社 説

 

日欧EPA「ブランド力強化し輸出促進を」

2018/7/19 木曜日

 

 安倍晋三首相と欧州連合(EU)のトゥスク大統領、ユンケル欧州委員長が日EUの経済連携協定(EPA)に署名した。「反保護主義」を訴え、2019年の発効を目指すとしている。制裁合戦が続く米国と中国の「貿易戦争」などを踏まえれば、世界経済にとって署名の意義は非常に大きい。
 協定が発効すれば、人口約6億人、世界の国内総生産(GDP)の3割を占める広域経済圏が実現する。日欧は双方の貿易品目の9割超で関税を撤廃するほか、特許など知的財産の保護をはじめとするルールも整備。ワインやチーズなど欧州産食品は値下がりする見込みで、競合する国産品にも価格低下圧力がかかり、消費者は恩恵を得ることになる。
 ただ、喜んでばかりもいられない。協定発効に伴い農林水産業の生産者らが厳しい競争にさらされることになる。
 政府が昨年末に公表した試算によると、協定発効後の年間の生産減少額は約600億~約1100億円に上る。米国を除いた11カ国による環太平洋連携協定(TPP)の影響を含めると、最大2600億円も減少するといい、生産者にとっては死活問題だ。貿易促進の陰で自国の産業が衰退するのであれば、元も子もない。効果的な国内対策が求められる。
 幸い、EUは日本食への関心が高い地域。国産食品の販路を開拓し、輸出を促すことは十分可能であろう。そのためには現地消費者の信頼獲得が何よりも重要だ。昨今は、欧州で発祥した農産物の国際認証規格「グローバルGAP」を取得する動きが日本国内でも数多く見られる。食品衛生管理の国際標準「HACCP(ハサップ)」なども含め、導入への動きを加速させたい。
 協定発効に伴う負の影響は、とりわけ牛・豚肉や乳製品で大きいとされるが、長期的に見れば、その範囲は広がらないとも限らない。リンゴや米、野菜などを主とする本県でも対策を着実に講じるべきだろう。
 県内では一般生産者だけではなく、貿易自由化がさらに進むであろう将来を見据え、五所川原農林高校のように生徒たちがグローバルGAPについて学び、取得している例もある。卒業後に就農した彼らが県産農産物を積極的に欧州に輸出し、高い評価を得る日が来ることを期待したい。
 協定には、地理的表示(GI)保護制度に基づき双方のブランドを保護する措置が盛り込まれ、日本の対象48産品には、「あおもりカシス」「十三湖産大和しじみ」「小川原湖産大和しじみ」が含まれている。
 これは、本県産品の中にEU市場で高い評価を受けているものがあることを示す何よりの証拠だ。本県農林水産業は臆することなく、「攻め」の姿勢でブランド力を一層磨き、輸出を促進したい。

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介護離職「目標に程遠い実態」

2018/7/18 水曜日

 

 総務省が5年ごとに実施している就業構造基本調査(2017年分)の結果が公表され、同年9月までの過去1年間に介護や看護を理由に離職した人(介護離職者)が全国で9万9100人、本県でも700人いたことが分かった。
 全国の介護離職者数は前回(12年)比2000人減でほぼ横ばい。1年間の離職者全体に占める割合は1・8%で、逆に前回から0・1ポイント増加した。本県も前回から100人減ったが、離職者全体に占める割合は1・6%で前回を0・1ポイント上回った。都道府県別で見ると、割合が高かったのは和歌山(3・3%)、長野(3・2%)、福島と山梨(共に3・0%)など。本県を含む31道府県で前回を上回った。
 調査時点で再び職に就けた介護離職者の割合は24・8%(2万4600人)。前回の17・6%より改善されたが、政府が掲げた「介護離職ゼロ」との乖離(かいり)はいまだに大きい。介護離職者のうち、女性は7万5100人で前回から6100人減ったにせよ、全体の75・8%を占めている実態は、女性の活躍を推進する政府方針に沿った内容とは言えまい。目標実現はまだまだ道半ばと言えそうだ。男性は2万4000人で、前回より4100人増えた。
 仕事に就きながら介護をしている人は、介護をしている人全体の55・2%に当たる346万3200人。男性の65・3%、女性の49・3%がこの状態にある。年齢階級別で見ると、男性は「55~59歳」(87・8%)、女性は「40~49歳」(68・2%)が最も高い。女性は「70歳以上」を除く全階級で前回を上回ったが、男性は「40歳未満」「60~64歳」を除き前回並みか前回を下回った。
 女性を中心に、以前に比べて多少は仕事と介護を並行させやすい環境になったと読めなくもない。しかし、再び職に就けた人の多くが前職並みの収入を得られているだろうか。
 女性は「正規の職員・従業員」の30・7%、「非正規の職員・従業員」(パート、アルバイト、派遣社員など)の32・9%が「週に6日以上」介護に当たっている。男性も正規の20・3%、非正規の29・8%が週6日以上だ。勤務と介護の並行自体、大きな負担を背負うことになるが、特に非正規の場合は介護のスケジュールに勤務形態を合わせているケースが少なからずあるのではなかろうか。
 家族の介護施設入所が待機状態のままとなっている家庭の話をしばしば耳にする。受け入れる施設側も軒並み人手が不足しているという。政府が打ち出している施設整備や介護人材の処遇改善といった対応策が急がれる。一方で、介護は受け入れ側を拡充すれば万事が解決する問題ではない。多様な「家族のかたち」に配慮した、より暮らしやすい仕組みづくりにも配慮してほしい。

