな路線設定が好評であり、料金は乗車区間を問わず1回100円という安さだ。運行開始以来、利用者の声や利用実績を踏まえた見直しを図っており、町民の交通手段として浸透しているだけに、今回の巡回線が本格運行化されれば、さらに利便性が高まることが期待されよう。
 人口が1万人にも満たない鯵ケ沢町であり、「あじバス」を除けば、交通手段はJR五能線と主要路線だけを走行する民間バスなどに限られる。車両を持たない、もしくは運転できない高齢者らにとって、身近で利用しやすい「あじバス」のような交通手段は必要不可欠だ。それだけに、巡回線を引き続き運行させていくには、どれだけ住民にとって期待と需要が高いかを実証運行において証明する必要があり、成果が待ち望まれる。

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県高校野球閉幕「“特別な夏”を人生の糧に」

2020/7/29 水曜日

 

 全国高校野球選手権大会青森大会の代替大会として開かれた夏季県大会は28日、青森山田の3年ぶり12度目の優勝で幕を閉じた。新型コロナウイルスが高校球児最大の夢である“夏の甲子園”を奪い、優勝してもアルプススタンドの大歓声の中でプレーすることはない。しかし、君たちは間違いなく今夏の県王者である。8月には東北地区大会が開かれる。本県代表の名に恥じぬプレーで、代替大会開催に尽力した関係者や、敗れたチームの気持ちに応えてもらいたい。
 開かれるはずだった第102回全国選手権大会は新型コロナの感染リスクを回避するため、日本高校野球連盟が5月に中止を決め、併せて代表校を選出する地方大会も取りやめになった。世界的な感染拡大が続き、臨時休校や緊急事態宣言による外出自粛などで、対外試合はおろか、校内練習すらできない時期もあった。中止が苦渋の決断であったことは、高校球児ならずとも痛いほど分かる。
 とはいえ、3年生にとっては最後の夏。各都道府県高野連は何とか公式戦に出場できる機会を与えようと、それぞれ独自大会開催の道を探った。本県高野連も「子どもたちが最後の思い出を残せるよう、われわれも努める」(赤井茂樹会長)と、代替大会として今大会の開催を決定。原則、無観客試合とし、選手はもちろん大会役員や観戦を許された保護者らに開催2週間前からの検温と体調チェック、マスク着用を求めるなど、大会前からの感染対策徹底を絶対条件とした。
 さらに、青森銀行野球部有志と県高野連は「少しでも憧れの地を感じて、思い出に残る大会に」と、クラウドファンディングを活用してメイン会場のダイシンベースボールスタジアム(青森市営球場)を、“聖地”と同じ土で整備。大会には、コロナ禍で夢を断たれた高校球児に対する、たくさんの人々の温かい思いが詰め込まれた。
 開幕直後のプロ野球もそうだったように、全校応援もブラス演奏も保護者や高校野球ファンの歓声もない球場に、戸惑いもあっただろう。それでも選手たちは「完全燃焼できる場を設けてもらったことに感謝している」「夏(夏季県大会)が開催されて本当にうれしい。野球ができる感謝を込めて戦いたい」などと、喜びをかみしめて臨んだ。
 臨時休校による練習不足などで本来の力を発揮できなかった選手もいたかもしれない。しかし、感染防止を最優先するためにさまざまな条件や制限を設けながらも、最高の大会運営を追求した関係者の思いや、球場外の声なき声援に応えようと、必死に白球を追ったのであれば、悔いる必要はない。優勝した青森山田も初戦で涙をのんだチームも、等しく“普通の夏”では得られない貴重な宝物を見つけたはずだ。“特別な夏”を、この先の人生に生かしてくれると信じている。

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立憲・国民合流協議「政権交代目指す覚悟を示せ」

2020/7/28 火曜日

 

