社 説

 

NATO拡大の動き「緊張緩和に向けた取り組みを」

2022/5/14 土曜日

 

 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を背景に、北米と欧州諸国で構成する集団防衛組織である北大西洋条約機構(NATO)拡大の動きが見られる。ロシアと1300キロ以上にわたり国境を接するフィンランドは大統領と首相がそろって加盟支持を宣言。隣国スウェーデンも続く見込みで、欧州全体の安全保障のありように大きな影響を与えそうだ。
 NATOは2国が申請すれば加盟手続きを大幅に急ぐ構えだが、手続き完了には少なくとも数カ月を要する見通し。一方、ロシア側は軍事的手段の行使をほのめかしており、安全をいかに確保するかが課題だ。
 長年中立を保ってきた2国がなぜNATO加盟へ傾くのか。それは、ウクライナを一方的な理由でじゅうりんし、住民の命を脅かしているロシア側の姿勢にあることに他ならない。他国から支援があるとはいえ、ウクライナはNATO非加盟であるために、圧倒的軍事力を持つ大国と単独で戦わなければならないことも背景にあろう。軍事力を背景にした現状変更がないという確実な保障が担保されない限り、この動きを止めることは難しい。緊張緩和に向けた取り組みが急務だ。
 フィンランドのニーニスト大統領は12日、マリン首相との共同声明で、NATO加盟による国の安全強化の姿勢を打ち出し、数日中に加盟申請の決定がなされることを希望した。スウェーデンでも与党の社会民主労働党が15日に方針を発表する。
 フィンランドは第2次世界大戦中に旧ソ連と戦った「冬戦争」と呼ばれる交戦の結果、国土の約1割に当たる領土の割譲を余儀なくされた。これ以降は旧ソ連やロシアを刺激しない中立的外交を保ち、欧州連合(EU)に加盟したのはソ連崩壊後の1995年と遅く、NATOは非加盟という状況だった。しかし、ウクライナにおけるロシアの暴挙を目の当たりにし、「中立路線では自衛が困難」という認識が拡大。かつて2割程度だったNATO加盟支持は、最近の世論調査で8割近くにまで達した。200年余にわたって中立を保ってきたスウェーデンでも、5~6割が加盟を支持し、与党の社会民主労働党が支持表明すれば、事実上の申請が決まる。
 NATOは東西冷戦下の49年、北米と欧州の計12カ国で発足した。ソ連崩壊後は東欧の旧共産圏が相次いで加わり現在は30カ国に及ぶ。ロシア国境に近く、旧共産圏もしくは旧ソ連の一部だった国々には集中的に軍配備がなされている。ロシアにとっては、これが脅威に映り、その拡大は防ぎたいのだろう。しかし、旧ソ連や現在のロシア誕生後も続いてきた、力による周辺諸国に対する現状変更という事実がある。軍事力をもって対抗手段とする、もしくは抑止力とすることは悲しい現実だ。一刻も早く緊張が解ける日が訪れることを願いたい。

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経済安保法「政府関与へルール作りを」

2022/5/13 金曜日

 

 戦略的な重要物資のサプライチェーン(供給網)強化などを図る経済安全保障推進法が成立した。岸田文雄首相の看板政策として、政権にとっては参院選へのアピール材料にもなろう。ただ、推進法には企業にとって明確な方針が示されておらず、自由な経済活動への介入を懸念する声がある。2023年度以降の段階的な施行へ、政府の関与についてのルール作りが必要だ。
 米中のハイテク分野の覇権争いに端を発した国際競争は、グローバル経済の在り方を変えた。さらにロシアのウクライナ侵攻により、地政学的リスクの回避も懸案に加わった。友好・協力関係で形成された国際的な陣営が出来上がり、半導体やレアアース(希土類)など戦略的物資の調達は、「特定の国」への依存度を下げる必要に迫られている。
 このような背景で成立したのが推進法だ。供給網強化のほか、「基幹インフラの事前審査」「先端技術の官民協力」「軍事転用可能な技術の特許非公開」の4分野が柱だ。重要物資の生産や先端技術の育成には資金を支援する「アメ」がある一方、違反には2年以下の懲役や100万円以下の罰金といった「ムチ」も設け、経済活動への政府の関与を明確にした。
 懸念されるのは、推進法に政府の恣意(しい)的な運用の余地が残されていることだ。供給網強化で対象となる「特定重要物資」には半導体や医薬品、先端電池、レアアースなどの重要鉱物などが想定されているが、正式な決定ではない。基幹インフラの事前審査は電気、航空、金融など14分野が対象となるが、具体的な事業者や機器類は未定だ。
 これらは政省令で今後指定されるが、定める項目は138に上る。政省令は国会審議が不要なことから、政府の裁量次第では規制範囲が好き勝手に拡大する恐れがある。事前審査の対象になった企業は負担が増すことになり、経済界から「経済安保政策が今後、どこまで拡充されるのか見えてこない」との不安の声が漏れるのも当然だろう。
 政省令の指定に当たっては、まず政府の恣意的な選定防止へルール作りが必要だ。規制対象を明確にし、決定過程を透明化することも求められる。政府の過度な介入は経済活動に支障を来す恐れがある一方、規制なしでは供給網の停滞を招くケースも考えられる。バランスの考慮なしに、実効性の確保は難しい。そのためには官民の十分な意思疎通が不可欠だ。
 国会審議では政権の肝煎り政策として、論戦が期待されたが、立憲民主党や日本維新の会などの野党が賛成に回ったことで、議論が尽くされたとは言い難かった。政省令の指定は国会審議が不要とはいえ、今後に監視を緩めるようなことがあれば、与党だけでなく野党も責任を問われよう。

