社 説

 

続く一極集中「政権の本気度が問われている」

2020/2/4 火曜日

 総務省が発表した住民基本台帳に基づく2019年の人口移動報告(外国人を含む)によると、東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)は転入者が転出者を上回る「転入超過」が3年連続で拡大した。地方創生は安倍晋三首相が掲げる看板政策の一つ。政権は改めて地方の衰退が国の成り立ちに関わる問題と捉え、一極集中是正に真剣に取り組んでもらいたい。
 移動報告を都道府県別に見ると、転入超過は8都府県で、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、福岡、滋賀、沖縄の順で多かった。転出超過は39道府県で、広島が最も多く8018人。本県は6044人で、9番目に多かった。
 政府は地方創生の基本的方向をまとめた第1期総合戦略(15~19年度)で「20年に東京圏から地方への転出・転入を均衡する」との目標を掲げた。各自治体も戦略を策定し、移住・定住や雇用の創出といった取り組みを本格化させてきたが、歯止めすらかけられなかった。
 最大の要因は進学・就職だろう。地方の大学に進学しても、就職口が多く好条件の首都圏に流出する構図は変わっていない。
 政府は昨年末決定した20年度から5年間の新たな総合戦略で、東京圏への転入超過を24年度に解消する目標を掲げた。
 方策として、移動の困難さや人手不足といった地域の課題に対して先端技術を活用して解決し、地域の魅力を向上することを盛り込んだ。
 具体的には人工知能(AI)などを使って課題を解決・改善した自治体数を600団体に増加させる目標を提示。次世代通信規格「5G」基地局をはじめとしたインフラ整備を地方でも促進するほか、自治体が農業や自動運転へのAI活用を進められるよう、政府が専門人材を派遣する。
 また、東京圏外の地方などへ移住・就業した人に最大100万円を支給する「移住支援金」について、対象者の要件を緩和する。現在は、直近の連続5年以上にわたり東京23区に在住か通勤している人に限っているが、この要件を「直近10年間で通算5年以上」に改める。
 このほか特定の地域と継続的につながりを持つ「関係人口」の拡大を図り、地域活性化につなげる考えだ。
 副業や兼業、イベント参加といった多様な形で出身地や過去の勤務地などと継続的に関わることを想定。都市部で暮らしながら地域課題の解決を手助けしたり、地方の魅力を体感したりし、将来的な移住や定住につなげる狙いがある。
 首都機能移転といった抜本策を講じないなら、関係人口を増やすような、息の長い取り組みしかあるまい。
 政府には新たな総合戦略が掛け声倒れにならないよう、進捗(しんちょく)度合いを点検し、効果の薄い政策は見直すといった「本気度」を見せてもらいたい。

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住環境の改善「暖かい部屋で健康に」

2020/2/1 土曜日

 

 老朽化した住まいであれば地震への不安、冬期間の寒さは当たり前、我慢するしかないと思っていないだろうか。住宅を新築しようというタイミングなら別だが、現状の住宅の耐震補強や大規模な断熱改修はそれほど話題に上らない。建物全体の耐震ともなれば数百万円に上るという費用の問題が大きいのではないか。
 県が進める「いのち守るリフォーム普及推進事業」は、費用を抑えた簡易的なリフォームや部分的な耐震補強を普及させることで、少なくとも県民の命だけは守ろうという取り組みだ。地震による家屋の倒壊を防止するためには、耐震化100%、全体の建て替えが最良の方法だが、まずは簡易的な対応で命を守り、災害時の救助活動の迅速化に寄与する。住宅の断熱リフォームを推進することでヒートショックによる脳卒中を予防し、健康寿命の延伸につなげる狙いもある。人口減少社会では空き家問題が課題となっているため、既存住宅の有効活用や、新たなリフォーム市場の創出による地域経済の活性化という期待もあるだろう。
 県が主催し、1月に青森市で開いた同事業の業界向け講習会では、慶應義塾大学の伊香賀俊治教授が室温と健康の関係について詳しく解説し、興味深かった。
 国の調査事業などでは、室温が18度以上の暖かな住まいでは寒冷な住まいに比べて高血圧や循環器疾患の死亡確率が低いという結果が出ているという。高齢者や女性は特に室温の低下で血圧が上昇しやすいというから注意が必要だ。またリビングを暖めるだけでは不十分で、部屋間の温度差が大きくないことや床付近の足元まで暖かいことが、血圧の安定に良いという所見も得られているようだ。
 暖かい住まいでは身体活動が活発になるというデータもあり、こうした面からも健康寿命の延伸に効果的とされる。
 世界保健機関(WHO)は冬季室温18度以上を強く勧告し、さらなる研究の必要性にも言及しているという。今後、研究が進み、より分かりやすく詳細な情報が普及することを期待している。
 県内で耐震性のない木造住宅は約13万戸、住宅の耐震化率は全国平均の82%を下回る73%にとどまっている。急激な温度差によるヒートショックや段差のつまずきなど家庭内事故死は全国で交通事故死の約3倍に上るという統計もあり、住環境に着目した取り組みは意義がある。
 消費者への積極的な情報発信でリフォームの効果をアピールしつつ、賃貸物件や幼児、高齢者が集う福祉施設などにもこうした取り組みを広げて、県民の安心安全や健康増進を後押ししてほしい。
 県は今年度、事業の普及促進に向け、業界団体との意見交換などを行ったが、来年度も事業を継続し、事業者向けだけでなく、消費者向けのセミナー開催やリーフレットの作成なども予定しているようだ。今後の取り組みに注目したい。

