医療情報ほっと

 

泌尿器科とロボット手術

2019/8/24 土曜日

 

 皆さん、こんにちは。泌尿器科は「おしっこで困った時に行く科」というイメージがあると思いますが、実際は、おしっこのトラブル(排尿障害)だけでなく、尿路結石、尿路感染症、腎不全(透析)、腎移植、そして泌尿器がん(抗がん剤治療と手術)を扱う科です。そのため、外科も内科も含んだ総合的な診療科ということになりますが、どちらかというと「腎臓や尿路の外科的治療(手術)を主に行う科」というのが正しい泌尿器科の位置づけです。
 今日はロボット(ダ・ヴィンチ)手術についてお話しします。昨年放送され話題になった医療ドラマ「ブラックペアン」で、最新手術支援ロボット「ダーウィン」が登場しますが、このモデルとなったのが実際の医療現場で既に使われている「ダ・ヴィンチ(da Vinci(R) サージカルシステム)」です。ダ・ヴィンチは3D内視鏡カメラと3本のアームを患者さんの体に挿入し、術者が離れた操縦席に座り遠隔操作で手術を行います。操縦席で手を動かすと、その手の動きがロボットに忠実に伝わり、繊細かつ低侵襲な手術が可能になります。特に体内の深い所にある臓器を、1~2センチの小さな傷から少ない出血で摘出するのを得意とします。2018年4月に肺がんや胃がんなど、幅広いがんの手術において保険適用になり急速に普及しています。現在、県内には弘前大学医学部附属病院に2台、県立中央病院に1台、三沢市立三沢病院に1台と計4台体制で治療しています。
 現在、ダ・ヴィンチ以外にも複数のロボット支援システムが開発され、数年内にはさらに進化したロボットも登場する予定です。今後の改良に大きな期待をしたいところですが、ロボット手術とはいえ実際に手術を行うのは医師であるため、優秀なロボットを上手に使いこなす医師の腕が重要である点は今も昔も変わりません。
 次回は前立腺がんに対するロボット手術の実力を解説します。
(弘前大学附属病院泌尿器科講師 畠山真悟)

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こどもの虐待2

2019/8/17 土曜日

 

 前回は児童虐待が疑われる場合は、それを察知した人が法律的にも通告の義務があることまで話しました。現在、ほとんどの市町村に広範囲にわたる関係者で構成された要保護児童対策地域協議会が設置されており、虐待を受けた子どもをはじめとする要保護児童、要支援家庭に関する情報を共有しながら子どもの健全育成を目指して活動しています。
 具体的に見守りや支援が必要な事例が生じた場合、豊富な経験を持った信頼のおける人を中心に、多職種の専門チームが連携しながら十分話を聞き、保護者から信頼される対応をすることが肝心です。
 初期対応につまずくと、その後、かたくなに接触を拒否し、最悪の結果を招いて事件化し、ニュースになることが時に見られます。また、転居した場合、情報の伝達が不十分だったり、状況の把握評価が異なったりして、虐待を防ぎえなかった例なども見られるので、関係者の緊密な連携が求められるところです。
 児童相談所には、状況によって親子分離や一時保護等の権限が付与されています。
 近年、子どもの貧困が社会問題となっていますが、経済的な面ばかりではなく関連した課題として取り扱われるべきです。いじめ、不登校、若年者の自殺、スマホ依存など子どもの生活習慣が大きく変わりつつある現代、子どもたちの心身の健全な発育と幸せを保障するにはどうしたらいいのか、その対応策を国を挙げて取り組むべき時です。
 私はある関連施設の嘱託医をしています。虐待のみならずさまざまな要因で収容されている子どもの養育に関わっています。中には養育環境が整わないままの若年者の望まぬ妊娠、突然の出産、育児放棄―。この世に生を受けた子どものあまりにも理不尽な運命を思うと胸が痛みます。
 適切な性教育の徹底が望まれます。子どもの虐待が発生しやすい養育環境の世代連鎖を断ち切るには、子どもがその環境から自立できるような教育を受けさせてあげることです。そのための「愛の手」が必要なのです。
(田口小児科医院院長 田口鉄治)

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こどもの虐待1

2019/8/10 土曜日

 

