社 説

 

英国EU離脱案否決「混乱回避への努力必要」

2019/1/19 土曜日

 

 英国の欧州連合(EU)離脱が3月末の期限を前に、揺れに揺れている。英議会下院が離脱合意案を大差で否決。合意案の批准には議会承認が不可欠だが、離脱期限までの残り時間が少なくなる中、離脱派と残留派の対立が深刻化している現状を踏まえれば、問題解決は容易ではなく、同国のEUからの離脱は「合意なき離脱」へ向かう可能性が現実味を増している。英国は今後の国の在り方を変える歴史的な判断をする上で、重大な岐路に立たされていると言えるだろう。
 EU離脱を決めた英国の2016年の国民投票は、賛成派と反対派との差はわずか2%で、国民の大方の賛意を受けての方針とはなりにくいものだった。メイ首相は、これを踏まえ、どんな形で離脱を目指すかについて、方針決定を先送りする戦略に出た。その間に賛成、反対双方の融和を図り、円滑な離脱への地ならしを図ることが、その真意だったようだが、首相の思い通りには事が運ばなかった。離脱案は英領北アイルランド問題をめぐる不満が噴出し、否決された格好だが、その根底にあるのは離脱派、残留派双方が自身の掲げる将来像の実現に向けた動きを追求した結果とも言え、離脱期限内に現実的な落着点を見いだすことができるのか、先行きは見通せない。
 このまま打開策が見つからず、時間切れで「合意なき離脱」に至れば、英国の企業活動や市民生活が大きな影響を受けることが懸念される。もともとEUは発足当初の理念として、域内での「ヒト、モノ、カネ、サービスの自由な移動」を標ぼう、実施してきた。このため、双方の合意がないままの離脱では、まず同国の交通や物流が大混乱に陥る可能性があると指摘されている。国民生活に不可欠な食料や医薬品、工場では部品の供給が滞れば、同国の国民生活や経済活動が大打撃を受けることになる。
 英国の混乱は世界に、そして日本にも波及するだろう。専門家からは、英経済は8%近いマイナス成長となり、2008年のリーマン・ショックを超える深刻な不況になるとの指摘がある。諸外国も同国に拠点を置く企業を中心に打撃を受けることになるのではないか。
 野党側が提出したメイ首相への不信任案は否決され、英政府は当座の危機を回避したが、正念場はこれからだ。政府は離脱の代案を提出する考えだが、すんなり解決とはいくまい。今後の展開は「合意なき離脱」のほか「離脱延期」「合意案の再採決」「再国民投票」などのシナリオが考えられる。英国にとって、EUにとって、世界・日本にとっての最良となる選択がなされるよう、建設的な議論を望みたい。
 議会制民主主義の元祖にして、世界経済に大きな影響を与える同国がどのような決断を下すのか、影響は小さくないだけに今後も注視していく必要がある。

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訪問看護「認知度高め、担い手増やせ」

2019/1/18 金曜日

 

 訪問看護師の不足が見込まれているという。在宅医療のニーズが今以上に高まるとされる将来を見据え、県は今年度、現場に同行して実践的に学べる体験型研修を準備、看護師や学生ら70人以上が参加した。現場を知ることができる貴重な機会だろう。こうした取り組みの積み重ねで担い手を増やしてほしい。
 訪問看護は訪問介護と比べると、一般に知られているとは言えない。訪問介護は、訪問介護員(ホームヘルパー)らが利用者の自宅を訪れて入浴や食事などの身体介助や調理、掃除などの生活援助、外出援助を行うサービスを指す。一方の訪問看護では看護師が自宅を訪れ、病気や障害に応じた看護を行う。
 利用するのに年齢制限はなく、かかりつけ医や訪問看護ステーション、地域包括支援センターへの相談や、要介護認定を受けてケアマネジャーに相談したことをきっかけに、主治医からの指示書に基づいてサービスを受けることになるのが一般的。サービス内容は病状の観察や認知症のケア、リハビリテーション、介護予防、緩和ケアなどさまざまだ。
 難病や障害を持つ人にはもちろん、独り暮らしの高齢者など、医療的ケアをしながら生活全般を捉え、支援するケースもあるという。住み慣れた地域で安心して暮らしていくためには、医療や介護に携わる職種が連携し、ニーズに合ったサービスを適切に提供する体制が必要だし、高齢化が進むにつれ、ますますその必要性は高まってくると推測される。
 ただ訪問看護師は基本的に一人で利用者宅を訪れ、さまざまな疾患に対応することになるため、利用者の状況に応じて的確な処置や判断ができるような経験や技術が求められる。何気ない会話や観察からニーズを探り出すなど、コミュニケーション能力も不可欠だ。就業に踏み切るハードルは決して低くはない。
 半面、定期的に自宅を訪れ、顔を合わせて対応をするだけに、利用者から寄せられる信頼は大きい。やりがいも大きいだろう。現場からは、適切に対応し、それが積み重なって安心や信用につながったり、「こうしてもらって助かった」などの言葉が聞けたりした時に「本当にうれしく思う」といった声が聞かれる。
 体験型研修には県内23の訪問看護ステーションが協力。1日入門コースと、2~5日の実践コースに、現職の看護師のほか、医療や福祉について学ぶ学生、ケアマネジャーらが参加し、実際の訪問看護の仕事を目の当たりにした。
 将来の就業や転職先の選択肢の一つとして考えてもらうことはもちろん、病院勤務の看護師やケアマネジャーらが訪問看護への理解を深めることで、現場でのより適切な連携につながることも期待される。訪問看護は在宅での療養生活を支える重要なサービスだ。認知度を高めていく取り組みが引き続き求められる。

