医療情報ほっと

 

カンピロバクターによる食中毒

2019/11/23 土曜日

 

 細菌やウイルスによる食中毒の中で最も件数が多いのがカンピロバクターによる食中毒です。カンピロバクターは、家畜の流産、胃腸炎、肝炎などの原因菌であり、鳥、牛、豚などの家畜やペット、野鳥、野生動物など多くの動物が健康な状態で保菌しています。潜伏期間が1~7日(平均2~3日)とやや長いことが特徴です。下痢、腹痛、発熱、悪心、嘔吐(おうと)などがみられますが、カンピロバクターに特有の症状はありません。自己判断で下痢止めを服用すると症状が悪化する場合もあるので、下痢や腹痛がひどい場合は、医療機関を受診し適切な治療を受けて下さい。
 死亡例や重症例はまれですが、乳幼児や高齢者など抵抗力の弱い方では重症化する危険があります。また、感染後数週間してから手足・顔面の神経まひや呼吸困難を起こすギランバレー症候群を発症することがあります。
 主な原因食品は生の状態や加熱不足の鶏肉です。2015年の国内のカンピロバクター食中毒318件中92件は、鶏のレバー・ささみの刺し身や鶏肉のたたき・鳥わさ等の半生製品です。食鳥処理場では短時間に大量の鳥を処理するため、鳥の消化管にいたカンピロバクターが鶏肉に付着してしまうことを完全に防ぐことは難しいといわれています。
 東京都の調査では流通している鶏肉の4~6割にカンピロバクターが付着していました。だからといって、鶏肉を食べると危険というわけではありません。十分に加熱した鶏肉は安全です。生の状態や加熱不十分な鶏肉を食べる、生の鶏肉を扱った手指や、調理器具を介して他の食品にカンピロバクターが付着してしまいその食品を食べること等により食中毒が発生します。卵やチキンエキス・ブイヨンは問題ありません。
 また、牛や豚もカンピロバクターを保菌していることがあり、鶏肉以外の肉が全く問題ないというわけではありませんので、小さなお子さんや高齢者の方、抵抗力の弱い方は鶏肉以外の肉についても十分加熱してから食べたほうが良いでしょう。
(かきざき小児科アレルギー科クリニック院長 柿崎良樹)

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いつでも食中毒に注意

2019/11/16 土曜日

 

 腹痛、下痢、嘔吐(おうと)が急に出たことはありませんか。そんなときに疑われる病気の一つが食中毒です。食中毒は気温が高く蒸し暑い時期に多いというイメージがありますが、他の時期でも発生しています。厚労省統計によると、2018年の全国の発生件数(患者数)は年間1330件(1万7282人)ですが、そのうち1~4月、5~8月、9~12月にそれぞれ3分の1ずつみられています。このように食中毒は季節に関係なくいつでも注意が必要です。原因の9割は細菌とウイルスですが、6~9月は細菌、11~5月はウイルスによる食中毒が多く発生しています。これらの細菌やウイルスは、動物の腸管内や土壌・河川などに広く生息していることから、農畜産物や魚介類からこれらを完全に排除することは難しいといわれています。
 細菌による食中毒は年間467件、6633人あり、件数ではカンピロバクターが319件と最も多く、次いで腸管出血性大腸菌32件、ウェルシュ菌32件、ブドウ球菌26件、腸炎ビブリオ22件、サルモネラ菌18件と続きます。患者数でみると、ウェルシュ菌が2319人と最も多く、次いでカンピロバクター1995人、サルモネラ菌640人、腸管出血性大腸菌456人、ブドウ球菌405人、その他の病原性大腸菌404人、腸炎ビブリオ222人と続きます。
 ウイルスによる食中毒は、年間265件、8876人あり、そのほとんどがノロウイルスです。ノロウイルスの患者数は、全食中毒患者の約半数を占めます。
 寄生虫による食中毒は、そのほとんどがアニサキスで468件、478人です。アニサキスの患者は1件当たりおよそ1人です。
 原因食品は、全1330件中魚介類・魚介類加工品が440件と最も多く、次いで調理食品、肉、野菜、穀物、菓子、乳、卵とさまざまです。原因食品が特定できないものも211件あります。
 食中毒の発生した施設は、飲食店722件が最も多く半数以上です。次いで家庭でも163件発生しており、販売店106件、老人ホーム・保育所等40件、旅館31件、学校21件、病院5件です。発生施設が特定できないものが188件あります。
 次回から、主な食中毒の特徴と予防について解説します。
(かきざき小児科アレルギー科クリニック院長 柿﨑良樹)

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皮膚がんの治療

2019/11/9 土曜日

 

