社 説

 

移住者支援「事業者に当事者意識が必要だ」

2019/8/16 金曜日

 

 人口減少が著しい本県にあって、県外への流出を防ぎ、県内への流入を増やすことが喫緊の課題となっている。その中で、県外からの移住を促すことは有効策の一つであり、各自治体が熱心に取り組んでいる。
 県もさまざまな施策を展開しており、その一つとして昨年8月、本県への移住に関心がある県外在住者が、民間事業所で割引などの特典を受けられる無料会員制度「あおもり移住倶楽部」をスタートさせた。
 当然、移住には初期費用が掛かる。移住先を決めるために目当ての土地に何度か足を運び、その都度宿泊施設を利用しなければならない。移住先が決まれば、今度は引っ越し作業が待っている。もろもろを合わせれば、費用はかなりかさむだろう。
 自ら望んだ移住ではあろうが、初期費用は大きな負担だ。県の制度はこのような負担を少しでも軽減できればとの狙いでつくられたもので、会員数も県の目標をすでに超えている。この点を見ても、ニーズの高さがうかがえる。
 地方への移住促進をめぐっては就職先を見つけるといった問題があり、しばしばクローズアップされるが、こまごました初期費用の軽減も課題の一つであり、支援策はもっとあっていい。県の制度「あおもり移住倶楽部」が今後、一層充実されることを期待したい。
 そこで今、同制度の課題として浮かび上がっているのが、サービスを提供する協賛事業者数の伸び悩みだという。制度を利用しようと登録する会員が順調に増えている一方で、サービスを提供する事業者が増えなければ、制度はうまく機能しない。より多くの事業者が理解を示してくれることを望みたい。
 サービスを提供する事業者は49でスタートし、現在は53。わずか4事業者の増加にとどまっている。事業者を所在する圏域別で見た場合に偏りがあるほか、業種別では宿泊事業者が少ないという。
 制度がまだまだ周知されていないといった事情もあろうが、同時に事業者側も「移住促進が本県の将来にとって必要な施策の一つである」との認識をもっと強く持つべきではないか。
 県は「登録すれば自社のPRにつながる」などと事業者に協力を求めている。当然、こういったメリットはあろう。さらに言えば、県内の各事業者は移住者の雇用先にもなり得るのだ。前述のように、就職先を見つけることは多くの移住希望者にとって大きな課題の一つだ。
 働く場を見つけやすくなれば、本県を移住先として選ぶ人たちがもっと増えるのではないか。自然環境や文化など土地そのものの魅力も大事だが、移住者が円滑に新生活を始められるよう、事業者が当事者意識をもっと持って取り組む必要があるのではないか。

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終戦から74年「未来のために過去を学びたい」

2019/8/15 木曜日

 

 1945年8月15日、日本は終戦を迎えた。軍人のみならず武器を持たない民間人にも多くの犠牲を出した戦争だった終戦から74年を迎え当時を体験した人々は減りつつあり、先の大戦は「記憶」から「記録」へ変わろうとしている。
 戦争末期の45年、本州と北海道を結ぶ物流の大動脈だった青函連絡船は米軍の攻撃を受けており、今も津軽海峡には「津軽丸」「第三青函丸」「第四青函丸」が犠牲者とともに眠る。同年7月28日は青森市が空襲を受けた。同市中心部に古い建物が少ないのは、かつての空襲の被害によるところが大きいとされるが、復興を遂げた今となっては、戦争の傷痕はほぼ見ることができない。
 物理的な被害だけでなく、当時を生きた人々の心の傷もまた忘れてはならない。本紙でも戦争を記憶する本県出身者を取り上げ続けているが、一元的な善悪で割り切ることのできない数々の記憶が語られてきた。紙面に載らなかった言葉も、取材した記者たちの脳裏にある。
 極限的な状況下で、生存していたかもしれない人を助けられず逃げたことを、自身の痛みとして記憶していた人。「戦争が悪いとか死ぬことが怖いとか、当時は考えなかった。そういう教育はされなかった」と回想した人。命懸けで戦った一方で「日本は人間を大切にしない国だから、戦争はいずれ負けると思った」という元軍人の言葉も取材で耳にした。
 南方の戦線では米軍との圧倒的な兵力差の中、飢えと病に苦しみながら日本軍は猛攻撃を仕掛け、いくつもの隊が玉砕した。日本軍は他国の軍隊に比べて飢え死にする比率が高かったとされ、「生き恥をさらさない」などの精神論が重んじられた半面、食糧補給は軽んじられていたことが指摘されている。
 戦後、日本は驚異的な復興を遂げてきた。東日本大震災などの大きな災害も発生したが、混乱の中でも整然と列を作るなどして行動する日本人の姿は海外からも称賛された。忍耐強く、周囲に迷惑を掛けず、集団を維持しようとする精神性は美徳だが、権力に利用されやすい側面があることは否めない。
 日本には今も、困難に対して十分な備えをする前に「気持ちで乗り越えろ」と精神論で語る気風が残っていないか。我慢し過ぎる気質のためか同調圧力が強く、個性を生かした多様性が海外より育まれにくいともされる。
 戦争の記憶が継承されにくくなったとしても、日本が「戦前」と「戦後」で完全に分断されるものではなく、日本人の気質が一変したわけでもない。地続きの時代をわれわれは生きている。戦時中に日本人は何に耐え、何に努め、何を犠牲にしたのか。そこには今の時代にも通じるものが何かしらあるはずだ。
 今を知るためにも過去を学び、そして未来に向かいたい。