 立憲民主党と国民民主党による新党結成に向けた協議がヤマ場を迎えている。両党を解散した上で「新設合併」方式による新党結成では一致したものの、新党名で合意できるかが焦点となっている。ここ数年、何度も浮上しては立ち消えてきた合流を模索する動き。“多弱野党”が長期政権を許した反省の下、合流を実現させた上で政権交代を目指す覚悟を見せるべきだ。
 今回の協議で立憲の枝野幸男代表はこれまでにない「譲歩」の姿勢を示した。永田町で年内の衆院解散・総選挙の観測が広がっている上、立憲の支持率が大幅に落ち込んでいることなどが、方針転換につながったようだ。
 実際、昨年末に持ち上がった合流協議では、立憲を存続政党とし党名も譲らなかった。国民側からは「上から目線」と反発を招き、結局、立ち消えになった。
 枝野氏は今回の提案で(1)両党を解散し新党結成(2)結党大会で代表選実施(3)新党名は「立憲民主党」、略称は「民主党」―など、大きく方針を変えた。
 決断した背景には、前回衆院選の直後に15%前後あった支持率が、時事通信の直近の調査では3・3%にまで落ち込んでいることが挙げられる。内閣支持率が低下傾向の中、立憲を含む主要野党の支持率も伸びておらず、いずれも政権批判の受け皿となっていないことが分かる。
 統一地方選では本県など地方議会で議席を獲得するなど躍進したものの、新型コロナウイルス対応では見せ場に乏しく、東京都知事選では共闘に失敗し支援候補が大敗した。執行部の党運営に異を唱え離党する衆院議員も相次いでおり、求心力の低下は否めない。
 国民側には立憲の譲歩を評価する声もあるが、玉木雄一郎代表は新党結成方式は受け入れるものの、党名は投票など民主的な手続きで決めるべきだと提案した。
 ただ、国民の置かれた状況も厳しい。昨年の参院選では議席を減らし、時事の調査では支持率が1%に満たない。新党名を投票で決めるべきだと訴える玉木氏に対し、本気で合流を実現させる気があるのかといぶかる声も上がっている。
 焦点の新党名はどうなるのか。国民側がボールを投げた格好だが、立憲側はリベラル系で党内最大のグループを率いる赤松広隆衆院副議長が党名堅持を強く求めており、先が見通せない。
 国民内では「民主党」に回帰する案に支持が多く、立憲の若手も投票になれば同調するとの予想もある。枝野氏は投票で「立憲」が敗れる事態は避けたいだけに、どう収めるのか注目を集めている。
 野党が結束して自公政権と対峙(たいじ)し、国会に緊張感を取り戻す必要性は多くの国民も理解している。小異を乗り越えコロナ後の日本の姿を堂々と打ち出すべきである。

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浸水への備え「避難行動の再確認を」

2020/7/25 土曜日

 

 梅雨前線と低気圧の影響で、本県は10日夜から12日にかけ、県南地方を中心に大雨に見舞われた。馬淵川では水位が大幅に上昇し、相当の浸水被害が生じる恐れがある「氾濫危険水位」を超過、八戸市や三戸町など6市町で一時、避難指示や避難勧告が出される事態となった。
 降り始めの10日午後9時から12日午後4時までの総雨量は三戸町で159ミリ、三沢市147・5ミリ、新郷村戸来144・5ミリなど。県内20市町村に大雨警報、5市町村に洪水警報、10市町村に土砂災害警戒情報が出ている。住民に対する避難の呼び掛けは県南地方だけでなく、津軽地方でも五所川原市が避難準備・高齢者等避難開始情報を出しており、県のまとめでは最大82人が避難したという。
 7月は九州地方を中心に甚大な被害をもたらした豪雨災害も発生しており、県民の不安もさぞ大きかったことだろう。本県では農地や道路の冠水はあったが、幸いにも人や家屋への大きな被害は確認されていない。とはいえ、ここ数年は毎年のように大規模な自然災害が発生している。この機会に備えを強化したい。
 県は6月、青森市や鯵ケ沢町など県管理の11河川で氾濫した際の「洪水浸水想定区域」を指定、公表した。2015年の水防法の一部改正を受け、降雨量などを想定される最大レベルに見直したもので、今回の公表で対象となっている県管理の37河川すべてで指定、公表が完了した。現在、各市町村で想定区域に基づき、洪水ハザードマップの作成が進められているが、県が公表した区域図でも浸水する区域や深さ、浸水が続く時間や氾濫した場合に家屋の倒壊の危険がある区域などが図面で確認できる。自治体のハザードマップとともに活用し、緊急時の避難行動に役立てたい。
 自治体の側にもやるべきことは多い。過去の災害事例を見ると、住民の避難の遅れが常に課題に挙がっている。手遅れになる前に避難してもらうため、必要な情報をどうすれば分かりやすく、しかも緊迫感を持って伝えられるのか、情報を出すタイミングも含めて検討が必要だ。
 国土交通省は災害時の浸水リスクを地図上に3次元で表示する事業を始めるという。今年度中に30~40都市で先行的に作製、全国に広げるとしている。完成すれば水が迫る高さや、浸水しない建物の場所などが一目で分かるという。また馬淵川では13年の台風で浸水被害があった地区を対象に河川改修事業が進められており、堤防が完成していた地区では今回の大雨でも浸水被害が発生しなかったという。長期的な取り組みにはなるが、必要な河川改修は着実に進めるべきだ。
 西日本では今週末も猛烈な雨となり、気象台が土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水などに警戒するよう呼び掛けている。被害が最小限になることを祈りつつ、避難について考える機会としたい。

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