社 説

 

次期参院選「政権の信任こそ最大の争点」

2019/7/2 火曜日

 

 夏の政治決戦となる参院選は4日公示(21日投票)される。自民党と公明党が「政治の安定」を訴える一方、野党は老後資金の「2000万円不足」問題などを挙げて安倍晋三首相の政権運営を批判している。永田町では今秋にも解散・総選挙の可能性が取りざたされており、参院選の行方が次期衆院選にも影響を与えるとして注目されている。
 明確な争点に欠けるとの指摘もある今回の参院選。ただ、国政選挙は常に政権信任の側面も持つ。国会閉会後、初の週末となった先月29日、与野党の幹部は各地で演説を行い、事実上の選挙戦に突入した。
 “政府の顔”となりつつある菅義偉官房長官は先週末、「自民、公明両党の連立政権の安定により、日本をさらに前に進めていきたい」と強調。公明党の山口那津男代表は「今度の選挙で最も大事な視点は、政治を安定させて内外の重要課題をしっかり乗り越えていくことだ」と力を込めた。
 これに対し、立憲民主党の枝野幸男代表は老後資金不足問題について「老後の安心という皆さんの一番関心の高いもので、隠しごまかしの政治をやっている」と政権を厳しく批判。共産党の志位和夫委員長も「2000万円なんて貯金できない。貯金するより政治を変えるのが早道だ」と政権打倒を呼び掛けた。
 野党がこぞって取り上げ、参院選の争点に急浮上した老後資金問題だが、根底にある“年金の在り方”をめぐっては、与野党には活発でありながらも冷静な議論を望みたい。
 その理由として、今年10月に予定する消費税の増税分は社会保障改革に充てることが明文化されていることだ。消費増税の是非は別として、年金を含む社会保障改革は与野党とも真剣に取り組むべき課題であることは論をまたない。
 野党が攻めるべきは、報告書を受け取らず、問題がなかったことにしようとする政権の姿勢だろう。実際、この“隠ぺい体質”は政権の随所にみられ、長期政権のおごり、緩みとの指摘もある。選挙戦で年金に対する国民の不安をあおるべきではない。
 与党も国民の疑念を招いた失策を反省すべきだ。資金が不足するとのモデルケースについて、自民党内には「収入が減っても支出は変わらない」「地方暮らしの実態にそぐわない」といった声が根強い。ならば堂々と地元事情に即した見通しを示し、国民理解を得ようとする謙虚な姿勢が求められている。
 永田町では参院選で与党が勝利した場合、9月にも衆院解散・総選挙が行われるとの観測が広がっている。論点は数多いが、政権の信任こそ最大の争点であることを認識し、有権者は貴重な一票を放棄することがないよう投票行動につなげてほしい。

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アニメで選挙啓発「主権者教育拡充の契機に」

2019/6/29 土曜日

 

 「選挙イヤー」の最大のヤマ場となる参院選が7月4日に公示され、21日に投開票が行われる。今後の政局に大きく影響する選挙であることは間違いなく、われわれも投票を通じて自らの意思を示さなければならない。ただ、近年の投票率を見れば、本県を含めて政治離れは顕著。有権者の関心を高めることが急務となっている。
 3年前の参院選から、国政選挙の選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられた。未成年の有権者が投票することになったため、各党は新たに加わった有権者の支持獲得を目指し、若者向けの政策の訴えに注力。各選挙管理委員会なども熱心に啓発活動を展開した。
 しかし、投票率は54・70%。6年前の52・61%を2・09ポイント上回ったものの過去4番目の低さにとどまった。選挙権年齢の引き下げが微増の一因とされたが、若者の政治・選挙への関心は決して高いと言える状況にはなく、その後も啓発の必要性が叫ばれ続けている。
 このような状況の中、政治や選挙の意義について学ぶことのできるアニメ動画が開発された。開発した弘前大学教育学部の蒔田純専任講師(政治学)は、投票率を上げるには現在の有権者の関心を高める取り組みに加え、これから選挙に加わる子どもたちへの教育が重要だ―と指摘する。
 投票して物事を決めていくのが民主主義の基本であることは大半の人が理解しているはずだ。が、投票率はなかなか上がらない。この事実は、民主主義の大切さを実感するには一定の時間を要し、小さな頃から啓発を受けることがいかに重要であるかということを示しているのかもしれない。
 蒔田専任講師は「主権者教育」の大切さを説く。改めて考えてみれば、これまでの教育現場では、われわれ一人ひとりが主権者であり、自ら生活する社会の方向性を決める立場にあることをじっくり考える機会が十分に設けられてきたとは言い難いのではないか。
 幼少期の記憶や経験は人格や価値観の形成に大きく影響する。年齢を重ねるにつれ、政治的思想などはそれぞれ異なったものになるのだろうが、「主権が自分たちにある」という基本だけは誰もが等しく理解しておくべきで、理解する時期は早いに越したことはない。
 今回開発されたアニメ動画を使った授業を受けた子どもたちからは「投票しないというのは良くない。(18歳になったら)絶対投票する」「選挙に対するイメージが、堅苦しいものから生活を良くするためのものに変わった」といった声が聞かれた。
 アニメなどを通じて小さな子どもたちに主権者であることを自覚してもらう。このことこそが、投票率向上に向けた近道なのかもしれない。

