社 説

 

米大統領来日「拉致、貿易問題の行方注目」

2019/5/25 土曜日

 

 トランプ米大統領が25日に来日する。令和初の国賓で、日本には3泊4日という長期滞在となり、天皇、皇后両陛下と会見するのをはじめ、安倍晋三首相とのゴルフや大相撲夏場所観戦―と多くの催しを準備。過去に4日間滞在したブッシュ元大統領と比較しても群を抜く手厚いもてなしを計画するのは「かつてない緊密な日米関係」(外務省幹部)をアピールする絶好機と捉えているためだ。
 北朝鮮による拉致や核問題など大きな懸案を抱える日本政府は、日朝首脳会談を行ったトランプ氏との連携が不可欠とし、日米首脳会談を解決の一歩としたい考えだ。拉致被害者家族が高齢化し、早急な解決が求められており、安倍氏は27日の首脳会談で、金正恩朝鮮労働党委員長と無条件で会談する考えを説明し、協力を求める方針。本県では今年、特定失踪者の今井裕さん(当時、弘前工業高校3年)に関する手書きの地図を検証した特定失踪者問題調査会が「北朝鮮行きを断ったため、卒業を前に強制的に連れて行ったのではないか」との結果を公表。トランプ氏の対応が注目される。
 ただ、トランプ氏が拉致問題を提起した米朝首脳会談は物別れに終わり、北朝鮮は拉致問題について解決済みとの立場のまま。さらに今月に入ると弾道ミサイルを発射する挑発行為に出た。トランプ氏と拉致被害者家族の面会の場が設けられており、日本が置かれた状況について理解は得られるとは思うが、北朝鮮が態度を硬化させる中、解決策を導き出せるかは不透明だ。
 もう一つのテーマが貿易。米政府高官は「貿易に焦点を当てることが訪日の目的ではない」とするが、日本にとっては避けられない問題だ。日米貿易交渉で安倍氏は、日本が米経済に貢献していることを強調しながら着地点を探る見通し。ただ逆にトランプ氏が日本側に強い姿勢を示す可能性も指摘されている。日本企業に影響が及んでいる米中貿易摩擦についても意見を交わすとみられる。
 米側は今回の訪日を、両陛下との会見とともに「かつてない日米同盟の強固さ」をアピールするためとする。離日前には事実上の空母に改修するとした海上自衛隊のいずも型護衛艦の2番艦「かが」乗艦を予定している。こちらに関しては、日米両政府が「深刻な懸念」を表明している中国の東・南シナ海への強引な進出などを念頭に、日米同盟による抑止力を示すことになるだろう。
 トランプ氏は来日を前に「安倍晋三首相は、世界で唯一(令和最初)の賓客として私を招いた」と胸を張った。「蜜月演出策」は上々の出だしとなったようだ。ただ、貿易問題で両首脳の考えは異なっており、日本の思惑通りに進めるのは容易ではないだろう。参院選、消費税増税を控える安倍氏にとって、首脳会談は正念場となる。

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「クルーズ船寄港」満足度高める取り組みを

2019/5/24 金曜日

 

 青森港に今年もクルーズ船が続々と入港している。4月24日に着いた2隻を皮切りに、11月までに過去最多となる国内外の27隻が入港予定。5月7日には世界的に有名な豪華客船「クイーン・エリザベス」も初寄港し、県民の前に「海の女王」とも呼ばれる優美な姿を現した。
 青森港に寄港するクルーズ船は2014年には20隻だったが、18年には26隻、今年は27隻と着実に数を増やしている。今年は「クイーン・エリザベス」をはじめとする7隻が初寄港で、青森港の知名度は徐々に高まっていると言える。限られた時間ではあるが、本県での滞在を満足度の高いものにできるよう、受け入れ態勢の整備に一層の工夫が必要だ。
 これまで課題とされてきたのが、入国に関する手続きに時間がかかり、観光客が県内を観光する時間が限られること。手続きを行うスペースが十分でないことから、船が港に到着しても実際に乗客が降りてくるまでには相当の時間を要していた。ただこの問題は今春、新中央埠頭(ふとう)に税関や出入国審査などができる施設「青森港国際クルーズターミナル」が完成したことで、入国に関する手続き時間が大幅に短縮され、改善されている。雨天や降雪など天候にかかわらず、観光案内や物産販売などができるホールも備えており、大いに活用してもらいたい。
 クルーズ船は大型客船になると乗客数が2000人以上ということも多く、一度に降り立つ人数を考えると経済効果は大きい。主にバスで移動するオプションツアーで弘前公園などを訪れる外国人観光客も多いと聞くし、個人であちこち散策して楽しむ人も。青森港は中心市街地に近く、船を下りて少し歩くだけで、観光地とはひと味違う地方都市の日常生活に触れることもできる。これも青森港の魅力の一つだろう。観光に使える時間が長くなった分、行き先などの選択肢は広がる。より多彩な楽しみ方を提示し、消費拡大につなげる取り組みが望まれる。
 本県は2018年の外国人宿泊客数が約29万人となり、過去最多を更新。今年7月には台湾のエバー航空が青森―台北線を開設予定で、青森空港発着の国際定期便はソウル線、中国天津線に加えて3路線となり、本県を訪れる外国人観光客が一層増えることが予想される。
 本県は地域ごと、季節ごとに違った魅力にあふれ、何度訪れても楽しんでもらえるはず。青森を旅先に選んでもらう情報発信の強化はもちろん、本県の魅力を体感できるコンテンツの開発や、分かりやすく使いやすい交通ネットワークの整備などやるべきことはまだまだある。
 何よりも土地の印象を良くするのは、やはり人だろう。街中で外国人客を見掛けることはもはや珍しいことではない。だからこそ観光関係者だけでなく、われわれ県民も温かな対応を心掛けたいし、そうした触れ合いを楽しみにしたい。

