社 説

 

民泊法案「疑問も残るルールの順守」

2017/2/22 水曜日

 

 住宅やマンションの空き部屋に旅行者らを有料で宿泊させる「民泊」を本格導入する新法案「住宅宿泊事業法案」の詳細が固まった。年間営業日数(実際の貸し出し日数)は上限180日とすること、物件所有者による届け出を義務付け、所有者が同居しない場合は管理業者の登録を求めることなどが盛り込まれている。今国会に提出する方針という。
 新法案では、住居専用地域(住宅地)での民泊が認められる。年々増え続けている訪日外国人観光客の宿泊需要への対応はもちろん、特に本県のような地方にあっては滞在中の所有者や地域住民との触れ合いを通じた地元の魅力発信も期待される。ホテル・旅館業者との円満な共存、地域住民とのトラブル防止などに配慮した形での普及を望む。
 民泊と言えば、五所川原市で昨年の五所川原立佞武多期間中、県内初となる「イベント民泊」が実施された。年1度のイベント開催時、開催地自治体の要請に応じて、住民が一定の条件下で自宅を宿泊場所として提供できる仕組みで、弘前市でも今年の弘前さくらまつりと弘前ねぷたまつりで予定されている。
 県内ではこれまで、グリーン・ツーリズムの一環などとして農家民泊が盛んだった。イベント民泊や本格的な民泊導入を踏まえると、本県の観光は新たなステージを迎えると言えそうだ。
 年間営業日数の上限設定は、民泊に否定的なホテル・旅館業界と、積極的な不動産業界双方へ配慮した結果という。上限は地域の実情などに応じて、自治体(都道府県、政令市、東京23区)が条例で上限を引き下げることができるが、極端な引き下げは新法の趣旨自体を否定しかねない。双方の意見を聞きながら慎重に対応する必要があろう。
 民泊は既に、旅館業法に基づく「簡易宿所」の許可を得れば営業が認められている。しかし、実際には都市部を中心に無許可営業が広がっているという。
 新法により民泊のルールを明確化し、無許可営業のまん延に一定の歯止めをかける意義は理解できる。ただ、届け出制は許可制より条件が緩い。物件所有者には衛生管理などを義務付け、違反者には罰則も設けるが、実態把握と監視の目がどこまで及ぶかは疑問だ。宿泊者が安全に、一定の衛生環境下で過ごせるための仕組みづくりが求められる。
 所有者が同居しない場合は、特に“ご近所トラブル”も懸念される。一部の心ない宿泊者、日本の生活習慣・マナーを無視した外国人客による夜中の騒音、ごみの散らかしをはじめとする迷惑行為が想定されるからだ。見知らぬ人物たちの不審行動は、治安面にも影響する。
 一般市民の中で暮らす以上、周囲への配慮を心掛けてもらわなくては、民泊も長続きしまい。旅行業者、仲介業者にも旅行者への周知徹底を求めたい。

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国民健康保険 市民と危機感の共有を

2017/2/21 火曜日

 

 弘前市は2017年度以降の国民健康保険料を1人当たり平均5%引き上げるという方針を示し、関連する条例改正案や予算案を17日に開会した市議会定例会に提出した。今後審議が行われるが、市民にとっては極めて関心の高い問題。市議会での議論の深まりを注視したい。
 市が最終的に平均5%の引き上げと決めたのは市民の負担感に配慮したため。市の国保加入者は所得200万円未満の世帯が約80%と低所得世帯が多く、市民の負担軽減を考慮するのは当然だろう。平均5%増は1人当たり平均で比較すると現行より年額4804円の負担増。月額では約400円の増額となり、市民の理解も得られるのではという判断だ。
 だが平均5%の引き上げは、市が国保運営協議会に保険料率の改定を諮問した際に示した三つの参考値、20・5%増、14%増、10%増のいずれよりも引き上げ幅が低く、国保運営協の「10%増以内」という答申からも踏み込んだ数字だ。
 20・5%増の場合、保険料の引き上げだけで赤字解消のめどとされた22年度までに累積赤字を解消できる。14%増と10%増では22年度まで単年度黒字を維持、累積赤字は2億円台まで減らせるとされていたが、5%増では単年度黒字となるのは3年間だけ、累積赤字も10億円以上残り、解消のめどが立たない。近い将来に見直しを迫られることは明らかで、手放しで喜んでいいものか判断に迷う。
 そもそも、この問題がクローズアップされたのは市の国保財政がまさに危機的状況にあるからだ。歳出に見合う歳入を確保できず、15年度末時点での累積赤字は県内40市町村で最大となる17億7000万円。市は庁内研究会で検討を進め、単年度黒字化と累積赤字の解消には医療費適正化や収納率向上対策、市民の納付意識向上に向けた取り組みの強化だけでは厳しいと判断。同市では前例のない一般会計からの繰り入れと、保険料の引き上げが必要という結論を導き出した。
 この待ったなしの状況を乗り越えていくには、市民と危機感を共有することが必要だろう。市も「市民、各種団体、行政が一体となることが必要」と強調しており、葛西憲之市長は「やれることをまずやり、(3年後に)もう一度立ち止まって効果を検証し、財政支援も含めたその後の展開を考えたい」としている。
 具体的には新たな人工透析者を抑制したり、検診でがんを早期発見・治療し、医療費を抑制するなどの取り組みを強化。市民の保険料納付意識や健康意識の向上も図る考え。19年度にはこれらの効果を検証し再度財政推計を行うが結果次第では一般会計からのさらなる繰り入れの可能性も視野に入れているという。
 市民が安心して医療が受けられる制度の維持は重要だ。市民生活に直結する問題でもあり、今後の議会の議論や市の取り組みを、関心を持って見守りたい。

