社 説

 

新型コロナワクチン「地方にも行き渡る仕組みを」

2020/11/24 火曜日

 

 国力を総動員とした戦争を「総力戦」と呼ぶ。国家の経済力、技術力、政治力、国民などの国力を結集させる形態で、第1次世界大戦が最初だったともされる。現代において世界各国が「総力戦」で挑んでいるのが、新型コロナウイルスである。
 総力戦の幕開けとされる第1次世界大戦では、科学技術力を総動員して新型兵器の開発競争が繰り広げられ、強力な兵器を持った国が戦場を制した。コロナ禍の中、各国が総力を挙げて挑んでいる一つが、ワクチン開発である。
 これまで有効性があると報道されているのは、ほぼ海外のワクチンだ。かつて科学技術国と称された日本も数百億円規模の予算を投じているものの、ワクチン開発には出遅れている感が否めない。日本は効果が期待される海外ワクチンを購入する方針で、現状は海外頼みと言っても過言ではないだろう。
 今月は米製薬大手ファイザーと独バイオ医薬品企業ビオンテックが共同開発するワクチンが「90%を超える予防効果」と報道され、米当局の承認を待つ段階に入った。ワクチンに対する期待の声が上がっているものの、正確な効果についてはさらなる情報も待たれている。
 日本はこのワクチンを大量購入することで合意。ただ、先進国・途上国間で分配が偏る事態も懸念されており、オンライン方式で開幕した20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)で菅義偉首相は、公平なワクチン供給を提唱した。当面はワクチン争奪戦が想定される中、ワクチンを持つ国が、持たざる国に対し「強力な兵器」に匹敵する外交カードを持つはずであり、その点でも日本の出遅れ感は痛手である。
 また、このワクチンが日本に入ってきた後も、国内接種にはさまざまなハードルが控えることが想定されている。このワクチンはマイナス70度前後の超低温保存が必要であり、輸送・保管も含めどのような体制とするかが課題となる。首都圏で先行して接種が始まる可能性は高いが、地方での対応や配分の仕方がどうなるのかも懸念される。
 本県は飲食店クラスター(感染者集団)発生後、医療機関や行政、住民のいわば「総力戦」で収束傾向に向かうことができたが、同程度のクラスターを今後何度もしのげるほどの余力は残されていない。ワクチン配備は国内の発生状況に応じて優先順位を付けるのは当然とはいえ、地方に対してもしっかりした計画と制度設計の下、早急に配備することを求めたい。
 菅首相はG20サミットで、東京五輪・パラリンピックを「人類がウイルスに打ち勝った証し」として開催する決意を表明したが、国民の「自助」はそろそろ限界に近い。国にはワクチンという武器を早急に手にし、「公助」のアクセルを本気で踏み込んでもらいたい。

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感染急増中の3連休「万全の対策と慎重な行動を」

2020/11/21 土曜日

 

 新型コロナウイルスの新規感染者が各地で過去最多を更新し続け、20日には全国で3日連続の2000人超となった。感染は急激に拡大しており、増加が顕著な都道府県は危機感を募らせている。専門家は「人の移動の増加」が影響していると判断し、きょう21日スタートの3連休を正念場とみる。政府の対策本部は新型コロナの対策分科会からの提言を踏まえ、21日に需要喚起策「Go To」キャンペーンの在り方を含め議論するが、3連休については国民一人ひとりの行動に託された格好だ。幸い本県ではこの3日間、新規感染者は確認されていないが、それにより感染リスクを高める「気の緩み」が生じていないか、全県民に問いたい。
 新型コロナは今夏の「第2波」後に、収束の兆しが見え始めたように思えた。ところが11月に入ると全国で感染者が増加。しかも1日当たりの新規感染者は「第2波」を上回っており、19日に開かれた厚生労働省の専門家会議「アドバイザリーボード」は、「爆発的感染」に懸念を示した。
 感染増が顕著な地域に北海道、首都圏、関西圏、中部圏を挙げ、特に北海道について「札幌市を中心に病床が逼迫(ひっぱく)し、調整が困難になるなど厳しい状況」とし、「行動制限などの強い対策」の必要性に言及した。「Go To トラベル」には触れていないが、人の移動増加が拡大の要因と指摘しており、キャンペーンが人の移動を後押しすることで、感染者増や医療崩壊を招きかねないと示唆したものと受け止められる。
 一方、20日の分科会は国民に「最大限の警戒」を要請するとともに、政府が継続方針を示してきた「Go To」キャンペーンについて、感染拡大地域の除外などを含む提言をまとめた。この日は東京都医師会の尾崎治夫会長も臨時会見を開き、「一時中断」を主張した。
 感染者が増え続ける北海道は、札幌市や函館市といった観光スポット、新鮮な魚介類をはじめとする食など、魅力的コンテンツが豊富で、感染拡大前には海外からも多くの観光客を集めた。本県にとっても北海道新幹線やフェリーなどを使えば比較的気軽に旅行できることから、感染者が多い首都圏などへの旅行を控えてきた人の中には、北海道に目を向けていた人も少なくないだろう。
 「コロナ倒産」が相次ぐなど、経済再建は急務であり「Go To」キャンペーンの効果を期待するが、爆発的感染の引き金を内在していることを忘れてはならない。菅義偉首相が出席する対策本部の会合では、分科会の提言を踏まえた取り組みを協議する。専門家が抱く懸念にどう対応するか注目される。われわれ国民の責任も大きい。楽しいはずの3連休を後悔の3日間にせぬよう、最大限の警戒と慎重な行動が求められている。

