社 説

 

コロナ苦境「文化芸術に息の長い支援を」

2020/6/27 土曜日

 

 青森市が新型コロナウイルスの影響を受けている文化芸術活動を支援する事業を立ち上げ、申請を受け付けている。対象はスタジオ、ライブハウスやギャラリーなどの民間文化施設や青森市内を拠点に文化芸術活動を行っている文化芸術団体と個人。オンラインで創造・発信する事業に最大30万円を助成するという。
 ライブなどの大規模イベントはコロナ対策としては最も早い2月に自粛要請を受けた。その後、ライブハウスでのクラスター(感染者集団)の発生などもあって厳しい視線が向けられ、営業自粛が長期化。休業要請に応じた店舗や観光などの事業者、家庭へと支援策が広がる中、文化芸術関係への支援も急務だと思う。
 相次ぐ夏祭りの中止を受け、ねぶた師らを支援しようという動きも広がっている。青森観光コンベンション協会はねぶた師14人が合作する特別ねぶたを制作、来夏の運行を目指すという。参加するねぶた師は薬師如来、玄奘三蔵、十二神将のうち指定された1体を制作し、それを組み合わせて1台の特別ねぶたにする。青森銀行などがプロジェクトの組成を支援し、クラウドファンディングサイト「キャンプファイヤー」で24日から募集をスタート。1000万円でねぶた制作と展示、2500万円で来夏の運行を目指すという。県民に夢を与える企画だ。
 青森市はねぶた師に新たなアート作品を披露する場を設け、冬の青森の魅力創出につなげようというプロジェクトも検討。こちらはねぶたとはひと味違う、冬ならではの新しい作品が仕上がりそう。弘前市は今夏、伝統的な手持ちねぷたで市内を飾り付ける取り組みを検討しており、ねぷた絵師に制作を依頼して支援するとともに、祭りが中止になってもねぷた文化の継承や来年の活気につなげることを目指すという。こちらはいかにも城下町弘前らしい取り組みだ。
 合作ねぶたを筆頭に、いずれも前例のない、コロナ禍の今年だからこそ実現した企画だと言えるだろう。これまでにない新たな魅力が生み出され、われわれを元気づけてくれることを期待したい。
 県内の感染者は27人で、確認は5月7日が最後だ。その後、県境を越える移動制限が全面的に解除され、本県では飲食店にも人が戻りつつある。ただ全国的には東京都内で感染者が連日確認されており、第2波、第3波も警戒されている。県内の集計には含まれないが、6月に入って米軍三沢基地で複数の感染も確認されており、油断はできない。
 ライブや祭りは観客が密になっての一体感を楽しむ側面もあり、当面の活動は手探りの状態が続きそうだ。ただ文化芸術はなくてはならないもの。国も第2次補正予算案に約560億円の支援策を盛り込んだと発表されているが、時代に合った新しい形で活動が続けられるよう、引き続き支援策の検討が必要だろう。

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避難所のコロナ対策「災害に備え感染対策の構築を」

2020/6/26 金曜日

 

 大雨や地震など大規模災害が発生した際の避難所での新型コロナウイルス感染防止対策が課題となっている。
 もともと密閉、密集、密接の「3密」の回避が難しい避難所でどう感染を防ぐのか。発熱者や濃厚接触者が避難してきた場合、どのように対応すべきなのか。いつ起きるか分からない災害時に備え、対策を急ぐ必要がある。
 新型コロナの感染が広がる中での今年3月10日、北海道地震で大規模な土砂崩れが起きた厚真町は大雨と融雪で土砂災害の危険性があるとして、2カ所の避難所を開設した。受付でマスクを配り、保健師が検温と問診を実施し、異常のある人に移ってもらう別室も用意したという。当日の避難者は11人にとどまり混乱はなかったが、町の担当者は「人数が多ければ別室での対応も難しく、配れるほどのマスクもない」と話した。
 3月13日には石川県輪島市で震度5強の地震が起きた。同市の担当者は「能登半島地震のような規模であれば、密集は避けられない。できるだけ分散させられるよう、避難所の数を増やすことも考えなければならない」と課題を挙げた。
 避難所を訪れる人の多くは高齢者ら災害弱者だ。新型コロナに感染した場合、重症化リスクが高い。高齢化率が比較的高い本県などは特にその傾向にあり、今後の第2波、第3波も想定すれば、感染防止対策は急務だ。
 政府の中央防災会議(会長・安倍晋三首相)は、新型コロナの感染拡大を踏まえ防災基本計画を修正。避難所における「3密」を避けるため、避難先としてホテルや旅館の活用を検討するなど、感染症対策を推進することを新たに明記。避難所の過密抑制など感染症対策の観点を取り入れた防災対策を推進する必要があると強調し、平常時から防災担当部局と保健福祉担当部局が連携し、避難所で感染症患者が発生した場合の対応の検討に努めることなども求めた。
 計画は災害対策基本法に基づき作成され、都道府県や市町村が作る「地域防災計画」の基礎となるため、今回の修正を受け、各自治体も現行計画やマニュアルの見直しなどを進めている。
 新型コロナを踏まえた避難所の開設、運営訓練も全国各地で行われている。本県では、政府への提言活動などを行う一般社団法人「レジリエンスジャパン推進協議会」(東京都)が、7月28日に今別町で避難所の運営訓練を行うことを明らかにした。最新技術を活用したシステムなどの導入で感染リスク低減を図り、災害関連死ゼロを目指す考えだ。訓練を通じて避難所における効果的な感染症対策などを検証するという。
 災害はいつ起こるか分からない。避難所運営の在り方は地域によっても異なってくる。それだけに大雨や台風シーズンなどにしっかりと備える必要がある。

