社 説

 

核のごみ「国民的議論が必要だ」

2017/7/19 水曜日

 

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の“適性”を示す「科学的特性マップ」について、世耕弘成経済産業相が18日、月内にも公表する考えを明らかにした。再処理工場を抱える本県や原発の立地県は別として、最終処分問題に対する関心は高くない。マップの公表によって国民的な議論が広がることを期待したい。
 原発から出た使用済み燃料を再処理した後に発生する廃液と、溶かしたガラスを混ぜて冷やしたものがガラス固化体、いわゆる核のごみとなる。再処理を委託した海外から返還されたものは六ケ所村に一時貯蔵されている。
 処分方法をめぐっては「海底」と「南極の氷床」は国際条約で禁止され、「宇宙」は膨大な費用と技術への信頼性から除外された。地上での長期管理は何世代にもわたって人間が関与できるかという根本的な課題から困難とされ、地下深くに埋設する地層処分が最も現実的な方法として選ばれた。
 政府は2000年に成立した最終処分法で処分場の調査方法を定め、経産省の認可法人・原子力発電環境整備機構が調査を受け入れる自治体の公募を始めた。しかし手を挙げた自治体はあったものの調査開始前に頓挫し、1件も文献調査に入れない状態が続いている。
 遅きに失した感は否めないが、政府は事態打開に向け15年に新たな基本方針を閣議決定し、国が前面に立って取り組むと同時に、自治体や国民理解を促すためマップの作成を打ち出した。
 資源エネルギー庁によると、マップ作成に当たっては▽火山や活断層、開発の可能性がある鉱物資源から遠い▽海岸からの陸上輸送が容易―などの技術的な観点から、全国地図を色分けして“適性”を表す方針だ。
 昨年からはマップ提示に向けた自治体説明会やシンポジウムを全国で開き、理解を得るための取り組みを進めている。またマップ提示後も全国説明会などを通じ、環境づくりに努めるという。
 失った安全性への信頼とは別に、温室ガス削減やエネルギー確保という異なる視点からも、原子力の存否は議論すべきだ。それとは別に、現役世代には享受した分の、核のごみの処分場を決める責任があるはずだ。もっと国民の関心が高まり、議論が深まることを期待したい。
 また、政府側が丁寧な説明に努めているのか、引き続きその姿勢を注視していかなくてはなるまい。
 一方、本県を最終処分地にしないという政府との確約について、エネ庁側は今年5月に青森市で開いた説明会で「順守する立場に変わりはない」と強調した。ただ、本県との確約など“社会科学的観点”についてはマップ提示後に議論するとした。こちらも注意深く見守っていく必要がある。
核のごみ「国民的議論が必要だ」

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田んぼアート25年「発想力生かし村内経済活性化を」

2017/7/15 土曜日

 

 田舎館村の名を国内に知らせるだけでなく、国内外の賞も受けている田んぼアートは、1993年に「稲文字」としてスタートしてから、今年でちょうど25回目となる。役場隣にあるメインの第1会場では今年の題材「ヤマタノオロチとスサノオノミコト」がくっきりと浮かび上がり、夏の行楽シーズンを前に見頃を迎えた。
 もともと国の史跡に指定される弥生時代の水田跡「垂柳遺跡」があり、わが国の稲作文化を考える上で重要な地域であることから、村が「北方稲作繁栄の地」を掲げて始めたのが田んぼアートだ。当初は単色の岩木山と「稲文化のむら いなかだて」の文字を配した単純な図柄だったが、農作物というイメージしかない稲で田んぼに絵や文字を記そうという発想の斬新さは大きな注目を浴びた。
 2001年まで同じ図柄を続けてきたが、転機になったのは10年目を記念した「モナリザ」。有名なレオナルド・ダビンチの名画をモチーフにしたことで「田んぼアート」と呼ばれるようになった。以降は色の異なる稲の数を増やしたり、図柄も展望所からの見え方を考慮して遠近法を用いたりと、年々完成度を高めてきた。今年の第1会場も7色13種の稲を使って、繊細で躍動感のある作品に仕上げられている。
 いまや田んぼアートは全国各地で制作されるようになった。これまで「名所や名物なんて何もない」と思っていた地域にとって、どこにでもある田んぼに絵を描く取り組みは、目からうろこが落ちるようなものだっただろう。田舎館村もかつては、垂柳遺跡はあると言っても、弘前城を有する弘前市などの周辺市町村と比較し、観光名所に乏しかった。
 主産業の農業を観光に活用しようとしても、観光果樹園や体験型ファームステイなどが一般的。そういう中で田んぼを鑑賞してもらおうという画期的な発想を形にした。知名度は年々上昇し、人口8000人ほどの村は、田んぼアートだけで村民の4倍以上の観光客を受け入れるまでになった。
 観光の活性化には現有資源の磨き上げや新たに作りだす手法などがあるが、田舎館村は弥生時代から稲作文化を受け継いできた誇りを資源と捉えた。その結果、米どころとして認知されるだけでなく、村内外から多くの人が参加する田植え体験ツアーを通じて農業に関心を持たせる機会になるほか、植物を使った巨大な芸術は国際観光振興にも有効だろう。
 着実に進化する田んぼアート。しかし、民間企業による関連商品の開発や田んぼアート商店街設置などはあるが、インバウンド対策などを考えると、まだまだ不十分。四半世紀を機に経済活性化に向けた新たな施策を打ち出したい。田んぼアートを成功させた村民たちには、豊かな発想力と行動力があるはずだ。

