社 説

 

訪日外国人「受け入れ側の準備を急げ」

2017/4/6 木曜日

 

 昨年の訪日外国人数は2400万人を超え過去最高を更新した。20年前の1996年には400万人に届いていなかったことを考えれば、急増ぶりに驚くばかりである。人口減少の時代にあって、訪日客の呼び込みは地方にとっても経済の活性化に資する、重要な政策課題となっている。
 2016年は訪日ビザ(査証)の発給要件緩和、格安航空会社(LCC)の路線拡充などを追い風に、特にアジアからの訪日客が増えた。ただ、円高も響き、伸び率は27・8%と前年の47・1%から鈍化した。20年に訪日客を4000万人に引き上げる目標を掲げている政府は「今年が正念場」(観光庁)とし、受け入れ環境の整備を急ぐ考えだ。
 私事ではあるが、今春の異動で20年ぶりに東京勤務となった。支社は銀座の一角にあるが、行き交う外国人の多さに驚いた。高級ブランド店が立ち並ぶ立地環境もあるだろうが、中国圏はもちろん英語やフランス語が聞こえたかと思えば、イスラム教徒特有のスカーフ姿の女性も数多く見掛ける。まさに訪日客の増加を肌で感じている。
 政府の取り組みに合わせ、運輸・観光業界も訪日客の需要取り込みを加速させている。JR各社の豪華観光列車は言うに及ばず、大手航空は新幹線と連携して訪日客の地方誘導に取り組む考えだ。旅行大手も東京や大阪を出発し、地方の観光地を巡る広域バスツアーを企画する。
 県内に目を転じれば、今年1月から3月まで運航された中国・奥凱航空の国際チャーター便は、当初見込みを上回る5700人が利用、本県や北海道を周遊するなどして冬季の魅力を味わった。閑散期の観光振興が長年の課題であるだけに、県や関係機関も手応えを感じているようだ。
 外国人客ばかりではないものの、青森港には先日、今年初めて大型客船が寄港した。年内には過去最多となる23隻の大型客船が寄港を予定しており、万単位の観光客が県内を訪れることになる。
 訪日客の増加と同時に課題となるのが受け入れ側・観光地の対応だ。本紙でも観光ガイドの語学研修、会話シートの作成、免税カウンターの開設といった取り組みを報じているが、政府目標通り数年後に訪日客が倍増する事態となれば、準備期間は極めて短い。
 交通機関や宿泊施設における案内の多言語表記も欠かせない。ホームページも同様で、特に訪日客のニーズが高いインターネット環境の整備などは官民挙げた取り組みが必要だろう。
 何よりも、一度訪れた外国人に「また来たい」「友人や知人にも魅力を伝えたい」と感じてもらうことが肝要だ。海外に向けた魅力発信も重要だが、それと同時に、満足してもらえる受け入れ体制の整備が急務である。

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平川市観光協会「民営化の利点生かし独自策を」

2017/4/5 水曜日

 

 官公庁や企業などは3日に事実上の新年度をスタートさせた。このうち平川市観光協会は協会業務を担っていた市から独立し、民間組織に移行した。現在、一般社団法人化に向けた手続きを進めており、民営ならではの柔軟な発想で観光振興を進める方針だ。
 協会は平賀、尾上、碇ケ関の3町村の合併による平川市誕生を受け、2007年に平賀町、尾上、碇ケ関温泉の3観光協会を合併して発足。事務局を市尾上総合支所内の商工観光課に置き、主に市職員が業務を兼任してきた。
 外部から会長、事務局長らを選任してはいるが、行政主導であることは否めず、民間運営のメリットをフルに発揮できる体制整備が必要といった観点で、市と協会が一致。民営化に踏み切ることにした。これで県内10市の観光協会で、民営化されていないのは、つがる市だけとなった。
 民営化に伴い、事務局は同課から移転したが、支所と同じ建物にある生涯学習センター内に設けたことで市との連絡を容易にしており、混乱を回避した。一方で当初考えていた一般社団法人での新体制スタートは手続き上かなわなかったが、早ければ5月、遅くても年度内には移行できる見通しになっている。現在、事務局長ら2人を中心に行っている運営には、5月から地域おこし協力隊員らが戦力として加わる予定だ。
 間もなくおのえ花と植木まつり、志賀坊まつり、白岩まつり―と、春の観光シーズンに突入する。会場を訪れる市民や観光客らに、民営化されたことを示す最初の機会になる。市からの業務引き継ぎなど多忙な時期なのは理解するが、新組織に生まれ変わったことをアピールする絶好の機会ではないか。民営化の意義を印象付ける何かしらの変化がほしい。
 協会側は「これまでの事業をやっていくだけではだめ。一つでも二つでも新規事業を行うほか、既存の祭りの中でも新しいイベントなどを仕掛けたい」とし、会員や一般市民らに募ったアイデアを基に新規事業を増やしていく考えだという。市側も協会の取り組みに期待するとともに「官民の両輪で観光振興を図りたい」としている。それぞれが担うべき役割を把握し、密接な関係を維持、発展させることができれば、観光振興や地域経済活性化につながるはずだ。
 国名勝「盛美園」などの名所、近年注目度が高まっている平川ねぷたまつりといった観光資源のさらなる魅力向上や、増加傾向にある外国人観光客対応など、幅広い施策が求められている。黒石観光協会は15年に黒石市産業会館から弘南鉄道黒石駅前に移転し、観光案内所を開設しており、観光客の反応は良好だという。こうした他市の状況を参考にしつつ、全く新しい独自策が生まれることを期待する。

