社 説

 

緊急事態宣言解除へ「再拡大への懸念拭えず」

2021/6/18 金曜日

 

 第204通常国会は150日間の会期を終え閉幕した。これにより与野党は9月にも行われる衆院解散・総選挙へ準備を加速させる構えだが、国民の総選挙への関心はいまひとつというのが現状だろう。というのも、国会が閉幕したとはいえ、新型コロナウイルス対策をはじめとする課題が山積し、国民のさまざまな懸念や政治への不信感が解消されないままだからだ。
 政府は17日、20日が期限の緊急事態宣言について、沖縄以外の9都道府県を解除することを決めた。このうち7都道府県は21日から宣言に準じた「まん延防止等重点措置」に移行する。宣言解除後の地域が重点措置に切り替わるのは初めてで、7月23日に東京五輪開幕を控え感染再拡大(リバウンド)を防ぐ狙いがある。
 宣言解除が決まったものの、東京都などでは新規感染者数が下げ止まりの兆候を示しており、リスクの芽を摘み切れていない。重点措置への移行は、専門家も懸念するリバウンドの危険性を政府も十分認識しているゆえの対応といえる。
 重点措置の効果にも疑問を抱かざるを得ない。16日の厚生労働省専門家組織の会合では、4月以降の緊急事態宣言と重点措置による効果の推計が示され、緊急事態宣言が出された地域では、感染者1人が平均してうつす人数「実効再生産数」が平均で26~39%程度下がったが、重点措置の地域では平均2~19%の減少にとどまったことが報告された。「第4波」においては、多くの重点措置の地域で感染拡大が抑えられず緊急事態宣言に至り、医療体制の逼迫(ひっぱく)から、自宅療養中に亡くなる感染者も増えるという深刻な事態を招いた。
 専門家組織の会合では、東京の人出が昼夜ともに5週連続で増え、約2カ月前の宣言発令前の水準まで戻りつつあることも報告されている。インドで流行する変異株の広がりによっては、東京五輪期間中に都で緊急事態宣言の再発令が必要になるとの試算も示された。リバウンドの懸念を抱えながらの感染対策緩和は「五輪ありき」との批判も免れまい。
 首相が感染対策の「切り札」と期待を込めるワクチン接種は各地で軌道に乗りつつあるが、先行する英国ではインド型変異株の流行で感染が再び広がっており、日本国内でも予断を許さない状況だ。
 東京五輪については、先の先進7カ国首脳会議(G7サミット)で各国首脳の支持を取り付け、いわば国際公約となったものの、人出増による「第5波」を防ぐため、盛り上がりには欠けるものの、無観客開催やパブリックビューイング禁止といった強い対策を打ち出す必要もあるだろう。
 ワクチン接種が順調に進んで無事に東京五輪が開催できるのか、あるいは「第5波」につながるのか。今回の宣言解除は危うい賭けと言わざるを得ない。

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G7サミット「各国連携で課題解決に前進を」

2021/6/17 木曜日

 先進7カ国首脳会議(G7サミット)が13日、台湾問題に初めて言及した首脳宣言を採択して閉幕した。台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し「両岸問題の平和的解決を促す」と明記。覇権主義的な動きを強める中国をけん制する内容が数多く盛り込まれ、自由主義陣営が結束して対抗する姿勢を強く打ち出した。
 サミットでは中国による東・南シナ海での一方的な現状変更の試みや香港と新疆ウイグル自治区での人権侵害などに対し、懸念の声が表明された。経済分野でも途上国向けに数年間で数千億ドル(数十兆円)規模のインフラ投資を進める新たな計画で合意。米国には中国の経済圏構想「一帯一路」に対抗する狙いがあり、自由貿易や民主主義の価値観を共有するG7が足並みをそろえて対中国政策を進めようとの思惑が各所に見受けられた。
 一国主義を標ぼうし、すべてが取引感覚のトランプ前米大統領時代と異なり、自由主義陣営に属する日米欧が結束して対抗する姿勢を明確に打ち出した今回の首脳宣言は、バイデン米大統領が米国の国際協調路線回帰の姿勢を明確に打ち出したものと捉えられる。台湾に近い尖閣諸島において中国と摩擦のある日本にとっても、国際的な連帯を持って対応ができるという点で、歓迎すべきものが確かにあるだろう。
 一方で今回の宣言については、閉幕後、バイデン米大統領が記者会見で「民主主義が専制主義と対抗できるか否かの争いの中にいる」と強調。ジョンソン英首相も「G7が民主主義と自由、人権の恩恵を世界に示す必要がある」と語るなど、米英首脳の強気の発言が目立ったが、マクロン仏大統領は「G7は中国敵対クラブではない」と述べるなど、G7各国の間に微妙な温度差が浮き彫りになったのも事実だ。
 尖閣諸島問題を抱える日本も、中国は経済分野を中心に無視できない存在であり、強硬姿勢一辺倒が国益にかなう行為とはならない。今回の首脳宣言に対して、中国は強く反発している。正すところは正し、それでも中国とG7の溝がこれ以上深刻にならないよう、日本としても柔軟な外交姿勢が求められる。
 今回のサミットは日本にとって東京五輪・パラリンピックへのG7支持を確認する場でもあった。各国は同大会を「コロナに打ち勝つ世界の団結の象徴」と位置付け、開催を支持する姿勢を打ち出した。G7のいわば“お墨付き”を得た形ではあるが、同時にそれだけのものでしかないとも言える。国内の新型コロナウイルスの新規感染者数は減少傾向にあるものの、コロナ禍により、国民生活のさまざまな面で制約が生じ、医療現場の疲弊も深刻だ。こうした情勢下でなぜ五輪を行うのか。五輪開催の是非で国論は二分している。政府は懐疑的な国民が納得できる説明を行う責任がある。

