社 説

 

都知事選告示「新型コロナ対策と五輪争点」

2020/6/20 土曜日

 

 任期満了に伴う東京都知事選が18日告示された。都内では連日、数十人の感染が確認されている新型コロナウイルス対策や、2021年夏に延期された五輪の在り方が主な争点。首都のかじ取り役を選ぶ大切な選挙だが、感染防止に配慮した異例の選挙戦でもあり、来月5日の投開票結果が注目される。
 再選を目指す現職の小池百合子氏。1期目を振り返れば、16年の就任から持ち前の発信力を武器に「小池流」の政治スタイルを確立。対立軸を生み出す手法で時に国政に影響を与え、新型コロナの対応では国に先んじる姿勢を見せて、注目を浴びた。
 就任直後には「安全性に懸念がある」として豊洲市場の築地市場からの移転延期を表明、移転を決めた石原慎太郎元知事への批判を展開して注目を集めた。17年の都議選では地域政党「都民ファーストの会」を率いて自民党都連との対立を演出、圧勝した。五輪の経費をめぐっては、元首相の森喜朗大会組織委員長との対立もニュースになった。
 一方、公約の「七つのゼロ」で達成できたのはペット殺処分ゼロだけ。大騒ぎした豊洲市場には遅れて移転した上、築地市場跡地の再開発構想が二転三転するなど、特筆すべき実績は見当たらない。
 新型コロナで久しぶりに存在感を発揮したものの、当初の対応は鈍かった。国内感染が広がり始めた2月に入っても東京五輪の開催と成功に強い意欲を見せていた。
 ところが3月24日に五輪延期が決まった直後から、新型コロナ対応に活路を見いだしたかのように、精力的にメディアに露出する。政府の緊急事態宣言が遅いと嘆き、休業要請の対象事業をめぐる政府との調整では「天の声が…」などと恨み節を披露、再び世間の注目を集めた。
 ただ、都独自に感染拡大への警戒を呼び掛ける「東京アラート」は、新たな感染者が数十人も確認されながら出馬表明前日に解除され、休業要請も全面解除された。これには「選挙ありきの警報か」「レインボーブリッジを赤く照らしたかっただけか」などと批判も相次いだ。
 英語を交えたワンフレーズを乱発する“小池節”をめぐっては、「都市封鎖、いわゆるロックダウン」のように、都民の危機意識を飛躍的に高めたと称されるものもあるが、「アラート(警報)」など何を意味するのか不明なものもあり、評価は分かれる。
 いずれにしても感染終息が見通せない中、選挙戦ではコロナ対策の強化・拡充が争点になる。各陣営は感染対策として有権者との握手を避けたり、屋内の大規模集会を控えたりする。
 かつてない静かな選挙戦は、一般有権者の関心を高めることができるのだろうか。投票率の行方とともに、都民の判断が注目される。

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河井前法相夫妻逮捕「政権の求心力低下は必至」

2020/6/19 金曜日

 

 昨年7月の参院選で地元県議らに現金を渡し、票の取りまとめを依頼したなどとして、検察当局は18日、公選法違反(買収)容疑で、衆院議員で前法相の河井克行容疑者(57)=広島3区=と、妻で参院議員の案里容疑者(46)=広島選挙区=を逮捕した。ウグイス嬢と呼ばれる車上運動員に対する違法報酬疑惑に端を発した一連の問題は、法務行政トップを務めた現職国会議員夫婦が逮捕されるという異例の事態に発展した。
 河井容疑者は、首相補佐官や党総裁外交特別補佐を歴任し、昨年9月に初入閣したが、直後の同10月、案里容疑者陣営の選挙違反疑惑が報じられ、法相を辞任した。2人は今月17日に自民党を離党したが、今回の逮捕により政権の求心力低下は避けられそうにない。
 河井容疑者の逮捕容疑は、案里容疑者が初当選した2019年7月投開票の参院選をめぐり、同3月下旬から8月上旬、計94人に案里容疑者への投票や票の取りまとめを依頼。報酬として計121回にわたり総額約2570万円を提供した疑い。案里容疑者は、このうち5人に対する計170万円について、河井容疑者と共謀した疑い。
 検察当局は、河井容疑者の関係先から、配布先をまとめた「買収リスト」を押収。リストの記載内容や、事情聴取に現金受領を認めた地元議員らの供述を精査するなどした結果、買収の意図を認定できると判断したとみられる。
 昨夏の参院選広島選挙区(2人区)は、自民党と野党が議席を分け合ってきた従来の選挙戦とは様相を異にし、案里容疑者は同じ自民党の重鎮を押しのけて議員の座に就いた。激烈な争いが「実弾」攻勢につながった可能性があるとみられている。自民党が新人の案里氏擁立にかじを切った背景には安倍晋三首相と現職候補の不仲があったともされる。それを裏付けるように選挙資金をめぐる格差は如実で、両容疑者の政党支部には党本部から「相場の10倍」と言われる計1億5000万円が送金されており、党内からも疑問視する声が上がっている。
 昨年12月には、統合型リゾート(IR)汚職事件で衆院議員の秋元司被告=自民離党=が逮捕されたばかり。新型コロナウイルス対策の持続化給付金などをめぐる数々の疑惑が持ち越されたまま通常国会が17日に閉幕し、政権の立て直しに全力を挙げる安倍首相だが、河井容疑者らの逮捕は今後の政権運営に大きな打撃を与えることは間違いない。
 首相主催の「桜を見る会」など長期政権ゆえの「おごり」とも指摘される問題が後を絶たない中で、またしても発生した「政治とカネ」の問題。国民の政治不信を助長させた責任は大きい。事件の真相解明はもちろんのこと、失墜した政治への信頼回復に向け、政治家一人ひとりがいま一度、襟を正す必要があろう。