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水災害対策「危険な大雨に備えを」

2019/6/28 金曜日

 

 今年も台風などによる豪雨災害を警戒すべき季節になった。昨年6月下旬から7月上旬にかけて発生した西日本豪雨で、土砂災害や水害による死者・行方不明者200人超、家屋被害3万棟近くという甚大な被害が生じたことは記憶に新しい。2018年に国内で発生した土砂災害は約3400件で、集計を始めた1982年以降で最多、17年までの年平均件数の約3倍というデータもある。もはやいつ身近で水害・土砂災害が発生してもおかしくない。十分な警戒が必要だ。
 幸いなことに本県では過去に記録された雨量はそれほど多くないようだ。県民からすれば、東日本大震災で地震や津波の怖さは経験しているが、大雨で自宅から避難する事態になることはほとんどない、という思いがあるのではないか。
 だが、近年は前例のない豪雨といった報道に触れる機会が増えている。過去に豪雨の経験が少ないということは、想定を超える大雨に対する備えは設備面でも意識の面でも十分ではないと言える。いざ緊急事態になった時、適切な行動ができるのか、振り返る必要があるだろう。
 昨年の西日本豪雨の際に浮上した課題の一つが、住民避難の遅れだ。避難情報が遅かった自治体もあったが、実際の浸水状況が事前に提供されていた浸水想定区域図やハザードマップとほぼ一致し、避難情報を出していた自治体でも避難を決断できず、逃げ遅れた住民がいた。
 ハザードマップなど事前に提供される土地のリスク情報の重要性、意味をどう理解してもらうか、緊急時に必要な情報をどう切迫感を持って伝えるかという検討は、人的被害を防ぐためには必要不可欠だろう。中央では既に行政や情報を伝えるメディアが参加したプロジェクト会議が発足し、住民への水害・土砂災害情報の伝達に関する対応策などについてリポートを取りまとめている。本県でも今月、国土交通省青森河川国道事務所を中心に青森地域メディア連携協議会が設立され、今後協議が本格化する見通しだ。
 プロジェクトリポートでは、住民に自ら行動してもらうため、災害情報を単純化して分かりやすくすることや、切迫感を持って伝えること、災害情報を容易に入手できるようにすることなどの必要性を指摘。高齢者ら情報弱者が漏れないようにするため、地域コミュニティーの防災力強化についても言及されている。
 平時からの情報発信ももちろん重要だが、住民の関心が高まるのはやはり台風の接近時など気象状況の悪化が想定される時ではないか。事前に十分に検討し、必要な情報を分かりやすく、円滑に提供する方法について模索していきたい。
 情報を受ける側の心構えも必要だ。想定外の災害が発生する時代だと心得て、「わが家だけは大丈夫」という甘い考えは捨て、最悪の事態を想定した家族の行動を、一度は真剣に考えてみてほしい。

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陸上型イージス「信頼回復の道は遠い」

2019/6/27 木曜日

 

 陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備をめぐり、秋田県への説明資料に誤りがあった問題が尾を引いている。岩屋毅防衛相が秋田市を訪れ、佐竹敬久知事、穂積志市長に直接謝罪したものの、両首長は態度を硬化させており、調整は難航必至となっている。説明資料の誤りは、あまりにも初歩的なミスであり、さらには、地元説明会で防衛省職員が居眠りをしていたことも発覚した。レーダー施設と言えば、万が一有事となれば、優先度の高い攻撃目標になる可能性がある施設だ。配備に向け、地元では慎重な意見が出ることも十分予測できるのに、あまりにも緊張感を欠く行為と言える。地元の反発も当然のものだろう。
 イージス・アショアは、イージス艦に搭載されているレーダーや迎撃ミサイル発射機などで構成されるミサイル防衛システムを、陸上に配備するもので、米国が開発した。日本では、弾道ミサイルの発射実験などを繰り返す北朝鮮への抑止効果などを念頭に、日本海側の2カ所に配備することを決め、防衛省が秋田県の陸自新屋演習場と、山口県の陸自むつみ演習場を選定した。
 今回の誤りは本当に初歩的なものだ。日本列島北部をカバーするイージス・アショアの候補地選定に当たり、防衛省は日本海に面する本県と、秋田、山形3県の国有地を比較。レーダー波を遮る可能性がある山との位置関係などを考慮し、新屋演習場を選定した。
 その説明資料を作成する際に、衛星地図ソフト「グーグル・アース」を使用したが、標高と水平距離の縮尺が異なることに気付かず、候補地から付近の山頂を見上げる角度を実際よりも大きく表記したまま、秋田県側に提示したという。その後も新たな誤りが見つかるなど、同省の対応はお粗末極まりないものがある。防衛省職員の居眠りも含め、緊張感が欠如していると言わざるを得ない。
 岩屋防衛相は、新屋演習場以外の東北地方19カ所で行った調査に関し、現地で新たに測量を行う考えなどを示し、理解を求めた。
 だが、当然の反応だろうが、両首長は厳しい姿勢を崩さなかった。防衛省は、相次ぐ不手際を受け、イージス・アショアの整備推進本部を立ち上げ、秋田、山口両県との調整や地元説明資料の作成などを進める方針だが、配備までの道のりは厳しいものがあるだろう。政府が目指す2023年度の運用開始は既に困難とみられているが、さらにずれ込む可能性もある。
 地元の不信は、容易には解消されまい。だが、施設の性格上、地元の理解なしに計画を進めていいというものではない。十分な再調査と再発防止策を講じ、丁寧な説明を図る。まずはここから始めるしかない。

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太宰生誕110年「作家と古里の魅力知る機会に」

2019/6/26 水曜日

 

 今年は五所川原市(旧金木町)出身の作家太宰治の生誕110年の節目。誕生日に当たる19日には同市金木町の県立芦野公園太宰治銅像・文学碑前で記念祭が行われ、参加者が太宰をしのんだほか、22、23日には太宰文学映画祭などが開かれた。
 県内外はもちろん、海外からもファンが駆け付け、年齢層も幅広い。太宰文学は作家の人間性も相まって今なお多くの人々を魅了してやまない。節目に当たって、そのことを改めて認識させられる。
 太宰(津島修治)は1909年、旧金木町の大地主津島源右衛門とタ子(たね)の六男として生まれた。旧制青森中学校、旧制弘前高校に進みながら創作活動を続け、東京帝国大学に入学。次々と発表した作品は独特の世界観で作家としての地位を確立した。芥川賞の夢はかなわなかったが、昭和の日本を代表する作家の一人と言える。太宰が残した「斜陽」「津軽」「人間失格」など数々の名作は、今なお多くのファンの心をつかんで離さない。また「走れメロス」は教科書でも紹介され、多くの人が一度は目にしたことがあるはずだ。
 私生活は薬物依存、自殺・心中未遂を繰り返す波乱の一生だった。最後は東京・玉川上水で入水(じゅすい)心中し、誕生日と同じ6月19日に遺体が発見された。このため弱さや暗さといったイメージがつきまとうのも確かだが、さまざまな重圧や心の傷を原稿用紙にぶつけながら、創作に生涯をささげた姿勢は「弱いのではなく、自分の弱さをさらけ出した強さ」(木下巽・金木太宰会会長)とも評される。
 木下会長は生誕110年の節目に当たり本紙1月1日付の紙面で、太宰の魅力を「人間愛、人類愛という普遍的なものが作品の根底にあり、そこに多くの人が共感するのではないか」と指摘。「さまざまな作品で、底辺をはい回るような主人公が最後には救われる。そこに太宰の再生と祈りへの思い、優しさが込められており、私たちに“精いっぱい生きなさい”と呼び掛けている」と語っている。作品のみならず太宰の生き方そのものに憧れる人が多いのも、そのためだろう。
 県内には、生家がある五所川原市をはじめ、旧制弘高時代を過ごした弘前市など各地に太宰ゆかりの場所が多数ある。一部は整備・保存され、喫茶室などとして活用されている場所もあり、ファンらに親しまれている。県外にもゆかりの地は多く、連携しながら誘客を図るのも地域活性化の一つの手段だろう。また、本県を太宰文学の研究拠点の一つとして位置付けを強化してはどうか。
 節目の今年を関係者は「太宰イヤー」と位置付け、一年を通じて各種イベントを予定している。さまざまな角度から作家太宰の魅力に触れ、同時にその原点である古里を改めて見詰め直し、郷土愛を深める機会にもしたい。

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