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弘前市博40周年「市民の厚意が構成した資料群」

2017/4/4 火曜日

 

 弘前市立博物館が1977年4月の開館から40周年を迎えた。今年度は特別企画展を例年より1本増やし、企画展と特別企画展合わせて6本の開催を予定している。
 40周年記念を冠した展覧会の第1弾として、同館の代表的な収蔵品を一挙に紹介する企画展「輝け‼館蔵名品BEST40」が開かれている。あまたの中から、歴史的・美術的価値が高いもの、過去の展覧会で来館者の人気が高かったものからえりすぐった40件(145点)を展示している。
 展示資料は、弘前藩の歴史と、津軽の風土に根差した強烈な個性を表現した美術、高い技術に支えられた工芸を凝縮させた構成。同展は博物館の40年にとどまらず、歴史・美術・工芸の観点から捉えた弘前を中心とする津軽そのものの“ショーケース”と言っていい。
 博物館の収蔵品は、市民らからの寄贈品や寄託品が多くを占めている。同展出品物から一例を挙げれば、「津軽漆塗手板」(県重宝)は津軽家からの寄贈品。江戸後期から明治期にかけて弘前で用いられていた漆塗りの技法の多彩さを今に伝える貴重な資料だ。
 開館当初の収蔵品は事実上、それまで博物館機能を担っていた当時の市立図書館の収蔵品のみ。当初から必ずしも潤沢なわけではなかった。それが「市民共有の財産に」という所有者らの厚意で次第に増え、特徴づけられていったと言っても過言ではない。市民らによる設置要望から20年を経て開館に至った博物館に対する期待の表れであろうし、資料の取り扱いに対する信頼もあったはずだ。
 希少性が高く評価されているこけし群「木村弦三コレクション」も忘れてはなるまい。
 木村氏は音楽家で、民間資料や、こけしをはじめとした郷土玩具の研究・収集家としても知られた人物。コレクションは58年、同市を流れる土淵川の洪水により、ほとんどが流失したとみられていた。後年、同館に寄託されたこけし群は、当時救出されたまま半ば忘れ去られた状態が続き、79年に再発見されたもの。博物館職員らによる洗浄作業を経て公開されたこれらは「幻のこけし」として反響を呼んだ。関係者や職員の熱意の結実とも言えよう。
 同市では来年4月に津軽歴史文化資料展示施設が開館予定。吉野町緑地周辺整備事業で核となる煉(れん)瓦(が)倉庫を活用した美術館は2020年度オープンを目指している。これらの開館後も、市民の身近な歴史・美術との出合いの場として、また観光客が弘前の歴史の変遷に触れられる場としての基本的な役割に変わりはあるまい。日本近代建築の巨匠、前川國男の作品である建物とともに、弘前の歴史と感性と技術、市民らの厚意を長く伝え続けてほしい。

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「古典書籍デジタル化」弘前の歴史、深く知る機会に

2017/4/1 土曜日

 

