社 説

 

歴代最長の首相「改めて問われる政治姿勢」

2019/11/20 水曜日

 

 安倍晋三首相の在職日数は20日で通算2887日となり、戦前に3回政権を担った桂太郎を抜き、歴代最長となった。経済最優先の路線が底堅い支持を集めるとともに、「安倍1強」体制を構築したことが大きな特徴と言えるだろう。一方で、長期政権の「おごり」を指摘する声も少なくない。
 首相は2006年9月に戦後最年少の52歳で第1次政権を率いた。「戦後レジームからの脱却」を掲げたものの、相次ぐ閣僚辞任や自身の健康悪化もあり、わずか1年で退陣。旧民主党から政権を奪還し返り咲きを果たした12年12月以降は国政選挙で連戦連勝の成績を収め「安倍1強」体制を築いた。1次政権の反省を生かして経済重視を前面に打ち出し、有効求人倍率や堅調な株価などの成果を掲げ、最近も40~50%台の高い支持率を維持している。
 ただ、長期政権ゆえの弊害も目立つ。学校法人森友学園への国有地売却に絡んでは、財務省の決裁文書改ざんが発生。国会を欺く行為にもかかわらず、閣僚が政治責任を取ることはなかった。加計学園問題も含め、野党による徹底追及をかわし続け、結果として国民が納得する十分な説明を尽くしたとは言い難い。
 9月の内閣改造後、わずか約1カ月半で2人の重要閣僚が相次いで辞任に追い込まれた事態も、政権の緩みを印象付けたといえる。
 首相が安定的に政権を運営する一方、残念ながら国会論戦からは緊張感が消えた。世論調査では、安倍内閣への支持率は底堅く推移しているものの、政権に不満はあっても「他に適当な人がいない」という消極的理由が多くを占めている。
 自民党総裁としての残り任期は2年。首相は憲法改正など宿願達成に意欲を示すが、先行きは見通せない状況だ。任期中の解決を目指す北朝鮮による日本人拉致問題やロシアとの北方領土交渉も解決のめどはたっておらず、手詰まり感も漂う。
 ここにきて新たに浮上した首相主催「桜を見る会」の問題をめぐっては、首相の地元後援会関係者らが大勢招待され、全体の招待者数も大幅に増えていることが分かり、野党は「公的行事を私物化するものだ」と攻勢を強めている。
 政府は当初、「問題ない」との姿勢を示していたが、来年の桜を見る会の中止を急きょ発表。問題の沈静化で幕引きを図ろうとしたのかもしれないが、桜を見る会の前日に地元関係者を招いた夕食会も含め、公選法違反や政治資金規正法違反に該当する疑いも指摘され、疑念や批判は強まるばかりだ。
 野党側は衆参両院予算委員会の集中審議開催を求めている。どのような形にせよ、首相は説明責任を果たす必要があろう。史上最長の首相であればこそ、改めてその政治姿勢が問われている。

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3庭園が国名勝へ「津軽の宝、保存活用に知恵を」

2019/11/19 火曜日

 

 国の文化審議会は、弘前市の三つの庭園を名勝指定するよう萩生田光一文部科学相に答申した。津軽特有の庭園の流派として知られる大石武学流で造られた「成田氏庭園」(同市樹木)、「對馬氏庭園」(同市折笠)、「須藤氏庭園」(青松園、同市前坂)で、指定となれば大石武学流庭園の名勝は全部で7件となる。津軽地方で脈々と受け継がれてきた庭園文化を象徴する庭園の数々が、国の貴重な“宝”となるわけで、実に喜ばしい。
 大石武学流は、江戸時代末から近代にかけて津軽一円に広がった本県独自の流派。座敷から眺める「座観」の形式が多く、ダイナミックに石を配し、庭の奧へと鑑賞の軸線を作るのが特徴とされる。流派の様式を踏襲する庭園は、津軽一円に400以上あるといわれる。発祥や由来には不明な点が多いが、作庭技法は代々宗家によって受け継がれてきた全国的にも珍しい流派とされる。
 これまでに盛美園、清藤氏書院庭園(平川市)、瑞楽園(弘前市)、金平成園(黒石市)が名勝指定を受けている。これらの庭園は、富裕層が施主の大規模なものだが、今回は、医師やリンゴ農家の庭として作られた、比較的小規模なものが、選ばれている。
 計算された岩木山の借景や効果的な石を配置しての奥行きある空間の創設、秩父宮雍仁親王の耐寒演習行軍にちなんだ記念堂や記念碑の設置など、三つの庭園にそれぞれの特徴があり、庭としての美しさはもちろん、作庭に至る時代背景などもうかがうことができる大変貴重なものと言えるだろう。先行して指定された名勝と合わせて俯瞰(ふかん)して見れば、大石武学流庭園がなぜ津軽地方で隆盛を得たのか、その変遷や歴史的な背景など、見えてくるものがあるかもしれない。
 この津軽で独自に昇華した庭園文化を後世に残していくため、その保存、活用について地域全体で考え、行動に移していく必要がある。庭園の魅力周知や観光資源としての活用については、取り組みも目立つようになってきた。例えば、黒石市の金平成園では、大石武学流庭園の魅力を広く知ってもらうために、一般公開を春、夏、秋の年3回行っており、多くの人でにぎわっている。平川市の盛美園では同市観光協会が主催し、大型クルーズ船の寄港に合わせて、茶会を開いて好評を博している。弘前市では同流の庭園サミットなども開催された。
 弘前市は、黒石市や平川市とともに広域の庭園巡りのモデルルートなどをまとめたガイドブックを作成している。インバウンドの目が本県に注がれる中、日本庭園は外国人観光客の興味をひく「和」の精神にあふれている。津軽の庭園を国内のみならず、海外の方にも多く見てもらいたい。庭園への関心がさらに高まれば、後世に向けた保存、活用の取り組みが一層深まるだろう。

