医療情報ほっと

 

ストレスによる胃腸障害

2021/5/29 土曜日

 

 読者の中には、胃の痛み、吐き気、嘔吐(おうと)、腸の痛み、下痢、便秘などを経験された方が多数いらっしゃると思います。その時は、胃潰瘍や胃がん、大腸がんを心配されて病院を受診されたでしょう。病院では、内視鏡検査、超音波検査、場合によってはCT検査などが行われて、病気の診断がなされたと思います。しかし、検査では異常が見つからなかった経験はないでしょうか? 症状があるのに、検査で異常がないのが不思議だと思われたかもしれませんが、珍しいことではなく、日常よくみられることなのです。
 検査で異常がない場合には、機能的疾患(内臓の働きが悪い病気)をまず考えます。この場合は、胃酸を抑えたり、胃腸の動きを調整したりする薬を十分な量試してみます。大部分の方は、薬が効いて良くなります。しかし、効果があまりみられない方がある程度いらっしゃいます。
 この場合には、ストレスが原因ではないかと疑うことになります。人間はストレスがあると、不安や緊張などを感じることにより、脳を介してホルモンや自律神経の調節異常を引き起こします。このことにより、胃腸の働きが乱れたり、内臓知覚(胃腸の感覚)が過敏になったりします。これが、胃腸のさまざまな症状につながります。そして、胃腸の症状が良くならないことが、さらに自分にとってストレスになるという悪循環を引き起こします。
 このようにストレスが原因で胃腸の症状を引き起こしている場合は、内臓だけでなく、ストレスに対しても治療のアプローチをしなければ、症状が良くならないものです。つまり、胃腸の薬の他に抗不安薬(精神安定剤)を併用したり、場合によっては、抗うつ薬を併用したりすることもあります。その結果、症状が良くなれば薬が不要になるので心配は要りません。また、ストレスが原因の場合には、睡眠の異常や体の疲れを感じることが多いので、気になった方はかかりつけ医に相談してみてください。
(弘前市医師会理事 消化器内科中畑クリニック院長 中畑元)

∆ページの先頭へ

紛瘤について

2021/5/22 土曜日

 

 「出物腫れ物所嫌わず」の出物の話です。
 「背中の出物が急に大きくなりました」「急に大きくなって痛くなりました」などと訴えて受診してくる患者さんがいます。炎症性粉瘤(ふんりゅう)(アテローマ)です。粉瘤は、皮下に生じた良性の嚢胞(のうほう)性病変です。嚢胞ができる原因の一部はウイルス感染や小さな傷と考えられていますが定かではありません。
 新陳代謝によって嚢胞壁から老廃物が剥(は)がれ落ち、内部にたまります。経過とともに次第に増大します。皮膚の表面には開口部(臍(へそ))を持っています。この臍は通常固化した老廃物で塞がれていて、老廃物は体外に排泄されずに内部にたまっていきます。臍の隙間から細菌が侵入すると、化膿が生じて急速に大きくなり、赤く腫れあがり、悪臭を放ちます。こうなってしまうと、治療の定石は先ず切開・排膿し、いったん炎症が治まってから改めて切除・縫(ほうごう)合します。
 感染を伴っていない場合には最初から摘出・縫合ができますので、赤く腫れていない時期に摘出手術する方が早く治ります。小さなものでは臍の周りを小さくくり貫く「くり貫き法」を行う場合があります。くり貫いた部分は縫合しないで済みますが、治癒まで期間はさまざまです。治療法の選択は粉瘤の状態を観察して行います。
 「炎症の原因の多くは細菌感染ではない」という報告があります。押されるなどして圧迫された粉瘤の嚢胞が皮下で破裂して角質や皮脂などの内容物がまき散らされた結果、炎症反応が起こるためといわれています。圧迫が生じやすい臀部や背中の粉瘤が急に大きくなる理由の説明ができそうです。
 粉瘤の自然治癒は期待できません。「出物」は、炎症性に伸展する前に外科治療をすることをお勧めします。巨大なものでなければ、局所麻酔による外来治療が可能です。
(弘前市医師会理事城東クリニック院長 遠山茂)

∆ページの先頭へ

前庭神経炎

2021/5/15 土曜日

 

 前庭(ぜんてい)神経は、耳と脳をつなぐ神経で、三半規管からの情報を脳幹に伝える役割をしており、バランス感覚を保つ神経と言えます。この神経が突然マヒする病気があり、前庭神経炎と呼ばれています。ちょうど飛行中のジェット機の片側のエンジンが急に止まってしまった状態と似ています。
 何の前ぶれもなく、ぐるぐる回る激しいめまいが突然始まり、寝ていても起きていても収まりません。患者さんはパニックに陥り、救急車を呼ぶこともしばしばです。嘔吐(おうと)や冷汗を伴うことが多いので、脳卒中と勘違いされることがありますが、意識はしっかりしており、手足がマヒしたりすることはありません。MRIやCTを撮っても異常は認められません。また難聴や耳鳴りはないので最初に耳鼻咽喉科を受診するケースは少なく、案外正しく診断されていません。男女差はなく、成人であればどの年代にも起こり得ます。
 原因ははっきりしていませんが、急性の発症ですのでウイルス感染が疑われています。診断には、フレンツェル眼鏡という特殊な装置を用いて目の動きを観察する検査が必要です。一定の方向に律動的な目の異常な動きが見られますが(これを自発眼振といいます)、この判定は熟練した専門医でないとできません。温度眼振検査といって、耳の中に冷たい水を注入し、三半規管を刺激する検査も必要です。
 治療としてステロイドホルモンが投与されることがありますが、残念ながら有効性に関する確実なエビデンス(根拠)はありません。激しいめまいを抑える「抗めまい薬」や、神経への血流を良くする「内耳循環改善薬」、不安感を和らげる「抗不安薬」などが用いられます。安静が大事で、通常は小脳の働きによって左右のバランスが回復(代償機能と呼ばれます)していきますが、治るまでの期間は個人差が大きく、数週間で治る人もいれば、1年以上たってもフラフラ感が残ってしまう場合もあります。
(一條耳鼻咽喉科クリニック院長 一條宏明)

