社 説

 

特殊詐欺「一層の高齢者被害防止策を」

2017/2/4 土曜日

 

 昨年1年間に全国で発生した振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺の被害額が406億3000万円に上ることが、警察庁のまとめで分かった。被害額は2年連続で減少し、前年を75億7000万円(15・7%)下回ったとはいえ、依然として巨額。由々しき問題であることに変わりはない。
 認知件数は2011年以降、毎年増え続け、昨年は1万4151件(前年比2・4%増)だった。既遂1件当たりの被害額は減少した計算だが、被害の範囲は拡大したと考えていい。うち78%は65歳以上の高齢者。資産を比較的多く持っていたり、逆に今後の生活資金に不安を抱いていたりするなど、この世代ならではの特徴を突くのだろう。県内の特殊詐欺被害状況(県警まとめ)でも、認知件数68件のうち高齢の被害者が63・2%を占めた。
 全国の統計のうち昨年の手口で特徴的だったのは、医療費や税金の還付を名目とした還付金詐欺の急増。認知件数は3682件で、前年比55%増だった。これが全体の認知件数を押し上げたと指摘されている。被害額も42億6000万円で、前年を67・4%上回った。
 還付金詐欺は、自治体職員らを名乗る犯人側が還付手続きと称して商業施設、スーパー、コンビニにある無人の現金自動預払機(ATM)へ行くよう指示し、携帯電話を通じてATMを操作させる過程で送金させてしまう手口が特徴という。犯行に用いられたATMの96・5%が無人だった。
 金融機関の店舗に併設されたATMは職員らの目が厳しいため、比較的警戒が手薄な無人ATMを指定しているとされる。買い物先で現金を引き出せる手軽さが悪用されたとも言える。
 還付金詐欺の93%は高齢者。手口別で最も多かったおれおれ詐欺も高齢者が95・8%を占めた。架空請求詐欺や融資保証金詐欺では高齢者以外の層にも被害が見られるが、犯行グループの摘発と同様に、高齢者の被害防止対策は重要と言える。
 金融機関などでの声掛けや通報を通じて水際で阻止した被害は、昨年1年間で191億8000万円。件数1万3140件は最多という。一定の効果を上げてはいるが、被害の“高止まり”傾向を踏まえると、関係機関の連携を強化する必要がある。
 無人ATM対策も、設置商業施設などの店内放送や警備業者による見回りなどでは限界があろう。防犯協力団体に、定期的な巡回や声掛けを要請することはできないか。
 高齢者の家族や身近な人を通じた注意喚起も有効という。家族への働き掛けも重要だが、家族間で普段からこうした話題を共有できる環境が、見守りの目となって作用するかもしれない。

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パラリンピック「共生社会実現へ弾み」

2017/2/3 金曜日

 

 2020年の東京パラリンピックに向け、弘前市はブラジル視覚障がい者スポーツ連盟と同市でブラジル柔道チームが事前合宿を行うための覚書を交わした。今後、条件面などについて本格的な協議を進め、正式な協定締結となる運びだ。
 市は東京五輪での台湾ソフトボールチームの事前合宿誘致を既に決めており、実現すれば2チーム目。パラリンピック競技に絡む事前合宿の誘致は県内初となる。選手団の来弘を歓迎したい。
 事前合宿の誘致は受け入れる自治体を選手団や観光客が訪れることで国際交流や地域振興が期待されるほか、地方の住民にも東京五輪・パラリンピックが身近に感じられるというメリットがある。
 市側は競技施設や宿泊場所を準備し、国内での施設使用経費や宿泊費、移動費などを負担することになるが、選手団は本番にベストコンディションで臨めるよう、20年を待たず毎年来弘して合宿するというから、交流も単発ではなく、じっくりと深めていくことが可能だ。
 何よりも市側が合宿誘致の目的に掲げたように、パラリンピック出場選手との交流や一流の障害者スポーツに触れることは共生社会実現に向けたきっかけとなり得る。その意義は大きい。ブラジルにはリオパラリンピック柔道女子70キロ級で銀メダルを獲得したアラナ・マルドナド選手がおり、20年の東京では金メダル獲得を宣言している。彼女の活躍は市民にパラリンピック競技に注目する楽しみを与えてくれるだろう。
 また今回交渉相手となったブラジルの視覚障害者柔道チームとは縁がある。両者をつないだのは弘前市船沢地区(旧船沢村)出身で、ブラジルに柔術を伝えた「コンデ・コマ」こと前田光世。前田は柔道を広めるため20代で渡米、欧州や中南米諸国を経てブラジルにたどり着き、柔道着を着用した異種格闘技戦で無敗と言われる強さを誇った。今回来弘したブラジル視覚障がい者連盟のサンドロ・ライナ会長は「ブラジルの柔道選手に大きな影響を与えた。知らない人はいない」と敬意を表し「(弘前とは)深い関係がある。現時点で他での事前合宿は考えていない」と深い縁を強調した。
 前田はブラジルで最強の格闘技とされるグレイシー柔術を生んだグレイシー一家に柔術を教え、世界的に知名度を上げたが、地元の知名度はそれほど高くない。弘前公園内に石碑があり、船沢地区には出生の地の碑や船沢中学校にコンデ・コマの名を冠した武道場があるが、近年はその名を知らない人が増えており、今回の交流を機に地元の偉人に再び光が当たることも大いに期待したいと思う。
 五輪・パラリンピックの国内開催は56年ぶり。この好機に台湾やブラジルとの間に友好関係を育み、文化や観光、産業などさまざまな分野で波及効果をもたらすよう取り組みを進めてほしい。