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弘前さくらまつり「コロナ下での経験を今後に」

2022/5/12 木曜日

 

 今年の弘前さくらまつりの人出は昨年の約1・6倍に上ったことが、弘前市のまとめで明らかになった。人出に比例して、出店の売り上げなど商況も昨年に比べると好調で、新型コロナウイルス下にありながらも、3年ぶりに全国的に行動制限のない春となったことが祭りの盛況につながったようだ。
 今年は弘前公園内(標準木)のソメイヨシノが平年より8日早い4月14日に開花、昨年と同日で1947年の統計開始以来史上2位タイの早咲きとなった。これを踏まえ、弘前さくらまつりは19日に準まつり体制がスタートし、主会期の23日から5月5日までの計17日間にわたって開かれた。3年ぶりに西濠ボートの貸し出しや中濠観光舟の運行が実施されたほか、桜守ツアーも復活するなど、新型コロナ感染防止対策を徹底しながらも、久しぶりに見る弘前さくらまつりらしいにぎわいだった。
 市のまとめによると期間中の弘前公園入園者数は33万6299人で、昨年の20万7132人に比べ62・3%増となった。内訳を見ると、県外からの入園者数が12万4145人で前年比84・2%増と、2倍近くに増えたのが大きな特徴と言える。全国的に行動制限がない中での祭りとなった影響とみられ、桜が早咲きとなりソメイヨシノの見頃が過ぎた祭り後半も、入園者の半数以上を占める入り込みだった。桜の名所として名高い弘前公園の集客力ゆえと実感させられる。
 県内の入園者も増え、弘前市内からは9万9365人で同46・5%増、市内を除く県内の入園者は11万2789人で同56・7%増だった。
 出店業者や観光関係者も、コロナ禍以前の水準には回復しなかったものの「昨年とはまったく違う」と手応えを得ており、新型コロナで冷え込んだ地域経済の回復に一定の効果があったようだ。
 人出が増えれば感染拡大が気になるところだが、祭り開催に当たり、入園者の受け付けや食べ歩き・飲酒の禁止、通行規制など、昨年と同様の対策が講じられた。関係者によると、ほとんどの入園者がこうしたルールやマナーを守っており「花見客にコロナ禍での祭りの楽しみ方が浸透しているようだ」との見方もある。感染状況によって対策も違ってくるが「祭りを続けていくため、出店業者もいち早く状況に対応した行動を取っていく。その中でも少しずつ元の祭りに戻っていけばいい」と展望する声もある。
 感染防止対策と地域経済回復という二つの命題に同時に取り組んでいくことは容易ではなく、一日も早い新型コロナの収束を願ってやまないが、関係者は手探りながら模索を続けている。今年は、文献に登場してから300年の節目となる弘前ねぷたまつりも今後に控える。今回の祭りの経験を今後に生かし、地域経済の回復につなげてもらいたい。

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イノシシ対策「捕獲技術の蓄積に努めたい」

2022/5/11 水曜日

 

