医療情報ほっと

 

B型肝炎の治療について

2020/1/11 土曜日

 

 今回は、B型肝炎の治療を中心にお話をさせていただきます。
 B型肝炎ウイルスは感染後に、肝細胞の中心の核に入り込み、安定した構造になります。これを元にウイルスが複製されます。この複製の途中を抑えるのが、抗ウイルス剤の核酸アナログ製剤です。また、急性感染の後にウイルスが排除された患者さんでも、核内にあるウイルスの情報は残っています。そのため、抗がん剤、免疫抑制剤の使用時にウイルスが再び活性化する可能性があるので、注意が必要です。
 B型肝炎ウイルスにはゲノタイプという遺伝子型があります。日本では、ゲノタイプCの頻度が高く、次にBが続きます。また、近年海外から持ち込まれたゲノタイプAが急性肝炎を中心に増加しています。ゲノタイプBやCは成人が感染しても、持続感染に移行する可能性は低いですが、ゲノタイプAは成人の感染でも、持続感染に至ることがあります。また、ゲノタイプCはゲノタイプBに比べ肝硬変や肝がんへの移行率が低いという特徴があります。青森県を含む東北地方は、ゲノタイプBが多く、悪性度の低いウイルスが多いことが知られています。
 B型肝炎の治療は、慢性肝炎の状態から行われます。治療には、インターフェロン製剤と、核酸アナログ製剤があります。インターフェロンは自分自身の免疫を活性化させウイルスを排除させる薬ですが、有効性が3割程と低いことや副作用が問題になります。一方、核酸アナログ製剤は、強力なウイルス抑制作用を持ちますが、原則的に長期投与が必要です。これらの薬剤も使用し、肝炎の活動性と、肝線維化進展を抑制することで、肝不全や肝がんの発症を防ぐことが目的となります。
 B型肝炎は、状態が落ち着いていても採血や画像検査を含めた、長期での医療機関の受診が必要な病気です。治療が必要ない方でも、定期的な医療機関の受診が必要です。
(弘前大学医学部附属病院消化器内科助教 飯野勢)

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B型肝炎について

2019/12/21 土曜日

 

 2回にわたってB型肝炎のお話をさせていただきます。B型肝炎はC型肝炎に比べ、肝硬変や肝がんの割合は低く、症状がない状態が長く続く疾患です。しかし、現在ではC型肝炎ウイルスは、内服治療によりほぼ排除できるのに対し、B型肝炎ウイルスは増殖の抑制はできますが、完全に排除することは難しく、長期にわたり定期的な医療機関の受診が必要となる疾患です。
 B型肝炎ウイルス感染が持続している人をキャリアといい、世界では約4億人、日本では約130万人がキャリアであると推定されています。B型肝炎ウイルスは血液や体液を介して感染します。免疫が未発達の幼児期までに感染すると、症状がなく持続感染となりますが、免疫の発達した成人が感染すると、多くは一過性の急性感染となり治癒します。現在のキャリアの方の多くは、出生時や幼児期での感染です。現在では、ウイルスが陽性の母親から生まれた子どもに対して免疫グロブリン投与とワクチン接種が行われています。また、幼児期の感染を防ぐために、2016年から予防を目的に0歳児を対象に全員にワクチンを接種する取り組みが行われています。これにより、幼少期での新たな感染はほぼ無くなると考えられています。
 幼少期にB型肝炎ウイルスに感染すると免疫が未発達のため、症状のない無症候性キャリアとなります。その後、思春期、成人期となるにつれ、免疫が発達し、ウイルスに感染した細胞を、自分の免疫が攻撃を行うようになり、肝炎がおこります。多くの方が、その後にウイルス量が低下した非活動性キャリアとなり、ウイルスが排除された回復期へと向かっていきます。しかし、1割ほどの方は肝炎が持続し慢性肝炎や肝硬変へ移行するといわれています。この状態になると肝がんの発生頻度が上昇するため、治療が必要となってきます。次回はB型肝炎の治療を中心にお話させていただきます。

(弘前大学医学部附属病院消化器内科助教 飯野勢)

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食中毒予防の六つのポイント

2019/12/14 土曜日

 

 食中毒は飲食店だけでなく家庭でも発生しており、家庭にも食中毒の危険が潜んでいます。食中毒の予防の三原則は「菌を付けない」「菌を増やさない」「菌をやっつける」です。
 この三原則を実践する上で、具体的な六つのポイントが厚労省から示されています。
 まず「買い物」の際、消費期限の確認、肉や魚などの生鮮食品は最後に買う、肉や魚の汁が他の食品に付かないようにビニール袋に入れる、寄り道しないですぐに帰る等です。
 次は「家庭での保存」です。冷蔵や冷凍の必要な食品は持ち帰ったら、すぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れる、肉や魚の汁が他の食品に付かないように容器やビニール袋に入れる、冷蔵庫は10度以下、冷凍庫はマイナス15度以下に保ち、冷気の循環が悪くならないように詰め過ぎないこと等です。
 三つ目は「下準備」です。調理の前に丁寧に手を洗うことが大切です。野菜は流水できれいに洗い、生の肉や魚の汁が果物・サラダ等の生で食べるものや調理が済んだものに付かないようにする。また、生の肉や魚を触ったら手を洗う、肉や魚に使用したまな板等の調理器具はその都度、洗浄後熱湯をかけて殺菌する、冷凍食品の解凍は冷蔵庫や電子レンジを利用して自然解凍は避ける、冷凍食品は使う分だけ解凍し、冷凍と解凍を繰り返さない等です。
 四つ目めは「調理」です。調理の前には手を洗う、肉や魚はもちろん、野菜も加熱して食べれば安全です。肉料理は、中心部までよく加熱すること(75度で1分以上)が大切です。
 五つ目は「食事」です。食べる前に手を洗う、作った料理は長時間室温で放置しない、冷蔵庫でも菌はゆっくり増殖するので早めに食べることが重要になります。
 六つ目は「残った食品」です。残った食品を扱う前にも手を洗う、温め直すときも十分に加熱する、時間がたち過ぎた物や怪しいと思った物は食べずに捨てる等です。
 家庭での食中毒を防ぐのは、食材を選び調理する私たち自身です。予防の基本を守ることによって、大部分の食中毒は防止できます。
(かきざき小児科アレルギー科クリニック院長 柿崎良樹)

