医療情報ほっと

 

ストレスと過敏性腸症候群

2022/4/23 土曜日

 

 桜咲く春は楽しみな行事がある一方、進学、就職、転職の時期で、ストレスが多くなる季節でもあります。人間の心と体は連動しており、ストレスで自律神経に影響し、さまざまな臓器に症状が出ますが、胃や腸は最も影響を受けやすい部分と言えるでしょう。ストレスがかかった直後から、腹痛、下痢、便秘などの症状が出ることは多くの方が経験していると思いますが、通常はいつの間にか治っていることがほとんどです。しかし長期間、同様な症状に苦しむ方もおられます。
 過敏性腸症候群とはストレスやさまざまな原因が引き金となって、通常の検査では明らかな異常が認められないにもかかわらず、慢性的に長期間、腹痛、下痢、便秘、腹部膨満などの症状で日常生活に支障を来す症候群です。
 診断はまず胃や腸の粘膜に炎症や腫瘍がないことを内視鏡で確認したり、血液、尿便などの検査で全身性の病気がないことを確認したりします。
 治療の基本は生活習慣の見直しで、バランスの良い食事を規則正しく摂(と)り、睡眠時間を確保し、トイレタイムにも余裕を持つことが大事です。各自スマートフォンを持ち、しかもコロナ禍でパソコンに向き合う時間が長く、自分の体のために時間を使うことが難しい時代となりましたが、時間を区切ってメディアを遠ざける覚悟も必要です。一人ひとり、生活環境や背景、症状が異なるので、自分だけで悩まず、伴走者としてかかりつけ医に相談しましょう。
 薬物治療としては、症状に合わせて、腹痛を和らげたり、下痢を抑えたり、便を軟らかくしたり、腸の運動を調整したり、腸内細菌を整えたりするお薬が処方されます。また、ストレスや不安が強い場合は迷わず、SOSのサインを他の誰にでもよいので出しましょう。
 過敏性腸症候群の経過中、胃酸が食道に逆流して胸やけしたり、胃の痛みや胃もたれ、腸の炎症といった別の病気を併発したりすることもあるので注意が必要です。
(城西しおたに内科小児科院長 塩谷一春)

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肝機能検査

2022/4/16 土曜日

 

 肝機能検査は大別して三つのグループに分けられます。
 最初は肝細胞が壊れた時に血液中に放出される一群の酵素です。逸脱酵素と呼ばれAST、ALT、LDHが該当します。次は胆管系の内圧が上昇した場合に高値になる酵素でALP、γ-GTPが相当します。
 最後は肝臓の“働き”を反映する検査です。肝臓の重要な“働き”にはたんぱく質合成と不要物の代謝・排せつがあります。たんぱく質合成の指標としてアルブミンと血液凝固たんぱくがあります。代謝・排せつの場合はビリルビンが該当します。
 AST、ALT、LDHの上昇は肝細胞の破壊を反映します。ただし、ALTは比較的肝細胞に特異的ですがLDHはほぼすべての細胞に、ASTは筋細胞にも含まれます。筋肉損傷でもASTとLDHは上昇します。ALPとγ-GTPは胆汁うっ滞の場合、両者とも上昇します。ALPは数種類の酵素の集合体で骨新生時にも上昇します。したがってALPは骨転移などの骨病変時にも上昇します。γ-GTPは薬物代謝のために誘導される側面もあります。飲酒での上昇はこのためです。
 血中ビリルビンが上昇した状態が黄疸です。大別して肝細胞自体の障害によるビリルビンの胆汁への排せつ障害に起因する「肝実質性黄疸」と胆道系の通過障害による「閉塞(へいそく)性黄疸」があります。
 アルブミンの血中半減期は2~3週間であり、肝硬変など慢性の肝機能不全の指標になります。劇症肝炎などの急性肝不全の場合には半減期が数時間の血液凝固たんぱくの検査であるPT(プロトロンビン時間)が指標になります。生命予後に関しては肝臓の“働き”の指標であるアルブミンやビリルビンなどが最も重要です。
 AST、ALTなどの逸脱酵素の上昇が高度でも、凝固因子などが安定していれば一安心です。健診では肝機能検査としてAST、ALT、γ-GTPがよく用いられます。ASTは筋障害でも上昇するので健診の前には筋肉トレーニングなど筋肉負荷は避けたほうが無難です。
(大町内科クリニック院長 對馬健一)

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HPVワクチンの積極的勧奨再開に向けて

2022/4/9 土曜日

 