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向井弘たちの写真展「県内作家評価の貴重な機会」

2020/1/31 金曜日

 大鰐町の写真家・向井弘(1931~2003年)とゆかりの写真家の作品を軸に、1970年代以降の本県写真史の一端にスポットを当てた展覧会「ローカルカラーは何の色?―写真家・向井弘とその時代―」が、県立美術館(青森市)で開かれている。
 澤田教一や小島一郎といった有名写真家を除き、第三者によって本県出身の写真家と作品が評価・紹介される機会は決して多くない。その意味で、当時業界からも注目された向井や仲間たちの活動を取り上げた同展は貴重な試みと言っていい。多様な表現スタイルを持つ他の県内の写真家たちが注目・評価される機会も増えることを望みたい。
 同展で展示されているのは、既存メディアのような制約がない発表媒体として向井らが創刊した同人誌「イマージュ・IMAGE」(72~85年、全20号)をはじめ、向井と同人の作品、交流のあった第一線の写真家の作品、関連資料など。向井たちが「今の津軽」にこだわった背景はもちろん、現代の若手に連なる系譜にも触れられている。写真家・土田ヒロミが向井に宛てたメモ「写真うますぎますね。その上手さをすてる決心を持てたら、と思います。自分にとってイライラするほどの不安な映像を許容していってください」は含蓄があり印象的だ。
 向井や同人たちの作風は時の経過とともに変化したが、後年の作品の多くにも「今を撮る」意識が通底しているように感じられる。
 展示解説では、「イマージュ」発行の背景には、中央の視点とは異なる「津軽に住んでいるものの視線でとらえた津軽とは何か」という向井らの問題意識があったと指摘されている。
 かつて小島がシリーズ「津軽」などで展開した絵画的な構図と大胆な白黒のコントラストによる表現世界は、結果として、東京を中心としたメディアに本県のイメージを固定化させ、小島の作風に似た作品を求める風潮を生んだ側面があるという。この風潮をよしとしなかった向井らが、固定化したイメージにとらわれない「今の津軽」の表現にこだわったというのだ。「イマージュ」の存在はメディアにも注目され、写真雑誌に掲載された写真評論家たちの記事では向井らの気概が紹介されている。
 こうした背景を念頭に置いて鑑賞すると、向井や同人たちの作品世界の見え方は変わってくるだろう。一方で、会場に並ぶ小島の「津軽」「下北」シリーズに接すると、これらの素晴らしさも改めて認識させられる。
 デジタル技術の発達に伴い、写真はますます気軽に撮れるようになり、発表形態も多様化した。こうした中、暗室で焼き付けされた向井や同人たちの白黒写真は、「何のために写真を撮るのか」をも問い掛けてくるようだ。

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冬季のクマ出没「季節問わず平素から注意を」

2020/1/30 木曜日

 