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さまざまな食中毒

2019/12/7 土曜日

 

 ウェルシュ菌による食中毒は年間32件、2319人発生しており、細菌による食中毒の中で患者数は最多です。この菌は肉・魚・野菜などに広く付着しており、熱に強く煮沸しても死滅せず、常温で45度程度まで冷めると急激に増えることから、作り置きしたカレーやシチューなどの料理を大鍋で作った時に起きやすいといわれています。症状は腹痛と下痢で1~2日で回復します。
 一番の予防は、調理後すぐに食べることです。作り置きする場合は、常温で長時間放置せず、小分けし冷蔵庫や冷凍庫で10度以下に保存することがポイントです。容器に移し替える際に料理をよく混ぜて空気に触れさせるとより効果的です。
 ノロウイルスによる食中毒は年間256件、8475人で、患者数はすべての食中毒の中で最多です。手指や食品を介して感染し、腹痛、嘔吐(おうと)、下痢を引き起こします。健康な方は軽症ですが、子どもやお年寄りでは重症化することもあります。11月から5月まで多くみられますが、一年を通して発生しています。
 ノロウイルスに感染した食品取扱者から食品が汚染されることが多く、7割の事例で原因食品が特定できません。ほかの原因としては、ノロウイルスに汚染されたカキなどの二枚貝を生で食べることです。十分に加熱するとウイルスは死滅します。また、患者からの感染予防には手洗いと嘔吐物の適切な処理の徹底が大切です。
 寄生虫の一種であるアニサキスの食中毒は年間468件、478人で、件数はすべての食中毒の中で最多です。アニサキスは、長さ2~3センチ、幅0・5~1ミリの白い糸のように見えます。アニサキスが寄生しているサバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどを生で食べると、アニサキスが胃壁や腸壁に刺入して、激しい腹痛、嘔吐を引き起こします。
 予防には、まずは、新鮮な魚を選び、速やかに内臓を取り除き、内臓は生で食べない、身を目視で確認し、アニサキスを取り除くことです。冷凍(マイナス20度で24時間以上)、加熱(70度以上、または60度なら1分)が有効ですが、食酢、塩、しょうゆ、わさびでは死滅しません。

(かきざき小児科アレルギー科クリニック院長 柿﨑良樹)

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腸管出血性大腸菌による食中毒

2019/11/30 土曜日

 

 大腸菌には病気を起こすものから起こさないものまで多くの種類があります。その中で腸管出血性大腸菌O157、O111、O26等はベロ毒素を産生することにより強い症状を起こすものであり、細菌による食中毒の中でカンピロバクターに次いで多くみられます。健康な牛の約1割がこの菌を保有しているともいわれ、現段階では、菌を保有している牛の選別方法はありません。
 症状は激しい腹痛、水様性下痢、血便が特徴で、溶血性尿毒症症候群という病気や脳症を引き起こし重症化することがあります。感染者のうち10~15%が溶血性尿毒症症候群を発症し、1~5%が死亡するとされています。2011年4月の北陸地方の焼肉チェーン店での集団食中毒事件では、腸管出血性大腸菌O111が原因で、被害者181人のうち32人が重症、5人の死者を出しました。
 この被害者の96%がユッケ(生の牛肉)を食べていたことから、同年10月から食品衛生法に基づいて生食用牛肉の加工・調理基準が定められ、これに適合しない飲食店では生の牛肉の提供・販売ができなくなりました。適合する飲食店においても店内の見やすい場所に「一般的に食肉の生食は食中毒のリスクがあること」と「子供・高齢者・食中毒に対する抵抗力の弱い人は食肉の生食を控えること」を表示する必要があります。
 さらに、12年7月から牛レバーを生食用として提供・販売することが禁止されました。牛レバーの内部にいる腸管出血性大腸菌を死滅する有効な方法がないためです。牛レバーを焼いて食べる場合には必ず中心部まで75℃以上1分間以上加熱する必要があります。
 また、豚肉や豚レバーなどの内臓についても15年6月から生食用としての提供・販売が禁止されています。E型肝炎ウイルスに感染し重篤な肝障害を起こす可能性があり、カンピロバクターやサルモネラ菌による食中毒や寄生虫感染のリスクもあるためです。イノシシやシカなどのジビエも含めて、生では食べず、中心部まで十分加熱して食べましょう。
(かきざき小児科アレルギー科クリニック院長 柿崎良樹)

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