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地元旅「気付かない魅力に気付く好機」

2020/6/18 木曜日

 

 新型コロナウイルスの緊急事態宣言が解除され、移動の自粛要請が緩和される中、観光再開の動きが県内でも見え始めた。その中で、地元に目を向けた「マイクロツーリズム(小さな旅行)」などが注目されている。経済を回す一方策として大いに歓迎したい。
 緊急事態宣言が全国で解除されたとはいえ、各地では連日新たな感染者が確認されている。遠距離の移動には慎重にならざるを得ない―というのが大半の人の受け止めではないか。ただ、新型コロナの感染拡大による経済への打撃は相当なもので、回復に向けて少しでも早く動き出したい―というのも大半の人の思いではないか。
 このような状況下、注目されている考え方の一つがマイクロツーリズムだ。弘前市内でも弘前観光コンベンション協会が、しばらく中止していた「まちあるき」などを順次再開。先日、大規模補修工事を終えた旧弘前偕行社などを巡るツアーを行ったところ、近隣の住民らが参加した。
 参加者の中にはサイクルツーリズムに携わっている人もおり、今回のツアーを通じて身近な名所など観光資源の価値を再確認し、地元の観光推進に決意を新たにしていたようだ。「地元を見直そう」といった呼び掛けはこれまでもかなり行われてきたが、コロナ禍によって広範囲の移動にリスクが伴うようになると、その重要性が増したように思われる。
 マイクロツーリズムについては経済関係者だけでなく、各自治体の関係者も注目している。弘前市など津軽広域8市町村の首長は先日、テレビ会議を開き、地元の観光振興などをめぐって意見交換した。その議論の中でも、マイクロツーリズム推進の必要性が訴えられ、8市町村の宿泊・観光施設を活用するプランを設定することになった。
 「リゾート再生請負人」と言われる星野リゾートの星野佳路代表も、マイクロツーリズムの重要性に触れている。自粛緩和などに伴って、最初に需要が戻るのは自家用車で行くことができる近場の旅行だと指摘し、1時間圏内の人に楽しんでもらうマイクロツーリズムに注力すべきだと提言する。
 その上で、マイクロツーリズムを「地域の魅力を再発見する機会」と強調。より良い観光の在り方を地元の人と一緒に模索できる環境が整えば、コロナ禍以前より強い観光地を生むことができると訴えている。
 観光地として一層の発展を望むのであれば、地元の住民が地元の価値を深く認識することは不可欠。ただ、そのような機運を十分に醸成してきたかどうか、いま一度考えてみる必要はあるのではないか。今を「気付かない魅力に気付く好機」と捉え、「地元旅」を大いに楽しんでみてはどうだろうか。

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イージス計画停止「本気度疑うお粗末な経過」

2020/6/17 水曜日

 

