社 説

 

黒石で映画館復活「中心市街地活性化に光」

2019/7/9 火曜日

 

 かつて六つもの映画館があったといわれる黒石市。現在、市内に残る映画館はないが、有志の手で今夏、2日間限定の映画館が復活した。歴史と風情ある街並みが残る同市の中心市街地「こみせ通り」の空きビルを活用した映画館は「黒石キネマ」と名付けられ、往年の名作から近年の話題作まで、3本が上演された。車社会にあって、郊外の大型商業施設に流れがちな消費者をどのように“街中”に回帰させるかは、全国の中心市街地にある商店街の共通の悩みの種と言えるだけに、今回の有志の取り組みは、中心市街地活性化の方策の一つとして注目される。
 この取り組みは、黒石市在住の相澤さとみさんが思い描いた「いつか映画館を運営したい」との夢に、同市のNPO法人横町十文字まちそだて会リノベーション部会が呼応して実現した。
 黒石市生まれの相澤さんは、20歳の頃に映画関係の学校に進み、卒業後フリーランスでミュージックビデオやCMの制作、ドラマのアシスタントプロデューサー、舞台脚本などを経験し、2017年に帰郷した。一方で、同市の須藤善石油店からこみせ通りにある空きビル(旧ストゼンビル)の利活用について相談を受けていたリノベーション部会が、相澤さんの映画館運営の夢を知り、須藤善石油店と相澤さんを結び付け、今回の企画が実を結んだ。
 Uターンで故郷に戻った人が、自身の知識や経験を生かしながら、映画館づくりという夢を実現させた今回の企画。相澤さんの熱意と努力はもちろん、個人の夢を中心市街地の活性化という社会的な意義に結び付けた同部会の発想力、ビルのオーナーである須藤善石油店のさまざまな協力が一体となって、形となった取り組みであり、中心市街地の活性化策に一つのヒントを与えたように思う。
 現在は市内にない映画館を復活させるというコンセプトも、市民を引きつけるものだろう。市内には昭和の時代、市街地と温湯地区に、合わせて六つの映画館が存在していたが、現在は全て閉館している。
 映画館があった時代に足を運んだ人たちは、懐かしさを感じ、逆に映画館がない光景が日常という若い世代には、今回の取り組みが新鮮に映っただろう。こみせ通りの持つ雰囲気に映画館という業態もマッチしている。
 中心市街地の空き店舗、空きビルの活用という問題は、全国的にもさまざまな知恵が絞られているが「黒石キネマ」の取り組みも注目に値するものだ。アイデアはあるが実現の場がない市民と、場所の有効活用を願うオーナー側を、うまくマッチングさせ街の活性化を図る。市民、民間団体、行政などが、さまざまに知恵を出し合い、こうした取り組みがさらに輪を広げることを願っている。

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老後の暮らし「安心できる仕組みづくりを」

2019/7/6 土曜日

 

 厚生労働省がまとめた2018年の国民生活基礎調査結果によると、年金や恩給をもらっている高齢者世帯のうち、これらの収入が総所得の100%を占めると答えた割合は51・1%と約半数を占めた。恩給の受給者はごく限られるため、収入源が年金のみの高齢者世帯が相当数に上るとみられる。
 17年の割合は52・2%だった。過去増減はあるが、13年の57・8%から微減傾向が続いており、働く高齢者が増えたことが影響しているとみられる。それでも、高齢者世帯の多くが年金を支えに生活費を確保している実態が改めて浮き彫りとなった。
 老後資金をめぐっては、公的年金以外に2000万円の蓄えが必要と指摘した金融庁報告書が注目を集めている。定年退職後に無職で年金収入に頼る高齢夫婦の場合、月平均約5万円の赤字が生じ、夫が95歳になるまでの30年間で約2000万円の資産取り崩しが必要―。報告書で示された試算はこういった内容だ。
 報告書が波紋を広げるのも当然であろう。試算とはいえ、老後の生活資金として2000万円を貯蓄できる世帯はどれくらいあるだろう。何よりも疑問に思うのは、現在の公的年金制度は、それほどまでに頼りにならないものなのかということだ。
 報告書によって国民の関心が一気に高まった公的年金の在り方は、4日公示された参院選でも争点の一つとなっている。各党は公約で、ともに給付に力点を置き、自民党は「人生100年時代に対応した年金制度の構築に向け、厚生年金の適用拡大を進めるとともに、年金受給開始時期の選択肢の拡大を進める」と強調。公明党は一定の収入がある高齢者の年金を減額する在職老齢年金制度の見直しを挙げた。
 立憲民主党は「大きな蓄えがなくても安心できる社会を目指す」と力説し、年金の最低保障機能強化などを唱える。国民民主党は、低所得の年金生活者に最低でも月5000円加算すると宣言。共産党は、物価や賃金の上昇に応じて年金支給額を抑制する「マクロ経済スライド」廃止を要求した。
 厚労省の18年国民生活基礎調査では、生活に対する意識調査で「苦しい」と答えた割合が4年ぶりに増加に転じ、57・7%(17年55・8%)を占めた。年齢構成別に見ると、高齢者世帯が55・1%、児童のいる世帯では62・1%が「苦しい」と回答した。
 消費税率10%への引き上げも10月に予定される。現状の生活ですら「苦しい」と感じている世帯の将来への不安を少しでも払拭(ふっしょく)することができるのか。持続可能で安心できる公的年金の在り方を含む社会保障制度改革は待ったなしだ。参院選における各党・候補者の訴えにしっかりと耳を傾けたい。

