社 説

 

加計学園問題「疑惑が晴れたとは言い難い」

2017/7/28 金曜日

 

 疑惑が晴れたと思った国民はどれだけいるだろうか。安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画をめぐり、衆参両院の予算委員会で閉会中審査が行われ、首相は関与を完全否定したものの、計画を把握した時期を修正するなど不透明な部分が残った。
 閉会中審査で首相は「李下(りか)に冠を正さず」との故事を引用し、「私の友人が関わることだから、国民から疑惑の目が向けられるのはもっともなことだ」と述べ、疑惑の存在を素直に認めた。「今までの答弁で足らざる点があったことは率直に認めなければならない」とも指摘。「印象操作だ」などと色をなして野党議員に反論することも封印し、ひたすら低姿勢に終始した。だが、説明が尽くされたとは言い難い。
 最大の疑問は、国家戦略特区制度を活用した加計学園の獣医学部新設計画について、今年1月20日の国家戦略特区諮問会議まで知らなかったとの首相答弁。これまでは国家戦略特区制度創設前に、加計学園から構造改革特区を活用した申請があったことを「承知していた」と答弁していたが、修正した。首相は特区諮問会議の議長として、昨年来の議論の経緯を知りうる立場にあったため、不自然さは否めない。
 しかも、加計学園の理事長とは長年の友人で、会食やゴルフを重ねる親しい間柄。野党が「そこまで知らなかったとは、にわかに信じられない」と疑問を呈するのも、当然と言えよう。
 他にも、首相の指示がなかったとしても、行政のプロセスが「加計ありき」で進められていたのではないかという疑念がある。しかし、閉会中審査で山本幸三地方創生担当相や和泉洋人首相補佐官ら政府側のキーマンは「記憶にない」との答弁を繰り返し、前川喜平前文部科学事務次官や日本獣医師会幹部らとの間に生じた矛盾は解消されなかった。
 疑念払拭(ふっしょく)には程遠い結果に、与党内からも「加計ありきの疑惑がむしろ深まったのではないか」「一度の説明では終わらない」との声が漏れる。野党は、首相官邸側の「圧力」の有無をめぐって対立する和泉氏と前川氏の証人喚問要求を強めており幕引きは見通せそうにない
 今回、政権側が閉会中審査を受けたのは、「危険水域」まで落ち込んだ内閣支持率が背景にあることは間違いないだろう。政権再浮揚への足掛かりの舞台とするはずだったが、結果的には「不発」に終わった印象が否めない。
 内閣支持率が降下し、東京都議選では歴史的惨敗、仙台市長選も敗北した。来週には内閣改造・自民党役員人事を行うようだが、もはや「人心一新」だけで支持率が回復することもあるまい。国民から向けられた不信を解消するために、納得できる説明を尽くすべきではないか。

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テレワーク「導入に向け、知恵を絞れ」

2017/7/27 木曜日

 

 ITを活用し、時間や場所にとらわれない働き方を呼び掛ける「テレワーク・デイ」が7月24日、初めて行われ、初回の今年度は全国約900の企業・団体の約6万人が職場以外の場所でIT機器を活用して働いた。テレワークの導入は柔軟な働き方が広がるきっかけになると期待されており、今後どの程度企業や官公庁に広がっていくのか、注目される。
 取り組みの直接のきっかけは2020年の東京五輪・パラリンピック。「テレワーク・デイ」と定めた「7月24日」は東京五輪・パラリンピックの開会式の日に当たり、予想される同日の交通混雑を緩和するため、企業や団体、官公庁らによるテレワーク一斉実施の予行練習をするのが狙いだ。実際、12年のロンドン五輪でテレワークの推進により渋滞が緩和されたという成功事例があり、政府も20年まで毎年実施を呼び掛け、五輪を契機とした働き方改革につなげたい考えだ。
 総務省によると、テレワークの普及率は16年9月末時点で13・3%と低い。最近よく目にするようになってきたとはいえ、認知度も高いとは言えないだろう。政府は20年までに普及率を34・5%に引き上げることを目指しているが、社員の勤務時間の管理や組織の一体感醸成、テレワークに適した勤務体系など、導入する側が考えるべき課題は少なくない。
 柔軟で多様な働き方が多くの企業で実現すれば、女性や高齢者、育児や介護、持病などさまざまな事情を抱える人にも就業のチャンスが広がる。人口減少に伴う労働力不足が深刻な課題として浮上する中、「テレワーク・デイ」も年に1度の単発イベントで終わらず、本格導入を見据えた手法や課題を探る場であるべきだろう。24日の実施状況を各職場で検証し、今後の導入につなげてもらいたい。
 県内でもテレワークの取り組みが少しずつ動き出している。そのうちの一つが弘前市のNPO法人が代表団体となり、県内外16団体が参画するコンソーシアムの取り組み。弘前市と青森市の2カ所にテレワーク拠点を整備し、移住やUターン人材の確保や新産業創出につなげようという事業で、総務省が地方のテレワーク拠点の整備を支援するふるさとテレワーク推進事業の採択候補に選ばれた。
 単にテレワーク拠点を提供するだけでなく、仕事の受発注やコミュニティーへの参画も支援し、地域活性化に寄与するIT人材らの県内定着を促そうというのが同事業の狙い。県外企業から仕事を受注する仕組みも構築済みだ。コンソーシアムは今後、県内に拠点を増やし、ネットワークを広げていきたいとしており、今後の事業展開に大いに期待したい。
 本県の労働力人口は全国よりも大きな減少幅で推移すると分析されており、対策は急務だ。テレワークもその取り組みの一環。時代に合った効率的で新たな働き方が定着するよう推移を見守りたい。

