社 説

 

衆院解散・総選挙「いらぬ政治空白は避けるべき」

2020/9/22 火曜日

 

 菅義偉新首相が就任したことを受け、永田町は衆院解散・総選挙の時期をめぐる憶測が飛び交い、かまびすしい日が続いている。来月の投開票は遠のいた感があるが、11月から来年1月に実施されるとの見方が有力だ。新型コロナウイルスの感染状況によっては来年10月の任期満了近くとなる可能性もあるが、あくまで永田町の都合だ。国民は万全なコロナ対策と早期の経済再生を望んでおり、「新政権の信を問う」必要性を多くは感じていない。いらぬ政治空白は避けるべきである。
 まず今秋解散説が取り沙汰されるのは、来年までの政治日程を考慮した場合、今年10~11月が比較的余裕があるためだ。
 12月に入ると2021年度予算編成が本格化する上、冬場は新型コロナとインフルエンザが同時流行する恐れもある。来夏は公明党が国政選挙並みに力を注ぐ東京都議選、東京五輪・パラリンピックと続き、9月末には菅氏の総裁任期が切れる。
 衆院任期満了に近づく「追い込まれ解散」を回避するには、1月の通常国会冒頭、遅くとも3月末に見込まれる21年度予算成立直後しかない。
 早期解散説には党内事情も絡む。新内閣発足直後の高支持率が続き、合流新党を含む野党勢力の準備が整わない状況を有利と踏んで、特に若手議員や“選挙に弱い”議員らを中心に待望論が根強い。
 自民党関係者は、12年の総選挙で大量当選した“魔の3回生”を中心に、本来は次期総選挙で15議席程度減らすはずと指摘。「逆に早期解散なら15議席増やすこともあり得る」と予想する。
 一方の菅首相は「1年以内に解散・総選挙がある。時間の制約も視野に入れながら考えていきたい」としており、慎重に判断する考え。
 ただ、首相は16日に広報ポスター用の写真を撮影し、17日には選挙プランナーと意見交換した。これらを踏まえ、党内からは「年内解散もあり得るのでは」と勘ぐる声も聞かれる。
 新内閣の顔触れについての評価も分かれる。「骨格は維持しつつスライドや再登板など実務型。しっかり仕事をするという意思表示」と解散が遠のいたとの指摘がある一方、「実務型だからこそ、選挙となっても支障はない」との見方もある。
 時事通信が行った9月の世論調査では、衆院解散・総選挙の望ましい時期について「来年の任期満了かそれに近い時期」が最多の40%だった。他の調査報道では6割近いものもある。
 政権が代わり、野党に新党が生まれ、来月にも選挙だと、浮ついた空気の漂う永田町。問われているのはかい離した国民生活と向き合い、現場を訪れ、声なき声にまで耳を傾けることだ。無用な政治空白をつくることではない。

∆ページの先頭へ

Go To東京追加「感染リスク理解し楽しい旅を」

2020/9/19 土曜日

 

 政府の観光需要喚起策「Go To トラベル」の対象から除外されていた東京都発着の旅行が、10月1日に追加されることになり、今月18日正午に適用旅行商品の販売が始まった。新型コロナウイルスの影響で冷え込んだ経済を動かすと期待される半面、東京都の新規感染者は増加傾向にあり、全国的な感染拡大を招く可能性が指摘されている。旅行者には十分な対策を求める。
 コロナ禍により旅行会社や交通機関、宿泊業者などの観光関係業種を中心に厳しい経営を強いられ、全国でコロナ倒産が相次いでいる。弘前市では17日、「奥膳懐石 翠明荘」などの閉店を経営会社が発表。新型コロナによる売り上げ減が理由という。国登録有形文化財「翠明荘」は文化都市弘前の象徴的建物の一つ。新型コロナの影響の大きさを身近に感じ、ショックを受けた市民も少なくないだろう。経営会社は建物の維持管理を続けるとしており、将来的な再起を願いながら見守りたい。
 旅行を促すキャンペーンに大都市東京が加わり、地方との往来が活発化すれば、観光関連業はもちろん、食材を提供する農水畜産業など幅広い分野を潤す可能性がある。倒産目前まで追い込まれている企業には救世主に映るだろう。
 ただ、喜んでばかりはいられない。東京都では18日、220人の新規感染者が確認された。前日の171人を大きく上回り、4日連続の100人超。都が17日に開いた専門家らによるモニタリング(監視)会議は「さらに増加傾向が続くと、急速に感染拡大することが強く危惧される」と分析。小池百合子知事も19日からの4連休を控え「少しでも体調が優れない人は外出を控えていただきたい」と呼び掛けた。
 専門家が急速な感染拡大を懸念する中での東京追加。仮に増加傾向が続くにもかかわらず、キャンペーンを強行し、感染が全国に広がるならば逆効果になりかねない。政府も今後の感染状況を見極めるとし、追加見送りに含みを残している。
 「ウィズコロナ」「新しい生活様式」という言葉が生まれ、街ではマスクをしていない人を見つけるのが難しいほど。1年前には想像もしていなかった「異常」な状況である。しかし、この状況が続くにつれ、次第に「異常」が「普通」になれば、気の緩みにつながる恐れもあるのではないか。非日常を楽しむ旅行なら、なおさらのことである。
 東京追加を否定はしないし、地方経済再興に寄与するのならば、むしろ歓迎する。ただし、キャンペーンと感染拡大リスクが隣り合わせであることは忘れてはならない。東京から地方へ行く人も、地方から東京へ行く人も十分な対策を講じ、思い出に残る旅にしてほしい。みちのくは間もなく錦秋を迎える。これまでキャンペーンから除外され、旅行を控えていた都民を温かく迎えたい。