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医療機能再編「利用者目線を忘れずに」

2021/6/16 水曜日

 

 県立中央病院と青森市民病院の将来像について検討する第1回の協議会が5月下旬に開かれ、有識者らによる本格的な議論が始まった。統合や機能再編も視野に検討を進め、今年度内には両病院の将来の方向性について提言を取りまとめる予定だという。議論の行方が注目される。
 必要な医師数の確保が厳しい本県では、医療機能の再編が長年の課題となっている。県内に六つある2次保健医療圏ごとに、圏域全体で地域医療を支える体制の構築が求められており、先進事例とされる西北五圏域ではつがる総合病院を中核病院とし、サテライト医療機関との間で機能分担や連携を行う取り組みが進んでいる。津軽圏域でも紆余(うよ)曲折を経て、現在は国立病院機構弘前病院と弘前市立病院を統合した新中核病院「(仮称)弘前総合医療センター」が2022年4月の開院に向け動いており、統合に伴い廃止となる市立病院跡地は健康づくりの拠点とする方向で検討が進められるという。
 青森圏域は県立中央病院、青森市民病院という500~600床の病院が併存していることから、県の地域医療構想で再編・ネットワーク化の検討が必要と指摘されていた。それぞれ内部での検討は進められていたが、2病院の関係者が外部有識者を加えて協議の場に着くのは今回が初めて。会議では連携が必要という点では意見が一致しており、次回以降、連携に関する複数のシミュレーションを基に議論が進む見通しだ。
 課題は多い。何よりも懸念されるのは医師や医療従事者らスタッフの不足だろう。2病院とも多くの診療科で医師が不足傾向にあり、中には医師が確保できず休診となっている診療科もある。麻酔医などの不足は手術件数にも影響してくるという。
 診療面以外でも、県立中央病院は築39年で、全国の都道府県立病院(500床以上)では最も供用期間が長く、市民病院も築35年と建物の老朽化が進んでいる。今後も修繕や設備更新費用の増加が見込まれるほか、院内で必要なスペースの確保が難しかったり、動線が複雑だったりと、さまざまな課題があるようだ。
 中央病院は唯一の県立総合病院であり、青森圏域に限らず、県全域を対象とした高度・専門医療や地域医療への支援も求められる。同圏域の再編は県内全域の医療提供体制にも関わってくると言えるだろう。それに対応できる人員、設備が必要だ。
 県内どの圏域でも病院機能の再編は住民の関心が高く、注目される話題だ。加えて自治体病院は感染症指定医療機関になっていることが多く、新型コロナウイルスの全国的な感染拡大を受け、果たすべき役割や地域住民から寄せられる期待はこれまで以上に大きくなっている。課題解決を図ることはもちろん、利用者により分かりやすく、頼りにされる医療機関となるよう、住民の目線を忘れずに議論を尽くしてほしい。

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本県で聖火リレー「思いつなぐも先行き見通せず」

2021/6/12 土曜日

 

