医療情報ほっと

 

顔面神経麻痺について

2021/4/24 土曜日

 

 顔面神経麻痺(まひ)とは顔を動かす筋肉の動きを支配する顔面神経に何らかのダメージが生じ、顔が歪(ゆが)んだり動かなくなる病気です。その原因には末梢性(耳性)と中枢性があり、90%以上は末梢性です。
 原因不明の場合も多いですが、ヘルペスウイルスや水痘帯状疱疹(ほうしん)ウイルスが原因となることがあります。
 症状は顔面麻痺の他に難聴、耳鳴り、めまい、耳の痛みや発疹、頭痛、味覚障害などです。
 検査には主に麻痺や神経の障害の程度を評価するものと傷害された部位を診断するものがあり、それらの検査により発症から1~2週間後には最終的な予後が予測可能です。
 治療は主に薬物治療や手術治療、理学療法などです。薬物療法はステロイド薬と抗ウイルス薬が主体になります。神経の変性を防止するためにできるだけ早期(可能なら発症3日以内、遅くとも2週間以内)に薬物投与を開始することが必要です。その他にはビタミン剤や循環改善薬を使用します。
 薬物治療で改善しない高度神経障害では、顔面神経減荷術という手術を行います。これは耳の奥にある顔面神経のまわりの骨を取り除いて浮腫(むくみ)や循環障害を軽くするものです。
 理学療法には温熱療法や用手マッサージなどがあります。麻痺の程度により開始時期が異なる治療もありますので注意が必要です。
 治癒率は適切な早期薬物治療がなされた場合には約75~95%です。顔面神経減荷術は薬物治療で完治が困難と判断された場合に行われ、発症2週間以内の早期に施行するほど高い効果が得られます。遅くとも発症2カ月までが適応です。しかしこの手術を行っても全ての方が完治するわけではありません。
 再発する頻度は少ないですが、再発を繰り返すごとに症状が悪化する傾向にあります。糖尿病は再発の危険因子であり、糖尿病の予防が再発防止に大切であると考えられています。
(あきた耳鼻咽喉科クリニック院長 秋田二朗)

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糖尿病と歯周病

2021/4/17 土曜日

 

 歯周病は、歯垢(プラーク)の中の細菌によって歯ぐきに炎症を引き起こし、やがては歯を支えている骨を溶かしていく病気のことで、結果的に歯を失う原因となります。厚生労働省の調査では、日本人の40歳以上の約8割がこの病気にかかっていると言われています。
 歯周病に慢性的にかかっていて、その原因となる細菌や産生する毒素などが歯ぐきの毛細血管を通じて全身に運ばれると、心臓病、脳卒中、糖尿病の悪化、低体重児出産などを引き起こす危険性を高めることが分かってきました(日本歯科医師会のホームページによる)。
 糖尿病と歯周病は、お互いに悪い影響を与え合う病気であることが分かっています。青森県の糖尿病死亡率、歯周病罹患(りかん)率はともに高いことから、令和2(2020)年4月から、県内の(内科等の)医療機関、歯科医療機関、薬局では糖尿病や歯周病の患者さんに、内科検査や歯科受診をお勧めしています。
 当院でも、糖尿病の患者さんに歯周病の予防や治療の大切さをお話ししており、「糖尿病連携手帳」をお渡ししています。この手帳には、歯科の先生に診察所見を記載していただくページがあります。歯科の先生が糖尿病の検査データを確認しながら診察し、結果を記載できるようになっています。
 当院に通院中の糖尿病患者さんの「糖尿病連携手帳」を調査してみました。総入れ歯の方々は除いていますが、2カ月間の血糖の平均値を示すHbA1c(ヘモグロビンA1c=赤血球の中にあるヘモグロビンにブドウ糖が結合したもの)が6%台、7%台、8%以上の3群に分けると、平均年齢は63~68歳で、歯周病の程度や現在歯の数には差がありませんでしたが、出血がある方はHbA1cが8%以上の群に多い傾向がありました。血糖コントロールが悪いと歯周病の出血症状が多いことが分かりました。
 歯周病が悪化すると、歯を失う原因になりますので、糖尿病の患者さんは、自覚症状を感じていなくても、ぜひ歯科を受診して、歯周病のチェックを受けていただきたいと思います。
(五日市内科医院院長 五日市敬)

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成年後見制度について

2021/4/10 土曜日

 