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夏の高校野球開幕「球児の全力プレーに期待」

2017/7/14 金曜日

 

 第99回全国高校野球選手権青森大会が13日、開幕した。開会式で五所川原の小田桐圭吾主将は「私たちの勝利への執念は奇跡を起こすことができる。甲子園出場を目指して正々堂々、熱戦を繰り広げる」と選手宣誓。26日の決勝までに、数多くの奇跡やドラマがきっと生まれることだろう。
 今大会には連合2チームを含む63チームが出場。優勝争いの中心は、昨大会優勝の光星、春季県大会を制した青森山田、準優勝の聖愛、強豪の八工大一の私立4強となろう。昨秋の県大会で3位となった弘前東の躍進にも期待したい。
 県内では長い間、私立4強の強さが際立っているが、一昨年の大会では公立の三沢商が下馬評を覆して優勝を果たした。私立4強に対抗心を燃やす公立も多く、白熱した戦いが繰り広げられそうだ。
 サッカーやバスケットボール、ラグビーなどの人気も県内では高まっているが、球技の中ではやはり野球はまだまだ特別な存在のようだ。そのことを再認識させられたのが、6月28日に行われたプロ野球1軍戦だ。
 弘前市のはるか夢球場には1万3000人を超えるファンが訪れ、想像をはるかに上回る盛り上がりを見せた。29年ぶりの1軍戦だったということを差し引いても、市民、県民の野球に対する情熱が高いことをうかがわせた。
 そのはるか夢球場で、今大会は準々決勝以降が行われる。おそらく大勢の人が訪れることだろう。願わくば、来年以降も同球場で決勝が行われ、県内高校球児の「聖地」となってもらいたい。
 一方で高校野球を取り巻く環境は厳しさを増していると言えよう。人口減少、少子化の進行に伴い、野球部員も減少し、各大会で連合チームでの出場が増えてきている。今大会では、鯵ケ沢と木造深浦校舎、金木の3高校が連合で出場する。3校連合は大会初だ。
 さまざまなハンディキャップがあっても、大会出場に向かって努力するのは、仲間や支えてくれた保護者、母校への思いがあるからなのだろう。3年生にとっては「最後の夏」でもある。金木の宮越詞也主将は「最後の夏の1勝は格別」、木村千一郎監督は「最後の大会の勝利は重みが違う」と口をそろえる。
 3校とも、夏の勝利からは遠ざかっているだけに思い入れは強い。連合チームで勝利すれば、それは1勝以上の価値になることだろう。勝利を目指して最後まで諦めず、悔いのないよう全力でプレーしてもらいたい。
 3校以外もそれぞれの目標を持って大会に臨む。甲子園出場、そして日本一を目指すチームがあれば、まずはベスト4、初戦必勝を掲げるチームもある。それぞれの夢に向かって、仲間と力を合わせて戦い抜いてほしいと願う。

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ヒアリ対策「万一に備え、継続的な対応を」

2017/7/13 木曜日

 