 河野太郎防衛相が、ミサイル防衛の要としてきた陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」について、秋田、山口両県への配備プロセスの停止を発表した。事実上の白紙撤回とみられるが、「停止」の解釈をめぐっては一部で今後の再開に含みを持たせたのでは―といった憶測も呼んでいる。
 停止の理由は、迎撃ミサイルを発射した際、切り離されたブースター(推進補助装置)を確実に民間地域を避けて落下させる上で技術的な問題が見つかり、ソフト、ハード両面で改修コストや時間を要することが分かったためという。配備候補地は山口が陸上自衛隊むつみ演習場(萩市、阿武町)で落下予定地は同演習場内、秋田は当初陸自新屋演習場(秋田市)が挙げられ、ブースターは海に落とす計画だった。
 防衛省は山口の説明会で「(ブースターを)演習場内に確実に落下させる」と約束し、安全性を強調してきた。ソフトウエアの改修で対応可能と踏んだようだが、システムを提供する米国側との協議で、5月末になってミサイル本体や発射台の改修も必要なことが判明したという。米国側からはそうした“リスク”が今まで示されなかったのだろうか。
 河野氏自身も「見通しが甘かったと言われれば、そうかもしれない」と認めたが、防衛政策に関する重大事項にしてはお粗末だ。経過は検証する必要がある。
 同省が当初「最適地」とした新屋演習場は、その根拠となる調査データのミスなどが重なり、地元の強い反対を受けて配備が立ち消えに。本県と山形を含む3県で新たな候補地を選定する再調査が進められていた。
 こうしたずさんな対応が続けば住民の疑念と不安が募るのは当然で、理解を得るどころの話ではない。
 同システムは、北朝鮮が開発する弾道ミサイルの脅威に対抗する目的で2017年12月に導入が決められた。その背景には、日本などへの武器や防衛装備品の輸出を外交成果として重視するトランプ米大統領の要求あるいは同氏への配慮があったとの指摘は根強い。
 いずれにしても、住民の安全確保が担保されない形で導入が進められた経過は問題だ。安倍晋三首相が導入決定に当たり繰り返した発言「国民の安全と命を守り抜く上でどうしても必要だ」との間にギャップを感じる。北朝鮮と同様、こうしたずさんさがまかり通ること自体も日本の危機とは言えないか。導入ありきで強引に進めた部分はなかったか、省みる必要があろう。
 日本のミサイル防衛が見詰める先は、北朝鮮ばかりではない。着実に軍事力を高めている中国もある。こうした国々のミサイル戦力に対応し得るか。イージス・アショアの導入以前に、検証しなければならない事項は多そうだ。

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国が性教育拡充へ「心身を尊ぶ意義を伝えたい」

2020/6/13 土曜日

 

 親が育てられない乳幼児を匿名で預かる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を運営する慈恵病院(熊本県)は、望まない妊娠に関する相談窓口を設けているが、4月に寄せられた中高生からの相談件数は過去最多の75件だった。新型コロナウイルスの影響で、在宅時間が増えたことが背景にあるとみられる。
 日本は欧米と比較し、性教育の遅れが指摘されている。性教育を「性行為の方法」を教えるものと捉えられがちで、オープンに行うことへの忌避感が強いようだ。本来は「自分と他人の、心と体を大切にする方法」を学ぶ機会。しかし「寝た子を起こすべきではない」といった慎重派の論理も背景に、必要な情報を若年層に伝えられていない恐れがある。
 このような状況下、政府は性犯罪や性暴力の根絶に向け、省庁横断で取り組む方針を策定。再犯を防ぐため、仮釈放中の性犯罪者らへの全地球測位システム(GPS)機器の装着義務化の検討を明記し、被害者の相談支援体制の強化、子どもへの予防教育の充実なども網羅した。特に性犯罪の加害者にも被害者にもならないための予防教育と啓発はまさに、「自分と他人の、心と体を大切にする方法」を教えることになる。
 予防教育では低年齢の子どもに対しても、自分の体のうち水着で隠れる部分、いわゆる「プライベートゾーン」を他人に見せないこと、大切にすることなどを指導する方向性だという。欧米では性教育の中で指導されていることだが、日本の幼い子どもたちがこの概念を知らないまま性被害に遭い、誰にも言えず傷ついている事態は大きな課題だ。
 かつて子どもたちの間ではやった「スカートめくり」や、臀部(でんぶ)付近を突く「カンチョウ」といった「遊び」も、プライベートゾーンの侵害に当たる行為だ。大人になれば自然に学ぶだろうと楽観視するのではなく、体の大切な場所を尊重するという行為を、性教育を通して学ぶ必要がある。
 思春期以降についても、日本では避妊方法や妊娠の仕組みすら明確に教育されていない傾向にある。日本で避妊具といえばコンドームか低用量ピルの認知度が高いものの、低用量ピルが単なる避妊具ではなく、生理痛の軽減といった女性の不調を助けるものとして使用されていることへの認知度すら低い。海外では注射による避妊法、避妊シールなど女性が選択しやすい手法が普及していることも知られていない。
 性教育は「下ネタ」でも「わい談」でもない。生命の根幹に関わると同時に、自分と大切な人の心身を守ることを学ぼうとするものだ。知識不足による望まない妊娠や性被害、性加害を減らし、多様な性の在り方を知ることで、若年世代の悲しみを減らすことができるよう大人世代が支援しなければならない。

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