社 説

 

強制不妊救済法案「反省する“我々”は誰か」

2019/3/16 土曜日

 

 旧優生保護法に基づき障害者らが不妊手術を強制されるなどした問題で、与党ワーキングチーム(WT)と超党派議員連盟による救済法案が決定した。4月中の成立を目指すという。
 被害者が請求し、厚生労働大臣に認定されれば一時金として320万円が支給される流れ。確認できる記録などが残っていない場合は、厚労省内に置く有識者審査会が証言や診断書などを基に判断し、厚労相が認定の可否を決定する。
 1948年に制定された同法は、「優生上の見地」から、障害者らに対し、本人の同意がなくても不妊手術を行えることなどを定め、差別的規定を撤廃した「母体保護法」に改正される96年まで存続した。
 支給の対象には本人が同意した手術、同法に基づかない子宮摘出手術などを受けた人も加えられた点は評価していい。対応が遅過ぎた感はあるが、救済策を具体的な形でまとめ上げたこと自体には一定の意義がある。
 しかし、被害者が受けた心身の苦痛について、法案前文に記されたおわびの文言は「我々は、それぞれの立場において、真摯(しんし)に反省し、心から深くおわびする」。「我々」は誰を指すのか。旧優生保護法が議員立法で制定された経緯を踏まえると、立法府としての責任を認めたと受け止められるが、国が謝罪の主体とならなかったのはなぜなのか。
 国の責任を明確にしなければ、被害者の納得は得られまい。その点をあいまいにしたままで同省が被害認定の決定権を持つことには疑問だ。法案には、国が同様の事態を二度と繰り返さないよう調査などを実施する旨が盛り込まれているが、これでは説得力を欠く。被害者ら原告20人が現在全国7地裁で起こしている国家賠償請求訴訟への影響を懸念したのだろうか。
 被害者の高齢化を踏まえ早期救済を目指すならば、議員立法が現実的な対応だったのだろう。ただ同時に、国の責任を明文化できなかったのは議員立法の限界とも言える。国の責任をあいまいにしたまま収束させるために議員立法にしたのかと勘繰りたくもなる。
 一時金額320万円も、国家賠償訴訟で原告が求めた1100万~3850万円とは開きが大きい。金額の妥当性の判断は難しいが、被害回復に見合った額と言えるだろうか。報道によれば被害者の感情とはかけ離れているようだ。
 厚労省の統計で不妊手術を受けたのは約2万5000人とされる。一方で不妊手術関連の記録を同省が調査したところ、個人名を特定できた実人数は、手術実施が確認できる3079人をはじめ、手術が申請された人、審査で手術が「適」とされた人を含めると5400人にとどまり、有識者審査会には柔軟な対応が求められる。

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衆参同日選「虎視眈々と機会うかがう自民」

2019/3/15 金曜日

 

 永田町では7月の参院選に合わせて衆院解散・総選挙を行う衆参同日選の臆測が消えない。安倍晋三首相は同日選を否定するが、大型連休明けにも小幅な内閣改造を行うとの観測もある。共闘態勢の構築に苦心する野党を尻目に、自民党は虎視眈々(こしたんたん)と機会をうかがっている。
 なぜ同日選の可能性が消えないのか。今年は統一地方選と参院選が同じ年に行われる「亥年選挙」で、支持基盤の選挙疲れから自民党は苦戦してきた経緯がある。今回は大勝した2013年当選組が改選を迎えるため、議席減は不可避とされる。
 このため苦戦が想定される参院選の改選組はもとより、選挙地盤が弱い衆院の若手・中堅議員にも同日選の追い風効果へ期待する声が根強い。
 現在の衆院議員の任期は21年10月までで、20年の東京五輪期間に重なる選挙日程は考えにくい。つまり来夏までの〝五輪前〟か、〝五輪後〟しかない。後者であれば首相の解散権も効果は限定的で、必然的に年内解散、イコール同日選という臆測につながる。
 こういった状況を踏まえ、自民党内では大型連休後、参院選前に内閣改造を行い、内閣支持率の推移を見極めて衆院解散に踏み切るというシナリオもささやかれている。
 交代するのは口利き疑惑が相次ぎ指摘された片山さつき地方創生担当相、答弁が不安定な桜田義孝五輪担当相、統計不正問題の責任を取る形で根本匠厚労相という、小幅なものとなるという。
 さらには日ロ平和条約交渉の進展状況を見ながら国会会期を延長し、8月末に踏み切る可能性も取り沙汰されている。
 一方、安倍首相の求心力低下を避けるため、官邸周辺が可能性をにおわせているという見方もある。自民党総裁任期が残り3年と限られる中、「いつ選挙なのか」という警戒感が漂う状況が、政権のレームダック化を防ぐというもの。
 それを意識してのものか真意は不明だが、自民党の二階俊博幹事長が「総裁任期延長」を唱えたことが党内に波紋を広げている。
 二階幹事長は12日の記者会見で、安倍首相の党総裁連続4選について「自民党員が決めることだから、今から予見を持って申し上げるわけにはいかないが、今の活躍からすれば十分あり得ることだ」と述べ、可能性に言及した。
 「安倍1強」が進むことへの懸念に対しては、「余人をもって代え難いときには何ら問題はない」とも語った。
 二階氏をめぐっては、来夏の都知事選で小池百合子知事が再選出馬した場合に支持する考えを表明し、党内はもとより党都連の反発を招いたばかり。
 幹事長職の延命狙いという指摘もあるが、選挙の仕切り役である二階氏の動向からも目が離せない。

