社 説

 

親の体罰禁止「“しつけ”見直す基本姿勢に」

2019/6/21 金曜日

 

 今国会で可決、成立した改正児童虐待防止関連法に、児童相談所(児相)の体制強化とともに、親による体罰の禁止が盛り込まれた。
 体罰禁止は、子どもへの虐待事案で、虐待を「しつけ」と主張するケースが多いことを踏まえた。この規定自体に罰則はなく、理念やスローガン以上の効果を疑問視する声もあるが、しつけの在り方に関する基本姿勢が定まった意義は決して小さくない。
 子どもの性格などにもよるが、身体的な痛みを伴わないしつけは簡単なことではない。特に体罰を繰り返し受けて育った親、体罰が半ば当たり前だった世代にとっては、にわかには受け入れ難いかもしれない。
 体罰により、その場で子どもを従わせるのは簡単だ。しかし、子どものその後の人格形成には悪影響を及ぼすことが多いとされている。しつけの名で始まった体罰が、やすきに流れるまま継続的な虐待へとエスカレートした時、どのような結果を招くかは、痛ましい事件の数々が示す通りだ。
 子どもと向き合い、言葉と行動で示して理解を得ながら進めるしつけと育児。例えばこうしたプロセスを心掛け、繰り返すことは、子どもばかりでなく親の成長にもつながるだろう。専門家の協力を得ながら自治体などが事業化して、その機運を高めてもいい。短期間で目に見える成果は表れにくいかもしれないが、時間を経る中で虐待事案の減少などへとつながるに違いない。
 改正法には、虐待を受けた子どもの命の保護を強化する観点から、子どもを一時保護して親から引き離す「介入」と、虐待した親を立ち直らせる「支援」の担当職員を分けることにした。「介入」側と「支援」側を単純に分けられるかといった疑問、課題として両者の連携の在り方などが挙げられているが、子どもの安全確保をスムーズに進める方法の確立には試行錯誤がまだ必要なようだ。虐待した親への再発防止策として「医学的または心理学的知見に基づく指導を行うよう努める」とした条文も盛り込まれた。
 児相の機能強化は必要である。ただ、これらは虐待事案が発生してからの対応についてである。そもそも論として、虐待のない家庭が望ましいのは自明の理である。体罰を伴わないしつけの在り方を含め、虐待をいかに予防するかが、もっと論じられていい。
 児相での児童虐待相談対応件数は右肩上がりのまま推移している。児相の体制拡充が追い付かないまま、人手不足による現場の疲弊が指摘されている。だからといって児相の問題対応が許されるわけではないが、法改正で現場の疲弊は緩和されるだろうか。虐待自体の抑止を含めて、多面的な観点から論じる余地がまだありそうだ。

∆ページの先頭へ

党首討論「野党のふがいなさが目立つ」

2019/6/20 木曜日

 

 国会で約1年ぶりとなる党首討論が19日行われた。参院選を控える中、安倍晋三首相が衆院解散に言及するのか注目されたが、首相は「解散は頭の片隅にもない」と述べるにとどめた。政府・与党は26日までの国会会期の延長はしない方針で、最終盤を迎えた国会は、野党側が内閣不信任案の提出に踏み切れるのかが焦点となる。
 衆参同日選とならない場合、参院選は7月4日公示、同21日投票の日程で行われる見通し。公示が2週間後に迫り、参院選の争点にしようという思惑からか、党首討論で野党側は老後資金2000万円問題を集中的に取り上げ、首相の政権運営をただした。
 ただ、立憲民主党の枝野幸男代表、国民民主党の玉木雄一郎代表、共産党の志位和夫委員長とも内閣不信任案の提出に言及することはなく、政権と厳しく対峙(たいじ)する姿勢を示せなかった。
 というのも、立憲は野党側の準備不足を突く「不意打ち」解散―衆参同日選の可能性は消えていないとして、解散を誘発しかねない内閣不信任案提出には慎重で、国会最終盤に来て野党間の足並みが乱れていることが背景にある。
 枝野氏は16日、「解散がなさそうだから不信任案を出すと(政権側に)思われるのはしゃくだ」「参院で問責決議案を出すのが筋ではないか」などと不信任案に否定的な考えを語った。
 立憲など主要野党の国対委員長は18日、国会内で内閣不信任案の扱いを協議したが結論は出なかった。立憲が提出に消極的なことについて、国民民主党の衆院議員懇談会では「ここで野党が戦う姿勢を見せないでどうするのか」と激しく突き上げる声が上がった。
 社民党の又市征治党首も会見で「堂々と出すべきだ」と主張。共産党幹部も「内閣不信任案以外は出しても注目されない」と語り、立憲の対応を疑問視する。
 衆院選への準備不足は否めず、さらに同日選となれば参院選での野党共闘も困難になることから、特に野党第1党の立憲の立ち位置は難しい。
 ただ、それを見越した政府や自民党は、菅義偉官房長官が不信任案の提出が衆院解散の大義になるとの考えを示したり、当初は見送るはずだった法案を今国会に提出する構えを見せた上で会期を延長する可能性を示唆したりするなど、徹底的に揺さぶりをかけた。
 吹き荒れる解散風の前に、野党では離党者が相次いでいるほか、政権を追い詰めるような目立った抵抗もできずに会期末を迎える、ふがいない事態を招いた。
 党首討論では唯一、日本維新の会の片山虎之助共同代表が、衆院解散の考えがあるのか首相に迫ってみせた。テレビやインターネットで中継を見守った国民は、今国会の野党側の姿勢をどう評価するだろう。