 新しく処方する薬の説明や手術などの治療を説明する際に、まず最初に「先生、副作用はなんですか」と尋ねられることが多くあります。
 医師としては、この薬を飲めば楽になりますよ、とか、この治療で1カ月後には改善しますよ、とかの治療効果がまずあって、そのために起きる可能性のある副作用を説明するのが通常です。
 なので、副作用から質問が出ることは非常に残念に思います。薬剤や手術などによる治療効果を期待して説明しているのに、なんで副作用から説明が必要なのだろうと思うのです。
 日本にはキノホルムによるスモン薬害やサリドマイド薬害事件、血液製剤によるHIV訴訟やC型肝炎訴訟などの歴史があります。どうしても、副作用や副反応を心配する背景があるものと思います。医療関係者への信頼度が低いのだと思います。
 薬剤や手術などの治療行為で期待される効果を「主作用」といい、治療効果以外の作用で体に望ましくない作用を「副作用」といいます。「副反応」はワクチンを使用した際の用語で、発熱・腫脹(しゅちょう)(腫れ上がること)・硬結(こうけつ)(硬くなること)などが挙げられます。残念ながら全ての治療行為には少なからず副作用、副反応が伴います。これが社会的にも個人的にも受け入れられるようになれば、治療行為として成り立つことになります。
 HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)に対して積極的勧奨が4月から再開されました。これまで報道された副反応のために接種を控えてしまった世代にもキャッチアップ接種として認められ、接種の機会が設けられることが決まりました。
 現在、全世界的にも、国内でも、そしてこの青森県でも、HPVワクチンを受けた世代での子宮腟部での前癌(がん)病変(がんになる前の状態)の発症率の低下が確認されています。将来的には子宮頸がんの発癌予防効果は確実になるでしょう。
 受けられなかった世代を含めて、HPVワクチンを接種しましょう。子宮頸がんの発癌予防効果は確実にあります。
 ただし、筋肉注射による痛み・発熱・倦怠(けんたい)感などの副反応はみられます。
 弘前市医師会は、HPVワクチン接種を積極的に支援していきます。
(弘前市医師会理事婦人科さかもとともみクリニック院長 坂本知巳)

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自律神経失調症って?

2022/4/2 土曜日

 

 数年前、整形外科の高名な教授が「腰痛を訴える患者さんの80%以上がX線検査等で異常がなく、安易に手術すべきでない」という発表があり衝撃を受けました。
 私たちの外来でも、腹痛、頭痛、胸部痛などで来院する患者さんのうち、少なくとも70%以上に身体的な異常は発見されません。それらのほとんどは自律神経の乱れによるものと考えられます。
 A子さんは60歳、最近身体がだるく、食欲もなく、疲れやすくなりました。彼女は夫と2人暮らしですが、昨春彼は定年となり自宅にいることが多くなりました。三度、三度の食事の準備に気を使い、いつも一緒にいるため気が休まらず疲れ果ててしまいました。彼女は気疲れ、疲労により抑うつ状態になったのです。お互いに自分の時間を持つようにし、家事を協力してもらい、抗うつ薬の服用により徐々に改善しました。
 本来、自律神経には交感神経と副交感神経があります。前者は活動している時、興奮した時に働く神経で、後者はリラックスした時に作用します。この二つの神経のバランスが乱れると体調が崩れ、さまざまな身体的、心理的な症状が表れます。これがいわゆる自律神経失調症です。
 この疾患は治療的に大きく分けると、不安・緊張により発症するタイプと過労等によるうつ状態で起きるタイプがあります。これらのタイプを正しく診断して治療すれば改善することが多いのです。
 何も異常がないと診断されても、良くならず悩んでいる患者さんの中に、この疾患が隠れていることがあります。
 いくら医療が進歩しても、病気は身体面の訴えにのみとらわれず、心身両面へのアプローチが必要なことを、今更ながらあえて強調したいと思います。
(相馬信内科クリニック院長 相馬信)

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AIと医療

2022/3/26 土曜日

 

 マイナンバーカードで病院受診ができるようになりました。小児の定期健診や予防注射にも応用できれば、それが普及の突破口になると思います。
 インターネットで症状や希望を記入して受診予約をする人が増えています。間もなくAIが大まかな診断や治療コース、そして重要なことですが、決して見逃してはいけないことなどを教えてくれると思います。すでに多くの診断技術にAIが使われています。多元計算解剖学(MCA)というものができました。それは現時点の人体コンピュータグラフィックスだけではなく、時間(胎児期、成人期、老人期、死後)、空間(ミクロ、マクロ構造)、機能(内分泌、代謝、生理)、病理(正常、異常)の軸を取り込んだマップです。AIは論理的に身体の異常をすくい上げてくれます。
 ロボット支援手術は弘前大学でも活発に行われています。先日は消化器外科とむつ総合病院を結ぶ実証実験が成功裏に終了しました。この遠隔手術(リンドバーグ手術)が地域活性化に役立つと考えられます。一番のメリットは患者さんが都会まで行かなくても良いことです。2番目は若手医師が地方の病院にいても、ロボット手術を間近に見られて、そして参加できることです。若手医師が地方病院にいても最先端の医学を学びつつ、喜んで勤務してくれます。
 医療がしっかりすれば、子育て世代も安心して暮らし、地域格差が解消していくはずです。設備投資にお金が掛かりますが、それは全国の自治体がお金を出し合って、毎年くじ引きあるいは入札をして順番を決める、そんな昔からの仕組みで解決しないでしょうか? 最初に当たった自治体はラッキーですが、順番待ちをしても不利とも言い切れません。
 安価な国産ロボットも開発されつつあります。政治主導の経済特区とは別に、地方はふるさと納税とか頼母子講とか、さまざまお金が回る仕組みを考えて、住む人の活力を有効に使い、若い世代の住みよいところに発展してほしいものだと考えております。
(たかはし内科胃腸科小児科院長 高橋修一)

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