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大雨への備え「二重三重の構えで人命の守りを」

2017/7/26 水曜日

 

 県が21日の県議会建設常任委員会で、30人余の死者を出した九州北部豪雨と同程度の雨が本県を襲った場合、県管理の全河川で氾濫が発生し、県管理道路を含む各地の道路で被害が発生する可能性があるとの認識を示した。誰も考えすらしなかった未曾有の大災害・東日本大震災がそうであったように、最大規模の災害を想定した事前対策というのは難しい。ただ、被害を最小限に抑え、一人の死者も出さないとの構えで、考えられる限りの策を講じることは必要だろう。
 常任委の理事者答弁によると、九州北部豪雨時に朝倉観測地点(福岡県朝倉市)で観測された最大24時間降水量は545・5ミリ。これに対して、想定氾濫区域内の人口や資産などに応じて設定される治水安全度が、県管理河川全286カ所中で最も高い堤川(青森市)は24時間計画雨量が230・2ミリと、九州北部豪雨の最大24時間降水量には及ばない。これをもって、県側は「九州北部豪雨と同程度の大雨が流域全体に降った場合、すべての県管理河川で氾濫が想定される」と答弁した。
 このほか、県は管理道路全245路線中、大雨や台風による土砂崩れ、落石の恐れがある24路線29区間を「異常気象時通行規制区間」に指定。降雨が設定値を超えた場合に交通規制とする規制雨量は、全規制区間とも1時間当たり30ミリ、累積雨量120ミリ。こちらは九州北部豪雨の最大1時間降水量129・5ミリにすら及ばず、県側は「県内各地の道路で被害発生の可能性がある」と語った。
 22、23日には本県も大雨に見舞われた。22日は県内全域で大雨洪水警報が一時発令され、五所川原市では金木町588世帯1345人に避難勧告が出された。1時間当たり降水量は県内9地点で7月の観測史上最大を記録。床下浸水が5件あったが、幸いにも人的被害は確認されなかった。
 ただ、九州北部に限らず各地で大雨被害が発生する中、いつまた想定を超えるような災害が発生するかは分からない。九州北部豪雨級の雨に備えた対策の必要性はもちろん誰もが思うところだろうが、規模や予算的な面から一朝一夕にはいかないのが現実だろう。現在、県は河川については、過去に浸水被害があって優先度が高い15カ所の改修を進めているほか、道路は緊急性が高い箇所を工事するハード対策などを実施しているが、細やかな気象情報の提供や河川氾濫予想時の速やかな避難体制確立といったソフト対策の拡充もさらに必要となろう。二重三重の備えが人命を守ることにつながれば幸いである。
 まず、河川管理や住民避難に関する仕事に関わる人々には、地域住民が気象や避難に関する情報をどのようにすれば得られるか、徹底周知することから始めてもらいたい。

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チャイルドシート「正しい知識で適切に使いたい」

2017/7/25 火曜日

 

