社 説

 

相次ぐ祭り中止「現実味帯びる地方経済崩壊」

2020/4/9 木曜日

 

 新型コロナウイルスは、弘前さくらまつりに続き、青森ねぶた祭も中止に追い込んだ。「日本を代表する」と表現しても過言ではない二つの祭り。先の大戦の影響を除けば、全日程が中止された例はない。経済損失の程度を簡単に試算することはできないが、決して小さくないはずだ。
 昨年の人出(主催者発表)は、弘前さくらまつり(4月20日~5月6日)が歴代2位となる289万人、青森ねぶた祭(8月2~7日)は前年を5万人上回る285万人(海上運行を除く)。ともに海外からの観光客も多く、国が推し進めてきたインバウンド観光振興に寄与している。弘前市と弘前商工会議所が昨年行った弘前さくらまつりの商況調査によると、売り上げは飲食業の46・7%が前年より増加したと回答、宿泊施設の稼働率も80%超で推移したといい、今年の祭りに対しても期待していたことだろう。
 両祭りとも関係機関が国民に回避を求める「3密」のうち「密集」「密接」の二つに当たる人混みをつくりだす。祭り参加・観光後に飲食店へと繰り出すと「密閉」も加わり、感染リスクを高める3要素を全て満たすことになる。人命最優先は当然とはいえ、祭りが地元経済を支えているのも事実。主催者は断腸の思いで決断したことだろう。
 地域活性化策でもあるイベントの中止は、全国で見られる。政府の緊急事態宣言発令で、ぎりぎりまで開催の道を探ってきたイベントも、一気に自粛へ傾くだろう。早々に中止を決めた黒石ねぷた祭りに続く青森ねぶた祭の中止は、開催の可否を検討する弘前ねぷたまつりにも影響を与えそうだ。
 全国知事会は8日の緊急対策本部で国に対する緊急提言を議論。感染拡大防止へ事業者の理解が得られるよう、緊急事態宣言の対象地域か否かを問わず、イベントや事業活動の中止・休止に伴う営業損失の補償などを盛り込んだ。
 屋外イベントは天気次第で、人出が減ったり、中止になったりするケースはあるが、ねぶた・ねぷたなど1週間程度続く祭りで影響を受けるのは、せいぜい1、2日ほど。それでも地元経済にとっては痛手だ。新型ウイルスで全日程が中止されるとは、国内の感染拡大や入国拒否が話題になるまで、深刻に考えていなかったのではないだろうか。祭り開催を前提に売り上げを見込んでいた幅広い業種で事業継続困難に陥る恐れがある。
 日本銀行青森支店が1日に発表した3月の県内企業短期経済観測調査は、全産業の業況判断指数が8年ぶりのマイナスに転じ、先行き予想はさらに悪化。しかも、これは弘前さくらまつりなどの中止発表前の回答である。即効性のある対策を講じなければ、現状でも厳しい地方経済が崩壊へと向かう最悪のシナリオを、非現実的と言えなくなる。

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緊急事態宣言「国民の意識が問われている」

2020/4/8 水曜日

 

 東京都内などでの新型コロナウイルスの感染者急増を受け、安倍晋三首相が改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令した。東京など対象地域では一定の行動が制限されるが、海外のように強制的に都市を封鎖するわけではない。効果の有無は、あくまで国民一人ひとりの意識、行動にかかっていることを改めて指摘したい。
 今回は東京など状況が深刻な7都府県が対象で、実施期間は来月6日までの約1カ月。7都府県の知事は外出自粛の要請や施設使用、イベントの中止の要請・指示が出せる。外出自粛要請に従わない住民への罰則はない。
 では期間中、市民生活にどんな影響があるのか。東京都の小池百合子知事が6日発表した対策案によれば、ナイトクラブや居酒屋をはじめ、パチンコ店、百貨店、ショッピングモールなどに休業を要請する。
 一方で、病院やスーパーマーケット、コンビニエンスストア、公共交通機関、金融機関など生活に必要な施設やインフラは、適切な感染防止対策を講じた上で営業の継続を求める。住民には、食料の買い出しといった生活の維持に必要な用事を除き外出しないよう要請する。
 つまり日常生活にほぼ影響はない。都心では首相による外出の自粛要請後、時差出勤やテレワークが浸透しつつある。が、朝夕の通勤時間帯の電車は満員状態のまま。午前9時すぎには混雑が緩和されていた路線でも、時差出勤の影響か午前8時台と変わらぬ混雑ぶりである。
 さらにはマスクを買い求めるため、スーパーやドラッグストアの前には開店前から行列ができている。都心ではサクラも散って日に日に温かくなっているとはいえ、朝晩はまだ冷える。マスクを買うために早朝から並んで風邪を引いては本末転倒だ。
 夜の街を歩き回ることも、自ら感染しに行くようなものだ。感染者の中には行動確認を求められて回答しないケースが目立ち、発熱していても宴席に出席してクラスターを招いたと思われるケースがある。自身の行動を説明できず、感染を拡大させるような無責任な行動は、犯罪行為と非難されても致し方ない。
 首相は当初、経済への影響を懸念して宣言に慎重だったとされる。政府が7日閣議決定した総額108兆円規模の緊急経済対策では低所得者世帯へ30万円を現金給付する。子育て世帯に向けては児童手当を子ども1人当たり1万円上乗せする。また、中小企業向けの資金繰り支援なども盛り込んだ。
 期間中はもとより、事態収束までの国内の経済損失は計り知れない。政府は経済対策としているが、今回は生活支援と考えるべきだろう。今後も国民生活に目を配り、第2、第3の対策を講じるべきだ。

