第204通常国会が18日召集され、菅義偉首相が就任後初の施政方針演説を行った。首相は新型コロナウイルスの感染拡大を「難局」と捉え、克服への決意を表明。語気を強めて国民へ理解を求める場面もあったが、演説内容は“グリーンとデジタル”や外交安保まで多岐にわたり、コロナ対策で強いメッセージ性は感じられなかった。
演説に触れる前に指摘したいのは、時事通信の1月の世論調査で菅内閣の支持率は前月比8・9ポイント減の34・2%、不支持率は13・1ポイント増の39・7%となり、初めて不支持が支持を上回ったことだ。
調査は新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急事態宣言の直後に行われた。しかし政府対応については「評価しない」が61・4%に上っており、これが支持率に影響していることが分かる。
首相は感染拡大で国民に制約ある生活を強いているとしながら、若者が飲食で感染を広げていると改めて指摘。緊急事態宣言を通じて感染を減少させるほか、最前線に立って難局を乗り越える覚悟だと訴えた。
この“ずれ”は何が原因なのか。国民の危機意識が伝わっているとは到底思えず、せめて追加対策や期間延長の可能性に触れながら、協力を求めるべきではないか。
首相は2月下旬までのワクチン接種開始へ準備するとし、「私も率先して接種する」と表明。その上で東京五輪・パラリンピックに関しては「感染対策を万全なものとし、大会を実現するとの決意の下、準備を進める」と語った。
ここでも“ずれ”が生じている。一部報道機関の調査では「延期・中止」が8割に達したほか、野党はもとより自民党内にも「延期しかない」との声は増えている。
今回の演説自体は「決意」「覚悟」などの言葉や抑揚のある語り口を受け、「自分が伝えたい思いが込められていた。国民にも伝わったのでは」(自民党議員)と評価する声も。これに対して「工夫の跡は見えても内容は総花的で、何がしたいのか伝わらない」(野党議員)と厳しい指摘もあった。
もう一つ、演説では意味の分からない文節が。最終盤で首相は「未来への希望を切り開くため、長年の課題について、この4カ月間で答えを出してきた」と語った。
いったい何の“答え”を出したのか。演説ではコロナ禍が収束しなければ国民の安心は戻らないとも言っている。もし携帯料金の引き下げが“答え”だったのなら、国民が実感できるのは安心が戻ってからではないか。
締めには「国民のために働く内閣として全力を尽くす」と力を込めた首相。何よりすべきは国民が何の課題解決を望んでいるかを共有し、その解決に努力する姿を見せることだろう。