∆ページの先頭へ

廃校活用「前例にとらわれず取り組もう」

2020/9/18 金曜日

 

 弘前市の旧修斉小学校がスポーツ交流施設として生まれ変わった。グラウンドは市内初のソフトボール専用練習場として既に供用されており、今月12日には県内の小学生ソフトボールチーム4チームによる交歓会が開かれ、敷地内に久しぶりに元気な子どもたちの声が響いた。
 同小は2016年3月に閉校。その後、弘果・弘前中央青果が市から取得し、リンゴの集荷場として使用。使っていないグラウンドや体育館も有効に活用できないかと思案し、NPO法人スポネット弘前に打診し、「弘果修斉スポーツパーク」として供用されている。
 体育館も今後、一般に開放される計画で、ミニバスケットボール大会が予定されているほか、冬季には野球やサッカーなど屋外競技の練習場所としても貸し出されることになっている。さらに、校舎についても、障害者や高齢者のトレーニング施設として活用できないか模索しているという。
 少子化に伴って全国的に学校の統廃合が進んでおり、使われなくなった学校施設の活用は共通する課題だ。国もこのような状況を重大視し、文部科学省は「~未来につなごう~『みんなの廃校』プロジェクト」を展開、全国の廃校情報を集約し、活用ニーズとのマッチングに努めている。
 県内でも廃校を活用している例は既に見られるが、全国を見渡すと面白いケースがある。熊本県では酒造会社が小学校跡で酒を造っているという。もともと教育施設だった校舎がまったく異なる分野の施設として生まれ変われるということは非常に興味深い。施設が再活用されるだけにとどまらず、地元の雇用にもつながっている例も見られる。
 廃校となった校舎の立地条件、周辺の環境を見詰め直し、関連付けると、校舎の活用法はさまざまに広がりを見せるのではないか。放置されたままでは、単に老朽化し、いずれは解体されなければならない校舎にどうやって新たな息を吹き込むか。柔軟かつ大胆な発想が求められているのである。
 改めて考え直してみると、学校、とりわけ小中学校は地域コミュニティーの中心を担う施設と言えよう。地域の将来を担う子どもたちが毎日通い、保護者をはじめ大人たちが学校運営を支援している。みんなが学校に関わることで絆を保っている。その学校がなくなるということは、地域コミュニティーが衰退していることを意味している。
 少子化は今後ますます進展すると思われる。それに伴って学校の統廃合はさらに進むはずだ。同時に廃校活用の取り組みも一層求めれれるだろう。前述のように廃校活用は発想次第で、さまざまなバリエーションを持たせることができる。前例にとらわれることなく、柔軟かつ大胆な発想で取り組みたい。

∆ページの先頭へ

菅内閣発足 「“継承”を取捨選択せよ」

2020/9/17 木曜日

 