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世界遺産「保存と活用、両立に知恵を」

2019/5/23 木曜日

 

 仁徳天皇陵(大山古墳)を含む「百舌鳥・古市古墳群」(大阪府)が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)により、世界文化遺産に登録するよう勧告された。今後、開催されるユネスコの世界遺産委員会で勧告通りに登録が決定される見通しとなっている。登録されれば、国内の文化遺産は19件目、自然遺産を含むと、国内の世界遺産は23件となる。
 古墳群は、4世紀後半から5世紀後半にかけて築造された49基の古墳で構成される。日本最大の前方後円墳で、世界三大墳墓の一つにも数えられる仁徳天皇陵古墳が特に有名だ。古墳群には、独特の幾何学的なデザインが施された、さまざまな大きさや形状の古墳が集中して残っている。その特異性とともに、巨大古墳を取り巻くように中小の古墳が集積している状況などから、巨大古墳を権力の象徴とした当時の社会構造を推測できるなど、わが国の歴史を知る上でも貴重な文化遺産となっている。
 百舌鳥・古市古墳群が世界遺産の国内候補として「暫定リスト」に記載されたのは2010年。しかし、競合する他の国内候補に先を越される状況が続いた。関係自治体でつくる推進本部会議は、落選のたびに推薦書の原案を練り直し、巨大な古墳が多様に集まっている点などの普遍的価値をどのように説明し、理解を得るかに工夫を凝らしたという。暫定リスト記載当時、古墳の数は87基だったが、4度目の挑戦となった17年には、保存状況などを考慮して49基にまで厳選されている。
 こうした経緯を聞くと、世界自然文化遺産登録を目指す本県の国特別史跡・三内丸山遺跡(青森市)など4道県の17遺跡から成る「北海道・北東北の縄文遺跡群」がたどってきた道のりと重なるものがある。縄文遺跡群も4道県に地域を限定する理由付けや構成資産(遺跡)の保全面などについて、課題を指摘され、改善を重ねてきた歩みがある。
 こうした努力のかいもあり、1月の文化審議会世界文化遺産部会では、今年度の審査対象を縄文遺跡群のみとする方針が示された。早ければ、21年夏の登録も視野に入ってきているという。
 百舌鳥・古市古墳群も北海道・北東北の縄文遺跡群も、わが国が世界に誇る「人類の遺産」として価値あるものと胸を張ることができるものだ。だが保存、継承が大命題となる世界遺産と、活用し観光面での振興を図りたいと考える地元では、おのずと世界遺産に求めるものにずれが生じてくる。
 世界遺産が多くなり、飽和状態からブームの終焉(しゅうえん)が近いのではないかとの声も聞かれるようになった。登録予定の古墳群も、登録にぐっと近づいた縄文遺跡群も、登録後の保存と活用をどのように両立させるか、知恵を絞る必要がある。

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裁判員制度から10年「司法改革へ不断の努力を」

2019/5/22 水曜日

 