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保安規定違反「原燃は指摘踏まえ慎重な対応を」

2017/2/18 土曜日

 

 原子力施設の安全確保のため、原子炉規制法の規定に基づき、原子力事業者やその従業員が守らなければいけない「保安規定」。その順守状況について、原子力規制庁が四半期ごとに確認を行っている保安検査の結果、今年度第3四半期(2016年10~12月)に日本原燃が六ケ所村に保有する使用済み核燃料再処理施設など3施設で、監視を含む4件の保安規定違反が確認された。同庁青森事務所によると、1事業者で4件という違反数はめったにない数字といい、原燃には核物質を扱う事業者として猛省を求めたい。
 発表によると、違反があったのは再処理施設2件、ウラン濃縮施設と廃棄物埋設施設が各1件。このうち、再処理施設に関しては、低レベル廃棄物貯蔵建屋で水分を含んだ廃活性炭(低レベル放射性廃棄物)をビニール袋に入れ、それをドラム缶に詰めて保管する際、担当者が独断で袋に切り込みを入れていた上、作業手順書も変更していた。その結果、ドラム缶から液体が漏えいしたものである。
 このほか、ウラン濃縮施設では過去の保安検査で指摘を受けた事項に関して、改善提言の評価書を不適切な意思決定手順で策定。廃棄物埋設施設では巡視・点検の状況に関する記録が未作成だったことが確認された。
 人には「つい」「うっかり」のミスが付き物だ。ただ、今回指摘を受けた規定違反の内容を見る限り、それは当てはまらないようだ。よかれと思った個人の独断が結果的に保安規定違反と指摘されたことを原燃は深刻に受け止めねばなるまい。
 そもそも、原子力施設の仕事に従事する人は工学や医療、発電など人間が生きていく上で役に立つとともに、時に危険な存在となる核物質を取り扱っているという自覚を持たねばならない。保安規定の内容や規制庁の指摘には異論が聞かれることもあるが、決まり事には従う必要がある。組織である以上、個人の独断によって、県民の不信を招くような事態は避けてほしい。
 原燃が初めて保安規定違反を指摘されたのは09年4月のことだ。この時の指摘は高レベル廃液ガラス固化建屋内で、廃液が2度漏れるなどしたトラブルに対して、漏えいを検知しながら速やかに対処しなかったなど、今回を上回る5件の違反が指摘されていた。10年3月には、使用済み燃料受け入れ・貯蔵建屋内の作業で生じた布などポリ袋数百袋分となる低レベル放射性廃棄物の仮置きが不適切管理とされた。
 原子力規制委員会による施設の安全審査も今後大詰めを迎えることになろうが、組織としての詰めの甘さや油断は早期の施設操業実現に影響を与えかねない。指摘を踏まえ、慎重な対応をし、心して審査に臨むことを願いたい。

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リンゴの販売促進「3年連続で年間1000億円達成を」

2017/2/17 金曜日

 

