医療情報ほっと

 

がんは防げますか

2022/7/2 土曜日

 

 ▽がんは防げますか?
 がんを100%防ぐことはできませんが、がんになりにくくし、予防することはできます。がん死亡を予防するには、がんにならないようにする「一次予防」、がんになっても早期に発見・治療して根治する「二次予防」があります。
 一次予防はがんになりにくい食事・生活習慣などに努め、がんのリスクとなるものを避けることが必要です。二次予防は、症状のないうちに定期的にがん検診を受けることです。
 がん検診とは症状のない健康な人の中からがんを持っている人を見つける検査で、がんの死亡率を減少させるために行われます。がん検診は健康と思われる無症状の人を対象としているため、症状があり病気が疑われる人は病・医院を受診し、診察(一般の保険診療)を受けましょう。
 がん検診には大きく分けて対策型検診と任意型検診があります。対策型検診は住民全体の死亡率を下げるため市町村が行う住民健診であり、自己負担が少額で済みます。任意型検診は個人が自分の死亡リスクを下げるために行うもので、人間ドックがその代表です。基本的に費用は全額自己負担になります。
 現在、国から「死亡率を減少させる効果が確認され、科学的根拠に基づく検診」として推奨されている検診は、胃がん・肺がん・大腸がん・子宮頸がん・乳がんの五つの検診です。これら五つは対策型検診として住民検診で行われています。
 ▽胃がん検診について
 胃がん検診の検査法は、「胃エックス線検査(バリウム検査)」と「胃内視鏡検査(胃カメラ検査)」があり、個人で選べます。どちらも早期発見・早期治療ができるメリットがある一方デメリットもあります。
 病変が分かりにくい等のための見逃し(偽陰性)や、がんがないのにがん疑いという判断をすること(偽陽性)がどうしても存在します。エックス線検査ではバリウムの誤嚥(ごえん)や便秘が起こることもあります。また放射線による被ばくを考慮し、検診の対象者を40歳以上としています。
 カメラ検査では鼻出血、生検(病変の一部を採取して調べる検査)による出血、前処置による過敏反応などもあります。また胃カメラ自体が検診としてはつらい検査です。市・医療機関ではこれらを念頭に検診を実施していますが、受診者もこのことを知った上で検診を受けてくだされば幸いです。
 以上のように検診にはメリットもデメリットもありますが、総合的に見てメリットがデメリットを上回るので検診として実施されています。
(福士内科医院院長 福士玄)

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赤ちゃん部屋のお化け

2022/6/25 土曜日

 

 皆さんは“赤ちゃん部屋のお化け”という言葉を聞いたことがありますか? シカゴ大学の児童精神科医セルマ・フライバーグ先生が言った言葉です。子どもの頃の虐待やネグレクトなど、つらい過去を背負った母親が自分の子と赤ちゃん部屋で2人きりになったとき、表象(心の中の写真のようなもの)として残っている自分のつらい過去がよみがえり、言うも言われぬ不安感や、自分も同じように子どもを虐待してしまうのではないかという恐怖感が生まれます。それを“赤ちゃん部屋のお化け”と呼んだのです。
 お化けとは目の前のわが子に投影された自分自身の影なのです。虐待の世代間伝達という言葉はよく聞くと思います。虐待を受けた親が、今度は自分の子どもを虐待してしまうというのはこのお化けが原因なのです。しかも赤ちゃんは言葉は分からなくても親の気持ちを直感的に感じ取る力を持っています。親の不安を感じ、子どもも泣き出します。ますます育てにくい子になり、親は苛立(いらだ)ち、癇癪(かんしゃく)を起こして子どもを叩(たた)いてしまいます。子どもを虐待してしまった親は責められることが多いですが、責めるだけでは解決しません。逮捕され刑罰を受けたとしても、虐待を繰り返す人もいるそうです。刑罰では心の傷を癒やすことはできません。
 フライバーグ先生はカウンセラーの支援により、親が自分のつらい過去を言葉にすることで苦しい感情から解放され、虐待の連鎖を断つことができると述べています。そのフライバーグ先生に師事したカリフォルニア大学のアリシア・リーバマン先生は赤ちゃん部屋にはお化けだけでなく天使がいると言いました。虐待をするお母さんでもなお、わが子はかわいく、子どもの幸せを願う心がある。リーバマン先生はそれを“赤ちゃん部屋の天使”と呼んだのです。
 虐待防止対策が叫ばれていますが、虐待は早くに見つけるより、虐待を予防することが大切です。それには赤ちゃんがお腹の中にいる時から心のサポートが必要なのです。
(城東こどもクリニック院長 松原徹)

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ドキドキする話

2022/6/18 土曜日

 