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最低賃金「人材を確保できる賃金に」

2019/8/14 水曜日

 

 青森地方最低賃金審議会が8日、本県の最低賃金を28円引き上げ、時給790円とするよう青森労働局長に答申した。本県の最低賃金はここ数年、引き上げが続いており、今回の上げ幅は賃金を時給で示す方式となった2002年以降で最大だという。現在、異議申し出を受け付けており、最短で10月4日から新たな最低賃金が適用となる見通しだ。
 厚生労働省の諮問機関である中央最低賃金審議会が示した本県の目安額は26円以上の引き上げ。本県での審議は賃上げの方向では一致したが、金額をめぐって労使の意見が分かれ、最終的には採決で決定。目安を上回る28円増の提案に、使用者側の委員は全員反対、労働者代表と公益代表の賛成で決まったという。
 賛成、反対の両者の言い分はどちらも分かる。使用者側に言わせれば、賃上げは毎年続いており、ここ4年はいずれも20円超の上げ幅だ。本県は中小企業が多く、首都圏の大企業などとは違って景気回復の実感が感じられない中で、労働力不足や働き方改革といった課題への対応を迫られている。中小企業は人員もノウハウも十分ではないことが多い。厳しい局面にある企業も少なくないだろう。この5年間で97円の引き上げになったとして「企業努力だけでの対応は限界に達している」と厳しい現状を指摘している。
 ただ中央とは依然として賃金格差がある。中央審議会が示した引き上げ後の全国平均の時給は901円。東京は神奈川県と共に初の1000円台を上回る1013円だった。本県の790円は全国15県と同額の最も低い最低賃金額で、平均とは100円、中央とは200円近い差がある。人材確保の競争が激しくなる中、このままでは優秀な人材が県外に流出してしまうという公益代表や労働者側の懸念はもっともだ。賃金が安く、人手不足で常に多忙な職場は、特に若い労働者に敬遠されてしまう。また働いても生活が苦しい、という状況に陥らないように、一定の賃金は確保されるべきだ。
 今後も人口減少、労働力不足の傾向は続き、働き手を確保するための競争はますます激しくなるだろう。働く側が職場を選ぶ時に、分かりやすいのは何といっても賃金や待遇面だ。すぐに対応できる中小企業ばかりではないだろうし、無理な賃上げで企業自体が立ちゆかなくなっては本末転倒だが、何の手も打たなければ、今後はますます厳しくなっていくことは間違いない。業務の見直し、会社の事業規模の見直しなど、踏み込んで会社の将来を考える姿勢が必要なのだろう。
 審議会では国や行政に対し、中小企業支援の強化を求める声も出たようだ。低賃金は地方の人口流出を加速させかねない。今回、目安を上回る改定額を示した県が相次いだのも、そうした懸念が強いからだ。中小企業が腰を据えて取り組めるような行政のサポートを求めたい。

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ブロック塀安全対策「行政、地域ともに早急対応を」

2019/8/10 土曜日

 