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求人倍率年間1倍超「質のさらなる向上必要」

2017/2/2 木曜日

 

 青森労働局によると、本県の2016年の有効求人倍率(原数値)は1・08倍となり、1963年の統計開始以来初めて年平均で1倍を超えた。7年連続で前年を上回り、4年連続で過去最高を更新。昨年12月も1・18倍(季節調整値)で過去最高を更新、都道府県別の順位も過去最高位となり、県内での雇用情勢が上向いていることはおよそ間違いないのだろう。
 ただ、手放しで喜ぶわけにもいかない。同労働局は有効求人倍率の上昇について、人口減少による求職者数の減少に加え、人手不足による求人の増加が影響していると分析する。いわゆる現役世代が減少しているから、自然と倍率も上がったという側面は否めない。都道府県の順位も最高位とはいえ、まだまだ下位にとどまっている。
 産業別の偏りも改善はされていないようだ。年間の求人数は建設業が前年比10・5%増の1万4653人、サービス業が同8・8%増の1万5261人、医療・福祉は同5・6%増の2万8049人などとなっている。全業種で人手不足傾向にある中でも、特に仕事内容がきついとされる業種は希望者が少なく、慢性的な人手不足に悩まされているという話も聞かれる。
 地域間の格差も解消されていない。昨年12月の有効求人倍率(原数値)は県全体で1・07倍となったが、職業安定所別に見ると、五所川原0・55倍、黒石0・73倍、弘前0・91倍と、津軽地方は軒並み1倍を切っている。県都の青森は県内最高の1・33倍で、八戸1・31倍、野辺地1・17倍、十和田1・14倍、三沢0・94倍、むつ0・90倍と続く。
 以前から見られる傾向だが、やはり津軽地方の落ち込みが目立つ。いずれの管内も前年から伸びてはいるものの、弘前は0・09ポイント増と最も鈍い。野辺地の0・35ポイント増、八戸の0・31ポイント増などと比べると物足りないし、県平均の0・20ポイント増の半分にとどまる。津軽地方はまだまだ底上げが必要だ。
 求人数の増加だけでなく、質の向上にも取り組まなければならない。雇用環境を改善しない限り、大都市圏への人材流出には歯止めをかけられないだろうし、人材を呼び戻すことも困難だ。そういった意味では、これからが正念場と言えよう。
 北海道新幹線開業による交流人口の拡大やリンゴの販売、輸出の好調さなど、明るい材料は整いつつある。青森県で生まれ、働き、安んじて暮らしていけるようになるまで、もうひと頑張りというところまできているのではないか。
 これまで産学官金が一体となり、求人の掘り起こしや早期提出など、地道な努力を積み重ねてきた結果が今につながっているはず。もうしばらく、息の長い取り組みを続けていってもらいたい。

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米国難民・移民規制「大統領令の即時見直しを」

2017/2/1 水曜日

 