 毎年2、3月は県産リンゴの主力「サンふじ」取り扱いの最盛期。関係団体は今年も全国各地でPR活動に躍起となり、県産リンゴの年間販売額1000億円の3年連続達成を目指している。
 リンゴの消費地市場はこの時期から、周年販売が可能な県産がほとんどを占めることになる。しかし、今年はミカン、イチゴといった競合果実も順調に出回り、果実全体の価格が落ち着いているため、15年産リンゴのように「一人勝ち」ということにはならないようだ。
 それでも、4月以降に有袋ふじを有利に販売するには、サンふじを順調に販売することが欠かせない。本県のリンゴ関係団体もこの点を強調し、大都市圏の青果会社などに協力を求めている。
 今月13日からは、県産リンゴをPRするお笑いタレント渡辺直美さんのポスターなどを車体に貼った列車が東京都内のJR山手線で運行を始めた。運行は26日まで続くという。
 これは県りんご対策協議会が初めて行った企画。都心を走る列車を目にする人は数知れず、PR効果は絶大だろう。同協議会によると、試算では運行期間中に約1500万人がこの列車を目にするという。
 山手線を走る列車は全部で52編成あるが、ポスターを貼った列車は1編成だけ。目にした人たちには“幸運”が訪れる―といった触れ込みもなかなかしゃれている。
 ポスターには、赤と黄色のリンゴがたわわに実った緑色の“巨大アフロヘア”の渡辺さんが印刷されており、非常に印象深い。駅で乗り降りする人たちの興味を引くことは間違いないだろう。
 同協議会はここ数年、お笑いで有名な芸能プロダクション・吉本興業とタイアップして県産リンゴのPR活動を展開しており、渡辺さんを起用しているのもそのためだ。
 「若者の果物離れ」を指摘する声もある中、若年層の人気を集めるお笑いタレントに県産リンゴの機能性などをアピールしてもらい、国内消費の増加につなげようとしているのである。
 大消費地にとって、県産リンゴはまさにブランド品。大玉で良食味、着色も言うことなし。これが多くの人が持つイメージだ。しかし、この先も消費量を維持できるとは限らない。だからこそ、県りんご対策協議会は新たな試みをしているのであろう。
 消費地のエリアによっては独自に県産リンゴのコマーシャルを作成し、販売促進に努めている例もあるようだ。産地である本県と消費地が取引を長年続ける中で築いた信頼関係が背景にある。
 ここは何としても、販売金額1000億円を3年連続で達成したい。本県リンゴ産業関係者の底力に期待しつつ、目標の達成を楽しみに待ちたい。

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津軽の冬季イベント「企画力と広域連携で誘客を」

2017/2/16 木曜日

 

 弘前城雪燈籠まつりが4日間の会期を終え、閉幕した。会期中は11日が行楽日和となり、11万人を記録。ただ、全体では天候にそれほど恵まれなかったこともあり、人出は昨年と同じ23万人(まつり本部発表)となった。冬季の観光イベントは天候に左右されやすい。集客に向けた試みも多かった今年の祭りとしては、まずまずの結果といえるのではないか。
 試みの中で目立ったのが、人気アニメとのコラボイベントだろう。今年は弘前市を舞台にしたアニメ「ふらいんぐうぃっち」とコラボしたプロジェクションマッピングの投影や、声優トークショーなどが話題を呼び、県内外からファンが多く訪れた。アニメの舞台・イメージとなった土地をファンが訪れる「聖地巡礼」と呼ばれる現象が近年、ブームとなっており、地方・地域の新たな観光資源として定着し始めている。
 祭りの目玉の一つである大雪像は「ふらいんぐうぃっち」の劇中に「喫茶コンクルシオ」として登場した「藤田記念庭園洋館」を初めて採用。その大雪像に投影されたプロジェクションマッピングには、主要キャラクターと参加者が“共演”する仕掛けも施された。このほかアニメ関連のプレゼントや劇中シーンを再現した撮影スポットも用意され、多くの市民らでにぎわった。
 雪燈籠まつりは、冬期間雪に閉ざされる弘前にあって市民や家族連れが気軽に楽しむことができる“市民の祭り”だ。ただ、それと同時に観光都市弘前の冬季イベントの核に位置付けられるものであり、対外的に発信できる魅力の充実にも努めなければならない。
 アニメとのコラボはアニメファンや若い世代を祭りに取り込む意味でも有望なものだろう。来年以降も新たな仕掛けづくりを進め、飽きのこない祭りにしてもらいたい。
 今年の祭りは自治体の広域連携も新たな展開をみせた。「ジャパンデザインウィーク」の自治体連携事業の一環として、弘前市、大鰐町、田舎館村、佐賀県嬉野市の4市町村によるセレモニーが祭り開催中の弘前公園で行われ、弘前産リンゴと嬉野市の銘茶「うれしの茶」をコラボしたアップルティーの試飲会などが行われた。セレモニーに参加した田舎館村では「冬の田んぼアート」が9~12日に行われ、幾何学模様のスノーアートが来場者を魅了。この他、五所川原市の地吹雪体験や津軽鉄道のストーブ列車など、津軽地方には冬や雪をキーワードにした観光資源が多い。
 津軽の雪は近年、飛躍的な伸びを見せるインバウンド観光でも注目されるアイテムとなっている。津軽各地の冬のイベントとスキー、温泉などの観光資源を組み合わせれば、海外の観光客を呼び込む力となる。広域観光の視点もさらに深化させ、誘客につなげたい。

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