 少子高齢化が急速に進んでいるわが国において、守られるべき子どもの命が、事もあろうに身内によって奪われている事例が後を絶たない現実がある。
 札幌の詩梨ちゃん(2)が亡くなった事件、仙台の育児放棄事件、千葉の10歳の女児が父親による執拗(しつよう)な暴力で殺害された事例など、枚挙にいとまがない。全国の児童相談所における児童虐待相談対応件数は、厚労省統計によると、2017年度は15万5700件余(速報値)。近年米国や北欧では減少傾向にある中で、日本では右肩上がりに増加の一途をたどっている。子どもの虐待には身体的虐待、ネグレクト(育児放棄)、性的虐待、心理的虐待があり、乳幼児健診や医療現場、保育園、学校などでその兆候を察知する機会は少なくない。
 子どもの虐待対応には、早期発見と適切な対応が大切であることに異論はないが、予防に勝るものはない。そして子ども虐待はどの家庭でも起こりうるという視点から、早期からの「子育て支援」は「虐待予防」にもつながると考えられ、その対応施策として「乳児家庭全戸訪問事業」(こんにちは赤ちゃん事業)や「養育支援訪問事業」なども行われており、保健師さんたちが優しく子育て状況を見守りながら必要に応じてアドバイスや指導をし育児不安の解消に努めているのも事実。
 子ども虐待に関する法律として主に児童福祉法及び児童虐待防止に関する法律(防止法)がある。保護者に監護させることが不適当であると認める児童を発見した者の通告義務が定められている。特に防止法では児童福祉関係者や学校の教職員、病院、医師、保健師などは、発見しやすい立場にあることを自覚し児童虐待の早期発見に努めなければならないと規定され、通告義務が課せられている。複数の傷や熱傷痕、発育不全、不衛生な状態など虐待の疑いがある時は、最寄りの児童相談所か市町村の児童福祉相談窓口、警察へ通告する義務がある。
(田口小児科医院院長 田口鉄治)

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白血球のお話

2019/8/3 土曜日

 

 血液は液体の血漿(けっしょう)成分と血球成分に分かれます。血球成分は酸素を運ぶヘモグロビンを含む赤血球と止血に必要な血小板と白血球からなります。白血球は細菌などから体を防御するのが仕事です。
 白血球は幾つかのグループから成り立っています。最も数が多い好中球は40~70%、次がリンパ球20~40%、単球2~10%、好酸球1~6%、好塩基球は1%以下です。好中球は細菌などの異物を細胞の中に取り込み殺菌するのが主な役割です。単球は血管の外に出てマクロファージとなり、樹状細胞と同様に体の中に入った異物を分解してその情報をリンパ球に伝えます。情報をもらったリンパ球は抗体をつくったり直接攻撃したりし異物を体外に排除します。好酸球は過剰な免疫反応を抑え寄生虫などに反応し増加します。好塩基球はヒスタミンの分泌などアレルギーに関与しています。
 白血球は骨髄でつくられ血管の中に入り、さらに血管の外の組織に移行し一生を終えます。白血球数の基準値は4000~9000程度ですが血液検査で得られる数値はあくまで血管内の数です。また好中球の数が白血球数を左右します。好中球は細菌感染などの炎症があると増加します。また、ストレスなどで副腎皮質ステロイドホルモンやアドレナリンの分泌が増加する状況でも好中球数は増加します。
 日常臨床では炎症、特に細菌感染の有無を調べるために白血球数の検査がしばしば行なわれます。白血球が減少した場合は白血球だけが減少しているのか、赤血球や血小板も減少しているかで事情は異なります。赤血球や血小板も減少している場合には骨髄の病気の存在が疑われます。
 健診で白血球が増加している場合は精密検査を受けましょう。異常がないことが多いのですが、喫煙により肺に慢性炎症が生じ、白血球が多くなることがあります。また3000程度の単独の白血球減少は病的意義がない場合がほとんどです。
(大町内科クリニック副院長 對馬 葉子)

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痛い!

2019/7/27 土曜日

 

 痛みは嫌なものです。でも、痛みは人間にとって、体の変調を教えてくれる大切な警報なのです。けがなどの外傷があると、痛みとして脳に情報が伝わり、体の異常がある場所を認知します。また、椎間板ヘルニアのように、神経の圧迫が痛みとなり、脳に伝わって神経麻痺(まひ)を防ぐサインにもなります。
 痛みをとるには、その原因をはっきりさせることが大切です。打撲であれば、冷やして安静にしていれば数日で痛みは治まります。しかし、なかなか痛みがひかなければ、何か別の原因があるかもしれません。自己判断せず病院に行くことをお勧めします。せっかく体が教えてくれたサインを見逃さないことです。とりあえず痛みが取れればよい、というのは危険です。放置するということは、大事な警報を無視することにほかならないからです。手遅れになる事も少なくありません。
 我々は痛みと向き合い、考え、体が正常に機能するように多くの手法を駆使します。それには注射や手術のほか、お薬があります。痛みは脳に伝わり感じるので、それをストップさせれば良いわけです。まず痛みの元となる炎症を抑える薬があります。それでも抑えられない時は、麻薬系のお薬を使います。
 麻薬というと心配する方もいますが、何十倍にも薄めたものが使われています。しかし、完全に痛みを止めるお薬はありません。最近は研究が進み、脳から痛みを感じさせないようにする指令が出ていることが分かってきました。そしてその指令を増幅させるお薬が、使われ始めています。現時点ではまだ、眠気や吐き気といった副作用が出ることもありますが、効果が期待されています。
 いずれにせよ、痛みを我慢することは、何の意味もありません。痛みはさらなる体調不良を引き起こし、何より気持ちが落ち込んでしまうという負の連鎖が起こります。早期に原因を見つけ、痛みとはできるだけ早くオサラバ…しましょう。
(金子整形外科院長 金子雅)

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