社 説

 

IR汚職事件「元副大臣1人の問題でない」

2019/12/28 土曜日

 カジノを含む統合型リゾート(IR)事業に絡む汚職事件で、秋元司衆院議員が収賄容疑で東京地検特捜部に逮捕された。特捜部による現職国会議員の逮捕は2010年1月以来という。
 逮捕容疑は、秋元容疑者がIR担当の国土交通兼内閣府副大臣だった17年9月下旬、IR事業参入を目指していた中国企業「500ドットコム」に便宜を図った見返りとして、現金など370万円相当の賄賂を受け取った疑い。秋元容疑者は接見した弁護士に「一切身に覚えがない」と話しているという。自民党に離党届を提出し、受理された。
 利権が絡むところに事件が絶えない現実に「またか」との思いが募る。疑惑の徹底解明を求めたい。
 白須賀貴樹衆院議員と勝沼栄明前衆院議員の地元事務所も、特捜部の家宅捜索を受けた。贈賄容疑で逮捕された3人のうち、中国企業「顧問」の紺野昌彦容疑者は、多くの自民党若手議員と交流があったとされる。ともに事件の関係先とみられていて、政界での捜査対象拡大も想定される。
 容疑を否認しているとはいえ、秋元容疑者の中国企業との関わりは、蜜月と言っても過言ではなかろう。癒着を疑われても仕方あるまい。事業を所管する副大臣が、事業に関連する特定企業とつながりを持つことに違和感を覚える。
 秋元容疑者は副大臣就任前から、IRを推進する超党派の国際観光産業振興議員連盟に所属。16年12月に成立したIR推進法の国会審議では衆院内閣委員会の委員長を務めていた。中国企業は主催したIR関連シンポジウムで講演した副大臣就任直前の秋元容疑者に、講演料として200万円を支払っていた。容疑者は就任後に中国企業本社を訪問。IR事業構想が持ち上がっていた北海道留寿都村へ招待され家族と旅行した際の旅費や宿泊費などを中国企業側が負担した疑いも逮捕容疑に含まれている。
 IR事業は、安倍政権が20年東京五輪後の日本経済の起爆剤として成長戦略の一つに位置付けていた。政権は元担当副大臣の不正に至った経緯を検証する必要があろう。首相肝煎りの事業であるだけに、政権内には秋元容疑者のこうした動きを黙認する空気はなかったか。
 今回の逮捕は、IR事業自体の評価に関するものではない。しかし、カジノについてはギャンブル依存症患者の増加やマネーロンダリング(資金洗浄)といった面から反対論や慎重論が根強くある。だからこそ、整備計画は専門家や国民の意見を踏まえながら慎重に進める姿勢が不可欠だった。秋元容疑者が立場をわきまえていたかは疑わしい。
 「政権そのものが関与したわけではない」という見解もあるが、国政の信頼に関わる問題である。一度立ち止まってみる選択肢があっていい。

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社会保障「国民巻き込んだ改革議論を」

2019/12/27 金曜日

 

 2020年度の政府予算案は一般会計総額が過去最大の102兆6600億円となった。歳出の3分の1を占め、過去最大となった社会保障費が押し上げた。急激な少子高齢化により、制度を支える現役世代の負担は重くなるばかり。早急な改革に向けて国民を巻き込んだ議論が必要だ。
 来年度予算案の内訳をみると、最大の歳出項目である社会保障費は高齢化に伴う医療費の増加などにより、今年度当初から約1兆7300億円増え35兆8600億円となる。
 国債の利払いや償還に充てる国債費は23兆3500億円、自治体の財源不足を補う地方交付税交付金は15兆8100億円。つまり政策を実行するための予算は27兆6400億円程度で、総額の3割に満たない。
 さらに歳入に目を向けると、税収は63・5兆円ほどであり、不足分は国債、つまり借金で賄っている。現在の社会保障制度を続ける限り、予算規模は膨れ、借金が増えることになる。
 改革の必要性は分かっていても負担が増すことは避けたいのが国民心理。そこで政府の全世代型社会保障検討会議は、高齢者になってもある程度働き続け、社会保障給付に全面的に頼らず「支え手」に回ってもらう改革策を打ち出した。
 同会議が政府予算編成に先立って発表した中間報告では▽年金受け取り開始時期を75歳まで延ばせるようにし、繰り下げた分だけ受け取る月額が増える▽企業による70歳までの就業確保義務化を視野に入れ、当面は努力規定を設ける▽病院での後期高齢者窓口負担について、75歳以上で原則1割の負担を収入に応じて一部で2割に引き上げ―などを挙げた。
 ただ、70歳定年が努力義務にとどまるため、企業の足並みがそろうとは思えない。負担感の大きい中小企業はなおさらで、踏み込み不足は否めない。75歳以上の窓口負担についても財務省などが求めていた「原則2割負担」は見送られ、給付費の抑制効果は小さくなりそうだ。
 今回の中間報告は、「長く働く社会」を打ち出しながら具体的な裏付けに乏しく、高齢者医療の膨張に歯止めをかける方策も不十分だ。これでは現役世代の不安は募るばかりである。特に若い世代は「自分たちの世代は年金はもらえない。だったら自分で積み立てした方がいい」との声が根強い。
 財源確保という難題も手つかずだ。改革策は当然として、消費税率を何%まで引き上げればいいのか、具体的な検討材料がなければ議論は進むまい。
 政府は各世代の代表はもちろん、中小企業、各産業からも丁寧に意見を聞き、財源の裏付けも示した上で改革議論を進めるべきだ。どれだけの負担で、どれだけの給付となるのか、全体像も早急に示す必要がある。

