社 説

 

こけし工人に新星「衰退する伝統文化の救世主」

2017/2/11 土曜日

 

 黒石市の30代女性がこけし工人を目指して奮闘している。津軽こけし工人会の会長を務め、伝統継承に尽くした父の死をきっかけに、抱き続けてきた工人になる夢に挑戦する決意をしたという。伝統工芸・文化は全国的に高齢化と後継者不足が深刻化。津軽系こけしも例外ではなく、関係者の期待は大きい。
 同市の津軽こけし館によると、津軽系こけしは明治の初めに確立されたといい、1930年代の第1次ブーム、戦後の高度経済成長を背景に東北地方への旅行者が増えた70年代の第2次ブームを経験。東日本大震災前後に始まった第3次ブームは現在も衰えを知らない。
 第3次ブームは「こけし女子」と呼ばれる女性たちがけん引している。お気に入りのこけしを購入する際は「この子を連れて帰る」と表現する。彼女たちにとってこけしは家族と同じなのだろう。さらに、好きな工人が参加する催しには、有給休暇を取得し、遠方からも駆け付ける。夜行バスを利用して交通費を抑えた分を、こけしの購入費に充てるのだという。アイドルの追っ掛けに近い世界のようだ。
 そんなアイドル的存在の工人ではあるが、各産地とも高齢化と後継者不足という深刻な問題に直面している。第2次ブームあたりまで、少なくとも20人ほどいた津軽系の工人は現在、津軽こけし工人会の会員に非会員を含めても当時の半数程度。こけし女子たちが工人になってくれれば一気に解決するのだが、そう簡単なことではない。
 今回、工人への道を歩み始めた小島利夏さんは、2012年に急逝した俊幸さんの娘。全国的に伝統文化の継承が危うくなっていることを危惧し、勤めていた会社を退職。鳴子系こけし(宮城県)の産地で木地挽(び)きを学び、16年に帰郷した。現在は同館で、津軽に伝わるこま「ずぐり」を作りながら技術を磨いている。小島さんのずぐりは、昨年初夏ごろから扱っており、現在までに数百個が売れた。同館でこれほど売れたのは初めてという。
 これまで、各工人はこけし制作が忙しく、ずぐりまで制作する余裕がないことから慢性的な在庫不足が続いていた。小学校の教科書でずぐりが紹介された際には、全国の教諭から「実物を児童に見せたい」との問い合わせが複数あったが、販売できるずぐりが少なく、全てには応えられなかった。そういう点で小島さんは既に救世主になったと言っていいだろう。
 父親が残したこけしを見本に練習を重ね「いつか本人型を作れたら」と目標を語る。ぜひ夢を実現させ「小島さんのようになりたい」と思ってもらえる存在になってほしい。自身が危惧した伝統文化継承の危機を救う手だての一つになるかもしれない。

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冬のイベント「存分に雪国の魅力発信を」

2017/2/10 金曜日

 

 第41回弘前城雪燈籠まつりが9日開幕した。会場の弘前公園には、市民らによる雪燈籠や雪だるまなどが立ち並び、冬の古城を情緒たっぷりに演出している。
 メインの大雪像は、国登録有形文化財の藤田記念庭園洋館が今回、初めて題材となった。陸上自衛隊弘前駐屯地の協力によって完成し、細部にまでこだわった繊細かつ迫力十分な仕上がりとなっている。
 近隣の田舎館村では、冬の田んぼアート2017のイベントも始まった。週末にかけて津軽地域では各地でさまざまな冬のイベントが開催される予定だ。雪に親しみ、雪を楽しむ雪国ならではの魅力を存分に発信したい。
 今年の弘前城雪燈籠まつりは、市内の事業所や学校など61団体が参加し、武者絵をはめ込んだ雪燈籠162基のほか雪だるま46基、中雪像5基、ミニ雪像6基の計219基を制作した。
 津軽錦絵大回廊には、昨夏の弘前ねぷたまつりに参加した27団体提供の見送り絵や鏡絵など78枚がずらりと並ぶ。同市が舞台のテレビアニメ「ふらいんぐうぃっち」とコラボし、大雪像に映像を投影するプロジェクションマッピングへのキャラクターの登場や声優トークショーも行われる予定だ。昔ながらの幻想的な雰囲気と現代の話題が混在する形で、楽しみ方も人それぞれだろう。
 祭りに合わせ、冬の新たな観光コンテンツ「弘前デザインウィーク冬事業」も展開。市民やクリエイターがアイデアを生み出す試みや市民参加型ワークショップアート「雪桜」など、冬の弘前の魅力を多方面からPRする予定だ。
 祭り会場では、自治体連携事業の一環で弘前市、大鰐町、田舎館村、佐賀県嬉野市が連携ブースを開設。弘前のリンゴと嬉野の茶のコラボ商品化が進むアップルティーの試飲も行われている。
 田舎館村では9~12日に冬の田んぼアートが行われ、英国のサイモン・ベック氏によるスノーアート制作や雪に親しむアート・体験プログラムが行われる。週末には弘前市相馬地区の沢田ろうそくまつり、ニシメヤ冬フェスティバルといったイベントも予定されている。
 ちょうど今年は香港とタイからのチャーター便が8日に青森空港に到着した。香港からの観光客は4泊5日の日程で弘前城雪燈籠まつりなど東北地方を周遊する。台湾と青森空港を結ぶ冬季国際チャーター便も運行されている。これら冬季訪日観光客をひき付けているのは「雪」だ。
 雪に大喜びする訪日客の様子を見ると、津軽地域に暮らすわれわれを悩ます雪も、見方を変えれば貴重な観光資源であることを改めて実感する。雪や冷えた体を温める温泉、郷土料理など津軽ならではの冬季観光も多彩だ。地域一体で魅力を存分に発信する祭り期間にしたい。