 本県のチャイルドシート使用率が全国と比べると非常に低い。日本自動車連盟(JAF)と警察庁による今年の調査では、全国平均の64・1%を大きく下回る51・0%となり、全国ワースト3位。今年度の交通安全県民運動では、シートの着用が重点の一つに掲げられている。夏の運動期間(21~31日)にある今、その重要性を再認識したい。
 使用率の全国平均はここ10年、おおむね上昇傾向にあり、今年の64・1%は前年の64・2%に次ぐ過去2番目の高さ。対して、本県は2年連続で下降した。JAF側は、本県の使用率低迷の要因を、車を複数台所有している世帯が多く、チャイルドシートを車の台数分そろえるのが困難なのではないか―と分析する。
 本県を含む地方で、車は生活の必需品。通勤、買い物、幼稚園や保育園に通う子どもの送り迎えなどに欠かせず、1人1台ずつ所有している世帯も少なくないだろう。車の所有台数が増えれば、その分、経済的な負担も増す上、チャイルドシートが決して安くないことを考えれば、シートを車の台数分用意することは簡単ではないことも分かる。
 ただ、6歳未満幼児の自動車同乗中の致死率は、チャイルドシートを使用していた場合に比べ、使用していなかった場合は約11倍に上がるとの統計もある。チャイルドシートの使用、不使用は車に乗る子どもたちの安全確保に大きく影響することは明らかだ。車の台数分のシートをそろえることができれば、それに越したことはない。
 道交法では、車の運転者はチャイルドシートを使用しない6歳未満の子どもを乗せて運転してはならないことになっている。しかし、ここ数年の年齢層別の使用率を見ると、1歳未満は80%台だが、1~4歳は60%台、5歳は40%前後にまで下がる。
 このような傾向は本県も同様で、子どもが歩けるようになる1歳半を境にチャイルドシートの使用率が激減するという。この点については、保護者に安全意識が不足していると言わざるを得ず、意識改革を強く求めたい。
 併せて、チャイルドシートに関する知識を持つことも必要だ。せっかくシートを使用していても、車の座席に固定されていなかったり、取り付け方を間違ったりした場合が見受けられるという。子どもの体形に合っていないケースもあるといい、子どもの成長に合わせて買い替える必要もあるだろう。
 さらに、チャイルドシートの品質自体に問題がある場合も見られる。国土交通省の調査によると、未認証のシートには強度が著しく不足するものもあり、同省はホームページで注意を促している。チャイルドシートについて正しい知識を得ながら、適切に使用し、子どもたちの安全を守りたい。

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津軽塗が国重文へ「伝統守り一層の産業振興を」

2017/7/22 土曜日

 

 津軽地方を代表する伝統工芸「津軽塗」が、国の重要無形文化財に指定されることとなった。国の文化審議会が21日、松野博一文部科学大臣に答申した。官報告示を受けて正式に決まる。
 国重要無形文化財には能や歌舞伎などが指定されており、本県では津軽塗が初となる。弘前市の津軽塗技術保存会を保持団体として指定するよう答申しており、漆器の分野で保持団体と併せて指定するのは石川県の輪島塗に次いで全国2番目となる。
 300年以上にわたって技術が伝承されてきた津軽塗が国重文に指定されることは地域にとって誇らしく、喜ばしいことであり、地道に伝統技術を受け継いできた関係者の取り組みの成果といえる。指定を機に津軽塗の魅力が国内外に発信され、技術と産業の振興、発展が図られることを期待したい。
 津軽塗は、弘前市を中心とする津軽地方に伝承される漆器制作技術。17世紀後半に弘前藩主が他藩から招いた塗師らによって発展し、18世紀前半までには、さまざまな変わり塗を用いて制作されるようになった。
 弘前藩庁日記には、弘前藩の江戸藩邸を訪問した松平薩摩守が弘前藩領で制作された漆器を気に入り、香箱などを注文したとの記録がある。当時、こうした大名間の交流などを通じて津軽塗の名声が全国に広がっていったようだ。
 堅く丈夫な下地に変わり塗などを施すもので、その多様さが特色。漆を塗っては研ぎ、塗っては研ぐ、各種の研ぎ出し変わり塗が有名で、手を抜かず丁寧に何度も繰り返すその工程から、俗に「馬鹿塗」と称されるほどだ。いかにも津軽地域らしい技法といえよう。
 複数の技法を併用したり、文様を描き加えたりすることによって華やかな色彩や質感を生かした無数の表現が可能となる。変わり塗を自在に駆使するには、塗りの種類に応じた適切な漆の調合・調整と高度な研ぎが必要とされ、こうした多様さが津軽地域で伝承されてきたことが高く評価された。
 世界に誇る津軽塗だが、課題も多い。全体の売り上げはピーク時の10分の1程度にまで落ち込んでいるという。以前は津軽地域の各家庭で津軽塗の箸やわん、盆などが身近に使われてきたが、最近は生活スタイルの変化や高価な側面もあり、気軽に使う人が少なくなっている。
 国重文指定を機に、まずは、われわれ地域住民が津軽塗の魅力を再認識したい。そこから新たな担い手が生まれ、産業の活性化にもつながっていくことが期待される。 
 津軽塗の新たな可能性を追求し、世界を視野に新たな取り組みや次世代への継承を見据えた動きも始まっている。伝統技術を守りつつ、時代とともに変化しながら、その魅力を高めていきたい。

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