 県内で行われた東京五輪聖火リレーは11日、大きなトラブルなく2日間の日程を終えた。当初予定されていた津軽全域と三沢市などは公道での実施を中止し、青い海公園(青森市)での代替セレモニーによる短距離リレーになったが、ランナーたちが見せてくれた笑顔は、新型コロナウイルス感染拡大で沈む県民の心を明るく照らしてくれた。聖火は主会場・東京に向けて一歩一歩進んでいるが、今なお再延期・中止論は国民に根強く、国立競技場の聖火台にともせるかは依然、不透明だ。
 聖火がギリシャ・オリンピア遺跡のヘラ神殿跡で採火されたのは2020年3月12日。世界保健機関のテドロス事務局長は11日(ドイツ時間)に初めてパンデミック(世界的大流行)の呼称を使用し、採火式も規模を縮小した上、異例の無観客で行われた。聖火は空輸され、20日に航空自衛隊松島基地(宮城県)に到着。曲技飛行チーム「ブルーインパルス」が5色のスモークで空に描いた五輪マークは、その後を暗示するかのように、折からの強風で流された。
 日本国内でも感染者が増加の一途をたどり、聖火到着の4日後、当時の安倍晋三首相らと国際オリンピック委員会のバッハ会長が電話会談し「1年程度延期し、遅くとも21年夏までに開催」との認識で一致。1896年に始まった近代五輪で初めての延期が決定した。
 仕切り直しの聖火リレーは今年3月25日に福島県をスタートした。ところが、今度は東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言を発端に、聖火ランナー辞退が相次ぎ、加えて急激な感染者増による緊急事態宣言発令などで、公道での聖火リレーを中止する自治体が出始めた。
 本県では10日に弘前市から津軽各地を巡るはずだったが、医療現場が逼迫(ひっぱく)した津軽地域を中心に、公道での感染拡大防止は困難として中止を決定した。トーチを手にする機会を失ったランナーを笑顔にしたのが代替イベント。沿道の声援はなく、30メートルという短い距離だったが、ランナーからは実施に感謝する声が聞かれた。世界最大のイベントに関われた誇りや喜び、五輪開催への願いなど、さまざまな思いを抱いた貴重な経験になったのではないだろうか。
 バッハ会長はフランス時間10日の理事会後、五輪開催に向けた最終段階にあるとの認識を示した。ただ、紆余(うよ)曲折を経て開幕まで約40日に迫りながら、有観客か無観客かすら決まっていないばかりか、開催の是非が国内を二分している。11日付本紙は聖火リレー代替セレモニーと共に、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の有志が、開催の是非には触れないが、有観客の感染リスク増大を警告する提言を検討している動きを1面で報じた。行き場を失った聖火は見たくないが、輝くトーチでも行方を照らせないのが現状だ。

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党首討論「会期延長し、首相は説明責任果たせ」

2021/6/11 金曜日

 

 菅義偉首相と野党党首による党首討論が9日、行われた。新型コロナウイルスの収束が見通せない中、東京五輪・パラリンピックの開催意義を問われた首相だったが、明確な答弁はなかった。通常国会は16日に会期末を迎えるが、政府・与党は会期延長しない考えのようだ。しかし20日が期限の緊急事態宣言をどうするのか、感染状況の推移によっては五輪を開催できるのか、課題は山積している。国会は大幅に会期を延長するとともに、首相は国民の懸念に向き合う責務がある。
 党首討論は2年ぶりの開催で、首相にとっては初めてとあって、なぜコロナ禍でも五輪を開催するのか、首相が自身の言葉で語るかが最大の焦点だった。
 首相は「国民の命と安全を守れなくなったらやらないのは当然だ」と中止の可能性に改めて言及しつつ、コロナ禍での開催意義については明確な答弁を避け、1964年の東京五輪の思い出話を披露。スポーツを通じて感動や勇気を与えたいという、平時なら理解できる“意義”を強調してみせた。
 これには多くの国民ががく然としたのではないか。非常時にリスクを負ってまで開催する意味があるのか問われているのに、「安全・安心な大会に努力する」とはぐらかし、「主催者の東京都の姿が見えない」との揶揄(やゆ)に同調する姿は、かえって不信感を招くだけだ。
 一番の問題は、国会を閉じず会期を延長すべきとの指摘に対し、首相は「国会で決めること」とにべもなかったことだ。つまり会期の延長は頭の片隅にもない。
 緊急事態宣言は20日の期限を延長するにしても解除するにしても、国会に報告することが決まっている。解除した後、五輪前に再び感染が拡大する可能性もある。国民に我慢を強いているのだから、閉会中審査ではなく会期を延長して必要な対策を話し合うことが、あるべき姿ではないだろうか。
 唯一、ワクチン接種について「1日100万回」の目標が達成しつつあり、「10月か11月に希望する国民全員に接種」と表明したことは注目される。
 五輪開催に前のめりな首相だが、五輪を通じて政権浮揚を図り、その後の衆院解散・総選挙へと向かう戦略が透けて見える。永田町にはパラ大会閉幕後、9月6日にも臨時国会を召集、補正予算を成立させて9月半ばに解散、10月10日か17日に投票という説が取り沙汰されている。
 これもワクチン接種が順調に進んで感染が落ち着き、五輪が無事に開催できることが前提だ。シナリオが崩れた場合、首相は自らの手で解散できずに退陣するか、選挙で大敗し辞任することになる。緊急事態宣言の効果が薄れた以上、首相にはワクチン接種しかカードが残っていないのだ。

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