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五輪まで500日「〝復興〟の理念浸透に努力を」

2019/3/14 木曜日

 

 2020年東京五輪まで500日を切った。開幕まで500日に迫った12日、聖火リレーの出発地が、東京電力福島第1原発事故の対応拠点として活用されたサッカー施設「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町、広野町)に決まったほか、各地で記念イベントが開かれた。大会招致を実現させた「復興五輪」の理念の下、成功に向けた機運を一層高めたい。
 聖火リレーは20年3月26日にスタートし、開会式が行われる7月24日まで全47都道府県を巡る。大会組織委員会によると、リレーに先立ち、3月20~25日は「復興の火」として宮城、岩手、福島の順に被災3県で2日ずつ展示する場所も決定。各県の要望を踏まえながら、震災で大きな被害を受けた場所が選ばれ、岩手では三陸鉄道、SL銀河の車内や駅での展示が計画される凝りようだ。
 当初は開催理念が希薄とされていた東京だったが、「スポーツの力」が震災被災地の大きな希望の一つになったとして前面に押し出し、その価値を五輪開催で次世代や世界に広げると訴えた。招致活動に震災を関連付けることはマイナスイメージになるとの声もあったが、最終的に東京で開催する意義を深めた。
 このような経緯を踏まえれば、聖火リレーの出発点をJヴィレッジに決めたことは適切な判断だったと思われる。大会の理念を改めて発信することもできたのではないか。120日余りにわたる聖火リレーを通じ、震災被災地をはじめ全国の五輪への関心が高まり、大会成功につながっていくことを期待したい。
 被災した岩手、宮城、福島3県の計42市町村の首長を対象に、時事通信社が一昨年12月~昨年2月に行ったアンケートでは、復興五輪の理念が「浸透している」と考える首長は約26%にとどまり、被災地との連携不足を指摘する意見が目立った。その後、1年たって状況は変わったのだろうか。
 現実はなかなか厳しい。例えば、五輪出場国・地域と被災3県の自治体の交流を促そうと設けられた「復興『ありがとう』ホストタウン」制度に登録されたのは、18年末時点で21市町村にとどまる。これは全127市町村の2割弱。特に福島は全59市町村のうち、わずか5市町村と伸び悩む。
 復興事業そのものや原発事故への対応で手いっぱいという自治体が少なくないのだろう。ホストタウンになると、国から一部経費の支援を受けられるものの、自治体の持ち出しもあり、「果たして十分な受け入れ態勢をつくることができるだろうか」と関係者が慎重になるのも理解できる。
 五輪開催まで残された準備期間は短いが、大会が復興の歩みをアピールしてさらに復興を加速させる契機となるよう、関係者には「復興」の理念浸透に一層努めてもらいたい。

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やさしい日本語「誰もが避難できる社会に」

2019/3/13 水曜日

 