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PKO日報「“廃棄”理由の徹底解明を」

2017/2/9 木曜日

 

 防衛省は南スーダンの国連平和維持活動(PKO)で派遣されている陸上自衛隊部隊が作成した日報について「廃棄した」という従来の説明を覆した。派遣部隊と、報告を受けた陸自中央即応集団は日報を廃棄していたが、同省統合幕僚監部内の電子データには残っていることが分かったという。
 陸自の文書管理規則では、PKO関連文書の保存期間は原則3年と定められているが、例外的に短期に目的を終えるものなどは廃棄が認められている。同省統合幕僚監部によると、南スーダンの日報は規則に照らして例外に該当すると判断され廃棄したと当初思われたが、実際は電子データが残っていたとの説明だ。
 日報の中には昨年7月に南スーダンの首都ジュバで発生した大規模な武力衝突についてのものがあった。現地の治安が当時、予断を許さない状況にあったことがうかがえる情報であり、簡単に廃棄してよいものではない。こうした日報は現地の状況を知るための重要な資料であり、PKOの交代部隊にとっても任務を円滑に引き継ぐため、必要なものだろう。また、現在活動している部隊が「駆け付け警護」などの新たな任務を遂行しても、日報が保存されていなければ、後日の検証に不足を来す可能性がある。防衛省の情報管理のずさんさは批判を受けてしかるべきで、同省は文書管理規則の抜本的な見直しを図るべきだ。
 情報管理の在り方もそうだが、公開された昨年7月の日報を見ると、ジュバで起きた大規模な武力衝突について当時の政府の説明との間に食い違いがある。
 日報ではジュバの宿営地周辺で「激しい銃撃戦」や「砲弾落下」があったと記載。「戦闘が確認されている」とし「突発的な戦闘への巻き込まれに注意が必要」などという記載もあった。
 政府はこの武力衝突について「武器を使っての殺傷や物を破壊する行為はあった」としながらも「戦闘行為ではなかった」との説明に終始してきた。しかし日報には「戦闘」という表記が複数あり、政府が否定してきた「戦闘行為」が起きていたことを裏付ける内容だ。
 7月の武力衝突をめぐっては「戦闘行為があったのかどうか」が当時の次期PKO派遣部隊に駆け付け警護などを付与するかどうかについての重要な判断材料の一つだった。
 稲田朋美防衛相は8日の衆院予算委員会でこの「戦闘」について「法的な意味の戦闘行為ではない」との見解を示したが、説得力に欠けるのではないか。政府は「文書を隠蔽(いんぺい)する意図は全くなかった」と述べているが、現地で見聞きした貴重な情報が開示されることなく、新任務付与という重要な判断がなされた事実は重い。政府、防衛省の姿勢が問われるものであり、「廃棄」とされた理由など真相は徹底的に解明されるべきだ。

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移住者の体験談「地域振興に向けたヒント」

2017/2/8 水曜日

 