 弘前市教育委員会と弘前大学人文社会科学部は、弘前市立弘前図書館が所蔵する古典書籍などの学術的価値を明らかにし、デジタル公開するための覚書を締結した。同図書館が所蔵する貴重資料は江戸時代から明治、大正期を含めて約6万9000点。そのすべてがデジタル化されるわけではないが、後世に永続的に残していくためには資料のデジタル化が極めて優れた方法の一つと言えるだろう。またデジタル化の過程で、資料の再評価が行われ、学術的価値がさらに高まるケースもあるかもしれない。専門家的な研究が行われている弘前大学との連携により「歴史の町・弘前」にふさわしい事業となるよう、期待している。
 弘前図書館は、4月1日から管理・運営に指定管理者制度が導入されるが、古典書籍のデジタル化事業は、市の直営部門である生涯学習課図書館兼郷土文学館運営推進室が実施する。市民らの利便性を高めるために、図書の貸し出しなどのサービスには民間のノウハウを活用し、専門性の高い貴重資料の管理などは行政が引き続き、責任を持って運営を担うことになる。行政、民間がそれぞれの得意分野に力を発揮することで、弘前図書館の機能向上につながればと思う。
 デジタル化事業は、初年度、江戸時代の歴史をまとめた新編弘前市史の通史編2、3と年表・索引編をフルテキスト化するほか、同市史に引用されている資料86点と大型の古地図16点をクラウド型のデジタルアーカイブシステムに搭載し、国内外から誰でも閲覧できるようにする。調査などが終わった資料から順次、公開を予定していくそうだ。
 デジタル化において、主な対象となるのは、図書館が約50点所蔵している弘前藩校「稽古館」の関係本や藩主の所持本と思われる「奥文庫」など、津軽の歴史や弘前の知の体系を解明できる本、資料が想定されている。
 今回の事業はデジタル化による資料の学術的評価や管理・保存能力の向上の他、記録された資料が広く一般に公開される点も大いに意義がある。近年は、地方自治体による歴史編さん事業が盛んに行われ、地方史の研究が格段に進んだ感があるが、どうしても紙媒体での記録保存では、公開や普及の範囲が限られるため、一般住民がこうした成果を目にする機会はそう多くはなかった。
 デジタル化され、インターネットなどで公開されれば、市民ももっと手軽に資料を閲覧することができる。郷土の歴史に対し、興味を持ちやすくなり、理解を深めやすくなるだろう。またより広い世界に発信されることで、研究者の目に触れることも多くなるため、研究の進展や新発見なども期待できるのではないか。
 こうした事業の進展で、弘前市の“知の拠点”の一つである弘前図書館がさらに発展することを切に願う。

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安保法施行1年「不安解消へ説明尽くせ」

2017/3/31 金曜日

 

 安全保障関連法施行から1年が過ぎた。ここにきて、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に参加する陸上自衛隊の日報をめぐる問題発覚で、治安が悪化する現地情勢が国民に伏せられたまま、同法に基づき駆け付け警護の新任務が部隊に付与されていたことが露呈。防衛省と安全保障政策への信頼を揺るがしかねない事態となっている。
 昨年6月からの日報には「戦闘」の表現が連日のように記載されており、一貫して「情勢は比較的落ち着いている」としてきた政府の説明との違いが際立つ。政府は日報の存在が明らかになった後も、「法的な意味での戦闘行為ではなく武力衝突」などと強弁しているが、銃弾が飛び交うような状況は、常識的にはどう見ても戦闘だ。
 日報では他にも、治安に関する項目のタイトルが「ジュバ市内の情勢」から「ジュバ市内の戦闘に関する状況」に変わったこともあった。8月3日付からは表紙に「閲覧は関係者限定」「用済み後廃棄」と記載されるようになった。治安悪化に伴い、外部への情報漏れに神経をとがらせていたことがうかがえる。
 武力衝突ではなく戦闘と認められれば、憲法9条が禁じる「海外での武力行使」に自衛隊が巻き込まれる恐れがあり、憲法との整合性が問われることになる。また、現地情勢が悪化すればPKO参加5原則から逸脱する恐れもあった。こうした不都合な事態を避けるために、隠蔽したのではないかとの疑惑を捨て切れない。文民の防衛官僚が、陸自内の電子データを消去するよう指示したとの疑いも出ている。
 PKO派遣の一方で、政府は昨年12月、平時から自衛隊が米軍の艦船などを守る「武器等防護」の運用を開始した。米、英、オーストラリア各軍との間では、物品役務相互提供協定(ACSA)の改定・新規締結で弾薬提供も可能となる運びだ。
 北朝鮮は弾道ミサイル発射を繰り返し、6度目となる核実験の兆候も見せるなど、挑発行為はとどまるところを知らない。中国軍機に対する航空自衛隊の緊急発進(スクランブル)回数は過去最多の水準だ。こうした実情を踏まえ、自衛隊は安保法が定める「武器等防護」や「重要影響事態」を想定した訓練を行っており、今後、同法の中核を成す集団的自衛権行使の訓練準備も進める。
 トランプ政権は北朝鮮対応で軍事行動を含む「あらゆる選択肢」を排除しておらず、自衛隊がさらなる役割拡大を求められる可能性も出てきた。安全保障環境が厳しさを増す中、米軍とより緊密な協力が可能になる一方、一体化も進み、自衛隊への要求が限度を超えかねないとの懸念も根強い。国民の不安を拭い去るためには、政府の積極的な情報公開と丁寧な説明が求められている。

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