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リンゴ輸出拡大「新たな販路開拓に本腰を」

2019/12/26 木曜日

 

 国産リンゴの輸出をめぐり、新たな動きが見られている。ベトナム向けに無袋果の輸出が解禁されたほか、インドへの試験的輸出が認められた。リンゴの輸出は近年、好調を維持しているが、さらなる拡大を目指すには新たな販路開拓が必要だ。関係者が本腰で取り組むことを期待したい。
 国産リンゴの輸出量の9割が本県産とされ、県輸出・海外ビジネス戦略では、リンゴ輸出量の目標が4万トンと定められている。2018年産の実績は3万3194トン。戦略では輸出実績が大きい5品目が「最重要品目」と位置付けられ、リンゴも含まれる。そのリンゴの輸出量増加は、県産農産物全体の輸出量を引き上げるために不可欠となっている。
 現在、県産リンゴの最大の輸出先は台湾だ。先人たちが長い時間をかけて現地のバイヤーや消費者の信頼を勝ち取り、今に至っている。このつながりは今後も県産リンゴの輸出戦略において大きな柱の一つであり続けるはずだ。ただ、日本国内の消費量は人口減少などによって減ることが目に見えており、輸出への期待が高まることは間違いない。そう考えれば、新たな販路開拓はすぐにでも着手すべき課題なのではないか。
 ベトナムへの輸出については、病害虫を防ぐとの理由で、有袋栽培のものに限られていた。しかし、日本の生産現場は労働力不足を背景に、手間のかかる袋掛けをしない無袋栽培の割合が増えており、県などは無袋果の輸出解禁に向けた交渉を進めるよう国に求めていた。
 交渉の結果、病害虫を殺処分する低温処理を施すことを条件に解禁することになった。輸出には生産園地や関係施設の登録が求められるが、県内7団体(4農協、3商系団体)が既に21園地(面積23ヘクタール)と23施設の仮登録を済ませた。県によると、早ければ来年1月中旬に出荷されるという。
 インドへの試験的輸出も、一定期間の低温処理、くん蒸処理などを条件に行われる。こちらは弘前市の商社など2社が取り組んでいる。このほか、黒石市などは11月、地元産リンゴ約4トンをタイに向けて出荷した。
 重ねて強調するが、日本国内の人口減少は今後加速し、市場も縮小する。その目減り分を補うのは輸出だ。県産をはじめ国産リンゴの海外での評価は高く、新たな輸出先を見いだそうと意欲的に取り組む人たちもいる。長い歴史を持つ国内のリンゴ産業を守るためにも、新たな販路開拓についてはこれまで以上の取り組みを期待したい。
 ベトナムやインドの例で見られるように農産物の輸出入は検疫の問題なども絡み、国レベルの交渉が必要だ。国産農産物輸出の中で果たすリンゴの役割の大きさを政府も十分認識しているはず。販路開拓に向けた支援を引き続き求めたい。

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弘前市の情報流出か「再発防止へ原因の究明徹底を」

2019/12/25 水曜日

 