 「余震がくるかもしれません」「直ちに避難してください」。この言葉が防災無線などから流れたら、もちろん多くの人が安全な場所を目指すだろう。「高台に」と言われたら、高い場所を目指す。だが外国人が同じ言葉を聞いたら迷うかもしれない。「余震」と「直ちに」の意味は。そして「避難」とは何を指し、「高台」はどこになるのか、と考え、逃げる機会を逃すかもしれない。
 東日本大震災から8年を迎え、弘前大学人文社会科学部社会言語学教室(佐藤和之教授)は11日、外国人に分かりやすい言葉で災害時の情報を伝える「やさしい日本語」の作り方ガイドブックと図鑑の2冊をインターネット上で公開した。内容はこれまでの活動の集大成となっている。
 やさしい日本語は1995年の阪神・淡路大震災を契機に、日本語や英語を十分理解できない外国人に向け、二重被災を防ぐために佐藤教授が発案した。被災現場では、被災者向けにさまざまな情報が日本語で発信されるが、これを十分に理解できない外国人が適切な支援を受けられないケースが実際に起きていたからだ。
 ガイドブックは、やさしい日本語への言い換えを重点に編集された。スマートフォンの普及を踏まえ、情報を得る手段としても活用されるインターネット交流サイト(SNS)活用例も盛り込むなど、現代ニーズに対応した。行政が災害情報を配信するエリアメールをはじめ、ツイッター、インスタグラムなどで活用した場合、拡散によってより多くの外国人に情報が届くことも期待される。
 SNSの場合、文字の上に振り仮名を振ることができないほか、スマホの画面のサイズから、1文の区切りが分かりづらくなるといった課題が想定されている。このためガイドブックは漢字の上ではなく横にかっこを付けて振り仮名を振ったり、伝わりやすいよう文の終わりで句点を使ったりするなどの注意点を記している。
 外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法の4月施行に伴い、本県でも外国人労働者が増える可能性がある。人手不足に悩む現場では、外国人労働者に期待のまなざしが向けられているが、一方でそれは、外国人がより暮らしやすい共生社会へと日本が変化することが重要となる。
 やさしい日本語の発信地となった弘前市では、ゆっくりと言葉を発する日本語のニュースがラジオで流れ、やさしい日本語と絵で避難方向が分かるようにした誘導標識が設置されるなど、その効果が表れている。
 前触れもなく突如襲い掛かってくる災害発生時、より多くの命が助かる仕組みづくりに向けて、社会全体で取り組んでいきたい。

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東日本大震災8年「平素からの備えと教訓を力に」

2019/3/12 火曜日

 

 東北地方を中心に甚大な被害をもたらした東日本大震災から11日で8年となった。今年もまた「忘れられない日」「忘れてはならない日」を迎え、被災地の沿岸部などでは遺族らが犠牲者をしのび、鎮魂の祈りをささげた。
 8年が過ぎたとはいえ、いまだ多くの人の行方が分からず、被災地の復興も進んでいるとは言い難い。インフラ面での復興はわずかずつ進んでいるものの、生活再建に苦しむ被災者は今なお多く、心のケアやコミュニティー再生といった課題が残ったままだ。
 福島では、東京電力福島第1原発事故の影響でなお3万人余が県外で避難生活を送る。避難指示が解除された地域でも住民の帰還が進んでおらず、原発の廃炉作業は依然予断を許さない状況が続く。復興への取り組みは、いまだ道半ばにある。
 震災直後、弘前大学の学生らは岩手県野田村で復旧支援活動を行った。現在は弘前大学ボランティアセンターが組織され、市も一緒になって支援活動を継続している。これをきっかけに両地域の交流の輪も広がっている。復興支援は、地道ながらも被災者に寄り添った取り組みを続けることが大切であると実感させられる。
 同時に、震災の経験や教訓を次世代に伝え、決して「忘れない」ことだ。津軽地域は人的、物的被害がほとんどなかったが、停電の影響と物流網の寸断で生活物資や灯油・ガソリンの不足に見舞われた。あの時に感じた恐怖や不安は今も記憶に新しい。ただ、震災が残した多くの教訓がその後、各家庭や地域社会の中でしっかりと生かされているかと問われれば、どうだろうか。
 震災後、大規模災害に対する自助・共助の重要性が注目され、地域住民が助け合う「自主防災組織」の立ち上げが全国で進んだ。本県でも、昨年4月1日現在の組織数は1000を超え、活動カバー率は震災前の2割台から53%に伸びた。
 ただ、全国平均の83・2%には及ばない状況で、全国的にみても沖縄県に次いでワースト2位にある。自主防災組織は町内会などを母体に結成されることが多く、平時から住民に最も身近な組織と言える。いざという時に備え、住民が互いに助け合う態勢づくりを構築する必要がある。
 東日本大震災以降、熊本地震、大阪北部地震、北海道地震と大規模地震が相次いだ。豪雨や台風による大きな被害も各地で後を絶たない。今後も起こり得るであろう人知を超えた未曽有の大災害に立ち向かう時、私たちにとって力となるのは、平素からの備えと過去からの教訓だろう。そのためには、震災の記憶を決して風化させてはならない。8年目の3・11に当たり、改めてそのことを肝に銘じたい。

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