社 説

 

統計調査員「若者の活躍の場を増やせ」

2017/5/26 金曜日

 

 県と弘前大学、弘前市が連携して取り組む「統計調査体制強化システム構築事業」が今年度から新たにスタートした。学生を統計調査員として育成し、活用するシステム構築のためのモデル事業だ。
 今年4月に県など3者で県統計調査員検討会を設置して具体的な方策の検討に着手。5月には学生に統計調査の目的や意義を理解してもらおうと、弘前大学で統計調査に関する授業を行っており、着々と進んでいるもよう。前例はあるが全国的にも先進的な事例とされており、成果につながる取り組みを期待したい。
 「統計」は数値を用いて社会全体の姿を示すもので、その重要性は言うまでもない。国や地方自治体などで広く利用され、政策立案の基礎資料となるほか、大学の研究や民間企業の経済活動にも役立つものだ。信頼でき、正確な統計であることが大前提で、統計調査員一人一人が担う責任もまた重いものだと言えよう。
 統計調査員は国勢調査のほか、労働力調査や家計調査、工業統計調査などの統計調査に従事し、調査対象を直接訪問して調査票への記入を依頼したり、記入済みの調査票を回収したりするのが主な仕事。正しく記入してもらうためには調査の趣旨を説明し、対象者の理解を得る必要があり、守秘義務の徹底のほか、社会人としてのマナーや適性が求められる。
 その分、調査員が固定化してしまい、高齢化の進行もあって調査員の確保と円滑な世代交代は重要な課題。本事業で統計調査について理解し、適性のある学生を発掘・育成、登録するまでのシステムができれば継続的に新たな調査員を確保できることになり、調査員の資質向上にも資する。より良いシステム構築に向けて議論を尽くしてもらいたいと思う。
 一方で、この事業には調査活動を通じて学生に本県について知ってもらい、県内定着につなげたいという側面もある。県側は学生に工業統計、毎月勤労統計など企業を対象とした調査に参加してもらうことを想定しており、学生にとっては地元企業を訪問し、実情を知る好機になる。県内就職を考えるきっかけの一つになればいいし、調査を通じて地域そのものについても知ることになるだろう。
 人口減少が全国的な課題となっている昨今。中でも若年層の県内定着の取り組みは重要な柱の一つとなっており、県は県内大学等卒業者の県内就職内定率を2014年の35・2%より上げるという目標を掲げ、各種取り組みを進めている。
 県内のことをよく知らず、漠然と首都圏に憧れて就職を考えるというパターンも一定数あるだろう。インターンシップなど現状でも地元企業を知る機会はあるが、チャンネルは多い方がいいし、継続した取り組みとすることが何より重要だ。本事業を含め、さまざまな手法で学生ら若い世代が地域を知り、活躍する場を増やして県内定住を促したい。

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テロ対策「東京五輪見据え強化加速を」

2017/5/25 木曜日

 

 英中部マンチェスターのコンサート会場で自爆テロが発生し、22人が死亡、約60人が負傷した。過激派組織「イスラム国」(IS)から犯行を主張する声明が出され、欧州を覆うイスラム過激派テロの脅威が一段と印象付けられた。
 2015年以降、欧州では大規模テロが相次ぎ、犠牲者は300人を超えた。ISが直接行動に出るのではなく、その思想に感化された若者らが単独で行動する「一匹おおかみ」型の犯行が目立つ。
 15年1月には過激思想に染まったフランス国籍の男3人が、パリの仏風刺紙本社やユダヤ教系食品店を続けて襲撃。同11月にはパリで劇場や飲食店が襲われた。16年以降は仏国外にも飛び火し、同年3月にはブリュッセルで空港や地下鉄が襲撃され、同12月にはベルリンのクリスマス市でトラック突入テロが起きた。
 今年に入ってからは英国やスウェーデンにもテロは拡大。一連の事件では欧州で生まれ育った貧しい移民出身層が所得格差拡大などを理由に母国に敵意を抱き、過激思想に踏み切る「ホームグロウン(国産)テロ」の例が多い。
 また、トラックやガスボンベといった身近な道具を凶器として使用するケースが増え、一般人が容易にテロリスト化することが分かった。マンチェスターのテロは、多数の観客が集まる人気歌手のコンサート会場を狙ったテロとの見方が強まっている。こうして見ると、日本でもいつ起きてもおかしくないと言えよう。
 大規模集客施設などの「ソフトターゲット」について、日本の警察当局もテロ対策を強化してきた。全国の警察に対し、不特定多数が集まる施設などで制服を着た警官による巡回を指示し、施設の管理者側にも自主警備の強化を求めた。今年度からは、47都道府県の機動隊に設置されている「銃器対策部隊」に、威力の強い自動小銃の配備を順次開始した。
 また、昨年4月には警察庁警備局に、ネット上で公開される国際テロなどの情報を収集・分析する新組織「インターネット・オシントセンター」が発足。テロ関連情報を自動的に収集し、イスラム過激派組織の情報宣伝活動や、それに呼応して過激化の兆候を見せる個人を早期に特定し、テロ防止につなげる取り組みを進めている。
 2020年には東京五輪・パラリンピックを控える。テロ防止に向けた情報収集・分析や発生時の対処能力強化など、対策を強化し続けなければならない。そういった意味で、「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法の改正は必要なのだろう。
 ただ、これまでの国会審議では捜査対象や犯罪に問われる条件をめぐる政府の説明が曖昧で、法案の必要性について説得力に乏しい印象は否めない。参院では国民の不安を解消し、理解を得られるよう十分な審議を尽くしてもらいたい。