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プラチナ大賞「産学官民の連携で健康増進を」

2019/11/16 土曜日

 

 弘前大学と県、弘前市が共同で進めている「産学官民一体型青森健康イノベーション創出プロジェクト」が、日本が目指すべき社会に向けた取り組みを表彰する「プラチナ大賞」最高賞の大賞・総理大臣賞に選ばれた。同賞を主催するのは全国の首長や企業経営者で組織するプラチナ構想ネットワークと同大賞運営委員会。元東京大学総長の吉川弘之氏が委員長となり、学識経験者、有識者が審査に当たった。本県のプロジェクトはこうした各方面の有識者に高く評価されたもので、長年の取り組みに敬意を表したい。
 同賞が日本の未来のあるべき社会像として描く「プラチナ社会」は環境問題やエネルギーの心配がなく、雇用があり、あらゆる年代の人が生涯を通じて豊かに生き生きと健康で暮らせる社会と定義されている。今年はプラチナ社会の実現に向け、自治体や企業など47団体から50件の応募があった。その中での最高評価だ。全国に誇れる取り組みだと言える。
 審査では、弘前大学が2005年から弘前市岩木地区の住民の協力を得て続けてきた大規模健診「岩木健康増進プロジェクト」で、15年間に延べ2万人分、2000項目に及ぶビッグデータを取得、それを基に、産学官民の連携でさまざまな疾患予防の研究や新産業の創出につながっていることが評価されたという。
 本県では長年、短命県が当たり前のように受け止められ、健康寿命の延伸という目標も実現可能なものとは受け止められていなかったように思う。だが、弘前大学大学院の特任教授でCOI(センター・オブ・イノベーション)拠点長の中路重之氏が同賞審査会で述べた通り、各方面を巻き込んだ地道な活動を続けてきたことで現在は県内全40市町村が健康宣言をし、約100の小、中学校で健康授業を実施。県の入札の際にポイントが付く健康経営認定制度の認定企業として従業員の健康づくりに取り組む企業は約200社となり、地域や学校、職場で健康づくりのリーダーとなる健やか隊員や健康増進リーダーらの育成も進んでいる。
 近年は全国の大学などと連携した研究や大手企業の大型投資、他の拠点間とのデータ連携も目立つなど、全国から注目されるプロジェクトに成長している。
 大学だけでも、行政だけでも、成果を挙げることは難しかっただろう。産学官民が連携し、一体となって進めてきたことが功を奏した。もちろん、その底に弘前大学と岩木地区の住民による岩木健康増進プロジェクトの地道で継続した取り組みがあったことは言うまでもない。
 本県では男性の平均寿命の伸び幅(2010~15年)が全国3位となり、野菜摂取量も増えるなど目に見える成果が出ている。県民の意識も着実に変化してきた。今後も産学官民の連携をさらに強力にし、県民だけでなく、全国の健康長寿に役立つ取り組みを期待したい。

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「うるしの日」を機に「津軽塗を使う機会を増やそう」

2019/11/15 金曜日

 