∆ページの先頭へ

ねぷたの今後「伝統継承へ多様な方策探ろう」

2019/6/19 水曜日

 

 弘前ねぷたまつりの参加団体の一つが、ねぷたの新しい骨組み制作費をクラウドファンディング(CF)で集めている。CFはインターネットで資金提供者を募る仕組み。伝統の祭りを継承していくため、時代の先端を行く方法を活用している点が面白い。
 CFを活用したのは「本町ねぷた愛好会」。同団体は今年で31回目の出陣を迎える常連。これまで使ってきた木製の骨組みが老朽化したため、新たに鉄骨製を制作することを決めたのだが、例年以上に費用がかかることから、資金を集める方法としてCFを採用した。
 祭りを守るため、CFを活用する例は他にも見られる。弘前ねぷたまつりでも数年前、CFで制作費を調達した組ねぷたが出陣して話題を集めた。日本三大流し踊りに数えられる黒石よされの運営費を集めるためにもCFが活用された。
 祭りの運営にCFを活用する流れは全国的なものとなっており、県外に目を転じると、京都の祇園祭ではCFで募った資金を警備費などに充てているようだ。祇園祭の場合、観光客が増えたことに伴い警備態勢の拡充が求められているといった事情があるらしい。祭りそれぞれに事情があり、CFで集められた資金の使途もさまざまで興味深い。
 本町ねぷた愛好会の場合、新しい骨組みを制作するためにまとまった資金が必要になったという事情があるが、CFを活用した狙いは他にもある。
 ネットの大きな利点の一つは、世界中の人たちが瞬時に情報を共有できることだろう。同団体の関係者もこの点を十分認識しており、「弘前から遠く離れた人にも資金面でねぷたに関わってもらい、興味を持つきっかけにしてほしい」と呼び掛ける。
 弘前市も他の地方都市と同様、人口減少や少子高齢化といった課題に直面している。幸い、同市内では各町内会のねぷたに対する理解が深く、それぞれで資金を賄って運行に参加している。この点が弘前ねぷたまつりの大きな特徴にもなっている。
 ただ、地元の識者が指摘するように、町内会の住民の寄付や行政の補助金だけで祭りをこの先も続けられるとは限らないのである。祭りに親しみ、愛するのであれば、地元が資金面で祭りを支えるということを基本としつつも、伝統を継承するため多様な方策を探る必要はあるのではないか。
 弘前ねぷたまつりの伝統とは何か。議論しだすと、さまざまな意見があるはずで、一言で表現するのは難しい。ただ、ねぷたには人々を引き付ける魅力があり、だからこそ長年受け継がれてきたということに異を唱える人はいないだろう。新たな資金確保策によって、ねぷたがこの先も多くの人を楽しませられるのであれば、大いに活用すべきと考える。

∆ページの先頭へ

自殺対策「SOSが出せる社会に」

2019/6/18 火曜日

 