 刑事事件の裁判に市民が参加する裁判員制度が2009年に始まってから10年を迎えた。
 本県ではこれまで92件の裁判員裁判が行われ、750人以上の市民が裁判員、補充裁判員として被告と向き合ってきた。経験者からは制度を評価する声が多く聞かれ、運用はおおむね順調と言える。一方で、裁判員候補者の辞退率は全国的に年々上昇しており、制度をいかに浸透させるかが課題となっている。
 制度は司法への国民参加という新たな仕組みとしてスタートし、その狙いは裁判に社会常識を反映させることで司法に対する国民の信頼を高めることだ。約100件の裁判員裁判の経験を有する現役裁判長は「法律家の感覚と違う一般の人も含めた上で判断した方が、より説得力のある刑になる」と制度の効果を語る。
 実際、制度導入の前後では量刑に変化も見られる。最高裁のまとめによると、裁判官だけの審理と比べ、殺人事件や性犯罪、強盗致傷事件などで量刑が重くなる傾向が見られた一方、執行猶予判決の割合が増え、一部の事件では顕著に増加した。保護観察の割合も増え、裁判員が猶予期間中の被告を取り巻く環境にも関心を示していることがうかがえる。
 公判にも変化が見られ、これまで調書などの書面審査が多かったが、裁判員裁判では証人尋問なども含め口頭でのやりとりが活発になった。裁判員裁判の対象事件では、取り調べの全過程の録音・録画が義務付けられ、自白強要など違法な取り調べを防ぎやすくなったことも成果の一つといえる。
 一方で、やはり気になるのは、裁判員を辞退する裁判員候補者の割合が上昇し続けているということだ。
 候補者のうち、事前の申し出や、裁判員選任手続きでの裁判長との面談で辞退が認められた割合は、制度導入当初の09年は53・1%だったが、12年に61・6%まで上昇。18年は67・0%に達した。
 辞退の理由は仕事や高齢などさまざまだが、躊躇(ちゅうちょ)する気持ちも分からなくはない。凶悪事件で死刑選択を迫られた場合、心理的負担を懸念する声はいまだ少なくない。裁判員法では、終身の守秘義務もある。仕事を休んで裁判員を務めることへの抵抗感や職場の理解といった点などでいまだ課題も多い。
 ただ、実際に裁判員を体験した人の多くは「良い経験だった」と受け止めている。「国民の司法参加」を促すには、制度の趣旨や参加者の体験談をより広く周知していくことが大事だ。
 制度が真に国民に開かれた司法改革となり得るかどうかは、国民の理解や関心に負うところが大きい。それだけに、一般市民がいつ裁判員に選ばれても躊躇しないよう、引き続き制度の問題点や課題に日ごろから目を向け、必要に応じて見直していく必要がある。

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拉致と国民大集会「早期解決へ継続的取り組みを」

2019/5/21 火曜日

 

 北朝鮮による日本人拉致被害者の存在が明るみに出て久しい。今もなお数十年と引き裂かれた家族がおり、糸口がいまだ見えない中、被害者全員の早期帰国を訴える「国民大集会」が19日、1000人超が参加し東京都内で開かれ、被害者家族が「時間がない。どうかチャンスを生かしてほしい」と日朝交渉の進展を求めた。蓮池薫さんら生存者とその家族が帰国してから17年弱。その間、1人も戻ることなく、ほかの被害者の帰国は途絶えたまま。いま一度国民が一丸となって早期帰国に向けて声を上げ、政府には具体的な対策を取ってもらいたい。
 安倍晋三首相は大集会であいさつし、解決に向けて「条件を付けずに金正恩(朝鮮労働党)委員長と会って、虚心坦懐(たんかい)に話をしたい」と無条件対話に改めて意欲を示したが、日朝首脳会談が行われるめどが立っていない現状にも触れ、粘り強く取り組む姿勢を示した。かつて、小泉純一郎元首相が北朝鮮の平壌を訪問し、日朝首脳会談を経て、被害者とその家族の帰国を実現した。その行動力に驚かされたが、現在は北朝鮮の核やミサイルといった問題も進展がなく、当時とは事情が異なる。安倍首相は被害者家族との面会で「拉致問題は安倍政権で解決する」と決意を述べているだけに、早期の進展が望まれる。
 拉致問題は本県も例外ではない。拉致された可能性が否定できず、その疑いが濃厚とされる「特定失踪者」が複数いる。その一人で1969年に失踪した弘前工業高校3年今井裕さん(18)=当時=に関しては3月、自宅に残した生徒手帳の中に、五能線艫作駅(深浦町)周辺を描いた地図が折り込まれていたことが判明した。しかも、筆跡は今井さん本人のものではない第三者によるものとみられており、何者かの手引で同駅近辺から北朝鮮に向かおうとしていた可能性が浮上している。
 安倍首相が言うところの「(問題解決は)そう簡単なことではない」ことは国民の多くが理解している。ただ、絶対に解決しなければならない問題だ。かつて「出口の見えないトンネル」状態でもあった拉致問題は、長い年月をかけて政府や被害者家族、多くの関係者が解決に向けた糸口を探し出し、一部とはいえ帰国を実現させてきた。今井さんの生徒手帳に折り込まれた地図に関しては、失踪から50年が経過してから存在が明らかになったものだ。このように今でも新たな糸口を探し出すことは決して不可能ではない。継続的な努力と熱意で取り組みを進めてほしい。
 大集会会場には、累計約1341万人分の署名が積み上げられた。拉致被害者家族連絡会が結成された1997年以降、各地で家族らが集めたものという。願いを早期にかなえるため、まずは首脳会談実現を目指してほしい。

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