 トランプ米大統領によるシリアなどの難民受け入れ停止やイスラム圏7カ国からの入国禁止令による混乱は、目を覆うばかりだ。米国内では抗議集会が連日続き、国民から激しい抗議の声が上がる。
 国際社会からの批判も強い。オランド仏大統領はトランプ大統領との電話会談で「難民保護の原則を守らなければ、民主主義を守ることはできない」と批判。メイ英首相の報道官も「この種の措置には同意しない」と表明した。
 イスラム圏の反発も当然強い。インドネシア外務省報道官は取材に「過激主義やテロリズムを特定の宗教と結び付けるのは間違いだ」と批判。イラクは米国に「誤った決定の見直し」を要求し、スーダンやイエメンは相次ぎ「不満の意」を表明した。
 こうした事態に、ついには米国司法省トップのイエーツ司法長官代理が、この大統領令を支持しないよう同省に命じ、ホワイトハウスが長官代理を解任する事態にまで発展。西部ワシントン州が大統領らを相手取り「違憲」として提訴に踏み切る動きを見せるなど、政府内や地方州にまで混乱や反発が広がっている。
 米国は言うまでもなく、移民の国だ。米国勢調査局によると、推定約3億2000万人(2016年)の人口のうち、約4300万人が外国生まれの「移民」に当たる。移民がもたらした労働力や技術力、文化、風習が米国の活力となり世界に類を見ない発展を遂げてきたことを如実に物語る数字ではないか。
 トランプ大統領は高まる批判に「われわれの国には今こそ、強固な国境と究極の入国審査が必要だ」とツイッターに投稿。自らの政策の正当性を主張した。だが、特定の国や特定の宗教を理由に個人を差別するような今回の政策にどのような正当性も見いだすことはできない。まして今回の問題では1975~2015年に起きたテロ事件で7カ国の出身者は1人の米国人も殺害していないという信頼性の高い報道もある。少なくとも自他ともに認める民主主義社会のリーダーである米国が行うべき政策ではない。
 トランプ大統領は即刻、この大統領令を見直すべきだ。難民が生まれる背景の戦争やテロ、移民が生まれる背景の世界的な経済格差の問題を解決に導けば、強固な国境も、究極の入国審査もおのずと必要なくなる。政治、軍事、経済で国際的な影響力を行使してきた米国にはこれらの問題について解決を図る責務があるはずだ。米国一国主義でこうした国際的な問題に背を向けることはできない。
 それにしてもこの問題で日本政府から目立った意思表示がないことを物足りなく思う。10日の日米首脳会談で安倍晋三首相は日米同盟の揺るぎない姿を世界に発信したい―と意気込んでいるが、良き同盟者、良き友人であるならあえて苦言を呈するのも友人の務めではないか。

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伝統工芸品の販路「市場の存在を正しく知りたい」

2017/1/31 火曜日

 

 「伝統工芸品がなかなか売れない」といった声は全国各地で聞かれる。ただ、市場は本当にないのか。どうやら「ない」とは言い切れないようだ。
 昨年末、東京・六本木で1カ月間開かれた県の企画展「青森展」は、関係者の予想を上回る売り上げを記録した。津軽塗、津軽打刃物、こぎん刺しなど県内の伝統工芸品が計約400点販売され、売上金額は200万円以上に上った。
 なぜ売れたのか。関係者の分析によると、県内の伝統工芸品が珍しかったからだという。言い換えれば、首都圏の一般消費者にとっては、メジャーではなかったということになる。
 例えば、漆器は全国に見られ、広く知られるものも少なくない。その中で、津軽塗の知名度は今のところ、高いとは言えない。企画展では「この塗り物は何」と尋ねる来場者もかなりいたという。
 地元のわれわれからすれば、津軽塗は県内の伝統工芸品の代表格であり、一定の知名度はあるだろうと思っているが、実際はそうではなかったのである。
 ここで考えたいのは、知名度の低さを嘆くべきかという点。確かに全国的に知られてはいないが、その津軽塗に興味を持って買い求める客が実際にいるのである。むしろ、この点に希望を見いだすべきではないだろうか。
 津軽塗は技法が多様で、工程が非常に多い。企画展の関係者によると、こういった特徴が強力なアピールポイントになるという。消費者は、工芸品にまつわるストーリーを求めており、津軽塗にはそれがあるのだということらしい。
 特に注目したいのは、消費者は伝統工芸品を買い求める上で生産者の思いを知りたがっており、直接のやりとりを望んでいることだ。企画展に携わった企業の代表はこういった状況が「作り手の独立」につながり、伝統工芸品を販売していく理想的な形を生むと強調する。
 バブルが崩壊した以降、流通業界は安価な商品を求め、さまざまな分野で価格破壊も起きてきた。その中で価格帯が高い伝統工芸品も価格を下げることを強いられ、そのつけは産地に回ってきた。
 当然だが、採算を割れば生産者は生活できない。生産者が生活できなくなれば、産地も消えてしまうのである。しかし、よく見れば市場は確かにある。今回の企画展の結果は、そのことを気付かせたのではないか。
 伝統工芸品は「高いから売れないだろう」「古い物だから売れないだろう」と諦めるには早すぎる。というより、認識を改めてみようではないか。
 市場の存在を正しく認識し、そこに商品を売り込んでいく。こうしたアプローチが今、産地全体に求められている。伝統工芸品は、地域のアイデンティティーを形成する大切な一要素。なくすわけにはいかない。

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