医療情報ほっと

 

乾癬性関節炎(PsA)

2020/3/21 土曜日

 

 乾癬(かんせん)性関節炎(PsA)は炎症性角化症である乾癬に、腫れや痛みといった関節症状を合併した慢性炎症性疾患です。その頻度は乾癬患者の10~15%に及びます。進行すると不可逆性の関節の変形や破壊をもたらし患者のQOLを損なうため、早期の診断と治療が必要です。原因は明らかではなく、遺伝性の素因と環境素因が関与していると考えられています。
 PsAは脊椎関節炎の1亜型と捉えられています。その病態は炎症が腱や靭帯(じんたい)が骨に付着する部位に生じる付着部炎である点が特徴です。関節リウマチの関節症状の主体は関節内の滑膜であり、PsAが付着部炎である点から、両者の病態に大きな相違があります。関節リウマチではほとんど見られない脊椎炎や仙腸関節病変、炎症性腸疾患やぶどう膜炎の合併がPsAでみられるのも、病態の違いから説明できます。
 PsAの関節病変の範囲、程度、経過は非常に多様です。侵される関節も指趾(しし)といった末梢(まっしょう)関節から、膝、肩そして脊柱まで幅広く、あらゆる関節が罹患(りかん)します。また、症状が再燃と軽快を繰り返す場合がある一方、関節破壊が急速に進行して不可逆的な障害に陥る場合もあります。
 その多様性から診断に苦慮する場合が少なくありませんが安静で症状が悪化する、朝に関節のこわばりが顕著で運動によって症状が軽快する、また夜間疼痛(とうつう)で目覚める、という訴えがPsAではみられることが多いと言われています。
 頭皮、肘、膝など皮診の好発部位や、爪症状にも留意して、踵部、膝周囲、骨盤周囲などの付着部炎による症状、さらに指全体が腫脹(しゅちょう)する指趾炎の存在も含め、関節症状を総合的に評価することがPsAの早期診断に重要です。末梢関節では、罹患関節が疼痛とともに腫脹して発赤や熱感をみることもあります。症状が出現してから診断までの期間が遅れると、予後が悪くなるとも言われております。
(松木皮膚科医院院長 松木哲文)

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「てんかん」について

2020/3/14 土曜日

 

 「てんかん」という言葉から、どんなことをイメージしますでしょうか。テレビや新聞で、「運転中に意識を失って」と報道されると、てんかんを連想される方がいらっしゃると思いますが、突然意識を失う病気は、てんかん以外に、脳血管障害、不整脈、心血管障害、低血糖と、いろいろあります。
 また、てんかん患者さんは日常生活が制限されてしまうのでは、というイメージを持たれる方もいらっしゃると思いますが、多くのてんかんの患者さんは、発作の時以外は症状が無く、普通の生活が可能です。
 そして、てんかんは珍しい病気と思われがちですが、その頻度は比較的多く、1年間に100人に1人が発症する病気であり、日本国内では、100万人のてんかん患者さんがいると推測されています。
 それでは、てんかんとは、どんな病気なのでしょうか。そのメカニズムは、脳の神経細胞に過剰な興奮が生じることで始まります。その興奮が一定の閾値(いきち)を超えて広がると、手足や顔が、自分の意思と無関係に動き、けいれんを生じます。てんかんの発作は、けいれんだけではなく、ぼーっとして反応が鈍くなる発作や、体の一部がビクンとなる発作もあります。
 最後に、てんかん発作が起きた場合の対応方法についてお話します。まず安全を確保します。具体的には火器、鋭利なものを遠ざけます。そして、できれば体を横に向けて寝かせて、呼吸が戻るのを待ちます。「発作中に舌を噛(か)むのではないか」と心配される声を聞くことがありますが、口の中に物を入れた刺激で嘔吐(おうと)を誘発し、窒息の原因になるので、指やハンカチなどを口に入れてはいけません。
 通常、発作は1~2分でおさまるのですが、5分以上続く場合や、おさまった後、意識が回復しないまま、再度発作を起こす場合は、救急搬送が必要となります。
 本日のお話を含め、「てんかん」について、正しく知ってもらうことが、わが国のてんかん診療の向上につながると思います。
(弘前大学医学部附属病院周産母子センター助手 山本達也)

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熱性けいれんについて

2020/3/7 土曜日

 