 本県の自殺者数が259人で、人口10万人当たりの自殺率は20・6となり、全国ワースト2位だったことが、厚労省が公表した2018年の人口動態統計(概数)で分かった。自殺者数、自殺率は2年連続で減少しているが、全国に比べて本県の自殺死亡率が高いことが示された。さまざまな悩みを抱え、死を考えてしまう人の存在にいかに気付き、支援の手を差し伸べられるか。これまでも本県はこの問題に力を入れて取り組んできたが、引き続き検討することが必要だ。
 本県の自殺者数、自殺率はともに減少傾向にある。10年前は自殺者数は476人、自殺率は34・6だったが、ここ5年は自殺者数が200人台、自殺率も20台前半で推移しており、改善している。ただ全国順位では15年がワースト11位、16年は同5位、17年は同3位、今年が同2位と悪化が続いており、自殺者数が減っているからといって楽観はできない。
 県や市町村、県内の関係機関は以前から自殺予防対策に力を入れ、さまざまな取り組みを進めてきた。市町村長らトップを対象としたセミナーや自殺を考える人に気付き、必要な支援機関につなげるゲートキーパーの養成など。相談窓口も多数開設されている。昨年3月に県が策定した計画では23年までの数値目標を自殺死亡率16・6、自殺者数193人以下とし、高齢者対策、生活困窮者対策、勤務・経営問題対策、子ども・若者対策の四つを重点施策として取り組んでいる。
 県は今回の統計についても、自殺者は高齢者の割合が高いと分析。家族と同居していても孤立する高齢者がいるという問題を指摘、他人に相談しやすい環境づくりが必要だとして、市町村や関係機関などと連携して取り組むとしている。
 ただ自殺予防対策は考えれば考えるほど難しい面がある。自殺の原因はさまざまだ。病苦などの健康問題から死を考える人もいれば、経済問題や家庭の問題が原因になる人もいる。いじめが原因の場合もあるだろう。子どもや若者と、働き盛り世代、高齢者層ではおのずと対策も異なってくるし、それぞれが抱える事情や背景によっても違ってくるはずだ。
 また自殺する人は男性が多く、たとえ悩みがあっても他人に相談せず、抱え込むケースが多い。近年は昔に比べると家族同士や地域社会とのつながり、他者とのコミュニケーションが希薄になっている。孤立する人に周囲の人がなかなか気が付かないという状況は容易に想像できるし、悩む人との接点をどう増やしていくかを真剣に考え続ける必要がある。
 ゲートキーパーや多様な相談窓口の活用を呼び掛けることはもちろんだが何より重要なのは社会全体が他者に対してより寛容になることなのではないかつらい時に周囲にSOSが出せるしんどい時には少し休んでやり直せるそういう社会であってほしいものだと思う。

∆ページの先頭へ

若者向けの選挙戦略「若者の心をつかむ政策発信を」

2019/6/15 土曜日

 

 今夏の参院選に向け、県内では自民党公認で再選を目指す現職の立候補予定者と、野党統一による立候補予定者の一騎打ちになる公算が大きく、各党とも着々と戦いの準備を進めている。一方で「選挙イヤー」となっている今年の県内は、各選挙の結果が出るたびに投票率の低迷が課題となっている。
 年代別の投票率は高齢者世代が高く、若者の政治に対する関心をどのように高め投票行動に移してもらうのか、多くの自治体が頭を悩ませているところだ。そのような中、目の付け所としてユニークだが、気になる動きがある。インターネット交流サイト(SNS)で、検索を容易にするハッシュタグ付きのワード「#自民党2019」プロジェクトだ。
 若者に関心を持ってもらうことを目的に、音楽やファッション、アートなどと連動させた情報発信に挑戦している。人気ゲーム「ファイナルファンタジー」シリーズでキャラクターデザインを手掛けるなど、若者に認知度の高い天野喜孝氏を起用し、「未来を切りひらくサムライ」をテーマに描いた安倍晋三氏のイラストを、「格好いい」と受け止めた若者も多かったことだろう。
 また若い女性に人気の雑誌「ViVi」ともウェブ上でコラボレーションを展開。目指したい社会としてモデルたちが「いろんな文化が共生できる社会に」「人を見た目で判断しないでほしい」「広い視野を持って」などのポジティブなメッセージを発し、モデルたちの考えたメッセージ付きプリントTシャツに、自民党のロゴマークを入れてプレゼントする企画もあった。
 若者の関心を高めるという意味で、目の付け所は悪くない。若者が政治に関心を持ち、政治を語ることに「おしゃれ」「格好いい」というイメージを持たせる戦略はあってもいい。であるならばこれは、投票率アップに向けた国全体のキャンペーンとして展開した方が良かったのではないだろうか。
 参院選に向け、自民党が若者向けのイメージアップ戦略を展開するのは当然のことだが、政策や争点と絡めたイメージアップではなく、「おしゃれで格好いい」と感じさせるだけの戦略で推し進めるのであれば、政党としてむしろ邪道なのではないか。
 若いモデルたちがキャンペーンで発信した「差別するのではなく、他の文化を認めて」「他人の価値観を理解し、尊敬し合えること」といった前向きなメッセージも、夫婦別姓や同性婚に慎重なスタンスを示す自民党の方向性とは、やや異なるようにも見える。
 自民党には自民党の「格好よさ」があるはずだ。与党として説明責任を果たし、山積する課題に真摯(しんし)に向き合う。その姿勢をこそ強く打ち出し、若者の心をつかむメッセージを発してほしい。

∆ページの先頭へ

Page: 1 2 3 4 5 6 7 8 9 ... 130

当サイトでは一部、Adobe Flash・PDFファイルを使用しております。閲覧にはAdobe Flash Player・Adobe Acrobat Readerが必要です。最新のプラグインはアドビ社のサイトより無料でダウンロード可能です。

  • Adobe Flash Player ダウンロードセンター
  • Adobe - Adobe Reader ダウンロード