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特殊詐欺への対処「冷静に判断し相談、対応を」

2020/11/20 金曜日

 

 弘前警察署の発表によると、県内在住の70代男性が警察官を装って自宅を訪れた男に、キャッシュカードをすり替えられた上、多額の現金をだまし取られた特殊詐欺事件が発生したことが分かった。警察などが再三にわたり注意を呼び掛けている一方で、さまざまに手口を替えて多くの人に接触しようとする詐欺犯が一向に減少しない状況だけに、平素から注意を払い、対策などの情報収集に努めるとともに警察など関係機関も一層の啓蒙(けいもう)活動に努めてもらいたい。
 発表によると、今月15日昼ごろ、男性宅の固定電話に同署の警察官を名乗る男から、「詐欺の犯人2人を捕まえたら、男性名義のキャッシュカードが出てきたので確認させてほしい」などとする旨の連絡があった。さらに電話中、同署の警察官を名乗る別の男が訪問し「本物と偽造カードを確認するので、封筒にキャッシュカードを入れてほしい」などと要求した。男性は自身名義のキャッシュカード4枚を封筒に入れたが、印鑑を持ってくるようにと指示されたため、その場を離れて取りに行った間に別のカードにすり替えられたという。17日に被害が判明し、3枚のカードからは計474万円余が払い戻されていた。
 県警ホームページによると、過去5年間に本県で発生した特殊詐欺は、認知件数が2015年の71件、被害総額が16年の2億円余をそれぞれピークに減少傾向にあった。しかし19年は、認知件数こそ前年比13件減の31件だが、被害金額は同4311万円増の約1億280万円となり、65歳以上の高齢者を中心とした幅広い年代に被害が及んでいる。
 今回の犯行は、特殊詐欺の中でも最近の傾向として見られる「キャッシュカード詐欺盗」と呼ばれるものだ。ここで注意したいのは、警察官をかたる電話の最中に、さらに別の警察官を名乗る人物が直接訪問していること。つまり、犯人に現金が渡るまでの間に、家族や金融機関職員らが介在し、犯行を未然に防ぐことができる他の特殊詐欺事案と異なり、「おかしい」と思うだけの余裕や時間を相手に与えない手口となっている。
 警察では、警察官がキャッシュカードの提示を求めたり、口座の暗証番号を問い合わせたりすることは絶対にない-とした上で、相手が警察官を名乗っていても心当たりがなければ電話を一度切って、最寄りの警察署に相談するよう呼び掛けている。
 ただ、実際の犯行現場に身を置いた場合、冷静に対処できるかどうかが課題となる。特に高齢者の方々は大切な生活資金を失わないためにも、電話が来た場合に怪しい内容かどうか判断すること、初対面の人が訪ねて来た場合にはドア越しに身分証明書の提示を求めるといった対応を常に心掛けてほしい。

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青森空港「PBB増設でより便利に」

2020/11/19 木曜日

 