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“危険運転”判決確定「飲酒運転根絶へ自覚を」

2020/6/25 木曜日

 

 2018年9月、つがる市の国道101号で車4台が多重衝突し4人が死亡した事故で、飲酒の上で車を運転し危険運転致死傷罪に問われた同市の30代無職の被告を懲役20年とした、青森地裁の裁判員裁判の判決が23日までに確定した。被告側は判決前、弁護士との接見で「どんな判決でも受け入れる。控訴したくない」と話していたという。結果、被告と検察側、どちらも控訴しなかった。大切な家族や友人を亡くした関係者の心情を鑑みれば、良識的な判断と言えよう。ただ、亡くなった人たちは二度と、この世に戻ってくることはない。被告は自らが行った過ちを胸に刻んで生きていくとともに、今後の賠償においても誠実な対応に努めてほしい。
 事故は同年9月22日未明に発生。当時の警察の調べによると、被告は同乗していた友人の男性2人と飲酒し、アルコールの影響により正常な運転ができない状態で車を動かしていた。その結果として、制限速度50キロを大幅に上回る速度で運転した上、前方や対向車線の車両3台を巻き込み、男女8人が死傷する大惨事となった。
 事故発生から1年半以上を経て、ようやく開かれた一審では、争点が(1)アルコールの影響で正常な運転が困難であったか(2)被告本人が、その状態を認識していたか―の2点で、危険運転致死傷罪の成立が争われた。判決では、法定速度を大幅に超える時速163キロまで加速するなど、事故当時の道路状況に明らかにそぐわない運転であったこと、その運転状況や事故前後に眠気を訴える言動がアルコールによる酩酊(めいてい)の症状と整合していたことから「アルコールの影響で正常な運転が困難だった」と認定した。量刑も「運転の様態は極めて危険性の高い悪質なもの」などとした上で、求刑通り法定刑の上限である懲役20年の判決を言い渡した。
 逮捕から裁判までの司法における流れは今回で決着を見たわけだが、残された遺族や友人たちの悲しみは当然消えるわけではない。実際、判決当日の今月9日に事故現場を訪れた遺族や友人からは、判決に感謝の気持ちを示す一方で「殺人事件として裁いてほしかった」「(被告には)死ぬまで十字架を背負ってほしい」「4人が亡くなった事故で、たった懲役20年なんて」といった悲痛な声が聞かれた。こうした声を被告は、どう受け止めるのだろうか。今後金銭的な賠償の話し合いも進むだろうが、言えるのは一生事故のことを背負って生きなければいけないということだ。
 気になるのはこの事故の後も飲酒運転による事故が後を絶たないことだ。先日も県内で5人が死傷する交通事故があり、飲酒運転の疑いもあるという。全てのドライバーが自覚を持ち、飲酒運転が根絶される日を待ちたい。

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“富岳”世界4冠「課題解決に生かす日本の強み」

2020/6/24 水曜日

 