 この時期に冬眠しているはずのクマが12月から1月にかけて目撃される事例が国内で相次いでいる。本県でも今月19日、深浦町大間越地区で目撃情報が警察に寄せられ、同20日に町担当課が箱わなを設置し、同22日に捕獲するに至った。今月の本県での目撃情報はこの1件だけだが、近年クマが人里にまで下りてくることも考えれば、冬だからといって安心し切れない部分はある。雪のない時期と同様、被害に遭わないために平素から注意するよう心掛けたい。
 クマは通常春先に冬眠から覚め、晩秋までかけて山菜や昆虫、木の実などを探して動き回り、栄養を蓄える。鯵ケ沢警察署によると、秋までに十分に餌を取れなかった場合に、冬眠できず冬に現れることがあるという。このほか、クマは冬眠とはいっても、その眠りは浅く、近くで足音がすると目が覚める程度とする資料もあり、雌の場合は冬眠中に出産もする。よって「冬にクマは出ない」という過信は禁物だ。
 深浦町で目撃されたのは、体長75センチほどの子グマで昨年12月から既に地域住民によって目撃されていたが、1月になって通報があり、捕獲に至ったものだ。既に弱っていたという。ただ、クマが例年目撃されるのは冬眠から覚める春先になってから。昨年は4月中旬、一昨年は5月下旬がその年の初の目撃で、1月の目撃は異例だ。同町では昨年12月にも追良瀬地区で子グマの目撃情報があったばかりだった。
 本県では昨年、クマの餌となる木の実が不作となり、人里近くで目撃されるケースが相次いだ。県自然保護課ホームページ(HP)によると、昨年1年間の県内での出没件数は440件超にも及んだ。鯵ケ沢町では公共施設近くでクマが目撃され、閉鎖時期を予定より早期に切り上げる事態に追い込まれた。こうした中、出没したうち冬眠できるだけの体力を蓄えたクマが一体どれだけいるのかという不安がある。まして、今冬は近年にない暖冬となり、今の時期にクマが出没する原因の一つになりはしないか、という心配もあろう。
 県HPでは、12月以降もクマの目撃例があるとして、(1)野外で活動する時はクマと出合わないよう十分注意する(2)収穫しない果樹や農作物は野外に放置せず、適切に処理する―と呼び掛けている。つまり、春から秋にかけて出没するクマと同様の心構えで対処することが必要ということだ。
 クマとすれば食料がない、冬眠できないことは、とてつもないストレスである。人里まで下りてこなければ食料にありつくことはできないのだろう。だが、その地に生きる人の安全を守る必要もある。クマは季節を問わず出没するという意識を持ち、万一遭遇した際の対応を改めて確認しておきたい。

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新型肺炎対応「国内に加え中国支援強化を」

2020/1/29 水曜日

 

 中国を中心に感染拡大が続く新型コロナウイルスによる肺炎について、政府は28日に感染症法の「指定感染症」と検疫法の「検疫感染症」に指定する政令を閣議決定した。中国湖北省武漢市に取り残された日本人を待避させる民間チャーター機も派遣し、29日午前に最初の約200人が帰国する見通しとなった。
 昨年12月に武漢市で広がり始めた新型肺炎。今月28日には中国国内の患者数が4500人を超え、死者も100人を突破した。患者は日本など中国以外でも確認され、世界規模で広がってきた。日本政府は当初、世界保健機関(WHO)の緊急事態宣言を受けて、指定を検討する方針だったが、宣言が見送られたことで、厚生労働省内に消極的ムードが漂っていた。当初方針を一転させた背景にあるのが、中国での感染急増。宣言待ちでは手遅れになると判断したようだ。
 施行は2月7日。指定感染症になれば、患者の強制入院や就業制限、入国者への検査指示ができ、検疫感染症指定で検疫所が強制的に診察、検査を行えるようになる。ヒトからヒトへの感染が確認されており、指定が確実に機能すれば、一定の効果は期待できそうだ。
 ただ、中国国家衛生健康委員会によると2週間ほどの潜伏期間にも感染するのが特徴といい、入国時のチェックをすり抜ける可能性は否定できない。感染は世界中に広がっており、不適切な言い方かもしれないが、全ての入国者に疑いの目を向けなければ、水際対策にはならない。しかも同委は「感染力も強まっている」と警鐘を鳴らし、危機感を募らせている。
 一方、厚労省はホームページに「国民の皆様へのメッセージ」を掲載し、過剰に心配せず、通常の感染症対策に努めるよう呼び掛けている。当然、日本経済の一翼を担っていると言っても過言ではない訪日観光客をはじめ、海外旅行などからの帰国者に偏見の目を向けることは、絶対にしてはならない。今年夏の五輪・パラリンピックを控えるわが国の魅力は、招致活動でアピールした「おもてなしの国」なのだから。
 日本政府は派遣するチャーター機で、マスクや防護服などの中国向け支援物資も運ぶ。日本国内の感染拡大防止や帰国支援はもちろんだが、日本国民と同様に中国国民のために尽力することは日本の責務だろう。東日本大震災では中国のレスキュー隊が駆け付けてくれた。この恩を忘れてはならない。
 新型肺炎により、世界的に人や物の流れが停滞し、経済への影響が出始めている。中国が海外団体旅行を禁止したことで、春節需要を見込んでいた日本の観光業や小売業などは深刻な状況に陥った。日中両国の連携で早期収束を図ることは、相互理解の深まりと両国経済の回復にもつながるはずだ。

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