 昨年6月の大阪北部地震で女児が小学校のブロック塀の下敷きとなり、死亡した事故に絡み、文部科学省は学校の安全対策調査結果を公表した。それによると、ブロックなどの塀があった全国の学校のうち、半数強に当たる52・8%で安全確認や再整備といった対策が完了したことが分かった。
 内訳を見ると、外観と内部の点検を行い、安全性を確認できたのが6343校(31・3%)。塀を撤去したり金網フェンスや木塀などに再整備したりしたのが4365校(21・5%)で全体の5割強を占めた。一方で、点検・対策の完了予定時期を「来年3月までに」と回答したのは3915校(19・3%)、「それ以降」が1893校(9・3%)、「点検中」が3547校(17・5%)などとなっている。
 痛ましい事故から1年以上が経過し、いまだに半数強という結果は、対応が遅いと言われてもやむを得まい。文科省は、対策などを終えていない学校に対して早急な点検と対策を求める通知を都道府県教育委員会などに出した。悲惨な事故が起きてからでは遅すぎる。いずれも財政面など何らかの事情があるのだろうが、事故や地震など災害は、それぞれの事情を察することもなければ、考慮することもなく突然に発生する。緊急に対処すべき事案と思われる。「それ(来年3月)以降」と言わずに、一日も早い対応を願いたい。
 本県では4月1日時点で、ブロック塀などを設置していると回答した119校中、75校が対策工事などを完了し安全性が確保されたほか、ブロック塀以外の塀などに整備したり、撤去したりした学校が16校。26校が今年度内に安全対策工事を完了、小学校2校が来年度以降に安全対策を終了させる予定と、ほとんどで対応にめどが付いた。
 安全対策の端緒となった大阪府高槻市の事故に関しては、ブロック塀自体が建築基準法に違反していた上、事故前から危険性の指摘があったにもかかわらず、点検を行った市教委の技術職員が建築士などの資格を持っておらず、学校側に「安全性に問題はない」と口頭で回答していた。幾重にも不手際が重なった結果の人災とも言える結果となっている。
 ブロック塀が建築基準法に違反していたことは、決して同市だけの話ではあるまい。それだけに緊急性が高く、早急に取り組む案件である。さらに児童の場合、ブロック塀は注意する大人が周囲にいなければ、つい登ったり、隠れたり、飛び降りたりと格好の遊び場としてしまうものだ。学校関係者や保護者、地域の大人が平素から「ブロック塀や塀の近くで遊んではいけない」と注意を促す必要もあるだろう。行政の対応はもちろん、地域全体で児童たちを見守る社会づくりも急ぎたい。

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弘前ねぷた閉幕「祭りと街の認知度高める契機」

2019/8/9 金曜日

 

 弘前ねぷたまつりが7日、なぬか日の午前合同運行で幕を閉じた。会期中の人出は168万人で、過去10年間で見ると2007年、16年と並ぶ2位タイ。7日間を通じて大きなトラブルもなく、津軽の“熱い夏”が去った。
 会期中は連日、真夏日を記録し、ねぷたの大敵である降雨や強風もない最高の天気に恵まれた。まつり本部の人出集計によると、夜間運行日のほとんどが25万人以上で推移。最多は駅前運行初日の5日で、平日にもかかわらず32万人を記録した。土手町運行は週末に当たるため、当初から盛況が予想された3日の30万人が最多。この結果、なぬか日までの合計は昨年を8万人上回った。
 市観光課の粟嶋博美課長は、令和のスタート、本県初の市として弘前が誕生してから130周年という二つの節目が祭りの盛り上げに一役買ったとするとともに、関係団体が安全な祭り運営に対する意識を共有したことで「安全で楽しい祭りにできた」と総括した。
 比較的自由度のある他地域のねぷた・ねぶたと違い、歴史と伝統を重んじてきた弘前ねぷたまつり。その中で弘前さくらまつり公式応援キャラクターに採用し話題となった「桜ミク」とねぷたをコラボレーションさせる初めての試みを企画した。桜ミクをモチーフにした前灯籠・前ねぷたのコンテストがそれだ。弘前観光コンベンション協会の白戸大吾事務局長によると、桜ミク目当ての観光客が見られ、SNS(インターネット交流サイト)投稿も多数あったという。統制の取れた運行隊形と迫力あるねぷた絵、勇壮かつ哀愁も感じさせる囃子(はやし)が織り成す城下の祭りを楽しみたい層を満足させつつ、ミクファンという異なる層を呼び込むことができたようだ。
 弘前ねぷたが重要視する「伝統」の言葉からは、変革を寄せ付けない閉鎖的イメージを感じる。しかし、日本を代表する春祭りである弘前さくらまつりに続き、歴史ある夏祭りに若い世代に人気のキャラクターを用いた柔軟さは、実は弘前らしさかもしれない。かつて仙台、盛岡に次ぐ東北第3の都市規模を誇り、東北初のデパートを有した弘前には、新しい物好きの市民性があると言われる。厳格な基準のない前灯籠・前ねぷたであれば伝統を崩すことなく、新たな話題をつくることが可能で、現代版口コミと言えるSNSによる効果的PRも促せる。
 弘前ねぷたまつりと、訪日客も注目する青森ねぶた祭を比べると、ともに国の重要無形民俗文化財でありながら知名度で劣るのは否めない。新たな層への働き掛けは、両祭りの知名度の差を少しでも縮めるための一助となったのではないだろうか。欲を言えば祭りをきっかけに移住促進を目指したいが、弘前を知らなかった人に認知してもらえたのであれば、今年の祭りは成功と言っていい。

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