 理化学研究所や富士通などが開発中のスーパーコンピューター「富岳」が、計算速度を競う四つの世界ランキングで2位に大差をつけて1位を獲得した。その一つ「TOP500」で1位になるのは、先代の「京」が2011年6、11月に記録して以来のこと。本格運用は21年度の予定だが、先行して新型コロナウイルス感染症対策研究で利用されており、高い能力を生かして早期終息に寄与するものと期待する。
 14年に開発開始した富岳は、京の100倍以上の計算能力、省電力性能向上を目標に掲げる。今回1位になったのはTOP500のほか、産業利用などのプログラムで使われる計算速度を測る「HPCG」、人工知能などで活用される計算性能を評価する「HPL―AI」、グラフ解析に関する「Graph500」。
 富岳の特徴は性能だけではない。スパコンの主流は画像処理向けの計算に特化した半導体(GPU)に移ってきたが、富岳が採用したのは既存のスマートフォン向けCPU(中央演算装置)をベースに改良したもの。GPU搭載スパコンは用途が限られ、コストも高いが、富岳は長年培われたソフトウエア技術を活用できるなど使い勝手に優れるという。理研担当者は前者を高性能だが運転は難しく荷物も詰めない「スーパーカー」、富岳は運転が容易な「普通のセダン」と表現した。実に分かりやすい説明だ。
 民主党政権下の事業仕分けで「2位じゃ駄目なのか」と指摘されたこともあった京だが、台風の発達やゲリラ豪雨の発生を予測するなど多くの実績を残し、医薬品開発にも活用された。富岳は「1位を取ろうと作ったマシンではない」(開発責任者の松岡聡・理研計算科学研究センター長)。目指したのは国民の関心が高い課題の解決に寄与する性能だった。
 目標達成への挑戦が「輝かしい成果」(松本紘・理研理事長)につながった。しかも今回は、搭載した16万個ほどのCPUのうち、使用されたのは約95・6%。理研はソフトウエアの調整などで、さらに性能が向上する可能性があるとしており、本格運用が楽しみになる。
 今後ナノテクノロジーや防災、創薬、エネルギーなど多岐にわたる最先端研究に活用される見通し。特に新型コロナをはじめとする新たな感染症や近年多発する豪雨、地震といった自然災害対策は、国民の命や生活を脅かす喫緊の課題。喜ぶべきは「世界ランク1位」の“称号”ではなく、幅広い分野からの要求に世界トップの性能で応えたことである。
 23日の会見で富士通の時田隆仁社長は「日本の技術力、物作りの強さを示すことができた」と述べた。資源の乏しい日本が経済大国に成長した背景にあるのが、世界に誇る技術力や応用力。富岳開発の根底にある日本の強みは、世界のスパコン開発競争に一石を投じそうだ。

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南北連絡事務所爆破「北朝鮮の自制を強く求める」

2020/6/23 火曜日

 

 北朝鮮が、韓国との南北交流事業の象徴である開城工業団地内の南北共同連絡事務所を爆破した。今月に入り、北朝鮮は韓国の脱北者団体が金正恩朝鮮労働党委員長を批判するビラを散布したことに強く反発しており、連絡事務所爆破は南北間の通信線遮断に続く対抗措置の一環とされる。今回の爆破により、北朝鮮の対決姿勢が一層鮮明になり、韓国の文在寅大統領が進める南北融和は大きく後退し、東アジア情勢の不透明感が増している。
 一連の対抗措置は、市民団体の行った活動に対するものとしては、過剰・過敏な対応に思える。その背景には、北朝鮮の非核化をめぐる米朝対話が、米朝双方の思惑の違いにより、暗礁に乗り上げ、国際社会の制裁が長期化していることが挙げられる。また、新型コロナウイルスの影響で、北朝鮮とは経済的にも大きなつながりのある中国との国境が封鎖されるなどしたため、北朝鮮経済が苦境に陥りつつあるとみられていることも要因の一つにあるのではないか。
 北朝鮮は韓国を「敵」と表現して対決姿勢を再び強めることで、国内の緊張を高め、体制引き締めを図る狙いがあると考えられる。また韓国にプレッシャーを与え、米国への働き掛けを強めることで国際社会による経済制裁の緩和、解除を狙っている側面もあるだろう。
 北朝鮮軍は、南北協力事業の金剛山観光や開城工業団地がある地域への軍部隊展開や、南北軍事境界線付近での軍事訓練再開などを計画していると明らかにしている。南北共同連絡事務所の爆破に続けて、さらにこうした行動をエスカレートさせれば、韓国軍との軍事的緊張が一層高まることになる。
 北朝鮮の今回の対抗措置は、歴史的会談と言われた南北首脳会談や米朝首脳会談に象徴される、朝鮮半島における外交的解決への努力を無に帰させる、時代に逆行する行為だ。対話路線、南北融和路線の象徴である共同連絡事務所の爆破などという軍事力を背景にした挑発的な対抗措置は、いたずらに域内の状況を不安定化させ、緊張を高めるもので、国際社会からも強い非難を受けている。不測の事態を呼び起こしかねない行動は厳に慎むべきだ。
 北朝鮮は、今回の挑発行動で米国を交渉のテーブルに着かせ、何らかの譲歩を引き出す狙いがあるのかもしれない。だが米国は今、大統領選の真っただ中にあり、デリケートな時期にある。こうした時勢で“砲艦外交”のような手段で自己の主張を遂げようとしても、かえって状況の混乱を招きかねないのではないか。
 北朝鮮が国際社会からの経済制裁解除を望むならば、行うべきは国際社会が求める核開発や長距離弾道ミサイル計画の廃棄に向けた具体的行動に帰結する。改めて挑発的な行動の自制を求めたい。

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