 自民党の菅義偉総裁が、16日に召集された臨時国会の衆参両院本会議で第99代首相に指名され、同夜、菅内閣が発足した。
 健康問題を理由とした安倍晋三前首相の辞意表明に伴い、自民総裁選の短期決戦を経て7年9カ月ぶりに首相が交代した。菅氏は自身が官房長官を務めた安倍政権の継承を掲げ、新内閣20人中8人を再任、加藤勝信厚生労働相ら3人を横滑りさせるなど、新型コロナウイルスと経済をはじめとした現下の危機への対処を最優先させた。
 もちろんコロナ収束に道筋をつけること、疲弊した経済と暮らしを立て直すことは喫緊の課題だ。これらをおろそかにして、東京五輪・パラリンピック開催を含め、人・カネ・物が安定して動くことは期待できない。
 一方で、安倍政権では長期政権ゆえのゆがみか、数々の「負の遺産」を生んだ。例えば森友学園の国有地売却をめぐる疑惑や財務省による公文書の改ざん、加計学園の獣医学部新設をめぐる便宜など。それらに関する説明責任も果たされたとは言い難い。
 安倍政権の7年9カ月を総括し、何を受け継ぎ、何を変えるかを明確に示し実行に移す必要がある。この作業を経なければ「やっぱり何も変わらない」と国民の失望を買うのは目に見えている。
 コロナ・経済対策で支出が続く財政も、中長期的な観点から健全化を図らなければならない。強い責任感とリーダーシップ、不退転の覚悟が求められる。
 菅氏は秋田県の農家の生まれで、自民党政権では事実上初めてという無派閥、非世襲で「たたき上げ」議員の宰相となった。かつて総務相を務めた経験もあってか「地方の現場をよく知っている」と自認する。意欲を見せている携帯電話料金の引き下げも、こうした経歴が背景にあるかもしれない。
 菅氏の「地方重視」の姿勢に、地方の首長はおおむね期待を寄せているようだ。地方出身の企業経営者らからは「庶民の暮らしが分かっている」といった声も上がる。地方は少子高齢化の急激な進展、若年層の流出、経済基盤の縮小などにさらされ続けている。安倍政権下での施策で何が足りなかったかを検証し、地方の持続的な活性化実現に向けて采配を振るってほしい。
 菅氏本人は焦点となっている衆院解散について「コロナ問題が下火になってきたということでなければ、なかなか難しいのではないか」と慎重だが、政界関係者や識者の間には解散総選挙が近いのでは―との見方が根強い。選挙の勝利による政権基盤の強化などが理由だが、政治的思惑でコロナ対策や国民生活に空白を生んではならない。むしろ施策を通じて国民の支持を得る姿勢が必要ではないか。

∆ページの先頭へ

がん征圧月間「必要な取り組みを前に」

2020/9/16 水曜日

 

 新型コロナウイルスの影響で、がん検診の受診件数が落ち込んでいるという。県総合健診センターによると、市町村が行うがん検診は胃がんや大腸がんなど5種類のがんすべてで前年同時期より4~5割の減。同センターはがんの早期発見と早期治療につながる検診の受診件数が減った現状に、警鐘を鳴らしている。
 減少の理由は、コロナの感染拡大で、実施主体の市町村が検診の延期や中止を決めるなど、検診機会が減ったことが主だが、コロナの感染を懸念して受診を見送った人も2割程度いるという。4~7月末の検診の実施状況は、大腸がんが前年同時期の63・6%、肺がんは同63・2%、胃がんは同63・1%といずれも4割減。子宮がんは同57・3%、乳がんは同55・1%とさらに低い。センターは来年3月までの1年間で、前年度比2割減を見込んでいる。
 センターは「検診を1年見送ると、早期発見ができなくなる」として注意喚起。喫煙など自分のがんリスクを見極め、リスクを自覚している場合は受診を見送らず、適切に検診を受けるよう助言している。
 本県は男女ともに平均寿命が全国最下位。理由はさまざま考えられるが、がんの死亡率が高いことが平均寿命に大きく影響している。1982年から毎年死因のトップはがん。死亡数の割合は死因2位の心疾患の2倍ということからも、いかにがんで亡くなる人が多いか分かるだろう。最新の2019年の人口動態統計の概況では、本県のがんの死亡率(人口10万人当たり)は413・2で、過去最悪を更新。全国順位は秋田県に次ぐワースト2位で、7年連続の不名誉な記録となっている。
 本県はがんの死亡率は高いが、り患率は全国並みのため、がんが進行してから発見される割合が高いとされている。早期発見、早期治療にはやはりがん検診の受診率向上が重要。実施主体にはコロナ対策に気を配りつつ、受診者が安心できる情報発信にも努めてほしいし、受診するわれわれもマスク着用、手洗いなどできる範囲で協力すべきだろう。
 県保険医協会が行ったアンケート調査では、病院の受診が減ったという声も寄せられている。4~6月の3カ月間の影響を聞いたところ、5月には回答した医科、歯科の医療機関の7割以上が外来患者数、保険診療収入ともに前年同月に比べて減ったと回答。6月はやや回復したが、5割はやはり前年同月比で患者数などが減ったと答えており、「恐怖心をあおる報道で必要必至の治療のキャンセルや措置の拒否が相次いだ」などの声も上がったようだ。
 コロナは社会的な影響が大きく、できる限りのリスクを避けたいという気持ちは理解できるが、健康長寿県を目指す本県の歩みは止めたくない。9月はがん征圧月間。コロナ禍でも必要な取り組みが前に進むよう、それぞれの立場で尽力したい。

∆ページの先頭へ

Page: 1 2 3 4 5 ... 188