 青森空港で進められていた国際線の旅客搭乗橋(PBB)の増設工事が今月2日、完了した。PBBは空港ターミナルビルと航空機の出入り口をつなぎ、乗客らを乗降させるための設備。現在、国際線は新型コロナウイルスの影響で運休が続いているが、コロナの前まではインバウンドが好調だった本県。昨年行われた空港ターミナルビルのリニューアルと合わせ、訪日客を受け入れる体制がより一層整ったことになる。
 同空港の駐機スポットは国際線が2スポット、国内線が4スポット。国際線2スポットのうち片方はPBBが設置されておらず、エプロンを徒歩で移動したり、到着時間帯が重複した場合は機内で長時間待機したりしなければならなかった。不便なだけでなく、特に冬期間や悪天候時などは、エプロン移動の際の安全性の確保が課題となっていたという。
 今回の工事ではターミナルビルから1番スポット、2番スポットへそれぞれつながる通路部分(固定橋)とバリアフリー対応のPBB1基を新設。既設のPBBも活用することで、どちらの駐機スポットからもPBBを利用できるようになった。
 近年、本県は台北線が就航するなど海外からの観光客が増加傾向にあり、青森空港は昨年、老朽化し手狭になっていたターミナルビルをリニューアル。約3000平方メートルを増築して国内線、国際線ともに従来よりも広い空間を確保したほか、入国審査のブースを増設するなど、北東北、青函地域の空の玄関口として役割を果たせるよう機能を高めた。分散していた飲食店や物販店を集約し、利用客がゆっくり買い物や食事を楽しめるような環境も整備した。
 加えて今回のPBB増設だ。青森空港は就航している国際線が韓国や台湾などアジア圏のため、ツアー客を運ぶのにちょうどいい時間帯も重なることが多く、航空機の到着時間が重複して機内で待ってもらうケースも実際にあったという。また外国人観光客が本県を訪れるのは冬が多く、吹雪の日も安全に乗降できるようになったことは大きいだろう。
 ただせっかく今冬に間に合うよう進められたPBBの増設工事だが、現状はコロナの影響で3月4日のソウル線を最後に全便運休中。ソウル線、台北線ともに来年3月27日までの運休が決まっており、再開の見通しが立たない状況となっている。
 日本政府観光局が18日発表した10月の訪日外国人数(推計値)は前年同月比98・9%減の2万7400人。10月からは全世界を対象にビジネス目的などの入国制限が緩和されているが、観光客の短期滞在は制限が続いており、先行きは不透明だ。
 観光は本県産業の柱の一つで、中でもインバウンドは閑散期に当たる冬の観光を支える存在。今のうちに受け入れ体制を万全にし、いずれ安全が確保された上で、再び交流が活発化する日を待ちたい。

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米宇宙船打ち上げ成功「民間の力を生かし新時代へ」

2020/11/18 水曜日

 

 日本人宇宙飛行士の野口聡一さんら4人を乗せた米宇宙船クルードラゴン運用初号機が16日午前、米フロリダ州・ケネディ宇宙センターからの打ち上げに成功した。翌日には、国際宇宙ステーション(ISS)とのドッキングにも無事成功した。約半年間の長期滞在では、さまざまな実験やミッションなどを精力的に行う計画だ。
 クルードラゴンは米国の民間企業スペースX社が開発した宇宙船で、5月の有人試験飛行を経て、今回の運用初号機での打ち上げ成功を成し遂げた。冷戦時代の米ソ両超大国の宇宙開発競争時代から、大国、新興国が入り交じって独自のロケット打ち上げを進める多国間競争時代が続く中、クルードラゴンの本格的な運用開始は、民間企業が今後の宇宙開発で重要な役割を担う時代の本格的な到来を象徴する出来事と言えるだろう。これまでの国家主導の宇宙開発に、民間のコスト意識や創造性などが加われば、これまでにない可能性が開けるのではないか。
 特に2011年にスペースシャトルが退役し、宇宙に人を送り出す手段を失った米国にとっては、ロケットの再利用などコスト削減のノウハウを持つ民間企業の協力は大きい。財政難の中、存在感を増す中国やインドなどの追い上げに対抗するためには、ロケットの再利用などコスト削減のノウハウを持つ民間企業の協力は不可欠だったと言える。
 今後、ISSの運用や月・火星探査の場面でも民間企業の役割は増えていくだろう。米国主導の月探査計画「アルテミス計画」への参加を決めた日本にとっても、今後の宇宙開発計画における民間企業との協力関係の構築という観点で見れば、有用なモデルケースとなり得るのではないか。
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)もこれまでの事業で蓄積されたノウハウが数多くある。JAXAと国内の民間企業との連携がさらに深まれば、互いが有する技術や研究成果が還流し、より大きな成果を上げることが可能となるに違いない。日本の宇宙開発事業も視野をさらに広げ、可能性を追求してもらいたい。
 今回のクルードラゴンの打ち上げ成功は、野口さんの3度目の飛行という点でも実に意義深い。スペースシャトル、ソユーズ、そして今回のクルードラゴンと、それぞれ異なる宇宙船に乗り込んでの活躍には、同じ日本人として誇りに思う。
 ISS滞在中は、日本実験棟「きぼう」などでさまざまな実験を行う。たんぱく質の結晶成長実験や超小型衛星の放出、中でも人工多能性幹細胞(ips細胞)を使った立体組織の形成実験は医学界からも熱い視線を送られる重要な実験だ。困難もあるだろうが、これまでに培われた経験を存分に生かし、充実した時間を過ごしてもらいたい。野口さんの活躍を遠く地上から祈っている。

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