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移住促進策「希望者数だけが成否の指標か」

2017/5/24 水曜日

 

 本県への移住者が増えている。首都圏における本県の移住相談窓口「青森暮らしサポートセンター」の2016年度相談受付件数が681件、同センターを利用して移住を決めた人は46人と、ともに開設以来最多となった。関係者の努力が次第に実を結んでいるようだ。
 とはいえ、全国には1年間の相談件数が数千件に上る県もあるようで、件数だけを見る限り、本県は多い部類には入らない。
 地方への移住促進に取り組む認定NPO法人「ふるさと回帰支援センター」(東京都)がホームページ上で公開している「移住希望地域」ランキングによると、上位は関東地方の近隣県が目立つ。この傾向は以前から続いており、要因としては、首都圏の移住希望者が生活環境の変化が比較的小さい地域を選んでいることなどがあるのではないか。
 これらを踏まえると、首都圏から移住者を数多く受け入れることだけを目指すのであれば、近隣県が有利であることは否めず、その優位性はこの先も変わらないだろう。
 かといって、本県が落胆する必要もないだろう。確かに、移住促進の取り組みが活発化している背景には、地方の人口減少があり、受け入れる人数は一人でも多い方が良い。ただ、現実的に人口の減少分を移住者の受け入れだけで補えるわけではない。むろん、移住促進に取り組む地元関係者も補えるとは思っていないはずだ。
 ならば、各自治体が移住者を熱心に受け入れようとする理由はどこにあるのか。一言で言えば、地域活性化の契機の一つにしたいと考えているからだろう。
 その思いに応えるかのように、近年は起業を目的とした移住者も見られるようになってきた。例えば、老後の生活の場を探して移住を決断するにも相当な覚悟が要ると思われるが、さらに起業にまで踏み切る勇気には頭が下がる。彼らの考え方からは学ぶものも多いだろう。
 総務省は最近、移住先の地域活性化に取り組む「地域おこし協力隊」の起業を支援する仕組みを導入した。隊員としての活動期間は長くて数年だが、その後も定住する人が一定割合いることを踏まえれば、同省や地方自治体には同様の支援策を一層充実させてほしい。
 移住者に移住先での暮らしの楽しさなどを語ってもらい、地元の魅力をアピールすることは大切だ。ただ、これからは、地元の魅力を理解し、起業などを通じてさらなる魅力の創造に寄与している人たちが地元にいることを強く発信することも求められると考える。
 中長期的に考えれば、どのような目的を持つ移住者の受け入れを積極的に目指すか―という観点も移住促進策には必要だ。移住希望者数だけが、成否を測る指標ではないのではないか。

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クマ被害相次ぐ「入山の際にはしっかり対策を」

2017/5/23 火曜日

 

