社 説

 

合流白紙「協議を続け両党が譲歩を」

2020/1/25 土曜日

 

 立憲民主党と国民民主党の合流協議はいったん白紙に戻った。旧民進党分裂以後の遺恨や政策の違いなど“溝”は深かった。ただ、政権と対峙(たいじ)するためにも合流協議は続けるべきだ。数合わせと指をさされないよう期限を区切らず、しっかりとした政策協議を行い、ともに譲り合って合流への道を探ることが望まれる。
 国民は20日の両議員総会で、早期の合流にはこだわらず、立憲との協議を続ける方針を確認した。しかし21日に行われた両党の幹事長会談では、協議は当面見送られることになった。今後は国会論戦などで野党共闘を進めつつ、将来的な合流の可能性を模索するという。
 今回の合流協議で目についたのは双方の強硬な態度だ。立憲は政策面で「原発ゼロなど基本政策で譲ればうちの支持層が離れる」(幹部)などの声を背景に、一歩も譲らない姿勢に終始した。
 国民も政策面で大幅な譲歩を許さない空気は強かった。玉木雄一郎代表と電力総連など支持組織の4産別幹部との面会では、産別側が「党の理念を反映してほしい」と立憲との対等交渉を求めた。
 また、国民も衆参で対応が割れた。衆院の中堅・若手議員には衆院選への危機感から早期合流を求める声が広がり、一部には「合流見送りなら党を割る」との強硬論もあった。逆に参院側は立憲主導の合流に慎重だった。昨年の参院選の一部選挙区で立憲と直接対決した遺恨が依然として残っていた。
 幹事長会談では(1)共同会派の連携を強化し、国会論戦に集中する(2)衆院解散・総選挙を視野に、国会内外の連携強化に取り組む―ことなどを確認。また、立憲側が両党参院間の信頼醸成のため参院議員総会の合同開催や、幹部、国対の定期会合を提案した。
 ところが国民の舟山康江参院国対委員長は22日、参院議員総会の合同開催に不快感を示した。舟山氏は「国民に呼び掛ける前に、(立憲の)党内にしっかり呼び掛けてもらう必要がある。困惑するばかりだ」と指摘。信頼醸成に多くの時間が必要なことを裏付けた格好だ。
 開会した通常国会は、首相主催の「桜を見る会」をめぐる問題や、カジノを含む統合型リゾート(IR)事業に絡む汚職事件などが焦点だ。
 時事通信の1月の世論調査では、桜を見る会の問題をめぐる首相の説明について、「納得できない」との回答が79・1%を占め、公明党支持層で81・0%、自民党支持層でも67・6%に上った。
 政権側が事実を隠ぺいする以上、国民は野党の追及で問題が解明されることを期待しているはず。県選出で国民民主党の田名部匡代参院議員が「政権をただす力は必要だが、国民に期待されない結集ではいけない」と語るように、国民の期待を裏切らないよう、互いに合流への努力を続けるべきである。

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日米貿易協定「影響試算踏まえ有効な対策を」

2020/1/24 金曜日

 

 県は、今月1日に発効した日米貿易協定による本県農林水産物への影響を試算した。生産額が畜産分野を中心に全体で最大約39億円減少するという。本県の基幹産業である1次産業を守るため、今回の影響試算を踏まえた有効な対策を早急に講じるよう求めたい。
 生産減少額を主な品目別に見ると、牛肉が約12億円、豚肉は約18億円、リンゴ(果汁のみ)は約4億円など。畜産分野への影響が顕著だ。
 協定によるメリットも確かにある。米国向けの日本産牛肉の低関税枠が200トンから約6万5000トンまで拡大。政府は牛肉の輸出拡大などを柱とする支援策を打ち出している。米国では日本の高級牛肉の人気が高く、ブランド牛の生産地は対米輸出の拡大に向けて取り組みを強化しようと躍起になっている。
 一方、関税が段階的に下げられる米国産牛肉と厳しい価格競争を強いられるのが、国内市場で「国産牛」などとして売られる乳用種(ホルスタイン)などの肉だ。これらの肉の生産で生計を立てる農家は多数いることから、牛肉の輸出拡大などを柱とする政府の方針には本県の畜産関係者からも不満の声が上がる。
 経済のグローバル化は時代の潮流であり、この先逆戻りすることは考えにくい。高い品質の商品は需要があれば、国境を越えて販売されるべきであり、反対はしない。むしろ歓迎したい。しかし、ここで主張したいのは、反作用も当然あるはずで、厳しい立場に置かれるようになった人たちへの支援策はきちんと講じられるべきだということ。
 県は試算を踏まえ、支援策として省力機械による生産コスト削減、畜舎整備などによる飼養規模の拡大などを挙げるが、生産現場の反応は厳しい。関係者によると、後継者不足に加えて生産者の高齢化も深刻化しており、設備投資は容易でない状況という。
 本県を含めて「国産牛」の生産者たちは生き残りに必死だ。産地によっては、国産牛を扱うスーパーの担当者を牧場に招き、自分たちが生産する肉の安全性などを改めてアピールしている。安心・安全で安価な国産牛の需要は間違いなくある。「生産の灯を消したくない」と訴える彼らの声に政府は真摯(しんし)に耳を傾けるべきではないか。
 環太平洋連携協定(TPP11)や日欧経済連携協定(EPA)が昨年に発効されたことにより、牛肉や豚肉の輸入量が増え、国内での取引価格は既に下落してきているとの指摘もある。そこに日米貿易協定の発効で、影響が一層深刻化することは間違いない。
 改めて訴えるが、生産現場への支援策が一つの方向に偏ったものであってはならない。各生産現場にはそれぞれ事情がある。それらを酌んだ上で、きめ細かい施策が展開されることを期待したい。