 野生鳥獣による農作物被害が全国的に深刻化する中、本県の県境付近ではイノシシによる被害が新たに確認されている。津軽地方では深浦町で昨年秋にニンジン畑で被害が確認されたほか、今年春には東北森林管理局のカメラがイノシシの姿を捉えている。
 農林水産省のまとめによると、2020年度の野生鳥獣による農作物被害額は約161億円に上る。そのうち、シカによるものが最も多く35%を占め、イノシシが28・3%で続く。深浦町でイノシシによる被害が確認されたのは4年ぶりだったが、このまま対策を講じなければ、県内で被害が急拡大する恐れもある。
 実際、県自然保護課が集計している本県のイノシシ目撃情報は、18年度が15件、19年度が10件だったが、20年度は43件と急増した。目撃件数の増加に伴い、農作物被害の報告も寄せられている。
 農作物被害はそれ自体、農家の経営にとって大きなマイナスとなるのだが、より深刻なのは被害が頻発することによって、生産者の営農意欲が下がったり、離農につながったりする恐れがあることだ。この点については農水省も指摘しており、自治体などが野生鳥獣対策に力を入れている大きな理由の一つでもある。
 深浦町では昨年秋、野菜とは思えない甘さで知られる「ふかうら雪人参(にんじん)」がイノシシによって畑から掘り起こされ、食べられる被害が発生した。収穫量が非常に少ない中で被害が発生したことから、生産者のショックは大きかったという。この先も毎年のように被害が続けば、生産意欲に影響を与えかねず、対策が求められている。
 津軽地方ではこれまで、サルやアライグマなどによる農作物被害が確認され、自治体や生産者はさまざまな方法で駆除に努めてきた。しかし、動物はそれぞれ習性が異なり、サルへの対応で得た知見などをそのまま、イノシシに適用するわけにはいかない。
 ただ、サルへの対応についても、初めからノウハウがあったわけではなく、捕獲する檻(おり)の形や大きさ、設置場所などについて関係者が試行錯誤を重ねてきた。もちろん、すぐにでも効果的な対策を打ち出せれば、それに越したことはないが、ここは腰を据えて取り組みたい。
 農作物に被害を与える野生鳥獣が増える背景には、餌を探しやすい耕作放棄地の増加、駆除するハンターの減少などがあるとの指摘も聞かれる。野生鳥獣の被害によって離農者が増えれば、放棄地がさらに増え、野生鳥獣による被害が増えるという悪循環に陥る恐れもあろう。
 農業者の生活を守ることはもちろん、地域の農業を守るためにも野生鳥獣対策は極めて重要だ。容易ではないだろうが、イノシシについても、地域を挙げて捕獲技術の蓄積に努めたい。

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山菜採り遭難防止「事前の準備と安全最優先を」

2022/5/10 火曜日

 

 本格的な春の山菜シーズンが始まる。タケノコやミズなど豊かな自然の恵みを楽しみにしているファンも多いが、毎年注意が必要なのが遭難事故とクマの出没だ。特に新型コロナウイルスの影響でアウトドアの人気が高まっており、慣れない人の入山が増える可能性も考えられる。万全の準備と安全最優先を忘れずに行動してほしい。
 県によると、2021年に県内で発生した山菜採りの遭難事故は28件で前年比19件減。このうち春シーズンは13件で、記録の残る1999年以降で最少となった。直近5年間の傾向は、春秋ともに遭難者の9割以上を60代以上が占めており、死亡または行方不明もすべて60代以上だった。
 原因としては、「道迷い」が圧倒的に多い。山の奥に入り込んで歩き回っているうちに転落や滑落するケースが目立つほか、体調不良、急病なども遭難の原因になっている。特に高齢者は自分の体力を過信することなく、体調が優れないなら入山を諦めることも大切だ。
 春の山菜で人気の高いタケノコ採りは特に注意が必要である。タケノコは笹やぶのような見通しの悪い斜面などに生えており、地面ばかりを熱中して見て登っているうちに入山した方向が分からなくなり、現在地の把握ができなくなるケースがある。昨春の遭難者ではタケノコ採りが8割を占めている。
 クマとの遭遇にも気を付けたい。県のまとめによると、2021年のツキノワグマ出没件数は436件で、前年(433件)と同程度だが、今年になってから既に目撃情報が寄せられており、「遭遇することはないだろう」という楽観は禁物だ。
 事前にクマの出没情報を確認し出没地域を避けるのが最善だが、入山した際にはクマが活発な時間帯である明け方や夕暮れは特に注意し、足跡やふんなどを見つけた場合はすぐに引き返すよう心掛けたい。もしもの事態に備え、クマよけスプレーなど対策用品を携行することも一考したい。
 遭難を防ぐのは、第一に入山者の心掛けである。県は「できるだけ複数人で山に入るほか、山菜採りに行くことや行き先、帰る時間などを家族や知人に具体的に連絡して」と呼び掛けている。万一の事態に備えて防寒具や食料、飲料水を持参するほか、携帯電話は車に置かず、いつでも連絡が取れるよう山に持っていくことが肝要だ。スマートフォンならGPS機能で現在位置を表示できる地図アプリを活用できる。
 入山時の服装も発見されやすい目立つ色合いにするなど、ちょっとした工夫が遭難時に自らの命を救うことにつながる。「行き慣れた山で経験があるから」と油断することなく、まずは事前のしっかりした準備と安全第一を考えた行動で、山菜採りを楽しみたい。

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