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稀勢の里引退「ファンのため貫いた“大横綱”」

2019/1/17 木曜日

 

 大相撲の横綱稀勢の里が16日、引退した。モンゴル勢が台頭する角界で、19年ぶりの日本出身横綱に対するファンの期待を痛いほど感じていたであろうことは、けがを押して土俵に立ったことからも分かる。結果、休場を繰り返し、ついには横綱審議委員会から、不名誉な「激励」を受けることになった。引退会見では涙を見せながら「土俵人生において一片の悔いもない」とする一方で「期待に応えられなかったことに悔いは残る」とも。これが正直な心境なのだろう。
 2017年1月25日、日本相撲協会が満場一致で横綱昇進を決定した。初土俵から89場所、新入幕から73場所を要した遅咲きの大輪は、協会の使者から昇進を伝達され「謹んでお受けいたします。横綱の名に恥じぬよう精進いたします」と口上。先代師匠・鳴戸親方(元横綱隆の里=旧浪岡町出身)の遺影の前で述べた飾らない簡素な言葉は、真面目さを感じさせた。横綱として迎えた17年春場所は、左胸などを痛めながら劇的逆転で賜杯を手に。大相撲ファンならずとも、不屈の精神力に感動させられた。
 しかし結果的に、完治できぬままの強行出場が力士生命を縮めたのは皮肉だ。以降は途中休場、全休続き。「激励」を受け、進退を懸けた今場所も初日から連敗。3日目の15日も栃煌山に簡単にもろ差しを許しての完敗で、うつろな目で立ちすくむ横綱の姿に、両国国技館は静まりかえった。期待に応えられぬまま、横綱在位わずか12場所での引退となり「(ファンに)申し訳ない」と陳謝した。引退すべきか自問自答を繰り返しながら「ファンのため」と、今場所の土俵に上がったという。相撲を取れる体ではなかったが、ファンを大事にする姿勢は間違いなく“大横綱”だった。
 その気持ちはファンに届いている。引退の報にファンからは「言葉が出なかった」「1勝したらペースがつかめると思っていたので残念」など、惜しむ声が相次いだ。多くの不祥事に揺れた角界で、期待を一身に背負って、真摯(しんし)に相撲に向き合った横綱。ファンに愛された横綱の引退で、大相撲人気に陰りが生じる可能性があると指摘されるほどだ。
 横綱昇進を決めての記者会見では「(鳴戸親方に)出会わなければ、今の自分はない」と、声を震わせて感謝を口にした。中学卒業後に当時の鳴戸部屋に入門し、鳴戸親方、現在の田子ノ浦親方、多くのファンらに育てられ、横綱に上り詰めた。そして、引退会見ではこうした人々への感謝も忘れなかった。協会理事会から年寄「荒磯」襲名が承認され「年寄として後進の指導に当たりたい」と、今後の抱負を語った。けがで土俵に上がれぬ苦しみ、結果を出せない無念を知っているからこそ、できる指導があるはずだ。きっと、これからの角界をもり立てる力士を育ててくれる。そう信じたい。

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高校サッカーV「雪が鍛えた青森山田イレブン」

2019/1/16 水曜日

 