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中国の新型肺炎「春節控え感染拡大抑止対策を」

2020/1/23 木曜日

 

 中国で新型のコロナウイルスによる肺炎が多発し、感染者は中国以外にも広がっている。「ヒトからヒトへの感染」が確認されたほか、中国国家衛生健康委員会は「ウイルスが変異する可能性があり、さらに拡散するリスクがある」との見解を示しており、人の移動に伴う感染拡大が懸念される。
 日本国内でも、中国湖北省武漢市から帰国した神奈川県の30代男性の感染が初めて確認された。訪日外国人客が増加傾向にある中で今後、感染者が増える可能性は十分にある。水際対策の強化はもちろん、マスクの着用や外出後の手洗いなど基本的な感染症対策を徹底し、国内における感染拡大抑止に努めたい。
 武漢市では先月12~29日に原因不明の肺炎にかかる患者が相次いで発生。その後も患者数が増え、死者も出る中で、今月9日、中国の専門家チームが複数の患者から新型のコロナウイルスを検出したことが明らかになった。重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)もコロナウイルスを原因とするが、この二つとは違う種類のウイルスだという。
 武漢市内で感染者が集中している二つの区には共に大きな海鮮市場があるが、海鮮物だけでなく多くの野生動物が販売されており、感染源については「野生動物を通じてヒトに感染した可能性が高い」とみられている。
 症状を引き起こす「病原性」は、2002~03年に中国から広がったSARSに比べて低いとみられており、過度に心配する必要はないとされるが、ウイルスが変異して感染力や病原性を強める可能性も指摘されており、警戒が必要だ。
 SARS流行時と比べ、中国人の入国者は10倍以上に増加しており、今後も中国で感染した人が日本に入国・帰国する可能性がある。さらに、中国では25日の春節(旧正月)を控え、帰省などで40日間で延べ30億人が大移動すると予想されている。ネット旅行代理店中国最大手・携程(シートリップ)がまとめた春節の海外旅行先ランキングでは日本が第1位だった。
 「武漢と周辺に、報告よりずっと多くの感染者がいる恐れもある」との指摘もある中で、日本国内における感染拡大の抑止が重要な課題となる。水際対策を徹底すると同時に、マスクの着用や「せきエチケット」、外出後の手洗い、うがいなど通常の感染症対策に留意したい。また、厚生労働省は、武漢市への渡航歴がある人でせきや発熱などの症状があった場合は速やかに医療機関を受診し渡航歴を申告するように求めている。
 02年11月に中国で発生したSARSは、情報が隠されたまま03年2月の春節を迎え、大流行につながった経緯があるだけに、関係機関には今後、速やかな情報公開も求めたい。

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アートと本県「青森ならではの魅力発信を」

2020/1/22 水曜日

 