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介護保険20年「財源、人手の課題 早期対処を」

2020/4/7 火曜日

 

 介護保険制度が2000年4月にスタートしてから20年を迎えた。それまでもっぱら家族が担ってきた高齢者の介護を社会全体で支える仕組みとしてスタートしたが、高齢化の進展に伴う介護サービス利用者の急増で介護保険料の負担と国や自治体による公費負担が増大。その一方で、サービスの担い手である介護職の人手は不足したままだ。特に、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となり社会保障費が急増するとされる25年以降、社会全体で支える仕組みのまま存続できるだろうか。
 介護サービス利用者はスタート時の約149万人から既に3倍超。介護保険の総費用も当初の3・6兆円から右肩上がりに増え続け、10兆円を超えている。65歳以上の介護保険料(18~20年度、全国平均)は月額5869円でスタート時の2倍に、当初1割だったサービスの自己負担割合も現在は利用者の所得に応じて1~3割に、それぞれ引き上げられた。このままで推移すれば、今後も保険料(40~64歳の負担分を含む)と公費負担がさらに増大することは容易に予想される。
 昨年10月に10%となった消費税の税率引き上げ分は社会保障費の財源に充てられるが、国民生活や経済への影響を勘案すれば税率を簡単にこれ以上引き上げるわけにはいかない。介護サービスの自己負担割合も所得に応じてさらなる引き上げも今後議論される可能性があるが、このことが介護サービスの利用を一部止めたり利用者の家族の新たな負担増につながったりしないか、慎重に検討する必要があるだろう。
 財政負担の圧縮に向けて、要介護度の低い人への生活援助(料理や洗濯)サービスの抑制が検討されていると聞く。しかし、利用者のニーズが高いと思われる部分の一律の抑制は妥当か疑問も残る。適切に実施されているか精査の上、運用面で対応するのが先ではないか。
 介護保険料を負担する年齢層の引き下げも選択肢に含まれるだろう。これには若年層も将来的に応分のサービスを受けられるという確かな展望を示さなければ理解を得るのは難しいだろう。また、例えば将来の担い手である子どもを育てている世帯には一定の減免措置を設けるといった配慮も欲しい。
 歯止めがかかっていないままとなっている少子化は、介護保険制度の先行きの不透明さにもつながる。少子化がもたらす弊害はこれにとどまらない。幅広い観点から打開策を論じ、実行に移す必要があるのではないか。
 介護職の人手不足については、人件費増の原資に充てる「処遇改善加算」を設けるなどしているが、まだ不十分と指摘される。いかに総費用の増大を抑制しながら人手とサービスを確保するか、早期に検討を進めるべきだ。

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止まらぬ感染拡大「医療崩壊防ぐ対策に全力を」

2020/4/4 土曜日

 