 14日に埼玉スタジアムで行われたサッカーの第97回全国高校選手権決勝は、本県代表の青森山田が千葉県代表の流通経大柏を3―1で下し、2年ぶり2度目の優勝を成し遂げた。
 青森山田は、連覇を狙いながら3回戦で敗れた前回の雪辱を平成最後の選手権で果たした。雪国はハンディではなく、全国のどこにいても優勝を狙えることを証明してみせた。今後も県勢が全国大会で上位常連校として定着するよう願いたい。
 決勝で青森山田は先制を許すも、前半40分で同点とする。後半は主導権を握って18分に勝ち越し、その後に加点して王座を奪還した。準々決勝から決勝までの3試合とも先制を許しながら、それを覆して勝利をもぎ取ってきた。1年生ながら全試合に出場した藤原優大選手(弘前市出身)の活躍も光った。そんな青森山田イレブンの姿は多くの県民に感動を与えたのではないか。
 思い返せば、2010年の第88回選手権で、県勢は初優勝に王手をかけていた。本県代表はその時も青森山田。鹿島アントラーズなどを経てスペイン1部リーグ・ヘタフェに所属する柴崎岳選手を擁していたが、決勝は山梨県代表の山梨学院大付に0―1で敗れ、涙をのんだ。その時の悔しさからはい上がり、17年の第95回選手権の決勝で群馬県代表の前橋育英を5―0の大差で下し、ようやく初の全国制覇を成し遂げた。
 しかし、翌第96回選手権は不本意な結果に終わった。全国制覇の翌年であり、この時の出場選手には相当なプレッシャーがあったと思われる。そこから新たなスタートを切ったチームの努力は並大抵ではなかっただろう。そうしたことを踏まえれば、今回の優勝という結果に対して黒田剛監督が「選手たちは平常心で自分たちをコントロールしながら逆転できるようになった。素晴らしいチームに成長した」と手放しで称賛したのもうなずける。
 屋外スポーツにおいては、「雪国は練習場所などが制約されて不利」との指摘がかつてあったが、高校野球の全国大会で県勢が上位進出を果たしている例は近年多数あり、サッカーでも雪国のハンディはないことを今回の結果が証明している。
 青森山田の選手たちは冬場、雪が降り積もった競技場の上で足腰を鍛えるために練習を続けたといい、黒田監督は「雪国がサッカーにおいて育成の絶対条件。3年で2度優勝でき、青森の良さをそれなりに発信できていると思う」とまで言い切った。「雪国にいることはむしろ強み」といったところだろうか。
 今後はサッカー、全国大会でしばしば上位に進出している野球はもちろん、他の屋外競技でも県勢が大いに活躍することを期待している。

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平成最後の成人式「平成の平和を次の時代にも」

2019/1/15 火曜日

 

 2018年度の冬の成人式が13日、県内各地で実施された。県教育委員会の調査(18年12月)によると、今年1月に成人式を実施したのは23市町村24会場で、総数は1万990人(男性5587人、女性5403人)となった。平成最後という節目の成人式を、新成人はどのような思いで迎えたのだろうか。
 県の統計によると本県の推計人口(18年10月1日現在)は、平成元年の1989年時点で150万758人。人口減少は加速の一途をたどり、18(平成30)年には126万2823人と戦後間もない水準にまで落ち込んだ。人口減少に伴う地域活力の低下が懸念されているほか、年金など将来的な社会保障への信頼も揺らぐようになった。
 さらには1995(平成7)年の阪神・淡路大震災、米国ニューヨークのワールドトレードセンターに飛行機が突入するなどした2001(平成13)年の米国同時多発テロ、東北に大きな被害をもたらした2011(平成23)年の東日本大震災など、相次ぐ災害や激動の国際情勢による不安定な時代だったとも言える。
 若者世代の変化もあり、平成の若者に対しては消費行動が少ない「物を買わない世代」との指摘もあるが、非正規雇用の増大や賃金格差などから「物を買えない世代」になっているとの見方もできよう。バブル崩壊後に落ち込んだ景気は回復傾向とされるが、地方はその実感も少ないまま今に至っている。
 平成をどのように総括すべきか。課題は多々あるが、特筆すべきは「日本が戦争をしなかった」ことではないだろうか。本紙の新成人への取材では、平成について「平和な時代だった」と評価する声が相次いだ。天皇陛下は昨年12月、85歳の誕生日を前にした記者会見で「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵(あんど)しています」とのお言葉を述べられた。
 どの時代も評価されるべき点と、非難されるような問題点がある。戦争に突き進み、多くの人命を失った後、敗戦から立ち上がった昭和。高度経済成長を経験した昭和に比べれば、平成は経済は停滞傾向にあり、災害と混乱が目立ったが戦争をすることはなかった。あるいは災害が多かったからこそ、間接的に平穏な日々の大切さを若者が実感するようになったのかもしれない。
 次の元号の時代がどのようになるのかは不透明だ。改元に伴い時代が大きく変化することはないが、時代の節目になることは確かだ。次の時代もまた大きな困難が降りかかることはあるだろうが、それでも「平和な時代だった」と、さらに次の時代に胸を張ってバトンを手渡せるようにしなければならない。大人の自覚と責任を胸に刻んだ新成人と一緒に、大人世代もまた自覚と責任を新たにしなければなるまい。

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