∆ページの先頭へ

医学的小知識

2021/5/8 土曜日

 

 私は数年前に医療の現場から引退しましたので、学問的な話は現役の先生方にお願いするとして、今回は日常的に遭遇するありふれた医学的常識の話を2、3書いてみたいと思います。
 ▽粉薬の飲み方について
 粉薬は苦手という方は結構いらっしゃいます。皆さんは粉薬を水で飲む時に、薬を先に口に入れますか? 水を先に入れますか? 粉薬が飲めないという人は、大抵薬を先に口に入れているようです。粉薬を先に口に入れると、口の中でネチャネチャとねばりついたり、ひどい時にはむせて鼻から粉薬が吹き出したりする事態になったりします。
 基本的に粉薬を飲む時には、先に(うがいをする程度の量の)水を口に含み、少し上向きの状態で口を開いて、その水の上に薬を乗せるような気持ちで薬を入れ、一気に水と一緒に飲み込みます(顔はこの時、やや下向き加減が良いでしょう)。それでも少し薬が口の中に残ったら、少し多めの水で口をすすぐようにします。錠剤やカプセル等の場合は薬を先に、水は後からの方が良いでしょう。
 ▽指の止血について
 何かの折に誤って指を切って、出血することがあります。指や頭、顔等では思ったよりも派手に出血しますので、みんな慌ててしまいます。この時、血を止めようと、よく指の根元をきつく縛ってしまう方がおりますが、これはやめた方がよろしいでしょう。中途半端な縛り方では静脈だけが圧迫されて、返って出血が多くなります。強過ぎると、長時間では、神経の障害や指の壊死(えし)になることが考えられます。
 指等の止血では、きれいなガーゼか布で直接傷の上から強めにしばらく(3、4分)圧迫することで、たとえ指の動脈からの出血でも、止血できますので安心してください。ただし「血が止まっただろうか?」と、途中で圧迫を緩めたりしないようにしてください。
(神整形外科前院長 神裕昭)

∆ページの先頭へ

大人のアトピー性皮膚炎

2021/5/1 土曜日

 

 アトピー性皮膚炎は顔を含めて全身の皮膚が赤くなり、強いかゆみが慢性的に続く皮膚病です。ところで皆さんは、アトピー性皮膚炎は子どもの病気だと思っていませんか。実は成人でもとても多く、20~30歳代では全人口の9%がアトピーだとされています。

 成人のアトピー性皮膚炎では、夏の汗、冬場の乾燥などの誘因で、皮膚は真っ赤に腫れあがり、中にはかゆみのため夜も睡眠が十分に取れないなどで、仕事や日常生活に支障を来すことも多くあります。

 成人のアトピー性皮膚炎は進学、就職、結婚、出産、生活環境の変化など、人生の節目節目に良くなったり、悪くなったりを繰り返す傾向ですが、ちなみに当院のアトピー性皮膚炎の最高齢は71歳の方です。

 さて、成人アトピー性皮膚炎の治療ですが、ステロイドやタクロリムス製剤外用、さらに十分な保湿、そして適切な抗ヒスタミン薬の内服を症状の程度や生活スタイルに合わせて行います。これが標準治療になるわけですが、大多数の方はこれでコントロールできるようになり、通常の日常生活を送ることができるようになります。

 しかし、この標準治療ではうまくいかない方も少なからずいます。従来は免疫抑制剤のシクロスポリン内服があり、これはかゆみにはよく効きます。さらに近年、デュピルマブという生物学的製剤が登場しました。これは2週間に1回筋肉注射するというものなのですが、効果は劇的といってもいいほどで、かゆみが大幅に減少し、例えば毎年夏の汗による悪化で苦労していた方々が、注射導入後は異口同音に「今回の夏は快適に過ごせた」とおっしゃるくらいです。

 ただ難点は注射薬が高価なため高額医療となることですが、助成制度もあります。成人アトピー性皮膚炎は症状に大きな幅がありますが、標準治療で十分なのか、それ以上の治療が必要なのかをよく見極めて、生活スタイル等も考慮してそれぞれに適した治療法を選択することが大切です。
(青山のむら皮膚科院長 野村和夫)

∆ページの先頭へ

Page: 1 2 3 4 5 6 7 8 ... 23

当サイトでは一部、Adobe Flash・PDFファイルを使用しております。閲覧にはAdobe Flash Player・Adobe Acrobat Readerが必要です。最新のプラグインはアドビ社のサイトより無料でダウンロード可能です。

  • Adobe Flash Player ダウンロードセンター
  • Adobe - Adobe Reader ダウンロード