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。世界全体の感染者数は累計101万人を超えた。日本国内でも連日感染者が増え続け、収まる兆しがない。
 こうした中で今、最も懸念されるのは医療崩壊だ。政府の専門家会議は1日、「都市部を中心に感染者が急増している」との現状分析を公表し、患者の爆発的増加「オーバーシュート」は見られないものの、感染源が分からない例も増加していると指摘。東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫の5都府県は医療提供体制が既に切迫しているとして、抜本的な対策を講じるよう求めた。オーバーシュートの前に医療崩壊が起こりかねない懸念があるということだ。
 厚生労働省は3日、感染が急増する地域では、無症状や軽症の感染者を自宅やホテルなどで療養させる体制の準備を進めるよう都道府県などに通知したと発表した。現在は症状の程度に関係なく原則入院しているが、重症者向け病床の確保を優先させる方針に移行したものだ。
 実際、都内では2日現在、感染者が700人近くいるが、重症者は18人で、残りの多くは無症状や軽症。確保済みの病床は約700床で、重症者用の病床確保が喫緊の課題となっている。本県の場合も感染症病床は6病院に29床となっており、今後患者が急増した場合に備えた対策は不可欠だ。
 病院内での集団感染が全国各地で発生しているのも憂慮すべき事態である。患者への影響はもちろんだが、医療従事者の間で感染が広がれば医療体制そのものが危うくなるだけに、感染の広がりを抑えるための速やかな対策が求められる。
 また、医療崩壊を招かないためには、これまでもたびたび指摘されてきたことだが、感染拡大のスピードを少しでも抑えることが重要だ。専門家会議は、感染者の小規模集団「クラスター」が次々と増え、イタリアなどのようなオーバーシュートにつながることを懸念している。オーバーシュートは兆候がなく、気付いた時には制御不能になり、入院すべき患者が入院できないといった医療体制の崩壊を招きかねないからだ。
 そのためにも一人ひとりが決して人ごとと思わず、感染拡大防止に努めなければならない。専門家会議は、過去の集団感染を教訓に(1)換気が悪く密閉されている(2)人が密集している(3)近距離で会話が行われる―の3条件が同時に重なる場所を「最も感染リスクを高める環境」と指摘している。カラオケやライブハウス、飲食店などがその一例だ。
 「多くの人の重症化を食い止め、命を救える」方策として個人がまずできるのは、こうした環境をできるだけ避け、せっけんによる手洗いなどに努めることだ。感染拡大を防ぐには、情報の共有と速やかな検査態勢構築が欠かせないことも指摘しておきたい。

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弘前公園閉鎖「地域振興策を早急に」

2020/4/3 金曜日

 

 弘前市が1日、桜の時期の弘前公園を閉鎖すると発表した。新型コロナウイルスの感染拡大防止のためだが、これまでにない異例の措置で、弘前市民はもちろん、弘前の桜を愛する多くの人にとって衝撃的な決定だ。弘前さくらまつりの中止自体についてはやむなし、と受け止めた人が多かっただろうが、公園まで閉鎖されるとなれば、地域経済、そして市民感情に与える影響は計り知れない。
 当初、祭り中止を決めた時は園内への立ち入りは規制せず、公園内での宴会や飲食は原則禁止して花見客を受け入れる方針だった。ただ会見で櫻田宏弘前市長が語っていたように、祭りを中止しても桜が咲けば園内に人が集まることは容易に想像できる。新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、本県でも複数の感染者が確認されている中、市など主催4団体は予防対策をいくら手厚く講じても感染リスクを軽減することは難しいと判断。花見客で密集する公園内から感染が広がる可能性を不安視する声もあり、最終的には市民の安全を第一に考えた、苦渋の決断を下したと言えるだろう。
 閉鎖は桜の開花が予想される10日から5月6日まで。公園の出入り口となる追手門など三つの門を閉め、その他の出入り口となる8カ所にバリケードを設ける。夜間のライトアップとぼんぼりの設置も取りやめ、例年祭りに合わせて開設する岩木川河川敷の臨時駐車場も設置しない。毎年おなじみの桜の開花情報も発信しないというから、今年の春は例年に比べてかなり様変わりしてしまう。
 外堀周辺は一般道なので通行止めにはできないが、多くの人が滞留しないよう警備員を配置して注意を促すという。
 毎年桜を楽しみにしていたわれわれにとっては寂しい限り。何か他に妙手はなかったのかとも思うが、東京都などでは不要不急の外出を自粛する要請が出ても「気にしない」と出掛ける若者らの姿が報道されている。人々の良識頼みでは、やはり限界があるのかもしれない。
 櫻田市長は公園閉鎖の発表と同時に「地域を元気にする対策を考えなければならない」と述べ、市職員や関係者、市民と一緒に準備を進めていくという考えを示した。同市にとっては年間で最大級の祭り。地域経済への打撃は大きく、早急に対策が必要だ。1日公表された日銀青森支店の短観でも企業の景況感を示す業況判断指数が8年ぶりにマイナスに転じたが、これは県内での感染確認や各地での祭り中止の発表前の回答で、影響は今後さらに拡大していくことと思う。
 収束までにはまだ時間がかかりそうだ。感染拡大防止、厳しい状況にある事業者への支援策を早期に講じ、その後にはぜひ市民を元気づける施策も考えてほしい。これまでもさまざまな地域振興策を打ち出してきた市と民間団体に期待し、われわれも何ができるか考えたい。

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