 先日11月13日は「うるしの日」だった。国内で特に目立った動きがあったわけではないが、SNS(インターネット交流サイト)では漆関係者が「漆の器で食事をしてみてはいかがでしょうか」と呼び掛けていたほか、「全国の飲食店で一斉に漆器が使われたら」と希望するツイートも目にした。
 平安時代、文徳天皇の第一皇子惟喬これ(たか)親王が、漆の製法を虚空蔵菩薩から伝授された日―との伝説から、漆の良さを見直す日として日本漆工協会が1985年に「うるしの日」を制定している。
 そもそも漆器の良さとは何か。金属やプラスチックとも異なる「触れた時のぬくもり」もあるだろう。また、職人が丹念に仕上げた作品には、漆器独特の品格や存在感を感じさせる艶がある。漆器は首都圏などでは正月など、特別な日に使われることが多いとも聞く。
 一方、青森県民は日常的に漆器を使っていることが少なくない。漆器を日常生活に取り入れている豊かさを、われわれは自覚しているだろうか。その漆器とは無論、津軽塗である。かつて一大産業だった津軽塗のおかげで県民は、日常生活に漆器があることに対し、さほど違和感を抱いていない。
 県民が「身近にあるもの」と感じている津軽塗は2017年、本県初の国重要無形文化財に指定された。現在、津軽塗の出荷量はピーク時の10分の1まで落ち込み、職人も減少傾向にある。今や津軽塗は「身近にあって当たり前」の存在ではなく、「守り伝えようとする人々の手で懸命に支えられている」存在になりつつあるのだ。
 漆産業に欠かせない漆すら、決して「あって当たり前」と呼べない状態にある。国内で使用される漆のうち、国産はわずか3%足らずで、残りは中国産でまかなわれている。国重要無形文化財に指定された津軽塗がある本県では、県中南地域県民局が中南津軽「うるしの森づくり」推進事業に取り組み、漆資源の確保に向けた苗木の安定供給を目指している。
 このような現状も踏まえて15~17日、漆を取り巻く環境や、漆による地域活性化などをテーマにした「漆サミット2019in弘前~これからの国宝・重要文化財の保存・修復」が弘前市などで開かれ、研究者らがさまざまな角度から漆の魅力を発信する。
 楽観視できる状況にない漆産業を応援するため、11月13日は津軽塗を使う日にできないものだろうか。飲食店で積極的に用いればよいアピールになるだろうが、店側の負担もある。せめて、家庭で意識的に津軽塗を使う日として呼び掛けてみてもいいのではないだろうか。 

 特別な日に使う品格を備えながら、一定の配慮があれば日常的に使うことへの耐久性を備えているのが津軽塗だ。漆器を使う豊かさを、もっと楽しもう。

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桜を見る会「釈然としない突然の中止」

2019/11/14 木曜日

 

 例年4月に東京都内の新宿御苑で開かれている首相主催行事「桜を見る会」が、来年度は中止されることが13日に決まった。
 同会については、8日の参院予算委員会で、安倍晋三首相の後援会関係者が多数招待されていると共産党が指摘。主要野党は安倍首相が「地位を利用し、国の公的行事で接待をしていたと受け取られかねない」などとして合同チームを発足させ、「私物化」疑惑を追及し始めたばかり。政府は開催要項の見直しを検討する考えを示し、自民・公明両党も招待者の範囲や選定基準を明確にする考えで一致した矢先だった。
 菅義偉官房長官は中止の理由として、招待する基準の明確化を図ることなどを挙げた。自民党内からも「正当性が問われている」と中止論が浮上したが、政府の決定は批判の早期沈静化を意図したにしても急過ぎる。政府が事態の深刻さを認識している表れとも受け取れるが、規模縮小などの対応でもしのげそうなものをなぜ中止にしたのか釈然としない。
 この問題で浮かび上がったのは、招待者の選定過程における首相官邸・与党の関与の強さだ。
 招待者は、開催要項に基づき内閣官房が取りまとめるが、その際、各省庁に加えて首相官邸や与党にも推薦を依頼していたことが分かった。長年慣行化していたという。自民党国会議員らが、招待者の推薦枠を持っていたことを証言している。
 桜を見る会は、文化・芸能、スポーツ、政界などで功績・功労のあった人を招き、日頃の苦労をねぎらい懇談するのが目的。それ自体に疑念はなく、招待者にとっては名誉であろう。
 同会は東日本大震災などで中止になった年を除き1952年から続く恒例行事。中止は政治の責任が大きい。これを機に招待基準から不透明な要素を一掃し、所期の目的に近づけるよう大いに議論し見直せばいい。
 ただ、来年度の開催中止や次回以降の開催要項の見直しは、説明責任を果たしたことにも疑惑を不問とする理由にも当たらない。
 桜を見る会に関する参加者と支出額がここ数年で急増しているのも気になる。野党が入手した内閣府資料によると、今年度の参加者は約1万8200人で、支出額は約5500万円。5年前の2014年度は約1万3700人、約3000万円だった。いずれも安倍首相の在任期間に当たる。会の在り方はこの点でも妥当だっただろうか。
 13日の衆院厚生労働委員会では野党側から、18年度の桜を見る会について安倍首相の事務所が参加希望者を内閣府に仲介していたことをうかがわせる「案内状」が示された。事実であれば、この点でも政治のモラルが問われよう。

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