 唐突なお話ですが、皆さんは人生の最後の最後まで、誰の世話にもならずに過ごせると思いますか? ピンピンコロリを願うとしても、そうならなかった時にちゃんとお世話の当てがつくような仕組みがあれば、安心だと思います。その仕組みが成年後見制度です。
 認知症などで自分の判断能力が低下した時に、自分に代わってお世話の当てを付けてくれる(実際には、施設入所の契約やそれらに付随する金銭管理が主ですが)「後見人」を、裁判所も関わって決めるという制度です。
 皆さんの中には、老後を家族に任せるにも信用が置けない、という家庭もあると思います(例えば、金融機関ではそのような状況を警戒して「単なる代理人だとお金を下ろせない」といってお金の引き出しを断ることがあります。そのような時の正規のやり方が後見人制度です)。後見人には家族がなる場合もありますが、社会福祉士や弁護士など、その分野の良識のある人を選ぶこともできます。
 また、この分野の最近の話題として、高齢化の時代にあって、後見人のなり手が不足しているということがあります。他者の後見をするというのは、事例によっては面倒なこと(難しい契約の知識が必要だったり)もあったりするのですが、年を取って物忘れも見られ動けなくなってきた、といったありがちな事例の後見人を務められるような人材が不足しています。
 それに対しては、弘前市は「市民後見人」の養成に力を入れています。私も市民後見人の養成に関わっていますが、後見人をやってみるという経験は他者の人生に関わることであり、それは自分の人生を考える上でも、きっと厚みを増してくれるような経験だと思います。興味のある方は、ぜひ挑戦してみてください。
 後見人を決めたい、あるいは、市民後見人の制度に興味がある、という方は、どちらの場合でも、ヒロロ3階にある「弘前圏域権利擁護支援センター」で気軽に相談してみてください。
(聖康会病院精神科・心療内科医師 須藤武行)

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性暴力について

2021/4/3 土曜日

 

 世界的には女性の3人に1人は暴力を受けているとされていて、2017年WHOでは「性暴力とは、身体の統合性と性的自己決定権を侵害し、損害や苦痛を与え、人間としての尊厳を侵害する力の行使を指す。」としています。日本における内閣府の調査では、異性から無理やり性交された経験がある女性は7・8%、約13人に1人で、加害者は配偶者または元配偶者が約4分の1、交際相手または元交際相手が約4分の1で、これで合わせて半分以上です。全く知らない人は1割程度。また、親、養親、親の交際相手、兄弟、親戚等「性虐待」に該当しそうなものの合計は約10%です。しかし警察への届け出となると、面識なしが多く、被害届を出せない理由としては「どこに相談すればよいのか分からない」「最初に相談した相手から二次被害を受けた」「自分にも落ち度があったと思ってしまう(飲み会、風俗、家出…)」「加害者からの制裁や口止め」「学校や職場に知られたくない」特に加害者が親や教師・上司では社会的損失が大きかったり、夫にだけは知られたくないという状況にあったりします。しかし、緊急避妊、妊娠や中絶の相談、性感染症検査等の目的で医療機関を受診することは多いと思われ、われわれ産婦人科医の役割は大切だと思っています。性暴力・DVへの理解とジェンダー感覚は磨く必要があり、被害者支援に積極的に関与していくこととか、経験を蓄積していくこととか、われわれに求められているものはたくさんあります。
 現代は家族の形もさまざまです。法律上は、出産した者が母、懐胎したときの母の配偶者が父(それ以外は認知)です。しかし、生殖補助医療で卵子・精子の生物学連続性と親子関係が分離している場合もあります。また、DNA鑑定で生物学連続性を確認する手段もあります。特別養子縁組という制度もありますし、出生時の性と異なる性での婚姻もあります。
 「女性の自己決定権」「女性の人権を守ること」を産婦人科医として大切にしていきたいと思います。
(弘前市医師会理事 健生病院副院長 斎藤美貴)

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「母体保護法」の現在の動き

2021/3/27 土曜日

 

 母体保護法そのものについては前回書きましたが、母体保護法は、本来母性を守るための法律です。「性暴力」による妊娠の場合は、第14条第1項第2号「暴行若しくは脅迫によって又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの」により、人工妊娠中絶を認めています。人工妊娠中絶に際しては医療機関が「同意書」を求め、この「同意書」についても規定があり、「母体保護法による不妊手術または人工妊娠中絶を実施するには、すべての場合に本人の同意と配偶者の同意を得なければならない」となっています。
 2020年夏、犯罪被害者を支援する弁護士らにより一部の医療機関で、性暴力被害者の中絶を行う際に「加害者の同意」を求める実態が明らかになりました。日本医師会に適切な対応を求める要望書が提出され、20年8月24日に日本医師会から厚生労働省に対して疑義が行われ、8月28日には厚生労働省は日本医師会の照会に回答する形で「母体保護法第14条第1項第2号は、強制性交の加害者の同意を求める趣旨ではない」と見解を示しました。これに伴い厚生労働省は10月20日、母体保護法の施行に関する通達「母体保護法の施行について」を24年ぶりに改正しました。
 そもそも日本では1907年の刑法に堕胎罪というものがあり、48年の優生保護法とその流れを受けた95年の母体保護法により、妊娠した女性が、女性の意志だけでその後の選択ができない状態にあります。母体保護法は配偶者との関係が安定していることが前提となっていますが、すでに破綻している状態で強いるのは人権侵害です。「法は不可能を強いない」と弁護士の方が言っていましたが、その通りですよね。
 私は人工妊娠中絶は女性の権利だと思っていますし、今回のことは女性の人権を守ろうとした弁護士さんたちの行動によるもので、とても力強く頼もしくうれしく感じました。
(弘前市医師会理事 健生病院副院長 斎藤美貴)

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