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参院選公示「有権者自ら訴え見極め判断を」

2019/7/5 金曜日

 

 第25回参院選が4日、公示された。今回の改選議席数は選挙区74、比例代表50の計124。与党が「政治の安定」を掲げて改選議席の過半数確保を目指す一方で、野党は全国32の改選1人区すべてに統一候補を擁立し対抗。21日の投開票日に向けて、17日間にわたり舌戦を展開する。
 10月に予定される消費税率10%への引き上げの是非や、金融庁審議会の報告書で老後に公的年金以外に2000万円の蓄えが必要とされた問題など、国民生活に大きく関わる課題が争点となりそうだ。それだけに、各候補者は自らの主張を有権者に分かりやすく訴えてもらいたい。有権者も現在の暮らしにとって、また将来を見据えたとき、どのような政策が必要なのかをしっかり考え、候補者の訴えを見極めて一票を投じてほしい。
 全国では選挙区215人、比例代表155人の計370人が立候補を届け出た。選挙区は各党別に見ると、自民が49人、公明7人、立憲民主20人、国民民主が14人、共産が14人、日本維新の会が8人、社民3人、諸派69人、無所属31人。比例は前回より多い13の政党・政治団体が候補者名簿を届け出た。内訳は自民33人、公明17人、立憲22人、国民14人、共産26人、維新14人、社民4人など。
 本県選挙区(定数1)では、政治団体「NHKから国民を守る党」から元国会議員私設秘書の小山日奈子(53)=東京都在住=、自民現職で再選を目指す滝沢求(60)=公明推薦=、立憲新人で野党統一候補となる弁護士小田切達(61)=社民推薦=の現新3氏が立候補した。
 本県選挙区は、2016年の前回選で通算3期務めた自民現職を、衆院議員経験がある野党統一候補の新人が一騎打ちで破った経緯がある。今回も自民現職の滝沢候補と野党統一候補の小田切候補による事実上の一騎打ち。戦いの構図は前回選同様となるだけに、滝沢候補陣営は厳しい選挙戦を懸念し態勢固めに万全を期す一方、小田切候補陣営は3年前の再現を狙い野党による総力戦で議席獲得を目指す構えだ。
 滝沢候補は「政策のさらなる推進には安定した政治基盤が必要」と継続を訴える一方で、小田切候補は「政策の転換で貧困や格差を是正する」などと訴える。
 有権者は、生活の安定と向上などの実現に少しでも役立つと考えられる政策を訴える候補者に一票を投じたいと思うはずだ。そのためには、政党や候補者の訴えを見極め、判断する必要があろう。
 全国的に、いつの時代も政治の世界では、政治家自身の不謹慎かつ世間離れした言動や数の論理、カネといった問題が相次ぎ、政治不信を招いてきた。それが昨今の抵投票率の一因にもなっている。各候補者には投票率向上に向けて、政治への信頼と有権者の関心を高める努力も求めたい。

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リンゴ苗木無断販売「知財権とブランド守れ」

2019/7/4 木曜日

 