 弘前市職員の個人情報が外部に流出した可能性があり、市が調査を進めている。流出したとみられるデータは全職員に相当する2747人分の氏名や住所、給料など約70項目に及ぶという。
 誰が何のために流出させたのかは明らかではないが、市は市民の個人情報も含め、さまざまな行政情報を管理しているだけに、流出は決してあってはならない事態である。市は刑事告発も視野に調査を進めている。職員や市民の不安を一刻も早く解消するために、事実関係を明らかにし再発防止へ全力を挙げてほしい。
 情報流出の可能性が明らかになったのは今月13日。県内の一部報道機関にメールで送られたデータが、市保有の個人情報データに酷似していることを、市が記者会見で明らかにした。内容は、2017年度の職員や非常勤職員ら全職員とみられる氏名、職員番号、住所、個人の月額給料、最終学歴、健康診断の内容、採用年月日など膨大な情報量だという。
 11月18日~今月12日には、市に匿名で「職員の個人情報リストファイルが流出していますが、いいのでしょうか」「マスコミにも情報提供を考えています」といった情報流出を示唆する、半ば脅迫とも受け取れるメールが届き、一部職員の個人情報が記載されたメールも届いたため、市が内部調査を進めていたさなかだった。
 全国的にも、神奈川県庁で行政文書管理に使われていたハードディスクが転売され、大量の個人情報流出が明らかになり、全国各自治体の情報セキュリティーの在り方が問われていた矢先の出来事だっただけに、多くの市民らが情報管理の在り方に不安を募らせる結果となっている。
 市によると、職員らの個人データにアクセスできる職員は担当課の約20人と限られ、データ保存ファイルを開くためには異なるパスワードを複数回入力しなければならないという。データを持ち出すには課長に申し出た上で専用のUSBのみ接続できる設定になっており、厳重な管理体制になっている。ただ、パスワードの運用について不備を指摘する声もあり、今回の問題を踏まえ、管理体制の見直しは急務だ。
 これまでの市の調査によると、個人情報に対して外部からアクセスした形跡はなく、市は「限りなく内部情報の流出に近い」として、刑事告発も視野に調査を進めている。流出したのは17年度当時のデータとみられることから、当時在籍していた職員も含め、内部情報のデータを知り得る可能性のある職員を対象に調査している。
 再発防止のためには事実関係と原因の究明が欠かせない。同時に、情報管理の在り方についていま一度再点検し、見直すべき点は見直して流出防止に全庁挙げて努めてもらいたい。

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英国総選挙「EU離脱に向け、対応万全に」

2019/12/24 火曜日

 

 欧州連合(EU)の離脱が争点となった英国下院の総選挙は、ジョンソン首相率いる保守党が単独過半数を制して歴史的勝利を収めた。これにより、2020年1月末に英国が欧州連合(EU)から離脱することが確実な見通しとなった。与党大勝を受け、同国では20日、離脱協定案の基本方針が可決。1973年にEUの前身「欧州共同体(EC)」へ加盟して以来の約半世紀にも及ぶ、英国とEUとの関係は、終止符が打たれることになる。
 開票前の予想では、優勢とされた保守党を「離脱か残留かを問う国民投票の再実施」を主張した労働党が急追し、接戦となるとの見方も出ていたが、開票結果を見れば、想像を超える保守党の圧勝。接戦との報道に危機感を募らせた離脱派の投票行動が勝ったということなのだろうか。いずれにせよ、離脱の是非を問うた国民投票から約3年半にも及んで、国論を二分し続けた離脱協議は、新たな段階に進んだと言えるだろう。
 今後の焦点は、離脱後に英国がEUと結ぶ自由貿易協定(FTA)交渉に移るが、離脱後の経済・社会の激変を緩和するため、同国が一定期間加盟国並みの待遇を受ける「移行期間」は、20年末までとわずか11カ月間に過ぎない。ジョンソン首相は、移行期間を延長しない方針だ。通常は数年にも及ぶと言われる貿易協定を1年にも満たない期間で締結するということは至難の業と言えるだろう。
 長く、EU加盟国であった英国は、単独で実施する貿易交渉の経験が不足しており、実務を担う人材が不足していると言われる。想定を超えた難局が待ち受ける可能性がある。
 民族や言語、文化、経済規模などが異なる国々が、国家の枠を超えた広域な経済、政治などの協力圏域をつくるというEUの試みが、多分に人類史上的な実験であったとすれば、英国のEU離脱もまた、後世から見れば壮大な実験と呼ばれるかもしれない。明確に離脱へのかじが切られた今、いかに経済、社会的な混乱を生じさせないために事態を“軟着陸”させるか、英国、EU当事者にかかわらず、世界各国が知恵を出し合う必要があるだろう。ジョンソン首相は、総選挙での大勝を受けて強気の国会運営を図るだろうが、英国内の事情を優先するだけでなく、世界的な影響を見据えた柔軟な姿勢も問われることになるのではないか。
 今回の総選挙の結果について、日本国内からは政府、経済界などを中心に、冷静な受け止めの声が聞かれるが、移行期間中に英国がEUと貿易協定を結べなければ、物品貿易に関税が課される実質的な「合意なき離脱」に陥りかねない。英国へ進出した日本企業にとっては、離脱後に向けた対応が本格化する。日本においても不測の事態に備えた官民を挙げた努力がさらに必要となるだろう。

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