 熱性けいれんは、小児科で最も多いけいれん性疾患です。生後6カ月から5歳くらいまでにみられ、38度以上の発熱に伴ってけいれんが起こります。高熱時、特に突発性発疹やインフルエンザにかかっている時に起こしやすい傾向があります。5歳までの小児についての国内調査では、約20人に1人程度での発症頻度と報告されています。
 熱性けいれんを起こすと、突然反応が無くなり、唇の色が黒くなり、顔色不良となることから、救急要請されることが多いと思われます。通常は5分以内に治まり、病院に着く頃には、けいれんが治まっていることが多いのですが、まれに続いていることがあります。その場合、小児科医や救急医は、抗けいれん剤による治療を直ちに行います。
 初めて熱性けいれんを起こした場合、今後の発熱の際に、再度熱性けいれんを起こすかどうか気になるところですが、一般的には、熱性けいれんの再発率は15~30%との報告があります。これまでの研究では、(1)両親いずれかが、幼少時に熱性けいれんを起こしたことがある場合(2)1歳未満の発症(3)発熱から1時間以内のけいれん(4)39度以下でのけいれん―のいずれかの項目を満たす場合、熱性けいれんを再度起こす可能性が高くなることが知られています。
 熱性けいれんを予防する治療として、抗けいれん剤の座薬があります。その適応基準は(1)上記の再発率の高い項目を満たす熱性けいれんを2回以上起こした場合(2)15分以上続く熱性けいれんを1回でも起こした場合―に推奨されています。
 お子さまが熱性けいれんを起こした場合、非常に心配になると思われます。一方で、上記のような診療ガイドラインが定められており、私たち小児科医は的確に対応できますので、少しでも安心いただければと思います。次回は、熱がない時にも、けいれんや発作を起こすことがある「てんかん」についてお話したいと思います。
(弘前大学医学部附属病院周産母子センター助手 山本達也)

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脂質異常症今昔

2020/2/29 土曜日

 

 脂質異常症は冠動脈硬化の危険因子です。つまり、コレステロールや中性脂肪などの脂質に異常があると、心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患が起こりやすいということです。
 生活習慣を改善してもLDLの数値が160mg/dl(ミリグラム・パー・デシリットル)以上の場合は薬物治療を考えます。LDLとはLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)の略語です。日本人のコホート研究でもLDLの上昇に伴い冠動脈疾患の発症や死亡に対するハザード比(基準に対して起こる危険率)は上昇しています。LDL80未満の群を1とした場合、80~90の群では1・4倍、100~119では1・7倍、120~139では2・2倍、140以上では2・8倍とリスクが増加することが示されました。これらの事実からガイドラインでは治療の基準値をLDL140以上としました。境界域として120~139を設定しています。
 さらに、冠動脈疾患を起こしたことがある人が繰り返さない(二次予防といいます)ためにはLDLを100以下としています。そして、急性冠症候群や糖尿病などを合併する場合はLDLを70以下にすることを推奨してます。福岡山王病院循環器センター長の横井宏佳氏は急性冠症候群にエボロクマブを注射することによりLDLを40以下まで減少させた結果、冠動脈のプラーグが劇的に改善したと研究会で発表していました。エボロクマブは開業医では使いにくいものですがLDLを低下させることは動脈硬化の改善に意義深いと思われます。少なくとも二次予防が必要な人や肥満と関係するメタボリック症候群、糖尿病を合併する人などは、LDLを40以下とは言いませんが、70以下を目指すべきだと思っています。
 私事で恐縮ですが、LDLが144~163で糖尿病も境界域なのでコレステロールの低下薬であるスタチン系の薬物内服を開始し、今は110です。年齢が65歳を越えると危険因子となりますので、脂質異常の方は最寄りの医療機関に相談して下さい。
(金子内科クリニック院長 金子宏彦)

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善玉コレステロールって何者?

2020/2/22 土曜日

 

 皆さまも一度は「善玉コレステロール」という言葉をお聞きになったことがあると思いますが、具体的にはHDLコレステロールと呼ばれるものです。HDLコレステロールにつきましては、以前からその量が多ければ多いほど血管を詰まらせにくいということが分かっておりました。そのためHDLコレステロールの量を増やす薬の研究や開発が進められましたが、いろいろな研究の結果から、ただ単にHDLコレステロールの量を増やすだけでは効果は不十分であることが分かりました。そこでHDLがもつ機能が重要なのではないかと考えられるようになり、HDLの機能に着目した研究が進められました。その結果、HDLにはさまざまな抗動脈硬化作用があることが分かってきました。
 前回お話ししました「悪玉コレステロール」は血管の壁に蓄積して最終的には血管を詰まらせてしまう厄介なコレステロールですが、HDLは逆に血管にたまってしまった悪玉コレステロールを血管壁から引き抜いて肝臓へ戻してくれるという“お掃除屋さん”のような働きをしてくることが分かりました。私たちの普段の生活でもゴミはたくさんたまってしまいますが、ゴミ収集車が来てゴミを回収してくれるおかげで快適に過ごすことができます。それと同じようなことが血管壁でもHDLによって行われています。
 このHDLが血管壁からコレステロールを引き抜く性質は「Efflux能(エフラックスのう)」と呼ばれており、近年の研究ではこのEfflux能が高いほど動脈硬化が起きにくいことが分かっています。そのためEfflux能を改善させることができれば動脈硬化を治すことができるかもしれないと期待されています。
 残念ながら現時点でEfflux能を改善させる治療法は確立されておりませんが、世界中で研究が進められておりますので、今後の研究成果に注目していきたいと思います。
(弘前大学大学院医学研究科内分泌代謝内科学講座助教 村上洋)

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