 全国で移住を促す動きが活発化する中、移住希望者からは「移住の“先輩”から話を聞きたい」といった声が多数聞かれるという。
 昨年秋に東京都内に開設された弘前市のひろさき移住サポートセンター東京事務所にも、同じような要望が寄せられているという。そこで同事務所は先日、同市に移住した人を都内に招き、体験談を語ってもらった。
 一人は結婚を機に秋田市から移り住み、コーヒーショップを経営している女性。女性は店を構えるまでの経緯などを丁寧に説明した。
 弘前市は「珈琲の街」をうたっており、コーヒーショップがたくさんある。それだけに競争が激しいのではと思いきや、女性は逆のことを語った。
 コーヒーショップ経営者の間で交流があり、新たに開店する人がアドバイスを聞ける場があるという。女性もその場に参加しており、この日の来場者に「一緒に『珈琲の街』を盛り上げよう」と呼び掛けていた。
 移住を希望しても生業(なりわい)がなければ生活できない。現役世代が移住する上で最大の課題は「仕事の確保」。そうした中で、コーヒーショップの経営者の間にこのような絆があることは、移住希望者に勇気を与えるものではなかろうか。
 もう一人は岩手県宮古市出身の女性。弘前市内の大学を卒業後、草木染・こぎん刺し作家になった。その女性は「弘前にはもともと津軽塗、打刃物など伝統工芸品が身近にあるため作家を支援する土壌がある」と強調していた。
 東京事務所が2人を招いた理由は、コーヒーと伝統工芸品が弘前市の大きな特徴であると考えたからだという。全国の自治体が移住者の受け入れに躍起となる中、街の特徴を際立たせる必要があり、うまく弘前をアピールできた。
 加えて意義深かったと思えるのは、招いた女性2人が地域になじみ、生活の糧を得ていったプロセスが分かった点だ。地域に魅力があったとしても、実際にそこで生活するとなれば、多くの人と関わり、仕事もしていかなければならない。移住希望者が不安に思うのは、まさにこの点であろう。
 移住を決断するのは非常に勇気の要ることだ。慣れ親しんだ生活をやめ、全て一から築き直さなければならないのである。地方に住み、移住者を受け入れるわれわれは、彼らの不安にもっと寄り添う必要があろう。結局、それが地域の魅力になり、移住希望者を増やすことにもつながるはずだ。
 さらに、移住者の体験談には、地元で暮らす人たちが気付きにくい「地元の魅力」が詰まっているように思える。それらは地域を振興するためのヒントだ。これからも熱心に耳を傾けていくべきではないだろうか。

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イクボス宣言「大小問わず仕事と生活調和を」

2017/2/7 火曜日

 

 青森銀行(成田晋頭取)が県内民間では初めて、仕事と生活の調和を実現するワーク・ライフ・バランス向上に向けた「イクボス宣言」を行うとともに、イクボス育成に取り組む企業のネットワーク「イクボス企業同盟」に加盟した。同行は1月に始めた半日休暇、育児休業の5日間を有給とする制度をはじめ、定時退行日設定、定時前退行キャンペーンなどを実施。今回の宣言により、取り組みを促進させ、生産性向上や社会貢献推進を目指すことにしている。
 本県では昨年7月に県警本部が仕事と生活を両立できる職場環境を目指し、県内で初めてイクボスを宣言。全国的にも広島、滋賀、茨城、山梨各県警に続く5番目となった。このほか1月には、平川市が県内市町村で初めてイクボスを宣言し子どもを育てやすい、介護しやすい環境づくりを目指すこととしたばかりだ。公共機関にイクボスを宣言する動きが出る中で、ようやく民間でも名乗りが上がった形である。
 男性の育児休暇が注目されている昨今とはいえ、まだまだ同休暇を取得するには難しい状況である。この点は青銀のイクボス宣言に立ち会った「イクボス企業同盟」事務局のNPO法人ファザーリング・ジャパンの齊藤望東北支部理事の「制度を使う行員がいなければ絵に描いた餅。行員が気を使うことなく、育休、介護制度を使う体制ができれば」という言葉に如実に表れている。
 実際、「子育ては女性の役割」といった考えは依然多いのだろう。かつてのように大家族の3世帯同居が当たり前で、女性が家事と育児を全面的に担っていた時代とは現在、事情は異なる。核家族化が進み、女性の社会進出が当然となった中で、育児や日々の生活を営むには男性側の協力も不可欠だ。
 そうした中で、本県を代表する金融機関の一つである青銀がイクボスを宣言したことは、他の民間の範ともなろう。従来の取り組みはもちろん、率先した取り組みをアピールすることで、追随する企業などが名乗りを上げることに期待したい。
 とはいえ、民間は公共機関や一部大手のように潤沢に人がおり、互いに仕事をカバーし助け合えるような環境が整っている所ばかりではない。育児休暇に限って言えば、同僚や上司が理解し、全社的にカバーできることが大前提だ。少人数で日々の仕事に取り組む中小企業は一人ひとりの業務や行動がその社に与える影響は大きく、イクボス宣言には慎重にならざるを得ない場合もあろう。
 ただ、中小零細ながらも可能なイクボスの在り方を模索する動きもあると聞く。その社・団体によって、イクボスに対する意識の違いはあろうが、大小問わず仕事と生活の調和は実現されなければならない。

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