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熱中症「対策怠らず夏を乗り切ろう」

2018/7/17 火曜日

 

 県内ではここ数日、厳しい暑さが続いており、弘前市では14日から3日連続で真夏日を記録した。18日までは天気がぐずつき暑さも一服しそうだが、19日以降は高気圧に覆われて晴れる日が多くなる予報。最低、最高気温ともに平年より高くなることが見込まれ、気象台などが熱中症への注意を呼び掛けている。
 急に暑くなった日や、久しぶりに暑い環境で活動したとき、体温調節がうまくいかず熱中症になる人が多くなる。気温がそれほど高くない日でも、湿度が高い日や風の弱い日などは注意が必要だ。予防法としては小まめな水分補給や、屋外では帽子をかぶったり日陰や涼しいところで休憩を取ったりすることなどが挙げられる。汗をかいたときの塩分補給も欠かせない。
 県内では熱中症による救急搬送者が、7月に多くなる傾向が見られる。消防庁によると、県内で昨年6~9月に救急搬送されたのは341人。月別では6月が25人、7月が277人、8月が30人、9月が9人だった。今年は7月2~8日の1週間で、既に22人(速報値)が救急搬送されている。
 昨年は重症者8人で死者はいなかったが、死亡者が出た年もある。決して無理はせず、必要に応じて救急車を呼んだり、医療機関を受診したりするようにしてもらいたい。
 搬送者数を年齢別に見ると、65歳以上の高齢者が最も多い傾向にある。県内では昨年、高齢者が181人と全体の半数以上に達した。高齢者は体温の調節機能が衰え、温度や湿度に対する感覚が弱まっている場合があり、熱中症になりやすいため特に注意が必要だ。室内に温湿度計を置いたり、小まめに水分を補給したりすることを心掛けたい。家族ら周囲の目配りも求められる。
 ただ、水分を多く取り過ぎると体の中の血液量が多くなり、心臓のポンプ機能に負担を掛けやすくなって急性心不全を引き起こす恐れもある。息切れや動悸(どうき)、むくみなど心不全の初期症状が見られた場合は、医師と相談して水分の摂取量を調整するようにしてもらいたい。
 暑い日が続くと、熱中症だけでなく、肺炎にも注意が必要となる。高温多湿でカビが増殖すると、特に免疫力の低下した高齢者が「夏型過敏性肺炎」を発症しやすくなる。高齢者には、夏に発生するさまざまなリスクに備えてほしい。
 熱中症については、乳幼児にもとりわけ注意が必要だ。晴れた日は地面に近いほど気温が高くなるため、ベビーカーや車いすは危険にさらされているといえる。乳幼児は体温調節機能が十分に発達していないため、大人よりもリスクが高まることに留意しなければならない。
 夏と暑さはこれからが本番。体力を過信せず、予防を怠らず、体調管理に留意して乗り切りたい。

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円覚寺本尊開帳「深浦の歴史と観光再認識を」

2018/7/14 土曜日

 