 本格的な山菜採りシーズンを迎えた津軽地方で、入山者がクマに襲われる被害が相次いでいる。
 弘前市内では、4月30日に同市百沢で山菜採りをしていた70代女性がクマにかまれて右太ももにけがを負ったほか、21日にも同市百沢の山中で山菜採りをしていた50代男性がクマに襲われ右手にけがを負った。
 20日には、鯵ケ沢町長平町の雑木林で山菜採りをしていた60代男性がクマに頭をかまれるなどしてけがを負う被害が発生している。
 山菜採りシーズンを迎え、しばらくは入山者が増える時期だ。昨年、県内ではクマによる人的被害はなかったものの、今年は津軽地方だけで3件と相次いでいる。山菜採りに出掛ける際はあらかじめクマの出没情報に注意し、出没地域に入らないようにするなど、被害に遭わないよう十分注意したい。
 県などのまとめによると、山菜採りなどによる遭難事故の発生件数は、過去5年間では春が20~31件、秋が10~15件で推移しており、春が秋を上回る傾向が続いている。最も遭難が多いのはタケノコ採りだからであろう。タケノコ採りは夢中になるあまり、道に迷ったりするケースが多い。
 遭難者は60歳以上が9割以上を占め、死亡または行方不明の遭難者の94%が60歳以上となっている。救助された事例では、山奥に入り込んで道に迷ったケースや転落、滑落、体調不良、急病などによる遭難が多い。そしてもう一つ、クマとの遭遇も最近は全国的に相次いでおり、注意が必要だ。
 昨年は、ツキノワグマの目撃件数が、東北6県では上半期だけで計5839件に上り、この10年で最多となった。青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島の6県で県や県警本部がまとめた目撃件数を集計した結果で、福島以外の5県は年間最多件数も超えるほどだった。
 最も目撃が多かったのは岩手で、1年間を通じた件数が過去最多だった12年度の2357件を上回った。昨年の5~6月にクマに襲われたとみられる4人が死亡した秋田では、上半期で、過去最多だった12年度通年の倍近くに達していた。
 本県においては、県警地域課によると、今年に入ってから18日までの県内のクマ目撃情報は昨年より少ないものの、人的被害が相次いでおり、例年以上に注意が必要だ。
 山菜採りに出掛ける際はクマの出没情報に注意し、出没地域には入らないことがまず大事だ。また、山では必ず2人以上で行動し、クマの足跡やふんなどを見つけた場合は引き返すよう心掛けたい。クマが活発な時間帯である夕暮れや明け方は特に注意するといった対策を常に心掛けることが、山菜採りを楽しむ上で不可欠である。

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リンゴ結果樹面積「産業の活性化で生き残りを」

2017/5/20 土曜日

 

 農林水産省が実施した2016年産リンゴの調査で、実際に果実を収穫できる園地面積を表す「結果樹面積」の本県分が1万9900ヘクタールとなった。2万ヘクタールを割るのは1973年産の統計開始以降、初めてとなる。本県の結果樹面積は12年産から2万ヘクタールが続いており、関係者の間では、大台割れも時間の問題と受け止められていたが、その時が来てしまったのは、やはりショックだ。結果樹面積の減少がそのまま、リンゴの収穫量に跳ね返るものではないが、生産の土台となるリンゴ園の減少が、数字の上からも裏付けられるのを見ると、危機感を感じざるを得ない。
 原因はさまざま考えられるだろうが、背景にリンゴ生産者の高齢化と担い手不足があるのは間違いない。面積が2万ヘクタールを切った背景について、農水省の担当者は「農業者の高齢化の進行や担い手不足が影響し、手間のかかる急斜面などでの作業が必要になって廃園につながっている」と分析している。
 16年産の本県の収穫量は15年産を5%(2万2200トン)下回る44万7800トンとなり、直近の過去10年間(07~16年産)では7番目の量となった。15年産が大玉傾向だった反動で樹が弱り、果実の肥大が進まなかったことや日照不足などによる小玉傾向となったことが原因として挙がるという。結果樹面積の減少が直接の理由でないとしても安定した収穫量、特に産地間や他果実との競争を勝ち抜ける高品質なリンゴを継続して供給していくには、結果樹面積を現在の水準に維持していかねばならない。
 生産者の高齢化や担い手不足が背景にある以上、結果樹面積のV字回復はなかなか難しい。現状を維持しつつ、高品質、かつ市場で存在感のある数量を毎年、生産していくことが求められる。
 産地は今後、どのような対策を取るべきか。関係者の見立て、方策は異口同音だ。その答えは、収量が低下した老木を管理しやすい、わい性台に改植するなど「園地の若返り」を進めていく努力をさらに推し進めることにほかならない。園地の若返りは、古くて新しい本県リンゴ産業の課題だ。毎年、一定の収穫量を確保しながら、園地の改植を進めていくのは、並大抵の努力ではない。生産者の努力はもちろん、本県リンゴ産業を守るという決意の下、行政、農業団体、生産者が一体となって、計画的に若返り事業を進めなければならない。
 加えて生産者の労働力を軽減させる省力化栽培可能な品種の導入や付加価値の高い加工向けリンゴ生産に向けた取り組みなども加速させなければならない。国内への安定的な供給に加え、海外への積極的な輸出で生き残りを図る本県リンゴ産業。園地のみならず、リンゴ産業全体を若々しく、活力あるものにするための不断の努力が求められる。

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