 皮膚がんの治療は、手術、薬物療法(抗がん剤、免疫療法、分子標的薬など)、放射線療法を単独あるいは組み合わせて行います。
 早期の皮膚がんであれば、手術で切除することで、良好な予後が期待できます。しかし、切除後に大きな皮膚欠損ができることがありますし、例えば鼻やまぶたのような部位では、単純に縫い合わせると変形が生じて、見た目にも機能的にも問題になることもあります。そのような場合、他部位の皮膚を欠損部に移植する「植皮」や、皮膚と周囲組織(脂肪や筋肉など)を一緒に移動して欠損をふさぐ「皮弁」などの手術を行います。リンパ節転移がある場合は、周りにあるリンパ節も根こそぎ切除するリンパ節郭清(かくせい)を行うこともあります。
 手術で取り切るのが難しい場合例えば身体の奥深くのリンパ節や内臓への転移がある場合は、薬物療法や放射線療法を行うことがあります。薬物療法で使う薬剤としては、抗がん剤の他、がんの増殖や転移に関わる分子だけを狙い撃ちにする分子標的薬や、患者さんの身体にもともと備わっている“がん細胞を排除しようとする力(腫瘍免疫)”を回復させる免疫チェックポイント阻害薬などの新薬が開発されています。皮膚がんの種類や患者さんの状態により使用可能な薬剤は異なり、副作用にも注意が必要ですが、治療成績の良い新薬が出てきたことは患者さんにとり福音となっています。
 このように皮膚がんにはいろいろな治療法がありますが、すべての患者さんに対して、一律に治療法を選択することはできません。皮膚がんの状態(皮膚がんの種類や進行具合)や患者さんの状態(年齢や持病、日常生活の状態)、患者さんの要望などを総合的に考え、患者さんと主治医とが十分に相談して選ぶことが大切です。
 今回まで4回にわたり、皮膚がんについて説明させていただきました。皮膚がんについて少しでも理解いただけましたら幸いです。
(弘前大学大学院医学研究科皮膚科学講座助教 六戸大樹)

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皮膚がんの診断

2019/11/2 土曜日

 

 皮膚科医は皮膚がんをどのように診断するのでしょうか。皮膚がんに限らず、皮膚の病気は体の表面に見えているため、その見た目が診断に重要であることは言うまでもありません。皮膚科医は、皮膚に起こった変化の経過に合わせ、発生部位、皮膚病変の形状や硬さ、色合い、場合によってはにおいなどの情報から、まさに五感をフル活用して診断を絞り込んでいきます。これは皮膚の腫瘍でも同じです。今回は皮膚がん診断で行われる検査について説明します。
 ダーモスコピーという、特殊な拡大鏡を用いて観察する検査があります。皮膚表面の特徴、メラニン色素の分布や濃さ、血管の形状などを詳しく評価し、見た目の臨床診断の正確さを高める検査です。皮膚がんの種類によっては、腫瘍の深さや転移の有無を確認する必要があるため、CT検査、PET-CT検査、MRI検査のような画像検査を行うこともあります。
 腫瘍の種類をしっかり特定する必要があるときは、病理組織検査を行います。これは、局所麻酔を施して、腫瘍の一部あるいは全体を切り取り(これを皮膚生検といいます)、顕微鏡で観察して診断する方法です。皮膚を顕微鏡で見ると、表皮、真皮と二層に分かれていて、さらに奥に脂肪組織があります。腫瘍が皮膚のどの層から出てきているのか、どのような細胞が、どのような増え方をしているのか、などの情報を総合して診断します。
 メラノーマや大きな皮膚がんの場合、リンパ節転移の有無を確認するため、センチネルリンパ節生検を行うことがあります。これは皮膚がんから一番最初にがん細胞がたどり着くリンパ節(センチネルリンパ節)を見つけ、そのリンパ節だけを摘出して転移があるかどうかを調べる方法で、早期のリンパ節転移を見つけることができます。
 以上のような検査を組み合わせて、皮膚がんの進行具合を評価し、治療計画を立てるのです。
(弘前大学大学院医学研究科皮膚科学講座助教 六戸大樹)

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皮膚がんにも種類がいろいろ

2019/10/26 土曜日

 

 「皮膚がん」といっても種類がいろいろありまして、それぞれ、発生しやすい部位や転移のしやすさなどの特徴が違います。今回は、皮膚がんの中でも、頻度の高い三つについて説明します。
 最も多い皮膚がんは、基底(きてい)細胞がんで、皮膚がん全体の約4分の1を占めます。基底細胞がんは鼻、まぶたなどの顔の中心部に発生しやすいという特徴があります。初めは、小さな黒っぽい丘疹(きゅうしん)ですが、ゆっくりと大きくなり、やがて出血しやすくなることもあります。リンパ節や内臓に転移することはめったにありませんが、放置すると周囲の組織を壊しながら大きくなってしまいます。
 2番目に多いのは、有棘(ゆうきょく)細胞がんで、このがんも顔に出やすいです。日光角化症という前癌病変(がんを発生する可能性のある状態)から発生することが多く、転移することもあります。日光角化症は、長年の紫外線の影響で皮膚の表面にカサカサとした赤みができるもので、その一部が盛り上がってきた場合は、有棘細胞がんの可能性があります。
 3番目はメラノーマというメラニン色素を作る細胞から出るがんで、「ホクロのがん」とも呼ばれます。日本人では手足にメラノーマが発生することが多く、これらの部位に不規則に広がる茶色いシミができた場合は注意が必要です。メラノーマは、腫瘍に厚みが出てきたり、表面に潰瘍ができると転移しやすくなります。
 いずれの皮膚がんも、早期に治療できれば予後は良好です。ただ、皮膚がんは高齢になるほど発生しやすくなりますが、中年以降の多くの人の顔には、良性の日光黒子(茶色のシミ)や脂漏性角化症(皮膚の老化や紫外線の影響で生じる良性腫瘍)も生じやすく、見た目では良性か悪性か区別が難しいこともあります。高齢になってから新たにできたシコリが、増大したり、出血するようになったりした時には、皮膚科専門医へ受診することをお勧めいたします。
(弘前大学大学院医学研究科皮膚科学講座助教 六戸大樹)

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