 ここでは話の内容がドキドキするのでなく、心臓がドキドキする、つまり動悸(どうき)についてのお話です。動悸は普段は意識していない心臓の鼓動を感じる状態であり、多くの人が一度くらいは経験したことがあるのではないでしょうか。症状はタイトルにもある「ドキドキする」や「ドキンドキンする」、「ドクッとする」などその人によりさまざまです。
 原因として(1)心臓の病気に伴うもの(2)心臓以外の病気に伴うもの(3)重篤な病気とは関係のないものなどがあります。心臓の病気に関連するものには、急に脈が不規則あるいは規則的に速くなる頻拍症や心臓への血液供給が不足して起こる狭心症や心筋梗塞(こうそく)、心臓の筋肉そのものが肥厚したり、逆に薄くなったりする心筋症、心臓の弁や構造の異常などに伴うものなどがあります。心臓以外の病気に関連するものには、貧血、ホルモン異常(甲状腺、副腎の機能異常など)、肺の病気などがあります。このような場合は病態に応じた治療(内服薬、カテーテル治療、手術など)が必要なこともありますが、最も多く見られるのが重篤な病気とは関係のない動悸です。例えば走った時、緊張した時、びっくりした時、ストレスが多い時、疲労時、喫煙時、お酒やコーヒーを飲み過ぎた時などに感じる動悸です。この場合、単に脈が少し速くなっている場合と期外収縮と呼ばれる不整脈が出ている場合が多いと思われます。期外収縮は文字通り脈の出る時期が少し外れて出現するもので、動悸の原因としては最も多い不整脈ですが、心配する必要のないものがほとんどです。
 ドキドキすると心臓が止まるのではないかと不安になり余計ドキドキしてきますが、症状を強く感じる場合を除いて多くは治療の必要がありません。ただ、どうしても症状が気になる場合や「胸が痛い、苦しい」「目の前が暗くなる」「倒れそうになる」などの症状を伴う場合は、かかりつけ医や近くの病院で相談してみてください。
(なりた内科クリニック院長 成田英俊)

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ムンプス難聴はワクチンで予防できます

2022/6/11 土曜日

 

 おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)はムンプスウイルスによる感染症で、3~5年ごとに大規模な流行を繰り返している。全国の年間患者数は多い年で135万人と感染力が強い。好発年齢は3~6歳を中心とする小児だが、20~40代の親世代でも発症ピークがある。皆さんはこの合併症に重篤な難聴があることをご存じだろうか? 発生頻度は1000人に1人とかなり高い。しかも難聴は治療しても治らない。
 世界的にはムンプスはすでにワクチンによってほぼ制圧された疾患だが、日本はワクチン接種率がいまだに40%以下で「ムンプス難聴」が発生し続けている。ワクチン接種率が低い要因としてMMRワクチン(はしか、おたふくかぜ、風疹の新3種混合ワクチン)による無菌性髄膜炎の副反応が社会問題となったことから、定期接種から単独の任意接種になったことと一般的にムンプス難聴に対する認知度が低かったことが挙げられる。医師側でもムンプス難聴の頻度はこれまで1・5万人に1人と極めて少ないと認識されていた。さらに万一発症しても片側のみの難聴で大きな支障はないと信じられてきた。
 ところが日本耳鼻咽喉科学会が行った全国大規模調査で2015年と16年の2年間のムンプス難聴症例は少なくとも348人で内80%が片側高度難聴、4・5%の16人が両側高度難聴であった。朝起きたら両耳が全く聞こえなくなったことを想像してほしい。片側難聴でも音の方向が把握できないこと、騒がしい中での聞き取りが困難で、人間関係にストレスを感じることは多い。
 ワクチン接種によりムンプス難聴は予防できる。しかも自然感染の場合の無菌性髄膜炎の頻度が1・24%なのに対し、ワクチン接種の副反応のそれは0・05%と少なく、しかも軽症で治癒する。医師会は1歳と5歳までに2回接種することを強く推奨する。弘前市では自己負担4000円で接種できるが、学会からも行政に定期接種にするよう要望している。
(弘前市医師会理事 医療法人福島耳鼻咽喉科院長 福島龍之)

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新型コロナ後遺症と「脳に霧」

2022/6/4 土曜日

 

 まん延防止等重点措置の解除後、全国的に新型コロナウイルス感染者が再び増加しました。青森県でも、2月上旬から4月上旬ごろまでは連日500~600人台の新型コロナウイルス感染者が発生しました。5月30日時点の感染者数は5万6354人です。
 さて、新型コロナウイルスから回復したにもかかわらず「後遺症」に悩まされる患者さんが数多くいます。20~30代の比較的若い世代でも発症する割合が高いなど、全世代で認められるコロナ後遺症は別名「ロング・コビット」と言われます。
 コロナ後遺症は「新型コロナ発症から3カ月(少なくとも2カ月)続き、別の診断では説明できない症状」と定義されます。長引く症状で最も多いのは倦怠感(けんたいかん)、息切れ、認知障害で、胸の痛み、嗅覚・味覚障害、動悸(どうき)、思考力・集中力の低下、脱毛などもあります。これらの症状の一部は、感染療養から回復した患者さんの社会生活、特に「職を失うこと」に直結するような症状です。また、「ブレイン・フォグ」と言われる記憶力、思考力、集中力の低下は、その名の通り、「脳に霧がかかったような」状態で、仕事だけでなく日常生活にも支障を来します。
 コロナ後遺症の特徴は「日常生活で無理をすると症状が悪化する」傾向があり、「あまり無理をしない」という対処法が大切です。また、この後遺症は「検査で異常が出にくい」ということも大きな特徴で、医師は「気のせい」や「精神的な疾患」と安易に診断せず、適切な指導と対症療法を施す必要があります。
 ワクチンも後遺症に効果があり、コロナワクチンを2回接種しているとコロナ後遺症の発生が50%減少し、コロナ後遺症が出た人がその後コロナワクチンを接種すると、57%で症状が改善したという報告があります。
 最新の科学的知見に基づき東京都の感染症対策全般について提言する専門家委員会である「東京iCDC」の共同研究グループ「後遺症タスクフォース」から、コロナ後遺症に関するリーフレットが東京都福祉保健局ホームページで公開され、症状やデータ等を分かりやすくご紹介していますので、コロナ後遺症に悩む方々はぜひご活用ください。
(医療法人相原内科医院理事長 相原守夫)

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