 強い毒を持つ特定外来生物のアリ「ヒアリ」が国内各地で見つかったことを受けて、政府はヒアリが生息する国と定期コンテナ航路がある、本県の八戸港(八戸市)など国内68港で大規模な防除作業を実施する方針を決めた。全国で計数万から数十万個の殺虫餌の設置を検討しているという。
 本県で唯一、定期コンテナ航路がある八戸港では、神戸市でヒアリが見つかった直後の6月20日以降、継続的に目視調査を行っており、幸いにも発見の報告はない。県は、コンテナ取り扱いはないものの本県の重要港湾である青森港(青森市)、むつ小川原港(六ケ所村)の各管理所に対しても注意喚起を行った。しかし、気を緩めず万一の時に備えて、調査の継続はもちろん、通報や殺処分といった対応に抜かりがないよう取り組んでもらいたい。
 ヒアリは南米原産で、体長は2・5ミリ程度。輸入や飼育を規制する「特定外来生物」に指定されている。腹部の末端に毒針を持ち、刺されると息苦しさやめまいを起こす場合があるほか、海外では死亡例がある。国内では今年5月、兵庫県尼崎市で中国から運ばれたコンテナ内で初めて確認。その後、東京都、愛知県などで相次いで確認された。
 防除作業は来週以降、巣に持ち帰らせて巣の中のアリを全滅させるタイプの殺虫餌を月末までに、1港当たり数千個置き、目視調査も行う。中国からの貨物取扱量が多い場所に殺虫餌を多く置くなど、生息が疑われる場所で重点的な対策を講じるという。こうした港湾での対応方針に加え、国土交通省は国際線が就航する本県の青森空港など、国内29空港に対し粘着剤が付いた捕獲用トラップの設置と緊急点検を要請した。
 県港湾空港課によると、八戸港ではヒアリが運ばれた中国・南沙港からのコンテナ取り扱いはない。しかし、国内でヒアリが見つかった他の場所でも、当然ながら発見は想定していなかったと思われる。本県は発生確認がないとはいえ、継続的な調査と有事の体制整備は不可欠であろう。八戸港の2016年中のコンテナ取扱量は5万8972TEU(コンテナ貨物の容量を示す単位。1TEUは2・5メートル×2・5メートル×6メートルの20フィートコンテナを指す)にも及ぶ。それだけにヒアリに限らず、他の特定外来生物の本県侵入がないよう努めることが必要だ。
 同港では2007年に樹木の葉を食い荒らすドクガの一種「マイマイガ(アジア型)」が発見され、当時北米航路(休止中)を利用していたアメリカ、カナダが同港を、マイマイガがいないことの証明を求める「不在証明要求港」に指定した経緯がある。それだけに今回のヒアリ発見のような事態への対応は想定しているだろうが、継続的な対策は欠かさぬよう求めたい。

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まちあるき博覧会「ニーズ把握しさらなる展開を」

2017/7/12 水曜日

 

 弘前市など中南津軽7市町村の街歩きが集結した「中南津軽まちあるき博覧会2017」が展開され、人気を集めている。7月23日まで、期間中のみのスペシャルコースを含む32コンテンツの街歩きを楽しめる内容で、津軽の魅力満載といったプログラムになっている。昨年に続き2回目の開催となる博覧会は、中南津軽7市町村のそれぞれの個性ある街並みや風景、文化、歴史を体感できる。知名度をさらに広げて津軽地方を代表するイベントに成長させていきたい。
 街歩きという新しい観光コンテンツが登場して、それなりの時間が経過したが、すっかり定番の観光商品として定着したように思う。それまでの団体客を中心に名所・旧跡を巡る団体ツアーの形態から、個人・グループ客が中心の観光スタイルに変わるにつれ、その土地の文化や生活をより深く知ることや、体験することを求めるニーズが観光客側から強まってきた。そうした流れに街歩き観光がマッチしたのが、この流行を生んだといえるだろう。
 本紙でも紹介したが、街歩きの中でも古写真や古地図を片手に街の歴史を探る「ヒストリーピン」というコンテンツが人気のようだ。6月下旬に弘前市の下町かいわいを巡った街歩きでは、藤田記念庭園からスタートし、下町周辺を散策。岩木川が昔は二手に分かれていたことを聞きながら、古地図を見比べ、かつての流路などを巡った。参加者は弘前城の外郭の一部だった馬屋町や寺山修司の出生地の紺屋町など下町に残る歴史に触れ、弘前城についても地形などを考察し、要害ぶりを確認したという。
 ヒストリーピンは、より深くその土地を知ることができる体験型観光を実践するものとして、格好の素材と言えそうだ。博覧会では第3弾の企画もあるようで、バリエーションを増やしながら街歩き観光の目玉となるよう創意工夫が図られることを期待したい。
 弘前の街歩きでは、先日、NHKの人気紀行番組「ブラタモリ」が弘前を舞台に放映された。“サムライ”をキーワードに弘前公園の桜の管理やリンゴの生産技術などについて、弘前の独自性を分かりやすく解説していた。観光客が弘前・津軽を訪れた時に興味を持つ部分は何かということを知る上でも良いヒントになった番組だった。
 中南津軽まちあるき博覧会には32のコンテンツが備わっている。「津軽の手しごと『こぎん刺し』体験とレトロ洋館散歩」「白神の恵みと里山暮らし」「まちなか探訪ツアー」など、個性豊かな仕掛けがちりばめられているが、観光客が津軽のどのようなものに興味を持っているのかは、どのコンテンツに人気があるかを見れば、分析できるだろう。観光客のニーズを的確に把握し、さらに津軽の街歩き観光を充実させていきたい。

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