 県りんご試験場(現・県産業技術センターりんご研究所)で育成された「千雪(あおり27)」とされるリンゴの苗木が、中国のインターネット通販サイトで勝手に販売されていたことが分かった。
 千雪は2015年、中国で既に品種登録されており、同国内では産技センターの許可を得ずに栽培・販売することが禁止されている。
 商品の苗木が千雪だとすれば、同国へ不正に流出された可能性がある。今後は品種や流出経路を調べることになるだろう。外国人が苗木を無断で持ち帰るケースもあると聞くが、日本人も関わっていたとすればなお残念である。
 他県で開発されたブドウやイチゴの人気品種が、中国など国外で無断のまま生産・販売されていたことは、記憶に新しい。悪びれる様子もなく、逆に開き直った態度を取る当地の生産者たちには、育種に携わった人々の苦労と知的財産権を理解しようとする心を育んでほしい。
 今回の千雪は無論のこと、農産物の知財権の保護は重要だ。幸い千雪は中国で品種登録済みだったため、県側はこれらも根拠に、販売停止などの対抗措置を取ることができる。
 同国へ登録を申請したのは、苗木が国外に流出して、将来的に本県リンゴ産業へ影響を及ぼす事態を防ぐことが目的だった。現段階では“備え”が役立ちそうだが、相手側が対抗措置に従うとは限らない。ブランドを守るための、気が抜けない長期戦が続きそうだ。
 海外への品種登録は費用や時間がかかり、登録に二の足を踏んでしまう事業者も多かった。出願期間を過ぎてしまい、海外での生産・販売を差し止められないケースもあったと聞く。
 現在は、海外への品種登録や品種保護に必要となる技術的課題の解決を支援する、国の総合対策事業がある。日本の農産物の知財権保護と、農産物の輸出拡大につながればいい。
 千雪は、切ってもすり下ろしても果肉が変色しづらいなどの特長を持ち、特に料理や加工用での将来性を期待されている。食味自体も、台湾や東南アジアで人気のようだ。
 08年に当時の名称「あおり27」で一度品種登録されたが、県の登録料未納問題で登録が取り消される憂き目に遭った新品種の一つ。県は次善の策として、同品種の苗木が県外に流出しないよう、業者と協定を結ぶなどしていた。
 千雪は本格的な生産が始まってまだ日が浅く、生産量も多くはなさそうだ。この段階で、同じ名称を冠しただけの粗悪品が海外で出回ってはたまらない。
 県産リンゴの足を引っ張るのは海外だけでない。昨年産の早もぎ「トキ」が台湾で販売不振を招いていたことが先日の本紙報道にあった。一部が目先の高値にこだわると、後に全体に影響を及ぼす。

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対韓規制強化「着地点見いだす努力を」

2019/7/3 水曜日

 

 日本政府は韓国向け半導体材料の輸出管理規制を4日から強化する。元徴用工問題への事実上の対抗措置とみられる。韓国艦艇による海上自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射問題などで冷え込む日韓関係。日本政府は「対抗措置」を否定しているが、日韓関係の改善が難しくなったのは間違いない。
 第2次大戦中、日本の植民地支配を受けていた朝鮮半島から日本本土の製鉄所に徴用された韓国人4人が、新日鉄住金(旧新日本製鉄)に損害賠償を求めた訴訟で、韓国最高裁は新日鉄住金側の上告を棄却。1人当たり1億㌆(約1000万円)の賠償を命じた二審判決が確定した。元挺身(ていしん)隊員らが三菱重工業を相手取った控訴審なども賠償を求める判決。
 しかし、1965年の日韓請求権協定では、日本が経済協力資金を支払う代わりに、両国と国民間の請求権問題が「完全かつ最終的に解決された」と明記。韓国政府も元徴用工の請求権問題は「解決済み」との見解を示していた。「個人請求権は消滅していない」と判断した最高裁判決は国家同士の約束を否定するものであり、安倍晋三首相は「国際法に照らしてあり得ない判断。毅然(きぜん)と対応する」と表明した。
 これを受けて日本政府は今年5月、協定に基づく仲裁委設置に向け、委員を任命するよう韓国側に要求。しかし期限までに回答はなかった。協定では一方が委員を選任しない場合、双方がそれぞれ選ぶ第三国と、この両国が選ぶ国が指名する計3人の委員で仲裁委を設置すると定めている。しかし、韓国側はこれも無視した。こうした状況下では、20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で韓国の文在寅大統領が求めた首脳会談に、日本側が応じられるはずもない。
 G20サミット議長国の日本は「自由で公正、無差別な貿易・投資環境の実現に努める」との首脳宣言を取りまとめた。その直後の規制強化は、国際社会の批判を浴びる可能性もある。それでも規制強化に踏み切るのは、韓国側に対応を促すには、そうせざるを得ないとの判断による。三権分立は理解できるとしても、国家間の協定をほごにする上、自国の主張だけを繰り返し、仲裁委の席に着こうともしないのは韓国側ではないか。
 ただ、規制強化を発端にした「報復の連鎖」発展に懸念が募る。韓国の成允模・産業通商資源相は声明で「日本の経済的報復措置」と断定し「今後、世界貿易機関(WTO)提訴を含め、必要な措置を取る」と警告。日本にとって韓国は第3位の貿易相手国であり、報復の連鎖となれば韓国企業だけでなく、日本企業にも小さくない影響を及ぼす。消費税引き上げによる家計の引き締めで、日本経済の停滞が予想される中で生じた新たな難問。早期に着地点を見いだす努力が求められる。

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