医療情報ほっと

 

予防接種に思う

2021/7/3 土曜日

 

 日本は長らく予防接種後進国と呼ばれていました。しかしここ十数年の間に本邦で導入された新しいワクチンは10種類を超え、ようやく世界の標準に近づいてきました。昨年10月から長年要望していたロタウイルス感染症のワクチンが世界の中で100番目くらいでようやく定期接種になりました。
 その前の2016年10月からは、これも待ちに待ったB型肝炎の予防接種が定期接種になりました。ここで出てくる定期接種という言葉は一般の方には聞き慣れないものかと思います。国の予防接種法で規定され、公費負担で接種できるものを言います。それ以外に日本では任意接種という独特の分類があり、原則保護者負担の予防接種です。おたふく風邪、A型肝炎、髄膜炎菌ワクチンなどがあります。おたふく風邪ワクチンが国の予防接種プログラムに入っておらず、任意接種なのは世界の先進国では日本だけです。
 ワクチンの種類は徐々に後進国状態を脱しつつあります。さらに他の国では普通に行われていた、異なるワクチンの同時接種が日本でも行われるようになりました。また一つの予防接種を受けた後に一定の期間を空けないと次のワクチンを受けられないという制限も昨年10月に世界標準に沿った改正がなされてきています。
 このように子どもに対する予防接種は、時間がかかりましたがよくなってきています。しかし現在の緊急課題である新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種はどうでしょう。このたびのワクチン接種の混乱は09年にあった新型インフルエンザパンデミック時の再現のようです。09年と同様今回も外国頼みのワクチン入手が遅れに遅れ、接種体制の確立もスムーズに行かず、前回からの学習ができていないかのようです。今回の試練を乗り越えた後は、日本がワクチンをはじめ、感染症制圧で世界をリードする国になることを心から期待したいと思います。
(河内小児科・内科クリニック院長 河内暁一)

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手のしびれ(手根管症候群)

2021/6/26 土曜日

 

 今回は手根管(しゅこんかん)症候群についてお話しします。まずご自分の手を開いて手のひらを観察してください。手根管とは手のひら中央の陥凹(かんおう=へこみ)から手首側に盛り上がった部分で、中は指を曲げる腱(けん)と正中神経が入ったトンネルになっています。このトンネルが窮屈になると神経が圧迫されてさまざまな症状が出ます。
 代表的な症状は夜間や明け方の手指のしびれで小指以外の指に生じます。運転中にハンドルを握っていてしびれる人もいます。手のひらの親指側の盛り上がった部分の筋肉がやせてくるのも特徴です。両手を広げて左右を比べると容易に分かります。
 また、手根管の盛り上がり部を手首方向にたどり、手首のしわの部分を軽くトントンとたたくことで指先に電気が走るような痛みを感じます。他に、細かいものを指先でつまむ動作が苦手になることもあります。つまみ動作が気にならなくても親指と人差し指でOKサインのように丸を作ってみてください。きれいに丸くならない場合は手根管症候群の可能性があります。
 この疾患は手の使いすぎの職業、手首の骨折後の変形、長期透析などで発症することが多いようですが、女性の場合は更年期に入り症例数が急増する傾向にあります。
 以上のような手の症状が気になる方は整形外科や手外科の専門医を受診してみてください。外来で神経の伝わる速度を電気で測定し、神経の腫れがないか超音波で測定して診断します。治療法は軽度だと投薬、重症だと手術になります。手術は手根管のトンネルの手のひら側の屋根になっている靭帯(じんたい)を切開して神経の圧迫を緩めます。手術方法はさまざまありますが、近年小切開手術の傾向にあります。ちなみに当院では内視鏡を併用して小手術を行っており、短時間日帰り手術としております。
 手のしびれには他にも指の変形性関節症、首の変形による神経障害、中枢神経疾患、糖尿病などさまざまな原因があります、少しでも気になる方は、まず最寄りの整形外科で相談してみてください。
(にしかわ整形外科・手の外科クリニック院長 西川真史)

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皮膚幼虫移行症

2021/6/19 土曜日

 

 昨今のグルメブームや低温輸送の進歩により、魚や肉を新鮮な生の状態で食べる機会が多くなっています。ですが、シラウオ、コイ、フナ、サクラマスは加熱調理したものを食べる方が無難でしょう。これら魚の身や内臓には顎口虫(がくこうちゅう)という寄生虫の幼虫が含まれていて、われわれがこうした食材を生のまま口にすると、皮膚幼虫移行症という病気を発症する可能性がありますから、注意が必要です。
 皮膚幼虫移行症とは、顎口虫などの寄生虫の幼虫を含んだ肉片を生食したのち、肉片の中の幼虫がヒトの胃の壁を突き破って体の壁に侵入し、ついには皮膚に入り込んでさまよいながら移動するために、赤いミミズ腫れがうねうねと生じる病気です。
 原因となる魚などを生食してからおよそ10日から1カ月ほどで皮膚に症状が現れ、軽い痛み、かゆみを伴います。生食から皮膚症状が現れるまで時間がかかるために、何を食べたかを覚えていない患者さんもいます。皮膚症状はおなかや背中など体の中心部に出ることが多いです。治療は皮膚にひそんでいる幼虫を丸ごと切除する必要があります。皮膚幼虫移行症を引き起こす寄生虫の中では顎口虫が最も多く、日本では4種類確認されていますが、北日本でよく見られるものは日本顎口虫です。
 日本顎口虫は先に挙げた魚以外、ウグイ、ヤマメ、ナマズ、ドジョウ、ブラックバス、ライギョのほか、カエル、ヘビ、イヌ、ネコ、ブタ、イタチの体内で確認されています。別な種類の顎口虫で、ドロレス顎口虫という寄生虫がおり、ヘビに寄生していますが、驚いたことにマムシを生で食べて皮膚幼虫移行症を発症した男性の症例報告があります。
 顎口虫以外で皮膚幼虫移行症を発症する寄生虫に旋尾(せんび)線虫がありますが、これはホタルイカに寄生していて、生で食べると皮膚幼虫移行症を発症する可能性があります。ただし、ボイルしてあれば食べても全く大丈夫ですので、おいしく召し上がってください。
(弘前大学大学院医学研究科皮膚科学講座准教授 中野創)