 古くから漁師たちや海に関わる人たちの信仰を集めてきた、深浦町の春光山円覚寺の本尊十一面観音が17日、33年に一度の御開帳を迎える。一生のうちに何度も見ることができない「伝説の扉」が三十数年ぶりに開かれるという話題性はもとより、厩戸皇子(聖徳太子)作と伝えられる観音像や時の権力者らによって保護され、現在に至った寺であり、その所蔵物・宝物の歴史的価値に触れる、またとない機会となろう。およそ半月の開帳期間であり、拝観の機会が得られるのであれば、ぜひ多くの人たちに歴史ロマン、町の観光の素晴らしさに浸ってほしい。
 円覚寺は807(大同2)年、時の征夷大将軍坂上田村麻呂が現在の円覚寺の場所に観音堂を建立し、十一面観音像を安置したと伝えられることが始まり。その後、寺の名前の由来ともなった大和国(奈良県)の円覚法印が開基した。藩政期には弘前藩の祈祷(きとう)寺となるなど、権力者の保護を受けてきた。観音堂に収められている観音像は大きさ1丈5寸(3・18メートル)。その名の通り11の顔を持ち、世の中四方八方を見渡し、すべての生き物から話を聴くことができるとされる。
 このほか、寺に所蔵されている近代以前の資料・古典籍もまた、弘前大学人文社会科学部の渡辺麻里子教授主導の下で進められている保存調査プロジェクトで、歴史的価値の解明が進められている。例えば、真言宗の開祖である弘法大師こと空海の修行記録を記した「大師御行状集記」は書写時期が鎌倉時代後期とみられ、同名の写本としては最も古い可能性があるとされるものだ。観音堂隣にある寺宝館には、国重文「薬師堂内厨子(ずし)」など数々の宝物が収められており、一般拝観期間中に見ることができる。
 こうした歴史的材料だけでも、町を訪れてみたい―と思ってもらえるきっかけとなるが、「33年に一度」の絶好の機会を、併せて町の観光や雄大な自然を改めて認識してもらう好機としてほしい。世界遺産登録25周年となる白神山地は、同町では「絶景ブルー」とも称される十二湖を抱える。町の長い海岸線からは沈みゆく夕陽(ゆうひ)の美しさを楽しめる。水揚げ高が本県トップを誇る深浦産マグロを使った、ご当地グルメ「深浦マグロステーキ丼(マグステ丼)」やマグステ丼に深浦牛を加えた記念メニュー「マグステ丼プレミアム」を味わうのもよい。
 既に観光においては抜群の知名度を誇る同町だが、一方で人口は1万人を割り、少子高齢化に悩む側面もある。今回の円覚寺本尊開帳という歴史的素材を加え、町が今後どういう方向に向けて歩んでいくか、自治体として生き残っていくかを考える機会にもしてほしい。観光における意欲と発信力は旺盛な町でもあり、今後の生き残りに懸ける意欲と取り組みに期待したい。

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弘前でプロ野球「定期開催に努め地域活性化を」

2018/7/13 金曜日

 

 弘前市のはるか夢球場で12日、日本野球機構(NPB)が主催する若手プロ野球選手による球宴「フレッシュオールスターゲーム」が開かれた。
 この日は、日本ハムのドラフト1位ルーキーで注目の強打者、清宮幸太郎内野手や、広島のドラフト1位ルーキー中村奨成捕手らをはじめ、本県関係ではオリックスの西村凌捕手(青森山田高出)、ロッテの種市篤暉投手(三沢市出身、八工大一高出)が出場した。
 若手有望選手のガッツあふれるプレーを間近で堪能できるとあって、スタンドには、プロを夢見る地元の子どもたちや県内外のプロ野球ファンらが大勢詰め掛け、選手たちが繰り広げる試合に懸命に声援を送ったり、時に歓声を上げたり。一挙手一投足に見入りながら楽しいひとときを過ごした。
 はるか夢球場では今月3日にプロ野球1軍戦(楽天―ソフトバンク戦)も行われた。本県では29年ぶりの1軍戦開催となった昨年に続き2年連続で、今回も大勢の観衆が一流選手のプレーに沸いた。8月11日にはイースタンリーグ公式戦も予定されている。
 こうして弘前の地でプロ野球を楽しめるのも、市がはるか夢球場をプロ野球対応の球場として整備したおかげだ。総事業費約28億円を掛けて、はるか夢球場を改修。防災機能も兼ね備えた施設とし、収容人数約1万4800人、必要な照明設備や屋内ブルペンなどの諸室を備え、多目的利用が可能なボールパークとして整備した。同時に、官民挙げた誘致活動を粘り強く重ね、29年ぶりの1軍戦開催にこぎ着けた。
 プロ野球は数多くあるプロスポーツの中でも人気は群を抜いている。ただ、プロスポーツの多様化により、子どもの“野球離れ”に歯止めがかからないのが現状。さらに、少子化の影響もあって、県内での野球の競技人口も減少の一途をたどっている。
 本県をはじめとするプロ球団のない地方では、テレビ中継が少なくなったことで野球への関心が薄れているとも指摘されている。こうした現状下で、本県で1軍戦などのプロ野球が開催される意義は大きい。間近でプロの技に触れ、プロ野球の雰囲気を体感することで、野球をより身近に感じ、プロを目指す子どもたちの夢を後押しする機会となることだろう。結果、競技人口増加に結び付くことが期待される。
 はるか夢球場は今後の施設維持管理費等を懸念する声もあるだけに、プロ仕様に整備したからには、地元への経済効果を生み出せるよう積極的活用を図るべきだ。1軍戦などのプロ野球開催地として定着するよう来年以降の誘致に引き続き努めてもらいたい。それによって、はるか夢球場が、その名の通り、子どもらの夢育む場となることを期待したい。

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