 県立美術館には現在、マルク・シャガールによるバレエ「アレコ」の舞台背景画全4作が完全展示されている。縦、横が21メートル、高さ19メートルというアレコホールの四方4面を巨大な4幕の背景画が彩る空間は圧巻の光景だ。所蔵していない第3幕は米フィラデルフィア美術館から長期借用しており、借用期間は2021年3月までの4年間で、あと1年2カ月余り。期間限定のこの貴重な機会を見逃さないようにしたい。
 同館ではアレコについてより深く知ってもらうため「アレコ」特別鑑賞プログラムを制作し、毎日4回、日本語版と英語版を上映している。開館前の01年に作られたプログラムだが、18年の「シャガール 三次元の世界」展を機に全4幕版を制作。今年1月14日からはバレエダンサーのCGアニメーションを加えてさらにバージョンアップした。
 特別鑑賞プログラムは各背景画に舞台用の照明を当て、バレエの原曲に使われたクラシックとともに、ナレーションで作品制作の背景やバレエのストーリーなどを紹介する内容。アレコのバレエは実際に1940~60年代までメキシコや米国欧州などで上演され各地で好評を博した。背景画は上演のたびに用いられたということで、ストーリーを理解するとより興味深く鑑賞することができる。
 シャガールは舞台背景画を描いただけでなく、ダンサーらの衣装もデザインするなど舞台全体を統括していたという。CGは実際の上演風景の資料や現存する衣装などを参考に制作しており、踊るダンサーを舞台背景画に重ねて投影することで、シャガールが思い描いた舞台全体がイメージできるようになっている。
 何よりも、広大なアレコホールという空間で、実際の舞台芸術をほうふつとさせる手法でのアレコ全4作の展示は、県立美術館ならではの企画と言える。今後も収蔵品や本県の歴史、風土など、県立美術館ならではの魅力を大いに生かし、独自の企画で来館者を魅了してほしい。
 アートは今や本県に観光客を呼び込む強力なツールの一つになっている。外国人観光客も含め、最近は県立美術館に初めて足を運んだという来館者も増えているという。
 文化やアートを好む人にとって、本県は魅力が多いと言えるだろう。今春には弘前市吉野町に待望の「弘前れんが倉庫美術館」がオープン。築100年を超えるれんが倉庫という建物で、過去には多くの人の記憶に刻まれる弘前市出身の奈良美智さんの展覧会が開かれた歴史を持つなど、多くの人々の心を引きつける力がある。既に県内外のアートが好きな層からは熱い注目を浴びているようだ。
 弘前れんが倉庫美術館オープンが注目される今は一つの好機だ。効果的な情報発信で交流人口を呼び込み、県内を周遊してもらうような取り組みを求めたい。

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聖マリ医大入試問題「日本の現状を変える気概を」

2020/1/21 火曜日

 

 大学医学部の不正入試問題をめぐり聖マリアンナ医科大(神奈川県)は、2015~18年度の一般入試で、女子や浪人生を不利に扱っていたとする第三者委員会の調査報告書を公表した。18年には東京医科大(東京都)に関しても、女子受験生の点数を一律に減点した問題が報じられている。
 聖マリアンナ医科大の入試に対する第三者委の分析によると、2次試験での調査書などの評価で、現役生や浪人回数が少ない大半の男性が高得点を得ていた。第三者委は「一律的な点数調整の結果と強く推認させる」と指摘。「性別・現浪区分で差別的な取り扱いが行われたと認めざるを得ない」と結論付けた。大学側は差別を否定している。
 できるだけ優秀な男性医師を増やしたいという希望が現在の医療現場にあり、その要求に応えたとしても、働き方が過酷なままであることに変わりはない。医師が私的な時間をほぼ捨て、当直勤務から通常勤務に入ることも珍しくないという、体力的に厳しい状況を強いられている状況から、男性医師ばかりを増やすというのは、果たして改善なのか。
 そして男性医師が子どもを持った場合、育休を取得して子どもと向き合う時間すら十分持てないのは幸福なのか。医師の家庭を専業主婦の妻が支えて回す男性目線の仕組みでは、子どもを持った女性医師のサポート手段が限られる。結果的に育休、産休を取る女性医師が増えると仕事を回しにくいことになるが、その状況自体が時代錯誤ではないか。
 これは医療現場に限らず日本のほかの職種でも起きている問題であり、単なる不正入試問題で終わらせるわけにはいかない。職場で滅私奉公を強いられる男性と、キャリアと家庭の選択の在り方に迷う女性の両方を視野に現場を変えなければ、「働き方改革」は題目でしかない。
 ぎりぎりのマンパワーで業務を回すのではなく、余裕を持たせること。育休を男性も取得することで、「結婚すると女性が職場に穴を開ける」という感覚をなくし、社会全体で子育てを支援する感覚を共有することが必要ではないか。
 一方でこの問題は、体制を変えることに弱腰な日本人の気質にも関わっているようにも感じられる。日本人には中長期を見据えて一定のリスクも踏まえながら改革に着手することを避け、現状維持に努めがちな部分が少なからずあるのではないか。環境問題然(しか)り、絶滅危惧種に指定されたウナギへの扱い然りである。
 聖マリアンナ医科大を含めた医学部の不正入試問題は、特殊な大学における特殊な問題として終わらせるより、現在の日本の在り方を象徴する出来事の一つとして捉え、二度と起きないように働き掛けていくべきではないか。日本の現状を変えようとする気概を、社会全体で共有したい。

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