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コロナウイルスワクチンQ&A(下)

2021/6/12 土曜日

 

 先週に引き続き新型コロナウイルスワクチンQ&Aについてお知らせします
 Q ワクチンは本当に効くの?
 A 世界の中で最速でワクチン接種が進んでいるイスラエルにおいて、ファイザー社がワクチンの効果を検証した論文(2月24日、NEJM.org)によると、発症を予防する効果は94%、重症化を防ぐ効果は92%、さらに感染を予防する効果も92%と高い結果でした。有効性が60%程度のインフルエンザワクチンに比べ、とても有効なワクチンです。またファイザー社は少なくとも半年は効果が持続し、安全性にも問題がないと発表しています(4月1日)。
 Q 変異ウイルスにもワクチンは効くの?
 A 青森県内でも従来より感染力が強いとされる変異ウイルスが検出されています。またワクチンが効きにくくなる可能性のある変異ウイルスも確認されています。
 一方で横浜市立大学の研究グループの発表によると、ワクチンを2回接種した100人について分析したところ、89%の人の体内にイギリスや南アフリカ、ブラジルなど合わせて七つの変異ウイルス全てについて効果が期待できる量の中和抗体が作られていました(5月11日発表)。中和抗体の上がり方には個人差がありますが、ワクチンを2回接種すると変異ウイルスに対しても高い効果が期待できます。
 Q ワクチンを接種したらマスクは必要なくなる?
 A かなり有効性が高いワクチンですが、それでも接種後に感染し、無症状でいる方が一定数想定されます。そのような無症状感染者がマスクの着用や手洗い、3密を避けるなどの感染対策を取らないと、周りに感染を広げてしまいます。
 日本ではワクチン接種が遅れていますし、いろいろな事情で接種できない人もいます。個々人がワクチンを接種しても社会全体で効果が確認されるまで、当面は感染対策を続ける必要があります。
 ▽まとめ
 ウイルスや細菌に対して、集団の一定以上の人が免疫を持つと、感染者がでても他の人に感染せず流行しなくなる「集団免疫」という状態になります。WHOは「集団免疫」の状態になるためには、人口の70%を超える人がワクチンを接種する必要があると発表しています。接種対象者が次々と広がっており、より多くの方にワクチン接種を受けていただきたいと思います。
(ナルミ医院院長 鳴海晃)

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コロナウイルスワクチンQ&A(上)

2021/6/5 土曜日

 

 4月12日からファイザー社の新型コロナウイルスワクチン(以下ワクチン)の接種が高齢者に開始され、その効果が期待されています。しかし日本においては人口100人当たりの累積摂取回数は11・1回と諸外国に比べて極端に少ないレベルです(6月2日時点)。一方でアストラゼネカ社やモデルナ社のワクチンも5月21日に承認され、より接種状況が改善されることが期待されます。そこで今日から2回にわたり新型コロナウイルスワクチンQ&Aについてお話します。
 Q 接種するか迷ってるけど、結局接種するべき?
  ワクチンについてはさまざまな情報が錯綜(さくそう)し、接種すべきか迷っている人がいるかと思います。大切なのは新型コロナウイルス感染症はワクチンで予防できる病気になったことです。(1)ワクチンの有効性(2)副反応のリスク(3)病気になり死亡するリスク-の3項目を総合的に考え、接種するかどうか考えて決めることが各個人に求められています。
 特に高齢者や基礎疾患(慢性の呼吸器疾患、心臓病、腎臓病、肝臓病、糖尿病、悪性腫瘍、睡眠時無呼吸症候群など)がある方は、新型コロナウイルスに感染し重症化するリスクを考えると、ワクチンを接種してそのリスクを下げることが大切だと思います。しかし厚生労働省作成のリーフレットに「職場の周りの方などに接種を強制したり、接種を受けていない人に差別的な扱いをしたりすることのないようにお願いいたします」と記載されているように、接種を受けることは強制ではありません。
 Q 重大な副反応は起きないの?
  ファイザー社のワクチンによる主な副反応の発現割合は、接種部位の痛み、疲労、頭痛が50%以上、筋肉痛、悪寒、関節痛、下痢、発熱、接種部位の腫れが10~50%、悪心、嘔吐(おうと)が1~10%です(ワクチンの貼付文書から改編)。国際的な評価指標でアナフィラキシーに該当したのは107件で、3万5700回に1回起きています。またワクチン接種後の死亡として報告された事例が国内で39例ありますが、因果関係が判明した死亡者はゼロです(5月12日厚生労働省専門家部会)。ただし数年単位の長期的な副反応は不明です。
(ナルミ医院院長 鳴海晃)

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